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明細書 :脳波測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3160621号 (P3160621)
公開番号 特開平11-318843 (P1999-318843A)
登録日 平成13年2月23日(2001.2.23)
発行日 平成13年4月25日(2001.4.25)
公開日 平成11年11月24日(1999.11.24)
発明の名称または考案の名称 脳波測定装置
国際特許分類 A61B  5/0476    
A61B  3/113     
FI A61B 5/04 320B
A61B 3/10
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願平10-139849 (P1998-139849)
出願日 平成10年5月21日(1998.5.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成9年11月22日~11月23日 社団法人計測自動制御学会九州支部開催の「第16回学術講演会」において文書をもって発表
審判番号 不服 2000-004877(P2000-004877/J1)
審査請求日 平成10年5月21日(1998.5.21)
審判請求日 平成12年4月6日(2000.4.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012442
【氏名又は名称】京都大学長
発明者または考案者 【氏名】中村 政俊
【氏名】柴崎 浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
特許請求の範囲 【請求項1】
眼球運動に起因するアーチファクトが除去された脳波を検出する脳波測定装置であって、
脳波を時系列の電位信号として測定すると共に脳波測定と並行して眼球運動に起因する電位変化を眼電図として測定する脳波計と、
測定された眼電図の電位変化から瞬目の発生を検出する手段と、
検出された瞬目に対する眼電図から正規化パラメータを求め、得られた正規化パラメータを用いて脳波測定の時系列のデータ中の瞬目が発生している部分のデータを正規化する手段と、
正規化された脳波データについて加算平均を行う手段と、
加算平均された脳波データについて、前記正規化処理で用いた正規化パラメータを用いて逆正規化処理を行い、瞬目の発生した時間に対応する瞬目アーチファクトの推定波形を求める手段と、
測定された脳波の時系列データから前記推定波形を除去する手段とを具えることを特徴とする脳波測定装置。

【請求項2】
前記正規化パラメータを、検出された瞬目アーチファクトの振幅及び持続時間から決定することを特徴とする請求項1に記載の脳波測定装置。

【請求項3】
前記正規化パラメータとして、検出された瞬目の前側端縁から瞬目のピーク発生瞬時までの時間期間(Df (i) )、瞬目のピーク発生瞬時から瞬目の後側端縁までの時間期間(Db (i) )、前記瞬目の前側端縁における電位を基準としてピーク振幅(Hf (i) )、及び前記後側端縁における電位を基準としてピーク振幅(Hb (i) )、及び眼電図の瞬目ピーク時刻(L i))の5個のパラメータを用いることを特徴とする請求項2に記載の脳波測定装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は脳波測定装置、特にアーチファクトの影響が除去された脳波の時系列データを高精度に実時間で測定できる脳波測定装置に関するものである。

【0002】

【従来の技術】脳波測定は、人間の脳の活動により発生する電気的変化を頭皮上において電位変化として検出することにより行われる。一般的に、記録された脳波中には脳の活動以外の筋活動や眼球運動等の他の現象に起因する電位変化(アーチファクト)が同時に記録されるため、アーチファクトの混入を防ぐように細心の注意が払われている。特に、眼球運動に起因するアーチファクト、とりわけ瞬目動作に起因するアーチファクトは振幅が比較的大きいため、記録した脳波の判読及び解析において大きな妨げとなっている。このため、脳波の測定中に混入した瞬目アーチファクトを処理する方法の開発が強く要請されている。

【0003】
従来、脳波に混入した瞬目アーチファクトを除去する方法として、眼球運動に付随する電位変化を単一電流源に由来する電位分布より推定し、脳波の時系列記録データから瞬目アーチファクトの推定波形が除去されたデータから脳波の判読が行われている。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】眼球運動に起因する電流分布を単一の電流源で近似した場合、その仮定に基づく脳表上の電位分布は必ずしも実際に記録した波形と正確に対応しない場合もあり、測定精度を一層改良することが望まれている。また、従来の方法では、単一電流源を推定するため、信号雑音比の高い記録データを予め入手し、予備記録時の電位分布と実際の記録時の電位分布とを対応させるため、測定の頭位、眼球運動の質が一定である要件が課せられ、測定及び判読における精度に難点があった。さらに、測定が終了した後に瞬目アーチファクトの除去を行うため、実時間測定を行うには、実際的に不可能であった。

【0005】
従って、本発明の目的は、脳波測定中に瞬目アーチファクトが混入しても、その影響を高精度に除去できると共に脳波測定を実時間で実行できる脳波測定装置を実現することにある。

【0006】

【課題を解決するための手段】本発明による脳波測定装置は、眼球運動に起因するアーチファクトが除去された脳波を検出する脳波測定装置であって、脳波を時系列の電位信号として測定すると共に脳波測定と並行して眼球運動に起因する電位変化を眼電図として測定する脳波計と、測定された眼電図の電位変化から瞬目の発生を検出する手段と、検出された瞬目に対する眼電図から正規化パラメータを求め、得られた正規化パラメータを用いて脳波測定の時系列のデータ中の瞬目が発生している部分のデータを正規化する手段と、正規化された脳波データについて加算平均を行う手段と、加算平均された脳波データについて、前記正規化処理で用いた正規化パラメータを用いて逆正規化処理を行い、瞬目の発生した時間に対応する瞬目アーチファクトの推定波形を求める手段と、測定された脳波の時系列データから前記推定波形を除去する手段とを具えることを特徴とする。

【0007】
本発明者が脳波測定について種々の実験及び解析を行った結果、記録された脳波データ中に混入した大きな振幅のアーチファクトと眼電図により測定した眼球運動によるアーチファクトとの間に対応関係があることが判明した。このような認識に基づき、本発明では脳波の時系列の測定と並行して眼球運動に起因する電位変化を眼電図として検出する。そして、眼電図の波形から瞬目の発生を検出し、脳波上に波及した瞬目アーチファクトを検出する。

【0008】
しかしながら、検出される瞬目アーチファクトの波形は、持続期間及び振幅に大きなバラツキがあるため、単純に頂点同期加算平均を行っても正確な波形を捉えることができない。そこで、本発明では、記録された脳波データについて正規化処理を行う。正規化に際し、瞬目アーチファクトについて眼電図として測定されたデータから正規化のためのパラメータを取り出す。正規化のパラメータとしては、本発明者による瞬目アーチファクトについての種々の実験及び解析の結果、検出された瞬目に起因するアーチファクトの持続時間及び振幅を用いることができる。特に、検出された瞬目の前側端縁からピーク発生瞬時までの時間期間(Df (i) )、ピーク発生瞬時から瞬目の後側端縁までの時間期間(Db (i) )、瞬目の前側端縁における電位を基準としたピーク振幅(Hf (i) )、及び後側端縁における電位を基準としたピーク振幅(Hb (i) )、眼電図測定における瞬目のピーク時刻(L(i) )の5個のパラメータを用いることによりより精度の高い正規化処理を行うことができる。すなわち、これら5個のパラメータを用いれば、検出された瞬目の持続時間及び振幅に種々のバラツキが生じても正確な正規化処理を行うことができる。

【0009】
正規化処理の後、記録されたデータの瞬目が発生している部分の脳波の波形について加算平均処理を行い、瞬目に起因する推定脳波波形(アーチファクト推定波形)を作成する。この加算平均処理により瞬目に起因する推定脳波波形を一層正確に把握することができる。

【0010】
次に、加算平均により得られたアーチファクト推定波形について、正規化処理において用いられたパラメータを用いて逆正規化を行い、各瞬目に起因するアーチファクト推定波形を測定された脳波の時系列の電位信号に戻す。

【0011】
最後に、除去処理を行い、測定した脳波の時系列データから前記推定波形を除去し、瞬目アーチファクトが除去された脳波の時系列データを得る。

【0012】
これら正規化及び加算平均処理を行うことにより、瞬目アーチファクトによる波形を一層正確に認定でき、脳波の測定精度を一層改善することができる。又、これらのデータ処理は脳波の測定中にリアルタイムで実行することも可能である。この結果、リアルタイムでの脳波の判読が可能になり、脳波の自動判読装置の実現が可能になる。

【0013】

【発明の実施の形態】本発明による脳波測定方法のアルゴリズムについて説明する。アルゴリズムの説明において、脳波計を用いて実際に測定したデータ等を用いて説明する。脳波測定を行うため、5個の電極が接続されている脳波計を用い、各電極を被検者の頭皮上の部位FPZ 、FZ 、CZ 、PZ 、C3 、C4 に配置し、これらの電極により脳波を電位変化として検出する。この電極配置を図1に示す。脳波測定と並行して眼球運動に起因する電位変化も並行して測定する。測定された脳波データ及び眼電図のデータは、A /D変換器を介してディジタル信号に変換し、処理装置(コンピュータ)において以下のアルゴリズムにしたがって処理を行う。

【0014】
図2にサンプリング周波数400Hzの条件で5秒間にわたって測定された脳波の記録データ及び眼電図(EOG)を一例として示す。記録された脳波の測定信号中に矢印で示すアーチファクトが混入されており、このアーチファクトは眼電図に記録された信号と時間的に正確に対応している。

【0015】
次に、検出処理について説明する。初めに脳波測定と並行して記録した眼電図の情報をもとに瞬目の自動検出を行う。まず、眼電図中より高周波成分およびドリフト、トレンド成分を除去する目的で1.5-10.0HzのDFT-IDFTフィルタをかける。瞬目アーチファクトは、立ち上がりの鋭い高振幅な波であるため、この特徴を考慮して検出を行う。具体的な検出手順を図3に示す。任意の時刻t秒とt+0.12秒における振幅の差をHとし、あらかじめ用意した瞬目標準波形との相関係数をPとしたときとしたとき、
H≧70〔μV〕 (1)
P≧0.8 (2)
の2式を満たした場合に、瞬目ありと判定する。時刻t+0.12秒の直後の頂点を瞬目の頂点時刻と定め、頂点時刻の直前と直後の頂点時刻の差を瞬目の存在区域と定めた。

【0016】
次に、正規化処理を行う。瞬目アーチファクトは1つ1つの波形の形状、すなわち持続時間及び振幅にばらつきが大きいため、単純に頂点同期加算平均をしてもその形状が正しく捉えられない。そこで、眼電図測定により検出された瞬目より振幅と持続時間に関する情報を取り出し、それらの値をそろえることで各波形のばらつきを抑える。個々の瞬目を立ち上がりと立ち下がりの部分に分け、それぞれの持続時間及び振幅を一定の大きさにそろえる。瞬目の正規化のためのパラメータを図4に示す。Hf (i) は前側端縁を基準にした瞬目時の眼電値の振幅を表し、Hb (i) は後側端縁を基準にした瞬目眼電図の振幅を表し、Df (i) は瞬目の前側端縁からピーク瞬時までの持続時間を表し、Db (i) はピーク発生瞬時から後側端縁までの持続時間を表し、L(i) は瞬目の出現時刻を表わす。検出されたそれぞれの瞬目時の眼電値より上記の5つのパラメータを求め、正規化と逆正規化を行う際のパラメータとする。正規化波形は、眼電図情報から得られたHf (i) ,Hb (i) ,Df (i) ,Db (i) ,L(i) を用い、
【数1】
JP0003160621B2_000002t.gifで計算する。x(t) は眼電図と同時記録した処理の対象となる脳波時系列である。また、τは瞬目アーチファクトの発生している区間を〔0.2〕の区間に規格化するためのパラメータである。

【0017】
次に、加算平均を行なう。正規化された各波形を頂点同期加算平均することでアーチファクトの推定波形を求める。その式は
【数2】
JP0003160621B2_000003t.gifで表される。xi * (t) は(3)式で求められた正規化後の脳波時系列、Nは検出されたアーチファクト個数、
【外1】
JP0003160621B2_000004t.gifは瞬目アーチファクト基準推定波形となる。

【0018】
次に、逆正規化を行う。加算平均により得られ推定波形をもとに、各アーチファクトについて、正規化及び加算処理されたデータの振幅及び持続時間について脳波計により記録された脳波のデータレベルに戻す。個々のアーチファクト推定波形を求める手順は、正規化の工程で得られたパラメータHf (i) ,Hb (i) ,Df (i) ,Db (i) ,L(i) を用い、
【数3】
JP0003160621B2_000005t.gifで計算する。ここで、図2に示す脳波の記録データについて逆正規化を行った後に得られた推定波形を図5に示す。

【0019】
次に、除去を行なう。逆正規化で得られた個々のアーチファクト推定波形
【外2】
JP0003160621B2_000006t.gifを原脳波時系列信号xi (t) から頂点同期して差し引くことによって瞬目アーチファクトの除去を行った。その式は、
【数4】
JP0003160621B2_000007t.gifで、
【外3】
JP0003160621B2_000008t.gifが処理データとなる。

【0020】
このようにして瞬目アーチファクトが除去された脳波の測定データを図6に示す。図6から明かなように、脳波計により記録された脳波の時系列データから瞬目アーチファクトに起因するノイズ成分が明瞭に除去されていることが理解できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5