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明細書 :全反射蛍光X線分析装置及び全反射蛍光X線分析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5846469号 (P5846469)
登録日 平成27年12月4日(2015.12.4)
発行日 平成28年1月20日(2016.1.20)
発明の名称または考案の名称 全反射蛍光X線分析装置及び全反射蛍光X線分析方法
国際特許分類 G01N  23/223       (2006.01)
FI G01N 23/223
請求項の数または発明の数 7
全頁数 19
出願番号 特願2010-527698 (P2010-527698)
出願日 平成21年9月2日(2009.9.2)
国際出願番号 PCT/JP2009/004328
国際公開番号 WO2010/026750
国際公開日 平成22年3月11日(2010.3.11)
優先権出願番号 2008225046
優先日 平成20年9月2日(2008.9.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2014-010539(P2014-010539/J1)
審査請求日 平成24年8月31日(2012.8.31)
審判請求日 平成26年6月4日(2014.6.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】河合 潤
【氏名】国村 伸祐
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
参考文献・文献 実開平5-2057(JP,U)
特開2000-298107(JP,A)
特開昭63-78056(JP,A)
特開2000-214107(JP,A)
特開平9-61382(JP,A)
特開2008-122144(JP,A)
特開平6-27056(JP,A)
調査した分野 G01N 23/00 - 23/227
特許請求の範囲 【請求項1】
試料台に水溶液試料を滴下して乾燥させ、当該試料台上に残った残渣に1次X線を照射することにより前記水溶液試料中の微量な元素分析を行う全反射蛍光X線分析装置であって、
前記1次X線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部のX線照射により発生する蛍光X線を検出するX線検出部とを備え、
前記X線照射部が、ロジウムをターゲット材とするX線管、又はタングステンをターゲット材とするX線管を含んで構成されており、前記X線管の管電圧が20kV以上、35kV以下であり、且つ、出力が5W以下であることを特徴とする全反射蛍光X線分析装置。
【請求項2】
前記X線照射部から照射された1次X線を前記試料台に導く導波路を備え、
前記導波路は、2枚のシリコンウェハーと、これらシリコンウェハーで挟持され前記シリコンウェハーとの間に1次X線の通路を形成する一対のタングステン箔と、前記シリコンウェハー及び前記タングステン箔を保持する金属製のハウジングから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項3】
前記導波路は、幅が10mmのX線出口を備えることを特徴とする請求項2に記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項4】
前記タングステン箔は厚さが10μmであることを特徴とする請求項2又は3に記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項5】
前記X線管の管電圧が、20kV以上30kV以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項6】
前記試料台上の残渣にX線を照射したときの前記X線検出部の計数率が当該X線検出部の最大積分計数率よりも小さくなるように、前記X線管及び前記X線検出部が構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項7】
前記試料台が矩形板状であることを特徴とする1~のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を試料に照射したときに発生する蛍光X線を検出して前記試料中の微量元素を測定する全反射蛍光X線分析装置及び全反射蛍光X線分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を試料に照射すると、X線照射により試料中の元素が励起されて蛍光X線を発する。蛍光X線の波長は元素に固有であることから、この蛍光X線を検出することにより元素の定性・定量分析を行うことができる。
このような蛍光X線分析法による元素の検出感度を上げるためには、試料から発せられる蛍光X線を効率よく検出するだけでなく、蛍光X線のピーク強度に対するバックグランド強度の比(ピーク/バックグランド(P/B)比)を向上することが重要である。
【0003】
ピーク/バックグランド比を向上する方法の一つに、単色化(モノクロ)したX線を試料に入射させる方法がある(特許文献1参照)。入射X線を単色化することにより、試料表面における散乱X線を低減することができ、バックグラウンドを低く抑えることができる。また、励起に寄与しないエネルギー成分のX線を取り除くこともできるため、さらにバックグラウンドを低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平6-94653号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、入射X線を単色化すると当該入射X線の強度が低下する。このため、試料から発せられる蛍光X線の強度が低下し、元素の検出感度が低下する。そこで、従来は大型の高出力X線発生装置を用いて検出感度の低下を補っているが、大型のX線発生装置を用いると、その分、蛍光X線分析装置が大型化する。また、高出力X線が外部に漏洩することを防止する遮蔽部材が必要となり、重量化する。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、小型化及び軽量化を図ることができる高感度な全反射蛍光X線分析装置及び全反射蛍光X線分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る全反射蛍光X線分析装置は、試料台に水溶液試料を滴下し乾燥させ、当該試料台上に残った残渣に1次X線を照射することにより前記水溶液試料中の微量な元素分析を行うものであって、前記1次X線を照射するX線照射部と、前記X線照射部のX線照射により発生する蛍光X線を検出するX線検出部とを備え、前記X線照射部が微弱な非単色化X線を照射することを特徴とする。
ここで、「微弱な非単色化X線」とは、例えば5W以下のX線管から照射される非単色化X線をいう。
【0008】
従来の全反射蛍光X線分析装置は全て単色化X線が用いられている。これは、X線管から放射された白色X線を単色化したほうが、白色X線をそのまま用いるよりも全反射蛍光X線分析装置の検出下限を改善できる、という飯田および合志によって1984年になされた報告("Total-Reflection X-Ray Fluorescence Analysis Using Monochromatic Beam"、JPN.J.APPL.PHYS.VOL.23(1984),No.11)に基づくものである。
【0009】
また、1980年代当時は、X線管からシンクロトロンへの移行時期でもあり、X線強度が強ければ強いほど感度がよくなるはずである、と考えられていた。このため、単色化によるX線強度の低下を補うためには高出力のX線源を用いればよいと考えられていた。このような考えは現在まで引き継がれており、現在普及している高感度全反射蛍光X線分析装置は全て高出力のX線源とX線の単色化のためのモノクロメータを備えている。
【0010】
これに対して、本発明者は、元素含有量が少ない試料について単色化X線と白色X線を用いて全反射蛍光X線分析を行ったところ、白色X線の方が単色化X線よりも検出感度が優れるという、従来の知見に反する結果を得た。このような結果が得られた理由について本発明者は次のように考えた。
【0011】
つまり、全反射蛍光X線分析装置では、オプティカルフラットからなる試料台の上の試料残渣にX線を照射することにより励起された元素から発生する蛍光X線を検出する。ところが、白色X線を用いると、白色部分、つまり広い波長範囲のX線が散乱し、元素の励起に寄与することなく検出器に入射する。
【0012】
1980年代は、検出下限の水準が現在ほど低くはなく、試料台上の試料残渣の量が多かったため、白色X線を用いると散乱X線が多く発生する。また、上述したように1980年代は高強度X線を用いれば検出感度が良くなると考えられていた。しかし、高強度の白色X線を用いると散乱X線が多く発生し、これが半導体検出器に入射して当該検出器を飽和させるため、検出下限を悪化させる。このため、従来は、X線を単色化して試料残渣に散乱されにくいスペクトルをもつX線を用いること、及び、単色化によるX線強度の減少を高電力のX線管を用いて補うことが、検出下限を下げるためには必須であると考えられていた。
【0013】
しかし、現在の検出下限の水準はナノグラム(ng)オーダーであり、このような極微量の試料残渣に対して低出力のX線をそのまま照射してもX線の散乱が少ない。このため、X線を単色化しなくても入射X線の多くを元素の励起に有効に用いることができ、むしろ感度が向上するという結果が得られた。
従って、本発明の蛍光X線分析装置は、試料の絶対量が少ないほど、より高感度になりその有効性を発揮する。
【0014】
本発明の全反射蛍光X線分析装置においては、前記X線照射部は、ロジウムをターゲット材とするX線管を含んで構成したり、タングステンをターゲット材とするX線管を含んで構成したりすることができる。
また、試料台上の残渣にX線を照射したときのX線検出部の計数率が当該X線検出部の最大積分計数率よりも小さくなるように、X線管及びX線検出部が構成されていると良い。
【0015】
ここで、X線検出器の計数率をP(cps)とすると、X線検出器の計数率Pは次の式(1)で表される。
【数1】
JP0005846469B2_000002t.gif
なお、I3xnは試料中の元素xから発せられる蛍光X線nの強度、I4は散乱X線の強度、I5vmは試料台の構成材料中の元素vから発せられる蛍光X線mの強度を表す。また、K5は係数、Tは測定時間を表す。
【0016】
上記蛍光X線nの強度I3xnは次の式(2)で表される。
【数2】
JP0005846469B2_000003t.gif
なお、μ2は測定雰囲気の線吸収係数、μ3は検出器の窓材の線吸収係数、t2,t3,t4はそれぞれ入射X線が試料に照射されるまでに測定雰囲気中を通過する距離、X線がX線検出器に入射するまでに測定雰囲気中を通過する距離、X線検出器の窓材の厚さを示す。また、ρxは単位体積当たりの元素xの重量、Vは入射X線が照射する試料体積、Ifxn(E)は強度1のあるエネルギーを持つ入射X線から発生する単位重量当たりの元素xの蛍光X線nの強度、R(E)はX線の鏡面反射率、Sxnは蛍光X線の検出効率、Ωは検出器の立体角を示す。
【0017】
上記散乱X線の強度I4は次の式(3)で表される。
【数3】
JP0005846469B2_000004t.gif
なお、K4は定数、φは入射X線の視射角、S(E)はエネルギーEのX線の検出効率を示す。
【0018】
また、試料台の構成材料中の元素vから発せられる蛍光X線mの強度I5vmは次の式(4)で表される。
【数4】
JP0005846469B2_000005t.gif
なお、Ifvmは強度1のあるエネルギーを持つ入射X線から発生する元素vの単位重量当たりの蛍光X線の強度を示す。
【0019】
また、上記式(4)中、X線管から発生する連続X線の強度I1は、X線のエネルギーの関数として次の式(5)で表すことができる。
【数5】
JP0005846469B2_000006t.gif
なお、E0はX線エネルギーの最大値、iはX線管の管電流、ZはX線管のターゲット材の原子番号、μ1はX線管の窓材の線吸収計数、t1は窓材の厚さを示す。また、K1、K2は係数を示す。
【0020】
X線管のターゲット材から発生する特性X線yの強度I2yは次の式(6)で表される。
【数6】
JP0005846469B2_000007t.gif
なお、f3y(E)は特性X線yの強度分布、(E1-E2)は特性X線yのピーク幅、K3は定数を示す。
上記式(1)~(6)より、X線管が放射するX線エネルギーの最大値、X線管の管電流、ターゲット材の原子番号、X線管の窓材の線吸収係数・厚さ、X線管から試料までの距離、試料からX線検出器までの距離、X線検出器の窓材の線吸収係数・厚さ、X線検出器の立体角等を、測定対象元素の原子番号に応じて適宜に設定することにより、前記X線検出器の計数率P(cps)を当該X線検出器の最大積分計数率Pmax(cps)よりも小さくすることができる。
【0021】
蛍光X線分析に用いられるX線検出器には半導体検出器、シリコンドリフト検出器、比例計数管、マイクロカロリーメータ、シンチレーション検出器等、様々な検出器がある。X線検出器は、その種類によって検出値の上限が異なるが、いずれの検出器においてもX線光子の全計数値が閾値を超えると不感時間を無視できなくなり、感度が低下する。
従って、X線検出器に入射するX線光子の全計数値が閾値、つまりX線検出器の最大積分計数率を超えないようにすれば、感度の低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、X線源から放射されるX線を単色化することなくそのまま試料を照射するため、全反射蛍光X線分析装置の小型化を図ることができる。また、X線源から放射されるX線を単色化しないため、小型の低電力のX線源を用いることができる。従って、遮蔽部材を軽量にしたり不要にしたりすることができ、全反射蛍光X線分析装置の軽量化を図ることができる。
【0023】
特に、近年、河川や土壌の汚染調査、農産物や食品中の有害元素の監視等への蛍光X線分析方法の利用が期待されており、現場への持ち運びが容易なように小型で軽量な蛍光X線分析装置の開発が望まれている。本発明によると、X線をモノクロ化するための構成が不要であるとともに、小型の低電力のX線源を用いることができるので、このように携行可能な蛍光X線分析装置を実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の全反射蛍光X線分析装置のブロック図。
【図2】導波路の斜視図(a)、及び分解斜視図(b)。
【図3】試料台、X線管、X線検出器の概略的な位置関係を示す図。
【図4】本発明の実施例1に係る全反射蛍光X線分析装置を用いたときのブランク試料の蛍光X線スペクトルを示す図。
【図5】試料の量に応じた蛍光X線のスペクトルの変化を示す図。
【図6】日本分析化学会河川水認証標準物質(JSAC 0302-3)の主要含有元素の認証値を示す図。
【図7】単色化X線、及び非単色化X線を試料に照射したときに得られる蛍光X線スペクトルを比較して示す図。
【図8】鉛(Pb)を含む試料に対して非単色化X線を照射したときの蛍光X線スペクトルの視射角による変化を示す図。
【図9】本発明の実施例2に係る全反射蛍光X線分析装置を用いたときの試料の量に応じた蛍光X線のスペクトルの変化を示す図。
【図10】Sc,Cr,Co,As,Srを含む試料に対して非単色化X線を照射したときの蛍光X線スペクトルの視射角による変化を示す図。
【図11】分析元素の原子番号と検出下限との関係を示す図。
【図12】本発明の実施例3に係る全反射蛍光X線分析装置を用いたときの管電圧と信号対バックグラウンド比の関係を示す図。
【図13】管電流と信号対バックグラウンド比との関係を示す図。
【図14】ターゲット材の原子番号と信号対バックグラウンド比との関係を示す図。
【図15】視射角と信号対バックグラウンド比との関係を示す図。
【図16】試料量と感度係数との関係を示す図。
【図17】円板状の試料台と矩形板状の試料台のバックグラウンドの蛍光X線スペクトルを示す図。
【図18】円板状の試料台と矩形板状の試料台に非単色化X線を照射したときの散乱X線の様子を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の全反射蛍光X線分析装置の一例を示すブロック図である。全反射蛍光X線分析装置(以下、分析装置)10において、制御部11は、操作部12からの操作信号を受けてX線照射部13及び検出部14を制御する。X線照射部13は駆動回路131とX線管132から成り、駆動回路131によって駆動されたX線管132はX線を放射する。X線管132から放射されたX線は導波路15を通り試料台載置部16に着脱可能に装着された試料台17に入射する。検出部14はX線検出器141とX線検出器141の検出信号を増幅する増幅器142から成る。
分析装置10には、パーソナルコンピュータなどのデータ処理装置20が接続されている。データ処理装置20は、検出部14から出力される検出信号を処理する信号処理部201と、信号処理部201からの出力信号に基づきX線スペクトル等の画像を表示する表示部202等を備えている。

【0026】
図2に示すように、導波路15は2枚のシリコン(Si)ウェハー151で挟持された一対のタングステン(W)箔152と、これらを保持する金属製、例えばステンレス(SUS304等)のハウジング153から構成されている。ハウジング153には幅が10mmのX線出口154が形成されている。タングステン箔152は厚さが10μmに設定されている。導波路15に入射したX線は、シリコンウェハー151及びタングステン箔152で囲まれた空間を通ってX線出口154から出射するようになっている。

【0027】
図3は、分析装置10のX線管132、試料台17、X線検出器141の概略構成図である。X線管132から放射され、導波路15を通ったX線は1次X線として試料台17上の試料Sに入射する。このとき、1次X線は全反射する視射角度θで試料台17に照射され、このX線照射によって発生する蛍光X線はX線検出器141で検出される。X線管17から放射されたX線は単色化されずに試料Sに照射され、試料S中の元素を励起するようになっている。
なお、図3では、試料台17からX線検出器141までの距離を誇張して描いているが、実際は、前記試料台17からX線検出器141までの距離は、前記X線管132から試料台17までの距離に比べると非常に短い。例えばX線管132から試料台17までの距離が30mmのとき、試料台17からX線検出器141までの距離は1mmに設定される。

【0028】
試料台17は平滑な載置面を有する例えば石英オプティカルフラットから構成されている。試料Sは、試料台17に水溶液を一定量(例えば10μl~100μl)滴下し、乾燥させた残渣からなる。試料Sに対するX線照射により、試料S中に含まれる元素が励起され、この結果、蛍光X線が放出される。この蛍光X線をX線検出器141で検出し、得られたX線スペクトルに基づきデータ処理装置20は目的元素の定量分析を行う。
以下、本発明の全反射蛍光X線分析装置について具体的な実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0029】
実施例1では、X線管として自然空冷式ロジウム(Rh)ターゲットX線管、X線検出器としてSi-PIN検出器(最大積分計数率:~2×105cps)を用いて分析装置10を構成し、種々の測定を行った。
〔ブランク試料のX線スペクトルの測定〕
以下の測定条件で、ブランク試料(試料台3に何も滴下していない状態)に単色化していないX線(非単色化X線)を照射したときのX線スペクトルを測定した。
【実施例1】
【0030】
測定条件
・自然空冷式ロジウム(Rh)ターゲットX線管の電力:管電圧40kV、管電流50μA(2W)
・X線検出器:Si-PIN検出器(最大積分計数率:~2×105cps)
・1次X線の視射角:0.05゜
・X線管と試料中心の距離:30mm
・X線検出器と試料中心の距離:1mm
【実施例1】
【0031】
図4にその結果を示す。図4から明らかなように、X線管からの特性X線由来のRh、空気中に0.93%含まれるAr、石英オプティカルフラット由来のSiのピークがそれぞれ検出された。さらに、Ni,Pb,Snの不純線が検出されたが、これらはいずれも装置の材料由来と思われた。
【実施例1】
【0032】
また、上記装置を用いてブランク試料に非単色化X線を照射したときのSi-PIN検出器の積分計数率は1×103cpsであった。当該Si-PIN検出器の最大積分計数率は2×105cpsであり、ブランク試料に対して非単色化X線を照射したときのX線検出器の積分計数率は、当該X線検出器の最大積分計数率よりも十分に小さい。
【実施例1】
【0033】
水溶液試料中の元素が微量であればあるほど当該水溶液試料を乾燥させたときの残渣が微量になる。このため、微量元素を含有する水溶液試料の残渣が載置された試料台に非単色化X線が入射しても前記残渣による散乱が少なく、ほぼ全ての入射X線は全反射するか元素を励起する。従って、微量元素を含有する水溶液試料の残渣が載置された試料台に非単色化X線を照射したときのX線スペクトルは、図4に示すブランク試料のX線スペクトルに残渣(つまり、微量元素)から発せられる蛍光X線のスペクトル線が加わるだけとなる。
以上より、微量元素を含有する水溶液試料を乾燥させた残渣が載置された試料台に対して上記した測定条件で非単色化X線を照射した場合でも、X線検出器の積分計数率が当該X線検出器の最大積分計数率を上回ることはなく、微量元素の分析が可能であると推定された。
【実施例1】
【0034】
なお、自然空冷式ロジウムターゲットX線管以外のX線管について、管電流以外のパラメータを同じに設定した場合のブランク試料測定時の積分計数率は、計算上、以下のようになる。
強制空冷式X線管:40kV,1mA(40W):2×10cps
水冷式X線管:40kV,10mA(400W):2×10cps
回転対陰極X線管:40kV,100mA(4kW):2×10cps
【実施例1】
【0035】
つまり、水冷式X線管や回転対陰極X線管を用いたときのX線検出器の積分計数率は、Si-PIN検出器の最大積分計数率と同じか上回る。従って、水冷式X線管や回転対陰極X線管とSi-PIN検出器とを組み合わせて用いる場合は、X線を単色化しなければSi-PIN検出器が飽和してしまうためX線スペクトルを検出できず、微量元素分析ができない。
また、シリコンドリフト(SDD)検出器の最大積分計数率は約1×10cpsである。従って、出力が2kWよりも大きいX線管(回転対陰極X線管)を用いる場合には、単色化X線を用いなければSDD検出器が飽和してしまうため、X線スペクトルの検出ができない。
【実施例1】
【0036】
Si(Li)検出器の最大積分計数率は約1×10cpsである。従って、出力が20Wよりも大きいX線管を用いる場合には、単色化X線を用いなければSi(Li)検出器が飽和してしまうため、X線スペクトルの検出ができない。
以上より、X線検出器の最大積分計数率とX線管の出力を適宜の関係に設定し、前記X線検出器の計数率が当該X線検出器の最大積分計数率よりも小さくなるようにすれば、非単色化X線を試料に照射して微量元素分析を行うことが可能であると推定された。
【実施例1】
【0037】
〔試料中の元素含有量と蛍光X線スペクトルの関係〕
元素の含有量が異なる試料について非単色化X線を照射したときに発生する蛍光X線のスペクトルの変化を調べた。その結果を図5に示す。試料には、日本分析化学会河川水認証標準物質(JSAC 0302-3)を用いた。この標準物質の主要含有元素の認証値は図6に示す通りである。
図5(a)及び(b)は、10μl及び100μl(10μl×10滴)の標準物質を試料台に滴下し、乾燥させた後の残渣に対して下記の測定条件で非単色化X線を照射したときに得られるX線スペクトルの実測例を示す。また、図5(c)は、ブランク試料としての超純水10μlを試料台に滴下し、乾燥させた後の残渣に対して下記の測定条件で非単色化X線を照射したときに得られるX線スペクトルの実測例を示す。
なお、標準物質10μlの主要含有元素の重量は合計で約0.2μgとなり、標準物質100μlの主要含有元素の重量は合計で約2μgとなる。
【実施例1】
【0038】
測定条件
・自然空冷式ロジウム(Rh)ターゲットX線管の電力:管電圧30kV、管電流50μA(1.5W)
・X線検出器:Si-PIN検出器(最大積分計数率:~2×105cps)
・試料台:石英オプティカルフラット
・1次X線の視射角:0.05゜
・X線管と試料中心の距離:30mm
・X線検出器と試料中心の距離:1mm
【実施例1】
【0039】
図5(b)に示すように、試料中の元素総量が約2μgのときの蛍光X線のスペクトル強度(ピーク強度)は、同図(a)の約0.2μgのときに比べて増加するが、同時にバックグラウンドも増加する。このため、ピーク/バックグランド(P/B)比が悪化し、分析精度が低下する。一方、図5(a)に示すように、試料中の元素総量が約0.2μgのときのバックグラウンドは、ブランク試料のときのバックグラウンドよりもわずかに増加するだけである。従って、試料中の、分析対象(アナライト)の各元素量がそれぞれ微量(例えば、1ng以下)であるときは、1次X線を単色化しなくても含有元素が発する蛍光X線を検出することができ、元素分析を良好に行うことができる。
【実施例1】
【0040】
〔単色化X線及び非単色化X線照射による蛍光X線スペクトルの変化〕
単色化X線及び非単色化X線を下記の測定条件で試料に照射したときの蛍光X線のスペクトルを調べた。その結果を図7に示す。なお、単色化X線とは、X線源が放射するX線から一部の波長帯を取り出したものと定義され、ここでは、20keV~25keVの波長帯を取り出して単色化X線とした。
【実施例1】
【0041】
測定条件
・自然空冷式ロジウム(Rh)ターゲットX線管の電力:管電圧30kV、管電流50μA(1.5W)
・X線検出器:Si-PIN検出器(最大積分計数率:~2×105cps)
・試料台:石英オプティカルフラット
1次X線の視射角:0.05゜
X線管と試料中心の距離:30mm
X線検出器と試料中心の距離:1mm
【実施例1】
【0042】
図7(a),(b)は、いずれも各5ngのSc,Cr,Co,Zn,As,Srを含む試料に対して単色化X線(図7(a))、非単色化X線(図7(b))を照射したときに得られるX線スペクトルの実測例を示す。また、図7(c)は、ブランク試料としての超純水10μlを試料台に滴下し、乾燥させた後の残渣に対して非単色化X線を照射したときに得られるX線スペクトルの実測例を示す。
【実施例1】
【0043】
図7(a)~(c)に示すように、単色化X線を試料に照射したとき(図7(a))のX線スペクトルのバックグラウンドは、非単色化X線を試料に照射したとき(図7(b))のバックグラウンドに比べて小さく、且つ、非単色化X線をブランク試料に照射したとき(図7(c))のX線スペクトルのバックグラウンドと同程度であった。しかし、元素Sc,Cr,Co,Zn,As,Sr,Zrについては蛍光X線のピーク強度が小さく、ピーク/バックグランド(P/B)比が低かった。
【実施例1】
【0044】
一方、図7(b)および(c)に示すように、非単色化X線を試料に照射したときのX線スペクトルのバックグラウンドは、非単色化X線をブランク試料に照射したときのX線スペクトルのバックグラウンドに比べてわずかに増加したが、それを補うほど高い強度の蛍光X線が元素Sc,Cr,Co,Zn,As,Sr,Zrについて検出された。つまり、非単色化X線を用いたときの方が単色化X線を用いたときよりも高いピーク/バックグランド(P/B)比が得られることが分かった。
【実施例1】
【0045】
〔入射X線の視射角とX線スペクトルとの関係〕
10ngの鉛(Pb)を含む試料に対して下記の測定条件で非単色化X線を照射したときのX線スペクトルを、視射角を変えて調べた。その結果を図8に示す。図8の(a)は視射角を0.05°に、図8の(b)は視射角を0.10°に、図8の(c)は視射角を0.20°に設定したときのX線スペクトルを示す。
【実施例1】
【0046】
測定条件
・自然空冷式ロジウム(Rh)ターゲットX線管の電力:管電圧30kV、管電流50μA(1.5W)
・X線検出器:Si-PIN検出器(最大積分計数率:~2×105cps)
・試料台:石英オプティカルフラット
・X線管と試料中心の距離:30mm
・X線検出器と試料中心の距離:1mm
【実施例1】
【0047】
図8(a)~(c)から明らかなように、視射角が大きくなるにつれてX線スペクトルのバックグラウンドが増大する。
30keVの入射X線が石英上で全反射する臨界角は0.06°であり、入射X線のエネルギーが低くなるほど臨界角は大きくなる。入射X線の視射角が全反射臨界角よりも小さいときは当該入射X線は全反射し、視射角の増加と共にエネルギーが高い入射X線の反射率が低下する。反射率が低い入射X線は散乱X線となり、蛍光X線スペクトルのバックグラウンド成分になる。従って、入射X線の視射角が増加するとバックグラウンドが増大し、この結果、検出感度が悪化する。
【実施例1】
【0048】
非単色化X線は特定の波長帯から構成されているわけではないため、全反射臨界角はある幅を持つことになる。図8(a)は、全ての入射X線が全反射する視射角(0.05°)で非単色化X線を試料に照射したときのX線スペクトルである。図8(a)に示すように、X線スペクトルには明瞭な鉛の蛍光X線ピークが検出された。
従って、全ての入射X線が全反射する条件の視射角で照射すれば、非単色化X線を用いた場合でもバックグラウンドを低く抑えることができ、検出感度の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0049】
実施例2では、X線管として自然空冷式タングステン(W)ターゲットX線管、X線検出器としてSi-PIN検出器(最大積分計数率:~2×105cps)を用いて分析装置10を構成し、種々の測定を行った。
【実施例2】
【0050】
〔試料中の元素含有量と蛍光X線スペクトルの関係〕
元素の含有量が異なる試料について非単色化X線を照射したときに発生する蛍光X線のスペクトルの変化を調べた。その結果を図9に示す。試料には、実施例1と同様、日本分析化学会河川水認証標準物質(JSAC 0302-3)を用いた。
【実施例2】
【0051】
図9(a)及び(b)は、100μl(10μl×10滴)及び200μl(10μl×20滴)の標準物質を試料台に滴下し、乾燥させた後の残渣に対して下記の測定条件で非単色化X線を照射したときに得られるX線スペクトルの実測例を示す。また、図9(c)は、ブランク試料としての超純水10μlを試料台に滴下し、乾燥させた後の残渣に対して下記の測定条件で非単色化X線を照射したときに得られるX線スペクトルの実測例を示す。
なお、標準物質100μlの主要含有元素の重量は合計で約2μgとなり、標準物質200μlの主要含有元素の重量は合計で約4μgとなる。
【実施例2】
【0052】
測定条件
・自然空冷式タングステン(W)ターゲットX線管の電力:管電圧25kV、管電流50μA(1.25W)
・X線検出器:Si-PIN検出器(最大積分計数率:~2×105cps)
・試料台:石英オプティカルフラット
・1次X線の視射角:0.05゜
・X線管と試料中心の距離:30mm
・X線検出器と試料中心の距離:1mm
【実施例2】
【0053】
図9(a)~(c)に示すように、いずれの蛍光X線スペクトルにおいてもX線管からの特性X線由来のW、空気中に0.93%含まれるAr、石英オプティカルフラット由来のSiのピークがそれぞれ検出された。また、Niの不純線が検出されたが、これらは装置の材料由来と思われた。
【実施例2】
【0054】
図9(a),(b)から明らかなように、試料中の元素総量が約4μgのときの蛍光X線のスペクトル強度(ピーク強度)は、約2μgのときに比べて増加するが、同時にバックグラウンドも増加した。
また、試料中の元素総量が約2μgのときの微量な元素(試料中の含有量がppbレベルの元素:Cr,Mn,Fe)の蛍光X線の分析線の信号対バックグラウンド比は、試料中の元素総量が約4μgのものより1.2~1.8倍向上した。
以上より、試料量を少なくすることにより、1.25Wという微弱なX線源を用いても微量元素を高感度で測定できることがわかる。
【実施例2】
【0055】
〔入射X線の視射角とX線スペクトルとの関係〕
Sc,Cr,Co,As,Srをそれぞれ1ngずつ含む試料に対して下記の測定条件で非単色化X線を照射したときのX線スペクトルを、視射角を変えて調べた。その結果を図10に示す。図10の(a)は視射角を0.05°に、図10の(b)は視射角を0.20°に設定したときのX線スペクトルを示す。また、図10の(c)はブランク試料(超純粋10μlを滴下乾燥した試料)の視射角を0.05°に設定したときのX線スペクトルを示す。
測定条件
・自然空冷式タングステン(W)ターゲットX線管の電力:管電圧25kV、管電流50μA(1.25W)
・X線検出器:Si-PIN検出器(最大積分計数率:~2×105cps)
・試料台:石英オプティカルフラット
・X線管と試料中心の距離:30mm
・X線検出器と試料中心の距離:1mm
【実施例2】
【0056】
図10(a),(b)から明らかなように、視射角が大きい程、X線スペクトルのバックグラウンドが増大する。
25keVの入射X線が石英上で全反射する臨界角は約0.08°であり、この臨界角は入射X線のエネルギーが低いほど大きくなる。従って、視射角の増加と共にエネルギーが高い入射X線の反射率から減少していく。反射率が低いエネルギーを持つ入射X線は散乱され、スペクトルのバックグラウンド成分となる。
【実施例2】
【0057】
入射X線として単色化X線を用いれば、単色化X線として取り出したある波長帯のX線のバックグラウンドのみが視射角の増加に伴い増加する。
入射X線として非単色化X線を用いると、視射角の増加に伴いより広い波長帯のバックグラウンドが増大し、検出感度が低下する。しかし、全ての入射X線が全反射する視射角で測定を行えば、非単色化X線を用いてもバックグラウンドは低くなり、高感度分析が可能になる。
従って、全ての入射X線が全反射する条件の視射角(Φ=0.05°)で照射すれば、非単色化X線を用いた場合でもバックグラウンドを低く抑えることができ、1ngのSc,Cr,Co,As,Srを検出することができる。
【実施例2】
【0058】
図11はロジウムターゲット、タングステンターゲットのX線管を用いたときの分析対象元素の原子番号と検出下限との相関関係を示す。ロジウムターゲットについては、単色化X線及び非単色化X線を試料に照射したときの検出下限を、タングステンターゲットについては、非単色化X線を照射したときの検出下限を示す。
【実施例2】
【0059】
ロジウムターゲットのX線管は、非単色化X線、単色化X線のいずれについても電力が、管電圧30kV、管電流50μA(1.5W)のものを、タングステンターゲットのX線はその電力が、管電圧25kV、管電流50μA(1.25W)のものを用いた。また、ロジウムターゲットのX線管を用いたときの測定時間は600秒、タングステンターゲットのX線管を用いたときの測定時間は1800秒とした。その他の条件は、上述した実施例1、2と同じである。
【実施例2】
【0060】
図11に示すように、タングステンターゲットX線管を用いたときの測定時間はロジウムターゲットX線管を用いたときの3倍であるが、測定時間を3倍にしても検出下限は1/√3に改善されるだけである。従って、タングステンターゲットのX線管を用いた方が、同じ測定時間(600秒)に換算しても検出下限が低くなる。
また、ロジウムターゲットのX線管を用いた場合において、非単色化X線を照射したときの方が、単色化X線を照射したときよりも検出下限が低くなった。タングステンターゲットのX線管を用いたときも同様の結果が得られると考えられる。
【実施例2】
【0061】
なお、ここでは、原子番号が20~38の元素について測定したが、これらの原子番号の元素について得られた結果は、他の原子番号の元素についても一般化できることは良く知られている。
【実施例2】
【0062】
以上より、非単色化X線を用いる方が単色化X線を用いるよりも微量元素の分析に適しており、タングステンターゲットX線管を用いた方がロジウムターゲットX線管を用いたときよりも微量元素の分析に適していることが分かる。
【実施例3】
【0063】
実施例3では、分析感度を向上させるために最適な管電圧、管電流、ターゲット材、視射角、試料量、試料台の形状について検討した。ここでは、最大管電圧,最大管電流がそれぞれ50 kV,200μA のタングステンターゲットX線管(50 kV Magnum(Moxtek))を用いて蛍光X線分析装置を構成し、非単色化X線を試料に照射して以下の実験を行った。
【実施例3】
【0064】
〔管電圧と分析感度の関係〕
まず、X線管の管電流を50μA とし、管電圧を20,25,30,35 kV と変えて試料の蛍光X線スペクトルを測定した。入射X 線の視射角は,35 keV の全反射臨界角度(0.05°)よりも小さい0.04°とした。試料には、超純水を滴下乾燥した試料(ブランク試料)、及びそれぞれ0.5 ppmのSc,Cr,Co,As を含む混合標準試料溶液を1μl滴下乾燥したものを用いた。得られたブランク試料および混合標準試料の蛍光X線スペクトルから、管電圧と蛍光X線分析線の信号対バックグラウンド比の関係を求めた。その結果を図12に示す。
図12に示すように、管電圧が25kVのときにCr,Co,AsKα線の信号対バックグラウンド比が最も高くなった。また、管電圧が20から25kV辺りでScKα線の信号対バックグラウンド比が最も高くなった。
【実施例3】
【0065】
管電圧を上げるとX線管から発生するX線のエネルギー範囲が広くなり、管電圧の2乗に比例して連続X線の強度が強くなる。また、管電圧の上昇に伴い、試料台や試料からの入射X線の散乱が増加するため、管電圧を上げすぎると蛍光X線分析線の信号対バックグラウンド比が低下する。つまり、分析感度を改善するためには、最適な管電圧に設定することが重要である。
【実施例3】
【0066】
以上から、広範囲の元素をK線励起で同時に高感度分析するための本装置の最適な管電圧は25kVあたりであると考えられる。また、この管電圧を25kVとして測定すれば、K線及びL線励起により、周期表上でベリリウムからウランまでの元素を分析することが可能であると考えられる。
【実施例3】
【0067】
〔管電流と分析感度の関係〕
タングステンターゲットX線管の管電圧を上述の最適値(25 kV)とし、管電流を20,50,100,150,200μAに変えて試料の全反射蛍光X線スペクトルを測定した。入射X線の視射角は,35 keV の全反射臨界角度(0.05°)よりも小さい0.04°とした。上述の管電圧の最適値を求めたときと同様、試料には、それぞれ0.5 ppmのSc,Cr,Co,As を含む混合標準試料溶液を1μl滴下乾燥したものを用いた。得られた試料の蛍光X線スペクトルから、管電流と蛍光X線分析線の信号対バックグラウンド比の関係を求めた。その結果を図13に示す。
【実施例3】
【0068】
管電流に比例してX線管から発生する連続X線の強度は大きくなるので、蛍光X線面積強度及びバックグラウンド強度は管電流にほぼ比例して強くなる。従って、図13に示すように、各試料の蛍光X線分析線の信号対バックグラウンド比は管電流によらず略一定であった。
【実施例3】
【0069】
〔ターゲット材と分析感度の関係〕
X線管から発生する連続X線の強度はターゲット材の原子番号に比例して大きくなる。そこで、ターゲット材と分析感度の関係を調べた。実験は、タングステンターゲットX線管(タングステンの原子番号:74)及びロジウムターゲットX線管(ロジウムの原子番号:45)を用い、ロジウムターゲットX線管では管電圧を30kV、管電流を50μAとして、タングステンターゲットX線管では管電圧を25 kV、管電流を50μAとして試料の全反射蛍光X線スペクトルを測定することにより行った。入射X 線の視射角は0.04°とした。また試料には、それぞれ0.1 ppmのSc,Cr,Co,As, Sr を含む混合標準試料溶液を10μl滴下乾燥したものを用いた。得られた試料の蛍光X線スペクトルから、ターゲット材の原子番号と蛍光X線分析線の信号対バックグラウンド比の関係を求めた。その結果を図14に示す。
【実施例3】
【0070】
タングステン管から発生する連続X線の強度はロジウム管よりも大きく、発生する特性X線の強度も大きくなるため、タングステン管を用いる方が元素の励起効率が高くなる。以上から、タングステン管を用いることにより、蛍光X線分析線の信号対バックグラウンド強度比を改善することができる。
【実施例3】
【0071】
〔入射角(視射角)と分析感度の関係〕
視射角の増大に伴い、試料台からの入射X線の散乱が増加し、スペクトルのバックグラウンドが高くなる。そこで、入射X線の視射角と分析感度との関係を調べた。実験は、タングステンターゲットX線管を用い、管電圧を25kV、管電流を50μAとした。そして、入射X線の視射角を0.00, 0.05, 0.10, 0.15, 0.20°に変えて試料の全反射蛍光X線スペクトルを測定した。試料には、0.1 ppmのSc,Cr,Co,As をそれぞれ含む混合標準試料溶液を10 μl滴下乾燥したものを用いた。得られた試料の蛍光X線スペクトルから、入射X線の視射角と蛍光X線分析線の信号対バックグラウンド比の関係を求めた。その結果を図15に示す。
【実施例3】
【0072】
図15に示すように、AsKα線の信号対バックグラウンド強度比は視射角が0.00°のときに最も高くなったが、Sc,Cr,Co,Kα線の信号対バックグラウンド強度比は視射角0.05°辺りで最も高くなった。以上から、広範囲の元素を高感度で同時に分析するために最適な視射角は0.05°辺りであると考えられた。
【実施例3】
【0073】
〔試料量と元素の励起効率の関係〕
試料量を少なくすると、試料残渣から入射X線の散乱が減少し、蛍光X線の励起への反射X線の寄与が増加するため、感度係数(counts/ng)が改善されると考えられる。このことを調べるために、ロジウムターゲットX線管を用い、管電圧を30kV、管電流を50μAとして試料の全反射蛍光X線スペクトルを測定し、感度係数(counts/ng)を求めた。試料には、超純水を滴下乾燥した試料(ブランク試料)及びSc,Cr,Co,As, Sr, Zn をそれぞれ0.1~10ppm含む混合標準試料溶液を10μl滴下乾燥したものを用いた。例えば、それぞれ0.1ppmのSc,Cr,Co,As, Sr, Znを含む混合標準溶液を10 μlを滴下乾燥すると、その乾燥残渣中にはそれぞれ1 ngのSc,Cr,Co,As, Sr, Znが含まれる。その結果を図16に示す。
【実施例3】
【0074】
図16に示すように、いずれの試料についても含有元素の量が1ng辺りのときに感度係数が最も高くなった。従って、含有元素の量を1ngとすれば、検出感度を向上できる。
【実施例3】
【0075】
〔試料台の形状の最適化〕
試料台の形状により分析感度が変化するかを調べるために、直径3cmの円板状の石英ガラス製の試料台(円形試料台)及び3cm四方の矩形(正方形)板状の石英ガラス製の試料台(正方形試料台)を用いて蛍光X線スペクトルを測定した。測定には、タングステンターゲットX線管を用い、管電圧を25 kV、管電流を200μA、視射角を0.04°とした。また、試料台には何も滴下せずに測定した。従って、得られたスペクトルはバックグラウンドの蛍光X線スペクトルに相当する。その結果を図17に示す。
図17中、黒く塗りつぶしたスペクトルが正方形試料台の蛍光X線スペクトルを、実線で示したスペクトルが円形試料台の蛍光X線スペクトルを示している。図17から、円形試料台を用いた方がバックグラウンドが大きくなることが分かる。
【実施例3】
【0076】
この理由を図18を用いて説明する。図18に示すように、試料台の端部(エッジ部分)に当たった入射X線は散乱する。このエッジからの散乱X線は様々な方向に進むが、円形試料台の方が正方形試料台よりも、多くの散乱X線がX線検出器に向かう。すなわち、X線管と試料台との距離が一定の場合、正方形試料台であれば、円形試料台と比較してエッジと検出器の距離が遠くなる。例えば、正方形試料台であれば、円形試料台の場合にエッジであった部分も試料台上であるため、入射X線が全反射し、円形試料台と比較してエッジからの散乱X線が検出器に入射し辛い。このため、円形試料台の方が正方形試料台よりもバックグラウンドが増大する。従って、分析感度を改善するためには、エッジと検出器の距離が遠くなるよう、例えば矩形の試料台、正方形試料台を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0077】
10…全反射蛍光X線分析装置
13…X線照射部
132…X線管
14…検出部
15…導波路
17…試料台
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図18】
16
【図17】
17