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明細書 :携帯IT機器用無線電力供給システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3777577号 (P3777577)
公開番号 特開2005-261187 (P2005-261187A)
登録日 平成18年3月10日(2006.3.10)
発行日 平成18年5月24日(2006.5.24)
公開日 平成17年9月22日(2005.9.22)
発明の名称または考案の名称 携帯IT機器用無線電力供給システム
国際特許分類 H02J  17/00        (2006.01)
H01Q  13/22        (2006.01)
FI H02J 17/00 A
H01Q 13/22
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2005-030512 (P2005-030512)
出願日 平成17年2月7日(2005.2.7)
優先権出願番号 2004035578
優先日 平成16年2月12日(2004.2.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成17年2月9日(2005.2.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000046
【氏名又は名称】関西ティー・エル・オー株式会社
発明者または考案者 【氏名】篠原 真毅
【氏名】松本 紘
【氏名】三谷 友彦
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
【識別番号】100077171、【弁理士】、【氏名又は名称】竹内 尚恒
審査官 【審査官】杉田 恵一
参考文献・文献 特開平1-298901(JP,A)
特開平4-252604(JP,A)
特開平5-83025(JP,A)
特開2002-17058(JP,A)
特開2002-84685(JP,A)
特開2002-204240(JP,A)
特開2003-52137(JP,A)
特開2003-309938(JP,A)
特開2004-140765(JP,A)
特開2005-12822(JP,A)
国際公開第2004/002178(WO,A1)
国際公開第2004/025805(WO,A1)
William C. Brown,The History of Power Transmission by Radio Wave,IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,米国,IEEE,1984年 9月,Vol.32 No.9,p.1230-1242
Naoki Shinohara, Hiroshi Matsumoto,Experimental Study of Large Rectenna Array for Microwave Energy Transmission,IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,米国,IEEE,1998年 3月,Vol.46 No.3,p.261-268
三浦健史,篠原真毅,松本紘,マイクロ波電力伝送用レクテナ素子の接続法に関する実験的研究,電子情報通信学会論文誌B,日本,社団法人電子情報通信学会,1999年 7月25日,第82巻第7号,p.1374-1383
三浦健史,平山勝規,篠原真毅,松本紘,マイクロ波無線電力伝送用レクテナの大電力化に関する研究,電子情報通信学会論文誌B,日本,社団法人電子情報通信学会,2000年 4月25日,第83巻第4号,p.525-533
調査した分野 H01Q 13/00 - 13/28
H02J 17/00
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の電磁波を生成する電磁波生成装置と、室内の上部に該室内空間を囲繞する形状に設置された、該電磁波を放射する導波管スロットアンテナと、から成り、電力密度が人体に対する所定の安全基準以下である電磁波を該室内に放射する送電システムと、
該送電システムによって放射された電磁波を受信し、電力に変換するレクテナと、
から成ることを特徴とする携帯IT機器用無線電力供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯IT機器用無線電力供給システムに使用するための、室内の上部に取り付けられたアンテナ。
【請求項3】
請求項1に記載の携帯IT機器用無線電力供給システムにおいて使用される無線電力受電用レクテナ。
【請求項4】
請求項1に記載のアンテナが設置されていることを特徴とする建物。
【請求項5】
請求項1に記載の携帯IT機器用無線電力供給システムにおいて使用可能なレクテナを備えることを特徴とする携帯IT機器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の空間において電力を無線で供給することを可能にするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利用者がIT(Information Technology:情報技術)機器を携帯し、生活において「いつでもどこでも」情報を利用することができる環境、いわゆるユビキタス社会を実現させようという動きがある。このユビキタス社会を実現するために必要な基本的要件には、(1)情報を常時取り出せること、及び(2)IT機器の携帯性が高いこと、の二点がある。
【0003】
上記(1)の要件は、現在の日本において満たされつつある。通信速度の向上は今後の課題として残されているものの、携帯電話の普及に伴う無線情報通信インフラの整備などにより、場所を気にすることなく、また、移動中であっても常時情報を無線でやりとりすることが可能な環境が整えられてきている。
【0004】
上記(2)の携帯性の要件に関しては、携帯用のIT機器(以下、携帯IT機器とする)の大きさや重さの面での問題は現在ではほとんど無いと言える。このような携帯IT機器の例としては携帯電話のほか、ノートパソコン、携帯テレビ、携帯ラジオなどがあるが、昨今のIT機器の超小型化により、多くの携帯IT機器は利用者が負担を感じることなく持ち運ぶことができるからである。
【0005】
しかしながら、携帯IT機器が小さくて軽く、持ち運びやすいというだけでは、携帯性の要件を十分に満足することはできない。なぜなら、依然として電源の問題が残されているからである。現在、ほとんど全ての携帯IT機器は電池や充電池に蓄えられた電気エネルギーにより動作するため、電池の残量が無くなれば、携帯IT機器は使用不能となってしまう。また、利用者は機器の使用中には常に電池の残量を気にしなければならず、ストレスを感じてしまう。
【0006】
また、この電源問題は、上記のような通信機能を備えた携帯IT機器のみに限られたものではなく、全ての携帯電気機器が有する問題である。通信機能を有さないCDプレーヤやMP3プレーヤといった携帯音楽再生機器、ICレコーダ、デジタルカメラなどの各種携帯電気機器も、携帯時には電力源を電池に頼っているためである。
【0007】
この電源問題を解決するためには、電池の性能が飛躍的に向上すればよいが、現時点ではその見通しはついていない。そこで、電池が無い(接続されていない)状態でも携帯電気機器の使用を可能としたり(バッテリーレス使用)、コンセントに接続することなく充電池の充電を可能とする(コードレス充電)ことが考えられる。
【0008】
バッテリーレス使用やコードレス充電を実現するための一手段として、太陽電池を使用することが考えられる。しかし、太陽電池は使用環境によって発電能力に大きな差がある。通常の太陽電池の1cm2あたりの発電量は、昼間・晴天時の屋外では10mW/cm2であるのに対し、屋内では0.05~0.1mW/cm2となり、夜間の屋外ではほぼ0W/cm2となってしまう。一例として、太陽電池によって携帯電話を使用することを考えてみる。現在の携帯電話の消費電力は、通話時には1W以上、充電時には十数mWであることから、通話するには1m2以上、充電池に充電するには100~400cm2の面積を有する太陽電池を用いなければならないことになる。このような面積の広い太陽電池を携帯電話に組み込むことは非現実的である。
【0009】
特許文献1には、宇宙空間において発電衛星により太陽光発電を行い、得られた電力をマイクロ波に変換して地上の電力消費領域に照射し、地上の携帯電気機器に設けたレクテナ(rectifying antenna:整流アンテナ)でマイクロ波を電気に変換することにより該携帯機器を使用することが記載されている。しかし、発電衛星を製造して地上から宇宙に向けて打ち上げ、運用するためには莫大な費用を要するという問題がある。さらに、発電衛星からのマイクロ波は建物の壁により減衰したり遮蔽されてしまうため、携帯機器を屋内でバッテリーレスで使用したり、又はコードレスで充電することは困難である。特に、携帯電気機器のニーズが高いビジネス分野ではその使用場所は屋外よりも屋内であることの方が多いため、この方法ではビジネス分野でのニーズに応えることができない。なお、レクテナとは、例えば特許文献2に記載されているような、電磁波を直流電流に変換する装置である。
【0010】

【特許文献1】特開2003-309938号公報([0016]~[0017],図2)
【特許文献2】特開2002-084685号公報([0018]~[0024],図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、屋内において携帯電気機器をバッテリーレスで使用したり、コードレスで充電したりすることを可能にする簡便なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係る無線電力供給システムは、所定の電磁波を生成する電磁波生成装置と、該電磁波を放射するアンテナと、から成り、所定の位置に設置される送電システムによって放射された該電磁波を、レクテナから成る受電システムによって受信し、電力に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無線電力供給システムを用いることにより、このシステムによって電磁波が供給される空間において、電力がコードレスで供給される。従って、電気機器をバッテリーレスで使用したりコードレスで充電したりすることが可能となる。
ひいては、ユビキタス社会実現の足かせとなっていた電源問題を解決することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る無線電力供給システム1の概略図を図1に示す。本システムは、電磁波発生装置2及びアンテナ3から成る送電システムと、受電システムとの組合せにより構成される。送電システムによって放射された電磁波は受電システムによって受信され、電力へと変換される。そして、この電力は各種の電気機器4に供給される。
【0015】
本発明の無線電力供給システムにより電力を供給される電気機器は、携帯型の電気機器に限られず、据え置き型の電気機器であってももちろん構わない。また、このような電気機器が受電システムを一体的に備えていてもよい。例えば、携帯電話であれば、その匡体部やアンテナ部に受電システムを組み込むことができるし、ノートパソコンであればその蓋部などに受電システムを設置することができる。こうすることにより、特に携帯型電気機器の場合には、その携帯性がより一層向上する。
【0016】
電磁波発生装置は、電磁波を生成するための装置であり、従来より用いられている各種のものを利用することができる。電磁波に関する詳細は後述する。
【0017】
アンテナは、電磁波発生装置によって生成された電磁波を放射するためのものであり、本発明においては従来より一般に使用されている各種のアンテナを用いることができる。例えば、導波管スロットアンテナなどを好適に使用することができる。導波管スロットアンテナとは、金属(例えばアルミ)から成る断面が方形の導波管の側面に、複数の矩形状の穴(スロット)を設けたものである。スロットの短辺方向に電界が生じるように給電することにより、スロットより電磁波が放射される。導波管スロットアンテナは伝送路が空間であるため、損失が少ないというメリットがある。また、単純な構成のため、比較的安価に作成することができる。
【0018】
上記のような電磁波発生装置及びアンテナから構成される送電システムは、屋外・室内を問わず任意の場所に設置することが可能であるが、所定の空間内において電磁波のエネルギー(すなわち、電力密度)の分布が可能な限り均一であることが望ましい。ある空間内での電力密度が一様であれば、レクテナ(受電システム)の位置及び向きに関わりなく、一定強度の電磁波を受信することが可能となる。アンテナを室内に設置する場合には、その室内の上部に、例えば天井付近に露出した状態で配置することもできるし、アンテナを天井、壁面、床などに埋め込んで配置してもよい。この場合には、電力密度の分布を均一にするために、アンテナが室内空間を略囲繞する形状となるように設置されることが好ましい。
【0019】
アンテナによって放射される電磁波の周波数は、電波法などの法律要件を満たしている必要がある。本発明を実施する場合、多目的用途用として取り分けられており、誰でも自由に利用することが可能な、いわゆるISMバンド(Industry Science Medical band)の周波数を選択することができる。ISMバンドとして指定されている周波数には、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz、900MHz帯、2.45GHz帯、5.8GHz帯がある。使用する周波数が高くなればなるほどアンテナを小型化することができるというメリットがあるが、一方では、アンテナ形状の高い精度が要求され、製作コストが高くなるというデメリットもある。また、本発明を実施するための周波数はISMバンドに限定されない。電波法が許容すればあらゆる周波数の電磁波の利用が可能である。
【0020】
また、近年データ通信をワイヤレスで行うことができる無線LANの普及が進んでおり、家庭、職場、店舗、公共の場といった種々の環境において無線LANが利用できるようになっている。無線LANは一般に2.4GHz帯の周波数の電磁波を利用していることが多いが、その周波数が本発明の送電システムによって放射される電磁波の周波数と重なったり近接したりする場合には無線LANの通信に影響を及ぼしてしまうことがあるため、注意する必要がある。この問題を回避するためには、無線LAN又は本発明の電磁波の周波数を変更すればよい。
【0021】
電力密度は、高くなればなるほど大きな電力エネルギーを供給することができるが、人体に好ましくない影響を及ぼすことがない範囲内で設定する必要がある。この電力密度を適切に設定するための指針として、電気通信技術審議会による「電波利用における人体の防護指針」(通称:電波防護指針)がある。この電波防護指針では、人体が電磁波に曝される環境に応じて安全とされる電力密度の上限値が異なる。例えば周波数が1.5GHz~300GHzである場合、常時電磁波に曝される環境下(非管理環境下)における電力密度の上限値は1mW/cm2であり、一日8時間・週5日以内の時間、電磁波に曝される環境下(管理環境下)では電力密度の上限値は5mW/cm2と定められている。本発明においてはこれらのことをふまえ、送電システムを設置する環境に応じて電力密度を調節すればよい。
【0022】
電磁波を受信して整流し、直流電流に変換するための受電システムとしては、レクテナを使用する。受電用レクテナは外部電源が不要、且つ軽量薄型という特長を有しているため、本発明の無線力供給システムにおける受電システムとして利用するのに好適である。一般的なレクテナは、受電アンテナ及び整流回路部から成り、整流回路部は、低域通過フィルタ、ダイオード、出力平滑フィルタから構成される。低域通過フィルタは、整流回路のダイオードの非線形特性で発生して他の通信の妨げとなるおそれがある高調波成分が受電アンテナ側から再放射してしまうことを防止する役割を有する。
【0023】
受電アンテナには各種のアンテナを使用することが可能であるが、携帯性を考慮すると、そのサイズは可能な限り小さいことが望ましい。
【0024】
レクテナによって得られる直流電圧よりも高い電圧が必要となる場合には、専用IC、スイッチングレギュレータIC、ディスクリート素子などによる昇圧回路を利用することができる。本発明においては、サイズが小さく安価であるという理由により、スイッチングレギュレータICが好適である。また、過電圧が機器に印加されてしまうことを防止するために、過電圧保護回路を設けることもできる。この過電圧保護回路は、昇圧回路と一体であってもよい。
【0025】
本発明の無線電力供給システムを利用して直流電流を得るためには、送電システムによって放射される電磁波を受信できる位置にレクテナを位置させるだけでよい。ここにおいて、上述したように、電磁波が空間内に均一に満ちている場合には、レクテナの向きは関係なくなる。そして、受電システムによって出力される電力を電気機器に供給すればよい。
【0026】
本発明の無線電力供給システムによって供給される電力の大きさは、電力密度の高さ及びレクテナの大きさ(通常は表面積)に依存する。図2に、仮に、電力密度が1mW/cm2、電力変換効率が50%であるとしたときの、種々の電気機器品目、その一般的な消費電力、必要なレクテナの面積、この面積をA4用紙の面積(623.7cm2)に換算した場合のA4用紙の枚数、及びレクテナの面積の評価を示す。この評価は、レクテナの面積がA4用紙2枚以上となる場合は×(無理がある)、1~2枚の場合は△(やや無理がある)、1枚以下の場合は〇(無理なく使用可能)とした。
【0027】
図2より、上記条件下で無理なく使用することができる電気機器の例には、音の出る絵本、待機時の携帯電話、MDプレーヤ、CdS光センサ、超音波モータ、携帯ラジオ、MP3プレーヤ、電子辞書、マウス、キーボードなどがあることがわかった。もちろん、電力密度を高くしたり電力変換効率を向上させることにより、より大きな電力の供給が可能となるため、より多種の電気機器を使用することができるようになったり、レクテナの小型化を図ることが可能となる。
【実施例】
【0028】
本願に係る無線電力供給システムを用いて無線電力空間を創成する実験を下記のような条件のもとで行った。
・周波数はISMバンド2.45GHz帯
・許容電力は1kW以内
・電力密度は1mW/cm2で可能な限り均一
・極力安価なシステム
【0029】
<空間>
図3に示すような、581.5×434×300cmの室内(ただし、柱、天井設置型エアコンなどの障害物あり)に無線電力供給システムを設置した。
【0030】
<電磁波生成装置>
電磁波生成装置として、マイクロ波発生装置であるマグネトロンを使用した。このマグネトロンの電源として、半波倍電圧非平滑電源回路を用いた。半波倍電圧非平滑電源回路は、コンデンサとダイオードからなる整流回路、変圧器、ボルトスライダーから構成される(図4)。
【0031】
<アンテナ>
電磁波を放射するためのアンテナとして、アルミ板から成る導波管スロットアンテナを用いた。アルミ板の厚みは0.4mmであり、導波管の断面の幅は109.2mm、高さは54.6mmとし(JIS WRJ-2導波管)、スロットのサイズは52mm×5mmとした。また、アンテナと回路の整合を取るためのスロットのオフセット幅は23.78mmとした。図5に実験にて使用した導波管スロットアンテナの(A)設計図、(B)一部写真を示す。スロットのサイズの微調整は、まずスロットを目的とするサイズよりも若干大きめに切り取った後、スロットの端部にアルミテープを張ることにより行った。このような管状のアンテナを、実験を行った室内の柱より室内側に矩形状に、天井から54cm下側にアンテナ面が位置するような高さに配置した(図3の導波路設置部)。
【0032】
<電磁波の放射>
半波倍電圧非平滑電源回路からマグネトロンに電力が供給されると、マグネトロンが2.45GHz帯のマイクロ波を発生させ、導波管スロットアンテナの導波管内で定在波を立たせることによりスロットから電磁波が放射される。
【0033】
<送電電力>
電力密度を1mW/cm2以内に抑えるために、管理環境下における電波防護指針を満たすことのできる最大の送電電力値(以下、送電可能電力)をシミュレーションによって求めた。まず、電波防護指針を適用させる範囲は床面から2mまでの高さとした。また、マイクロ波の安全基準のひとつである吸収率SAR(Specific Absorption Rate) の考え方では、安全基準値の導出において、人体の垂直断面と等価な面積における電力密度の平均値を利用する。そこで、900cm2の面積で電力密度を平均した。その結果、上記空間に障害物が無い場合の送電可能電力は、158.8Wというシミュレーション結果を得た。この結果をふまえ、実際の実験においては、導波管スロットアンテナから送電される送電電力を150Wとした。
【0034】
<電力密度>
床面から1mの高さ、入り口側の壁面から2mの直線上での電力密度分布(x,y,z方向の3成分(図3参照))を測定した(図6)。図6からわかるように、x方向及びy方向のオーダーは互いに近接しているが、z方向に関しては、x方向及びy方向のオーダーよりも高く、また不均一であった。安全性に関しては、電力密度が一部で1mW/cm2を上回っているものの、人体全身の大きさの空間の平均照射密度が1mW/cm2以下であるとの安全基準は、いずれの空間部分においても満たされている。なお、電力密度はシステム設計により調節可能である。
【0035】
空間内における電力密度分布をさらに調べたところ、室内の位置によって電力密度分布に偏りが生じていることが観測された。この原因は、導波管スロットアンテナのスロットごとに電磁波の放射量が異なっているためと考えられる。そこで、スロット直下における電力密度分布を測定した(図7)。図7において、(a)は終端~コーナー1、(b)はコーナー1~2、(c)はコーナー2~3、(d)は入力~コーナー3の電力密度を示している(コーナー等の位置は図3参照)。特に終端付近において、導波管スロットアンテナのスロットから放射されるマイクロ波の密度が相対的に高く、且つ、不均一であった。このことにより、導波管スロットアンテナの精度をより高くすることにより、電磁波の分布をより均一化させることが可能になると考えられる。これにより部分的な電力密度上昇も抑えられ、さらに低密度の電力密度分布の実現も可能である。
【0036】
上記無線電力空間において、以下のように受電実験を行った。
<レクテナ>
可能な限り小型で軽量、省電力で高効率であることを目標として無線電力空間用レクテナを作製した。
受電アンテナとして、一般的なダイポールアンテナよりも利得が大きく、高調波で共振せず、軽量薄型で製作が容易な、円形マイクロストリップパッチアンテナ(Circular MicroStrip patch Antenna:CMSA)を用いた。CMSAのうち、受電ポートを2個有し、垂直偏波と水平偏波を受電することが可能な(すなわち、より大きな電力を得ることが可能な)デュアル偏波CMSAを採用した(図8)。
さらに、厚みが0.8mm、比誘電率6.44という誘電率の高い基板を用いることにより、基板上の線路幅を小さくし、整流回路部を小型化(5cm×2cm)した。ダイオードとして、立ち上がり電圧が0VであるAgilent製HSMS-2850を並列して用いることで高効率化(従来のものに比べ約3倍:1mW入力で30%)された整流回路を作製して使用した。また、昇圧回路として、スイッチングレギュレータICを用いた。
【0037】
<受電実験>
受電実験の様子を図8に示す。9並列の直線偏波CMSA5に、整流回路、昇圧回路、携帯電話を接続し、バッテリーレスの状態で携帯電話の充電ランプが点灯するかを確かめた。このとき、無線電力空間内のいたるところで、また、アンテナ面の方向に関わらず、携帯電話の充電ランプが点灯した。また、この場合において、充電ランプが点灯するために必要な送電電力はおよそ80Wであることもわかり、本発明に係る無線電力供給システムが十分実用的であることが実証された。
【0038】
以上、無線電力供給システムの一例を説明したが、本発明はその精神内において自由に変更が可能であることはいうまでもない。例えば、本発明のシステムの省電力化を図るために、電気機器(レクテナ)が存在する付近にのみ電磁波を送信することが考えられる。また、所定空間内に電気機器やレクテナが存在しない場合には、電磁波の送信を停止するようにすることにより、一層の省電力化が行える。このことを実現する技術としては、所定の空間にのみ電磁波を放射するビーム制御や、目標自動追尾制御(レトロディレクティブ方式)などがある。

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る無線電力供給システムの概略図。
【図2】種々の電気機器の消費電力及びレクテナの面積等を示す表。
【図3】本発明に係る一実施例において無線電力供給システムを設置した空間の平面図。
【図4】電磁波発生装置の構成を示す図。
【図5】導波管スロットアンテナの(A)設計図、(B)一部写真。
【図6】本発明に係る実施例における床面から1m、入り口側の壁面から2mの直線上での電力密度分布を示すグラフ。
【図7】スロット直下における電力密度分布を示すグラフ。
【図8】受電アンテナ及び受電実験の様子を示す図。
【符号の説明】
【0040】
1…無線電力供給システム
2…電磁波生成装置
3…アンテナ
4…受電システムを備えた電気機器
5…直線偏波CMSA
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図7】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図8】
7