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明細書 :入れ子フレーム構造体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5283137号 (P5283137)
登録日 平成25年6月7日(2013.6.7)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
発明の名称または考案の名称 入れ子フレーム構造体
国際特許分類 E04B   1/26        (2006.01)
FI E04B 1/26 A
請求項の数または発明の数 13
全頁数 23
出願番号 特願2010-530726 (P2010-530726)
出願日 平成21年9月18日(2009.9.18)
国際出願番号 PCT/JP2009/004770
国際公開番号 WO2010/035456
国際公開日 平成22年4月1日(2010.4.1)
優先権出願番号 2008247033
優先日 平成20年9月26日(2008.9.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年8月31日(2012.8.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】小林 正美
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査官 【審査官】星野 聡志
参考文献・文献 特開平11-107367(JP,A)
調査した分野 E04B1/26
E04B1/348
E04B1/18
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の厚さを持つ矩形の板材から成る大フレームと、
同じく矩形の板材から成り、縦枠の外寸が、前記大フレームの縦枠の内寸に等しい小フレームと、
を組み合わせることにより構成される構造体であって、
2個の大フレームを平行に、小フレームの横枠の内寸だけ離して配置し、
2個の小フレームを、両大フレームに直交するように、且つ、両大フレームの両側の縦枠において内縁に接するように配置する
ことにより、4個の大小フレームを井桁状に組み立てたユニット入れ子フレーム構造体を基本構造とすることを特徴とする入れ子フレーム構造体。
【請求項2】
前記大フレーム及び/又は小フレームが、一方の端部では一方の面において前記所定厚さの1/2の厚さだけ正方形状に削減され、他方の端部では他方の面において同じ厚さだけ正方形状に削減された直線状の板材を正方形状に組み合わせて製作されたものである請求項1に記載の入れ子フレーム構造体。
【請求項3】
小フレームの枠から外側に2個の係止具を突出させることにより大フレームを挟んで固定するようにした請求項1又は2に記載の入れ子フレーム構造体。
【請求項4】
小フレームの縦枠の一方の面において、前記大フレームの内寸の範囲内で厚みを増すことにより、大フレームからの小フレームの抜けを防止するようにした請求項1~3のいずれかに記載の入れ子フレーム構造体。
【請求項5】
前記大フレームの横枠から、それ自身の縦枠との間に前記小フレームを挟んで固定するための係止具を突出させた請求項1~4のいずれかに記載の入れ子フレーム構造体。
【請求項6】
前記ユニット入れ子フレーム構造体の1つのコーナーにおいて、他の大フレーム又は他の小フレームを同様に入れ子にして連接することにより、ユニット入れ子フレーム構造体を横方向に連接した請求項1~5のいずれかに記載の入れ子フレーム構造体。
【請求項7】
前記大フレームの縦枠、前記小フレームの縦枠、前記係止具のいずれかを縦に突出させて互いに連結することによりユニット入れ子フレーム構造体を縦方向に連接した請求項1~6のいずれかに記載の入れ子フレーム構造体。
【請求項8】
前記ユニット入れ子フレーム構造体の内部に向けて同様の入れ子構造を繰り返すことにより多重入れ子フレーム構造体とした請求項1~4のいずれかに記載の入れ子フレーム構造体。
【請求項9】
所定の厚さを持つ矩形の板材を井桁状に組み立てた大フレームと、
同じく矩形の板材を井桁状に組み立てて成り、縦枠の外寸が、前記大フレームの縦枠の内寸に等しい小フレームと、
を組み合わせることにより構成される構造体であって、
2個の大フレームを平行に、小フレームの横枠の内寸だけ離して配置し、
2個の小フレームを、両大フレームに直交するように、且つ、両大フレームの両側の縦枠において内縁に接するように配置する
ことにより、4個の大小フレームを井桁状に組み立てたユニット入れ子フレーム構造体を基本構造とすることを特徴とする入れ子フレーム構造体。
【請求項10】
前記大フレームが辺長F、枠幅aの正方形であり、小フレームが辺長F-2aの正方形であるか、又は、一方の辺長がF-2a、他方の辺長がFの長方形である、請求項9に記載の入れ子フレーム構造体。
【請求項11】
所定の厚さを持つ矩形の板材を井桁状に組み立てた大フレームと、
同じく矩形の板材を井桁状に組み立てて成り、縦枠の外寸が、前記大フレームの縦枠の内寸に等しい小フレームと、
を組み合わせることにより構成される構造体であって、
2個の大フレーム及び2個の小フレームを、大フレーム同士及び小フレーム同士が面を接するとともに、全フレームの一方の縦辺が中央に集合するように組み立てた十字組手構造体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の入れ子フレーム構造体を用いた家具。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の入れ子フレーム構造体を用いたシェルター。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、大小2種の矩形(ロの字形)のフレームを入れ子にして組み合わせることにより構成される、家屋のような大型の構造体や容器のような小型の構造体のいずれにも適用可能な入れ子フレーム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の建築物には鉄筋コンクリート構造、鉄骨構造、軽量形鋼構造等が多く用いられているが、これらは柱や梁の鉄構造材をセメントや溶接やボルトで完全に固定するという構造を基本としている。また、今日の木造建築物では、四辺形に組まれた軸組に、金物で固定する筋交いを対角線状に入れて、風や地震などによる水平力に抵抗し、四辺形が菱形に変形するのを防ぐ方法が一般的である。
【0003】
それに対して、日本の伝統的な木造建築物は、木材の持つ引張や圧縮に強い特性を生かした、「木組み」を基本構造とする木造建築が主体であった。この木組みは、木材の持つ反力と、直交する木材どうしの「めり込み」を最大限に利用して組み立てる構造物であり、台風や地震などの横方向の力にも強いという特性を持つ。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】「建築大辞典 第2版」, 青木繁等編, 1993年6月10日, 株式会社彰国社発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
日本の伝統的木組みは上記のようなすばらしい特性を持つものの、その製作には熟練した技術が必要とされる。もちろん、コンピュータ制御の木工機械を用いれば同様のものを製造することが可能ではあるが、当然、そのコストは相当なものとなる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、非常に容易に製作することのできる極めて単純な要素を素材とし、日本の伝統的木組みと同様の原理を用いて、小規模なものから大規模なものまで、任意の大きさの構造物を組み立てることのできるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る入れ子フレーム構造体は、
所定の厚さを持つ矩形の板材から成る大フレームと、
同じく矩形の板材から成り、縦枠の外寸が、前記大フレームの縦枠の内寸に等しい小フレームと、
を組み合わせることにより構成される構造体であって、
2個の大フレームを平行に、小フレームの横枠の内寸だけ離して配置し、
2個の小フレームを、両大フレームに垂直に、且つ、両大フレームの両側の縦枠において内縁に接するように配置する
ことにより、4個の大小フレームを井桁状に組み立てたユニット入れ子フレーム構造体を基本構造とすることを特徴とする。
【0008】
なお、ここで言う「縦」「横」は重力の方向に関する絶対的な方向を指すものではなく、矩形の枠の一方を「縦」、他方を「横」とする便宜上の用法にしか過ぎない。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る入れ子フレーム構造体は、基本的には、矩形の板材から成る大フレームと、同じく矩形の板材から成る小フレームのみで構成されるため、製作が極めて容易であり、低コストの大量生産にも適している。
【0010】
また、2個の大フレームと2個の小フレームの入れ子構造で構成されるユニット入れ子フレーム構造体を基本構造とし、それを横方向(左右)・縦方向(上下)に自在に連接することができるため、任意の大きさ・規模の構造物を作製することができる。更には、内部に向けても多重の入れ子構造を構成することができるため、高度な防振性を備えた容器を構成することもできる。
【0011】
具体的な応用例としては、本発明に係る入れ子フレーム構造体は地震などの水平力に強いため、ユニット入れ子フレーム構造体をそのまま室内に入れ、耐震シェルターとすることが可能である。また、後述のように、ユニット入れ子フレーム構造体を立体的に連結し、耐震性のある中低層の木造建築物を造ることが可能である。
【0012】
本発明に係る入れ子フレーム構造体は、木材を用いるのが最も適しているが、上記の原理より、素材の種類を問わないことは明らかであり、プラスチック、アルミニウム等を素材とするフレームを用いることも可能である。この場合、組立玩具や電子機器の運搬梱包用のケース等、多様な用途への展開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る入れ子フレーム構造体の基本構成要素である2個の大フレームと2個の小フレームの平面図及び断面図。
【図2】望ましいフレームの製作法を示す製造工程図(a)(b)(c)(d)。
【図3】大フレームの中に小フレームを「入れ子」にした状態の説明図。
【図4】ユニット入れ子フレーム構造体を製作するための素材である大フレーム及び小フレームの平面図及び断面図。
【図5】組み立てられたユニット入れ子フレーム構造体の斜視図。
【図6】小フレームに取り付けるフレーム外れ防止材の取り付け方法及び使用方法を示す工程図(a)(b)(c)及びフレーム外れ防止材の変形例を示す図(d)。
【図7】大フレームに取り付けるフレーム外れ防止材の取り付け方法及び使用方法を示す工程図(a)(b)及びフレーム外れ防止材の変形例を示す図(c)。
【図8】小フレーム、大フレームにフレーム外れ防止材を取り付けて組み立てたユニット入れ子フレーム構造体の斜視図。
【図9】小フレーム・大フレームの縦枠に取り付ける重ね継手材の取り付け方法及び使用方法を示す工程図(a)(b)(c)。
【図10】小フレームにフレーム外れ防止材と重ね継手材の双方を取り付ける場合の工程図(a)(b)。
【図11】ユニット入れ子フレーム構造体のコーナーにおいて、大フレーム及び小フレームを連接するための「入れ子フレーム組手」を示す斜視図。
【図12】フレーム外れ防止材と重ね継手材を取り付け、四隅の接合部を入れ子フレーム組手としたユニット入れ子フレーム構造体の斜視図。
【図13】入れ子フレーム組手を縦(上下)3層に重ねた構造体の斜視図。
【図14】ユニット入れ子フレーム構造体を、入れ子フレーム組手を用いて、縦及び横に組み上げた大規模な入れ子フレーム構造体の斜視図。
【図15】内部への入れ子の増殖を説明するための説明図(a)(b)。
【図16】内部に向けて3段入れ子構造とした入れ子フレーム構造体の斜視図。
【図17】内部に入れ子構造を繰り返した入れ子フレーム構造体の斜視図。
【図18】井桁フレームの素材となる辺部材の一つの作製方法を示す組み立て図。
【図19】井桁フレームの平面図及び端面図。
【図20】井桁フレームの各種例を示す平面図であり、(a)は小フレーム、(b)は大フレーム、(c)は中フレームである。
【図21】井桁フレームを用いることにより作製したユニット入れ子フレーム構造体(井桁フレーム入れ子構造体)の斜視図。
【図22】井桁フレーム入れ子構造体を上下方向に増殖(連接)させた構造体の斜視図。
【図23】井桁フレームを用いた十字組手構造体の斜視図。
【図24】井桁フレーム十字組手構造体を上下方向に増殖(連接)させた構造体の斜視図。
【図25】本発明の応用例である、2段ベッド(a)及び開き戸家具(b)の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、順を追って説明する。

【0015】
[要素フレーム]
本発明に係る入れ子フレーム構造体の基本単位はユニット入れ子フレーム構造体であるが、このユニット入れ子フレーム構造体は、2個の矩形大フレームと2個の矩形小フレームから成る(図1)。これらの大フレーム及び小フレームは所定の厚さbL、bSを有する。bLとbSは等しくてもよいし、異なっていてもよい。大フレームと小フレームの枠の幅aL、aSも、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、縦枠と横枠の幅が異なっていてもよい。ただし、大フレームの縦の内寸と小フレームの縦の外寸は等しくしておく(h)。両者の横の寸法は異なっていてもかまわない。

【0016】
大量の矩形フレームの製造コストを低く抑えるためには、定尺寸法の板材の使用が重要である。その観点からは、フレームに用いる板材の幅と厚さは全て同じものを用いることが望ましい。

【0017】
各フレーム(大フレーム、小フレーム)は、矩形という単純な形状であるので、非常に簡単に製作することができる。その素材も、木材、金属、プラスチック等、様々なものを用いることができる。場合によっては、段ボールでも本発明の構造体を構成することができる。

【0018】
しかし、これらの素材の中では、木材を用いることが望ましい。大小両フレームの固定や振動の抑制等のためには、木の持つ反力と直交する木材どうしの「めり込み」を最大限に利用することが望ましいからである。木材の場合は、間伐等で供給される小径木材から得られる板材を用いることができる。その場合のフレームの製作法を次に説明する(図2)。なお、ここでは、更に製造を単純化するため、大フレーム、小フレームとも正方形とする。

【0019】
フレームの幅と同じ幅a、フレームの枠の長さHからフレームの幅aを減じた長さH'(=H-a)、フレームの厚さbの1/2の厚さb/2を有する板材を2枚用意し(a)、長手方向にaだけずらして重ね合わせ、両者を固定する(b)。こうして作製した辺部材を4本用意し、ロの字形に組み合わせて(c)、コーナーで相互に連結してフレーム(図2の場合、大フレーム)を完成する(d)。

【0020】
ここで、二つの辺部材が直角に接合する隅部の仕口が重要である。地震や風などによる水平外力を受けた場合に、木材の性質を効果的に使ってフレームの変形に対抗するには、互いに直交する二つの辺部材を、左右双方に働く力に対応して、一方の辺部材にもう一方の辺部材が、図2に示すように、「めり込む」関係になる仕口で接合させることが効果的である。隅部における2本の辺部材の接合は、1本のボルトか、小径の複数個のピンや釘打ちなどで行い、直交する辺部材どうしに、「めり込み」が真っ直ぐに生じるような仕口と結合方法で繋ぐことが良い。

【0021】
入れ子フレーム構造体の特徴であり、かつ重要なことは、入れ子で交叉する二つのフレームを、直接、L型の接続金物等を用いて、「剛に結合させることはしない」とするところにある。複数のボルトやピン、釘打ちなどで剛に接合するのは、フレームの一部となるように、フレーム枠材に一体化させる、後述の「フレーム外れ防止材」や「重ね継手材」などの、補助部材のみである。

【0022】
[ユニット入れ子フレーム構造体]
ここでも、入れ子や構造体の組立方法の説明を簡明にするため、以後の説明は、使用する大小の2種類のフレームがともに正方形の場合を例にして行う。使用するフレームの形状は、以下に述べる、フレーム間に「入れ子」の関係が成立しさえすれば、共に矩形であることだけが要件である。但し、前述の通り、大量の矩形フレームの製造コストを低く抑えるためには、定尺寸法の板材の使用が重要であり、フレームに用いる板材の幅と厚さは、全て同じものを用いることが望ましい。

【0023】
「入れ子」とは、「箱などを、大きなものから小さなものへ順次に重ねて組み入れたもの」(広辞苑)などで説明される「状態」であるが、ここでは、矩形フレームでの「入れ子」の状態を、次のように定義する。

【0024】
大きなフレームの内寸と、小さなフレームの外寸が等しい大小二つの矩形フレームを用意し、垂直に立てた大きなフレームの中に、小さなフレームを垂直に挿入すると、自立する構造体が組上がる(図3)。この状態を、矩形フレームでの「入れ子」と呼ぶ。

【0025】
板幅a、板厚bの板材で作られ、外寸高さがH、内寸の高さがh(=H-2a)の大フレームと、それと入れ子関係になる、外寸がhの小フレームを用意する(図4)。

【0026】
平面上に、垂直かつ平行に並んで立つ2枚の大フレームの中に、2枚の小フレームを直交するようにして挿入し、それぞれの小フレームを、大フレームの縦枠に接する位置まで移動させ、次に大フレームを、小フレームの縦枠(板幅a)が大フレームの外に出る位置まで移動させる。この状態で自立する構造体を「ユニット入れ子フレーム構造体」と呼ぶ(図5)。

【0027】
フレームの板厚bや板幅aがフレームの高さH, hに比して十分大きければ、重力が働く世界では、大小二つのフレームが交叉する部分を特に他の接合部材(縄、鎹、金属プレート)を用いて固めなくても、そのままの状態(図5の状態)で、十分、自立する構造体となる。しかし、板厚bの小さいフレーム材で組み立てられた構造体では、横荷重(風力や地震力など)等を受けた場合には、大フレームが外側に、あるいは小フレームが内側に、容易に外れたり倒れたりする。

【0028】
[大フレームと小フレームの固定]
そこで、図5の「ユニット入れ子フレーム構造体」でのフレームの外れや抜け、倒れを防ぐために、大小のフレームが交叉する隅部で、大小のフレームに「フレーム外れ防止材」(上記「係止具」の一つ)を取り付けることができる。フレーム外れ防止材は、板厚がフレーム材と同じbで、長さが大フレームの高さHに等しい板材を用いる。フレーム外れ防止材を、小フレームの場合と大フレームの場合に分けて説明する。

【0029】
(1) 小フレームに取り付けるフレーム外れ防止材
図5の入れ子フレーム構造体で、大フレームの外れや内側への移動と、小フレームの抜けを防ぐために、2本のフレーム外れ防止材を、大フレームの端部を左右から挟むようにして、小フレームに取り付ける(図6(a)、(b)、(c))。
なお、小フレームのフレーム外れ防止材は、大フレームと係合しさえすれば良いのであるため、上下双方に伸ばす必要はなく、図6(d)のように上だけ、又は下だけ突出するようにしておけばよい。

【0030】
(2) 大フレームに取り付けるフレーム外れ防止材
図5の入れ子フレーム構造体の、小フレームが内側に倒れないようにするために、大フレームの端部で、小フレームを挟むように、フレーム外れ防止材を取り付ける(図7(a)、(b))。
大フレームの外れ防止材についても、上だけ、又は下だけ突出するようにしておくことができる(図7(c))。

【0031】
図5のユニット入れ子フレーム構造体に、これらのフレーム外れ防止材を取り付けた構造体が、図8である。水平力を受けて、構造体が平行四辺形状に変形しても、フレームの抜けは起こらず、入れ子構造は保持される。

【0032】
[入れ子フレーム組手による横方向への増殖]
こうして構成されるユニット入れ子フレーム構造体は、同様の入れ子手法を用いた「入れ子フレーム組手」を用いて横方向に連接することが可能であり、それによりいかなる大きさの構造物をも作製することができるようになる。

【0033】
「入れ子フレーム組手」は、以下に説明する「フレーム重ね継手」(以下、単に「重ね継手」とも呼ぶ)で連結させた、各々、2枚の大フレームと2枚の小フレームを、入れ子にして十字に交叉させ、組み上げる組手である。2枚の大フレームをずらして重ねた時に、中央にできる隙間に、同じく重ね継手で連結した2枚の小フレームを挿入し、相互に、左右から、隙間のフレームを挟み込んで結束させる組手である。以下の(1)~(3)に、この組手の構成と組み方の手順を示す。
なお、後述するが、「入れ子フレーム組手」は、あらかじめ、継手や外れ防止の補助部材をフレームに取り付けておくことで、その組み上げを容易にすることができる。

【0034】
(1) フレームの「重ね継手」
板幅a、板厚bの枠材で作られ、内寸がhのフレームを用意し、片方のフレーム面だけ、縦枠フレームに、長さh、幅a、厚さbの板材(重ね継手材)を取り付けて、長さh、厚さbの凸部を作る(図9(a))。2枚のフレームを、重ね継手材を取り付けた凸部を内側にして、枠幅aを越えて重ね合わすと、双方の枠の間に、直交するフレームを挿入して挟める「隙間」が出来るとともに、それぞれの凸部が、もう一方のフレームの枠の中に、隙間無く納まるので、フレーム方向の引っ張りに外れにくい継手が出来上がる(図9(b))。

【0035】
入れ子フレーム組手を作る手順として、まず2枚の大フレームに重ね継手材を取り付け、フレームの重ね連結ができるようにしておく。

【0036】
なお、小フレームに関しては、この重ね継手材だけで、連接する2個の小フレーム相互の抜け防止が可能である。また、この重ね継手材を、前記「フレーム外れ防止材」の内側に取り付け、それが小フレームあるいは大フレームの中に納まるようにしておくと、フレームの外れ防止能力は格段に向上する。

【0037】
(2) 補助部材(フレーム外れ防止材と重ね継手)を付けた小フレーム(図10)
図8の入れ子フレーム構造体で、小フレームの左右の縦枠に取り付けた、大フレームの外れを防止するフレーム外れ防止材(板幅a、板厚b、長さHの板材)を、前もって小フレームに取り付ける。さらに、取り付けた長さHのフレーム外れ防止材に重ねて、小フレームの内寸iの板材を取り付け、小フレームどうしを重ねて連結させる「重ね継手」とする。この「フレーム外れ防止材」と「重ね継手材」を取り付けた小フレームが、補助部材付き小フレームである。

【0038】
(3) 「入れ子フレーム組手」の組み方
「重ね継手」付きの2枚の大フレームを、重ねて連結して出来る隙間の中に、同じく、重ね継手で連結した2枚の補助部材付き小フレームを挿入する。その際、2枚の小フレームの重なりがつくる隙間の、左右に来る、長さHの補助部材(フレーム外れ防止材)が、上下で直交する大フレームの枠を挟み込むように挿入し、入れ子で交叉する大小2種の連結フレームに「貫」の関係をつくることで(図11(a))、強固な十字組手が形成される。大小のフレームを両側から引っ張り、締め上げることで出来上がる組手が、「入れ子フレーム組手」(図11(b))である。

【0039】
図5の入れ子フレーム構造体に、補助部材を後付で取り付けた図8の構造体の、四隅の接合部を、この「入れ子フレーム組手」に置き換えたものが図12である。図8の場合より、十字に交叉する接合部の結束がより緊密となり、4方向からの引っ張りや圧縮力に対してより粘り強い構造体になる。なお、図12は、天井及び床を取り付けた状態を示している。

【0040】
[縦(上下)方向への増殖]
矩形フレームの十字交叉接合に、強い結束をもたらす、「入れ子フレーム組手」(図11(b))の部分を、3層に重ねたものが図13である。上と下の大フレームの上下の枠の部分を重ねて並べ、重なって連結する二つの小フレームの上に置いて両側から挟み込み、上下で重なるフレームの端部のボルト接合で、縦(上下)方向への積み重ねと連結が可能になる。

【0041】
入れ子フレーム組手では、二組の小フレームを重ねることで出来る「隙間」の幅が調整代となり、隙間に挟むフレーム材の厚さや数の増加に対応することができる。従って、入れ子フレーム構造体を上下に重ねたとき、大きな荷重がかかるようになる下階のフレーム材の厚さや数を増やすことも可能となる。図11(b)の入れ子フレーム組手や図12の入れ子フレーム構造体を単位にして、横(左右)方向・縦(上下)方向に増殖させ、互いに重なり合う大フレームの四隅の端部や小フレームに取り付けた長さHの補助部材の端部をボルトで接続すれば、図14のような立体的構造体を組み上げることができる。

【0042】
[内部への増殖]
以上は、大小2種類の矩形フレームで作る入れ子フレーム構造体であったが、入れ子にするフレームが幾重にも繰り返される構造体を示し、その特徴を説明する。
相互に入れ子関係が成立するA, B, Cの3種のフレームを用意し(図15(a))、Aの中にBを入れ、さらにBの中にCを入れる、2重の「入れ子構造」を構成する(図15(b))。これを上記のような井桁状の構造体に組み立てると、図16に示すように、中間に位置するBフレームが挟まれ、外に出てこない構造体が組み上がる。これを繰り返すと、図17のような、無限に続く入れ子フレーム構造体ができる。

【0043】
重力が働く世界では、図16や図17のような入れ子フレーム構造体では、強い外力が働いた場合、一番外側と一番内側に位置するフレームだけが外れたり倒れたりし、中間に位置するフレームには、そのような事象は最初には起きず、その代わり、外から取り出すことも出来ない。従って、入れ子フレーム構造体では、一番外側と一番内側に位置するフレームだけに「抜け」や「外れ」や「倒れ」を防ぐ補助部材を取り付ければ良い。すなわち、同じ材質の部材で作られる入れ子フレーム構造体では、その構造に問題が発生する時は、一番外側か内側にまず問題が起こるため、外観の目視で十分構造安全の確認が可能である。

【0044】
先に、小フレームと大フレームの係合を確実にし、フレームの抜けや倒れを防止するために、小フレームの枠にフレーム外れ防止材を取り付ける例を示した(図6)。このような外れ防止材の構造・機能を、フレーム自身に持たせることも可能である。そのような例を、図18~図24により説明する。

【0045】
図18は、外れ防止材の機能を備えたフレームである「井桁フレーム」の素材となる辺部材の一つの作製方法を示す組み立て図である。図18(a)に示すように、幅a、厚さb/2、長さLの板材を2枚用意し、それらを幅方向で揃えるとともに、長さ方向で2aだけずらして重ね、両者を固定する(図18(b))。固定は、ボルト、接着剤等、手段を問わない。こうして作製したものが井桁フレームの1つの辺部材となる。

【0046】
正方形の井桁フレームを作製する場合は、同一長さの辺部材を4本用意し、図19に示すように、それらを正方形に組み立てる。その際、4本の表裏を同じ向きにして4辺に置き、隣接する2本の端が互いに厚さを補い合うように重ね合わせることにより、正方形の部分では平坦であり、その各コーナーから突出した角(つの)では半分の厚さである井桁フレームが完成する。ここでも、4本の辺部材の固定にはボルト、接着剤等の手段を問わない。

【0047】
このような井桁フレームは、図8に示すようなユニット入れ子フレーム構造体の内側に組み込まれる小フレームとして用いることができる。その外側に用いる大フレームは、このような角(つの)の無い単純な長方形(又は正方形)のものとすることもできるが、小フレームと同様の井桁フレームとすることにより、材料の共通化及び左右・上下方向への増殖の際に有効である。

【0048】
そのような井桁フレームの例を図20に示す。図20(a)は正方形の小フレームを表し、図20(b)は正方形の大フレーム、図20(c)は長方形のフレームである。この長方形の中フレームは、大フレームの辺部材(長さF2)と小フレームの辺部材(長さF1)を組み合わせたもので(従って、これを中フレームと呼ぶ)、このようにすることにより、材料の共通化を図ることができる。この場合、それらの幅が同じaであるとすると、F1=L+2a、F2=L+4aとなる。

【0049】
図21は、図20の(b)大フレームと(c)中フレームの井桁フレームを用いることにより作製したユニット入れ子フレーム構造体(井桁フレーム入れ子構造体)の斜視図である。この井桁フレーム入れ子構造体は、各フレームが角(つの)を持っており、かつ、隣接するユニット入れ子フレーム構造体の対応する角(つの)とは相補的な関係(すなわち、共に厚さが半分(b/2)であり、そのほぞ部分で重なり合って係合する)になるため、左右及び上下に増殖可能である。上下方向に増殖(連接)させた例を図22に示す。これは、上下の井桁フレーム入れ子構造体を90°回転させて組み立てることにより構成されている。

【0050】
井桁フレーム入れ子構造体(図21)を構成する2枚の大フレームを引き寄せて重ね合わせるとともに、その内部の小(又は中)フレームを両側に引っ張ることにより、図23に示すような十字組手ができる。図21に示す井桁フレーム入れ子構造体は内部に空間を有する構造物として利用可能であるが、図23に示す十字組手構造体は、空間の外枠(又は柱)を構成する構造物として利用可能である。この十字組手構造体も同様に上下に増殖(連接)させることができる(図24)。

【0051】
[応用例]
上記構造を有する入れ子フレーム構造体は様々な構造物に応用することが可能であるが、次のその実際の応用例をいくつか挙げる。
第1の応用例は、シェルターである。シェルターは、地震などの際に人間が避難する空間であるが、屋内に設置する場合と屋外に設置する場合がある。本発明に係る入れ子フレーム構造体を用いたシェルターは、屋内用・屋外用のいずれの場合にも応用することができる。すなわち、屋内用の場合は、所定の避難部屋に内接するように、本発明に係る入れ子フレーム構造体を形成しておく。また、屋外用の場合は、公園等の所定の緊急避難場所に、本発明に係る入れ子フレーム構造体(図12や図21のような単体でもよいし、図14のような外部増殖型でもよい)の避難スペース(シェルター)を設けておく。特に外部からの力が強く働くと予想されるところには、図17に示すような内部増殖型(多重型)の入れ子フレーム構造体を用いることが望ましい。
第2の応用例は、家具である。例えば、図12や図21のユニット入れ子フレーム構造体を基本構造として、2段ベッドを構成することができる(図25(a))。また、両側面及び背面に壁板を設けると共に、正面に開き戸を設けることにより、洋服ダンスとすることもできる(図25(b))。この場合、基本構造である入れ子フレーム構造体が全体の強度及び耐震性を確保しているため、側面板や開き戸等に強度を持たせる必要がない。従って、側面板や開き戸には、ビニールや化粧紙等の意匠性を重視したものを用いることができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図25】
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