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明細書 :加熱・加圧により硬化する組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5472639号 (P5472639)
登録日 平成26年2月14日(2014.2.14)
発行日 平成26年4月16日(2014.4.16)
発明の名称または考案の名称 加熱・加圧により硬化する組成物
国際特許分類 C08L  97/00        (2006.01)
C08K   5/092       (2006.01)
C09J 197/00        (2006.01)
B27N   3/02        (2006.01)
B27N   3/06        (2006.01)
B27K   5/00        (2006.01)
FI C08L 97/00 ZAB
C08K 5/092
C09J 197/00
B27N 3/02 D
B27N 3/06 A
B27K 5/00 A
請求項の数または発明の数 13
全頁数 14
出願番号 特願2010-519119 (P2010-519119)
出願日 平成21年7月3日(2009.7.3)
国際出願番号 PCT/JP2009/062182
国際公開番号 WO2010/001988
国際公開日 平成22年1月7日(2010.1.7)
優先権出願番号 2008174290
優先日 平成20年7月3日(2008.7.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年7月3日(2012.7.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】梅村 研二
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 忠
参考文献・文献 国際公開第2006/103992(WO,A1)
国際公開第2006/092330(WO,A1)
特開平06-154938(JP,A)
特開平01-104620(JP,A)
特開昭60-141759(JP,A)
調査した分野 C08L 97/00-97/02
B27K 5/00-5/06
B27N 3/00-3/28
C08K 5/00-5/59
C09J 197/00-197/02
特許請求の範囲 【請求項1】
温度180℃~250℃・圧力5kgf/cm2以上で加熱・加圧することにより硬化する組成物であって、粉末化または小片化された植物由来物(a)とポリカルボン酸(b)を主成分とすること
前記植物由来物(a)が、草木の木部、樹皮から選択されること、
前記ポリカルボン酸(b)が、クエン酸、イタコン酸、リンゴ酸から選択されること、
前記植物由来物(a)とポリカルボン酸(b)の重量比が1.0~8.0:1.0であること
を特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸が粉末の状態であり、前記(a)と(b)の重量比が1.05.0:1.0であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、糖類(c)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(b)と(c)の重量比が、1.0:0.1~5.0であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記糖類が、スクロース、キシロースおよびデキストリンからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリカルボン酸が、クエン酸および/またはイタコン酸であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
成型用組成物であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
木材接着用組成物であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物を加熱・加圧することによって得られた成形体。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物を、型に入れ、180℃~250℃に加熱し、5kgf/cm2~70kgf/cm2で加圧することを特徴とする、成形体の製造方法。
【請求項11】
小片化された植物由来物(a)に、ポリカルボン酸(b)を溶液の状態で添加し、温度180℃~250℃・圧力40kgf/cm2以上で加熱・加圧する工程を含むこと、
前記植物由来物(a)が、草木の木部、樹皮から選択されること、
前記ポリカルボン酸(b)が、クエン酸、イタコン酸、リンゴ酸から選択されること、
前記植物由来物(a)とポリカルボン酸(b)の重量比が4.0~8.0:1.0であること
を特徴とする成形体の製造方法。
【請求項12】
小片化された植物由来物(a)に、ポリカルボン酸(b)および糖類(c)を溶液の状態で添加し、温度180℃~250℃・圧力40kgf/cm2以上で加熱・加圧する工程を含むこと、
前記植物由来物(a)が、草木の木部、樹皮から選択されること、
前記ポリカルボン酸(b)が、クエン酸、イタコン酸、リンゴ酸から選択されること、
前記植物由来物(a)とポリカルボン酸(b)の重量比が6.0~14.0:1.0であること
を特徴とする成形体の製造方法。
【請求項13】
前記(b)と(c)の混合溶液を添加することを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体や接着剤の原料として使用することができる組成物であって、化石資源を必要としない組成物、及び、この組成物からなる成形体、並びに成形体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の防止や化石資源の節約のため、石油から作られるプラスチックに代わり、生物由来の有機性資源から作られる、いわゆるバイオマス材料の需要が高まっている。例えば特許文献1には、流動化促進剤が添加された木質系材料に水蒸気を接触させた後に、乾燥、及び、加熱・加圧の各工程を経ることにより該木質系材料に流動性を発現させて、この流動性が発現された木質系材料を型面に沿わせて表面がプラスチック様の成形体を得ることを特徴とする、木質系材料からなる成形体の製造方法が開示されている。特許文献1の方法によれば、木質系材料からなる成形体を製造することができるとともに、木質系材料に接触させる水蒸気の温度をより低くし、木質系材料を水蒸気に接触させる工程において消費するエネルギーを削減することができる。また、木質系材料を加熱加圧した際の流動化開始温度をより低くし流動性を向上させることができ、より複雑な形状に成形することが可能となる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2007-261159号公報
【0004】
しかし、特許文献1の方法は、流動化促進剤が添加された木質系材料に水蒸気を接触させる工程や、乾燥させる工程が必須であるため、工程が複雑であるという問題や、水蒸気を供給するための設備、並びに乾燥するための設備が必要であり、コストが高くなるという問題がある。また、水蒸気の供給や乾燥には、エネルギーが必要であるため、環境問題の点からも好ましくないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、より簡易な工程・設備によって、低エネルギーでバイオマス材料を製造できる組成物、当該組成物から製造される環境に優しいプラスチック状成形体、およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、粉末または小片状に破砕された植物由来物とポリカルボン酸を含む組成物が、加熱・加圧工程のみで硬化し、プラスチック様の成形体や木質成形体となることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、加熱・加圧により硬化する組成物であって、粉末化または小片化された植物由来物(a)とポリカルボン酸(b)を主成分とすることを特徴とする。前記ポリカルボン酸は粉末の状態であってもよく、その際、前記(a)と(b)の重量比は0.7~4.0:1.0であることが好ましい。
【0008】
本発明に係る組成物は、化石資源を必要としないため、環境に優しく、加熱・加圧するだけで硬化するため、容易にバイオマス成形体を作ることができる。また、組成物は接着剤原料として使用することもできる。水蒸気処理を行う工程は必要ないため、製造工程が簡易であり、低エネルギーで製造することができる。さらに、粉末状のポリカルボン酸を用いれば、組成物が固体であるため取り扱いが容易であり、保存中の安定性にも優れる。なお、ポリカルボン酸を液体状にした方が、植物由来物と均一に混ざりやすい場合は(例えば植物由来物が小片状の場合等)、ポリカルボン酸を水などの溶媒に溶解して植物由来物と混在させてもよい。
【0009】
本発明者はさらに研究を続けた結果、加熱・加圧により、植物由来物中の糖類が、ポリカルボン酸とエステル化反応することにより、前記組成物が硬化する可能性が高いことを突き止めた。これに基づき、硬化を促進するための添加物として、糖類について検討を行った結果、スクロースのような分子量の低い糖類やデキストリンのような多糖類を添加することにより、硬化を促進させることに成功した。
【0010】
したがって、本発明にかかる組成物は、さらに糖類(c)を含んでもよい。その際、前記(b)と(c)の重量比は、1.0:0.1~5.0であることが好ましい。
特に、植物由来物が粉末状ではなく小片状の場合は、ポリカルボン酸のみでは硬化しにくいことや、硬化により得られた成形体がもろくなることがあるが、糖類を添加した組成物は、植物由来物が小片状の場合も硬化させやすく、強固な成形体を得ることができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、通常のパーティクルボードの製造方法と同じ工程にて、十分な強度を有する成形体を製造することができる。すなわち、パーティクルボードは通常、木材小片に接着剤を噴霧し熱圧成形することにより製造されるが、この接着剤の代わりに、ポリカルボン酸(および糖類)を含む溶液を用い、この溶液を木材小片に噴霧した後成形し、加熱加圧することによりボードを製造することができる。
十分な強度を有するボードを製造するためには、糖類を併用することが好ましいが、植物由来物としてバガス(サトウキビの搾汁後の残渣)を用いる場合など、植物由来物中に、ホロセルロース成分(セルロースおよびヘミセルロース)以外にも糖類(c)がすでに存在する場合は、ポリカルボン酸のみを含む溶液で十分な強度を有するボードを製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、化石資源を使用しなくてよいため、環境へ負担をかけずプラスチック状の成形体や木質成形体を得ることができる。また、シックハウス症候群を引き起こす恐れのあるホルムアルデヒド系材料等を使用する必要がないため、人体への安全性が高い。また、簡単かつ安価に成形体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】アカシア樹皮粉末とクエン酸粉末の混合物(重量比2:1)の熱分析の結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、植物由来物とは、草木等の木部・樹皮・種子・葉などから得られるものを意味し、市場で入手可能な植物粉末(例えば樹皮粉末)であってもよく、また、リサイクル材等を粉砕して得られたチップであってもよい。また、一種類の植物に由来する物であってもよく、複数種の植物に由来する物の混合物であってもよい。好ましくは、樹木を粉末化または小片化したものを用いる。また、ろ紙などのように、一度植物原料から加工された製品であっても、植物由来物として用いることができるが、この場合、単独ではなく、樹木を粉末化または小片化したものと併せて用いることが好ましい。本発明における植物由来物は、粉末状(粒状を含む)であっても、小片状(繊維状等を含む)であってもよいが、大きすぎると、硬化させるのに、より長い時間、高温・高圧が必要となり、さらに、得られる硬化体の強度が不十分になる。そのため、植物由来物は、粉末状のポリカルボン酸と混和して加圧する場合は、最大長さが10mm以下、厚さ1mm以下とされていることが好ましい。好ましい一例として、小片は30メッシュの篩をパスしたもの、粉末は60メッシュの篩をパスしたものを挙げることができる。一方、液体状のポリカルボン酸(及び糖類)と混和して加圧する場合は、より大きなサイズの小片を硬化させることができる。例えば、最大長さ50mm以下、厚さ10mm以下に小片化された植物由来物であれば十分に硬化させることができる。

【0015】
前記ポリカルボン酸としては、常温で固体であるポリカルボン酸が使用できる。好ましいポリカルボン酸として、クエン酸、イタコン酸、リンゴ酸が挙げられる。
粉末状のポリカルボン酸を用いる場合、ポリカルボン酸粉末の粒径は、60メッシュの篩をパスしたものを使用することが好ましい。
糖類(c)を添加しない場合、組成物におけるポリカルボン酸の含有量は、約10重量%以上であることが好ましい。10重量%未満であると、硬化しにくくなる。また、硬化体を形成するのに余剰なポリカルボン酸は残存もしくは分解すると考えられるため、ポリカルボン酸の含有量は55重量%以下が好ましい。より好ましい組成物では、ポリカルボン酸の含有量は15重量%~50重量%である。ポリカルボン酸が粉末状の場合、ポリカルボン酸の含有量は20~40重量%が特に好ましい。
糖類(c)を添加する場合は、組成物におけるポリカルボン酸の含有量は、7重量%以上40重量%以下であることが好ましい。より好ましいポリカルボン酸の含有量は10重量%~30重量%である。

【0016】
本発明において、糖類(c)とは、単糖類、オリゴ糖類または多糖類を意味する。
単糖類としては、例えばフルクトース、リボース、アラビノース、ラムノース、キシルロース、デオキシリボース等が挙げられ、オリゴ糖としては、例えばマルトース、トレハロース、ツラノース等の二糖類や、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、スタキオース等が挙げられ、多糖類としては、例えばデンプン、アガロース、アルギン酸、グルコマンナン、イヌリン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、グリコーゲン等が挙げられる。また、セルロースはたいていの植物由来物に含まれる多糖類であるが、植物由来物中のセルロース含有量が低い場合には、さらに糖類としてセルロースを添加しても良い。
特に好ましい糖類として、ショ糖(スクロース)、キシロースおよびデキストリンが挙げられる。

【0017】
糖類(c)を添加しない場合は(a)・(b)の合計量が、糖類(c)を添加する場合は(a)・(b)・(c)の合計量がそれぞれ、組成物全量の70重量%以上を占めることが好ましく、80重量%以上を占めることがより好ましく、90重量%以上を占めることが特に好ましい。

【0018】
本発明にかかる組成物中の植物由来物とポリカルボン酸の重量比は0.7:1.0~9.5:1.0の範囲内にあることが好ましい。この範囲を外れると硬化しにくくなり、また硬化しても強度が小さくなる。より好ましい植物由来物とポリカルボン酸の重量比は1.0:1.0~8.0:1.0である。なお、ポリカルボン酸を粉末の状態で添加する場合は、植物由来物とポリカルボン酸の重量比は1.0:1.0~5.0:1.0の範囲がより好ましい。
糖類(c)を添加する場合、前記(b)と(c)の重量比は、1.0:0.1~1.0:5.0であることが好ましい。より好ましい(b)と(c)の重量比は、1.0:0.5~1.0:4.0である。
なお、糖類(c)を添加する場合、前記(b)と(c)の合計重量が、(a)の重量を超えないことが好ましい。

【0019】
前記組成物は、成型用組成物や木材用接着剤の原料として有用である。前記成型用組成物から成形体を製造するには、組成物を型に入れ、160℃~250℃に加熱し、5kgf/cm2~70kgf/cm2(約0.5MPa~7MPa)で加圧すればよい。また、前記組成物を使用して合板を製造するには、組成物を、合板用の単板の間に介在させ、160℃~250℃に加熱し、5kgf/cm2~30kgf/cm2(約0.5MPa~3MPa)で加圧すればよい。加熱温度は適宜調節可能であるが、180℃~220℃が好適である。圧力も適宜調節可能であるが、前記組成物を成型用組成物として使用し、成形体を製造する場合は、特に30~50kgf/cm2(約3MPa~5MPa)が好適であり、前記組成物を接着剤として使用し、合板を製造する場合は、特に10~20kgf/cm2(約1MPa~2MPa)が好適である。

【0020】
本発明によりパーティクルボードのような成形体を製造する場合、小片化された植物由来物(a)に、(b)を含む溶液を添加して加熱・加圧するか、または(b)と(c)を一緒にまたは別々に含む溶液を添加して加熱・加圧すればよいが、この際、(c)を添加しない場合は、前記(a)と、前記溶液中に存在する(b)の重量比が、2.0:1.0~15.0:1.0(より好ましくは4.0:1.0~8.0:1.0)となるように前記溶液を添加することが好ましい。また、(c)を添加する場合、前記(a)と、前記溶液中に存在する(b)の重量比は、4.0:1.0~20.0:1.0(より好ましくは6.0:1.0~14.0:1.0)となるように前記溶液を添加することが好ましい。
また、(c)を添加する場合、前記(b)と(c)の重量比は1.0:0.1~1.0:5.0(より好ましくは1.0:0.5~1.0:4.0)とすることが好ましい。さらに、(c)を添加する場合、前記(b)と(c)の合計重量が、(a)の重量の2分の1を超えないことが好ましい。
前記溶液は、(b)または(c)のみを含む場合も、(b)と(c)を一緒に含む場合も、濃度が高い方が好ましく、飽和濃度の90重量%以上であることが好ましい。
(c)を添加する場合、(b)と(c)の均一な混合、工程の簡略化の点から、(b)と(c)の両方を含む溶液を使用することがより好ましい。

【0021】
一般に、小片状の植物由来物は、粉末状の植物由来物と比べて硬化しにくいため、(b)を単独で用いるより、(b)と(c)を併用するほうが好ましい。
しかし、植物由来物として、バガスのように、スクロース等をあらかじめ含む植物を用いる場合は、(b)単独でも、物性に優れた成形体を得ることができる。
小片化された植物由来物(a)に、ポリカルボン酸(b)および/または糖類(c)を溶液の状態で添加する適切な方法として、植物由来物に前記溶液を噴霧する方法が挙げられる。

【0022】
なお、本発明によりパーティクルボードのような成形体を製造する場合、一般に熱板(熱盤)を用いた上下プレスにより加熱・加圧を行う。通常、パーティクルボードの厚みはディスタンスバー(上下の熱板の間隔を規制する厚さ規制治具)を用いて制御するため、プレス機の設定圧力と植物由来物に実際にかかる圧力は一致しない。そのため、設定圧力は、植物由来物が十分に圧縮される圧力以上とすればよい。具体的には、従来法によるパーティクルボードの製造と同程度の圧力(4MPa~7MPa[約40~70kgf/cm2]程度)でよく、従来法と同様、成形するボードの目標密度等によって適宜調節すればよい。また、熱板プレス時の温度は上記と同様160℃~250℃が適切であり、180℃~220℃がより好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
植物由来物として市販のアカシア樹皮粉末、ポリカルボン酸としてクエン酸粉末(販売元:ナカライテスク)を使用して、粉末状の組成物を調製した。上記アカシア樹皮粉末(製品名:コシタイトP 販売元:株式会社コシイウッドソリューションズ)の組成は、タンニン30.0重量%、リグニン44.7重量%、ホロセルロース20.3重量%、灰分5.0重量%であり、粉末の粒径は100メッシュパスであった。
クエン酸粉末を、アカシア樹皮粉末と同程度の粒径になるまで乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、表1に示す重量を秤量し、均一に混合して組成物を調製した。
【実施例1】
【0024】
調製した組成物を、円形の金型(内径7cm/高さ3cm)に充填し、ホットプレスを用いて表に示す温度・圧力で加熱・加圧して成形体を作製した。結果を表1に示す。クエン酸粉末に対し、アカシア樹皮粉末の量が多すぎると、硬化が不十分になる傾向が見られた。クエン酸含有率が33.3wt%や50wt%の試料が最も硬化しやすく、黒色のプラスチック状の成形体が得られた。
【実施例1】
【0025】
【表1】
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【実施例2】
【0026】
実施例1と同様の方法にて、アカシア樹皮粉末:クエン酸粉末=2:1の粉末状組成物(試料6~8)を調製し、加熱温度を変化させて成形体を作成した。結果を表2に示す。アカシア樹皮粉末/クエン酸粉末を10分間加熱加圧して得られた成形体は、140℃では硬化に至らなかったが160℃では硬化した。但し、得られた硬化物は熱水中に放置すると形状の維持が困難であった。200℃の加熱温度では組成物は完全に硬化し、熱水中・エタノール中に放置してもほぼ形状を維持した。このことから、加熱温度は少なくとも160℃以上必要であり、好ましくは200℃が良い事が分かる。試料8から得られた成形体は、黒色で厚みが約3mm、重量が約13gであり、密度約1.1g/cm3で丈夫であった。
【実施例2】
【0027】
【表2】
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【実施例3】
【0028】
実施例1と同様の方法にて、アカシア樹皮粉末:イタコン酸粉末=2:1の粉末状組成物を調製し、加熱温度を変更して、成形体を作成した。結果を表3に示す。加熱温度が140℃では10分間加熱加圧しても硬化が不完全であった。加熱温度を160℃とすると硬化した。200℃がより好適であった。
【実施例3】
【0029】
【表3】
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【実施例4】
【0030】
示差走査熱量計(TAインスツルメント社製DSC2910)を用いて、アカシア樹皮粉末とクエン酸粉末の混合物(重量比2:1)の熱分析を行った。得られたチャートを図1に示す。チャートに示されるように、150℃付近と198℃付近に強い吸熱ピークが見られる。150℃付近のピークは主にクエン酸の融解に起因するピークと考えられる。一方、198℃付近のピークは混合物の反応によるピークと考えられる。したがって、アカシア樹皮粉末とクエン酸粉末の混合物の加熱温度は、198℃付近が好適であることが分かる。
【実施例5】
【0031】
アカシア樹皮粉末の代わりにファイバーボードの原料に使用される木材ファイバー(繊維状、長さ1mm以下、厚さ[最大直径]0.2mm以下)、またはパーティクルボード用木材パーティクル(小片状、最大長さ約10mm 厚さ約0.1~0.8mm程度)を使用し、実施例1と同様の手順で成形体を作製した。結果を表4に示す。この実験から、木材ファイバーや木材パーティクルでもアカシア樹皮粉末と同様に成型できることが分かる。
【実施例5】
【0032】
【表4】
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【実施例6】
【0033】
実施例1で製造した成形体(試料番号3)を使用して、大腸菌に対する抗菌性を試験した。試験方法は、JIS Z-2801に準じた。その結果、コントロールに用いたフィルム上の菌数は、1.6×105であったのに対し、本発明にかかる成形体上の菌数は0であった。これにより、実施例1の組成物からなる成形体は、高い抗菌性を有することが実証された。この抗菌性は、アカシア樹皮粉末中のタンニンに由来すると考えられる。
【実施例7】
【0034】
本発明にかかる組成物を用いて木材同士の接着を行った。ラワン単板(30×30×0.16cm)を使用し、アカシア樹皮粉末とクエン酸粉末の混合物(重量比2:1)を接着剤とする3プライ合板を作成した。接着剤となる混合物は、24メッシュの篩を用いて均一に単板に散布した。一接着層当たりの塗布量は70g/m2および100g/m2の2種類で行った。熱圧条件は、圧締圧力10kgf/cm2、圧締温度200℃、圧締時間5分とした。JISK5851に準拠した常態引張せん断試験を行った結果、塗布量70g/m2では0.49MPa、塗布量100g/m2では0.63MPaの値となり、混合物の接着性が認められた。
【実施例8】
【0035】
アカシア樹皮粉末(100メッシュパス)とクエン酸粉末(60メッシュパス)について、混合比率が異なる複数の組成物を調製し、ホットプレス(200℃、4MPa[40.8kgf/cm2]、10分)して成形体を作製した。この成形体について曲げ試験および耐水試験を行った。
曲げ試験(常態曲げ試験)用の試験片としては、80mm×10mmの長方形状成形体(厚み2~4mm)を用い、スパン50mm、クロスヘッドスピード5mm/minにて3点曲げ試験を行い、曲げ強度(MOR)および曲げヤング率(MOE)を測定した。試験体数は1条件につき3体とした。
耐水試験用の試験片としては、直径70mmの円状成形体(厚み2~4mm)を用い、100℃の水に4時間浸漬した後、60℃で20時間乾燥し、さらに100℃の水に4時間浸漬した後、真空乾燥し、重量・厚みを測定し、その変化率を求めた。試験体数は1条件につき3体とした。
結果を表5および表6に示す。
【実施例8】
【0036】
【表5】
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【表6】
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【実施例8】
【0037】
表5に示すように、クエン酸含有率20重量%以上で大幅な強度の向上が見られた。得られた成形体はWPC(wood-plastic combination)状であり、クエン酸含有量20重量%以上の成形体では、WPCのJIS規格(JIS A 5741:木材・プラスチック再生複合材)で定める規格(曲げ強度[MOR]:20MPa)を上回る強度が得られた。また、表6に示すように、耐水試験においても、クエン酸含有率20重量%で、優れた耐水性が認められた。
【実施例9】
【0038】
アカシア木粉(60メッシュパス)とクエン酸粉末(60メッシュパス)について、混合比率が異なる複数の組成物を調製し、ホットプレス(200℃、4MPa、10分)して成形体とし、この成形体について実施例8と同じ曲げ試験を行った。結果を表7に示す。表7に示すように、この場合も、クエン酸含有率20重量%以上で曲げ強度は20MPaを上回った。
さらに、アカシア木粉:クエン酸粉末=4:1(クエン酸含有率20重量%)の組成物について、加熱加圧時の温度(成形温度)を140~200℃に変更して実験を行った。結果を表8に示す。成形温度180℃以上で大幅な強度の向上が見られ、200℃で最も良い結果が得られた。
【実施例9】
【0039】
【表7】
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【表8】
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【実施例9】
【0040】
実施例およびその他の実験を通じた観察から、植物由来物とポリカルボン酸の重量比を0.7~9.5:1.0の範囲内とした組成物であれば、条件(加熱加圧時間・圧力・温度等)を調節することにより、硬化する可能性があることが分かった。より硬化させやすい植物由来物とポリカルボン酸の重量比は1.0~8.0:1.0の範囲である。
また、粉末状のポリカルボン酸を用いて、曲げ強度や耐水性に優れた成形体を製造するためには、植物由来物とポリカルボン酸粉末の重量比を1.0~5.0:1.0とすることが特に好ましく、1.5~4.0:1.0とすることがより好ましかった。
【実施例10】
【0041】
本発明にかかる組成物が硬化するメカニズムを検討した。アカシア(A.mangiumu)の樹皮には豊富にタンニンが含まれている。タンニンは反応性に富み、接着剤等にも利用されている。したがって、加熱加圧によって、タンニンとポリカルボン酸の間で何らかの化学反応が起こり硬化する可能性が考えられる。タンニンの影響を検討するために、タンニンを分離・抽出し、抽出タンニンと残渣について、クエン酸との反応を調べた。
【実施例10】
【0042】
まず、アカシア樹皮粉末100gを70%アセトン1000mlに添加し、48時間撹拌して、アカシア樹皮中のタンニンをアセトンに溶出した。その後、ろ過を行い、ろ液(タンニン抽出液)を減圧濃縮し、凍結乾燥してタンニンの粉末を得た。タンニンの収率は38.2%であった。他方、ろ紙上の残渣は洗浄し、乾燥した。
このようにして得られた抽出タンニン10gまたは抽出残渣10gをクエン酸5gと混合し、円形の金型(内径7cm/高さ3cm)に充填し、ホットプレス(200℃、4MPa、10分)して成形体の作製を試みた。
【実施例10】
【0043】
その結果、抽出タンニンとクエン酸粉末の混合物を加熱加圧しても、流動が著しく成形体が得られなかった。他方、抽出残渣粉末とクエン酸粉末の混合物を加熱加圧すると、アカシア樹皮粉末とクエン酸粉末の混合物を用いた場合と同様、プラスチック状の成形体が得られた。
さらに、抽出残渣粉末とクエン酸粉末(重量比2:1)からなる組成物について、実施例8と同じ方法で試験片を作製し、同じ方法で曲げ試験・耐水試験を行ったところ、残渣を用いた成形体はアカシア樹皮粉末を用いた成形体(アカシア樹皮:クエン酸=2:1)と同等程度の強度を示した。
この実施例の結果から、クエン酸はタンニン以外の成分と反応していることが分かった。
【実施例10】
【0044】
さらに、フーリエ変換赤外分光分析計(FT-IR)を用いてKBr法にて、抽出残渣のみ、抽出残渣とクエン酸から作製した成形体について、スペクトルを測定した。なお、成形体については、未反応の原料ピークを除くため、煮沸処理後に測定を行った。スペクトルを比較したところ、カルボニル基の増大と水酸基の減少が確認された。この結果から、エステルの生成が考えられ、クエン酸がアカシア樹皮中の糖成分とエステル化反応することにより、硬化が生じる可能性が考えられる。
【実施例11】
【0045】
実施例10の結果から、硬化を促進するための添加物として糖類に着目し、実験を行った。
植物由来物としてろ紙粉末、ポリカルボン酸としてクエン酸粉末を用い、これに下記表に示す単糖、二糖もしくは多糖を添加して成形体の作製を試みた。
まず、ろ紙粉末(100~200メッシュ)10g、クエン酸粉末(60メッシュパス)2.5g、糖粉末5gを混合して組成物を調製した。これを円形の金型(内径7cm・厚さ3cm)に充填し、ホットプレス(200℃、4MPa、10分)を行った。
その結果、いずれの場合もプラスチック状の成形体を作製することができた。次に、成形体の耐水性を調べるために、沸騰させた水中に4時間浸漬した。結果を表9に示す。表9に示すように、キシロース、スクロース、デキストリンを添加した成形体が特に優れた特性を示した。なお、ろ紙粉末とクエン酸粉末のみ(重量比4:1)から成形体を作製した場合は、耐水性が極めて低い結果となった。この実施例の結果から、硬化を促進する添加物として、糖類が有効であること、特にスクロース、キシロース、デキストリンが有効であることが分かる。
【実施例11】
【0046】
【表9】
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【実施例12】
【0047】
これまでの実施例では金型を用いてホットプレスを行ってきたが、本実施例では、金型を用いず、熱板プレスによる成形体の作製を試みた。現在、パーティクルボードを製造するにあたっては、合成樹脂接着剤を噴霧した木材の小片を成形(フォーミング)し、プレス台に置いて上下プレスを行うことにより、パーティクルボードを製造している。合成樹脂接着剤の代わりにポリカルボン酸を使用してパーティクルボードを製造することができれば、ホルムアルデヒド等の有害物質を含まないパーティクルボードの製造ができるため、非常に有用と考えられる。また、ポリカルボン酸を溶媒に溶解して噴霧することにより、木材パーティクルにポリカルボン酸を均一に分配することができ、且つ、通常のパーティクルボードの製造と全く同じ設備で行うことができる。
【実施例12】
【0048】
まず、溶液を乾燥木材パーティクル(原料はリサイクル材:厚さ0.3~0.8mm 幅1~30mm 長さ5~30mm程度のパーティクルを用いた)に噴霧し、30×30cmの成形ボックスでマットを成形し、その後200℃の温度で10分間熱板プレスを行った。なお、圧締には0.9cmのディスタンスバーを用いて厚さを制御し、プレス機の設定圧力は5MPa[51kgf/cm2]とした。目標ボード寸法は30cm×30cm×0.9cm、目標密度は0.8g/cm3である。
溶液として、クエン酸を飽和濃度近くまで溶解した溶液(59wt%)を全乾パーティクル重量に対し固形分で20%添加されるように噴霧した(試験1)。すなわち、重量比は、木材パーティクル:クエン酸=5:1である。得られたパーティクルボードは曲げ強度14.67MPa, 曲げヤング率4.28GPaであり、24時間吸水厚さ膨張率は30.58%であり、比較的低い物性のボードであった。
【実施例12】
【0049】
次に、糖類を添加した溶液を試した。溶液として、クエン酸とスクロース(重量比1:1)を水に溶解した混合溶液(濃度59wt%)を使用した。この溶液を乾燥木材パーティクルに対し固形分ベースで20%噴霧した(試験2)。すなわち、重量比は、木材パーティクル:クエン酸:スクロース=10:1:1である。その後、上記の条件でホットプレスしたところ、ボードを製造することができた。このボードについて、JISA5908に準拠して、曲げ強度、曲げヤング率、24時間吸水厚さ膨潤率を測定した。
曲げ強度は19.9MPa、曲げヤング率は4.26GPa、24時間吸水厚さ膨潤率は24.78%となった。この結果から、糖類の添加が物性の向上に寄与することが確認できた。
【実施例12】
【0050】
結果を表10にまとめる。
【表10】
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【実施例12】
【0051】
実施例およびその他の実験を通じた観察から、糖類を添加する場合、ポリカルボン酸と糖類の重量比は、1.0:0.1~5.0程度が好ましく、特に1.0:0.5~4.0(より好ましくは1.0:0.5~3.0)の範囲が好適であった。
また、ポリカルボン酸を溶液として添加する場合、糖類を添加しない場合は、植物由来物とポリカルボン酸の重量比を2.0~15.0:1.0の範囲内とすれば、条件(加熱加圧時間・圧力・温度等)を調節することにより、硬化する可能性があることが分かった。特に硬化させやすい植物由来物とポリカルボン酸の重量比は2.0~10.0:1.0(より好ましくは4.0~8.0:1.0)である。糖類を添加する場合は、植物由来物とポリカルボン酸の重量比を4.0~20.0:1.0の範囲内とすれば、条件(加熱加圧時間・圧力・温度等)を調節することにより、硬化する可能性があることが分かった。特に硬化させやすい植物由来物とポリカルボン酸の重量比は6.0~14.0:1.0(より好ましくは8.0~12.0:1.0)である。
【実施例12】
【0052】
なお、植物由来物として木材パーティクルを使用した場合、ポリカルボン酸のみでは十分な物性を有するボードを製造できなかったが、バガス(サトウキビなどの搾りかす)のように、最初から単糖やオリゴ糖を含むものを使用すれば、ポリカルボン酸のみや、より少量の糖類の添加で、優れた物性を有するボードが製造可能と考えられる。バガスは農産廃棄物であるため、従来からその有効利用法が模索されている。バガスを使用してホットプレス法でボードを製造することも試みられているが、バガスだけでは十分な物性が得られず、接着剤を用いても接着不良を起こすことが報告されている。これは、接着剤(ホルムアルデヒド系)がバガスに残存するスクロースによって、硬化阻害を起こすためと考えられているが、本発明では、逆に、残存する糖類が硬化を促進すると考えられるため、バガスのように、ホットプレス法で硬化させることは困難とされていた原料であっても有効活用できる。また、ケナフのように、木材などと比べて糖成分を多く含む草も、硬化させるのに好適と考えられる。したがって、本発明によれば、バガスやケナフといった農産廃棄物を木質系ボードとしてリサイクルでき、しかもホルムアルデヒド系の接着剤を用いなくてよいため、安全性が高く、農産廃棄物の有効利用に資すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、入手が容易で安価な材料を用いて、化石製品を使用せず非常に簡単な工程でプラスチック様の成形体や木質成形体を得ることができる。これらは廃棄物も生分解性があると考えられるため、環境に優しいバイオマス材料として活用できる。また、アカシア樹皮粉末を用いた場合には抗菌性があるため、食品用トレー等に好適と考えられる。
図面
【図1】
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