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明細書 :逆紐状ミセルから成るオイルゲル化剤および増粘ゲル状組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5586026号 (P5586026)
登録日 平成26年8月1日(2014.8.1)
発行日 平成26年9月10日(2014.9.10)
発明の名称または考案の名称 逆紐状ミセルから成るオイルゲル化剤および増粘ゲル状組成物
国際特許分類 C09K   3/00        (2006.01)
A23L   1/035       (2006.01)
A23L   1/05        (2006.01)
A23D   7/02        (2006.01)
A61K   8/02        (2006.01)
A61K   8/55        (2006.01)
A61K   8/60        (2006.01)
A61K   9/06        (2006.01)
A61K  47/24        (2006.01)
A61K  47/26        (2006.01)
A61Q  19/00        (2006.01)
FI C09K 3/00 103M
A23L 1/035
A23L 1/04
A23D 7/02
A61K 8/02
A61K 8/55
A61K 8/60
A61K 9/06
A61K 47/24
A61K 47/26
A61Q 19/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 18
出願番号 特願2010-546593 (P2010-546593)
出願日 平成22年1月14日(2010.1.14)
国際出願番号 PCT/JP2010/000159
国際公開番号 WO2010/082487
国際公開日 平成22年7月22日(2010.7.22)
優先権出願番号 2009007284
優先日 平成21年1月16日(2009.1.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年1月4日(2013.1.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】橋崎 要
【氏名】齋藤 好廣
【氏名】田口 博之
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】中野 孝一
参考文献・文献 特開昭56-070826(JP,A)
特開平04-100535(JP,A)
特開平05-004911(JP,A)
LUISI, P. L.,Organogels from water-in-oil microemulsions,Colloid and Polymer Science,1990年,Vol.268, p.356-374
SHCHIPUNOV, Yu. A.,Lecithin organogel A micellar system with unique properties,Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects,2001年,Vol.183-185, p.541-554
TUNG, Shih-Huang,A new reverse wormlike micellar system: mixtures of bile salt and lecithin in organic liquids,J. AM. CHEM. SOC.,2006年,Vol.128, p.5751-5756
調査した分野 C09K3/00、
C10M101/00-177/00、
A23D7/00-9/06、
A23L1/00-1/035、
A61K8/00-9/72、
A61K47/00-47/48、
A61Q1/00-90/00、
C09D1/00-11/20、
C09D101/00-201/10
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)レシチン、(b)ショ糖脂肪酸エステルからなる逆紐状ミセルを形成するオイルゲル化剤。
【請求項2】
前記(a)レシチンが、大豆レシチンまたは卵黄レシチンのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のオイルゲル化剤。
【請求項3】
前記(b)ショ糖脂肪酸エステルが、炭素数6以上24以下である脂肪酸のエステルであることを特徴とする請求項1または2に記載のオイルゲル化剤。
【請求項4】
前記(b)ショ糖脂肪酸エステルが、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステルのうち少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のオイルゲル化剤。
【請求項5】
前記(a)レシチンと(b)ショ糖脂肪酸エステルとの混合割合として、(a)レシチンと(b)ショ糖脂肪酸エステルの合計質量に対して、(b)ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量%から70質量%含有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のオイルゲル化剤。
【請求項6】
前記請求項1~5のいずれかに記載のオイルゲル化剤と(c)オイル成分とを少なくとも含み逆紐状ミセルを形成した増粘ゲル状組成物。
【請求項7】
前記増粘ゲル状組成物が、化粧料、医薬品、食品、塗料、インク、潤滑油の少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項6に記載の増粘ゲル状組成物。
【請求項8】
前記オイルゲル化剤と(c)オイル成分との混合割合として、オイルゲル化剤を増粘ゲル状組成物に対して1質量%から70質量%含有することを特徴とする請求項6または7に記載の増粘ゲル状組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物油類、鉱物油類、炭化水素類、脂肪酸エステル類等のオイルを増粘又はゲル化して固化するオイルゲル化剤、および該オイル、オイルゲル化剤を含有する増粘ゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
動植物油類、鉱物油類、炭化水素類、脂肪酸エステル類等のオイルを増粘又はゲル化して固化するオイルゲル化剤は、化粧料、医薬品、食品、塗料、インク、潤滑油等の様々な分野で広く利用されている。オイルゲル化剤に一般的に要求される性能としては、少量の添加で目的とするオイルをゲル化でき、得られたゲルが長期にわたり安定であることなどが挙げられる。さらに用途によっては、人体に対する安全性が高いこと、チキソトロピー性を有するゲルを生成すること、得られたゲルの触感がよいことなども要求されている。
【0003】
従来、オイルゲル化剤としては、低分子ゲル化剤(1,2,3,4-ジベンジリデン-D-ソルビトール、12-ヒドロキシステアリン酸、アミノ酸誘導体等)、高分子ゲル化剤(ポリアクリル酸誘導体、デキストリン誘導体等)等が知られている。低分子ゲル化剤は、オイル中で自己集合し、巨大な網目構造を形成することでオイルが非流動化しゲルを形成し、一方、高分子ゲル化剤は、それらが複雑に絡まり合い網目構造を形成することでオイルのゲル化を引き起こすものである。
【0004】
低分子ゲル化剤の1,2,3,4-ジベンジリデン-D-ソルビトールは、様々な種類のオイルをゲル化できる優れた化合物であるが、分解してベンズアルデヒドが生成するという点で安全性に問題があり実用化はされていない。12-ヒドロキシステアリン酸は、廃天ぷら油のゲル化剤として市販されているが、チキソトロピー性に欠ける。また、アミノ酸誘導体のゲル化剤はオイルに難溶性であるため、溶解させるには高温での加熱や長時間の攪拌などの煩雑な操作が必要となる。しかも、このような操作はゲルに配合される他成分の品質の変化を招く恐れがある点でも問題がある。一方、高分子ゲル化剤のデキストリン誘導体では、ゲル化に高濃度の添加が必要である上に、高分子特有の「べたつき感」を生じ使用感が良くない。ポリアクリル酸誘導体では少量の添加で良好な増粘ゲル化を示すが皮膚に使用した際には高分子特有の「べたつき感」を生じ、使用感がよくない。
【0005】
これらの問題を解決させるべく、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル等の天然界面活性物質1,2種、高級アルコール、グリセリン、オイルを加えたゲル状エマルション(特許文献1)が提案されているが、弾性が低いため液だれ等生じ易く取扱性が悪く、また高級アルコールおよびグリセリンの何れかが欠けると効果が得られないという問題がある。また、人体にも安全なオイルゲル化剤として、α-アミノラクタム誘導体を有効成分とするもの(特許文献2)が提案されているが、加熱溶解が必要であって、生体や環境に対する高い安全性、良好なゲル化能、使用感に優れ、取扱性のよさ等をすべて合わせ持つオイルゲル化剤は得られていない。
【0006】
一方、逆紐状ミセルによるオイルのゲル化も少数だが報告されている(非特許文献1-3)。逆紐状ミセルとは、界面活性剤の形成する自己集合体の一種であり、オイル中で網目構造を形成するためにゲル化を引き起こすことが知られている。逆紐状ミセルという内部に親水的な環境を有しているために水溶性の薬物や酵素等を内包することが可能であり、上記したオイルゲル化剤にはない特長を有している。
【0007】
この逆紐状ミセルを形成する代表的な系として、レシチン/水/各種オイルの3成分混合系が報告されている(非特許文献1)。また、水の代替物質には、エチレングリコール、ホルムアミド、グリセリン、胆汁酸塩(非特許文献3)、が報告されているに過ぎない。通常、レシチンはオイル中で逆球状ミセルあるいは逆楕円状ミセルを形成するが、これに少量の水等を添加するとレシチンのリン酸基に水素結合し、分子集合体の界面曲率が減少するために逆紐状ミセルの成長が起こると考えられている。
【0008】
従来の逆紐状ミセルが抱える問題として、代表的なレシチン/水/各種オイルから成る逆紐状ミセルでは、水が成分中に含まれているために加水分解を受けやすい薬物等を配合することはできない。また、水の代替物質であるエチレングリコールやホルムアミドは、皮膚、眼、粘膜等への強い刺激性を有するために人体には適用できない。また、胆汁酸塩は生体由来の界面活性剤であるが、皮膚や眼等に付着すると炎症を起こす可能性があり、生体や環境に対する高い安全性、良好なゲル化能、使用感に優れ、取扱性のよさ等をすべて合わせ持つオイルゲル化剤は今まで得られていない。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開平5-4911号公報
【特許文献2】特開平10-265761号公報
【0010】

【非特許文献1】P. L. Luisi et al.Colloid & Polymer Science, vol.268, p.356 (1990)
【非特許文献2】Yu. A. Shchipunov, Colloids and Surfaces A, vol.183-185, p.541 (2001)
【非特許文献3】S. H. Tung et al. Journal of the American Chemical Society, vol.128, p.5751 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、逆紐状ミセルを形成するオイルゲル化剤および増粘ゲル状組成物として、生体や環境に対する高い安全性、優れた使用感、および良好なゲル化能が要求され、それらの全てを併せ持つオイルゲル化剤、および該オイルゲル化剤を用いた増粘ゲル状組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、レシチン/ショ糖脂肪酸エステルが各種オイルのオイルゲル化剤として作用し、又これらのレシチン/ショ糖脂肪酸エステル/各種オイルの3成分混合系を用いて、逆紐状ミセル構造を有する増粘ゲル状組成物を得ることができること、および該増粘ゲル状組成物は人体および環境に対して極めて安全で、良好なゲル化性能を有しかつ長期の安定性を有し、上記課題を解決できることを見出した。
【0013】
そして、本発明者らは、レシチンとショ糖脂肪酸エステルを含有し逆紐状ミセルを形成するオイルゲル化剤、および該オイルゲル化剤と各種オイル成分とを含み逆紐状ミセルを形成した増粘ゲル状組成物を発明するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、
[1] (a)レシチン、(b)ショ糖脂肪酸エステルを含有し逆紐状ミセルを形成するオイルゲル化剤。
[2] 前記(a)レシチンが、大豆レシチンまたは卵黄レシチンのいずれかであることを特徴とする上記[1]に記載のオイルゲル化剤。
[3] 前記(b)ショ糖脂肪酸エステルが、炭素数6以上24以下である脂肪酸のエステルであることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のオイルゲル化剤。
[4] 前記(b)ショ糖脂肪酸エステルが、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステルのうち少なくとも一つからなることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載のオイルゲル化剤。
[5] 前記(a)レシチンと(b)ショ糖脂肪酸エステルとの混合割合として、(a)レシチンと(b)ショ糖脂肪酸エステルの合計質量に対して、(b)ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量%から70質量%含有することを特徴とする上記[1]~[4]のいずれかに記載のオイルゲル化剤。
[6] 上記[1]~[5]のいずれかに記載のオイルゲル化剤と(c)オイル成分とを少なくとも含み逆紐状ミセルを形成した増粘ゲル状組成物。
[7]前記増粘ゲル状組成物が、化粧料、医薬品、食品、塗料、インク、潤滑油の少なくともいずれか一つであることを特徴とする上記[6]に記載の増粘ゲル状組成物。
[8]前記オイルゲル化剤と(c)オイル成分との混合割合として、オイルゲル化剤を増粘ゲル状組成物に対して1質量%から70質量%含有することを特徴とする上記[6]または[7]に記載の増粘ゲル状組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の逆紐状ミセルを形成するオイルゲル化剤は、生体や環境に対し高い安全性を有する環境調和型であるという利点・効果だけでなく、使用するショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸の種類を変えることにより幅広いHLB(親水親油バランス)のタイプが得られ、各種化粧品、医薬品、食品、塗料、インク、潤滑油等のオイルゲル化剤として広く使用できる。又得られる増粘ゲル状組成物はチキソトロピー性を有し、液だれしにくくハンドリング性がよく、1年以上に亘る長期の安定性も備えるという効果を有している。増粘ゲル状組成物の透明性は、用いるオイルゲル化剤、増粘ゲル状組成物の調製条件などから、透明から半透明、白濁とその使用する用途に応じて調製もできる。更に逆紐状ミセル構造の内部に親水的な環境を有し、水溶性の成分・薬物や酵素等を内包できるという従来の増粘ゲル状組成物にはない特徴も備えている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】逆ミセル構造図
【図2】小角X線散乱測定の散乱曲線図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のオイルゲル化剤は、各種オイル成分を増粘又はゲル化させ逆紐状ミセルを形成することのできる材料である。本発明のオイルゲル化剤は、(a)レシチン、(b)ショ糖脂肪酸エステルを含有し、各種(c)オイル成分が添加混合されると増粘又はゲル化し逆紐状ミセル構造を形成した増粘ゲル状組成物になる。

【0018】
逆紐状ミセル(Reverse worm-like micelle)は、界面活性剤の形成する自己集合体の一種である。界面活性剤は分子中に親水基と疎水基とを有する両親媒性物質であり、その基のバランスに応じて水、油中で自己集合体を形成するが、図1に示すとおり、逆球状ミセルが円筒状に成長した逆紐状ミセルは、一時的なネットワーク構造を形成し、高弾性のゲルを形成する。また、内部に親水的な環境を有しているために水溶性の成分・薬物や酵素等を内包することが可能である。

【0019】
本発明者らは、逆紐状ミセルについて鋭意研究を重ねた結果、逆紐状ミセルの成長を引き起こす物質には2つの条件が必要であることを見出した。一つは、レシチンのリン酸基と水素結合できる官能基を二つ以上持つこと、二つめは、若干の疎水性を有することであり、この二つを満たすものとしてショ糖脂肪酸エステルに注目し、レシチンとショ糖脂肪酸エステルと各種オイルにより逆紐状ミセルを形成できることを見出した。

【0020】
本発明者らは得られた増粘又はゲル状調製物について、具体的にはレシチンとショ糖ミリスチン酸エステルとn-デカンを混合することにより形成した増粘ゲル状調製物について、その構造を観察した。増粘ゲル状調製物は透明であり、又結晶構造をもたなく光学的には等方性であり、偏光像としては特徴的なパターンは現れない。小角X線散乱(SAXS)測定をした散乱曲線からは、明瞭な回折ピークが得られなかったことから規則構造を形成しておらず、本発明の増粘ゲル状組成物は、逆紐状ミセルを形成しているといえる。
また、本発明の増粘ゲル状組成物は、逆紐状ミセルを形成しているゆえに、増粘又はゲル化されるオイルにもよるが、オイル自体が透明であるならば透明なものである。

【0021】
SAXS測定は、ブルカー・エイエックスエス社製のNano-STARを用い、X線源はCuKα線、出力は45kV/120mAで行った。全てのSAXS測定は25℃で行った。

【0022】
図2には、レシチン2質量%、ショ糖ミリスチン酸エステル0.4質量%、n-デカン97.6質量%を混合した増粘ゲル状組成物1(サンプル1)と、レシチン10質量%、ショ糖ミリスチン酸エステル2質量%、n-デカン88質量%を混合した増粘ゲル状組成物2(サンプル2)と、レシチン25質量%、ショ糖ミリスチン酸エステル5質量%、n-デカン70質量%を混合した増粘ゲル状組成物3(サンプル3)との、小角X線散乱測定の散乱曲線(散乱強度I(q)と散乱ベクトルqの関係)を示す。ここでq=(4π/λ)sinθ、θは散乱角、λはX線の波長である。これによれば、いずれの散乱曲線も明瞭な回折ピークを示さなかったことから、規則性構造を形成していないことがわかる。
この3つのサンプルの中で最もオイルゲル化剤濃度の低いサンプル1の散乱曲線では、両対数プロットの低q側の勾配が-1になっている。これは長い棒状の粒子、すなわち逆紐状ミセルの存在を示唆する。また(1)式および(2)式に基づくCross-sectionプロットにより、逆紐状ミセルの断面半径(r)は17Åと求められた。
JP0005586026B2_000002t.gifJP0005586026B2_000003t.gif ここで、Rcは断面の回転半径である。また、測定範囲の制約のために逆紐状ミセルの正確な長さは算出できなかったが、(3)式を用いたシミュレーションから逆紐状ミセルの長さ(t)は約500Å以上であることが示された。
JP0005586026B2_000004t.gif ここで、Jは一次のベッセル関数である。また、サンプル2およびサンプル3では低q側の散乱強度が減少し、傾きも緩やかになる傾向が認められた。特にサンプル3では、qが約0.07Å-1の位置に粒子間相互作用によるわずかなピークが認められる。この結果は、サンプル2およびサンプル3では、試料内の単位体積当たりの逆紐状ミセル量が増加していることを示している。すなわち、逆紐状ミセル同士が近接することで構造因子の寄与が強くなり、低q側の散乱強度が減少したと考えられる。
更に、本発明のオイルゲル化剤を用いてオイル成分を増粘又はゲル化させた増粘ゲル状組成物は、そのゲル化の状態、物性からすると、同様に逆紐状ミセルが形成されているといえる。

【0023】
本発明のオイルゲル化剤としての(a)レシチンは、天然に存在するリン脂質の混合物であり、大豆由来の大豆レシチン、卵黄由来の卵黄レシチン、純度を高めた精製レシチン、酵素処理したリゾレシチン等の改質レシチンを用いることができる。レシチンは2本のアルキル鎖を持つ両性リン脂質であり、食品用乳化剤として、乳製品の乳化、チョコレートの粘度低下に、また医薬製剤などにも広く利用されている。又疎水性の両性界面活性剤であり、生体や環境に対する高い安全性を有している。本発明ではレシチンのなかでも大豆レシチン、卵黄レシチンを用いることが好ましい。

【0024】
本発明のオイルゲル化剤としての(b)ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖の水酸基に食用油脂由来の脂肪酸をエステル結合して得られる非イオン性界面活性剤であり、食品添加剤として認可され人体に対する安全性も高いものである。脂肪酸としての炭素数の下限値は6以上、好ましくは10以上であり、炭素数の上限値は24以下、好ましくは18以下、更により好ましくは16以下である。脂肪酸の炭素数が少なすぎるとミセル形成能が低下し、増粘又はゲル化が起こらない場合があり、脂肪酸の炭素数が多すぎると融点が高くなり低温での安定性が低下する場合がある。またこれらの脂肪酸は単独で用いるだけでなく2種以上併用してもよい。

【0025】
(b)ショ糖脂肪酸エステルにおいては、脂肪酸の炭素数を変えることにより幅広いHLB(親水親油バランス)のタイプが得られる。本発明で使用されるショ糖脂肪酸エステルは、HLBが5以上18以下のものであって、好ましくは9以上17以下、より好ましくは11以上16以下である。HLBが低すぎると水素結合能が低下し、HLBが高すぎるとミセル内部に可溶化されにくくなり、増粘又はゲル化が起こらない場合がある。

【0026】
エステルを形成する脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、エルカ酸、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。なかでも炭素数10のカプリン酸、炭素数12のラウリン酸、炭素数14のミリスチン酸、炭素数16のパルミチン酸を用いるのが好ましい。

【0027】
ショ糖脂肪酸エステルには、ショ糖に対する脂肪酸のエステル化度としてモノエステルからオクタエステルまである。本発明では、いかなるエステル化度のショ糖脂肪酸エステルでも使用でき、市販のショ糖脂肪酸エステルをそのまま使用することもできる。市販のショ糖脂肪酸エステルのモノエステル含量は、通常0~100%であり、複数のエステル化度のものを含んでいる。本発明においては、モノエステル含量は好ましくは40~100%、更に好ましくは、80~100%である。モノエステル含量が少なくなると、増粘ゲル化が起こらないことがあったり、増粘ゲル化が起こっても好ましい増粘度が得られない場合がある。

【0028】
本発明のオイルゲル化剤を構成する(a)レシチン(b)ショ糖脂肪酸エステルとの混合比率は、逆紐状ミセルが形成できる混合割合ならばいかなる範囲でもよい。(a)レシチンを1~70質量%、好ましくは3~45質量%、より好ましくは5~25質量%、(b)ショ糖脂肪酸エステルを0.1~40質量%、好ましくは0.4~25質量%、より好ましくは0.8~15質量%とすることができる。オイルゲル化剤全量に対する(b)ショ糖脂肪酸エステルの質量割合は、(c)オイル成分によっても異なるが
(b)成分/((a)成分+(b)成分)の質量%であらわすと、実験的に下限は0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、実験的に上限は70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。

【0029】
本発明においてゲル化することのできる(c)オイル成分は、特に限定されるものではなく、動植物油類、鉱物油類、炭化水素類、脂肪酸エステル類等のオイルである。極性油のみ、非極性油のみ、あるいは極性油と非極性油の混合物であってもかまわない。具体的には、魚油、肝油、鯨油、ヘッド、ラード、馬油、羊油等の魚油、動物油、ヤシ油、パーム油、カカオバター、オリーブ油、菜種油、あまに油等の植物油の動植物油類;流動パラフィン、イソパラフィン、灯油、重油、イソオクタン、n-ヘプタン、n-デカン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、べヘン酸等の高級脂肪酸類、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類等を挙げることができる。これらのオイルは、単独であっても2種以上の混合物であっても用いることができる。

【0030】
オイルゲル化されるオイル中には、添加成分が増粘又はゲル化を妨げない範囲の濃度で、溶解、分散、乳化、懸濁あるいは混合されていてもよい。このような添加成分の例としては、化粧料、医薬品、食品、塗料、インク、潤滑油などの用途に応じて、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、防腐剤、保存料、殺菌剤、酸化防止剤、流動性向上剤、香料、色素、酵素、生理活性物質等があり、有機化合物又は酸化チタン、タルク、マイカ、水等の無機化合物を挙げることができる。

【0031】
本発明の(a)レシチン(b)ショ糖脂肪酸エステルを含むオイルゲル化剤により(c)オイル成分をゲル化する際には、オイル成分に対してオイルゲル化剤を、増粘又はゲル化し逆紐状ミセルを形成することのできる範囲ならばいかなる量までも混合できる。オイル成分の混合割合としては、(a)レシチンを1~70質量%、好ましくは3~45質量%、より好ましくは5~25質量%、(b)ショ糖脂肪酸エステルを0.1~40質量%、好ましくは0.4~25質量%、より好ましくは0.8~15質量%としたとき、(c)オイル成分は30~99質量%、好ましくは50~96質量%、より好ましくは70~94質量%とすることができる。

【0032】
また、増粘ゲル状組成物に対するオイルゲル化剤の混合割合を、((a)成分+(b)成分)/((a)成分+(b)成分+(c)成分)の質量%であらわすと、下限は1質量%以上、好ましくは4質量%以上、さらにより好ましくは6質量%以上であり、上限は70質量%以下、好ましくは50質量%以下であり、さらにより好ましくは30質量%以下ある。この範囲で加え、オイル成分を添加混合し放置することにより、増粘ゲル状組成物を得ることができる。ゲル強度は、オイルゲル化剤の濃度および(a)レシチンと(b)ショ糖脂肪酸エステルの混合割合により調整することが可能である。

【0033】
本発明の増粘ゲル状組成物は、(a)レシチン(b)ショ糖脂肪酸エステルを含有し、各種(c)オイル成分を添加し、必要に応じてその他の添加成分を添加し、均一に溶解することによって、ゲル化し逆紐状ミセル構造を形成することができる。増粘ゲル状組成物の調製例としては、(a)成分:レシチンの有機溶媒溶液と、(b)成分:ショ糖脂肪酸エステルをそれぞれ必要量容器に封入し、攪拌し、完全に(b)成分:ショ糖脂肪酸エステルを溶解させた後、減圧乾燥により有機溶媒を完全に蒸発させ、次いで(c)オイル成分を必要量加えてさらに一晩撹拌し、安定化のために容器を常温恒温槽で必要に応じて数日間静置することによって調製することができる。また、(a)レシチンと(b)ショ糖脂肪酸エステルと各種(c)オイル成分の混合物を、加熱溶解し、室温まで冷却することによって調製することができる。このときの加熱は、混合物が溶解する温度ならいかなる温度でもかまわないが、好ましくは、50℃~80℃の範囲である。この際、レシチンの酸化防止のために窒素雰囲気下又は酸化防止剤を添加して行うことが好ましい。なお、増粘ゲル状組成物は、各成分の添加、混合、攪拌することにより直ちに生じるものであり、ゲル状物の安定化のための長時間の攪拌及び静置は、必要に応じて適宜設定すればよく、場合によっては必要のないものである。

【0034】
増粘ゲル状組成物を調製する際に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール等の低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール;アセトン、2-ブタノン、シクロヘキノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、臭化イソプロピル、臭化エチル、ジクロロベンゼン、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;水などがあるが、なかでも低級アルコールを用いるのが好ましい。また、これら有機溶媒は単独でも、組み合わせて使用してもかまわない。

【0035】
本発明の増粘ゲル状組成物は、洗浄剤、化粧料、医薬、食品、消臭剤、入浴剤、芳香剤、脱臭剤等として常温でゲル状を呈する各種製品として用いることができる。なかでも洗浄剤、化粧料、医薬品の用途に特に適している。洗浄剤としては、食品用洗浄剤、食器洗浄剤、厨房用洗浄剤、洗顔料、ボディーソープ、シャンプー、リンス等が挙げられる。化粧料として、クリ-ム、乳液、ローション、クレンジング料、浴用化粧料、保湿化粧料、血行促進・マッサージ剤、パック化粧料、頭髪化粧料等が挙げられる。医薬品としては、軟膏剤、成形パップ剤、徐放製剤基材、経皮吸収製剤、ドラッグデリバリーシステム担体、電気泳動用ゲル等が挙げられる。

【0036】
化粧料中には、通常の一般化粧料に使用される成分を配合することができる。例えば、香料、色素、防腐剤、抗酸化剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線反射剤、pH調整剤等が挙げられ、さらに必要に応じて、種々の薬効成分、例えば、ヒアルロン酸、アラントイン、ビタミン類、アミノ酸、胎盤エキス等を挙げることができ、単独であるいは組み合わせて適宜配合することができる。

【0037】
本発明のオイルゲル化剤に各種オイルが添加混合されて形成された増粘ゲル状組成物は、逆紐状ミセル構造を形成しているので、内部に親水的な環境を有し水溶性の成分・薬物や酵素等を内包することが可能である。この逆紐状ミセルは、ナノメータ・スケールの極めて微細な分子集合体であり、この逆紐状ミセルはレシチンとショ糖脂肪酸エステルとの分子の極性基が内側を向き、疎水基が外側を向いて紐状に多数集合しているので、その内部は親水的な環境即ち小さなウオーター・プール(水相)が形成されている。内包することのできる水溶性の物質としては、例えば、保湿剤、美白剤、抗炎症剤、抗菌剤、ホルモン剤、ビタミン類、各種アミノ酸およびその誘導体や酵素、抗酸化剤、育毛剤などの薬剤成分が挙げられる。

【0038】
本発明のオイルゲル化剤に各種オイルが添加混合されて形成された増粘ゲル状組成物に、オイルに対して難溶性ないし非溶性を示す水溶性の物質、水溶性薬剤、酵素を直接、またはその水溶液を接触、混合攪拌させると、水溶性の物質は逆紐状ミセルの内部に取り込まれ、増粘ゲル中に溶解せしめることができる。形成された増粘ゲル状組成物の透明性は、用いるオイルゲル化剤、増粘ゲル状組成物の調製条件などから、透明から半透明、白濁とその使用する用途に応じて調製できる。

【0039】
本発明のオイルゲル化剤は、種々のオイルに対するゲル化能が優れ、低濃度の添加でも長期にわたり安定なゲルを生成することができるとともに、特に高級炭化水素類のゲルはチキソトロピー性が優れ、かつ触感も“べたつき”などの欠点をもたない。しかも、本発明のオイルゲル化剤はレシチン、ショ糖脂肪酸エステルという生体や環境に体する高い安全性、生分解性にも優れている材料成分からできており環境調和型のものである。
本発明のオイルゲル化剤は、さらに、上記以外の医薬部外品、インキ、塗料、潤滑油や、プラスチック、ゴム、金属等の加工分野のほか、農業、水産業、廃油処理等の分野でも用いることができる。

【実施例】
【0040】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。なお、配合量は特に指定がない限り質量%で示す。
【実施例】
【0041】
[増粘ゲル状組成物の評価]
粘度測定は、コーンプレート(直径が60、35mmでコーン角が1度)とペルチェ温度コントローラを備えた回転レオメーター(RheoStress600、HAAKE社製)を用いて25℃恒温下で行った。なお、溶媒の蒸発を防止するためにソルベントトラップを用いて測定した。具体的には、コーンプレートと試料台の間に試料を挟みこみ、コーンプレートを一定方向に回転させて試料に段階的にずり速度を加えた。それぞれのずり速度ごとにずり応力を求めて、粘度=ずり応力/ずり速度の関係から粘度を算出した。
また、これに基づき、増粘ゲル化の状態を以下のように評価した。
◎ゲル化(100Pa・s以上のもの):○増粘(10Pa・s以上100Pa・s未満のもの):×増粘ゲル化が不十分(10Pa・s未満のもの)
【実施例】
【0042】
[増粘ゲル状組成物の保存安定性]
保存安定性の確認は、実施例、比較例で調製した増粘ゲル状組成物を直径27.5mm、高さ70mmのサンプル瓶に封入し、25℃に設定した恒温槽中に6か月保存した後、増粘ゲル状組成物の分離状態を目視観察し、下記の基準により保存安定性を評価した。
◎良好である : ○少量分離している : ×悪い
【実施例】
【0043】
[実施例1~8]
(増粘ゲル状組成物の配合)
(a)成分のレシチンとして、大豆レシチン商品名「L-α-Phosphatidylcholine (Soy-95%)」Avanti Polar Lipids, Inc.製、(b)成分のショ糖カプリン酸エステルとして、商品名「スクロースモノカプレート」((株)同仁化学研究所製)、(c)成分として、n-デカン(関東化学(株)製 0.774mPa・s(25℃))を、表1に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製した。各配合組成に応じて、実施例1~8とした。
【実施例】
【0044】
(増粘ゲル状組成物の調製)
増粘ゲル状組成物の調製は、(a)成分:レシチンのエタノール溶液と、(b)成分:ショ糖脂肪酸エステルをそれぞれ必要量ボトルに封入し、マグネチックスターラーを用いて攪拌した。完全に(b)成分:ショ糖脂肪酸エステルを溶解させた後、減圧乾燥によりエタノールを完全に蒸発させる。(c)オイル成分を必要量加えてさらに一晩撹拌し、ボトルを平衡化のために25℃の恒温槽で数日間静置することによって調製した。なお、以下の実施例9~42、比較例1~4においても、増粘ゲル状組成物の調製は、これと同じ調製手段によった。
【実施例】
【0045】
実施例1~8は、(a)成分:レシチンを10、15、20、25質量%とし、(b)成分:ショ糖カプリン酸エステル、(c)成分:n-デカンをそれぞれ所要量用いて増粘ゲル状組成物を調製したものである。これらのオイルゲル化剤中のショ糖カプリン酸エステルの割合、即ち(b)成分/((a)成分+(b)成分)は、11質量%から23質量%、増粘ゲル状組成物中のオイルゲル化剤の割合、即ち((a)成分+(b)成分)/((a)成分+(b)成分+(c)成分)は、12質量%から30質量%である。増粘ゲルの状態は透明であり、いずれもゲル化 ◎であり、保存安定性も◎良好であった。評価結果を表1に示す。
【実施例】
【0046】
[実施例9~20]
(増粘ゲル状組成物の配合)
(a)成分のレシチンとして、商品名「L-α-Phosphatidylcholine (Soy-95%)」Avanti Polar Lipids, Inc.製、(b)成分をショ糖ラウリン酸エステルとして、商品名「リョートーシュガーエステル L-1695」(三菱化学フーズ(株)製)、(c)成分として、n-デカン(関東化学(株)製)を、表1に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製した。各配合組成に応じて、実施例9~16とした。
次に(c)成分をシクロヘキサン(関東化学(株)製 0.828mPa・s(25℃))に変え表2に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製した。各配合組成に応じて、実施例17、18とした。
更に(c)成分をパルミチン酸イソプロピル(和光純薬工業(株)製 6.09mPa・s(25℃))に変え表2に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製し実施例19とし、(c)成分を流動パラフィン(関東化学(株)製 146mPa・s(25℃))に変え表2に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製し実施例20とした。
【実施例】
【0047】
実施例9~16は、(a)成分:レシチンを5、10、15、20、25質量%とし、(b)成分:ショ糖ラウリン酸エステル、(c)成分:n-デカンをそれぞれ所要量用いて増粘ゲル状組成物を調製したものである。これらのオイルゲル化剤中のショ糖ラウリン酸エステルの割合、即ち(b)成分/((a)成分+(b)成分)は11質量%から25質量%、増粘ゲル状組成物中のオイルゲル化剤の割合((a)成分+(b)成分)/((a)成分+(b)成分+(c)成分)は6質量%から28質量%としたものである。増粘ゲルの状態は透明で、いずれもゲル化 ◎であり、保存安定性も◎良好であった。評価結果を表1に示す。
【実施例】
【0048】
実施例17~20は、(a)成分:レシチンを10質量%とし、(b)成分:ショ糖ラウリン酸エステル、(c)成分:シクロヘキサン、パルミチン酸イソプロピル、流動パラフィンをそれぞれ所要量用いて増粘ゲル状組成物を調製したものある。
これらのオイルゲル化剤中のショ糖ラウリン酸エステルの割合、(b)成分/((a)成分+(b)成分)は7質量%から58質量%、増粘ゲル状組成物中のオイルゲル化剤の割合((a)成分+(b)成分)/((a)成分+(b)成分+(c)成分)は11質量%から24質量%としたものである。増粘ゲルの状態は、いずれもゲル化 ◎であり、保存安定性も実施例20を除いてすべて◎良好であり、いずれも透明であった。実施例20の(c)成分:流動パラフィンでは、○少量分離していたが、通常の目安である3か月では十分透明で安定しており、使用上は何ら問題とはならない状態であった。評価結果を表2に示す。
【実施例】
【0049】
実施例9~20によれば、(a)レシチンを5、10、15、20、25質量%とし、(b)ショ糖ラウリン酸エステル、(c)成分として、n-デカンを用いて増粘ゲル状組成物を調製したものでも、(a)レシチンを10質量%とし、(b)ショ糖ラウリン酸エステル、(c)成分をn-デカンだけでなく、シクロヘキサン、パルミチン酸イソプロピル、流動パラフィンとしても、増粘ゲルの状態はいずれもゲル化◎、保存安定性も使用上何ら問題とはならない増粘ゲル状組成物であった。
【実施例】
【0050】
[実施例21~33]
(増粘ゲル状組成物の配合)
(a)成分:レシチンとして、商品名「L-α-Phosphatidylcholine (Soy-95%)」Avanti Polar Lipids, Inc.製、(b)成分をショ糖ミリスチン酸エステルとして、商品名「リョートーシュガーエステル M-1695」(三菱化学フーズ(株)製)、(c)成分として、n-デカン(関東化学(株)製)を、表2に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製した。各配合組成に応じて、実施例21~29とした。(c)成分をシクロヘキサン(関東化学(株)製)に変え表2に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製した。各配合組成に応じて、実施例30、実施例31とした。又(c)成分をパルミチン酸イソプロピル(和光純薬工業(株)製)に変え表2に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製し実施例32とし、(c)成分を流動パラフィン(関東化学(株)製)に変え表3に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製し実施例33とした。
【実施例】
【0051】
実施例21~29は、(a)成分:レシチンを5、10、15、20、25質量%とし、(b)成分:ショ糖ミリスチン酸エステル、(c)成分:n-デカンをそれぞれ所要量用いて増粘ゲル状組成物を調製したもの、実施例30、31は、(a)成分:レシチンを10質量%とし、(b)成分:ショ糖ミリスチン酸エステル、(c)成分:シクロヘキサンを用いて増粘ゲル状組成物を調製したもの、実施例32は、(a)成分:レシチンを10質量%とし、(b)成分:ショ糖ミリスチン酸エステル、(c)成分:パルミチン酸イソプロピルを、実施例33は、(a)成分としてレシチンを10質量%、(b)成分:ショ糖ミリスチン酸エステル、(c)成分:流動パラフィンをそれぞれ所要量用いて増粘ゲル状組成物を調製したものである。
【実施例】
【0052】
実施例21~33での混合割合は、オイルゲル化剤中のショ糖ミリスチン酸エステルの割合(b)成分/((a)成分+(b)成分)は7質量%から58質量%、増粘ゲル状組成物中のオイルゲル化剤の割合((a)成分+(b)成分)/((a)成分+(b)成分+(c)成分)は7質量%から30質量%としたもので、増粘ゲルの状態は透明で、いずれもゲル化◎、保存安定性も良好であった。なお、実施例32のゲルの状態は、増粘○であるが、使用上は何ら問題とはならない状態であり、また実施例33の保存安定性は○少量分離していたが、通常の目安である3か月では十分透明で安定しており、使用上は何ら問題とはならない状態であった。評価結果を表2、3に示す。
【実施例】
【0053】
[実施例34~42]
(増粘ゲル状組成物の配合)
(a)成分:レシチンとして、商品名「L-α-Phosphatidylcholine (Soy-95%)」Avanti Polar Lipids, Inc.製、(b)成分をショ糖パルミチン酸エステルとして、商品名「リョートーシュガーエステル モノエステル-P」(三菱化学フーズ(株)製)、(c)成分として、n-デカン(関東化学(株)製)を、表3に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製した。各配合組成に応じて、実施例34~42とした。
【実施例】
【0054】
実施例34~42は、オイルゲル化剤中のショ糖パルミチン酸エステルの割合(b)成分/((a)成分+(b)成分)を、11質量%から33質量%とし、増粘ゲル状組成物中のオイルゲル化剤の割合((a)成分+(b)成分)/((a)成分+(b)成分+(c)成分)を、6質量%から30質量%としたものである。
【実施例】
【0055】
実施例34~42によれば、(a)成分:レシチンを5、10、15、20、25質量%とし、(b)成分:ショ糖パルミチン酸エステル、(c)成分:n-デカンをそれぞれ所要量用いて増粘ゲル状組成物を調製したものでも、増粘ゲルの状態は透明で、いずれもゲル化◎、保存安定性も◎良好であった。なお、実施例34はゲルの状態は、増粘○であるが、使用上は何ら問題とはならない状態であった。評価結果を表3に示す。
【実施例】
【0056】
[実施例43~46]
(増粘ゲル状組成物の調製)
増粘ゲル状組成物の調製は、実施例23、31、32、33において、(a)成分:レシチン、(b)成分:ショ糖脂肪酸エステル、(c)オイル成分をそれぞれ必要量ボトルに封入し、60℃程度で加熱溶解し、室温まで冷却することによって調製した。その際、レシチンの酸化防止のために窒素雰囲気下で行った。
表4に示す配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製した。各配合組成に応じて、実施例43~46とした。
【実施例】
【0057】
実施例43~46によれば、(a)成分:レシチンを10質量%とし、(b)成分:ショ糖ミリスチン酸エステル、(c)成分:n-デカン、シクロヘキサン、パルミチン酸イソプロピル、流動パラフィンをそれぞれ所要量用いて増粘ゲル状組成物を調製したもので、増粘ゲルの状態は、いずれもゲル化◎、保存安定性も◎良好であった。なお、ゲルの透明性は、調製した増粘ゲル状組成物を直径27.5mm、高さ70mmのサンプル瓶に封入し、25℃に設定した恒温槽中に6か月保存した後、紫外可視分光光度計(V-530、日本分光(株)製)を用い、波長550nmで、透過率を測定した。透過率100~90%、89~50%、49%以下により、透明:1、半透明:2、白濁:3として評価したものである。評価結果を表4に示す。
透明性は、いずれも透明ないし半透明であり、増粘ゲル状組成物として用いる用途に応じた透明性を提供できる。
【実施例】
【0058】
[比較例1~4]
(増粘ゲル状組成物の配合)
(a)成分:レシチンとして、商品名「L-α-Phosphatidylcholine (Soy-95%)」Avanti Polar Lipids, Inc.製10質量%、(c)成分として、n-デカン(関東化学(株)製)90質量%を配合組成として、増粘ゲル状組成物を調製し比較例1とした。(c)成分をシクロヘキサン(関東化学(株)製)に変えた以外は比較例1と同じにして、増粘ゲル状組成物を調製し比較例2とした。(c)成分をパルミチン酸イソプロピル(和光純薬工業(株)製)に変えた以外は比較例1と同じにして、増粘ゲル状組成物を調製し比較例3した。又(c)成分を流動パラフィン(関東化学(株)製)に変えた以外は比較例1と同じにして、増粘ゲル状組成物を調製し比較例4とした。
【実施例】
【0059】
比較例1~4は、(b)成分のショ糖脂肪酸エステルを用いていないため、増粘ゲルの形成が不十分ないし形成し得ないものであった。配合組成と評価結果を表3に示す。これに対して、本発明では、実施例で示すようにオイル成分(c)n-デカンでは、25℃で0.774mPa・sのところ300万倍の増粘度が得られ、シクロヘキサンでは、25℃で0.828mPa・sのところ250万倍の増粘度、パルミチン酸イソプロピルでは、25℃で6.09mPa・sのところ60万倍の増粘度、流動パラフィンでは、25℃で146mPa・sのところ5万倍の増粘度が簡単に得られた。なお、(b)成分のショ糖脂肪酸エステルと(c)オイル成分とでも、増粘ゲルの形成は不十分ないし形成し得ないものであった。
【実施例】
【0060】
【表1】
JP0005586026B2_000005t.gif
【実施例】
【0061】
【表2】
JP0005586026B2_000006t.gif
【実施例】
【0062】
【表3】
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【実施例】
【0063】
【表4】
JP0005586026B2_000008t.gif

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、レシチン/ショ糖脂肪酸エステル/各種オイルの3成分混合系により逆紐状ミセルを形成することのできるオイルゲル化剤が提供でき、逆紐状ミセルが形成された増粘ゲル状組成物は、逆紐状ミセルの内部に親水的な環境を有し、水溶性の成分・薬物や酵素などを内包できる。また使用するショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸の種類を変えることにより幅広いHLB(親水親油バランス)のタイプが得られ、各種化粧品、医薬品、食品等のオイルゲル化剤として広く使用できる。更に、該オイルゲル化剤を用いることにより形成する増粘ゲル組成物は、チキソトロピー性を有し、ハンドリング性がよく、長期安定性もよいものである。
図面
【図2】
0
【図1】
1