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明細書 :転がり装置、及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3964926号 (P3964926)
公開番号 特開2007-177993 (P2007-177993A)
登録日 平成19年6月1日(2007.6.1)
発行日 平成19年8月22日(2007.8.22)
公開日 平成19年7月12日(2007.7.12)
発明の名称または考案の名称 転がり装置、及びその製造方法
国際特許分類 F16C  33/58        (2006.01)
F16C  29/06        (2006.01)
F16H  25/22        (2006.01)
FI F16C 33/58
F16C 29/06
F16H 25/22 A
請求項の数または発明の数 10
全頁数 20
出願番号 特願2006-282327 (P2006-282327)
出願日 平成18年10月17日(2006.10.17)
優先権出願番号 2005344905
優先日 平成17年11月30日(2005.11.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年10月17日(2006.10.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】306037229
【氏名又は名称】株式会社 空スペース
発明者または考案者 【氏名】河島 壯介
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
審査官 【審査官】岡野 卓也
参考文献・文献 特開2003-227515(JP,A)
特開2005-42795(JP,A)
特開2003-329099(JP,A)
特開2004-68996(JP,A)
実開昭52-46188(JP,U)
調査した分野 F16C 29/06
F16C 33/58
F16H 25/22
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも1対の転送溝により構成される転送路と、転送路の間に転動自在に介挿させた複数の転動体により構成され、前記転動体は球体、もしくは両端に3次元曲面の角部を有する円柱、または円錐、またはたる形、またはこれらの複合曲面で形成されている転がり装置であって、片側の転送溝の少なくとも一部について転動体との間に作用する摩擦力を、対向する転送溝の転動体との間に作用する摩擦力に対し大きくすると共に、摩擦力を大きくした部分について転送溝の転送方向と直角方向の断面を、球体である転動体、もしくは球体以外の転動体の3次元曲面の角部と2点接触する形状とし、その接触角を転送路の他の部分に対し大きくした接触角変化路を形成したことを特徴とする転がり装置。
【請求項2】
前記接触角変化路が形成されている部分の転送路について、転動体から圧接力を受ける方向の剛性を他の部分の転送路に対して小さくする、もしくは転送路の隙間を他の部分に対して大きくすることにより、転動体が転送溝に僅かに侠持される無負荷領域を接触角変化路に生成したことを特徴とする請求項1の転がり装置。
【請求項3】
前記接触角変化路の転動体との接触部の表面粗さを、相対する転送溝の転動体との接触部の表面粗さに対し粗くしたことを特徴とする請求項1または2の転がり装置。
【請求項4】
少なくとも1対の転送溝により構成される転送路と、転送路の間に転動自在に介挿させた複数の転動体により構成され、前記転動体は球体、もしくは両端に3次元曲面の角部を有する円柱、または円錐、またはたる形、またはこれらの複合曲面で形成されている転がり装置であって、転送路の一部に転動体が一方の転送溝のみに当接する無負荷領域を生成し、かかる一方の転送溝の転送方向と直角方向の断面を、球体である転動体、もしくは球体以外の転動体の3次元曲面の角部、と2点接触する形状とし、その接触角を転送路の他の部分に対し大きくした接触角変化路を形成したことを特徴とする転がり装置。
【請求項5】
少なくとも1対の転送溝により構成される転送路と、転送路の間に転動自在に介挿させた複数の転動体と、両端が転送路に接続され転動体が循環可能に形成された循環路、により構成され、転動体は球体、もしくは両端に3次元曲面の角部を有する円柱、または円錐、またはたる形、またはこれらの複合曲面で形成され、転送路内の転動体は前記循環路の一端より掬い上げられ、循環路の他端より転送路に戻される循環式の転がり装置であって、循環路の一部の転送方向と直角方向の断面を、球体である転動体、もしくは球体以外の転動体の3次元曲面の角部、と2点接触する形状とし、その接触角を循環路の他の部分に対し大きくした接触角変化路を形成したことを特徴とする転がり装置。
【請求項6】
前記接触角変化路の転送方向の形状を、転動体との接触面が内面となる方向に湾曲させたことを特徴とする請求項1または請求項4または請求項5に記載の転がり装置。
【請求項7】
前記転動体の材質として強磁性体を使用し、前記接触角変化路に磁力を作用させことを特徴とする請求項1または請求項4または請求項5記載の転がり装置。
【請求項8】
前記接触角変化路の中央部の接触角を、他の部分の前記転送路、または前記循環路の接触角より大きくし、両側端部方向に接触角を斬減させたことを特徴とする請求項1または請求項4または請求項5に記載の転がり装置。
【請求項9】
前記接触角変化路において、接触角を転送方向に対し変化させるための転送溝の変形手段を転送溝の外部構造に設けたことを特徴とする請求項1または4に記載の転がり装置。
【請求項10】
転動体を介挿してなる転がり装置の転送方向と直角方向の断面が凹面である転送溝の形成方法であって、前記転動体の曲面部が当接する部分の前記転送溝の転送方向の一部領域について前記凹面の曲率を他の部分に対し大きくする方向に弾性変形させた状態で、転送方向の全域に渡り均一な断面形状を有する溝を形成し、その後弾性変形を解除することにより、前記転送溝の一部領域の溝の曲率を他の部分より小さくしたことを特徴とする転がり装置の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は転がり装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1対の転送溝と転送溝間に介挿した複数の転動体により構成される転がり装置は転動体が転送溝との間で転がり接触することにより、滑り接触によるものと比べ摩擦抵抗が小さい利点があるが、個々の転動体は同一方向に自転することより隣接する転動体表面の動作方向は逆向きとなるため、転動体同士の接触による滑り摩擦が発生した。
【0003】
特に、転動体が負荷を受ける領域において個々の転動体の公転速度の微小な相違に起因した転動体同士の接触(以下、これを「競い合い」と呼ぶ)が発生する時、摩擦抵抗の増大や、接触面の圧力上昇に伴う潤滑不良、寿命低下、騒音振動の発生、等の原因となることが知られており無負荷領域において転送溝と転動体との間に隙間を設ける提案がなされている。(例えば、特許文献1参照)
なお公転速度の微小な相違は、転動体の真球度、個々の転動体接触部での溝形状誤差、個々の転動体への不均一な荷重や摩擦、さらにボールねじの場合はリード方向にねじれて転送することによる作動すべり、等により発生する。
また競い合い現象による問題を防ぐために、保持器やスペーサーボールを転動体の間に介挿することが従来より広く行われている。
(例えば、特許文献2、3参照)
さらに無負荷領域において転動体に摩擦を付与することによって、負荷領域に進入する転動体に間隔を設ける発明がなされている。(特許文献4参照)

【特許文献1】特開2003-227515号公報
【特許文献2】特開2000-120825号公報
【特許文献3】特開2000-291770号公報
【特許文献4】WO2004/055416 A2号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の発明は負荷領域において競い合いが発生したボールに対し、無負荷領域を設けて競い合いを解消する提案であり、負荷領域での競い合い自体を解消するものではない。
また特許文献2に開示される保持器は、自体の圧縮変形による圧接力の緩和、及び転動体との接触面積の拡大による圧接応力の緩和、また材質特性による摩擦力の緩和などの効果があるものの、摩擦抵抗を無くすものではない。
【0005】
さらに特許文献3に開示のスペーサーボールは転動体同士の接触を転がり接触に変えて摩擦抵抗を減らせるが、その接触点の面積が小さいことより圧接応力を緩和することは出来ない。
なお保持器やスペーサーボールの装着は、負荷ボール数の減少、生産性低下、材質の制約による耐環境性能(温度、真空蒸気圧、等)の制約、等の要因でもある。
【0006】
一方、特許文献4に開示の方法によれば、転動体の公転速度を落とすことにより無負荷領域に転動体を集積させ、間接的に負荷領域内の転動体は全体として間隔が空くことが想達されるが、負荷領域に進入する転動体同士の間隔を空ける直接的な手段ではないことにより、数個のボールが密接して負荷領域に進入することを確実に防ぐ作用を持つものではない。
【0007】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、転送路の特定領域において転動体との接触角を増大、減少させることにより、接触角を増大させた部分において転動体の公転速度を低下させて転動体同士を当接、もしくは近接させた後、接触角を減少させた部分にいて転動体の公転速度を増加させて転動体の間に間隔を生成させることにより、負荷領域での競い合いの無い転がり装置を提供することを目的としている。
【0008】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の記述的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の請求項1では、少なくとも1対の転送溝により構成される転送路と、転送路の間に転動自在に介挿させた複数の転動体により構成され、前記転動体は球体、もしくは両端に3次元曲面の角部を有する円柱、または円錐、またはたる形、またはこれらの複合曲面で形成されている転がり装置であって、片側の転送溝の少なくとも一部について転動体との間に作用する摩擦力を、対向する転送溝の転動体との間に作用する摩擦力に対し大きくすると共に、摩擦力を大きくした部分について転送溝の転送方向と直角方向の断面を、球体である転動体、もしくは球体以外の転動体の3次元曲面の角部と2点接触する形状とし、その接触角を転送路の他の部分に対し大きくした接触角変化路を形成した転がり装置を構成している。
【0010】
また請求項2に記載の通り、前記接触角変化路が形成されている部分の転送路について、転動体から圧接力を受ける方向の剛性を他の部分の転送路に対して小さくする、もしくは転送路の隙間を他の部分に対して大きくすることにより、転動体が転送溝に僅かに侠持される無負荷領域を接触角変化路に生成した転がり装置を構成している。
【0011】
さらに請求項3に記載の通り、接触角変化路の転動体との接触部の表面粗さを、相対する転送溝の転動体との接触部の表面粗さに対し粗くした転がり装置を構成している。
【0012】
また請求項4に記載の通り、少なくとも1対の転送溝により構成される転送路と、転送路の間に転動自在に介挿させた複数の転動体により構成され、前記転動体は球体、もしくは両端に3次元曲面の角部を有する円柱、または円錐、またはたる形、またはこれらの複合曲面で形成されている転がり装置であって、転送路の一部に転動体が一方の転送溝のみに当接する無負荷領域を生成し、かかる一方の転送溝の転送方向と直角方向の断面を、球体である転動体、もしくは球体以外の転動体の3次元曲面の角部、と2点接触する形状とし、その接触角を転送路の他の部分に対し大きくした接触角変化路を形成した転がり装置を構成している。
【0013】
さらに請求項5に記載の通り、少なくとも1対の転送溝により構成される転送路と、転送路の間に転動自在に介挿させた複数の転動体と、両端が転送路に接続され、転動体が循環可能に形成された循環路により構成され、転動体は球体、もしくは両端に3次元曲面の角部を有する円柱、または円錐、またはたる形、またはこれらの複合曲面で形成され、転送路内の転動体は循環路の一端より掬い上げられ、循環路の他端より転送路に戻される循環式の転がり装置であって、循環路の一部の転送方向と直角方向の断面を、球体である転動体、もしくは球体以外の転動体の3次元曲面の角部、と2点接触する形状とし、この部分の転動体との接触角を、循環路の他の部分に対し大きくした接触角変化路を形成した転がり装置を構成している。
【0014】
また請求項6と7に記載の通り、転送路や循環路内に遊勘する転動体を接触角変化路に圧接させる手段として、転動体の遠心力の利用又は、転動体に作用する磁気吸引力を作用させる転がり装置を構成している。
【0015】
さらに請求項8に記載の通り、接触角変化路の中央部の接触角を、他の部分の転送路、または循環路の接触角より大きくし、両側端部方向に接触角を斬減させた転がり装置を構成している。
【0016】
また請求項9に記載の通り、接触角変化路において、接触角を転送方向に対し変化させるための転送溝の変形手段を転送溝の外部構造に設けた転がり装置を構成している。
【0017】
さらに請求項10に記載の通り、転動体を介挿してなる転がり装置の転送方向と直角方向の断面が凹面である転送溝の形成方法であって、前記転動体の曲面部が当接する部分の前記転送溝の転送方向の一部領域について前記凹面の曲率を他の部分に対し大きくする方向に弾性変形させた状態で、転送方向の全域に渡り均一な断面形状を有する溝を形成し、その後弾性変形を解除することにより、前記転送溝の一部領域の溝の曲率を他の部分より小さくしている。
【発明の効果】
【0018】
(1)[請求項1]の構成において、接触角変化路の転動体が作動すべりを起こすことにより一旦減速した後に加速する。これにより接触角変化路から排出される転動体の間に間隔が生成され、転送路の不特定個所での転動体の競い合いを無くすことができる。
【0019】
(2)[請求項2]の構成においては、接触角変化路が無負荷領域であることより、作動すべりによる摩擦を低くすることができる。
【0020】
(3)[請求項3]の構成においては、転送溝の表面粗さの設定により簡便確実に転動体との間に作用する摩擦力を変えることができる。
【0021】
(4)[請求項4]の構成においては、片側転送溝内の接触角変化路で、転動体が一旦減速した後に加速することにより、接触角変化路から排出される転動体の間に間隔が生成され、転動体の競い合いを無くすことができる。
【0022】
(5)[請求項5]の構成においては、循環路内の接触角変化路で、転動体が一旦減速した後に加速することにより、接触角変化路から排出される転動体の間に間隔が生成され、循環式転がり装置の転動体の競い合いを無くすことができる。
【0023】
(6)[請求項6]の構成においては、転動体を遠心力によって接触角変化路に圧接させることができる。
【0024】
(7)[請求項7]の構成においては、転送溝を磁力によって接触角変化路に圧接させることができる。
【0025】
(8)[請求項8]の構成においては、転動体の減速、加速動作を転送溝の動作方向によらず同一に行わせることができる。
【0026】
(9)[請求項9]の構成においては、転送溝の加工形状によらず転送溝の接触角を変化させることができる。
【0027】
(10)[請求項10]の方法においては、既存の工作機械に大幅な変更を加えず接触角変化路を容易に形成することが出来る。
【0028】
以上の通り本発明によれば、意図した領域において転動体同士、またはそれらの間に装着する保持器やスペーサーボールとの接触を防げることより、この接触に起因する競い合い、摩擦抵抗の増大、接触面の圧力上昇に伴う潤滑不良、寿命低下、騒音振動の発生が改善される。 さらに、保持器やスペーサーボールを不用に出来ることにより、負荷ボール数の増加による負荷容量増大、生産性向上、耐環境性能(温度、真空蒸気圧、等)向上、等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面に沿って本発明の転がり装置を詳細に説明する。
【実施例1】
【0030】
図1(a)は本発明における非循環直動案内装置の動作方向と平行な断面図である。
V字状転送溝1を有するレール21と対向して配置されるV字状転送溝2を有するレール22、及び転送溝間に転動可能に介挿される複数のボール3により非循環型の直動案内装置を構成している。
転送溝2のV溝のボールとの接触角θは全長に渡り45°である。
転送溝1のV溝のボールとの接触角は図1(c)に示すY-Y断面ではθ1=60°図1(b)に示すX-X断面ではθ2=45°であり、Y-Y断面とX-X断面との間は60°から45°に連続的に接触角を変える接触角変化路aを設けている。
【0031】
一点鎖線4は転送溝上のボールとの接触点軌跡であり、4a部において転送溝1の接触角が増大することを示している。
さらに両側の接触角変化路aに囲まれた範囲では面粗さを転送溝2に比べて粗く加工することにより転動体との滑り摩擦係数を高く設定している。
またレール21の転送溝の背面は接触角変化路aをカバーする範囲で逃げ31が形成されている。
【0032】
直動案内装置が等分布荷重F1を受けると、逃げ31部でレールが撓むことにより、接触角変化路aでは殆ど荷重を受けず、ボール3は転送溝に僅かに侠持される無負荷領域14が形成される。
負荷領域13はボールが介挿されている範囲内の無負荷領域以外の部分である。
本構成によるボールの公転量Yと自転角度αは、転送溝との間で滑りが発生しない前提において下式となる。(単位表示〔°〕は角度〔deg〕の意味である。)
転送溝1に対するボールの公転量Y1〔mm〕=X*r1/(r1+r2)
転送溝2に対するボールの公転量Y2〔mm〕=X*r2/(r1+r2)
転送溝1に対するボールの自転角度α1〔°〕=Y1/(2*π*r1)*360
転送溝2に対するボールの自転角度α2〔°〕=Y2/(2*π*r2)*360
X :転送溝1と転送溝2との相対移動距離〔mm〕
r1:ボール中心と転送溝1のボール接触点との距離〔mm〕r1=r*COSθ1
r2:ボール中心と転送溝2のボール接触点との距離〔mm〕r2=r*COSθ2
r :ボール半径〔mm〕
θ1:転送溝1のボールとの接触角〔°〕
θ2:転送溝2のボールとの接触角〔°〕
【0033】
上式より図1(a)において、ボール半径を2.5mmとし、レール21を固定し、レール22を1mm左へ移動させた際の各ボールの公転量と自転量は下記となる。
(1)負荷領域の接触角45°ボールに対しては、
Y1(1)=0.5mm、Y2(1)=0.5mm、
α1(1)=16.2°、α2(1)=16.2°、
(2)無負荷領域中央の接触角60deg部のボールに対しては、
Y1(2)=0.414mm、Y2(2)=0.586mm、
α1(2)=19°、α2(2)=19°
なお(1)は接触角45°位置、(2)は接触角60°位置を示す。
また上記以外の接触角変化路aでは(1)と(2)の中間の特性を示す。
【0034】
上記計算によると、転送溝1を基準とした中央のボールの公転量は、負荷領域のボールに対して小さく(Y1(2)<Y1(1))、逆に転送溝2から見た場合は大きい(Y2(2)>Y2(1))。
一方転送溝1とボールとの関りを考慮せずに、転送溝2のみをボールが転がり接触している、との考えにおいては接触角が一定に付、全てのボールの公転量と自転量は同一となり、上記結果と一致しない。
【0035】
本構成においては接触角変化路aで殆ど荷重を受けず、転送溝1のボールとの滑り摩擦係数を転送溝2に対し大きく設定していることより、作動滑りを接触角変化路a部分の転送溝2側で発生させて中央のボールの公転量を減少させている。
【0036】
以上よりレール22を動作させた際のボールの公転速度は負荷領域に対して中央部が遅くなり、接触角変化路を中央方向に進むボールは減速し、逆に接触角変化路aを負荷領域方向に進むボールは加速することが分る。
この結果、負荷領域から中央に動くボールは次第にその間隔を狭め中央部付近でボール同士が当接または近接し、逆に中央部から負荷領域に動くボールは次第にその間隔を広め、負荷領域に入るボールは所定の間隔を確保することが出来る。
【0037】
なお、この場合の「所定の間隔」とは、一旦無負荷領域で当接した後上記作用により間隔を持って負荷領域に進入したボールが、負荷領域内において作動滑りにより再度当接を生じないだけの間隔であり、動作条件や転送溝の接触角や表面粗さの設定等により実験的に決める値であり、例えば0.1mmないし1mm、大型の転がり装置では3mmなどに設定される。
【0038】
以上はレール21を固定、レール22を左方向へ移動した場合であるが、レール22を右方向へ移動した場合、レール21を移動した場合、あるいは両方のレールを移動した場合であっても同一の作用により、負荷領域に入るボールは所定の間隔を確保することが出来る。
【0039】
本実施例による直動案内装置によれば、負荷領域においてボールの競い合いによる摩擦が発生しないため、非常に高精度な作動が必要な用途に好適である。また、保持器を持たないことにより保持器との滑り接触が発生しないため、特に滑り接触での磨耗が顕在化し易い真空環境での使用にも好適である。
【0040】
また負荷荷重が非常に小さい場合、作動すべりによる摩擦を直動案内の減衰性を高める目的で利用する場合、作動すべり領域に十分な潤滑剤を供給できる場合、等の条件によっては、図1の逃げ31、つまり無負荷領域を設けない構成も可能である。
さらに接触角変化路aの滑り摩擦係数を高くせず、接触角変化路に対向する転送溝の摩擦係数を、低摩擦係数の皮膜をコーティングする、等の方法により低くしても良い。
また図1は、非循環型の直動案内装置として例示したが本発明はこれに限定されるものではなくボールねじ装置(例えば、特開2005-69281)等にも適用できる。
【実施例2】
【0041】
図2(a)は本発明における2点接触玉軸受の断面図である。
内周面に転送溝1を有する外輪11と外周面に転送溝2を有する内輪12と、これら一対の転送溝間に転動自在に介挿した10個のボール3、及び4個の弾性ボール3aにより2点接触玉軸受を構成している。
転送溝は単一R形状で基本的には接触角0°であるが、外輪転送溝1のZ-Z断面よりZ'-Z'断面の間においては溝形状を連続的に変化させることにより、接触角を左右対称に徐々に大きくし、図2(b)に示すX-X断面で最大角度θ3(例えば45°)となる接触角変化路aを生成している。
一点鎖線4aはボールと外輪転送溝との接触角変化路での接触点軌跡である。
【0042】
この軸受は周知の深溝玉軸受と同じく、内輪を外輪の片側に寄せてその隙間からボール3を内輪と外輪の間に組み込むため、転送経路長の半分程度しかボールを装てん出来ない。このため保持器を不用とする本発明ではボール3が転送路の一部分に集結し、内輪がボールの無い方向に変位しボールが転送溝から外れる恐れがある。
本図構成ではこれを防ぐ目的で、10個のボール3を組み込んだ後に内輪を外輪と同心となる位置に移し、内輪と外輪の隙間より4個の弾性ボール3aを圧縮変形させて転送路に組込んでいる。
【0043】
この玉軸受を外輪固定、内輪回転で使用し、内輪には上方荷重Fが加わる場合に図の上半分13が負荷領域、下半分14が無負荷領域、となる。
内輪12が右(CW)回転するとボールは負荷領域において内輪につられて左廻りに自転しながら右へ公転するが、無負荷領域に侵入後は内輪と離れ遠心力により外輪の転送溝1上を慣性力により自転、公転の方向を維持しつつZ-Z断面より接触角変化路aに入る。
【0044】
接触角変化路におけるボールの公転と自転の関係は実施例1と同一であるので詳しくは省略するが、断面Z-Zから断面X-Xへの動作においてボールの自転速度は増大し、公転速度が減少(公転エネルギーが自転エネルギーに変換される)ことによりボールの間隔が減少し断面X-Xにおいてボール同士が当接、または近接する。
【0045】
さらにX-Xを超えてボールが左廻りに自転し右に公転すると、逆に接触角の減少に伴いボールの公転速度は増大し、自転速度が減少(自転エネルギーが公転エネルギーに変換される)し、負荷領域に侵入するボールは一定の間隔を確保することが出来る。
【0046】
なお上記のボールの運動は厳格に規制できるものではないので、断面X-X付近でボール同士が当接しない場合も考えられるが、その場合はより大きな間隔を持って負荷領域に侵入するだけであり、本発明の作用効果を損なうものではない。
弾性ボール3aの材質は、自身の変形により荷重Fを受けることは無く、また上記作用によりボール3との競い合いが無いことより、熱可塑性エラストマー材等が適用できる。
【0047】
また、アンバランス負荷を回転保持する軸受等、荷重方向が回転角に同期して変動する用途の場合は、本図で内輪固定、外輪回転とし、負荷による遠心力等の荷重が接触角変化路を無負荷領域とする様に、負荷の取付け位相をX-X方向にすることで同様の効果を得ることが出来る。
さらに、図2の無負荷領域は荷重Fによって生成されるラジアルスキマによっているが、外部荷重が加わっていない状態でラジアルスキマを有しているものでも良いし、予圧を付与された玉軸受であって、接触角変化路を他の転送溝部分より深く生成することによりボールとの隙間を設ける方法としても良い。
【0048】
また弾性ボール3aを極めて柔軟な中空ボールとし、潰した状態で転送溝内に組込んだ後にボール内部にエポキシ樹脂等を注入後硬化させて、外郭形状を球体とする方法も考えられる。
さらに弾性ボール3aを使用せずに、外輪、内輪に玉入溝を設けることにより、転送路内により多くのボール3を組込む構成としてもよい。その場合玉入溝からボールが脱落することの無い様にボール組込み後に溝を塞ぐ構造を取ることができる。(例えば、特開平11-325085)
【0049】
なおこの実施例では接触角変化路の溝形状を連続的に変化させている。この形状を容易に形成できる、プラスチックや金属の射出成形、金属板のプレス成形、等の型成形による軸受、に特に好適である。
【実施例3】
【0050】
図3は本発明における2点接触玉軸受の別の実施例のボール組込み方法を示す概念図である。
外輪11は外輪切断部11bを有しておりボール3の組込みは、この切断部を開くことによって行われ、転送路内にほぼ隙間無くボールを入れることができるものである。
【0051】
使用時は外輪外径、及び外輪幅に合致したハウジング(図中不記)に組込むことにより、外輪切断面同士が合わせられ、図2と同様な軸受形状となる。外輪切断部に無負荷領域、及び接触角変化路を形成することにより、切断面での転送溝の若干の位置ずれによる摩擦変動を軽微にすると共に、本発明である、負荷領域に侵入するボールに一定の間隔を確保する構成としている。
【0052】
図ではラジアル方向に外輪を開きボール挿入空間を確保しているが、アキシャル方向に外輪を捩ることでボール挿入空間を確保しても構わない。また切断部を内輪に設けても構わない。
本軸受は外輪が薄板金属のプレス加工や射出成型樹脂で成型される場合など、外輪の剛性が低くても良い用途に適している。
【実施例4】
【0053】
図4(a)は本発明における4点接触玉軸受の断面図で、大きなアキシャル負荷とモーメント負荷を1個の軸受で受けるべく、基本的な転送溝形状はゴシックアーチとし、内輪2点、外輪2点の計4点接触としている。
外輪11の転送溝部分に外輪切欠き部11aを設けており、この部分に2分割された循環部品41、42を勘合させている。
【0054】
循環部品41、42の転送溝はその接触角を、両端では外輪転送溝と同一、中央部は外輪転送溝より大きく設定する接触角変化路aを形成、この接触角変化路は面粗さを粗く加工することにより、ボールとの摩擦係数を内輪転送溝よりも高くしている。(一点鎖線4は、ボールと内輪、または外輪の転送溝が接触する点の軌跡を示し、一点鎖線4aは外輪転送溝の接触角変化路の接触点軌跡を示す。)
また転送溝の反対側の外輪と当接する部分に弾性部材43を挟み循環部品が軸受のラジアル方向に弾性的に外輪に勘合する構成として無負荷領域14を形成している。
【0055】
この軸受は循環部品の片側42を装着しない状態で、外輪切り欠き部11aより全てのボールを転送溝内に入れた後、循環部品42で蓋をする。図4では循環部品41、42は外輪に対しアキシャル方向に固定しておらず、装置への組込みの際に軸受外輪に勘合するハウジング(図中不記)の肩部に循環部品を当接固定させる構造としているが、別途循環部品を外輪に固定する手段を設けても良い。
【0056】
この軸受は循環部品が弾性部材43によりラジアル方向に逃げることにより、接触角変化路aでは外部負荷の方向によらずボールが転送溝に僅かに侠持される無負荷領域14を形成する。
弾性部材43のばね定数は例えば、接触角変化路aで転動体が受ける荷重の総和が動定格荷重の1/10以下、望ましくは1/100以下となる様に設定する。
【0057】
本構成においてボールが循環部品の接触角変化路aに進入すると接触角が次第に大きくなり、かつ摩擦係数が内輪より循環部品の方が大きいことにより、内輪とボールとの間で作動すべりを発生させながらボールの公転速度が低くなり、ボール同士が当接、または近接する。
【0058】
ボールが接触角変化路の中央を通過すると接触角が次第に小さくなることにより、同様に作動すべりを発生させながらボールの公転速度が高くなり、ボール同士が分離して循環部品から外輪に転動する。
なおボールが循環部品の転送溝から外輪の転送溝に移る際の急激な外部負荷による衝撃を防ぐため、外輪の切り欠き部に適度なクラウニングを施し外輪への応力集中を緩和することがより好ましい。
【0059】
循環部品の材質は連続して接触角が変化する溝形状を容易に成形できる型成形(プラスチックや金属の射出成形、粉末冶金成形、金属板のプレス成形等)が好適である。
なお循環部品は大きな負荷を受けないことより、内輪、外輪、ボールの様な硬度や強度が必要ではないので、適切なばね定数となる様に材質や形状を決定し、弾性部材43を不要とすることも可能である。
【0060】
また図4では外輪に循環部品を設けているが、これを内輪に設けても構わない。
なお、この循環部品による接触角変化路の形成は実施例2の2点接触軸受(深溝玉軸受、等)にも適用できるし、接触角を有するアンギュラ玉軸受(車両用ハブ軸受、等)などでも適用できる。
【実施例5】
【0061】
図5(a)は特殊な転送溝加工を行わずに本発明を実施した玉軸受の断面図である。
本図の内外輪の転送溝形状は全周に渡り均一なボール半径に近い単一Rであるが、図5(b)に示すように外輪11の一部にボール転送方向と平行に転送面に貫通するくさび状断面の溝51を設けている。この溝にくさび52を圧入すると曲げモーメントMが外輪の肩部を内側に変形させ、接触角変化路が形成される。53はくさび圧入後の転送溝形状、53aはくさび圧入前の転送溝形状、を示す。
【0062】
外輪転送溝のボールとの接触点は、溝51の無い部分では転送溝の中央であるが、溝部では転送溝の肩部の変形によりゴシックアーチ状となっており、肩部付近が接触点となる。よって内輪が回転しボールが溝53方向に公転する過程ではボール同士が近接、または当接し、溝から遠ざかる過程でボール同士に間隔を生じさせることが出来る。
均一な形状の転送溝に接触角変化路を生成する手段は上記に限るものではない。
【0063】
例えば軸受は全周に渡り均一な単一R溝を形成する通常の深溝玉軸受を使用し、軸受の外輪を保持するハウジングに軸受の外輪肩部に当接する段部を設ける(例えば、特開平11-303859の図1)。
使用時に当該軸受の外輪に掛る負荷が小さい領域の、外輪の肩部に当接するハウジング段部に突起を設けておき、軸受をハウジングに組み込み、ハウジングの突起と対向する位置に同様の突起を設けた押え蓋で軸受外輪を軸方向に圧接固定することにより、ハウジングと押え蓋の突起が図5(b)に示すアキシャル方向荷重Faを軸受の肩部に作用させて、外輪(または内輪)の接触角を大きくする接触角変化路を形成する構造でも良い。
【0064】
使用形態で軸受の外輪に掛る負荷が小さい領域であってもボールが内外輪から荷重を受ける用途においては、接触角変化路の表面粗さを粗くする、もしくは接触角変化路と対向する側の内輪(または外輪)の転送溝に潤滑剤を多く噴霧する、等の手段により接触角変化路の摩擦力を対向する転送溝に対して大きくすれば良い。
【0065】
この構成によれば、外輪の転送溝成形に研削加工を必要とする軸受鋼等を使用した場合でも容易に接触角変化路を生成することが出来る他、入手性の良い市販軸受により本発明の構成を実施できる。また、均一な断面形状の外輪転送溝に接触角変化路を形成する例として説明したが、外輪ではなく内輪に適用しても良いことはもちろんである。
なお、上記に記載のハウジングとは、例えば自動車用変速装置等のケーシングであり、その場合の転がり装置とは自動車用変速装置を言う。
【実施例6】
【0066】
図6は下部軌道軸55と上部軌道軸56と、下部軌道軸と上部軌道軸との間に介挿されるボール3により構成される2点接触スラスト玉軸受である。
下部軌道軸55の転送溝の一部においてボールと2点接触し、その接触点軌跡が一点鎖線4aとなる接触角変化路を形成している。また、下部軌道軸を固定するベース57の接触角変化路に逃げ溝58を設けてこの部分を無負荷領域としている。
ボールと軌道軸との摩擦力はボール自重により上部軌道軸56よりも下部軌道軸55の方が大きくなり、本発明の負荷領域のボール間に隙間を確保する作用が実現できる。
【0067】
また、スラスト軸受の上部軌道軸の上側にも転送溝を形成し、その上部に下部軌道軸と一体となる軌道軸を形成し、その間にも複数のボールを介挿することにより、上部軌道軸を上下から挟み込む構造のスラスト軸受があるが、(例えば特開2003-63288)この形態の軸受においても、各々のボール列について、片側の転送溝を上記形状とすることで同様に本発明の作用が実現できる。
【実施例7】
【0068】
図7は本発明におけるコロ軸受の接触角変化路における断面図である。
通常コロ軸受のコロと転送溝とは接線で接触しているるが、本実施例ではコロ59の端部にR形状の面取りを形成して、外輪11の無負荷領域の転送面60の隅に斜面形状の接触角変化路aを形成し、この部分ではコロ59は、円柱面でなく面取り部が接触することにより、負荷領域のころ間に隙間を確保する作用が実現できる。
【0069】
図7ではころ59は内輪12から離れて外輪11の接触角変化路aにのみ接しているが、この形状に限らず、ころを内輪にも当接させ、接触角変化路aの表面粗さを内輪12の転送面60よりも粗くすることでも、同様に本発明の作用が実現できる。
なお、コロを樽形とするクラウニングを行なう場合があるが(例えば特開平8-166014)このクラウニング部を前記R形状の面取りとして利用できる。
【実施例8】
【0070】
図8(a)はスライダ本体62とレール61により構成される負荷領域13と、スライダ本体内に貫通した戻し路67、スライダ本体の両端に固定されるエンドキャップ63内にU字状に形成された方向転換路69、及びエンドキャップからレール側に突き出たタング68、により構成された無負荷領域14よりなる循環路に複数のボール3を介挿してなる循環式直動案内装置の無負荷領域から負荷領域にボールが循環する部分の断面図である。
【0071】
この種の直動案内装置の全体構成は例えば特開2003-239967に開示されているものと同一であり、本図は本発明の要件部分を示すものである。
ボールが負荷領域と無負荷領域との間を循環する点において2~6図に示した軸受と同一であり、本発明が適用できる。
【0072】
エンドキャップ63内の方向転換路69はボール径より若干大きい連通穴で、その断面形状は経路中でボールとの接触角を連続的に変化させる形状としている。
詳しくは、方向転換路進入部69aでは円形断面であり接触角0°、図8(b)に示すX-X断面では接触角θ8を60°、タング68部付近では45°に設定した接触角変化路を方向転換路69の外側部分に形成している。
一点鎖線4はボールと転送溝との接触点軌跡を示し、一点鎖線4aは接触角が変化している部分の接触点軌跡を示す。
【0073】
なお負荷領域を形成するレール及びスライダ本体の転送溝のボールとの接触角は45°、戻し路は円形断面であり接触角0°としているが、これに限るものではない。
また、この接触角変化路について、特にタング部より接触角が大きくなる領域において、ボールを経路の外側に吸引するためエンドキャップの転送溝外側に磁石64を埋め込んでいる。
【0074】
次に本構成における作用を説明する。
レール61が左方向へ動作すると、負荷領域のボール3が左方向へ転動し、図示していない左端エンドキャップ内の方向転換路、及びスライダ本体内の戻し路67を経由し、右側のエンドキャップ内の方向転換路69へと押し出される。
戻し路67内のボールは路壁との接触位置が不特定であるためその自転方向も不特定であるが、方向転換路69においてボールは遠心力と磁力(磁石64による)の作用により路壁外側に案内され一定の自転方向を得る。
【0075】
方向転換路進入部69aからU字中央部付近までの接触角の増加に伴いボールの公転エネルギーの一部が自転エネルギーへと変換され、公転速度が減少しボールの間隔が減少しボール同士が当接、または近接する。
【0076】
さらにボールがタング部へ公転すると逆に接触角の減少に伴いボールの自転エネルギーの一部が公転エネルギーへと変換され、各ボールは公転速度を増すことにより間隔を作り負荷領域に進入する。
なお磁石64はボールに作用する遠心力が十分ではない低速領域においても接触角の変化を確実に付与する目的であり、使用速度により選択的に適用できるが、この目的を達成するためにはボール3を強磁性体とする。
【実施例9】
【0077】
図9は本発明における循環式直動案内装置の別の実施例で、無負荷領域から負荷領域にボールが循環する部分について、図8と相違する部分を示す断面図である。
エンドキャップ63のタング68より負荷領域に近い側に接触角を60°のb部、から接触角45°のc部まで、接触角を連続的に変化させた接触角変化路aを構成する転送溝を設けると共に、かかる転送溝内側のエンドキャップに開口部65を設け、その内部に磁石64を間挿し、開口部と磁石との間に隙間66を設けることによりこの部分でボールを弾性的に案内する構造としていること、及び、方向転換路69は円形断面とし接触角を変化させていないこと、が図8構成に対し異なっている。
【0078】
次に本構成における作用を説明する。
レール61が左方向へ動作すると、負荷領域のボール3が左方向へ転動し、図示していない左端エンドキャップ内の方向転換路とスライダ本体内の戻し路を経由し、右側のエンドキャップ内の方向転換路のタング68から接触角変化路へと押し出される。
【0079】
接触角変化路の入口でボールは接触角45°のレールより受ける接線力により左廻りに自転しながら左方向へ公転するが、磁石64の吸引力により接触角60°であるエンドキャップ側の転送溝b部にボールが吸引されることにより、ボールはレール61との間で作動すべりを発生させながら公転速度を減少させ、ボール同士が当接、または近接する。
その後、エンドキャップ転送溝c部までの間で接触角が45°に変化するに伴い公転速度が増大し、ボール同士が間隔を作り負荷領域に進入する。
【0080】
本構成によれば、ボール同士に間隔を設ける手段として図8実施例のボールの自転エネルギーを利用していないので非常に低速の動作でもボール同士に間隔を設けることができる。
【実施例10】
【0081】
図10は本発明によるボールねじ装置の実施例のボールの循環経路に沿った断面図である。本図のボールねじは、ねじ軸71とナット72の螺旋形状の転送溝1,2により構成される負荷領域と、循環部品73により構成された無負荷領域よりなる循環路内に、複数のボール3を介挿してなる循環式のボールねじ装置である。
ボール3が負荷領域と無負荷領域との間を循環する点において実施例8の循環式直動案内装置と同一であり、本発明が適用できる。本発明に関わる部分以外の構成は一般的なボールねじ(例えば特開2005-83520に例示)と同一であり省略する。
【0082】
本実施例では接触角変化路aを循環部品の循環路に接触角を大きくした73b部から、接触角を小さくした73c部の間に形成しており、図8の循環式直動案内装置と同一の作用によりボールの自転エネルギーを公転エネルギーに変換し、負荷領域に進入するボール同士の間隔を空けるものである。
【0083】
接触角変化路aはボールに作用する遠心力を利用するため、ボール接触面が内面となる方向に湾曲させ、さらに低い回転数において遠心力の作用が弱まることより、磁石64を接触角変化路の背面に配置しボールを吸引して、接触角変化路a上をボールが転送する構成としている。
【実施例11】
【0084】
図11は本発明によるボールねじ装置の別の実施例のボールの循環経路に沿った断面図である。本例の接触角変化路aは、循環部品73がねじ軸71と対向する部分の、接触角を大きくした73b部から、接触角を小さくした73c部の間である。その作用は実施例9の循環式直動案内装置と同様、作動すべりを発生させ、負荷領域に進入するボール3同士の間隔を空けるもので、循環部品73を樹脂で製作することによりその剛性を低くし、この部分で弾性的にボール3を案内する構造としている。
【0085】
ボール3とねじ軸71との間で作動滑りを発生させるために、循環部品の接触角変化路aの表面粗さを粗くする、または別途磁気吸引力を作用させる、等の手段用いても良いが、本図のボールねじを高い回転速度で使用する場合、接触角変化路aにおいてボール3は遠心力により循環部品73に押し付けられ、ねじ軸71とボール3との間の摩擦力に対し循環部品73とボール3との間の摩擦力が大きくなるので、上記手段は必須では無い。
【0086】
実施例10と11は循環部品73をナット72の側面より組込む方式で例示したが、この方式に限るものではなく、チューブ式、エンドキャップ式、こま式等のボールねじに適用することも出来る。さらに、ボールスプライン(ボールねじのリードを無限大とした回転伝達機構)、スライドブッシュ(ボールスプラインのレールを転送溝の無い丸軸とした直動案内機構)等の転がり装置に適用することも出来る。
【実施例12】
【0087】
図12は本発明によるボールねじ装置の別の実施例の転送溝部分の断面図である。
ねじ軸71の螺旋形状の転送溝1とナット72の螺旋形状の転送溝2との間に間挿されたボール3が図示していない循環部品によって循環する構成となっており、ナットの転送溝2内に1巻き毎に接触角変化路aを成形、図はその接触角変化が最大となる位置における3巻き分の断面を示している。
【0088】
転送溝1、2は接触角変化路a部分を除いて、接触角が45°(以下これを基準接触角と称する)となるゴシックアーチ形状であり、ナットの接触角変化路a部分は、基準接触角の位置にボール3の半径より若干曲率が小さい溝b、cをゴシックアーチの溝面より深く、かつゴシックアーチの溝面より表面粗さを若干粗く削り込んでいる。
【0089】
さらに詳しくはボール中心から溝bとゴシックアーチ溝との2箇所の交点b1とb2、とを結ぶ法線が基準接触角の法線と成す角度β1、β2を、β1<β2としている。溝cもボール中心に対し溝bと対称の形状である。
溝b、cのボール転送方向の形状は図示位置に対し手前側、奥側共、溝の深さを次第に減少させゴシックアーチ溝と滑らかに接続されている。(図示dに溝b、cとゴシックアーチ溝との稜線を示す。)
【0090】
次に本実施例の作用を説明する。
無荷重状態でねじ軸を回転させた場合のボールとナットとの接触位置は、接触角変化路a以外では基準接触角位置(b0、c0)であり、ボールの自転中心軸gーgからナットのボール接触点までの距離は、軸のボール接触点との距離と同じr1であるが、ボールが接触角変化路に入りその中央部に向かう過程では、ボール3は接点b1、c1に接触する(接点b2、c2はb1、c1に対し基準接触角から遠いので接触しない、または接触圧が小さい)。これによりボールの自転中心軸とナットのボール接触点との距離r2が減少、ボールは軸と作動すべりを起しながら公転速度が減少し、ボール同士が接触、あるいは近接する。
逆にボールが接触角変化路の中央から抜け出す過程では逆に前記r2が増大することによりボールの公転速度が増加しボールの間隔が空いた状態で接触角変化路を抜け出る。
【0091】
次に図12でナットに右方向のアキシャル荷重Faが作用した状態でねじ軸を回転させた場合の作用を説明する。
接触角変化路a以外でボール3は、ナット転送溝の左側部分b0とねじ軸の転送溝の右側部分e0を中心とする荷重を受け、ボールの自転中心軸はfーfとなる。このときのボールの自転中心軸からナット(及び軸)のボール接触点までの距離はボール半径と同じrである。(ナットの右側の溝と軸の左側の溝は、荷重により軸とナットとが変位することよりボールと接触しない。)
【0092】
ボール3が接触角変化路aに入りその中央部に向かう過程でボール3のナットとの接触位置がb1、b2に移動することにより、ボール中心とナットのボール接触点との距離はr3に減少するので、ボールの公転速度が減少しボール同士が接触、あるいは近接する。
逆にボール3が接触角変化路aの中央から抜け出す過程ではボールの公転速度が増加しボールの間隔が空いた状態で接触角変化路を抜け出る。
【0093】
溝b、cはゴシックアーチ溝より深く形成しているので、この部分でボールには殆ど荷重が作用せずボール同士の接触による悪影響は殆どなく、荷重を受けるゴシックアーチ溝部分でのボール同士の競り合いを防ぐことが出来る。
接触角変化路とゴシックアーチ溝との交差部は応力集中を避けるための面取りを設けることが好ましい。また、接触角変化路は図示に限らず転送溝の任意の位置に任意の数を設けることが出来る。
【0094】
図面から明らかな様に、本発明は非循環型のボールねじにも適用できる。その場合ボール列の端部からのボールの脱落を防ぐため、ボール列を連接させる保持器を別途付加することも出来る。その場合各ボールと保持器との隙間は接触角変化路内で生じるボール間隔の増減値よりも大きく設定する。
また本構成の溝形状はボールねじに限定されるものではなく、軸受や直動案内装置にも適用できる。
【実施例13】
【0095】
図13は本発明による軸受の接触角変化路を形成する方法を示す実施例の軸受外輪の断面図である。
外輪11の転送溝1を加工する際に、接触角変化路を形成する領域に対しモーメントMを印加しその領域の転送溝を開く方向に外輪を弾性変形させて工作機械に固定して一様な断面形状の転送溝を加工する。溝81はこの外輪の弾性変形を容易にするためのもので、製品形状によってその要否、及び形状が決定される。
その後外輪を工作機械から取り外すことによりモーメントMが解除されると、溝の曲率半径が小さくなる方向に変位し接触角変化路が形成できる。
図の破線11aは転送溝加工時の形状、外輪を工作機械から取り外した状態で11cから11bの範囲が接触角変化路である。
【0096】
なお加工時の弾性変形が解除されることにより外輪外径部が11dに示す様に膨らむので、後工程でこれを切除する。 通常、軸受、直動案内装置、ボールねじ等の転がり案内装置の転送溝の加工は、その転送方向に対して同一形状の溝断面を形成するために、転造、切削、研削等において回転工具を用い転送方向に工具を送る加工方法が取られている。本実施例の加工方法によれは、これら既存の工作機械に大幅な変更を加えず接触角変化路を容易に形成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明における非循環直動案内装置の実施例の断面図 (a)図は(b)図のZ-Z断面、(b)図は(a)図のX-X断面、(C)図は(a)図のY-Y断面
【図2】本発明における2点接触玉軸受の実施例の断面図
【図3】本発明における2点接触玉軸受の別の実施例のボール組込み方法を示す概念図
【図4】本発明における4点接触玉軸受の実施例の断面図
【図5】本発明における2点接触玉軸受の使用方法を示す実施例の断面図
【図6】本発明における2点接触スラスト玉軸受の実施例の断面図
【図7】本発明におけるコロ軸受の実施例の断面図
【図8】本発明における循環式直動案内装置の実施例の断面図
【図9】本発明における循環式直動案内装置の別の実施例の断面図
【図10】本発明におけるボールねじ装置の実施例の断面図
【図11】本発明におけるボールねじ装置の別の実施例の断面図
【図12】本発明におけるボールねじ装置の別の実施例の断面図
【図13】本発明における軸受の接触角変化路を形成する方法を示す実施例の軸受外輪の断面図
【符号の説明】
【0098】
a 接触角変化路
b、c ナットの溝
d ナットの溝b、cとゴシックアーチ溝との稜線
f、g ボールの自転中心軸
F 上方荷重
F1 等分布荷重
Fa アキシャル荷重
M 曲げモーメント
Y 公転量
θ、β 接触角
α 自転角度
r ボール半径
r1 ボール中心と転送溝1のボール接触点との距離
r2 ボール中心と転送溝2のボール接触点との距離
θ 接触角
1、2、60 転送溝
3 ボール
3a 弾性ボール
4 ボールと転送溝との接触点軌跡
4a 接触角変化路のボールと転送溝との接触点軌跡
11 外輪
11a 外輪切欠き部
11b 外輪切断部
12 内輪
13 負荷領域
14 無負荷領域
21、22 レール
31 逃げ
41、42 循環部品
43 弾性部材
51 くさび状断面の溝
52 くさび
53 くさび圧入後の溝形状
53a くさび圧入前の溝形状
55 下部軌道軸
56 上部軌道軸
57 ベース
58 逃げ溝
59 ころ
61 レール
62 スライダ本体
63 エンドキャップ
64 磁石
65 開口部
66 隙間
67 戻し路
68 タング
69 方向転換路
69a 方向転換路進入部
71 ねじ軸
72 ナット
73 循環部品
73b 循環路の接触角大部分
73c 循環路の接触角小部分
81 溝
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12