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明細書 :Hsp90を標的にした新規抗がんキメラペプチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5700409号 (P5700409)
登録日 平成27年2月27日(2015.2.27)
発行日 平成27年4月15日(2015.4.15)
発明の名称または考案の名称 Hsp90を標的にした新規抗がんキメラペプチド
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 19/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 101
A61K 37/02
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 35/02
請求項の数または発明の数 13
全頁数 77
出願番号 特願2010-537823 (P2010-537823)
出願日 平成21年11月13日(2009.11.13)
国際出願番号 PCT/JP2009/069405
国際公開番号 WO2010/055929
国際公開日 平成22年5月20日(2010.5.20)
優先権出願番号 2008292849
優先日 平成20年11月14日(2008.11.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年10月17日(2012.10.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】川上 浩司
【氏名】河野 雅之
【氏名】堀部 智久
個別代理人の代理人 【識別番号】100078282、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 秀策
【識別番号】100113413、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 夏樹
【識別番号】100118371、【弁理士】、【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
審査官 【審査官】渡邉 潤也
参考文献・文献 Cell,2000,101(2),p.199-210
調査した分野 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
CAplus/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Thomson Innovation
特許請求の範囲 【請求項1】
Hsp90 TPR(tetratricopeptide repeat)ドメイン結合ペプチドと、細胞透過性ペプチドとを有するキメラペプチドであって、
該Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドは、
アミノ酸配列X101112(配列番号1)を有するものであって、ここで
は、K、RまたはAであり;
は、AまたはGであり;
は、YまたはLであり;
は、AまたはGであり;
は、R、AまたはKであり;
は、I、AまたはRであり;
は、GまたはAであり;
は、NまたはQであり;
は、SまたはYであり;
10は、YまたはSであり;
11は、FまたはYであり;
12は、KまたはRであるか、あるいは
RQIAKAYARIGNSYFKEEKYK(配列番号43)であり、
細胞透過性ペプチドは、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5)またはその改変配列、あるいは、TATであるYGRKKRRQRRR(配列番号6)、またはRRRRRRRRRRR(配列番号7)であって、該改変配列は、アミノ酸配列Y10111213141516(配列番号8)を有するものであって、ここで
は、RまたはKであり;
は、QまたはNであり;
は、IまたはLであり;
は、KまたはRであり;
は、IまたはLであり;
は、WまたはYであり;
は、FまたはYであり;
は、QまたはNであり;
は、NまたはQであり;
10は、RまたはKであり;
11は、RまたはKであり;
12は、MまたはCであり;
13は、KまたはRであり;
14は、WまたはYであり;
15は、KまたはRであり;
16は、KまたはRである、
配列を有するものであり、
ここで、アルファベットは、アミノ酸の1文字表示であり、
抗がん活性を有する、
キメラペプチド。
【請求項2】
前記Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドにおいて、
は、Gであり;
は、Gであり;
は、Aであり;
は、Qであり;
は、Yであり;
10は、Sであり;
11は、Yであり;または
12は、Rである、
ものを含む、
請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項3】
前記Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドは、KAYAR(配列番号3)もしくはKAYARIGNSYFK(配列番号4)を含むか、またはRQIAKAYARIGNSYFKEEKYK(配列番号43)である、請求項1に記載のキメラペプチド
【請求項4】
前記細胞透過性ペプチドは、アンテナペディアホメオボックス配列(Antp)であるRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5)、TATであるYGRKKRRQRRR(配列番号6)、またはRRRRRRRRRRR(配列番号7)である、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項5】
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号9)、
RQIKIWFQNRRMKWKKRAYARIGNSYFK(配列番号10)、
RQIKIWFQNRRMKWKKAAYARIGNSYFK(配列番号11)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKGYARIGNSYFK(配列番号12)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKALARIGNSYFK(配列番号13)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYGRIGNSYFK(配列番号14)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYAKIGNSYFK(配列番号15)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARRGNSYFK(配列番号16)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIANSYFK(配列番号17)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGQSYFK(配列番号18)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNYYFK(配列番号19)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSSFK(配列番号20)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYYK(配列番号21)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFR(配列番号22)、
KQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号23)、
RNIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号24)、
RQLKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号25)、
RQIRIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号26)、
RQIKLWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号27)、
RQIKIYFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号28)、
RQIKIWYQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号29)、
RQIKIWFNNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号30)、
RQIKIWFQQRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号31)、
RQIKIWFQNKRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号32)、
RQIKIWFQNRKMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号33)、
RQIKIWFQNRRCKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号34)、
RQIKIWFQNRRMRWKKKAYARIGNSYFK(配列番号35)、
RQIKIWFQNRRMKYKKKAYARIGNSYFK(配列番号36)、
RQIKIWFQNRRMKWRKKAYARIGNSYFK(配列番号37)、
RQIKIWFQNRRMKWKRKAYARIGNSYFK(配列番号38)、
RQIKIWFQNRRMKWKKRQIAKAYARIGNSYFK(配列番号39)、
RRRRRRRRRRRKAYARIGNSYFK(配列番号40)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYAAIGNSYFK(配列番号51)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARAGNSYFK(配列番号52)、または
RQIKIWFQNRRMKWKKKGYGRIGNYYYK(配列番号53)、
の配列を有するものである、請求項1に記載のキメラペプチド
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のキメラペプチドをコードする核酸。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載のキメラペプチドをコードする核酸を含むベクター。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載のキメラペプチドをコードする核酸を含む細胞。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載のキメラペプチドを含む医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載のキメラペプチドを含む抗がん剤。
【請求項11】
前記がんは、固形がんおよび血液がんからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項10に記載の抗がん剤。
【請求項12】
前記がんは、固形がんである、請求項10に記載の抗がん剤。
【請求項13】
前記がんは、血液がんである、請求項10に記載の抗がん剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Hsp90を標的にした薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
植物または細菌の毒素に結合させた、がん細胞表面上に過剰発現されるタンパク質に対する免疫毒素、モノクローナル抗体またはリガンドは、抗がん剤としてのその使用可能性について、広く研究されている(非特許文献1)。多数の免疫毒素が、前臨床試験および臨床試験において試験されており、インターロイキン-2-ジフテリア毒素(IL2-DT;Ontak(登録商標)、エーザイ)が、慢性T細胞リンパ球性白血病(CLL)の処置について米国食品医薬品局(FDA)に認可されている(非特許文献2;非特許文献3)。さらに、インターロイキン-4-Pseudomonas外毒素[IL4(38-37)-PE38KDEL]およびインターロイキン-13-Pseudomonas外毒素(IL13-PE38QQR)を含めたPseudomonas外毒素ベースの免疫毒素が、臨床試験で試験中である(非特許文献4;非特許文献5)。ジフテリア毒素およびPseudomonas外毒素は共に、リソソーム中に取り込まれ、活性化され、そして、サイトゾルへとトランスロケーションした後、リボソーム複合体中の延長因子2を触媒的に不活性化することによって作用する。この作用機構は、免疫毒素が、休止状態の非複製腫瘍細胞を効率的に破壊することを可能にする。
【0003】
細菌毒素ベースの免疫毒素を利用してがんに向けてターゲティングするアプローチは魅力的ではあるが、細菌毒素に起因する肝毒性と、毒素タンパク質により引き起こされる免疫原性とに、その制約が見出される(非特許文献2;非特許文献4;非特許文献6)。さらに、免疫毒素の分子サイズは、一般に、化合物またはフラグメント抗体薬物に比べて大きく、薬物が、ヒトの体内の腫瘍塊へと効率的に浸透することを妨げ得る。この問題を克服するために、進化したアプローチを有する新世代の免疫毒素が、決定的に必要とされる。
【0004】
熱ショックタンパク質(Heat shock protein)の一つであるHsp90タンパク質は、あらゆる細胞に広く存在し、細胞の機能調節に欠くことのできない重要なタンパク質の一つである。近年、がん細胞で多く発現する抗アポトーシス(anti-apotosis)タンパク質(細胞がアポトーシスをおこすのを妨げる)の一つであるサービビン(survivin)がこのHsp90によって正しく折りたたまれて、機能することからHsp90の活性阻害によって抗がん作用を示す化合物、ゲルダナマイシン(geldanamycin)の研究が広く発表されている。しかしながら、化合物によるタンパク質の機能阻害は、化合物が細胞内で安定であること、および化合物が正常細胞へ与えうる機能障害などから副作用を避けることは非常に難しい。
【0005】
Hsp90は正常細胞にも多く含まれていることから、Hsp90阻害薬は正常細胞にも作用する可能性があり、副作用が問題となりうる。ゲルダナマイシンの毒性は許容されなかったため、ゲルダナマイシンと同様にHsp90阻害効果があり、腎、肝毒性を軽減した誘導体に17-アリルアミノゲルダナマイシン(17-allylaminogeldanamycin;17-AAG)(タネスピマイシン(Tanespimycin)とも呼ばれる)である。
【0006】
Hsp90に関しては、シェファーディン(shepherdin)という抗がん剤候補が提唱されている(非特許文献7、非特許文献8)。しかし、このシェファーディンは、サービビンとHsp90との間の結合を直接阻害するものであり、ATPポケットとの接触により、結合すべきタンパク質等が不安定化され、本来の機能を果たさなくなるというものであるが、in vivoにおける効果は、効果的であるといえない。また、in vitroの結果を併せてみてもまだ改善の余地があるという問題があった。
【0007】
したがって、当該分野において、がん細胞に選択性の高く、かつ、in vitroでも効果的な新たな構造の抗がん剤を設計することが望まれている。
【0008】
また、当該分野において、Hspをターゲットにした新しい薬剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】Pastan I.Targeted therapy of cancer with recombinant immunotoxins.Biochim Biophys Acta 1997;1333:C1-6
【非特許文献2】Kawakami K,Nakajima O,Morishita R,Nagai R.Targeted anticancer immunotoxins and cytotoxic agents with direct killing moieties.The Sci World J 2006;6:781-90
【非特許文献3】Kreitman RJ.Immunotoxins for targeted cancer therapy.AAPS J 2006;8:E532-51
【非特許文献4】:Rand RW,Kreitman RJ,Patronas N,Varricchio F,Pastan I,Puri RK.Intratumoral administration of recombinant circularly permuted interleukin-4-Pseudomonas exotoxin in patients with high-grade glioma.Clin Cancer Res 2000;6:2157-65
【非特許文献5】:Kunwar S,Prados MD,Chang SM,et al.Cintredekin Besudotox Intraparenchymal Study Group.Direct intracerebral delivery of cintredekin besudotox (IL13-PE38QQR) in recurrent malignant glioma:a report by the Cintredekin Besudotox Intraparenchymal Study Group.J Clin Oncol 2007;25:837-44
【非特許文献6】Frankel AE,Kreitman RJ,Sausville EA.Targeted toxins.Clin Cancer Res 2000;6:326-34
【非特許文献7】Plescia J,Salz W,Xia F,et al.Rational design of shepherdin,a novel anticancer agent.Cancer Cell 2005;7:457-68.
【非特許文献8】Gyurkocza B,Plescia J,Raskett CM,et al.Antileukemic activity of shepherdin and molecular diversity of Hsp90 inhibitors.J Natl Cancer Inst 2006;98:1068-77.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、細胞内安定性や正常細胞への機能障害などから副作用を避けることができる抗がん剤またはDDSとして使用可能な物質を提供することを課題とする。特に、正常細胞との選択性を持ち、しかもin vivoで低用量で抗がん活性を有し、副作用が少なく、効率、効果の高い、新たな構造の抗がん剤を設計することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、Hsp90は単独で機能を担うのではなく、パートナータンパク質の一つであるHopが結合することで、サービビンなどのタンパク質の折りたたみを補助するシャペロン機能を発揮することができることを見出した。そこで、本発明では、HopがHsp90に結合するのに重要なTPR(テトラトリコペプチド反復;tetratricopeptide repeat)ドメイン内のアミノ酸に着目し、このアミノ酸と従来までに報告されている細胞透過性ペプチドAntpを組み合わせ、細胞内にこのキメラペプチドを導入することでがん細胞のみ特異的に殺傷能力を有する新規ペプチドを発明、その効用を実際に実験によって証明した。また、本発明は、Hsp90に関する従来技術の知見では予想できなかったがん細胞に対する選択性を持ちつつ、in vivo、特に全身投与でも数(1~5)mg/kg単位という定量で抗がん効果が見られるようなペプチド抗がん剤を作製しうることが判明した。
【0012】
また、TPRペプチドのみでは、細胞殺傷効果がまったく観察されずTPRペプチド自体が細胞内に入る必要性があることは、実験で確かめられていることから、本発明は、薬物送達系(DDS)として、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドを含む、目的物質のがん細胞への送達剤を提供する。このようなDDSの概念は、たとえば、トランスフェクション試薬、たとえばリポソーム化したもの全体でDDSは、実験としてはトランスフェクション試薬(リポソーム化して導入)を用いて、TPRペプチドとスクランブルペプチド(「scramble(ペプチド)」とも表記)を同濃度細胞に導入して細胞殺傷効果を観察することによって確認される。
【0013】
したがって、本発明は、以下を提供する。
【0014】
1つの局面において、本発明は、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドを含む、目的物質のがん細胞への送達剤および関連する薬物送達技術(DDS)を提供する。
【0015】
1つの実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドと前記目的物質とは、互いに結合してまたは結合しないで含まれる。
【0016】
1つの実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドと前記目的物質とは、互いに結合した融合物質である。
【0017】
1つの好ましい実施形態において、本発明において使用される上記融合物質はペプチドである。
【0018】
1つの実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドと前記目的物質とは、互いに結合しないで分散して含まれる。
【0019】
1つの実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドは、ビヒクル上に含まれる。
【0020】
1つの実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドは、ビヒクル上に含まれ、前記目的物質は、ビヒクル内に含まれる。
【0021】
1つの好ましい実施形態において、本発明において使用されるビヒクルは、リポソームである。
【0022】
別の局面において、本発明は、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドおよび目的物質とを含む、がん細胞の調節のための医薬に関する。この医薬は1つの実施形態では、組成物である。
【0023】
1つの実施形態において、本発明において使用される目的物質は、抗がん剤である。
【0024】
1つの実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドは、ビヒクル上に存在するものである。
【0025】
1つの実施形態において、本発明において使用されるビヒクルは、リポソームである。
【0026】
また別の局面において、本発明は、標的結合ペプチドと細胞殺傷性の溶解性ペプチド成分とを含むペプチド毒素を提供する。
【0027】
さらに別の局面において、本発明は、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドと、細胞透過性ペプチドとを有するキメラペプチドを提供する。
【0028】
1つの実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドは、アミノ酸配列KAYARIGNSYFK(配列番号4;ここで、アルファベットは、アミノ酸の1文字表示である。)またはその改変配列を有するものである。
【0029】
1つの好ましい実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドは、
アミノ酸配列X101112(配列番号1)を有するものであって、ここで
は、Kまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Aまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Yまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Aまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Rまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Gまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Nまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Sまたはそれに類似するアミノ酸であり;
10は、Yまたはそれに類似するアミノ酸であり;
11は、Fまたはそれに類似するアミノ酸であり;
12は、Kまたはそれに類似するアミノ酸であるか、あるいは
TPRペプチドを延長させたRQIAKAYARIGNSYFKEEKYK(配列番号43)であり、
ここで、アミノ酸表記は1文字表記によるものである。
【0030】
1つの実施形態では、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドは、
アミノ酸配列X101112(配列番号1)を有するものであって、ここで
は、K、RまたはAであり(好ましくは、Kであり);
は、AまたはGであり;
は、YまたはLであり(好ましくは、Yであり);
は、AまたはGであり;
は、R、AまたはKであり(好ましくは、Rであり);
は、I、AまたはRであり(好ましくは、Rであり);
は、GまたはAであり;
は、NまたはQであり;
は、SまたはYであり;
10は、YまたはSであり;
11は、FまたはYであり;および/または
12は、KまたはRであるか、あるいは
TPRペプチドを延長させたRQIAKAYARIGNSYFKEEKYK(配列番号43)である。
【0031】
1つの実施形態では、本発明は、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドにおいて、
は、Gであり;
は、Gであり;
は、Aであり;
は、Qであり;
は、Yであり;
10は、Sであり;
11は、Yであり;および/または
12は、Rである、ものを含む。
【0032】
1つの実施形態では、本発明は、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドにおいて、
は、Gであり;
は、Yであり;
11は、Yである、
ものを含む。
【0033】
1つの実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドは、アミノ酸配列KAYAR(配列番号3)を有するものである。
【0034】
1つの実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TRPドメイン結合ペプチドは、アミノ酸配列KAYARX(配列番号2)を有するものであって、ここで、X、X、XおよびXは独立して任意のアミノ酸であり、Zはヘリックスを形成、維持するのに重要なアミノ酸である。
【0035】
好ましい実施形態では、このZは、(Y/H)(F/E/M/L/S)(K/A/L/Q/S)(すなわち、ZはYまたはHであり、ZはF、E、M、LまたはSであり、ZはK、A、L、QまたはS)である。
【0036】
1つの実施形態において、本発明において使用されるHsp90 TPRドメイン結合ペプチドは、KAYAR(配列番号3)またはKAYARIGNSYFK(配列番号4)である。
【0037】
1つの実施形態において、本発明において使用される細胞透過性ペプチドは、アンテナペディアホメオボックス配列(Antp)であるRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5)、TATであるYGRKKRRQRRR(配列番号6)、またはRRRRRRRRRRR(配列番号7)あるいはそれらの改変配列である。
【0038】
1つの実施形態において、本発明において使用される細胞殺傷性ペプチドは、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5)またはその改変配列であって、該改変配列は、アミノ酸配列Y10111213141516(配列番号8)を有するものであって、ここで
は、Rまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Qまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Kまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Qまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Fまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Qまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Nまたはそれに類似するアミノ酸であり;
10は、Rまたはそれに類似するアミノ酸であり;
11は、Rまたはそれに類似するアミノ酸であり;
12は、Mまたはそれに類似するアミノ酸である、
13は、Kまたはそれに類似するアミノ酸である、
14は、Kまたはそれに類似するアミノ酸である、
15は、Kまたはそれに類似するアミノ酸である、
16は、Kまたはそれに類似するアミノ酸である、
を有するものである。
【0039】
1つの実施形態において、本発明において使用される細胞殺傷性ペプチドは、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5)またはその改変配列であって、該改変配列は、アミノ酸配列Y10111213141516(配列番号8)を有するものであって、ここで
は、RまたはKであり;
は、QまたはNであり;
は、IまたはLであり;
は、KまたはRであり;
は、IまたはLであり;
は、WまたはYであり;
は、FまたはYであり;
は、QまたはNであり;
は、NまたはQであり;
10は、RまたはKであり;
11は、RまたはKであり;
12は、MまたはCであり;
13は、KまたはRであり;
14は、WまたはYであり;
15は、KまたはRであり;および/または
16は、KまたはRである、
配列を有するものである。
【0040】
好ましい実施形態において、本発明は、前記細胞透過性ペプチドにおいて
は、Nであり;
は、Rであり;
は、Nであり;
は、Qであり;
10は、Kであり;
11は、Kであり;
12は、Cであり;
13は、Rであり;
14は、Yであり;
15は、Rであり;および/または
16は、Rである、
配列を有するものを包含する。
【0041】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明の細胞透過性ペプチドにおいて
は、Rであり;
は、Qであり;
12は、Cであり;および/または
16は、Rである、
配列を有するものを包含する。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明のキメラペプチドは、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号9)、RQIKIWFQNRRMKWKKRAYARIGNSYFK(配列番号10)、RQIKIWFQNRRMKWKKAAYARIGNSYFK(配列番号11)、RQIKIWFQNRRMKWKKKGYARIGNSYFK(配列番号12)、RQIKIWFQNRRMKWKKKALARIGNSYFK(配列番号13)、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYGRIGNSYFK(配列番号14)、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYAKIGNSYFK(配列番号15)、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARRGNSYFK(配列番号16)、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIANSYFK(配列番号17)、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGQSYFK(配列番号18)、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNYYFK(配列番号19)、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSSFK(配列番号20)、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYYK(配列番号21)、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFR(配列番号22)、KQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号23)、RNIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号24)、RQLKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号25)、RQIRIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号26)、RQIKLWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号27)、RQIKIYFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号28)、RQIKIWYQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号29)、RQIKIWFNNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号30)、RQIKIWFQQRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号31)、RQIKIWFQNKRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号32)、RQIKIWFQNRKMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号33)、RQIKIWFQNRRCKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号34)、RQIKIWFQNRRMRWKKKAYARIGNSYFK(配列番号35)、RQIKIWFQNRRMKYKKKAYARIGNSYFK(配列番号36)、RQIKIWFQNRRMKWRKKAYARIGNSYFK(配列番号37)、RQIKIWFQNRRMKWKRKAYARIGNSYFK(配列番号38)、RQIKIWFQNRRMKWKKRQIAKAYARIGNSYFK(配列番号39)、またはRRRRRRRRRRRKAYARIGNSYFK(配列番号40)の配列を有するキメラペプチドである。
【0043】
別の局面において、本発明は、本発明のキメラペプチドを含む医薬、好ましくは医薬組成物を提供する。
【0044】
別の局面において、本発明は、本発明のキメラペプチドを含む抗がん剤を提供する。
【0045】
別の局面において、本発明は、本発明のキメラペプチドの、医薬組成物の製造のための使用に関する。
【0046】
別の局面において、本発明は、本発明のキメラペプチドの、抗がん剤の製造のための使用に関する。
【0047】
別の局面において、本発明は、本発明のキメラペプチドを投与する工程を包含する治療方法に関する。
【0048】
別の局面において、本発明は、本発明のキメラペプチドを投与する工程を包含するがんの治療方法に関する。
【0049】
別の局面において、本発明は、Hsp90のTPRドメイン内のアミノ酸配列を用いる、医薬のスクリーニング方法に関する。
【0050】
別の局面において、本発明は、Hsp90のTPRドメイン内のアミノ酸配列を用いる、抗がん剤のスクリーニング方法に関する。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明において使用されるHsp90のC末端配列(EEVD(配列番号63))に結合するTPRドメイン内のアミノ酸配列は、ALKEKELGNDAYKKKDFDTALKHYDKAKELDPTNMTYITNQAAVYFEKGDYNKCRELCEKAIEVGRENREDYRQIAKAYARIGNSYFKEEKYKDAIHFYNKSLAEHRTPDVLKKCQQAEKILKEQERLA(配列番号41)またはそのアナログ(好ましくは、保存的置換を有するアナログ)である。
【0052】
これらのすべての局面において、本明細書に記載される各々の実施形態は、適用可能である限り、他の局面において適用されうることが理解される。
【発明の効果】
【0053】
本発明は、がん細胞にのみ効果を示し、正常細胞にはあまり効果がないということで、がん特異的な新規の薬剤を提供しうる点が挙げられる。また、これは、現在臨床の場で問題となっております抗ガン剤の副作用の問題を解決できることが、大いに期待できる。また、さらに予想外なことは、たった5アミノ酸、好ましくは12アミノ酸でも、がん細胞殺傷効果が出たということもまた顕著な効果であるといえる。
【0054】
以上のように、本発明により、細胞内での安定性を維持し、正常細胞への機能障害などによる副作用を回避し、がんに対する高い選択性を実現しつつ、かつ、効率、効果の高い抗がん剤またはDDSとして使用可能な物質が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、熱ショックタンパク質(Hsp)構成タンパク質(Hop)の模式図(A)およびHopのHsp90との結合に不可欠な領域の立体構造図(B、C)を示す。図1(A)は、2つの独立したTPRドメインTRP1およびTPR2Aを示すHopタンパク質の模式図を示し、これらのTPR1およびTPR2Aは、それぞれ、Hsp70およびHsp90のC末端テイルと相互作用する。矢印は、TPR2AとHsp90との相互作用を示す。図1(B)および図1(C)は、Hsp90との結合に必要不可欠な領域に関して、立体構造表示ソフトウェア(Ras Mol ver 2.7 for Machintosh(フリーソフト、http://www.openrasmol.org/)を用いて解析した図を示す。図1(B)は、報告されているHopのTPRドメインとHsp90のC末端配列MEEVD(配列番号64)(中央白色)との複合体の立体構造図。この立体構造図(B)において、Hsp90との結合に重要なヘリックスの一つ(矢印)が今回設計に用いた領域であり、図1(C)が予測されるペプチド(左)とHsp90のC末端配列MEEVD(配列番号64)(右)との複合体の立体構造図である。
【図2】図2は、BIACORE(生体分子間相互作用解析装置)を用いて、センサーチップに固定化されたHsp90と新規に設計されたAntp-TPRペプチドとの相互作用解析を行った結果を示す。図2のようにペプチドの濃度依存的に結合することが判明した。また、親和定数(Kd)が2.09x10-6であることも判明した。
【図3】図3に、Antp-TPRならびに、Antp-TPR変異体ペプチドによる細胞障害活性を示す。図3Aは、Antp-KAYAR(配列番号42)の結果、図3Bは、Antp-KAYARIGNSYFK(配列番号9)の結果、図3Cは、KAYARIGNSYFK(配列番号4)の結果、図3Dは、TAT-KAYARIGNSYFK(配列番号50)の結果を示す。図3Eおよび図3Fは、変異体(mutant)1および2(Antp-KAYAAAGNSYFK(配列番号44)およびAntp-KAYARIGNSGGG(配列番号45))の結果をそれぞれ示す。ここで、Antpは配列番号5に示す配列を有する。各々、縦軸は細胞生存率(%)、横軸はペプチド濃度(μM)を表す。
【図4】図4は、殺傷効果が高かった細胞に関するウェスタンブロッティングの結果を示す。(A)Antp-TPRペプチド(68μM)とともに48時間インキュベートしたT47D細胞におけるクライアントタンパク質の発現量を、特異的な抗体を用いてウェスタンブロッティングにより解析した。左からAntp-TPRの無・有の場合の、(上から)Hsp90、CDK4、Akt、サービビン、βアクチン(コントロール)の発現量を示す。Antp-TPRペプチドによって(B)左からHEK細胞、Caki-1細胞、Bxpc細胞、T47D細胞、A549細胞に対する、(上から)Hsp90、Hsp70、サービビン、βアクチン(コントロール)の発現量を確認した。なお、図中の「α-」は、ウェスタンブロッティングを行った際の抗体を意味する。
【図5】図5は、TPRにおいて各アミノ酸をそれぞれ、図に示すアミノ酸配列に変異させて得られた活性相関図である。Antp-TPR変異体ペプチドによる細胞障害活性を示す。
【図6】図6は、TPR野生型とslongという延長型およびR11を代わりに用いて行った変異体ペプチドによるCaki-1に対する細胞障害活性を示す。
【図7】図7は、センサーチップ上に固定化されたTPR2Aドメインタンパク質に対して、前もってHsp90とTPRペプチド、TPR scramble、TPR mutant 1、あるいはTPR mutant 2ペプチドをそれぞれ混合させておき、Hsp90に十分に結合させておいてからTPR2Aとの相互作用を確認することで、阻害効果を確認した実験である。センサーグラムとグラフで示されるように、TPRペプチドではその濃度増加によりHsp90とTPR2Aとの相互作用に影響を与えるが、TPR scramble、TPR mutant 1、あるいはTPR mutant 2ペプチドでは高濃度を前もって添加しておいてもその完全阻害は見受けられない。(A)は固定化されたTPR2Aに対してHsp90のみあるいは、前もって種々の濃度(1.4μM、14μM、140μM、280μM、700μMおよび1mM)のTPRペプチドを混合させておいたものを添加した時のセンサーグラムであり、Hsp90のみを添加した時に比べて、TPRペプチドを濃度依存的に前もって混合しておいたものを添加すると濃度依存的にセンサーグラムが下降、つまり、結合が減少していること示す。(B)は、(A)の実験を同様にTPR scrambleペプチドを用いて行った時のセンサーグラムであり、高濃度のTPR scrambleペプチドを前もって添加しておいてもセンサーグラムが下降しておらず、結合に変化がないことを示す。(C)は、(A)の実験を同様にTPR scramble(四角)、TPR mutant 1(三角)、TPR mutant 2(×印)を用いて行い、それぞれのペプチド濃度に対する、TPR2AとHsp90との結合力の減少度合いを示したものである。図のように、1000μMの濃度では、TPRペプチド(菱形)以外は、高濃度のペプチドを添加してもTPR2AとHsp90の相互作用を完全阻害できないことがわかる。
【図8A】図8Aは、細胞透過性ペプチドにおいて各アミノ酸をそれぞれ、図に示すアミノ酸配列に変異させて得られた活性相関図である。Antp-TPR変異体ペプチドによる細胞障害活性を示す。
【図8B】図8Bは、in vivoにおけるAntp-TPRの局所投与による固形がんに対する効果を示す。膵臓がん細胞Bxpc3移植後、PBS投与群(黒丸)とAntp-TPR(5mg/kg)を局所投与した群(三角)(いずれもN=3で行った。)とを比較した。横軸は、移植後の日数を示し、矢印は投与した日を示す。縦軸は、腫瘍容積(mm)を示す。Antp-TPRペプチド投与群で明らかに抗がん作用が見受けられる。
【図8C】図8Cは、in vivoにおけるAntp-TPRの静脈内投与による固形がんに対する効果を示す。膵臓がん細胞Bxpc3移植後、PBS投与群(黒丸)とAntp-TPR(1mg/kg(三角)または5mg/kg(四角))を静脈内投与した群(いずれもN=6で行った。)を比較した。横軸は、移植後の日数を示し、矢印は投与した日を示す。縦軸は、腫瘍容積(mm)を示す。実験は2連で行い、データは平均±SDとして表す。Antp-TPRペプチド投与群で明らかに抗がん作用が見受けられる。
【図9】図9は、FACSを用いたハイブリッドAntp-TPRペプチドによるがん細胞殺傷効果の検討を示す。がん細胞T47Dおよび正常細胞のHEK293Tをそれぞれの培地で6-ウェルディッシュ(NuncTM)で24時間培養した後、68μMのAntp-TPRキメラペプチドを添加してさらに24時間培養した。培養後、それぞれの細胞懸濁液に対して、ヨウ化プロピジウム(PI)染色(A~F)、アネキシンV標識(A~D)(いずれもWakoより入手)、あるいは、カスパーゼ3,7標識(E、F)(immunochemistry Technologiesより入手)を行いマルチパラメトリックフローサイトメトリーによって、アネキシンV標識またはカスパーゼ3,7活性およびPI染色について、同時に解析した結果を示す。各四半分パネルの細胞の百分率を示す。Aは正常細胞HEK293T細胞にペプチドを添加していない場合である。Bは正常細胞HEK293T細胞にAntp-TPRペプチド68μMを添加した場合である。CおよびEは乳がん細胞T47Dにペプチドを添加していない場合である。DおよびFは乳がん細胞T47DにAntp-TPRペプチド68μMを添加した場合である。正常細胞HEK293TにAntp-TPRペプチドを加えても影響を与えないが、がん細胞T47Dにペプチドを加えた場合、アネキシンV陽性またはカスパーゼ3,7陽性の細胞集団の増加が見受けられる。このことから、加えられたペプチドがアポトーシス性の機構によりがん細胞の死を特異的に誘導していることが示唆された。
【図10】図10は、トランスフェクション実験の結果を示す。Noneは何も処理していない場合(この値を100%とセットした。)、Liposomeは、トランスフェクション試薬のみを導入した場合、Liposome+TPR68uMは、TPRペプチドをトランスフェクション試薬で導入した場合、Liposome+TPR scramble 68μMは、TPR scrambleペプチドをトランスフェクション試薬で導入した場合である。矢印の部分、つまりTPRペプチドを導入した場合のみ、殺傷効果が見受けられた。Transfection試薬でTPRペプチドのみをがん細胞Caki-1に導入した場合、TPRペプチドのみ殺傷効果が見受けられた。
【図11】図11は、2種のHsp90阻害剤と本発明のAntp-TPRキメラペプチドによる細胞傷害活性を示す。(A)~(C):Hsp90阻害剤であるゲルダナマイシン(A)、17-AAG(B)、Antp-TPRキメラペプチド(C)による白血病細胞株(U937、K562、THP-1、HL-60)に対する殺細胞効果を示すグラフである。(D):固形がん細胞株(BT20、OE19、MCF-7)に対するAntp-TPRキメラペプチドの殺細胞効果のグラフである。
【図12】図12は、白血病細胞株に関するウェスタンブロッティングの結果を示す。左から、U937細胞、K562細胞、THP-1細胞、HL-60細胞の各々に対する、(上から)Hsp90、サービビン、βアクチン(コントロール)の発現量を確認した。
【図13A】図13は、Antp-TPRキメラペプチドの急性骨髄性白血病細胞株U937を用いた透過実験の結果を示す。(A):TAMRA標識されたAntp-TPRは細胞内に透過することが確認されたが、TPRペプチドでは、細胞内に透過されていないことが確認された。図の矢印は、それぞれペプチドが透過した細胞を示す。
【図13B】図13は、Antp-TPRキメラペプチドの急性骨髄性白血病細胞株U937を用いた透過実験の結果を示す。(B):Antp-TPRキメラペプチドが細胞内に透過した後も、カルセイン(緑色)の流入が見受けられないことから、細胞膜を破壊することなく透過していることも判明した。さらに、ペプチドが透過しても膜は破壊されていない。図の矢印は、それぞれペプチドが透過した細胞を示す。
【図14】図14は、Antp-TPRキメラペプチドによる白血病細胞株U937におけるがん細胞殺傷効果の検討結果を示す。(A):U937細胞を50μMのAntp-TPRキメラペプチドとともに一晩37℃でインキュベートし、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を行い、アネキシンV標識およびPI染色についてマルチパラメトリックフローサイトメトリーにより解析した結果を示す。Antp-TPR処理を行ったものについて、グラフ中右上の四半分パネルに見られるようなアネキシンV陽性の細胞の増加が観察された。(B):(A)と同様にキメラペプチドで処理したU937細胞をJC-1で15分間処理し、緑色および赤色の蛍光についてマルチパラメトリックフローサイトメトリーにより解析した結果を示す。Antp-TPR処理を行ったものについて、グラフ中右下の四半分パネルに見られるようなミトコンドリア膜電位変化が観察された。(C):(A)と同様にキメラペプチドで処理したU937細胞に対して、カルボキシフルオレセインFLICAカスパーゼ3,7アッセイを用いて、カスパーゼ活性およびPI染色についてマルチパラメトリックフローサイトメトリーにより解析した結果を示す。Antp-TPR処理を行ったものについて、グラフ中右上の四半分パネルに見られるようなカスパーゼ3 & 7の活性細胞の増加が観察された。
【図15】図15は、Antp-TPRキメラペプチドによるHsp90クライアントタンパク質の消失を示す。U937細胞をAntp-TPRキメラペプチドとともに、一晩37℃でインキュベートし、その後、細胞抽出液に対して、それぞれ示されるタンパク質に対する抗体でウェスタンブロッティングを行ったところ、Antp-TPR(+)では、Antp-TPR(-)よりも各タンパク質の発現量が減少しており、Antp-TPRキメラペプチドが、白血病細胞株U937に対して、Hsp90のクライアントタンパク質のフォールディングに影響を与えていることが予想され、そしてその結果、各タンパク質の減退が起こっていることが分かった。なお、図中の「α-」は、ウェスタンブロッティングを行った際の抗体を意味する。
【図16】図16は、Antp-TPRキメラペプチドの各アミノ酸の変異によるU937細胞株に対する、殺細胞効果の影響を示す。示されるアミノ酸変異を導入したキメラペプチドの各々について、U937に対する殺細胞効果を調べた結果が示される。各アミノ酸の変異導入部分の結果から、それぞれの位置に保存的アミノ酸の変異を導入しても、なお、殺細胞能力を有していることが分かった。
【図17】図17は、種間での殺細胞効果の検討結果を示す。(A)マウスの末梢血から採取した正常リンパ球を含む末梢血単核白血球細胞(Peripheral blood mononuclear cells:PBMCs)、ヒト正常B細胞、マウス白血病細胞株EL4に対する、Antp-TPRキメラペプチドの殺細胞効果を示す。Antp-TPRキメラペプチドは、マウスPBMCsまたはヒト正常B細胞に対しては殺細胞効果を示さないこと、さらに、マウスの白血病細胞株に対しても殺細胞効果を有することが分かった。(B)ヒト、マウス、ラット、ウシ間のHsp90のC末端側アミノ酸配列、ならびに、HOP中のTPR2Aドメインのアミノ酸配列比較を示す。Antp-TPRキメラペプチドが抗がん作用を示すのに重要な部分の配列(Hsp90のC末端配列MEEVD(配列番号64)およびHOP中のTPR2Aドメイン配列KAYARIGNSYFK(配列番号4))が、ヒト、マウス、ラット、ウシの種間で完全に保存されている。
【図18】図18は、Antp-TPRキメラペプチドのマウス白血病細胞株EL4およびPBMCsに対する透過実験の結果を示す。マウスの細胞株にもAntp-TPRキメラペプチドが透過されており、また、透過しても正常細胞PBMCsには殺細胞効果を示さず、マウス白血病細胞株には殺細胞効果を示している様子が観察された。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明に関して、発明の実施の形態を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。

【0057】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。

【0058】
本明細書において「Hsp90」とは、熱ショックタンパク質のひとつであり、真核細胞の中でもっとも多量に存在している分子量が約9万(90kDa)の分子シャペロンである。その構造は、GenBank#NM_001017963(ヒト)またはEntrez Gene ID 3320に記載される配列に代表され、これらのホモログもHspの代表例の機能を保持する限り包含される。

【0059】
ヒトHsp90は、ヒトHsp90遺伝子配列cDNAクローン(AB1144_H10,ORIGENETECNOLOGIES,INC.,ROCKVILLE,MD)を、GATEWAYシステム(Invitrogene)により、ヒスチジンタグのついた大腸菌用発現ベクターを構築し、作成した発現ベクター(pDEST17-Hsp90)を大腸菌BL21株に形質転換し、Hsp90の発現を確認後、ニッケルカラム(His-Trap:Amersham Pharmacia、現GE Healthcare)を用いて、Hsp90を精製することができる。

【0060】
Hsp90は多数の細胞内タンパク質と相互作用してその正確なフォールディングおよび機能を保証する役割を有する。Hsp90と相互作用するタンパク質としては、たとえば、プロテインキナーゼ、ステロイドホルモン受容体等の細胞増殖または分化に重要な役割を果たすシグナル伝達分子が多数挙げられる。細胞がストレスを受けた時に発現量が増加する。しかし、細胞のストレス状況下だけでなく、通常時も細胞質に多く存在していることから、Hsp90を破壊すると正常な機能まで失われる。

【0061】
本明細書において「Hsp90 TPR(テトラトリコペプチド反復;tetratricopeptide repeat)ドメイン」とは、HopがHsp90に結合するのに重要な役割を果たすドメインであり、代表的には、その構造は、GenBank No.MN_006819およびGene ID 10963に代表される。

【0062】
代表的な例は、ALKEKELGNDAYKKKDFDTALKHYDKAKELDPTNMTYITNQAAVYFEKGDYNKCRELCEKAIEVGRENREDYRQIAKAYARIGNSYFKEEKYKDAIHFYNKSLAEHRTPDVLKKCQQAEKILKEQERLA(配列番号41)またはそのアナログ配列を挙げることができる。アナログを設計するにおいて、たとえば、TPR2AドメインとHsp90のC末端ペプチドとの複合体構造の立体構造(PDB ID 1ELR)を解明することによって、重要なペプチドを設計することができる。本発明者らは、Hsp90は単独で機能を担うのではなく、パートナータンパク質の一つであるHopが結合することで、サービビン(survivin)などのタンパク質の折りたたみを補助するシャペロン機能を発揮することができることも見出している。

【0063】
本明細書において「Hsp90 TPRドメイン結合ペプチド」とは、Hsp90 TPRドメインに結合することができるペプチドであり、本発明において、TPRペプチドのみでは、細胞殺傷効果がまったく観察されなかったことから、Antp-TPRペプチド自体が細胞内に入ると考えられる。

【0064】
代表的なHsp90 TPRドメイン結合ペプチドとしては、アミノ酸配列X101112(配列番号1)を有するものであって、ここで
は、Kまたはそれに類似する同じ親水性アミノ酸のR、Aなどのアミノ酸であり;
は、Aまたはそれに類似する脂肪族系側鎖のG、V、L、Iなどのアミノ酸であり;
は、Yまたはそれに類似する疎水性アミノ酸Lなどのアミノ酸であり;
は、Aまたはそれに類似する脂肪族系側鎖のG、V、L、Iなどのアミノ酸であり;
は、Rまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Gまたはそれに類似する他のTPRドメインで見受けられるAなどのアミノ酸であり;
は、Nまたはそれに類似する他のTPRドメインで見受けられるQなどのアミノ酸であり;
は、Sまたはそれに類似するOH基を有するT、Yなどのアミノ酸であり;
10は、Yまたはそれに類似するOH基を有するS、Tなどのアミノ酸であり;
11は、Fまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
12は、Kまたはそれに類似する塩基性のRなどのアミノ酸であり、X~X12は任意の組み合わせ有効でありうることが理解される。

【0065】
ここで、「他のTPRドメインで見受けられるアミノ酸配列」とは以下のようなものを指すがこれに限定されない:KALFRRAKAHEK(human Tom 70;配列番号46)、KAFYRRAQAHAK(Tom 34;配列番号47)、KGLFRRGEAHLA(FKBP52;配列番号48)、KALYRRAQGWQG(CYP40;配列番号49)等。

【0066】
1つの実施形態では、上記アミノ酸配列X101112(配列番号1)を有するものであって、ここで
は、K、RまたはAであり、好ましくはKであり;
は、AまたはGであり;
は、YまたはLであり、好ましくはYであり;
は、AまたはGであり;
は、R、AまたはKであり、好ましくはRであり;
は、I、AまたはRであり、好ましくはIまたはAであり;
は、GまたはAであり;
は、NまたはQであり;
は、SまたはYであり;
10は、YまたはSであり;
11は、FまたはYであり;
12は、KまたはRであるか、あるいは
TPRペプチドを延長させて得られる
RQIAKAYARIGNSYFKEEKYK(配列番号43)であり、X~X12は任意の組み合わせ有効でありうることが理解される。

【0067】
好ましくは、上記アミノ酸配列において、
は、Gであり;
は、Gであり;
は、Aであり;
は、Qであり;
は、Yであり;
10は、Sであり;
11は、Yであり;
12は、Rである、
ものを含み、これらの好ましい置換は任意の組み合わせが有効でありうることが理解される。本発明において、これらの置換によって、効果の維持または増強が見出されたからである。

【0068】
より好ましくは、上記アミノ酸配列において、
は、Gであり;
は、Yであり;
11は、Yである、
ものを含み、これらの好ましい置換は任意の組み合わせが有効でありうることが理解される。これらの置換によって、効果の増強が見出されたからである。

【0069】
なお、これらの変異は一つ導入されても複数導入されてもよいことが理解される。

【0070】
あるいはその延長産物である「Antp-TPR slong」すなわちAntp-RQIAKAYARIGNSYFKEEKYK」(配列番号39)を挙げることができる。延長しても、効果の減少がなかったことから、本発明はそのアミノ酸の長さにかかわりなく、使用することができ、当業者は、本明細書の記載をもとに種々の配列および長さを調製することができることが理解される。

【0071】
しかし、「Hsp90 TPRドメイン結合ペプチド」は、Hsp90 TPRドメインと結合しうる能力を有する限りこれらの配列でなくても本発明において使用されうることが理解される。代表的なHsp90 TPRドメイン結合ペプチドとしては、アミノ酸配列KAYARを有するペプチド、アミノ酸配列KAYARX(配列番号2。ここで、Zは、(Y/H)(F/E/M/L/S)(K/A/L/Q/S)でありうる)を有するものであって、ここで、X、X、XおよびXは独立して任意のアミノ酸であり、Zはヘリックスを形成、維持するのに重要なアミノ酸であるもの、KAYAR(配列番号3)自体またはKAYARIGNSYFK(配列番号4)自体、などを挙げることができる。

【0072】
本明細書において実証されたことに基づけば、TPR(12アミノ酸)領域の変異に関して、以下のことが理解される。

【0073】
野生型より効果の増加が見受けられるもの(以下の記号は、元のアミノ酸の一文字記号、アミノ酸の位置番号、変異後のアミノ酸の一文字記号をいう。):A2G,A4G,I6A,N8Q,S9Y,F11Y
野生型に比べてほぼ同程度といえるもの:G7A,Y10S,K12R
野生型に比べて効果はあるが減少するものである:K1A,K1R,Y3L,R5K,R5A,I6R。

【0074】
本明細書において「細胞透過性ペプチド」とは、細胞の膜を通過して、細胞内部に侵入しうるペプチドをいう。あるペプチドが「細胞透過性ペプチド」であるかどうかは、以下の試験によって評価することができる。

【0075】
本明細書において、Antpに関しては、公知の方法(Derossi,et al.,J.Biol.Chem.1996,271,18188-18193.)でビオチン化したAntpペプチドを細胞に添加してその後、ストレプトアビジン化学標識化合物を添加し、蛍光顕微鏡で細胞内局在を確認することができる。

【0076】
あるいは、ストレプトアビジン結合抗体で反応後同様に化学標識された抗体を蛍光顕微鏡で同様に局在を確認することで細胞内に進入していることを確認することができる。

【0077】
細胞透過性ペプチドとしては、たとえば、アンテナペディアホメオボックス配列(Antp)であるRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5)、TATであるYGRKKRRQRRR)(配列番号6)、またはRRRRRRRRRRR(配列番号7)またはその改変体などを挙げることができる。代表的には、その構造は、たとえば、Gene ID 155871(TATタンパク質自体)を挙げることができる。本発明では、R11でもTATでも細胞殺傷効果を実証することができたことから、TPRの前に結合される細胞透過性ペプチドとしては、任意のものが使用されることが理解される。

【0078】
代表的な細胞透過性ペプチドは、以下の構造を有している。
RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5)またはその改変配列であって、該改変配列は、アミノ酸配列Y10111213141516(配列番号8)を有するものであって、ここで
は、Rまたはそれに類似する親水性アミノ酸Kなどのアミノ酸であり;
は、Qまたはそれに類似するアミド系のN、Glx(本明細書において「Glx」とは、GlnおよびGluを包含して称する。)としてEなどのアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似する脂肪族系のLなどのアミノ酸であり;
は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似する脂肪族系のLなどのアミノ酸であり;
は、Wまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
は、Fまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
は、Qまたはそれに類似するアミド系のN、GlxとしてEなどのアミノ酸であり;
は、Nまたはそれに類似するアミド系のQなどのアミノ酸であり;
10は、Rまたはそれに類似する親水性アミノ酸Kなどのアミノ酸であり;
11は、Rまたはそれに類似する親水性アミノ酸Kなどのアミノ酸であり;
12は、Mまたはそれに類似するS含有アミノ酸のCなどのアミノ酸であり;
13は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸であり;
14は、Wまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
15は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸であり;
16は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸である、
ものを有するものであり、Y~Y16は任意の組み合わせ有効でありうることが理解される。

【0079】
ここで、他の配列において、上記置換の参考となる配列としては保存的置換なども挙げることができる。

【0080】
好ましい実施形態では、上記アミノ酸配列において、Yは、RまたはKであり;
は、QまたはNであり;
は、IまたはLであり;
は、KまたはRであり;
は、IまたはLであり;
は、WまたはYであり;
は、FまたはYであり;
は、QまたはNであり;
は、NまたはQであり;
10は、RまたはKであり;
11は、RまたはKであり;
12は、MまたはCであり;
13は、KまたはRであり;
14は、WまたはYであり;
15は、KまたはRであり;
16は、KまたはRである、
配列を有するものであり、Y~Y16は任意の組み合わせ有効でありうることが理解される。

【0081】
好ましい実施形態では、本発明における、細胞透過性ペプチドは、上記アミノ酸配列において、Yは、Nであり;
は、Rであり;
は、Nであり;
は、Qであり;
10は、Kであり;
11は、Kであり;
12は、Cであり;
13は、Rであり;
14は、Yであり;
15は、Rであり;および/または
16は、Rである、
配列を有するものを含み、これらの好ましい置換は任意の組み合わせ有効でありうることが理解される。これらの置換によって、効果の維持または増強が見出されたからである。

【0082】
さらに好ましい実施形態では、本発明における、細胞透過性ペプチドは、上記アミノ酸配列において、Yは、Rであり;
は、Qであり;
12は、Cであり;あるいは
16は、Rである、
配列を有するものを含み、これらの好ましい置換は任意の組み合わせ有効でありうることが理解される。これらの置換によって、効果の増強が見出されたからである。

【0083】
本明細書では、Antp(細胞透過ペプチド部位)領域の変異に関して、以下のようなことが理解される。

【0084】
野生型より効果の増加が見受けられるもの(表記は、TRPと同じである。):K4R,N9Q,M12C,K16R
野生型に比べほぼ同程度のもの:Q2N,Q8N,R10K,R11K,K13R,W14Y,K15R
野生型に比べて効果は保持されるが減少するもの:R1K,I3L,I5L,W6Y,F7Y。

【0085】
なお、これらの変異は一つ導入されても複数導入されてもよいことが理解される。理論に束縛されることを望まないが、ある変異が許容されることが理解されると、もとの活性型の立体構造および対象となる生物学的標的との相互作用などでの活性が保持または増強されることが理解されることから、これらを複数組み合わせても、同様の効果を有すると期待されるからである。ところで、TPRドメイン内の配列は、相同性が高いが、厳格にパートナータンパク質(Hsp70、Hsp90等)との組み合わせを認識していることは、すでに判明している。本発明の場合、一アミノ酸置換で活性が変化したものに関しては、そのパートナータンパク質との相互作用に影響を与えたことが予測されるが、本件の最終目的である、抗がん活性という観点からは、保持していることからこれらアミノ酸の置換を組み合わせても同様の効果が得られると期待できる。これは、Hsp70、Hsp90がともにがん細胞内でその増殖、生育に重要な役割を果たしているからである。

【0086】
好ましくは、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(配列番号9)の配列を有するものが使用される。あるいは、TATという名称で呼ばれるYGRKKRRQRRR(配列番号6)も使用されうる。Rを11つなげた、RRRRRRRRRRR(配列番号7)という配列が細胞透過することが知られており、これも使用することができる。また、当業者は、適宜、好ましい細胞透過性ペプチドとTPRドメイン結合ペプチドとの組み合わせを決定することができる。好ましくは、Antpとの組み合わせの方を使用することができる。

【0087】
本明細書において「ヘリックスを形成、維持するのに重要なアミノ酸」とは、ヘリックスを形成、維持するのに重要な働きを担う任意のアミノ酸配列を言う。代表的には、TPRドメインについては、(Y/H)(F/E/M/L/S)(K/A/L/Q/S)を挙げることができるがこれに限定されない。

【0088】
本明細書において「キメラペプチド」とは、二つ以上の異なった遺伝子型の部分(ペプチド)から作られた1個のペプチドをいう。融合タンパク質ともいう。タンパク質のドメインの機能を吟味したり,目的とする蛋白質の発現を検出するために用いられる。

【0089】
本明細書において「類似するアミノ酸」とは、代表的には、保存的置換の関係にあるアミノ酸を含み、以下のアミノ酸が該当する。
A:G、I、V、L
C:M(含Sアミノ酸)
D:N、QまたはE
E:N、QまたはD
F:Y、S、Aなど
G:A
H:Wなど
I:A、L、V、(G)
K:R
L:A、I、V、(G)
M:Sなど
N:E、DまたはQ
P:HyP
Q:N、EまたはD
R:K
S:T、Y
T:S、Y
V:I、L、A、(G)
W:H
Y:F、S、T。

【0090】
これらのアミノ酸の間の置換は、本明細書において「保存的置換」ともいう。

【0091】
なお、「類似するアミノ酸」としては、類似の機能を有する他の配列において頻繁に見出されるものを用いてもよい。置換可能なことが実物を持って実証されているからである。また、具体的には、類似するアミノ酸は、本明細書において他の場所において記載されているものを採用してもよい。具体的に記載されている類似するアミノ酸は、特定の例において、効果が保持されうることが実証されたかあるいはその実証例から理解されうる範囲であるからである。

【0092】
本明細書においてTPRペプチドに頻繁に見出される「アミノ酸」は、種々のTPRペプチドにおいて頻度が高く見出されるものをいい、代表的には、保存的置換の関係にあるアミノ酸が含まれ、以下のアミノ酸が該当する。
アミノ酸配列X101112(配列番号1)を有するものであって、ここで
は、Kまたはそれに類似する同じ親水性アミノ酸のR、Aなどのアミノ酸であり;
は、Aまたはそれに類似する脂肪族系側鎖のG、V、L、Iなどのアミノ酸であり;
は、Yまたはそれに類似する疎水性アミノ酸Lなどのアミノ酸であり;
は、Aまたはそれに類似する脂肪族系側鎖のG、V、L、Iなどのアミノ酸であり;
は、Rまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似するアミノ酸であり;
は、Gまたはそれに類似する他のTPRドメインで見受けられるAなどのアミノ酸であり;
は、Nまたはそれに類似する他のTPRドメインで見受けられるQなどのアミノ酸)であり;
は、Sまたはそれに類似するOH基を有するT、Yなどのアミノ酸であり;
10は、Yまたはそれに類似するOH基を有するS、Tなどのアミノ酸であり;
11は、Fまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
12は、Kまたはそれに類似する塩基性のRなどのアミノ酸である。

【0093】
本明細書において細胞透過性ペプチドに頻繁に見出されるアミノ酸の具体的な配列は、種々の細胞透過性ペプチドにおいて頻度が高く見出されるものをいい、代表的には、保存的置換の関係にあるアミノ酸が含まれ、以下のアミノ酸が該当する。

【0094】
すなわち、そのような配列としては、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5)またはその改変配列であって、該改変配列は、アミノ酸配列Y10111213141516(配列番号8)を有するものであって、ここで
は、Rまたはそれに類似する親水性アミノ酸Kなどのアミノ酸であり;
は、Qまたはそれに類似するアミド系のN、GlxとしてEなどのアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似する脂肪族系のLなどのアミノ酸であり;
は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似する脂肪族系のLなどのアミノ酸であり;
は、Wまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
は、Fまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
は、Qまたはそれに類似するアミド系のN、GlxとしてEなどのアミノ酸であり;
は、Nまたはそれに類似するアミド系のQなどのアミノ酸であり;
10は、Rまたはそれに類似する親水性アミノ酸Kなどのアミノ酸であり;
11は、Rまたはそれに類似する親水性アミノ酸Kなどのアミノ酸であり;
12は、Mまたはそれに類似するS含有アミノ酸のCなどのアミノ酸であり;
13は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸であり;
14は、Wまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
15は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸であり;
16は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸である、
を有するものであり得る。

【0095】
本明細書において「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。

【0096】
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。

【0097】
本明細書において「核酸」はまた、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を暗黙に包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。あるいは、対立遺伝子変異体もこの範囲内に入る。

【0098】
本明細書において「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’-O-メチル-リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’-P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC-5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine-modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’-O-プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’-メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。

【0099】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでも目的とする機能が保持される限りいずれでもよい。

【0100】
本明細書において「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444-2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195-197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443-453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびin situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用される遺伝子(たとえば、Hsp90など)には、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。

【0101】
本明細書において、特定の遺伝子配列にハイブリダイズする核酸配列も、機能を有する限り使用することができる。ここで、ハイブリダイゼーションのための「ストリンジェントな条件」とは、標的配列に対して類似性または相同性を有するヌクレオチド鎖の相補鎖が標的配列に優先的にハイブリダイズし、そして類似性または相同性を有さないヌクレオチド鎖の相補鎖が実質的にハイブリダイズしない条件を意味する。ある核酸配列の「相補鎖」とは、核酸の塩基間の水素結合に基づいて対合する核酸配列(例えば、Aに対するT、Gに対するC)をいう。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、そして種々の状況で異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHでの特定の配列についての熱融解温度(Tm)より約5℃低く選択される。Tは、規定されたイオン強度、pH、および核酸濃度下で、標的配列に相補的なヌクレオチドの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。「ストリンジェントな条件」は配列依存的であり、そして種々の環境パラメーターによって異なる。核酸のハイブリダイゼーションの一般的な指針は、Tijssen(Tijssen(1993)、Laboratory Technniques In Biochemistry And MolecularBiology-Hybridization With Nucleic Acid Probes Part I、第2章 「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probeassay」、Elsevier,New York)に見出される。

【0102】
代表的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0M Na未満であり、代表的には、pH7.0~8.3で約0.01~1.0MのNa濃度(または他の塩)であり、そして温度は、短いヌクレオチド(例えば、10~50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、そして長いヌクレオチド(例えば、50ヌクレオチドより長い)については少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成され得る。本明細書におけるストリンジェントな条件として、50%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS(37℃)の緩衝溶液中でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSCで60℃での洗浄が挙げられる。

【0103】
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7~1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1~38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、90%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。

【0104】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。

【0105】
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。

【0106】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。

【0107】
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子(例えば、Hsp90)に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、ヒトの遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(マウス、ラット、ブタ、ウサギ、モルモット、ウシ、ヒツジなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウサギ、モルモット、ウシ、ヒツジなど)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。

【0108】
本明細書において「断片」または「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1~n-1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能が保持されているかどうかによって決定され得る。

【0109】
本明細書において、「改変体」、「改変配列」または「アナログ」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。

【0110】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。

【0111】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。

【0112】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加および/または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わること、または取り除かれることをいう。このような置換、付加および/または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。基準となる核酸分子またはポリペプチドにおけるこれらの変化は、目的とする機能(例えば、TPRドメインへの結合など)が保持される限り、この核酸分子の5’末端もしくは3’末端で生じ得るか、またはこのポリペプチドを示すアミノ酸配列のアミノ末端部位もしくはカルボキシ末端部位で生じ得るか、またはそれらの末端部位の間のどこにでも生じ得、基準配列中の残基間で個々に散在する。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、TPRドメインへの結合など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、15%以内、10%以内、5%以内、または150個以下、100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。

【0113】
(ペプチドの製法および分析)
本発明のペプチド(たとえば、キメラペプチド)は、当該分野で周知の方法(例えば、化学合成、以下に考察される一般的な工学技術)により得られ、または産生され得る。例えば、所望の領域もしくはドメインを含むペプチドの一部と一致するペプチドか、またはインビトロで所望の活性を媒介するペプチドは、ペプチド合成機の使用により合成され得る。ペプチドはまた、ペプチドの疎水性領域および親水性領域を同定するために使用され得る親水性分析(例えば、HoppおよびWoods、1981.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:3824~3828を参照のこと)により分析され得、従って実験操作(例えば、結合実験、抗体合成)のための物質の設計において助けとなる。二次構造分析はまた、特定の構造的モチーフを確立するペプチドの領域を同定するために行われ得る(例えば、ChouおよびFasman、1974、Biochem 13:222~223を参照のこと)。操作、翻訳、二次構造の予想、親水性および疎水性プロファイル、オープンリーディングフレームの予想およびプロッティング、ならびに配列の相同性の決定は、当該分野で利用可能なコンピューターソフトプログラムを使用して達成され得る。構造分析の他の方法として、例えば、X線結晶解析(例えば、Engstrom、1974.Biochem Exp Biol 11:7~13を参照のこと));質量分析およびガスクロマトグラフィー(例えば、METHODS IN PROTEIN SCIENCE、1997.J.WileyおよびSons、NewYork、NYを参照のこと)が挙げられ、そしてコンピュータモデリング(例えば、FletterickおよびZoller、編、1986.Computer Graphics and Molecular Modeling:CURRENT COMMUNICATION IN MOLECULAR BIOLOGY、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYを参照のこと)もまた使用され得る。

【0114】
本発明はさらにL型アミノ酸を有する本発明のペプチドをコードする核酸に関する。本発明のペプチドをコードする核酸の適切な供給源はヒトゲノム配列を含む。他の供給源としては、ラットゲノム配列が挙げられ、そしてタンパク質配列は、それぞれGenBankから入手可能であり、これらはその全体が本明細書中で参考として援用される。ペプチドをコードする核酸は、当該分野で公知の任意の方法(例えば、配列の3’-および5’-末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅により、および/またはcDNAもしくは所定の遺伝子配列に対して特異的なオリゴヌクレオチド配列を使用するゲノムライブラリーからのクローニングにより)により得られ得る。

【0115】
ペプチドの組換え体の発現のために、ペプチドをコードする核酸配列の全てまたは一部分を含む核酸が、適切な発現ベクター(すなわち、挿入されたペプチドコード配列の転写および翻訳のために必要なエレメントを含むベクター)に挿入され得る。いくつかの実施形態において、調節エレメントは、異種(すなわち、ネイティブ遺伝子プロモーターでない)である。あるいは、必要な転写シグナルおよび翻訳シグナルはまた、遺伝子および/またはそれらの隣接する領域についてネイティブなプロモーターにより供給され得る。種々の宿主ベクター系は、ペプチドをコードする配列を発現するために利用され得る。これらは以下を含むが、限定ではない:(i)ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどに感染した哺乳動物細胞系;(ii)バキュロウイルスなどに感染した昆虫細胞系;(iii)酵母ベクターを含む酵母または(iv)バクテリオファージDNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNAで形質転換された細菌。利用される宿主細胞系により、多数の適する転写エレメントおよび翻訳エレメントの任意の1つが使用され得る。

【0116】
発現ベクター中のプロモーター/エンハンサー配列は、本発明において提供される植物、動物、昆虫、または真菌の調節配列を利用し得る。例えば、プロモーター/エンハンサーエレメントは、酵母および他の真菌(例えば、GAL4プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼプロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター)から使用され得る。発現ベクターまたはそれらの誘導体としては、例えば、ヒトまたは動物ウイルス(例えば、ワクシニアウイルスまたはアデノウイルス);昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルス);酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えば、λファージ);プラスミドベクターおよびコスミドベクターが挙げられる。

【0117】
宿主細胞株は、挿入された目的の配列の発現を調節するか、または所望される特定の手段において、この配列によりコードされる発現されたペプチドを改変するか、もしくは処理するか選択され得る。さらに、特定のプロモーター由来の発現は、選択された宿主細胞株における特定のインデューサーの存在下で増強され得る;従って、一般的に設計されたペプチドの発現の制御を容易にする。さらに、異なる宿主細胞は、翻訳プロセスおよび翻訳後のプロセスならびに発現されたペプチドの改変(例えば、グリコシル化、リン酸化など)に対する特定の特徴付けられたメカニズムを有する。従って、適切な細胞株または宿主系は、外来のペプチドの所望される改変およびプロセスが達成されたことを保証するために選択され得る。例えば、細菌系でのペプチド発現は、グリコシル化されていないコアペプチドを産生するために使用され得る;一方、哺乳動物細胞での発現は、異種のペプチドの「ネイディブ」グリコシル化を保証する。

【0118】
ペプチドの誘導体、フラグメント、ホモログ、アナログおよび変異体、ならびにこれらのペプチドをコードする核酸を含む。核酸に関しては、本明細書中で提供される誘導体、フラグメントおよびアナログが、少なくとも6個の(隣接する)核酸配列として規定され、そしてこれらは特異的なハイブリダイゼーションをさせるに十分な長さを有する。アミノ酸に関して、本明細書中で提供される誘導体、フラグメントおよびアナログは少なくとも4個の(隣接する)アミノ酸配列として規定され、エピトープに特異的な認識をさせるに十分な長さである。

【0119】
改変体の設計には、Scheufler et al.,Cell 101,199-210(2000)の文献に記載された他のTPRドメインの配列の情報に基づき、類似の細胞透過性ペプチドを設計することができる。そのような改変としては、保存的置換が挙げられるがこれに限定されない。

【0120】
また、細胞透過性ペプチドの改変についても、従来の知見を参考にして本明細書の記載に基づき改変することができる。たとえば、Daniele Derossi et al.,The Journal Of Biological Chemistry Vol.271,No.30,Issue of July 26,pp.18188-18193,1996は、Antpに関して、そのメカニズムおよび一部変異を加えた改変体に関する知見を提供する。これらには、細胞透過に重要な部位が記載されており、本発明の改変体、アナログを生産する際に参照することができ、この文献は、その全体を参考として本明細書中で援用する。

【0121】
他の文献としては、Genevie Ave Dom et al.,Nucleic Acids Research,2003,Vol.31,No.2,556-561;Wenyi Zhang and Steven O.Smith,Biochemistry 2005,44,10110-10118;およびIsabelle Le Roux,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.90,pp.9120-9124,October 1993は、細胞貫通メカニズムおよび変異についての情報を提供しており、これらの文献もまた、本発明の改変体、アナログを生産する際に参照することができ、これらの文献は、その全体を参考として本明細書中で援用する。

【0122】
(医薬)
本発明の化合物または本発明の範囲内であるその製薬上許容される塩もしくは溶媒和は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤として提供するのが好ましい。また、それら医薬製剤は、動物および人に使用される。

【0123】
本発明で使用されうる投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが好ましく、経口または例えば、直腸内、口腔内、皮下、筋肉内、静脈内等の非経口をあげることができる。投与形態としては、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤等がある。経口投与に適当な、例えば乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビット、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造できる。また、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニット等の賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。

【0124】
発明で使用されうる非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性製剤からなる。例えば、注射剤の場合、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。

【0125】
発明で使用されうる局所製剤は、活性化合物を1種もしくはそれ以上の媒質、例えば鉱油、石油、多価アルコール等または局所医薬製剤に使用される他の基剤中に溶解または懸濁させて調製する。発明で使用されうる腸内投与のための製剤は、通常の担体、例えばカカオ脂、水素化脂肪、水素化脂肪カルボン酸等を用いて調製し、座剤として提供される。

【0126】
本発明では、非経口剤においても、経口剤で例示したグリコール類、油類、フレーバー類、防腐剤(抗酸化剤を含む)、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤等から選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。

【0127】
本発明の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和の有効用量および投与回数は、投与形態、患者の年令、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度等により異なるが、通常、投与量は、1日当たり0.01~1000mg/人、好ましくは5~500mg/人であり、投与回数は、1日1回または分割して投与するのが好ましい。

【0128】
本発明はまた、本発明の医薬組成物を製造するシステム、装置、キットにも関する。そのようなシステム、装置、キットの構成要件は、当該分野において公知のものを利用することができ、当業者は適宜設計することができることが理解される。

【0129】
本発明はまた、本発明の化合物、その製薬上許容される塩もしくは溶媒和、またはそれらの水和物等プロドラッグを使用するシステム、装置、キットにも関する。そのようなシステム、装置、キットの構成要件は、当該分野において公知のものを利用することができ、当業者は適宜設計することができることが理解される。

【0130】
(DDS)
本明細書において「送達剤」または「送達媒体」とは、目的の物質の送達を媒介する担体(ビヒクル)をいう。送達される物質が薬物であれば、「薬物送達媒体」という。薬物送達システム(Drug Delivery System、DDS)とは、ドラッグデリバリーシステムとも呼ばれ、吸収制御型DDS、放出制御型DDS、標的指向型DDSに分類することもある。理想的なDDSは、薬物を「体内の必要な部位に」、「必要な量を」、「必要な時間だけ」送り込むシステムである。ターゲティングDDSは、パッシブ・ターゲティングDDSとアクティブ・ターゲティングDDSとに分類される。前者はキャリア(薬物運搬体)の粒子径や親水性など物理化学的性質を利用して体内挙動を制御する方法である。後者はこれらに特殊な仕組みを付け加えて積極的に標的組織への指向性を制御しようとする方法であり、例えば、標的組織を構成する特定細胞の標的分子への特異的分子認識機能を有する抗体(たとえば、本発明のTPR結合ペプチド)などを結合したキャリアを利用する方法があり「ミサイルドラッグ」と呼ばれることもある。

【0131】
本明細書において「薬物送達媒体」とは、所望の薬物を送達するためのビヒクルをいう。

【0132】
本明細書において「目的物質」とは、特に、送達媒体により細胞内に送達されることが所望される物質をいう。

【0133】
本明細書において「リポソーム」とは、通常、膜状に集合した脂質層および内部の水層から構成される閉鎖小胞を意味する。代表的に使用されるリン脂質のほか、コレステロール、糖脂質などを組み込ませることも可能である。リポソームは内部に水を含んだ閉鎖小胞であるため、水溶性の薬剤などを小胞内に保持させることも可能である。したがって、このようなリポソームによって、細胞膜を通過しえない薬物または遺伝子などを細胞内に送達するのに使われる。また、生体適合性も良いのでDDS用のナノ粒子性キャリア材料としての期待が大きい。本発明において、リポソームは、修飾基を付するために、リンカーまたは架橋剤等を必要に応じて使用することによって、エステル結合を付与する官能基を有する構成単位(例えば、糖脂質、ガングリオシド、ホスファチジルグリセロールなど)またはペプチド結合を付与する官能基を有する構成単位(例えば、ホスファチジルエタノールアミン)として、有させることができる。

【0134】
リポソームの調製は、当該分野において公知の任意の手法により製造することができる。例えば、その中でもコール酸透析法による方法が挙げられる。コール酸透析法では、a)脂質と界面活性剤の混合ミセルの調製、およびb)混合ミセルの透析により製造を実施する。次に本発明において使用される糖鎖リポソームにおいて好ましい実施形態では、リンカーとしてタンパク質を使用することが好ましく、タンパク質に糖鎖が結合した糖タンパク質のリポソームへのカップリングは、以下の2段階反応によって行うことができる。a)リポソーム膜上のガングリオシド部分の過ヨウ素酸酸化、およびb)還元的アミノ化反応による酸化リポソームへの糖タンパク質のカップリングである。このような手法によって望ましい糖鎖を含む糖タンパク質をリポソームに結合することができ、所望の糖鎖を有する多種多様な糖タンパク質・リポソームコンジュゲートを得ることができる。リポソームの純度や安定性を見るために粒子径サイズ分布を調べることが非常に重要である。その方法として、ゲル濾過クロマト法(GPC)、走査型電顕(SEM)、動的光散乱法(DLS)などを使うことができる。

【0135】
本明細書において「リンカー」とは、表面結合分子(たとえば、Hsp90 TRP結合ペプチド)とリポソーム表面との結合を介在する分子である。本発明において使用される糖鎖修飾リポソームにおいて、ペプチドはリンカーを介してリポソーム表面に結合してもよい。リンカーは、当業者が適宜選択することができるが、生体適合性であるものが好ましく、より好ましくは、薬学的に受容可能である。本明細書において「リンカータンパク質」とは、リンカー分子のうち、タンパク質、ペプチド、アミノ酸のポリマーをいう。

【0136】
本明細書において「リンカー(タンパク質)基」とは、リンカー(タンパク質)が別の基と結合したときに付される名称である。リンカー(タンパク質)基は場合に応じて一価または二価のものを指す。例えば、哺乳動物由来タンパク質基、ヒト由来タンパク質基、ヒト血清タンパク質基、血清アルブミン基が挙げられる。リンカー(タンパク質)基は「ヒト」由来が好ましい。ヒト投与において適合性が高いと考えられるからである。また、免疫原性がないタンパク質が好ましい。

【0137】
本明細書において「架橋基」とは、橋をかけるように,鎖式高分子の分子間で化学結合を形成させる基をいう。代表的には、脂質、タンパク質、ペプチド、糖鎖などの高分子と他の分子(例えば、脂質、タンパク質、ペプチド、糖鎖)との間に作用し、分子内または分子間で、共有結合のなかったところを結ぶ共有結合を形成させる基をいう。本明細書において架橋基は、架橋を目的とする標的によって変動し、例えば、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、カルボジイミド類、イミドエステル類など挙げることができるがそれらに限定されない。アミノ基含有物質を架橋する場合、アルデヒド含有基、例えば、グルタルアルデヒドを用いることができる。

【0138】
本明細書において「生体適合性」とは、毒性、免疫反応、損傷などを生じることなく生体組織または臓器と適合する性質をいう。生体適合性緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、生理食塩水、トリス緩衝液、炭酸緩衝液(CBS)、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(TAPS)、2-[4-(2-ヒドロキシルエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、その他のグット緩衝液(例えば、2-モルホリノエタンスルホン酸,モノヒドレート(MES)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-tris)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(Bis-trisプロパン)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、コラミンクロリド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-3-プロパンスルホン酸(HEPPS)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(Tricine)、アミノアセトアミド(グリシンアミド)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)およびN-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS))などが挙げられるが、これらに限定されない。

【0139】
以上のように、本発明は、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドを含む、目的物質のがん細胞への送達剤を提供する。目的物質は、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドと結合していても結合していなくてもよい。結合した場合は融合物質となり、ペプチドの場合はキメラペプチドと呼ばれる。本発明のキメラペプチドは、この実施形態であるということもできる。このような物質は、媒体(ビヒクル)によって複合剤を形成してもよい。このような媒体としては、リポソームを使用することができ、目的物質は、リポソームの外側にあっても内部に包含されていてもよい。

【0140】
リポソーム化したもの全体でDDSという概念を証明するための実験の系の具体的なプロトコールは、以下のとおりである。

【0141】
TPRペプチドあるいは、TPR scrambleペプチドを市販のトランスフェクション試薬(たとえば、Profect-P2(ナカライテスク)あるいは、LipofectamineTM LTX(インビトロジェン)など)と混合して(たとえば、20分常温で静置して)リポソームを形成し、その後この複合体をがん細胞(たとえば、Caki-1(腎臓がん))に添加、その後、細胞の生存率をWST-8溶液(Cell Count Reagent SF;ナカライテスク株式会社)を用いて測定しTPR scrambleペプチド添加の場合と比較して確認することで本発明において設計されたTPRペプチドが細胞に導入された場合、殺傷効果を示すかどうかを確認できる。

【0142】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。

【0143】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記実施形態にも下記実施例にも限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0144】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、この実施例等により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。以下に示した実施例において使用した試薬は、特に言及しない限り和光純薬、Sigma-Aldrich等から得ることができる。また、動物実験は、京都大学において規定される基準に基づき動物愛護の精神をもって行った。
【実施例】
【0145】
(実施例1:Hsp90 TRP結合ペプチド-Antpキメラペプチドの生産および生物活性の測定)
本発明のキメラペプチドが、固形がん細胞株において殺細胞効果、抗腫瘍効果を示すかどうかを検討した。
【実施例】
【0146】
(材料および方法)
(細胞株)
ヒト乳がん細胞株(BT-20およびT47D)、肺がん細胞株(H322およびH460)、前立腺がん細胞株(LNCap)、神経膠腫細胞株(U251)、腎臓がん細胞株(Caki-1)および肺線維芽細胞の細胞株(MRC-5)を、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から購入した。ヒト膵臓がん細胞株(BXPC-3)を、Europiean Collection of Cell Cultures(ECACC;Salisbury,Wiltshire,UK)から購入した。ヒト胚性腎臓細胞株(HEK293)を、RIKEN Cell Bank(つくば市)から購入した。細胞は、10% FBS(BioWest,Miami,FL)、100μg/ml ペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシン(ナカライテスク株式会社、京都市)を含有する、RPMI 1640(BT-20、T47D、H322、H460、LNCap、U251およびBXPC-3)、MEM(MARC-5)またはD-MEM(HEK293、Caki-1)中で培養した。
【実施例】
【0147】
(ペプチド)
以下のペプチドをInvitrogen,Carlsbad,CAから購入したか、あるいは、ペプチド合成機(たとえば、Applied Biosystems:Model 433A ペプチドシンセサイザ)で合成した。
1.キメラペプチド:RQIKIWFQNRRMKWKK-KAYARIGNSYFK(Antp-TPR wild;配列番号9)
ここで、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5)は、本明細書においてAntennapedia homeodomain sequence(Antp)と称することがある。
【実施例】
【0148】
上記したキメラペプチドに加え、種々の改変ペプチドを作成した。
【実施例】
【0149】
合成したペプチドは以下のとおりである。
2.キメラペプチド:RQIKIWFQNRRMKWKK-KAYAR(配列番号42)
3.ペプチド:KAYARIGNSYFK(TPRペプチド;配列番号4)
4.キメラペプチド:RQIKIWFQNRRMKWKK-KAYAAAGNSYTFK(Mutant 1;配列番号44)
5.キメラペプチド:RQIKIWFQNRRMKWKK-KAYARIGNSGGG(Mutant 2;配列番号45)
また、以下も合成した。
RQIKIWFQNRRMKWKKRAYARIGNSYFK(Antp-TPR K1R;配列番号10)、
RQIKIWFQNRRMKWKKAAYARIGNSYFK(Antp-TPR K1A;配列番号11)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKGYARIGNSYFK(Antp-TPR A2G;配列番号12)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKALARIGNSYFK(Antp-TPR Y3L;配列番号13)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYGRIGNSYFK(Antp-TPR A4G;配列番号14)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYAKIGNSYFK(Antp-TPR R5K;配列番号15)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARRGNSYFK(Antp-TPR I6R;配列番号16)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIANSYFK(Antp-TPR G7A;配列番号17)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGQSYFK(Antp-TPR N8Q;配列番号18)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNYYFK(Antp-TPR S9Y;配列番号19)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSSFK(Antp-TPR Y10S;配列番号20)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYYK(Antp-TPR F11Y;配列番号21)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFR(Antp-TPR K12R;配列番号22)。
また、細胞溶解性に関する変異のものも合成した。
KQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnR1K-TPR;配列番号23)、
RNIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnQ2N-TPR;配列番号24)、
RQLKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnI3L-TPR;配列番号25)、
RQIRIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnK4R-TPR;配列番号26)、
RQIKLWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnI5L-TPR;配列番号27)、
RQIKIYFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnW6Y-TPR;配列番号28)、
RQIKIWYQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnF7Y-TPR;配列番号29)、
RQIKIWFNNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnQ8N-TPR;配列番号30)、
RQIKIWFQQRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnN9Q-TPR;配列番号31)、
RQIKIWFQNKRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnR10K-TPR;配列番号32)、
RQIKIWFQNRKMKWKKKAYARIGNSYFK(AnR11K-TPR;配列番号33)、
RQIKIWFQNRRCKWKKKAYARIGNSYFK(AnM12C-TPR;配列番号34)、
RQIKIWFQNRRMRWKKKAYARIGNSYFK(AnK13R-TPR;配列番号35)、
RQIKIWFQNRRMKYKKKAYARIGNSYFK(AnW14Y-TPR;配列番号36)、
RQIKIWFQNRRMKWRKKAYARIGNSYFK(AnK15R-TPR;配列番号37)、
RQIKIWFQNRRMKWKRKAYARIGNSYFK(AnK16R-TPR;配列番号38)、
RQIKIWFQNRRMKWKKRQIAKAYARIGNSYFK(Antp-TPR slong;配列番号39)、
RRRRRRRRRRRKAYARIGNSYFK(R11-TPR;配列番号40)
これらのペプチドを、化学的に合成し、そして、高速液体クロマトグラフィーにより精製して、その後、水に溶解した。
【実施例】
【0150】
(細胞生存性アッセイ)
1ウェルあたり合計3×10細胞を、96ウェルプレートに播種し、10% FBSを含有する培地中で24時間培養し、100μlにおいて漸増濃度のペプチドと共に、37℃にて48~72時間インキュベートした。細胞の生存率を、WST-8溶液(Cell Count Reagent SF;ナカライテスク株式会社)を用いて測定した。
【実施例】
【0151】
(フローサイトメトリーアッセイ)
Antp-TPRペプチドががん細胞においてアポトーシスを誘導するかどうかを検討するために、アネキシンVまたはカスパーゼ3,7およびヨウ化プロピジウム(PI)の二重染色を用いて、フローサイトメトリーアッセイを行った。
【実施例】
【0152】
(プロトコール)
がん細胞T47Dおよび正常細胞のHEK293Tをそれぞれの培地で6-wellディッシュ(NuncTM)で24時間培養した後、68μMのAntp-TPRキメラペプチドを添加してさらに24時間培養した。培養後、それぞれの細胞懸濁液に対して、ヨウ化プロピジウム(PI)染色、アネキシンV標識(いずれもWako)、あるいは、カスパーゼ3,7標識を行いマルチパラメトリックフローサイトメトリーによって、アネキシンV標識またはカスパーゼ3,7標識およびPI染色について、同時に解析した。
【実施例】
【0153】
(結果)
結果を図9に示す。正常細胞HEK293TにAntp-TPRペプチドを加えても影響を与えないが、がん細胞T47Dにペプチドを加えた場合、アネキシンV陽性またはカスパーゼ3,7陽性の細胞集団の増加が観察された。
【実施例】
【0154】
このことから、加えられたペプチドがアポトーシス性の機構によりがん細胞の死を特異的に誘導していることが示唆された。
【実施例】
【0155】
すなわち、正常細胞HEK293TにAntp-TPRペプチドを加えても影響を与えないが、がん細胞T47Dにペプチドを加えた場合アネキシンV陽性またはカスパーゼ3,7陽性の細胞数の増加が見受けられる。このことから、がん細胞T47Dにおいてこのペプチドの添加により細胞が死滅するか、あるいは、死滅した細胞が、アポトーシスを起こしていることがわかる。いずれにしても、本発明のペプチドにより細胞死の増加が見られ、おそらくは、その細胞死はアポトーシスを介した機構であることが示唆され、本発明は、従来の手法より好ましい治療方法でありうることが示される。
【実施例】
【0156】
(生体分子の相互作用)
BIACOREバイオセンサーシステム3000(BIACORE Inc,Uppsala,Sweden)を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)実験を行った。製造業者の説明書にしたがって、N-ヒドロキシスクシンイミドおよびN-エチル-N’-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド活性化化学により約5000RUのHsp90をCM5センサーチップの表面に固定した。非特異的な結合のコントロールとしてなにも固定していないセンサーチップの反応していないカルボキシメチル基を、エタノールアミンでブロックした。アッセイの間に非特異的な結合を防ぐために、HBS緩衝液(0.01M HEPES、0.15M NaCl、0.005% Tween 20、3mM EDTA[pH7.4])を泳動緩衝液として用いた。組換えヒトHsp90のTPR結合ドメイン-細胞溶解性ペプチドキメラペプチドとの相互作用解析を、以下のように行った:上述のように、約5000RUのHsp90をCM5のセンサーチップ上に固定し、次いで、いくつかの濃度のペプチドをこのセンサーチップの上に注入した。これらの実験において用いた全てのタンパク質濃度は、Bradford法(Bradford MM.A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding.Anal Biochem 1976;72:248-54)により決定した。データの解析は、BIA evaluation ver.3.2ソフトウェア(BIACORE)を用いて行った。
【実施例】
【0157】
(殺傷効果が高かった細胞に関するウェスタンブロッティング)
細胞殺傷効果の見受けられたがん細胞と正常細胞をそれぞれの培地で6-well(NuncTM)で24時間培養した後、上清をリン酸緩衝化緩衝液(PBS)で最低二回洗浄後、Cell lysis buffer(Promega)をそれぞれのウェルに300ulずつ添加し、細胞を溶解、これを細胞抽出総タンパク質(total protein)とした。この抽出液をSDS-PAGEで分離した後、セミドライ法でメンブレンに転写した。10%スキムミルク溶液をリン酸緩衝化緩衝液(PBS)で調製し、1時間30分ブロッキングした後、Hsp90、Hsp70、サービビン(survivin)、アクチン(actin)に対する抗体液(Stressgen Bioreagents,SIGMA)中で一晩反応させ、その後、二次抗体(GE Healthcare)と反応させたのち、ECLキット(GE Health science)で化学発色させ、Las3000 systemでバンドを検出した。
【実施例】
【0158】
(Hsp90への結合に関する実験結果)
新規に設計されたペプチド配列の野生型は、RQIKIWFQNRRMKWKK-KAYARIGNSYFK(配列番号9)である。ここで、N末端側のペプチドは、細胞透過性ペプチドAntpであり、C末端側のペプチドは、図1(A)に示されるように、TPRペプチド(HopのTPR2Aドメイン内にあるHsp90のC末端側に結合するのに重要なへリックスの一部分の配列。)に結合する、Hsp90 TRP結合ペプチドである。
【実施例】
【0159】
Hsp90との結合に必要不可欠な領域に関して、立体構造表示ソフトウェア(Ras Mol ver 2.7 for Machintosh(フリーソフト、http://www.openrasmol.org/)を用いて解析した。図1(B)は、報告されているHopのTPRドメインとHsp90のC末端配列MEEVD(配列番号64)(中央白色)との複合体の立体構造図である。この立体構造図(B)において、Hsp90との結合に重要なヘリックスの一つ(矢印)が今回設計に用いた領域であり、図1(C)が予測されるペプチドとHsp90のC末端配列MEEVD(配列番号64)(右)との複合体の立体構造図である。ソフトウェアで表示される図上、この領域のへリックスのみで十分にHsp90に結合できることが予測された。
【実施例】
【0160】
図2には、BIACORE(生体分子間相互作用解析装置)を用いて、センサーチップに固定化されたHsp90と新規に設計されたAntp-TPRペプチドとの相互作用解析を行った結果、ペプチドの濃度依存的に結合することが判明したことを示す。また、親和定数(Kd)が2.09x10-6であることも判明した。
【実施例】
【0161】
(細胞生存性アッセイの結果)
図3および以下の表に、その結果としてAntp-TPRならびに、Antp-TPR変異体ペプチドによる細胞障害活性を示す。
【実施例】
【0162】
【表1】
JP0005700409B2_000002t.gif
【実施例】
【0163】
新規に設計したペプチドの細胞障害活性を調べた結果(A)、(B)のように細胞透過性ペプチドAntpとのキメラペプチドでは、正常細胞である、HEK、MRC5には影響を及ぼさなかったが、がん細胞であるCaki-1、(腎がん)、Bxpc3(すい臓がん)、T47D(乳がん)、A549(肺がん)には影響を与えること、KAYAR(配列番号3)の5アミノ酸より伸長させたKAYARIGNSYFK(配列番号4)の方が効果が高いこと、またTPRペプチドのみ(C)では、いずれの細胞にも障害活性は、見受けられなかった。さらに、細胞障害活性のデータから、IC50値を算出した結果、細胞透過性ペプチドAntpと組み合わせた結果、正常細胞には、影響せずがん細胞にのみ殺傷能力を示し、IC50値20μM~60μMの範囲でがん細胞に影響を与えることが判明した(表1A:Antp-TPRペプチドの阻害濃度(IC50))。
【実施例】
【0164】
【表1A】
JP0005700409B2_000003t.gif
【実施例】
【0165】
(変異体での試験)
設計したTPRペプチドが、サービビンを含むいくつかのがん原性タンパク質のがん細胞における正確なフォールディングに必須なHsp90とHopのTPR2Aドメインとの相互作用と特異的に競合できるかどうかを検討した。図7および以下の表は、センサーチップ上に固定化されたヒトHopのTPR2Aドメインタンパク質に対して、前もってHsp90とTPRペプチド、TPR scramble、TPR mutant 1、あるいはTPR mutant 2ペプチドをそれぞれ混合させておき、Hsp90に十分に結合させておいてからTPR2Aとの相互作用を確認することで、阻害効果を確認した実験である。センサーグラムとグラフで示されるように、TPRペプチドではその濃度増加によりHsp90とTPR2Aとの相互作用に影響を与える(図7AおよびC)が、TPR scramble、TPR mutant 1、あるいはTPR mutant 2ペプチドでは高濃度を前もって添加しておいてもその完全阻害は見受けられない(図7BおよびC)。
【実施例】
【0166】
さらに、TPRペプチドの特異性を調べるために、重要と予測されるアミノ酸に変異を加えたmutant 1、mutant 2はいずれも障害活性を保持していたが、その障害活性が低下した(図7AおよびC)。
【実施例】
【0167】
これらの結果から、設計したTPRペプチドは、Hsp90とHopのTPR2Aドメインとの相互作用を阻害し得る特異的な競合因子であり、変異体による実験において標的としたアミノ酸が、このタンパク質相互作用が生じるために重要であることが示された。
【実施例】
【0168】
【表2】
JP0005700409B2_000004t.gif
【実施例】
【0169】
(Antp-TPRペプチドによるHsp90クライアントタンパク質の消失)
Antp-TPRペプチドを細胞に添加した後のHsp90クライアントタンパク質のレベルを検討したところ、Antp-TPRで処理したT47D細胞は、サービビン、CDK4およびAktを含む複数のHspクライアントペプチドの消失を示した。対照的に、Antp-TPRペプチドは、Hsp90自体のレベルには影響しなかった(図4(A))。これらの結果は、今回設計したAntp-TPRペプチドが、Hsp90クライアントタンパク質の正確なフォールディングに必須のコシャペロン補充と競合することによってがん細胞における細胞生存経路に影響を及ぼすようである。
【実施例】
【0170】
(各タンパク質の発現量)
特に殺傷効果が高かった細胞に関して、ウェスタンブロッティングにより各Hsp90クライアントタンパク質の発現量を調べたところ、図4(B)に示すようにサービビンの発現量が特に多いことが判明した。このことから、今回新規に設計したペプチドががん細胞の中でも特にサービビンの発現量が多いものに効果的であることが判明した。
【実施例】
【0171】
また、図9に示されるフローサイトメトリーの結果からAntp-TPRペプチドで処理したがん細胞はアネキシンV陽性かつカスパーゼ3,7陽性であり、さらに、図4(A)に示されるようにAntp-TPRペプチドはまたサービビンの消失を引き起こしたことから、Antp-TPRペプチドは、アポトーシス性の機構によって、サービビンの発現に依存性のがん細胞の大幅な殺傷を引き起こすようである。
【実施例】
【0172】
(考察)
以上のように、今回新規に設計したペプチドは、Hsp90に特異的に結合すること、単独では機能せず、細胞透過性ペプチドとキメラ化することで、細胞内に取り込まれたときに、がん細胞特異的に殺傷効果を示すこと、特にサービビンが高発現しているがん細胞に効果的であることから、実際に治療が困難ながんの新規治療薬への応用が大いに期待できる。従来の化合物を用いてHsp90を標的とした手法と大きく異なりペプチドを用いていることと、正常細胞に実際に影響を示さなかったことから、がんの治療で問題となる副作用もクリアできることが考えられる。今後は、上記配列のアミノ酸を一つずつ置換すること、あるいは他の細胞透過性ペプチドとの組み合わせを試みることにより、今回設計された配列よりもさらにがん細胞特異的であり、殺傷能力の強い配列を設計できることが大いに期待できる。さらに、このようなペプチドを組み合わせた新規治療薬は、がんだけでなく、ペプチドを用いて炎症性サイトカイン等を抑制することにより、炎症性疾患、間質性肺炎などの難治性疾患にも大いに応用できることが期待される。
【実施例】
【0173】

(実施例2:TRPドメイン結合ペプチドの網羅的解析)
本実施例では、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドのアナログ(アミノ酸配列X101112(配列番号1);式中
は、K、RまたはAであり;
は、AまたはGであり;
は、YまたはLであり;
は、AまたはGであり;
は、R、AまたはKであり;
は、IまたはRであり;
は、GまたはAであり;
は、NまたはQであり;
は、SまたはYであり;
10は、YまたはSであり;
11は、FまたはYであり;
12は、KまたはRであるか、あるいは
TPRペプチドを延長させたAntp-TPR slong(Antp-RQIAKAYARIGNSYFKEEKYK;配列番号39)ものが使用可能であるかどうかを決定するための実験を行った。また、TPRに代えてR11を使用したものを用いた実験も行った。
【実施例】
【0174】
ペプチド配列が異なること以外は、すべてのプロトコールは実施例1に準じた。使用したペプチドは以下のとおりである。
配列番号9:RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(Antp-wild)
配列番号10:RQIKIWFQNRRMKWKKRAYARIGNSYFK(Antp-K1R)
配列番号11:RQIKIWFQNRRMKWKKAAYARIGNSYFK(Antp-K1A)
配列番号12:RQIKIWFQNRRMKWKKKGYARIGNSYFK(Antp-A2G)
配列番号13:RQIKIWFQNRRMKWKKKALARIGNSYFK(Antp-Y3L)
配列番号14:RQIKIWFQNRRMKWKKKAYGRIGNSYFK(Antp-A4G)
配列番号15:RQIKIWFQNRRMKWKKKAYAKIGNSYFK(Antp-R5K)
配列番号16:RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARRGNSYFK(Antp-I6R)
配列番号17:RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIANSYFK(Antp-G7A)
配列番号18:RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGQSYFK(Antp-N8Q)
配列番号19:RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNYYFK(Antp-S9Y)
配列番号20:RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSSFK(Antp-Y10S)
配列番号21:RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYYK(Antp-F11Y)
配列番号22:RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFR(Antp-K12R)
(プロトコール)
それぞれの変異体ペプチドに関して、細胞生存性アッセイを行った。具体的には1ウェルあたり合計Caki-1(American Type Culture Collection(Manassas,VA)を3×10細胞、96ウェルプレート(NuncTM)に播種し、10% FBS(ウシ胎仔血清;Biowest)を含有する培地(DMEM(ナカライテスク株式会社))中で24時間培養し、100μlにおいて漸増濃度のペプチドと共に、37℃にて48~72時間インキュベートした。細胞の生存率を、WST-8溶液(Cell Count Reagent SF;ナカライテスク株式会社)を用いて測定するこの時に、野生型のAntp-TPRペプチドと比較した。
【実施例】
【0175】
(結果)
結果を図5および以下の表に示す。表中の数値野生型を100%としたときの相対値を示す。
【実施例】
【0176】
【表3】
JP0005700409B2_000005t.gif
【実施例】
【0177】
以上のすべての数値は、ポジティブと判断できる。なぜなら、非常に活性が高い野生型の1(%)程度が残存すれば、「抗がん活性」はあると判断可能であるからである。
【実施例】
【0178】
以上から、A4G(配列番号14),S9Y(配列番号19),F11Y(配列番号21)について、野生型より効果の増加が観察され、A2G(配列番号12),G7A(配列番号17),N8Q(配列番号18),Y10S(配列番号20),K12R(配列番号22)について、野生型に比べてほぼ同程度の効果が観察された。これら以外についても、少ないが殺傷効果が維持されたことが見出された殺傷ペプチドとしての効果を発揮することができることが見出された。
【実施例】
【0179】
以上の結果、以下のような改変が許容されるようであることがわかる。
アミノ酸配列X101112(配列番号1);
は、Kまたはそれに類似する同じ親水性アミノ酸のR、Aなどのアミノ酸であり、好ましくは、Kであり、;
は、Aまたはそれに類似する脂肪族系側鎖のG、V、L、Iなどのアミノ酸であり;
は、Yまたはそれに類似する疎水性アミノ酸Lなどのアミノ酸であり、好ましくは、Yであり、;
は、Aまたはそれに類似する脂肪族系側鎖のG、V、L、Iなどのアミノ酸であり;
は、Rまたはそれに類似するK、Aなどのアミノ酸であり、好ましくはRであり;
は、Iまたはそれに類似するRなどのアミノ酸であり、好ましくはI(または別途実施例からIもしくはAであり);
は、Gまたはそれに類似する他のTPRドメインで見受けられるAなどのアミノ酸であり;
は、Nまたはそれに類似する他のTPRドメインで見受けられるQなどのアミノ酸であり;
は、Sまたはそれに類似するOH基を有するT、Yなどのアミノ酸であり;
10は、Yまたはそれに類似するOH基を有するS、Tなどのアミノ酸であり;
11は、Fまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
12は、Kまたはそれに類似する塩基性のRなどのアミノ酸である。
【実施例】
【0180】
全般的に保存的置換が許容されることが明らかになったが、図1に示すような三次元モデルからは、X、Xでは、厳密に側鎖の構造が抗がん活性に影響するようであることがわかった。したがって、保存的置換を行う場合は、これら以外のアミノ酸位に導入されるべきことがわかる。なお、XにおいてRへの置換は保存的置換ではなく、実施例8、表9における結果からも明らかなように保存的置換であるAへの置換では活性が保持されていることから、側鎖の構造は抗がん活性にそれほど厳密に影響を与えるものではないものと考えられる。本発明のペプチドは、活性を野生型以上にしようとする場合、好ましくは、XおよびX以外の残基を変異させることが有利であるがこれに限定されない。
【実施例】
【0181】
また、好ましいパターンとしては、以下を認めることができる。
【実施例】
【0182】
すなわち、上記アミノ酸配列において、Xは、Gであり;Xは、Gであり;Xは、Aであり;Xは、Qであり;Xは、Yであり;X10は、Sであり;X11は、Yであり;および/またはX12は、Rである、もの、これらの好ましい置換は任意の組み合わせが有効でありうる。
【実施例】
【0183】
より好ましくは、上記アミノ酸配列において、Xは、Gであり;Xは、Yであり;X11は、Yであるもの、これらの好ましい置換は任意の組み合わせがさらに有効でありうる。
【実施例】
【0184】
これらの結果から、殺傷効果が維持された変異を複数組み合わせても殺傷効果が維持されることが期待されることが理解される。
【実施例】
【0185】
また、以下のような付加・挿入配列あるいは欠失も許容されることがわかる。すなわち、Antp-RAYAR(配列番号65)、Antp-AAYAR(配列番号66)、Antp-KGYAR(配列番号67)、Antp-KALAR(配列番号68)、Antp-KAYGR(配列番号69)なども効果があるものと理解することができる。つまり、Antp-KAYAR(配列番号42)でも殺傷効果が出ていることから、同じような置換もまた、同様に効果のあるものとして使用されうることが理解される。
【実施例】
【0186】
(実施例3:他の細胞透過性ペプチドの試験)
本実施例では、Antpペプチド以外の細胞透過性ペプチドが使用可能か調べた。
【実施例】
【0187】
使用するペプチドは以下のとおりである。細胞透過性ペプチドのペプチド配列が異なること以外は、すべてのプロトコールは実施例1に準じた。
【実施例】
【0188】
具体的には、TPRペプチドを延長させたAntp-TPR slong(Antp-RQIAKAYARIGNSYFKEEKYK;配列番号39)、TPRに代えてR11(RRRRRRRRRRR;配列番号7)を使用したものを用いた実験を行った。
【実施例】
【0189】
細胞透過性ペプチドのペプチド配列が異なること以外は、すべてのプロトコールは実施例1に準じた。
YGRKKRRQRRR(TAT 配列番号6)
RRRRRRRRRRR(R11 配列番号7)
製造した配列は、以下のとおりである。
【実施例】
【0190】
R11-TPR(RRRRRRRRRRRKAYARIGNSYFK;配列番号40)
TAT-TPR(YGRKKRRQRRRKAYARIGNSYFK;配列番号50)
(結果)
TATについては、図3Dに、R11については、図6および以下の表にその結果を示す。R11-TPRについてもAntp-TPRの野生型と同等の効果を示したことから、R11でも効果の多少の違いはあれ、細胞殺傷効果があるといえる。Antp-TPR slongは、野生型の効果を保持した。したがって、長さを変動させても、抗がん活性は消失しないことが実証された。また、TATでも同様の効果が示された(図3D)ことから、TPRの前に、細胞透過性ペプチドを組み合わせることで、効果を発揮できるペプチドであることを証明できたといえ、本発明の汎用性が立証された。
【実施例】
【0191】
【表4】
JP0005700409B2_000006t.gif
【実施例】
【0192】
(実施例4:細胞透過性ペプチドの改変)
本実施例では、細胞透過性ペプチド(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号5))のアナログ(アミノ酸配列Y10111213141516(配列番号8)を有するものであって、ここで
は、Rまたはそれに類似する親水性アミノ酸Kなどのアミノ酸であり;
は、Qまたはそれに類似するアミド系のN、GlxとしてEなどのアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似する脂肪族系のLなどのアミノ酸であり;
は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸であり;
は、Iまたはそれに類似する脂肪族系のLなどのアミノ酸であり;
は、Wまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
は、Fまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸であり;
は、Qまたはそれに類似するアミド系のN、GlxとしてEなどのアミノ酸であり;
は、Nまたはそれに類似するアミド系のQなどのアミノ酸であり;
10は、Rまたはそれに類似する親水性アミノ酸Kなどのアミノ酸であり;
11は、Rまたはそれに類似する親水性アミノ酸Kなどのアミノ酸であり;
12は、Mまたはそれに類似するS含有アミノ酸のCなどのアミノ酸である、
13は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸である、
14は、Wまたはそれに類似する芳香族を有するYなどのアミノ酸である、
15は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸である、
16は、Kまたはそれに類似する親水性アミノ酸Rなどのアミノ酸であるものである)を使用することができるかどうかを調べた。ペプチド配列が異なること以外は、すべてのプロトコールは実施例1に準じた。
【実施例】
【0193】
(プロトコール)
それぞれの変異体ペプチドに関して、細胞生存性アッセイを行う、具体的には1ウェルあたり合計Caki-1(American Type Culture Collection(Manassas,VA))を3×10細胞、96ウェルプレート(NuncTM)に播種し、10% FBSを含有する培地中で24時間培養し、100μlにおいて漸増濃度のペプチドと共に、37℃にて48~72時間インキュベートした。細胞の生存率を、WST-8溶液(Cell Count Reagent SF;ナカライテスク株式会社)を用いて測定するこの時に、野生型のAntp-TPRペプチドと比較する。
【実施例】
【0194】
(結果)
結果を図8Aおよび以下の表に示す。表中の数値は、野生型を100%としたときの相対値を示す。
【実施例】
【0195】
【表5】
JP0005700409B2_000007t.gif
【実施例】
【0196】
以上のすべての数値は、ポジティブと判断できる。なぜなら、非常に活性が高い野生型の1(%)程度が残存すれば、「抗がん活性」はあると判断可能であるからであり、上記では、すべて約30%以上の活性が残存していたからである。
【実施例】
【0197】
以上から、K4R(配列番号26),Q8N(配列番号30),N9Q(配列番号31),R10K(配列番号32),R11K(配列番号33),M12C(配列番号34),K13R(配列番号35),K15R(配列番号37)およびK16R(配列番号38)については野生型より効果の増加が観察された。また、Q2N(配列番号24),W14Y(配列番号36),についても、野生型に比べてほぼ同程度の効果が見出された。これら以外の変異でも、少ないながらも殺傷効果が維持されていることが示された。したがって、細胞透過性ペプチドに関して細胞透過性さえ維持されれば、本発明のがん細胞殺傷効果が保持されることが実証された。
【実施例】
【0198】
以上のように、細胞透過性ペプチドへの変異についても、細胞透過性の効果が維持されていることが理解される。
【実施例】
【0199】
(実施例5:治療法)
本実施例では、実際の治療への応用を確認した。
【実施例】
【0200】
ここでは、薬物送達システム(=Drug Delivery system、DDS)を用いた体内動態安定化及び徐放化等の検討とともに担がん動物モデルでの抗腫瘍効果を研究する。
【実施例】
【0201】
(DDS)
アテロコラーゲン(atelocollagen;高研)とAntp-TPRペプチドを混合して(Antp-TPRペプチド(配列番号9)400μg/ml濃度中にアテロコラーゲンが0.3%になるように混合)、その安定化をHPLCで測定する、具体的には、ペプチドのみの波形を測定し、アテロコラーゲンとペプチドの混合物を測定したときに、ペプチドの位置の波形が時間ごとにどの程度検出されるかで、アテロコラーゲンからの放出の度合いを知ることができると同時に、ペプチドの安定性を確認することができる。また混合物を下記のように作成した固形がんを移植した動物に投与することで、その治療効果を検討した。
【実施例】
【0202】
(担がん動物モデルでの局所投与による抗腫瘍効果)
ヒトすい臓がん細胞(Bxpc3)、5.0×10個の細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)150μlに懸濁し、ヌードマウス(BALB/c Slc-nu/nu)に皮下移植した。5日後、固形がんに対してAntp-TPRペプチドを1mg/kg-5mg/kgの濃度で150μlずつPBSに懸濁し固形がんに一日おきに計9回局所投与してその縮小効果を検討した。腫瘍径は、カリパスを用いて測定し、そして、腫瘍容積(mm)は、式:長径(mm)×短径(mm)×0.5を用いて計算した。
【実施例】
【0203】
(担がん動物モデルでの静脈内投与による抗腫瘍効果)
ヒトすい臓がん細胞(Bxpc3)、5.0×10個の細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)150μlに懸濁し、7~9週齢のヌードマウス(Balb/c Slc-nu/nu)(体重17~21g)の側腹部領域に皮下移植した。腫瘍容積が20~50mmに到達した時点でマウスを無作為に3群(n=6/群)に分け、そして、PBS(コントロール)またはAntp-TPR(1または5mg/kg)を、週に3回、計9回静脈内注射(50μl/注射)して、腫瘍の縮小効果を検討した。腫瘍径の測定および腫瘍容積の計算は、局所投与の場合と同様にして行った。
【実施例】
【0204】
(結果)
結果を図8B(局所投与による抗腫瘍効果)および図8C(静脈内投与による抗腫瘍効果)に示す。
【実施例】
【0205】
図8Bから明らかなように、局所投与による実験において、PBS投与群に対して、Antp-TPRペプチドを投与したマウスのがんの縮小効果が見受けられた。また、このときの投与痕やその後の行動を見る限り(通常の行動をしており、食欲減退など見受けられない)、マウスに対する毒性はほとんど見受けられなかった。
【実施例】
【0206】
また、図8Cから明らかなように、静脈内投与による実験でも、PBSを投与したコントロール群に対して、Antp-TPRペプチドを投与したマウスのがんの縮小効果が見受けられた。具体的には、コントロール群が漸進的な腫瘍の増殖を示し、58日目には腫瘍容積が749mmに達したのに対し、Antp-TPRペプチド(1または5mg/kg)を静脈内投与したマウスは、腫瘍の増殖が顕著に抑制された。平均腫瘍容積は、58日目には、1mg/kg投与群では371mm、そして、5mg/kg投与群では204mm(コントロール群のマウスに対してP<0.05)であった。
【実施例】
【0207】
これらの結果は、本願発明のAntp-TPRペプチドがインビボでがん細胞の死を効果的に誘導することを示唆するものである。
【実施例】
【0208】
そして、これらの結果およびインビトロでの結果から、インビトロでAntp-TPRペプチドと同様の効果を示した変異体は、インビボでも同様の結果を示すことが期待され、同様に半分程度のものであれば、半分程度と期待されるところ、インビトロで半分程度の効果があったものでもインビボで従来のシェファーディンの5倍以上の活性を見積もられることから、本発明は、全体にわたり従来の抗がん剤、ペプチド抗がん剤よりも優れた活性を有するものと期待される。
【実施例】
【0209】
(実施例6:FACSによるがん細胞殺傷効果の検討)
本実施例では、本発明のDDSとしてのがん細胞に対する特異性を確認する目的で、がん細胞殺傷効果を検討した。
【実施例】
【0210】
(プロトコール)
がん細胞T47Dおよび正常細胞のHEK293Tをそれぞれの培地で6-wellディッシュ(NuncTM)で24時間培養した後、68μMのAntp-TPRキメラペプチドを添加してさらに48時間培養した。培養後、それぞれの細胞懸濁液に対して、ヨウ化プロピジウム(PI)染色、あるいは、アネキシンV標識(いずれもWako)を行いマルチパラメトリックフローサイトメトリーによって、アネキシンV標識およびPI染色について、同時に解析した。
【実施例】
【0211】
(結果)
結果を図9に示す。正常細胞HEK293TにAntp-TPRペプチドを加えても影響を与えないが、がん細胞T47Dにペプチドを加えた場合、アネキシンV陽性またはカスパーゼ3,7陽性の細胞集団の増加が観察された。
【実施例】
【0212】
このことから、加えられたペプチドがアポトーシス性の機構によりがん細胞の死を特異的に誘導していることが示唆された。
【実施例】
【0213】
すなわち、正常細胞HEK293TにAntp-TPRペプチドを加えても影響を与えないが、がん細胞T47Dにペプチドを加えた場合PIとアネキシンV陽性またはカスパーゼ3,7陽性の細胞数の増加が見受けられる。このことから、がん細胞T47Dにおいてこのペプチドの添加により細胞が死滅するか、あるいは、死滅した細胞が、アポトーシスを起こしているようであることがわかる。
【実施例】
【0214】
(実施例7:トランスフェクション試薬としての利用)
TPRペプチドあるいは、TPR scrambleペプチドを市販のtransfection試薬(Profect-P2あるいは、Lipofectamine LTX)などと混合して、20分常温で静置して、リポソームを形成し、その後この複合体をがん細胞(Caki-1(腎臓がん細胞))に添加、その後、細胞の生存率をWST-8溶液(Cell Count Reagent SF;ナカライテスク株式会社)を用いて測定しTPR scrambleペプチドおよびリポソームのみ添加の場合と比較した。
【実施例】
【0215】
(結果)
結果を図10および以下の表に示す。図10からも明らかなように、リポソーム単独およびTPR scrambleでは効果がなく、TPRペプチドを導入した場合のみ、殺傷効果が見受けられた。
【実施例】
【0216】
トランスフェクション試薬でTPRペプチドのみをがん細胞Caki-1に導入した場合、TPRペプチドのみ殺傷効果が観察された。
【実施例】
【0217】
【表6】
JP0005700409B2_000008t.gif
【実施例】
【0218】
したがって、TPRペプチドは、特異的送達(DDS)の因子として使用することができることが理解できる。
【実施例】
【0219】
(実施例8:Hsp90 TRP結合ペプチド-Antpキメラペプチドの生産および生物活性の測定)
本発明のキメラペプチドが、血液がん細胞、特に、白血病由来細胞株においても同様に殺細胞効果、抗腫瘍効果を示すかどうかを検討した。
【実施例】
【0220】
(材料および方法)
(細胞株)
ヒト白血病由来細胞株:U937(単芽球性白血病)、K562(慢性骨髄性白血病)、THP-1(単球性白血病)、HL-60(骨髄芽球性白血病)、ヒト正常B細胞(RPMI1788)をヒューマンサイエンス振興財団(東京、日本)から購入した。ヒト胚性腎臓細胞株(HEK293)を、RIKEN Cell Bank(つくば市、日本)から購入した。ヒト肺正常上皮細胞(WI38)をAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA,USA)から購入した。ヒト正常すい臓上皮細胞(PE)をDSファーマ、バイオメディカルから購入した。細胞は、10% FBS(BioWest,Miami,FL,USA)、100μg/ml ペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシン(ナカライテスク株式会社、京都市、日本)を含有する、RPMI 1640(U937、K562、THP-1、HL-60、RPMI1788)、CSC(PE)、MEM(WI38)またはD-MEM(HEK293)中で培養した。
【実施例】
【0221】
(ペプチド)
以下のペプチドをInvitrogen,Carlsbad,CA,USAから購入したか、あるいは、ペプチド合成機(たとえば、Applied Biosystems,CA USA:Model 433A ペプチドシンセサイザ)で合成した:
キメラペプチドAntp-TPR:RQIKIWFQNRRMKWKK-KAYARIGNSYFK(配列番号9)、
RQIKIWFQNRRMKWKKRAYARIGNSYFK(Antp-TPR K1RまたはAntp-K1R;配列番号10)、
RQIKIWFQNRRMKWKKAAYARIGNSYFK(Antp-TPR K1AまたはAntp-K1A;配列番号11)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKGYARIGNSYFK(Antp-TPR A2GまたはAntp-A2G;配列番号12)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKALARIGNSYFKを(Antp-TPR Y3LまたはAntp-Y3L;配列番号13)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYGRIGNSYFK(Antp-TPR A4GまたはAntp-A4G;配列番号14)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYAKIGNSYFK(Antp-TPR R5KまたはAntp-R5K;配列番号15)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARRGNSYFK(Antp-TPR I6RまたはAntp-I6R;配列番号16)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIANSYFK(Antp-TPR G7AまたはAntp-G7A;配列番号17)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGQSYFK(Antp-TPR N8QまたはAntp-N8Q;配列番号18)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNYYFK(Antp-TPR S9YまたはAntp-S9Y;配列番号19)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSSFK(Antp-TPR Y10SまたはAntp-Y10S;配列番号20)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYYK(Antp-TPR F11YまたはAntp-F11Y;配列番号21)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFR(Antp-TPR K12RまたはAntp-K12R;配列番号22)、
RQIAKAYARIGNSYFKEEKYK(延長型TPRペプチド;配列番号43)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYAAIGNSYFK(Antp-R5A;配列番号51)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKAYARAGNSYFK(Antp-I6A;配列番号52)、
RQIKIWFQNRRMKWKKKGYGRIGNYYYK(Antp-A2G,A4G,S9Y,F11Y;配列番号53)、
RQIKIWFQNRRMKWKKRKFSAAIGYNKY(Antp-スクランブルペプチド;配列番号54)。
【実施例】
【0222】
これらのペプチドを、化学的に合成し、そして、高速液体クロマトグラフィーにより精製して、その後、水に溶解した。
【実施例】
【0223】
(細胞生存性アッセイ)
1ウェルあたり合計3×10細胞を、96ウェルプレートに播種し、10% FBSを含有する培地中に、100μlにおいて段階希釈したペプチドと共に、37℃にて48~72時間インキュベートした。細胞の生存率を、WST-8溶液(Cell Count Reagent SF;ナカライテスク株式会社)を用いて測定した。
【実施例】
【0224】
(ウェスタンブロッティング)
白血病細胞株をそれぞれの培地で6-well(NuncTM)で24時間培養した後、上清をリン酸緩衝化緩衝液(PBS)で最低二回洗浄後、Cell lysis buffer(Promega)をそれぞれのウェルに300ulずつ添加し、細胞を溶解、これを細胞抽出総タンパク質(total protein)とした。この抽出液をSDS-PAGEで分離した後、セミドライ法でメンブレンに転写した。10%スキムミルク溶液をリン酸緩衝化緩衝液(PBS)で調製し、1時間30分ブロッキングした後、Hsp90,サービビン,アクチンに対する抗体液(Stressgen Bioreagents,SIGMA)で一晩反応させ、その後、二次抗体(GE Healthcare,USA)を反応させたのち、ECLキットで(GE Health science)で化学発色させ、Las3000 systemでバンドを検出した。
【実施例】
【0225】
(蛍光顕微鏡解析)
U937細胞、マウス白血病細胞株EL4、または、マウス末梢血から調整された末梢血単核白血球細胞(Peripheral blood mononuclear cells:PBMCs)、1×10細胞に対して、TPR-TAMRA(TAMRA標識体)あるいは、Antp-TPR-TAMRA(TAMRA標識体)を用いて、最終濃度10μMになるように添加し、一時間培養したのち、細胞内に取り込まれたペプチドの様子あるいは、ペプチド透過による細胞への培地の流入をカルセインを培地に添加したものを用いて、コンフォーカル顕微鏡(Olympus FV1000(Olympus))を用いて観察した。
【実施例】
【0226】
(フローサイトメトリーアッセイ)
白血病細胞株U937細胞の50μMのAntp-TPRキメラペプチドによるがん細胞殺傷効果を決定するために、ペプチドで処理した培養物を、ヨウ化プロピジウム(PI)染色、あるいは、マルチパラメトリックフローサイトメトリーによって、アネキシンV標識およびPI染色について、同時に解析した。
【実施例】
【0227】
ミトコンドリアの電位変化の測定には、上記処理後の細胞をさらに蛍光カチオン色素試薬JC-1を含む培地で15分インキュベートし、その後PBSで洗った後、マルチパラメトリックフローサイトメトリーによって、測定した。
【実施例】
【0228】
カスパーゼ3,7測定には、同様に上記処理後の細胞をカルボキシフルオレセインFLICAカスパーゼ3,7アッセイ(Immunochemistry Technologies,Bloomington,MN,USA)を用いてカスパーゼ活性およびヨウ化プロピジウム(PI)染色について、マルチパラメトリックフローサイトメトリーによって測定した。
【実施例】
【0229】
(細胞生存性アッセイの結果)
図11および以下の表に、細胞生存性アッセイの結果としてAntp-TPRによる細胞障害活性を示す。
【実施例】
【0230】
(A)~(C)はHsp90阻害剤である低分子化合物ゲルダナマイシン(Geldanamycin)(A)、17-AAG(B)、Antp-TPRキメラペプチド(C)による白血病細胞株(U937、K562、THP-1、HL-60)に対する殺細胞効果であり、(D)は、固形がん細胞株(BT20、OE19、MCF-7)に対するAntp-TPRキメラペプチドの殺細胞効果を示す。
【実施例】
【0231】
【表7】
JP0005700409B2_000009t.gif
【実施例】
【0232】
図11の結果から、本発明のキメラペプチドAntp-TPRが、Hsap90阻害剤であるゲルダナマイシン、17-AAGと同様に、急性骨髄性白血病細胞株に対して殺細胞効果があること、また、これら殺細胞効果があった細胞株いずれもサービビンが高発現していることが判明した。また、図11(D)に示される結果から固形がん細胞株と同様の殺細胞様式を示すことも判明した。
【実施例】
【0233】
さらに、細胞障害活性のデータからIC50値を算出した結果、ゲルダナマイシンと17-AAGは、正常細胞、急性骨髄性白血病細胞株いずれにも殺細胞効果を示した(いずれも低いIC50濃度)のに対し、Antp-TPRキメラペプチドは、正常細胞にはほとんど効果がなく、白血病細胞株にのみ殺細胞能力を示し、IC50値20μM~60μMの範囲で白血病細胞株に影響を与えることが判明した(表8:正常細胞ならびに急性骨髄性白血病細胞株に対するゲルダナマイシン(Geldanamycin)、17-AAG、Antp-TPRキメラペプチドの殺細胞効果(IC50))。
【実施例】
【0234】
【表8】
JP0005700409B2_000010t.gif
【実施例】
【0235】
(各タンパク質の発現量)
各白血病細胞株(U937、K562、THP-1、HL-60)に関して、ウェスタンブロッティングにより各タンパク質(Hsp90、サービビン、βアクチン(コントロール))の発現量を調べたところ、図12に示されるように、U937およびTHP-1においてサービビンの発現量が多いことが判明した。このことから、Antp-TPRキメラペプチドは、白血病細胞株においても、固形がん細胞と同様、サービビンの発現量が多いものに効果的であることが分かった。
【実施例】
【0236】
(Antp-TPRキメラペプチドの急性骨髄性白血病細胞株U937に対する透過実験)
U937細胞1×10細胞に対して、TPR-TAMRA(TAMRA標識体)あるいはAntp-TPR-TAMRA(TAMRA標識体)を、最終濃度10μMになるように添加し、一時間培養したのち、細胞内に取り込まれたペプチドの様子あるいは、ペプチド透過による細胞への培地の流入を、カルセイン含有培地を用いて、コンフォーカル顕微鏡(Olympus FV1000(Olympus))を用いて観察した。
【実施例】
【0237】
図13(A)に示されるように、TAMRA標識されたAntp-TPRは細胞内に透過することが確認されたが、AntpなしのTPRペプチドは、細胞内に透過されていないことが確認された。また、図13(B)に示されるように、Antp-TPRキメラペプチドが細胞内に透過した後もカルセイン(緑色)の流入が見受けられないことから、Antp-TPRキメラペプチドは、細胞膜を破壊することなく透過していることも分かった。さらに、ペプチドが透過した後も、膜は破壊されていない。図中の矢印は、それぞれペプチドが透過した細胞を示す。
【実施例】
【0238】
(Antp-TPRキメラペプチドによる白血病細胞株U937におけるがん細胞殺傷効果の解析)
図14にフローサイトメトリーアッセイの結果を示す。
【実施例】
【0239】
U937細胞を50μMのAntp-TPRキメラペプチドとともに一晩37℃でインキュベートし、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を行い、アネキシンV標識およびPI染色についてマルチパラメトリックフローサイトメトリーにより解析した結果を図14(A)に示す。Antp-TPR処理を行ったものについて、グラフ中右上の四半分パネルに見られるようなアネキシンV陽性の死細胞の増加が観察された。
【実施例】
【0240】
また、同様にキメラペプチドで処理したU937細胞をJC-1で15分間処理し、緑色および赤色の蛍光についてマルチパラメトリックフローサイトメトリーにより解析した結果を図14(B)に示す。Antp-TPR処理を行ったものについて、グラフ中右下の四半分パネルに見られるようなミトコンドリア膜電位変化が観察された。
【実施例】
【0241】
さらに、同様にキメラペプチドで処理したU937細胞に対して、カルボキシフルオレセインFLICAカスパーゼ3,7アッセイを用いて、カスパーゼ活性およびPI染色についてマルチパラメトリックフローサイトメトリーにより解析した結果を図14(C)に示す。Antp-TPR処理を行ったものについて、グラフ中右上の四半分パネルに見られるようなカスパーゼ3 & 7の活性細胞の増加が観察された。
【実施例】
【0242】
以上の結果から、Antp-TPRキメラペプチドは、白血病細胞株U937に対して、カスパーゼ3,7の活性化を介してアポトーシスを誘導すること、また、この際ミトコンドリアの膜電位の変化を起こしていることが分かった。
【実施例】
【0243】
(Antp-TPRキメラペプチドによるHsp90クライアントタンパク質の消失)
U937細胞をAntp-TPRキメラペプチドとともに一晩37℃でインキュベートし、その後、細胞抽出液に対して、それぞれ示されるタンパク質に対する抗体でウェスタンブロッティングを行った。図15に示されるように、Antp-TPR(+)では、Antp-TPR(-)よりも各タンパク質の発現量が減少しており、Antp-TPRキメラペプチドが、白血病細胞株U937に対して、Hsp90のクライアントタンパク質のフォールディングに影響を与えていることが予想され、そしてその結果、各タンパク質の減退が起こっていることが分かった。
【実施例】
【0244】
(Antp-TPRキメラペプチドの各アミノ酸の変異によるU937細胞株に対する殺細胞効果の影響)
図16に示すアミノ酸変異を導入したキメラペプチドの各々について、U937に対する殺細胞効果を調べた。その結果、それぞれの位置に保存的アミノ酸の変異を導入してもなお、殺細胞能力を有していることが分かった。また、以下の表には、野生型の数値を100%としたときの相対値を示す。また、評価のために、細胞生存率の低下を数値化したもの、およびがん細胞を死傷させた比率を数値化した抗がん活性を提示する。野生型より強いものについては、細胞生存率の低下を検討することで、よりその抗がん剤としての活性の改善が評価されうる。
【実施例】
【0245】
【表9】
JP0005700409B2_000011t.gif
【実施例】
【0246】
以上のすべての数値は、ポジティブと判断できる。なぜなら、非常に活性が高い野生型の1(%)程度が残存すれば、「抗がん活性」はあると判断可能であるからであり、またscrambleより高ければ、活性増強効果が見られるというべきであり、上記では、すべてこの基準を満たすからである。
【実施例】
【0247】
また、Antp-A2G(配列番号2)、Antp-I6A(配列番号52)、Antp-G7A(配列番号17)、Antp-N8Q(配列番号18)、Antp-S9Y(配列番号19)、Atnp-F11Y(配列番号21)、Antp-K12R(配列番号22)およびAtnp-A2G,A4G,S9Y,F11Y(配列番号53)については、野生型より効果の増加が観察された。これらのペプチドは、細胞生存率の低下を指標とした場合、実に2000%を超える活性増強すら見いだされた。また、Antp-Y10S(配列番号20)についても野生型に比べてほぼ同程度の効果が見出された。これら以外の変異でも、少ないながらも殺傷効果が維持されていることが示された。したがって、細胞透過性ペプチドに関して細胞透過性さえ維持されれば、本発明のがん細胞殺傷効果が保持されることが実証された。そして、その例示として、活性のあるペプチドに基づき保存的置換等の性質の類似したアミノ酸置換が有効であることも実証された。
【実施例】
【0248】
以上のように、この細胞透過性ペプチドへの変異についても、細胞透過性の効果が維持されていることが理解される。
【実施例】
【0249】
(種間での殺細胞効果の検討)
マウスの末梢血から採取した正常リンパ球を含む末梢血単核白血球細胞(Peripheral blood mononuclear cells:PBMCs)、ヒト正常B細胞、マウスの白血病細胞株EL4に対して、Antp-TPRキメラペプチドの殺細胞効果を検討した。
【実施例】
【0250】
結果を図17(A)および以下の表に示す。Antp-TPRキメラペプチドは、マウスPBMCsまたはヒト正常B細胞に対しては殺細胞効果を示さないこと、さらに、マウスの白血病細胞株に対しても殺細胞効果を有することが分かった。
【実施例】
【0251】
【表10】
JP0005700409B2_000012t.gif
【実施例】
【0252】
また、(B)に示すように、ヒト、マウス、ラット、ウシ間のHsp90のC末端側アミノ酸配列、ならびに、HOP中のTPR2Aドメインのアミノ酸配列を比較すると、このキメラペプチドが抗がん作用を示すのに重要な部分の配列(Hsp90のC末端配列MEEVD(配列番号64)およびHOP中のTPR2Aドメイン配列KAYARIGNSYFK(配列番号4))は、ヒト、マウス、ラット、ウシの種間で完全に保存されていることが分かる。以上の結果から、本発明のAntp-TPRキメラペプチドは、種を超えて殺細胞効果を示すといえる。
【実施例】
【0253】
(Antp-TPRキメラペプチドのマウス白血病細胞株EL4およびPBMCsに対する透過実験)
マウス白血病細胞株EL4、またはマウス末梢血単核白血球細胞(Peripheral blood mononuclear cells:PBMCs)1×10細胞に対して、TPR-TAMRA(TAMRA標識体)あるいはAntp-TPR-TAMRA(TAMRA標識体)を、最終濃度10μMになるように添加し、一時間培養したのち、細胞内に取り込まれたペプチドの様子あるいは、ペプチド透過による細胞への培地の流入を、カルセイン含有培地を用いて、コンフォーカル顕微鏡(Olympus FV1000(Olympus))を用いて観察した。
【実施例】
【0254】
図18に示されるように、マウスの細胞株にもAntp-TPRキメラペプチドが透過されていること、また、透過しても正常細胞PBMCsには殺細胞効果を示さず、マウス白血病細胞株には殺細胞効果を示していることから、血液がん細胞においても固形がん細胞と同様に、正常、がん細胞の選択性を有しているペプチドであることが証明された。
【実施例】
【0255】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【実施例】
【0256】
本願は、日本国で2008年11月14日に出願された特願2008-292849に対する優先権を主張する。特願2008-292849の内容は、その全体が本明細書において援用され、本明細書の一部を構成するものとみなされることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0257】
本発明により、副作用が軽減された抗がん剤が提供される。
【配列表フリ-テキスト】
【0258】
配列番号1は、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドであるアミノ酸配列X101112を示す。
配列番号2は、TRPドメイン結合ペプチドであるKAYARXを示す(ここで、X、X、XおよびXは独立して任意のアミノ酸である)。
配列番号3は、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチドであるKAYARを示す。
配列番号4は、Hsp90 TPRドメイン結合ペプチド(TPRペプチドとも称する)であるKAYARIGNSYFKを示す。
配列番号5は、アンテナペディアホメオボックス配列(Antp)であるRQIKIWFQNRRMKWKKを示す。
配列番号6は、TATであるYGRKKRRQRRRを示す。
配列番号7は、R11とも称するRRRRRRRRRRRを示す。
配列番号8は、細胞透過性ペプチドの改変配列であるアミノ酸配列Y10111213141516を示す。
配列番号9は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(Antp-TPR wild)を示す。
配列番号10は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKRAYARIGNSYFK(Antp-TPR K1R)を示す。
配列番号11は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKAAYARIGNSYFK(Antp-TPR K1A)を示す。
配列番号12は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKGYARIGNSYFK(Antp-TPR A2G)を示す。
配列番号13は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKALARIGNSYFKを(Antp-TPR Y3L)示す。
配列番号14は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYGRIGNSYFK(Antp-TPR A4G)を示す。
配列番号15は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYAKIGNSYFK(Antp-TPR R5K)を示す。
配列番号16は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYARRGNSYFK(Antp-TPR I6R)を示す。
配列番号17は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIANSYFK(Antp-TPR G7A)を示す。
配列番号18は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGQSYFK(Antp-TPR N8Q)を示す。
配列番号19は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNYYFK(Antp-TPR S9Y)を示す。
配列番号20は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSSFK(Antp-TPR Y10S)を示す。
配列番号21は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYYK(Antp-TPR F11Y)を示す。
配列番号22は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFR(Antp-TPR K12R)を示す。
配列番号23は、本発明のキメラペプチドKQIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnR1K-TPR)を示す。
配列番号24は、本発明のキメラペプチドRNIKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnQ2N-TPR)を示す。
配列番号25は、本発明のキメラペプチドRQLKIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnI3L-TPR)を示す。
配列番号26は、本発明のキメラペプチドRQIRIWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnK4R-TPR)を示す。
配列番号27は、本発明のキメラペプチドRQIKLWFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnI5L-TPR)を示す。
配列番号28は、本発明のキメラペプチドRQIKIYFQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnW6Y-TPR)を示す。
配列番号29は、本発明のキメラペプチドRQIKIWYQNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnF7Y-TPR)を示す。
配列番号30は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFNNRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnQ8N-TPR)を示す。
配列番号31は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQQRRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnN9Q-TPR)を示す。
配列番号32は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNKRMKWKKKAYARIGNSYFK(AnR10K-TPR)を示す。
配列番号33は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRKMKWKKKAYARIGNSYFK(AnR11K-TPR)を示す。
配列番号34は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRCKWKKKAYARIGNSYFK(AnM12C-TPR)を示す。
配列番号35は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMRWKKKAYARIGNSYFK(AnK13R-TPR)を示す。
配列番号36は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKYKKKAYARIGNSYFK(AnW14Y-TPR)を示す。
配列番号37は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWRKKAYARIGNSYFK(AnK15R-TPR)を示す。
配列番号38は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKRKAYARIGNSYFK(AnK16R-TPR)を示す。
配列番号39は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKRQIAKAYARIGNSYFK(Antp-TPR slong)を示す。
配列番号40は、本発明のキメラペプチドRRRRRRRRRRRKAYARIGNSYFK(R11-TPR)を示す。
配列番号41は、Hsp90のC末端配列(EEVD(配列番号63))に結合するTPRドメイン内のアミノ酸配列であるALKEKELGNDAYKKKDFDTALKHYDKAKELDPTNMTYITNQAAVYFEKGDYNKCRELCEKAIEVGRENREDYRQIAKAYARIGNSYFKEEKYKDAIHFYNKSLAEHRTPDVLKKCQQAEKILKEQERLAを示す。
配列番号42は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKK-KAYAR(Antp-KAYAR)を示す。
配列番号43は、TPRペプチドを延長させたRQIAKAYARIGNSYFKEEKYKである。
配列番号44は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKK-KAYAAAGNSYTFK(Antp-変異体(mutant)1)を示す。
配列番号45は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKK-KAYARIGNSGGG(Antp-変異体(mutant)2)を示す。
配列番号46は、human Tom 70の配列KALFRRAKAHEKである。
配列番号47は、Tom 34の配列KAFYRRAQAHAKである。
配列番号48は、FKBP52の配列KGLFRRGEAHLAである。
配列番号49は、CYP40の配列KALYRRAQGWQGである。
配列番号50は、TAT-TPRの配列YGRKKRRQRRRKAYARIGNSYFKである。
配列番号51は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYAAIGNSYFK(Antp-R5A)である。
配列番号52は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKAYARAGNSYFK(Antp-I6A)である。
配列番号53は、本発明のキメラペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKKGYGRIGNYYYK(Antp-A2G,A4G,S9Y,F11Y)である。
配列番号54は、Antp-スクランブルペプチドRQIKIWFQNRRMKWKKRKFSAAIGYNKYである。
配列番号55は、ヒトHsp90のC末端のアミノ酸719~732の配列:LEGDDDTSRMEEVDである。
配列番号56は、マウスHsp90のC末端のアミノ酸720~733の配列:LEGDDDTSRMEEVDである。
配列番号57は、ラットHsp90のC末端のアミノ酸720~733の配列:LEGDDDTSRMEEVDである。
配列番号58は、ウシHsp90のC末端のアミノ酸720~733の配列:LEGDDDTSRMEEVDである。
配列番号59は、ヒトHOPのTPR2Aドメイン(アミノ酸296~325)の配列:YRQIAKAYARIGNSYFKEEKYKDAIHFYNKである。
配列番号60は、マウスHOPのTPR2Aドメイン(アミノ酸296~325)の配列:YRQIAKAYARIGNSYFKEEKYKDAIHFYNKである。
配列番号61は、ラットHOPのTPR2Aドメイン(アミノ酸296~325)の配列:YRQIAKAYARIGNSYFKEERYKDAIHFYNKである。
配列番号62は、ウシHOPのTPR2Aドメイン(アミノ酸296~325)の配列:YRQIAKAYARIGNSYFKEEKYKDAIHFYNKである。
配列番号63は、Hsp90のC末端配列EEVDである。
配列番号64は、Hsp90のC末端配列MEEVDである。
配列番号65は、RQIKIWFQNRRMKWKKRAYAR(Antp-RAYAR)である。
配列番号66は、RQIKIWFQNRRMKWKKAAYAR(Antp-AAYAR)である。
配列番号67は、RQIKIWFQNRRMKWKKKGYAR(Antp-KGYAR)である。
配列番号68は、RQIKIWFQNRRMKWKKKALAR(Antp-KALAR)である。
配列番号69は、RQIKIWFQNRRMKWKKKAYGR(Antp-KAYGR)である。
配列番号70は、KAYAAAGNSYTFK(TPR 変異体(mutant)1)である。
配列番号71は、KAYARIGNSGGG(TPR 変異体(mutant)2)である。
配列番号72は、RKFSAAIGYNKY(スクランブルペプチド(TPR scramble))である。
図面
【図5】
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【図8A】
1
【図9】
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【図14】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8B】
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【図8C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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