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明細書 :ナノ複合材料およびナノ複合材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5854503号 (P5854503)
公開番号 特開2013-107807 (P2013-107807A)
登録日 平成27年12月18日(2015.12.18)
発行日 平成28年2月9日(2016.2.9)
公開日 平成25年6月6日(2013.6.6)
発明の名称または考案の名称 ナノ複合材料およびナノ複合材料の製造方法
国際特許分類 C04B  35/00        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI C04B 35/00 H
C01B 31/02 101F
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 13
全頁数 12
出願番号 特願2011-256190 (P2011-256190)
出願日 平成23年11月24日(2011.11.24)
審査請求日 平成26年11月18日(2014.11.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】大森 守
【氏名】橋田 俊之
個別代理人の代理人 【識別番号】100095359、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 篤
【識別番号】100143834、【弁理士】、【氏名又は名称】楠 修二
審査官 【審査官】阪野 誠司
参考文献・文献 特開2010-118330(JP,A)
国際公開第2008/004386(WO,A1)
特開2006-225205(JP,A)
特開2006-208759(JP,A)
特開2004-018328(JP,A)
特開2009-295378(JP,A)
国際公開第2013/058382(WO,A1)
特開2011-175979(JP,A)
調査した分野 C04B 35/00
C01B 31/00
特許請求の範囲 【請求項1】
カーボンナノホーンとカーボンナノチューブとの混合物から成るナノカーボン充填剤と金属酸化物母体とを含む焼結体から成ることを特徴とするナノ複合材料。
【請求項2】
前記金属酸化物母体が結晶性であり、アルミニウム、シリコン、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、イットリウムおよびセリウムの酸化物からなる群より選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1記載のナノ複合材料。
【請求項3】
前記金属酸化物母体が結晶性であり、アルミニウム、シリコンおよびマグネシウムの酸化物からなる群より選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1記載のナノ複合材料。
【請求項4】
前記金属酸化物母体が結晶性であり、ジルコニウム、イットリウムおよびセリウムの酸化物からなる群より選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1記載のナノ複合材料。
【請求項5】
前記金属酸化物母体が結晶性であり、アルミニウムの酸化物であることを特徴とする請求項1記載のナノ複合材料。
【請求項6】
前記金属酸化物母体が非晶質であり、アルミニウム、シリコン、マグネシウム、ボロン、カルシウム、バリウム、リチウム、ナトリウムおよびカリウムの酸化物からなる群より選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1記載のナノ複合材料。
【請求項7】
前記ナノカーボン充填剤を0.1重量%から80重量%の範囲で含み、前記金属酸化物母体を99.9重量%から20重量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のナノ複合材料。
【請求項8】
前記ナノカーボン充填剤を0.3重量%から60重量%の範囲で含み、前記金属酸化物母体を99.7重量%から40重量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のナノ複合材料。
【請求項9】
カーボンナノホーンとカーボンナノチューブとの混合物から成るナノカーボン充填剤と金属酸化物母体とを混合する混合工程と、
その混合物を成形体にする成形工程と、
前記成形体を高温下および必要に応じて高圧下で焼結する焼結工程とを
含むことを特徴とするナノ複合材料の製造方法。
【請求項10】
前記焼結工程は、前記成形体を無加圧焼結することを特徴とする請求項9記載のナノ複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記混合工程において、混合溶媒に界面活性剤を含む水を使用することを特徴とする請求項9または10記載のナノ複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記混合工程において、混合溶媒にアルコール類およびアセトンから選ばれる1種以上を使用することを特徴とする請求項9または10記載のナノ複合材料の製造方法。
【請求項13】
前記混合工程において、アルコール類およびアセトンから選ばれる1種以上と水との混合溶媒を使用することを特徴とする請求項9または10記載のナノ複合材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノカーボン材料からなる充填材と金属酸化物母体とからなるナノ複合材料およびナノ複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボン材料として注目を集めているものに、カーボンナノホーンとカーボンナノチューブとがある。このうちカーボンナノチューブの発見は古く、1970年代までさかのぼる(例えば、非特許文献1参照)。カーボンナノチューブは、電気伝導性、電界放出、電磁波吸収、高強度、可撓性、高弾性、耐熱性、化学的安定、水素吸蔵等の数多くの特徴を有している。そのため、これまでに広い分野で応用に関する研究開発がなされている。この開発されている材料の中で、複合材料に関しては、製造が容易であり、マトリックスとなる材料の性能の向上、新規な性能の付加などの効果が比較的容易に判断できる。特に、高分子との複合材料については数多くの先行文献もあり、早くから製品として販売されている。セラミックスや金属との複合材料に関しても多くの先行文献が存在しているが、製品としての販売はほとんどない。
【0003】
カーボンナノホーンの発見は比較的最近である(例えば、非特許文献2参照)。カーボンナノホーンの構造は、短い単層カーボンナノチューブが表面から棘のように生成した直径約100nm球状で、ウニのような形をしている。カーボンナノホーンの電気的、機械的、化学的、物理的性質は、カーボンナノチューブとほとんど同じである。カーボンナノチューブは繊維状で異方性があるが、カーボンナノホーンは球状であるため異方性は全くない。カーボンナノチューブは、相互にファンデルワールス力で結合して凝集する傾向が強く、これを解膠して分散することが困難で、これを複合化するためにはかなりの技術開発が必要になる。カーボンナノホーンは、凝集の程度が小さく、分散することが比較的容易である。しかし、これまでのところ、応用に関する研究開発は限られている。複合材料に関しては、高分子との複合材料についての先行文献が存在するのみである(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
金属酸化物は、化合物ごとに特性が異なり、特徴的な使い方ができる。その特徴の一例を示すと、強度が大きく、高温においてもそれを維持し、耐食性に優れ、硬く耐摩耗性に優れるなどである。多くの金属酸化物は絶縁性である。これらの特徴を生かし、切削工具、軸受け、研削工具、エンジン部品、ノズル、生体材料、抵抗体、コンデンサー等の数多くの工業製品が作られ販売されている。また、金属酸化物は脆性材料であり、室温においてクラックの進展を塑性変形によってとめることはできないため、破壊しやすいという欠点を持っている。金属酸化物の特徴である脆性や絶縁性により、製品の利用範囲が限定されることも多い。金属酸化物にカーボンナノホーンやカーボナノチューブの特徴を付加できれば、これまでに使用できなかった分野での使用が可能になり、材料としての利用価値を格段に上げることが可能になる。
【0005】
本発明者等は、ナノカーボン材料であるカーボンナノホーンならびにカーボンナノチューブに注目し、その特徴を生かし、金属酸化物材料の短所の是正や、新たな機能を添加した材料の開発を目指して研究を行ってきた。本発明者等は、カーボンナノホーンやカーボンナノチューブの特徴と、金属酸化物の特徴とを組み合わせ、それらが最大限に生かされた複合材料の開発を成し遂げることができ、本発明を完成することができた。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】A. Oberlin, M. Endo, T.Koyama, “Filamentous growth of carbon through benzene decomposition”, J. Cryst.Growth, 1976, 32, p.335-349
【非特許文献2】Iijima, M. Yudasaka, R. Yamada,S. Bandow, K. Suenaga, F. Kokai and K. Takahashi, “Nano-aggregates ofsingle-walled graphitic carbon nano-horns”, Chem. Phys. Lett., 1999, 309,p.165-170
【0007】

【特許文献1】特開2005-298767号公報
【特許文献2】特開2008-106105号公報
【特許文献3】特開2010-189621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、カーボンナノホーンやカーボンナノチューブの特徴と、金属酸化物の特徴とを組み合わせ、それらが最大限に生かされたナノ複合材料およびナノ複合材料の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において使用する充填材であるナノカーボン材料は、カーボンナノホーンならびにカーボンナノチューブである。これに対する母材としての金属酸化物は、アルミニウム、シリコン、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム、セリウム、ボロン、カルシウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウムの元素からなるものである。これら充填材と母材とから複合材料を製造するためには、次の工程を経る必要がある。すなわち混合工程、成型工程、焼結工程であり、順を追ってこれらを説明する。
【0010】
本発明によれば、カーボンナノホーンとカーボンナノチューブとの混合物から成るナノカーボン充填剤と金属酸化物母体とを含む焼結体から成ることを特徴とするナノ複合材料が得られる。

【0013】
また、本発明によれば、前記金属酸化物母体が結晶性であり、アルミニウム、シリコン、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、イットリウムおよびセリウムの酸化物からなる群より選択される少なくとも1種からなることを特徴とするナノ複合材料が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、前記金属酸化物母体が結晶性であり、アルミニウム、シリコンおよびマグネシウムの酸化物からなる群より選択される少なくとも1種からなることを特徴とするナノ複合材料が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、前記金属酸化物母体が結晶性であり、ジルコニウム、イットリウムおよびセリウムの酸化物からなる群より選択される1種以上からなることを特徴とするナノ複合材料が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記金属酸化物母体が結晶性であり、アルミニウムの酸化物であることを特徴とするナノ複合材料が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、前記金属酸化物母体が非晶質であり、アルミニウム、シリコン、マグネシウム、ボロン、カルシウム、バリウム、リチウム、ナトリウムおよびカリウムの酸化物からなる群より選択される少なくとも1種からなることを特徴とするナノ複合材料が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記ナノカーボン充填剤を0.1重量%から80重量%の範囲で含み、前記金属酸化物母体を99.9重量%から20重量%の範囲で含むことを特徴とするナノ複合材料が得られる。ナノカーボン充填剤が0.1重量%以下では、複合材料の機械的性質の向上、電気伝導性の改善に対する寄与が小さく、その添加効果が明らかでない。ナノカーボン充填剤が80重量%以上になると、電気伝導度を上げる効果はその添加量に対して非常に小さくなり、機械的性質の向上はほとんどなくなるか、下降状態になる。
【0019】
また、本発明によれば、前記ナノカーボン充填剤を0.3重量%から60重量%の範囲で含み、前記金属酸化物母体を99.7重量%から40重量%の範囲で含むことを特徴とするナノ複合材料が得られる。ナノカーボン充填剤の量が0.3重量%より増えると、機械的性能の向上が明白になり、電気伝導度の改善も明白になる。ナノカーボン材料の量が60重量%以上になると、機械的性能の改善の勾配が小さくなり、電気伝導度の向上に対する添加量の寄与も、それまでの添加量に比べて小さくなる。
【0020】
また、本発明によれば、カーボンナノホーンとカーボンナノチューブとの混合物から成るナノカーボン充填剤と金属酸化物母体とを混合する混合工程と、その混合物を成形体にする成形工程と、前記成形体を高温下および必要に応じて高圧下で焼結する焼結工程とを含むことを特徴とするナノ複合材料の製造方法が得られる。前記焼結工程は、前記成形体を無加圧焼結することが好ましい。

【0021】
また、本発明によれば、前記混合工程において、混合溶媒に界面活性剤を含む水を使用することを特徴とするナノ複合材料の製造方法が得られる。
【0022】
また、本発明によれば、前記混合工程において、混合溶媒にアルコール類およびアセトンから選ばれる1種以上を使用することを特徴とするナノ複合材料の製造方法が得られる。
【0023】
更に、本発明によれば、前記混合工程において、アルコール類およびアセトンから選ばれる1種以上と水との混合溶媒を使用することを特徴とするナノ複合材料の製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明において、ナノカーボン材料であるカーボンナノホーンならびにカーボンナノチューブに注目し、その特徴を生かし、金属酸化物の短所を是正し、新たな機能を添加した材料の開発を目指して研究を行うことで、カーボンナノホーンやカーボンナノチューブの特徴と、金属酸化物の特徴を組み合わせ、それらが最大限に生かされたナノ複合材料およびナノ複合材料の製造方法の提供を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例のナノ複合材料である、3重量%のカーボンナノホーンを含むアルミナ系複合材料の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明の実施例のナノ複合材料である、2重量%のカーボンナノホーンと1重量%の多層カーボンナノチューブとを含むアルミナ系複合材料の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の実施例のナノ複合材料である、2重量%のカーボンナノホーンを含むホウ珪酸ガラス複合材料の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
充填材であるナノカーボン材料のカーボンナノホーンとカーボンナノチューブに関しては一部これまでに説明したとおりで、カーボンナノホーンは球形であり、凝集力も弱いことから金属酸化物との混合は容易である。カーボンナノホーンは、柔らかく、金属酸化物中に分散すると破壊を誘発する歪を吸収できるので、複合材料の靭性を向上することができる。カーボンナノチューブは、長さが10μm以上あり、太さは2nmから100nmと微細で、非常に凝集し易い。しかし、繊維状であるため金属酸化物中に分散すると、繊維の橋架けや引き抜きにより、複合材料の強度と靭性とを大きくすることができる。ただし、凝集しやすいので複合材料中では凝集体になって分散し、複合材料の強度を低下させる可能性がある。特に、カーボンナノチューブの量が多くなると凝集体になりやすい。

【0027】
カーボンナノホーンとカーボンナノチューブとを混合すると、カーボンナノホーンがカーボンナノチューブの凝集体の中に進入し、これをばらばらにする機能があることが分かった。つまり、カーボンナノチューブのみを使用するよりは分散しやすく、複合材料の機械的性能の向上が容易になる。さらに、複合材料の機械的性能へは、カーボンナノホーンの歪みエネルギーの吸収効果と、カーボンナノチューブの橋架けと引き抜きの効果とが加算されて作用することが分かった。この二つの混合割合は、カーボンナノホーンが100重量%から0.1重量%であり、カーボンナノチューブが0%重量から99.9重量%である。カーボンナノホーンが0.1重量%以下になると、カーボンナノチューブの凝集する度合いを軽減する効果がなくなる。

【0028】
母材である金属酸化物は、結晶性でアルミニウム、シリコン、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム、セリウムの元素からなる酸化物を、単独で或いは1種以上を混合して用いる。結晶質金属酸化物として、アルミニウム、シリカ、マグネシウムの酸化物の組み合わせでは、ムライトやスピネルのような化合物を用いることもできる。結晶質金属酸化物として、ジルコニア、イットリウム、セリアの酸化物からは、安定化ジルコニアを用いることができる。金属酸化物である結晶性アルミニウム酸化物は、機械的、電気的に優れた特性を有し、価格も低い優れた材料である。

【0029】
金属酸化物は、非晶質性でアルミニウム、シリコン、マグネシウム、ボロン、カルシウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウムの酸化物の中から1種以上を組み合わせて用いることもできる。加熱により金属酸化物に変化する化合物も、原料に使用することができる。この化合物としては、前記元素の水酸化物、炭酸塩、オキシナイトライド、オキシカーボナイトライドなどを、単独で或いは混合して使用できる。これらの化合物は、熱分解により金属酸化物を生成する。この分解によって金属酸化物の結晶核が生成し、それが初期の混合状態を形成するので、ナノカーボン材料とのナノ混合が達成できる。さらに、これらの化合物は、金属酸化物より水と濡れやすい。この二つの観点から、これらの化合物を用いることは、ナノカーボン材料との混合に際しては有利に働く。

【0030】
混合工程では、充填材と母材とを均一に混合する必要がる。この混合工程では、乾式混合を用いることもできるが、効果的な方法は、溶媒を使ってスラリーをつくり混合する方法である。スラリーに用いる溶媒は、水、有機溶媒およびこれらの混合溶媒である。ナノカーボン材料は、疎水性で水とのなじみは悪い。従って、水を溶媒に用いるときには、界面活性剤の添加が必要になる。界面活性剤には、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性界面活性剤の各種が存在するが、充填材の分散効果に関する大きな違いは無い。これらの界面活性剤を、水に対して、0.01%から10%の割合混合し、水系の混合溶媒を作製する。これに充填材を入れて十分に混合し、スラリーを作る。同様に、母材を水系混合溶媒にいれて混合し、スラリーを作る。この二つのスラリーを一つにまとめてから、各種スラリー混合機を使い混合する。この混合工程において、スラリーの粘度を大きくし成型工程での成型をし易くするために、各種成型助剤を添加すると、次の成型工程を連続的に行うことができる。

【0031】
ナノカーボン充填材は、疎水性であり有機溶媒とのなじみは良いので、これは均一混合に適した溶媒といえる。有機溶媒には、メタノール、エタノールなどのアルコール類およびアセトンを、単独或いは混合して使用できる。しかし、有機溶媒は、水系に比べて価格が高く、蒸発し易く、可燃性で毒性を有するものもあり、製造現場で使用されることは少ない。有機溶媒と水系の溶媒とを混合しても用いることもできる。

【0032】
まず始めに、有機溶媒とナノカーボン充填材とを混合し、分散を十分行ってから、必要に応じて界面活性剤を加えた水系の溶媒を添加して、十分混合する。アルコール類およびアセトンは水と混合するので、混合中に二つの溶媒が分離することは無い。混合が終了したら、80℃から100℃の範囲で10分から5時間加熱し、有機溶媒を蒸発させると、水系の溶媒からなるスラリーとすることができ、成型工程での有機溶媒の蒸発による粘度の変化や、環境への影響を防ぐことができる。この方法は、疎水性のナノカーボン材料を均一分散するのに有効な方法である。混合機には、遊星ボールミル混合機、ボールミル混合機、V型混合機、W型混合機、ニーダー混合機、自転公転ミキサーなど、スラリーの粘度等に合わせて選択使用すると均一混合が達成できる。混合時間は、10分から10時間以内である。10分以下では混合が十分に行なわれず、10時間以上では混合に時間がかかりすぎ生産性が落ちる。

【0033】
成型工程では、混合して得られたスラリーの粘度を、水の添加或いは蒸発により調節して、任意の形状に成型する。成型においては、プレス成型機、射出成型機、押出成型機、ドクターブレードなどの成型機を用途に応じて使い分け、必要とされる形状に成型する。成型工程で添加された界面活性剤や成型助剤を成型後に除く、脱脂工程を加える必要がある。この脱脂法の一つとして、加工された成型体を空気中で焼成する方法がある。焼成温度として、ナノカーボン材料が燃焼しない550℃以下の温度で焼成を行うことで、次の焼結課程で、有機化合物の分解で発生するガスによって成型体が割れるのを防ぐことができる。

【0034】
成型体の無加圧焼結は、通常の雰囲気を制御できる焼結炉を用いて行なう。焼結の雰囲気は、ナノカーボン材料が燃焼しない真空あるいは、窒素やアルゴンなどの非酸化性の雰囲気にする必要がある。焼結温度は、結晶性の金属酸化物については、1000℃から1800℃の範囲である。1000℃以下では焼結が十分でなく、1800℃以上では複合材料のマトリックスの金属酸化物の結晶粒が大きくなりすぎるか、ナノカーボン材と金属酸化物との反応により複合材料の強度が低下する。焼結時間は、0.2時間から5時間が適当である。0.2時間より短いと焼結が十分行なわれない。5時間以上では、焼結が終了しているので、これ以上に長く焼結を続けても緻密化に変化が無くなる。非晶質の金属酸化物を原料にするときの焼結温度は、500℃から1300℃が適当である。500℃以下では、焼結が十分完了しない。1300℃以上では、原料が軟化し、成型体の形状が変形する。焼結時間は、0.2時間から5時間が適当である。0.2時間より短いと焼結が十分行なわれない。5時間以上では焼結が終了しているので、これ以上に長く焼結を続けても変化が無くなる。

【0035】
放電プラズマ焼結機やホットプレスを用いて、加圧しながら成型と焼結とを同時に行う場合、スラリーを乾燥して混合粉体を作り、これを原料に用いる。この原料に界面活性剤や成型助剤が含まれている場合には、脱脂工程であらかじめこれを除く必要がある。加圧焼結の雰囲気は、真空あるいは、窒素ガスやアルゴンガスの非酸化性の雰囲気にする。母材が結晶性の金属酸化物については、焼結温度の範囲は800℃から1600℃である。800℃以下では焼結が十分に進行しない。1600℃以上に焼結温度を上げることは、既にこれ以下の温度で焼結が完了しているので、不必要である。焼結時間は、3分から120分が適当である。3分より時間が短いと焼結が完了しない。120分以上に時間を長くしても、焼結が既に完了しているので不必要である。母材が非晶質性の金属酸化物については、焼結温度の範囲は400℃から1200℃である。400℃以下では焼結が十分に進行しない。1200℃以上に焼結温度を上げると、非晶質性金属酸化物が型材からはみ出してくる。焼結時間は、3分から120分が適当である。3分より時間が短いと焼結が完了しない。120分以上に時間を長くしても、焼結が既に完了しているので不必要である。

【0036】
焼結された複合材料の表面に黒鉛粉を被覆すると、製品への適用が促進される。ナノカーボン材料と黒鉛粉との基本構造は、グラフェンで同じである。複合材料の表面に黒鉛粉を塗布すると、黒鉛膜が形成される。この黒鉛膜は、複合材料の表面に露出しているナノカーボン材料とファンデルワールス力で結合されている。この結合力は強固で、布で擦っても黒鉛膜が剥げ落ちることは無い。この黒鉛膜の厚さは、1μm~10μmであり、十分に摩擦力に耐える厚さであり、摩擦係数は0.1と、物質の中では一番小さい部類に属している。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上、詳細に説明したように、本発明のナノカーボン充填材と金属酸化物母体とからなる複合材料は、従来から知られているこれらの金属酸化物の靭性を改善しており、かつ強度も改善されている。さらに、耐摩耗性能が大きく改善された摩擦係数を示し、電気抵抗は、ナノカーボン材料の添加量に対して小さくなっている。さらに、ナノカーボン材の特徴である電磁波吸収にも優れている。この複合材料は、従来の金属酸化物が使われていた分野で、さらにはナノカーボン材料の特性を利用した新分野での利用が可能である。生体系材料では、人工関節、人工股関節、人工骨などへの適用がある。成型用部材では、ノズル、シリンダー、金型などへの適用がある。粉砕機用部材では、ボール、内張り材、粉砕機パーツへの適用がある。摺動部材では、メカニカルシール、軸受、フェルール、ボールベアリング、シャフトへなどの適用がある。切断用部材では、包丁、ナイフ、各種工業用切断刃、切削バイトなどへの適用がある。防塵用材料では、ICパッケージ、帯電防止ロール、誤作動防止材、静電記録用紙用部材などへの適用がある。電子・電気部品では、電磁波吸収体、カプラー、変調機、電磁波スイッチ、アンテナ、マイクロセンサー、二次電池、コンデンサー、抵抗体、ノイズ吸収体、発熱体、センサー、鍍金用セラミックスなどへの適用がある。燃料電池では、固体酸化物系の電解質であるジルコニアの代わりに使用することができる。
【実施例1】
【0038】
カーボンナノホーン0.6g(2重量%)と、アルミナ粉(タイミクロン)29.4g(98重量%)とを、界面活性剤(エマール)0.3mlを加えて蒸留水10mlにいれ、1時間混合した。この中にポリエチレングリコール3gを加えて、スラリーを作った。これを射出成型により、直径35mmの円盤状に成型し、乾燥した。これを室温から450℃まで5時間かけて昇温し、その温度に1時間保持して界面活性剤を分解し、空気中に棄散させた。この円盤状の生成型体を雰囲気炉にいれ、窒素ガス中で1450度まで4時間かけて昇温し、その温度に2時間保持して焼結し、複合材料を得た。この複合材料の曲げ強度は60MPaであり、破壊靭性値は5.0MPa・m1/2であった。
【実施例2】
【0039】
カーボンナノホーン0.9g(3重量%)、水酸化アルミニウム44.07g(Alに換算28.81g、96重量%)、シリカゲル0.46g(SiOに換算0.29g、1重量%)の3種類の原料を、2%の界面活性剤を含む40mlの蒸留水にいれ、2時間混合した。混合したスラリーを乾燥し、空気中において480℃まで5時間かけて昇温し、その温度に1時間保持して、界面活性剤、水酸化アルミニウム、シリカゲルを分解して、焼結用原料を作製した。この焼結用原料を、放電プラズマ焼結機にて、真空中において20MPaの加圧下で1500℃まで30分で昇温し、この温度に20分間保持して複合材料を合成した。この複合材料の曲げ強度は550MPaであり、破壊靭性値は4.5MPa・m1/2であった。この複合材料の破断面の走査型電子顕微鏡写真を、図1に示す。図1に示すように、カーボンナノホーンは、アルミナの粒界に小さく分散されていることが分かる。
【実施例3】
【0040】
カーボンナノホーン0.6g(2重量%)、多層カーボンナノチューブ(1300℃処理)0.3g(1重量%)、水酸化アルミニウム44.07g(アルミナ換算28.81g、96重量%)、シリカゲル0.46g(シリカ換算0.29g、1重量%)を、3%の界面活性剤を含む40mlの蒸留水に入れ、3時間混合した。これによって得られたスラリーを乾燥した後、空気中において480℃まで5時間かけて昇温し、その温度に1時間保持して界面活性剤、水酸化アルミニウム、シリカゲルを分解して焼結用原料粉を得た。この原料粉から放電プラズマ焼結機を用いて、真空中において20MPaの加圧下で1500℃まで30分かけて昇温し、この温度に30分間保持して複合材料を作製した。この複合材料の曲げ強度は65MPaであり、破壊靭性値は4.8MPa・m1/2であった。この複合材料の破断面の走査型電子顕微鏡写真を、図2に示す。図2に示すように、カーボンナノホーンは、アルミナ結晶の粒界に分散し、カーボンナノチューブは、アルミナの粒内および粒界に分散している。
【実施例4】
【0041】
カーボンナノホーン0.25g(0.5重量%)と、8モル%のYを添加したZrO粉49.75g(99.5重量%)とを、界面活性剤2%とポリエチレングリコール5gとを含む蒸留水30mlに入れてスラリーを作り、3時間これを混合した。混合スラリーを成型して、生成型体を得た。この生成型体を空気中において480℃まで5時間かけて昇温し、その温度に1時間保持して、界面活性剤とポリエチレングリコールとを分解した。この生成型体を窒素ガス中において、室温から1500℃まで3時間で昇温し、到達温度に2時間保持して複合材料を製造した。室温での8mol%ZrO焼結体の電気抵抗は1×1013Ω・cmの絶縁体であるが、この複合材料の室温での電気抵抗は5×10Ω・cmであった。
【実施例5】
【0042】
カーボンナノホーン0.4g(2重量%)、および微細に粉砕したホウ珪酸ガラス19.6g(98重量%)を、界面活性剤5%とポリエチレングリコール2gとを含む10mlの蒸留水に入れ、2時間混合した。混合して得られたスラリーを成型して、生成型体を得た。これを空気中において430℃まで5時間かけて昇温し、その温度に1時間保持して、界面活性剤とポリエチレングリコールとを分解した。この生成型体を、雰囲気炉を用い窒素ガス中で、730℃まで3時間かけて昇温し、その温度に20分間保持して複合材料を得た。複合材料の破断面の走査型電子顕微鏡写真を、図3に示す。図3に示すように、カーボンナノホーンがガラスの中に分散しているのが分かる。ホウ珪酸ガラスは絶縁体であるが、この複合材料の電気抵抗は10Ω・cmであった。
【実施例6】
【0043】
カーボンナノホーン15g(30重量%)、カーボンナノチューブ10g(20重量%)、ムライト(3Al2SiO)粉25g(50重量%)、ポリエチレングリコール5gからなる原料を、3%の界面活性剤を含む35mlの蒸留水に入れてスラリーを作り、これを4時間混合した。混合後、このスラリーを成型して、生成型体を得た。この生成型体を乾燥し、空気中において450℃まで5時間で昇温し、界面活性剤とポリエチレングリコールとを分解し、焼結の準備をした。焼結は窒素ガス中で、室温から1400℃まで6時間かけて昇温し、この温度に3時間保持して行ない、複合材料を得ることができた。この複合材料の曲げ強度は35MPaであり、破壊靭性値は4.2MP・m1/2であった。
【実施例7】
【0044】
カーボンナノホーン2.35g(4.7重量%)、カーボンナノチューブ0.15g(0.3重量%)、Al(OH) 52.06g(Al換算34.04g、68.08重量%)、Mg(OH) 19.47g(MgO換算13.46g、26.92重量%)の4種類の原料を、界面活性剤3%を含む蒸留水70mlに入れてスラリーをつくり、これを4時間混合した。混合後、スラリーを乾燥してから、空気中において室温から480度まで5時間で昇温し、この温度に1時間保持して、水酸化物と界面活性剤とを分解して焼結用粉体得た。この粉体を、放電プラズマ焼結機を用いて、真空中において20MPaの加圧下で1550℃まで30分間で昇温し、この温度に30分保持して複合材料を製造した。この複合材料のX線回折を測定した結果、マトリックスの金属酸化物がスピネル(MgAl)であることを確かめた。この複合材料の曲げ強度は50MPaであり、破壊靭性値は4.2MP・m1/2であった。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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