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明細書 :超音波混相流量計、超音波混相流量計測プログラム、および超音波を用いた混相流量計測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5208124号 (P5208124)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月12日(2013.6.12)
発明の名称または考案の名称 超音波混相流量計、超音波混相流量計測プログラム、および超音波を用いた混相流量計測方法
国際特許分類 G01F   1/66        (2006.01)
G01F   1/74        (2006.01)
FI G01F 1/66 103
G01F 1/74
請求項の数または発明の数 12
全頁数 31
出願番号 特願2009-541148 (P2009-541148)
出願日 平成20年11月12日(2008.11.12)
国際出願番号 PCT/JP2008/070574
国際公開番号 WO2009/063896
国際公開日 平成21年5月22日(2009.5.22)
優先権出願番号 2007297358
優先日 平成19年11月15日(2007.11.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年9月28日(2011.9.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】武田 靖
【氏名】村井 祐一
【氏名】田坂 裕司
個別代理人の代理人 【識別番号】100110766、【弁理士】、【氏名又は名称】佐川 慎悟
【識別番号】100133260、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 基子
【識別番号】100145126、【弁理士】、【氏名又は名称】金丸 清隆
審査官 【審査官】岸 智史
参考文献・文献 特開2000-097742(JP,A)
特開昭58-032121(JP,A)
Yuichi MURAI, Hideki FUJII, Yuji TASAKA, Yasushi TAKEDA,Turbulent Bubbly Channel Flow Investigated by Ultrasound Velocity Profiler,Journal of Fluid Science and Technology,日本,日本機械学会流体工学部門,2006年 6月 7日,Vol.1, No.1,第12-23ページ
調査した分野 G01F 1/66
G01F 1/74
特許請求の範囲 【請求項1】
反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に複数配置されており、前記混相流に超音波を発射するとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信する超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段で受信した各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出手段と、
前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算を実行する差分演算部、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算を実行する二値化演算部の少なくともいずれかを有し、当該演算情報に基づいて界面位置を決定する界面位置決定手段と、
前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定手段により決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出手段と
を有する超音波混相流量計。
【請求項2】
反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に複数配置されており、前記混相流に超音波を発射するとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信する超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段で受信した各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出手段と、
前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の音響強度を取得する音響強度取得部または前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の圧力振幅を取得する圧力振幅取得部の少なくともいずれかを有し、前記混相流の界面から反射する反射波の音響強度が前記反射体から反射する反射波の音響強度より強いことを利用して界面位置を決定するか、または前記混相流から反射する反射波の圧力振幅が前記反射体から反射する反射波の圧力振幅より大きいことを利用して界面位置を決定する界面位置決定手段と、
前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定手段により決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出手段と
を有する超音波混相流量計。
【請求項3】
反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に複数配置されており、前記混相流に超音波を発射するとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信する超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段で受信した各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出手段と、
前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算を実行する差分演算部、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算を実行する二値化演算部の少なくともいずれかと、前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の音響強度を取得する音響強度取得部または前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の圧力振幅を取得する圧力振幅取得部の少なくともいずれかとを有し、当該演算情報および前記混相流の界面から反射する反射波の音響強度が前記反射体から反射する反射波の音響強度より強いことを利用して界面位置を決定するか、または当該演算情報および前記混相流から反射する反射波の圧力振幅が前記反射体から反射する反射波の圧力振幅より大きいことを利用して界面位置を決定する界面位置決定手段と、
前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定手段により決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出手段と
を有する超音波混相流量計。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかにおいて、前記界面位置決定手段により決定された界面位置における超音波の入射波と反射波との位相差を取得し、この位相差に基づいて前記入射波と前記反射波の位相が逆転しているか否かにより相の種類を判別する相判別手段を有する超音波混相流量計。
【請求項5】
反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に超音波送受信手段が複数配置されており、この超音波送受信手段により前記混相流に超音波が送信されるとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信して得られた各反射波データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出手段と、
前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算を実行する差分演算部、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算を実行する二値化演算部の少なくともいずれかを有し、当該演算情報に基づいて界面位置を決定する界面位置決定手段と、
前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定手段により決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出手段として
コンピュータを機能させる超音波混相流量計測プログラム。
【請求項6】
反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に超音波送受信手段が複数配置されており、この超音波送受信手段により前記混相流に超音波が送信されるとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信して得られた各反射波データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出手段と、
前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の音響強度を取得する音響強度取得部または前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の圧力振幅を取得する圧力振幅取得部の少なくともいずれかを有し、前記混相流の界面から反射する反射波の音響強度が前記反射体から反射する反射波の音響強度より強いことを利用して界面位置を決定するか、または前記混相流から反射する反射波の圧力振幅が前記反射体から反射する反射波の圧力振幅より大きいことを利用して界面位置を決定する界面位置決定手段と、
前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定手段により決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出手段として
コンピュータを機能させる超音波混相流量計測プログラム。
【請求項7】
反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に超音波送受信手段が複数配置されており、この超音波送受信手段により前記混相流に超音波が送信されるとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信して得られた各反射波データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出手段と、
前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算を実行する差分演算部、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算を実行する二値化演算部の少なくともいずれかと、前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の音響強度を取得する音響強度取得部または前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の圧力振幅を取得する圧力振幅取得部の少なくともいずれかとを有し、当該演算情報および前記混相流の界面から反射する反射波の音響強度が前記反射体から反射する反射波の音響強度より強いことを利用して界面位置を決定するか、または当該演算情報および前記混相流から反射する反射波の圧力振幅が前記反射体から反射する反射波の圧力振幅より大きいことを利用して界面位置を決定する界面位置決定手段と、
前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定手段により決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出手段として
コンピュータを機能させる超音波混相流量計測プログラム。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかにおいて、前記界面位置決定手段により決定された界面位置における超音波の入射波と反射波との位相差を取得し、この位相差に基づいて前記入射波と前記反射波の位相が逆転しているか否かにより相の種類を判別する相判別手段を有する超音波混相流量計測プログラム。
【請求項9】
反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に複数の超音波送受信手段を配置し、前記混相流に超音波を発射するとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信する超音波送受信ステップと、
前記超音波送受信手段が受信した各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出ステップと、
前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算の少なくともいずれかを実行し、当該演算情報に基づいて界面位置を決定する界面位置決定ステップと、
前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定ステップにより決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出ステップと
を有する超音波を用いた混相流量計測方法。
【請求項10】
反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に複数の超音波送受信手段を配置し、前記混相流に超音波を発射するとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信する超音波送受信ステップと、
前記超音波送受信手段が受信した各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出ステップと、
前記超音波送受信ステップにより受信した各反射波データから各反射波の音響強度、または前記超音波送受信ステップにより受信した各反射波データから各反射波の圧力振幅の少なくともいずれかを取得し、前記混相流の界面から反射する反射波の音響強度が前記反射体から反射する反射波の音響強度より強いことを利用して界面位置を決定するか、または前記混相流から反射する反射波の圧力振幅が前記反射体から反射する反射波の圧力振幅より大きいことを利用して界面位置を決定する界面位置決定ステップと、
前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定ステップにより決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出ステップと
を有する超音波を用いた混相流量計測方法。
【請求項11】
反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に複数の超音波送受信手段を配置し、前記混相流に超音波を発射するとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信する超音波送受信ステップと、
前記超音波送受信手段が受信した各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出ステップと、
前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算の少なくともいずれかを実行し、かつ、前記超音波送受信ステップにより受信した各反射波データから各反射波の音響強度、または前記超音波送受信ステップにより受信した各反射波データから各反射波の圧力振幅の少なくともいずれかとを取得し、当該演算情報および前記混相流の界面から反射する反射波の音響強度が前記反射体から反射する反射波の音響強度より強いことを利用して界面位置を決定するか、または当該演算情報および前記混相流から反射する反射波の圧力振幅が前記反射体から反射する反射波の圧力振幅より大きいことを利用して界面位置を決定する界面位置決定ステップと、
前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定ステップにより決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出ステップと
を有する超音波を用いた混相流量計測方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかにおいて、前記界面位置決定ステップにより決定された界面位置における超音波の入射波と反射波との位相差を取得し、この位相差に基づいて前記入射波と前記反射波の位相が逆転しているか否かにより相の種類を判別する相判別ステップを有する超音波を用いた混相流量計測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、混相流の流量を正確に計測するための超音波混相流量計、超音波混相流量計測プログラム、および超音波を用いた混相流量計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、円管等の流路内を流れる流体の量を計測する流量計に関する技術は数多く提案されている。特に、超音波を用いた流量計は不透明な流体の計測が可能であり、円管壁等が介在しても外部からの計測が可能であるため流れの障害とならず、かつ既存の円管に容易に取り付けることが可能である等、他の計測方法にはない多くの利点を有することから様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、特開昭58-32121号公報では、流路の上流と下流とに、所定距離を隔てて対向配置された超音波送信器および超音波受信器と、その超音波送信器から一定の周波数を発振するように制御する超音波信号発信器とを有する位相差方式による超音波流量計が提案されている(特許文献1)。特許文献1に係る超音波流量計は、流体の平均流速と、超音波送信器および超音波受信器から計測される超音波周波数の位相差とが、比例関係を有することを利用して流量を求めるものであり、超音波信号発信器が発信する超音波信号を受けることにより超音波送信器が所定の周波数の超音波を発振し、前記超音波受信器により流体内を伝播した超音波の周波数を計測し、位相差を算出して、算出した位相差から流体の平均流速を算出し、一定の補正係数による補正を行って流量を得るものである。
【0004】
また、特開2000-97742号公報では、超音波トランスデューサにより流体に超音波を発射する超音波送信手段と、反射体からの反射波を受信するとともに流体の流速分布を計測する流速分布測定手段と、流速分布から流量を算出する流量算出手段とを有するドップラ式超音波流量計が提案されている(特許文献2)。特許文献2に係るドップラ式超音波流量計は、流速分布測定手段により流体の流速分布を50ミリ秒から100ミリ秒程度の間隔で取得し、流量算出手段において流路の断面積で流速分布を積分することにより流量を算出するものである。また、計測精度向上のため複数の超音波トランスデューサを用いて流量計測を行うことも提案されている。
【0005】

【特許文献1】特開昭58-32121号公報
【特許文献2】特開2000-97742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る超音波流量計は、超音波が相と相との界面で反射して受信器まで伝播することができないという問題がある。すなわち、対向配置された超音波送信器と超音波受信器との間に混相流の界面が存在する場合、平均流速の計測は不可能であり、流量を得ることはできなくなる。また、混相流は各相の流れが複雑に絡み合うことから流速分布は時々刻々と大きく変化し、適当な補正係数を選択して補正することが困難であるという問題もある。例えば液体と気体との混相流である場合、気相は液相内で形状を自由に変化させるため、流路形状が不定期に変化するのと同じ状態であり、補正係数も気相の変形にあわせて都度設定する必要があるが、適当な補正係数をその都度設定することは現実的に不可能である。したがって、特許文献1に係る超音波流量計では、混相流の流量を計測することはできない。
【0007】
一方、特許文献2に係る超音波流量計は、超音波トランスデューサと界面位置との間の流速分布は正確に計測することができるが、前記の通り超音波は界面で反射するため、界面から先の流速分布を得ることができないという問題がある。また、流路壁や界面により超音波が乱反射し、その結果界面より先の領域にあたかも液相が存在するように流速分布を算出してしまうという問題もある。すなわち、本来は液体が存在しない気体領域において液体が存在するように誤って流速分布を算出してしまい、その流速分布に基づいて流量を算出するため、誤差が大きくなるのである。したがって、特許文献2に係る超音波流量計では、混相流において正確な流量を測定することはできない。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、混相流の流量計測において、超音波の反射波または流速分布のうち少なくとも一方のデータを演算処理することにより相と相との界面位置を検出し、混相流の流量を精度よく検出することができる超音波混相流量計、超音波混相流量計測プログラム、および超音波を用いた混相流量計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る超音波混相流量計は、反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に複数配置されており、前記混相流に超音波を発射するとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信する超音波送受信手段と、前記超音波送受信手段で受信した各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出手段と、前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算を実行する差分演算部、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算を実行する二値化演算部の少なくともいずれかを有し、当該演算情報に基づいて界面位置を決定する界面位置決定手段と、前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定手段により決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出手段とを有する。
【0010】
なお、本発明の一態様として、前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算を実行する差分演算部、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算を実行する二値化演算部の少なくともいずれかを有し、当該演算情報に基づいて界面位置を決定する界面位置決定手段に代えて、もしくは前記界面位置決定手段とともに、前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の音響強度を取得する音響強度取得部または前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の圧力振幅を取得する圧力振幅取得部の少なくともいずれかを有し、前記混相流の界面から反射する反射波の音響強度が前記反射体から反射する反射波の音響強度より強いことを利用して界面位置を決定するか、または前記混相流から反射する反射波の圧力振幅が前記反射体から反射する反射波の圧力振幅より大きいことを利用して界面位置を決定する界面位置決定手段を有してもよい。
【0011】
また、本発明の一態様として、前記界面位置決定手段により決定された界面位置における超音波の入射波と反射波との位相差を取得し、この位相差に基づいて前記入射波と前記反射波の位相が逆転しているか否かにより相の種類を判別する相判別手段を有してもよい。
【0012】
次に、本発明に係る超音波混相流量計測プログラムは、反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に超音波送受信手段が複数配置されており、この超音波送受信手段により前記混相流に超音波が送信されるとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信して得られた各反射波データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出手段と、前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算を実行する差分演算部、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算を実行する二値化演算部の少なくともいずれかを有し、当該演算情報に基づいて界面位置を決定する界面位置決定手段と、前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定手段により決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出手段としてコンピュータを機能させる。
【0013】
なお、本発明の一態様として、前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算を実行する差分演算部、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算を実行する二値化演算部の少なくともいずれかを有し、当該演算情報に基づいて界面位置を決定する界面位置決定手段に代えて、もしくは前記界面位置決定手段とともに、前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の音響強度を取得する音響強度取得部または前記超音波送受信手段により受信した各反射波データから各反射波の圧力振幅を取得する圧力振幅取得部の少なくともいずれかを有し、前記混相流の界面から反射する反射波の音響強度が前記反射体から反射する反射波の音響強度より強いことを利用して界面位置を決定するか、または前記混相流から反射する反射波の圧力振幅が前記反射体から反射する反射波の圧力振幅より大きいことを利用して界面位置を決定する界面位置決定手段を有してもよい。
【0014】
次に、本発明に係る超音波を用いた混相流量計測方法は、反射体が混入している混相流を流通させる管の周囲に複数の超音波送受信手段を配置し、前記混相流に超音波を発射するとともに、少なくとも前記反射体からの反射波および前記混相流の界面からの反射波を受信する超音波送受信ステップと、前記超音波送受信手段が受信した各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する流速分布算出ステップと、前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算の少なくともいずれかを実行し、当該演算情報に基づいて界面位置を決定する界面位置決定ステップと、前記時空間流速分布のうち前記界面位置決定手段により決定した界面位置までの時空間流速分布を前記管の断面積に対して積分することにより流量を算出する流量算出ステップとを有する。
【0015】
なお、本発明の一態様として、前記時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分の少なくともいずれかの差分演算、または前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算の少なくともいずれかを実行し、当該演算情報に基づいて界面位置を決定する界面位置決定ステップに代えて、もしくは前記界面位置を決定する界面位置決定ステップとともに、前記超音波送受信ステップにより受信した各反射波データから各反射波の音響強度、または前記超音波送受信ステップにより受信した各反射波データから各反射波の圧力振幅の少なくともいずれかを取得し、前記混相流の界面から反射する反射波の音響強度が前記反射体から反射する反射波の音響強度より強いことを利用して界面位置を決定するか、または前記混相流から反射する反射波の圧力振幅が前記反射体から反射する反射波の圧力振幅より大きいことを利用して界面位置を決定する界面位置決定ステップを有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、混相流の流量計測において、超音波の反射波または流速分布のうち少なくとも一方のデータを演算処理することにより相と相との界面位置を検出し、混相流の流量を精度よく検出することができる超音波混相流量計、超音波混相流量計測プログラム、および超音波を用いた混相流量計測方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る超音波混相流量計、超音波混相流量計測プログラム、および超音波を用いた混相流量計測方法の実施形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態における超音波混相流量計1の構成を示すブロック図である。
【0018】
なお、本実施形態は、図2に示すような、円管P内を流れる液体Wと気体Gとからなる二相流の流量を計測する際の構成であるが、本発明において、計測対象とする管の断面形状や材質は特に限定されず、断面形状については円管の他、略円管、楕円管、多角管、三日月管等でもよく、材質については単体金属や合金の他、樹脂等を用いてもよい。また、本発明における混相も特に限定されず、液体と気体とからなる二相の他、液体と液体とからなる二相、液体と固体とからなる二相、気体と固体とからなる二相、気体と液体と固体とからなる三相でもよい。なお、液体と液体とからなる二相の例としては、水と油脂または有機溶媒等の、極性分子が構成する液体と非極性分子が構成する液体とからなる二相が挙げられる。
【0019】
次に、本実施形態における超音波混相流量計1は、超音波を発射するとともに、少なくとも反射体からの反射波および混相流の界面からの反射波を受信する超音波送受信手段2と、各種データ等を表示する表示手段3と、ユーザーから各種の指令を入力する入力手段4と、各種データを記憶する記憶手段5と、各種の演算処理を実行する演算処理手段6と、流速分布を算出する流速分布算出手段7と、界面位置を決定する界面位置決定手段8と、流速分布および界面位置から流量を算出する流量算出手段9と、界面を構成する相の種類を判別する相判別手段10とから構成されている。
【0020】
一方、本実施形態における超音波混相流量計測プログラム1aは、記憶手段5のプログラム記憶部51に記憶されており、各種データを記憶する記憶手段5と、流速分布を算出する流速分布算出手段7と、界面位置を決定する界面位置決定手段8と、流速分布および界面位置から流量を算出する流量算出手段9と、界面を構成する相の種類を判別する相判別手段10として機能させる。
【0021】
以下、本実施形態の各構成のうち、超音波混相流量計1の構成について詳細に説明する。
【0022】
超音波送受信手段2は、図2および図3に示すように、超音波を発射するとともに、少なくとも反射体からの反射波および混相流の界面からの反射波を受信する超音波トランスデューサ21と、この超音波トランスデューサ21を円管Pの周囲に配置し固定させるトランスデューサホルダー22と、残響超音波を除去するための残響超音波吸収シート23とからなる。
【0023】
本実施形態における超音波トランスデューサ21は略円筒状に形成されており、先端面には任意の超音波を発生させる振動素子(図示しない)が備えられている。この振動素子は、振動する電圧が与えられることにより、その振動数に対応して振動することができる。例えば、1MHz、2MHz、4MHz等の所定の振動数で振動する電圧を与えることにより、同周波数・同波長の超音波パルスを発射する。また、振動素子は振動が与えられると、その振動に対応した電圧を発生することができる。すなわち、流体中を流れる反射体(図示しない)および界面から反射される反射波を受信することにより、その反射波の振動に対応した電圧が発生する。
【0024】
なお、本発明において、「反射体」とは、超音波を反射するものを意味し、例えば、空気に限らず水素等の任意の気体が形成する微小気泡や、ナイロンやガラス等の任意の材質からなる微小粒子等が挙げられる。
【0025】
また、本実施形態における超音波トランスデューサ21は図3に示すように、少なくとも円管Pの半周180度を網羅できるよう円管Pの周囲に複数個配置されている。なお、配置される超音波トランスデューサ21の数は特に限定されるものではなく、例えば、各相の体積割合であるボイド率α、各相の形状、およびそれぞれの数等を仮定することにより決定することができる。
【0026】
以下、ボイド率α、各相の形状、それぞれの数、および離散化による誤差eを仮定した場合の超音波トランスデューサ21の数を決定する方法について説明する。
【0027】
図4に示されるような円管Pを流れる液相Wと気相Gとによる二相流を仮定した場合、ボイド率αは管壁から界面位置までの距離h(θ)により次式で表される。
【0028】
【数1】
JP0005208124B2_000002t.gif

【0029】
ここでRは円管Pの半径、r(図示しない)は円管Pの中心軸からの距離を示している。また、この積分式である数式1は、超音波トランスデューサ21の数に相当する計測線Lの数である計測線数n(=1,2,3・・・)により次式のように離散化される。
【0030】
【数2】
JP0005208124B2_000003t.gif

【0031】
上記数式2のi(=1,2,3・・・)は各計測線Lに付された添え字である。ここで、上記数式1により仮定した流れのボイド率αと、上記数式2により超音波トランスデューサ21の数をnとするボイド率αとを算出し、誤差e=(1-α/α)を求めることにより、離散化による誤差eが所定の範囲内になるように超音波トランスデューサ21の数nを決定することができる。
【0032】
なお、超音波トランスデューサ21の数の決定方法はこれに限定されるものではない。例えば、一般的に、超音波トランスデューサ21の数を増やすことにより誤差eは抑制されるが、それに伴い製造コストも増加してしまう。そこで、誤差eと製造コストとを比較・検討して適当な超音波トランスデューサ21の数の決定が行われる。
【0033】
次に、トランスデューサホルダー22について説明する。本実施形態におけるトランスデューサホルダー22は、複数の超音波トランスデューサ21を流れ方向に対して共通の角度で傾斜させ、かつ円管Pの中心軸上の共通する一点に向けて円管Pの周囲に配置し固定できるものであるが、超音波トランスデューサ21を管の周囲に配置し固定できるものであれば特に限定されない。なお、超音波の伝達をよりよくするため、超音波トランスデューサ21の先端と円管Pとの間には超音波ジェル(図示しない)を塗布しているが、本発明に係る超音波混相流量計1はこれに限定されない。
【0034】
残響超音波吸収シート23は、円管P内で反射を繰り返す残響超音波を除去するためのものであり、ゴム等の樹脂で形成され、トランスデューサホルダー22近傍の上流側および下流側の円管P外面に設けられている。なお、残響超音波吸収シート23の材質や設置位置は適宜選択されるものである。
【0035】
次に、本実施形態における表示手段3はブラウン管や液晶等のディスプレイ装置からなる。演算処理手段6を構成する流速分布算出手段7、界面位置決定手段8、流量算出手段9、および相判別手段10により得られた各種データは、そのまま表示手段3において表示されるか、または一旦記憶手段5のデータ記憶部52に収納された後、再度演算処理手段6に送信され、表示手段3において表示される。
【0036】
また、本実施形態における入力手段4は、演算処理手段6の操作を行うものである。前記入力手段4は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル等から構成されており、本実施形態における超音波混相流量計1のユーザーは、表示手段3に表示される各種データに基づいて、例えば界面位置決定手段8の差分演算部81、二値化演算部82、音響強度取得部83および圧力振幅取得部84を操作し、界面位置の決定を行うことや、二値化演算部82で用いられる閾値を入力することができる。
【0037】
次に、本実施形態における超音波混相流量計1と超音波混相流量計測プログラム1aとで共通する手段について以下説明する。
【0038】
本実施形態における記憶手段5は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ等のデータ記憶装置から構成され、超音波混相流量計測プログラム1aを記憶するプログラム記憶部51と、各種データを記憶するデータ記憶部52を備えている。このデータ記憶部52は、例えば前記超音波送受信手段2で受信された各反射波データ、流速分布算出手段7で算出された流速分布データ、界面位置決定手段8で決定された界面位置データ、流量算出手段9で算出された流量データ、および相判別手段10で判別された判別データ等が記憶されている。
【0039】
本実施形態における演算処理手段6は、CPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置から構成されており、プログラム記憶部51から超音波混相流量計測プログラム1aを読み出して当該プログラムに従って流速分布算出手段7、界面位置決定手段8、流量算出手段9および相判別手段10として機能する。
【0040】
また、本実施形態における流速分布算出手段7は、超音波送受信手段2によって受信された各反射波データに基づいて前記超音波の発射方向における複数位置での時間方向に対して略連続する円管P内の時空間流速分布を算出する機能を有している。具体的には、円管Pの周囲に配置し固定された複数の超音波トランスデューサ21の各反射波データを読み出し、その各反射波データから超音波パルスの発射方向上における複数の位置での各反射波が、複数の位置における流速に応じたドップラ周波数を含むものと仮定して、前記複数位置における各反射波からドップラ周波数を取得し、そのドップラ周波数から前記複数位置の流速を算出する機能である。この機能により、超音波パルス発射方向上における複数の位置(空間方向)における時間方向に対して略連続する時空間流速分布を得ることができる。なお、超音波発射から反射体からの反射波および混相流の界面からの反射波の受信までに要する時間から反射体の移動速度を求めることにより超音波発射方向上における時空間流速分布を得ることもできる。
【0041】
本実施形態における界面位置決定手段8は、前記流速分布算出手段7で算出された時空間流速分布の所定時間における流速分布に対する空間差分または前記時空間流速分布の所定位置における流速分布に対する時間差分から界面位置を決定する差分演算部81および前記時空間流速分布における各流速が所定の閾値以下であるか否かを判別する二値化演算部82と、当該演算情報に基づいて界面位置を決定する音響強度取得部83および圧力振幅取得部84とから構成されている。
【0042】
本実施形態における差分演算部81は、フィルタ関数を用いて前記流速分布算出手段7によって得られた時空間流速分布の差分演算を実行し、界面位置を決定する機能を有する。この差分演算部81による界面位置の決定手法は、図5に示すように、超音波が界面位置で反射すると、入射波と反射波との干渉により振幅が極めて小さい局所定在波が発生し、この局所定在波の領域からは、本来、ドップラ周波数を得ることができないため、時空間流速分布の界面位置では速度が零と算出されることを利用したものである。すなわち、所定時間における流速分布は界面位置で不連続あるいは急激な変化を呈するため、空間差分値は極大を示す。一方、所定位置における流速は界面位置で零となるため時間差分値は極小を示す。
【0043】
すなわち、差分演算部81は、フィルタ関数による差分演算に限られず、空間方向、時間方向、または時空間方向に差分演算して極大や極小を得られる機能を有していればよい。
【0044】
次に、本実施形態における差分演算部81に用いられるフィルタ関数について説明する。
【0045】
フィルタ関数とは、一般的にはX軸およびY軸の空間二次元からなる二次元画像のエッジ検出等の処理に用いられるものであり、差分演算に基づいた3行3列の正方行列等で構成されている。このフィルタ関数は、周囲のデータを使用しながらX方向およびY方向の二次元方向の差分演算することによって行列の中心における極大極小を求める処理が可能である。
【0046】
本実施形態におけるフィルタ関数は、図6から図15に示すような3行3列の行列からなり、図21に示すような、横軸を時間軸と、縦軸を空間軸とした時空間二次元の流速分布における極大極小を求めるために用いられる。なお、本実施形態におけるフィルタ関数は、3行3列の正方行列としたが、これに限定されるものではなく、例えば、時間方向に5行、空間方向に5列、あるいは時間方向に7行、空間方向に7列等としてもよい。
【0047】
また、本実施形態におけるフィルタ関数として、空間一次片側差分、空間二次中心差分、通常ゾーベル差分(時間拡散空間勾配差分)、補強ゾーベル差分(時間強拡散空間勾配差分)、面平均差分(時空間平均化差分)、二次元ラプラシアン差分、空間ラプラシアン差分、時空間ラプラシアン差分(時間拡散空間ラプラシアン差分)、補強時空間ラプラシアン差分、フロッグ時空間ラプラシアン差分等が挙げられる。
【0048】
次に、空間一次片側差分を例に説明しながら、本実施形態におけるフィルタ関数による具体的な処理方法について説明する。空間一次片側差分の行列は、図6に示すように、1行目全列が-1、2行目全列が1、3行目全列が0である。
【0049】
これは、時間方向の場所を表す記号をt(=1,2,3・・・)、空間方向の場所を表す記号をx(=1,2,3・・・)とし、所定の場所(t,x)における時空間流速分布の極大極小の値をg(t,x)として、このg(t,x)を流速fの空間一次片側差により求めた場合、g(t,x)=f(t,x)-f(t,x-1)と表されることに基づく。すなわち、空間一次片側差分は、空間方向の場所(x)と(x-1)との差を表すものである。
【0050】
次に、空間一次片側差分により、所定の場所(t,x)の極大極小の値g(t,x)の算出方法について説明する。所定の場所(t,x)における時空間流速分布の極大極小の値g(t,x)は、フィルタ関数の1行目の1~3列に対応する流速f(t-1,x-1)、f(t,x-1)、およびf(t+1,x-1)に対して-1を、2行目の1~3列に対応する流速f(t-1,x)、f(t,x)、およびf(t+1,x)に対して1を、3行目の1~3列に対応する流速f(t-1,x+1)、f(t,x+1)、およびf(t+1,x+1)に対して0をそれぞれ乗じ、その各値を合算した値となる。
【0051】
この流速分布の極大極小の値g(t,x)が大きいほど、所定の場所(t,x)における流速f(t,x)と周囲の流速f(t-1,x-1)、f(t,x-1)、f(t+1,x-1)、f(t-1,x)、f(t+1,x)、f(t-1,x+1)、f(t,x+1)およびf(t+1,x+1)との差が大きく、この所定の場所(t,x)において、時空間流速分布の不連続あるいは急激な変化が起きている可能性が高いことを示すことになる。
【0052】
以上により、極大極小の値g(t,x)の算出を時空間流速分布の全域に対して実行し、それらの値g(t,x)が、所定の閾値以上となる点を選択することにより、界面位置を決定することが可能となる。
【0053】
なお、上記フィルタ関数のうち、面平均差分における極大極小の値g(t,x)の算出方法は、フィルタ関数と対応する流速とを乗じ、その各値を合算した後、行列の数である9で割る必要がある。また、フィルタ関数が所定位置(t,x)における時間差分に基づいている場合は、得られた値g(t,x)が所定の閾値以上となる点を選択することにより、界面位置を決定することが可能となる。
【0054】
以下に、各フィルタ関数の基となる差分と、その行列について簡単に説明する。
【0055】
空間二次中心差分とは、空間方向に二次中心差分をとり、空間(x-1)と(x+1)との流速差に基づくものである。具体的にこの行列は、図7に示すように、1行目の1列目と3列目とが0、同2列目が-1であるとともに、2行目の全列が0であり、さらに3行目1列目と3列目とが0、同2列目が1である。
【0056】
同様に、通常ゾーベル差分とは、空間方向に二次中心差分をとり、かつ時間方向に平均化したものであり、空間(x-1)と(x+1)との流速差に基づくものである。具体的にこの行列は、図8に示すように、1行目の1列目と3列目とが-1、同2列目が-2であるとともに、2行目の全列が0であり、さらに3行目1列目と3列目とが1、同2列目が2である。
【0057】
補強ゾーベル差分とは、通常ゾーベル差分の時間方向の平均化を増すものであり、空間方向の(x-1)と(x+1)との流速差に基づくものである。具体的にこの行列は、図9に示すように、1行目全列が-1、2行目全列が1、3行目全列が1である。
【0058】
面平均差分とは、流速分布の平均化を行うことにより、時空間流速分布の計測器側を原因とする流速データの脱落等によるノイズを除去するものである。具体的にこの行列は、図10に示すように、全行全列が1である。
【0059】
二次元ラプラシアン差分とは、二階微分によって空間方向と時間方向との差分をとり、空間方向の(x-1)と(x)、および(x)と(x+1)における流速差とともに、時間方向の(t-1)と(t)、および(t)と(t+1)における流速差に基づくものである。具体的にこの行列は、図11に示すように、1行目の1列目と3列目とが0、同2列目が1であり、2行目の1列目と3列目とが1、同2列目が-4であるとともに、3行目1列目と3列目とが0、同2列目が1である。
【0060】
空間ラプラシアン差分とは、二階微分により空間方向の差分をとり、空間方向の(x-1)と(x)、および(x)と(x+1)における流速差に基づくものである。具体的にこの行列は、図12に示すように、1行目の1列目と3列目とが0、同2列目が1であり、2行目の1列目と3列目とが0、同2列目が-2であるとともに、3行目1列目と3列目とが0、同2列目が1である。
【0061】
時空間ラプラシアン差分とは、二階微分により空間方向と時間方向との差分をとり、時間方向に平均化させたものであり、空間方向の(x-1)と(x)、および(x)と(x+1)における流速差とともに、時間方向の(t-1)と(t)、および(t)と(t+1)における流速差に基づくものである。具体的にこの行列は、図13に示すように、1行目の1列目と3列目とが1、同2列目が2であり、2行目の1列目と3列目とが-2、同2列目が-4であるとともに、3行目1列目と3列目とが1、同2列目が2である。
【0062】
補強時空間ラプラシアン差分とは、時空間ラプラシアン差分の時間方向の平均化をより増すものであり、空間方向の(x-1)と(x)、および(x)と(x+1)における流速差とともに、時間方向の(t-1)と(t)、および(t)と(t+1)における流速差に基づくものである。具体的にこの行列は、図14に示すように、1行目全列が1、2行目全列が-2、3行目全列が1である。
【0063】
フロッグ時空間ラプラシアン差分とは、リープ・フロッグ法を用いた差分をとり、空間方向の(x-1)と(x)、および(x)と(x+1)における流速差とともに、時間方向の(t-1)と(t)、および(t)と(t+1)における流速差に基づくものである。具体的にこの行列は、図15に示すように、1行目の1列目と3列目とが1、同2列目が0であり、2行目の1列目と3列目とが-2、同2列目が0であるとともに、3行目1列目と3列目とが1、同2列目が0である。
【0064】
以上、差分演算に用いられるフィルタ関数は複数挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されず、適宜選択することができる。
【0065】
次に、本実施形態における二値化演算部82は、流速分布算出手段7によって得られた時空間流速分布の二値化演算を実行し、界面位置を決定する機能を有する。具体的には、適当な閾値を与え、時空間流速分布の流速が当該閾値以下になった位置を界面位置と決定する。
【0066】
また、本実施形態における音響強度取得部83は、超音波送受信手段2によって得られた各反射波データから反射波の音響強度を取得し、界面位置を決定する機能を有する。界面位置で反射する反射波の音響強度は反射体に反射する反射波の音響強度より強いことを利用したものであり、音響強度の強弱により界面位置を決定するものである。つまり、各位置および各時間における反射波の音響強度をそれぞれ比較して音響強度が所定の値より強い位置を界面位置と決定する。
【0067】
最後に、本実施形態における圧力振幅取得部84は、超音波送受信手段2によって得られた各反射波データから反射波の圧力振幅を取得し、界面位置を決定する機能を有する。界面位置で反射する反射波の圧力振幅は反射体に反射する反射波の圧力振幅より大きいことを利用したものであり、圧力振幅の大小により界面位置を決定するものである。つまり、各位置および各時間における反射波の圧力振幅をそれぞれ比較して圧力振幅が所定の値より強い位置を界面位置と決定する。
【0068】
以上の界面位置決定手段8による界面位置の決定は、差分演算部81、二値化演算部82、音響強度取得部83、および圧力振幅取得部84のいずれか一つを選択して位置決定してもよいし、より精度を高めるために2以上を組み合わせて位置決定してもよい。
【0069】
次に、本実施形態における流量算出手段9は、流速分布算出手段7で算出された流速分布と、界面位置決定手段8で決定された界面位置とから流量を算出する機能を有している。具体的には、流速分布のうち界面位置までの流速分布を断面積に対して積分することにより流量を算出するものである。
【0070】
以下に本発明に係る流量算出手段9において用いられる流量算出式を以下に示す。
【0071】
まず、単相流の場合、流量Qは次式で求められる。
【0072】
【数3】
JP0005208124B2_000004t.gif

【0073】
ここで、vは流速であり流速分布算出手段7により得られる。またAは管の断面積である。
【0074】
一方、混相流の場合、流量は次式で求められる。
【0075】
【数4】
JP0005208124B2_000005t.gif

【0076】
ここで、添字kは、計測対象とする流体の相を意味している。また、fは計測対象とする流体が存在するか否かを表す相指数関数であり0か1かの値をとる。本発明における相指数関数fは界面位置決定手段8により決定した界面位置により決定する。
【0077】
例えば、計測対象が液相の場合に添字をk=1とし、気体の場合にk=2とすると各相の流量は次式で表される。
【0078】
【数5】
JP0005208124B2_000006t.gif

【0079】
なお、上記数式5の相指数関数fは以下のように定義される。
1)計測点が液相のときf=1、気相のときf=0
2)計測点が気相のときf=1、液相のときf=0
【0080】
したがって、本発明に係る流量算出手段9は、流速分布算出手段7により算出された流速分布と、界面位置決定手段8により決定した界面位置から得られる相指数関数fとを上記数式4に代入して各相の流量を算出するものである。なお、以上の流量算出手段9に基づけば気相、液相および固相からなる三相流の流量計測ができ、また、水と油のような液相と液相の同種からなる二相流の流量計測もできる。
【0081】
また、本実施形態における相判別手段10は、界面を構成している相の種類を判別する機能を有しており、位相差取得部11と相判別部12とから構成される。具体的には、相の違いによる音の伝わり易さの程度を表す音響インピーダンスの差により、入射波と反射波との間で発生する位相差を利用して判別する。すなわち、音響インピーダンスの低い相から高い相に入射して反射する場合、入射波と反射波の振動の位相は変わらない。一方、音響インピーダンスの高い相から低い相に入射して反射する場合、入射波と反射波の振動の位相が逆転する。よって、界面位置における入射波と反射波との振動の位相を取得し、界面を構成する各相の種類を判別するものである。
【0082】
ここで、本実施形態における相判別手段10の位相差取得部11は、超音波送受信手段2によって得られた各反射波データから、界面位置における超音波の入射波と反射波との波形を取り出し、位相差を取得する機能を有する。また、本実施形態における相判別手段の相判別部12は、位相差取得部11で取得した位相差に基づいて、界面を構成している相の種類を判別する機能を有している。
【0083】
つぎに、本実施形態の超音波混相流量計1を使用した超音波混相流量計測方法について図16のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0084】
まず、超音波トランスデューサ21が混相流に対して超音波パルスを所定の時間間隔で略連続的に発射し、同一の超音波トランスデューサ21によって反射体および混相流の界面から反射する反射波を受信する。この超音波の送受信を複数の超音波トランスデューサ21でほぼ同時に行う(超音波送受信ステップS1)。
【0085】
各超音波トランスデューサ21が受信した各反射波を各反射波データとしてデータ記憶部51に記憶する(各反射波データ記憶ステップS2)。
【0086】
つぎに、流速分布算出手段7が、データ記憶部52に記憶されている各反射波データを読み出し、超音波の発射方向における複数の位置での各反射波が、複数の位置における流速に応じたドップラ周波数を含むものと仮定して、前記複数位置における各反射波からドップラ周波数を取得し、このドップラ周波数から各位置の流速を算出し、超音波パルスの発射方向上の複数位置における時間方向に対して略連続する流速分布を算出し、データ記憶部52に記憶する(流速分布算出ステップS3)。
【0087】
界面位置決定手段8が、データ記憶部52に記憶されている流速分布データまたは各反射波データを読み出し、流速分布の差分演算または二値化演算の少なくともいずれかを実行し、前記演算に代えて、または前記演算とともに各反射波データから音響強度または圧力振幅の少なくともいずれかを取得し、当該演算情報と当該取得情報との少なくともいずれかに基づいて界面位置を決定し、データ記憶部52に記憶する(界面位置決定ステップS4)。なお、差分演算部81、二値化演算部82、音響強度取得部83および圧力振幅取得部84のいずれを用いるかはユーザーが入力手段4から任意に選択することができる。
【0088】
そして、流量算出手段9が、データ記憶部52に記憶されている流速分布データおよび界面位置データを読み出し、流速分布のうち界面位置までの流速分布を断面積に対して積分して液相の流量を算出し、データ記憶部52に記憶する(流量算出ステップS5)。これにより、時々刻々変化する液相の流量を計測することができる。また、液相の流量と管の断面積との関係から気相の流量を算出することも可能である。
【0089】
一方、混相の種類を判別する場合、相判別手段10が、データ記憶部52に記憶されている各反射波データおよび界面位置データを読み出し、界面位置における入射波と反射波との振動の位相差を取得し(位相差取得ステップS6)、その位相差に基づいて界面を構成する各相の種類を判別し、この判別結果をデータ記憶部52に記憶する(相判別ステップS7)。例えば、本実施形態においては、界面位置における反射波の位相が反転していた場合には界面を構成する相が液相と気相とであると判別し、位相が反転していなかった場合には界面を構成する相が液相と固相とであると判別する。
【0090】
なお、データ記憶部52に記憶した反射波データ、流速分布、流量および界面を構成する各相の種類は、表示手段3によってリアルタイムに表示することができる。また、ユーザーは表示手段3に表示された各種の結果に基づいて、入力手段4により界面位置決定手段8の選択、二値化演算部82に用いる閾値等の指令を入力することができる。
【0091】
以上のような本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
1.混相流において、相と相との界面位置を正確に決定できる。
2.混相流の流量を相ごとに正確に算出できる。
3.界面を構成する各相の種類を判別できる。
4.ユーザーは各計測結果をリアルタイムに確認できる。
【0092】
つぎに、前述した本実施形態の具体的な実験例を実施例として説明する。
【実施例1】
【0093】
『数値解析によるモデル実験』
まず、数値解析によるモデル実験を行ったので、図17を参照しつつ説明する。
【0094】
モデル実験では、ボイド率αと気相の数gを与えて数値解析を行い、この数値解析結果に基づいて管壁から界面位置までの距離h(θ)を取得し、上記数式2を用いてボイド率αを算出した。
【0095】
図17(a)~(d)は次に示す解析条件A~Dを与えた各数値解析結果における所定時刻の液相と気相との状態を示した断面図であり、白抜き部分が気相を示している。また、円管壁と円管中心とを結ぶ線は、計測線Lを示している。
【0096】
解析条件Aはボイド率αが約0.337、気相の数gが1、計測線数nが6である。同様に、計算条件Bはα≒0.382、g=2、n=6、計算条件Cはα≒0.176、g=1、n=18、計算条件Dはα≒0.406、g=3、n=18である。
【0097】
各解析条件として与えたボイド率αと、上記数式2により求めたボイド率αとから誤差を求めて比較検討した。なお、誤差eはe=(1-α/α)によって求めた。
【0098】
解析条件Aと解析条件Bとは計測線数nが等しいところ、解析条件Aの場合、上記数式2から求められたボイド率αは約0.343であり、解析条件として与えたボイド率αとの誤差eは約+0.016であった。一方、解析条件Bの場合、α≒0.413、e≒+0.08であった。すなわち、解析条件Aでは誤差が約1.6%であるのに対し、計算条件Bでは誤差が約8%となって、誤差eが増大している。
【0099】
同様に計測線数nの等しい解析条件Cと解析条件Dとを比較検討すると、解析条件Cの場合、α≒0.175、e≒-0.004であり、解析条件Dの場合、α≒0.413、e≒+0.018であるから、こちらも誤差eが増大した。
【0100】
これら誤差eの増大は、気相の数gに起因するものと考えられる。なぜなら、界面において超音波が反射するため、界面より先の反射波データは計測が不可能となり、実際は液相である領域を気相として計算してしまうためである。
【0101】
ただし、解析条件Bの場合と解析条件Dの場合との計算結果を比較すると、気相の数gは2から3に増加しているが、誤差eは+0.08から+0.018に減少している。その理由は計測線数nに起因するものであり、計測線数nを増加させたことにより計測可能な領域が拡大したものと考えられる。
【0102】
以上の結果によれば、混相流中の気相の数が増えるとボイド率の誤差が大きくなる傾向にあるが、計測線数nを増加させることによって誤差の拡大を抑えることができることがわかる。
【実施例2】
【0103】
『ボイド率αと誤差の関係』
つぎに、ボイド率αと気相の数gとを種々変化させて数値解析を行い、ボイド率αおよび誤差eを算出し、どのような傾向にあるか比較検討した。図18はボイド率αと誤差eの関係を示す図であり、横軸にボイド率α、縦軸に誤差eを示している。多少のばらつきはあるものの、統計的な傾向としてボイド率αが低いほど誤差eが小さくなる傾向にある。これは気相の数gが少ない場合や気相の大きさが小さい場合には計測可能な領域が広くなるためであると考えられる。一方、図18に示すとおり、ボイド率αが約0.5以下の場合には、誤差が極めて小さいことから、より高い精度で流量を算出できると考えられる。
【実施例3】
【0104】
『計測線数nと誤差eとの関係』
つぎに、計測線数nと誤差eとの関係について検討した。
【0105】
図9は、計測線数nと誤差eとの関係を示すグラフであり、△印はボイド率0~25%(気泡流)、●印がボイド率25~75%(スラグ流)、○印がボイド率75%~100%(環状流)の結果を示している。図19に示すとおり、計測線数nが増加する(グラフの右方向に向かう)に従って、誤差eが低下する傾向にある。また、計測線数nが奇数と偶数とでは偶数の場合の方が誤差eは小さい。これは、計測線数nが偶数の場合、互いに向き合う計測線が設定されるので、気相の形状を特定するための情報がより有効に利用できるからであると考えられる。また、これらの傾向はボイド率が変化してもの同様である。従って、ボイド率αを算出する場合、計測線数nの数が多く、かつ偶数に設定することが好ましいと考えられる。
【実施例4】
【0106】
『数値解析で求めた流量と本発明に係る実施例により求めた流量との関係』
つぎに、数値解析により得られた平均流量Qと、本実施例4で算出した流量Qactとの比較を行った。図20の縦軸は平均流量Qを、横軸は本実施例で算出したQactを示す。この結果、図20に示すように、平均流量Qに対して算出された流量Qactの誤差は僅か5%程度であった。
【0107】
したがって、従来の流量計によって単相流の流量を測定する場合でさえ数%程度の誤差が生じてしまうことに鑑みれば、本発明における超音波混相流量計1は非常に精度がよく、実用的であることがわかる。
【実施例5】
【0108】
『混相流における界面位置の実測』
つぎに、本実施形態の超音波混相流量計1を使用して実際に管内の混相流の流量計測を行った。使用した混相流は油と空気の二相流である。本実施例5では、透明アクリル性の円管Pを水平に設置し、油内に空気を間欠的に混入した。円管Pの下側から1つの超音波トランスデューサ21を用いて超音波の反射波を計測した。この反射波データから流速分布を算出し、複数のフィルタ関数のうち任意に選択した差分演算により界面位置を決定した。なお、本実施例5で用いたフィルタ関数は、空間一次片側差分、空間二次中心差分、通常ゾーベル差分、補強ゾーベル差分、面平均差分、二次元ラプラシアン差分、空間ラプラシアン差分、時空間ラプラシアン差分、補強時空間ラプラシアン差分、およびフロッグ時空間ラプラシアン差分である。
【0109】
以下、超音波トランスデューサ21を用いて得られた流速分布、および各フィルタ関数を用いた差分演算の結果を、図面を用いて詳細に説明する。なお、各図において、横軸は時間方向を、縦軸は空間方向を示している。
【0110】
図21は、反射波データから算出された流速分布を示す時空間図であり、白黒の濃淡は流速の大小を示している。すなわち、色が白くなるほど流速は大きく、色が黒くなるほど流速は小さい。なお、図21に示すように、色の濃淡が図面全体に現れており、このままでは界面位置を決定することはできない。
【0111】
そこで、差分演算を用いて界面位置を決定する。なお、二相流を構成する油と空気との関係において、空気は油よりも比重が小さく、油の相の上方に空気の相が形成され、界面位置は図21に示す流速分布データの上方となることから、本実施例5における差分演算は、図21の流速分布データにおいて、上方のデータを対象として行った。
【0112】
図22は、空間一次片側差分に基づいたフィルタ関数を用いて決定した界面位置を示す時空間図である。(a)は、空間一次片側差分に基づいたフィルタ関数により得られた所定の点における極大極小の値gを示す時空間図であり、色が白くなるほど極大極小の値gは大きく、色が黒くなるほど極大極小の値gは小さい。また、(b)は、極大極小の値gに基づいて閾値以上となる点を選択し、この選択された点から界面位置を決定して、この界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。
【0113】
以下、同様にして、図23は、空間二次中心差分に基づいたフィルタ関数を用いて決定した界面位置を示す時空間図であり、(a)は、空間二次中心差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図であり、(b)は極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。
【0114】
図24は、通常ゾーベル差分に基づいたフィルタ関数を用いて決定した界面位置を示す時空間図であり、(a)は、通常ゾーベル差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図であり、(b)は極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。
【0115】
図25は、補強ゾーベル差分に基づいたフィルタ関数を用いて決定した界面位置を示す時空間図であり、(a)は、補強ゾーベル差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図であり、(b)は極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。
【0116】
図26は、面平均差分に基づいたフィルタ関数を用いて決定した界面位置を示す時空間図であり、(a)は、面平均差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図であり、(b)は極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。なお、面平均差分は、時空間流速分布の全データに対して処理を行っている。
【0117】
図27は、二次元ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数を用いて決定した界面位置を示す時空間図であり、(a)は、二次元ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図であり、(b)は極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。
【0118】
図28は、空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数を用いて決定した界面位置を示す時空間図であり、(a)は、二次元ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図であり、(b)は極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。
【0119】
図29は、時空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数を用いて決定した界面位置を示す時空間図であり、(a)は、時空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図であり、(b)は極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。
【0120】
図30は、補強時空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数を用いて決定した界面位置を示す時空間図であり、(a)は、補強時空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図であり、(b)は極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。
【0121】
図31は、フロッグ時空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数を用いて決定した界面位置を示す時空間図であり、(a)は、ブロック時空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図であり、(b)は極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。
【0122】
以上より、いずれの差分演算に基づくフィルタ関数を用いても、界面を検出することが可能であることが明らかとなった。
【実施例6】
【0123】
『実際の界面位置と本発明に係る実施例で求めた界面位置との関係』
本実施例6では、実施例5における通常ゾーベル差分を用いて決定した界面位置と実際の界面位置との精度評価を行った。図32は、各々の界面位置と時間変化との関係を示したグラフである。図32より、各々の界面位置はほぼ一致していることが明らかである。ここで、この通常ゾーベル差分を用いて決定した界面位置と実際の界面位置との誤差は、円管直径2Rを基準として、その長さの5%以下である。したがって、本実施例6により、液相においては単相流の流量計測と同等の精度で流量を算出でき、誤差を5%以下とすることができることが示された。
【0124】
ここで本実施例における表示手段3に表示されるグラフィカルインターフェースの例を図33に示す。図33において、左上欄のデータは界面位置決定手段8による各演算結果または取得結果であり、左下欄のデータは決定された界面位置を示し、右上欄のデータは決定した界面位置と流速分布を示し、右下欄のゲージは流量を示しており、それぞれリアルタイムに表示させている。
【0125】
なお、本発明に係る超音波混相流量計1、超音波混相流量計測プログラム1a、および超音波を用いた混相流量計測方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0126】
例えば、界面位置決定手段8における各演算部および各取得部の選択は、流速分布や反射波データの状況から自動的に選択されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明に係る超音波混相流量計および超音波混相流量計測プログラムの実施形態を示すブロック図である。
【図2】本実施形態における超音波送受信手段の使用形態を示す斜視図である。
【図3】本実施形態における円管内の混相流の状態および超音波トランスデューサの配置を示す円管断面図である。
【図4】本実施形態におけるボイド率の計算に用いる円管断面模式図である。
【図5】界面における入射波と反射波との干渉によっておこる局所定在波を示す模式図である。
【図6】本実施形態における差分演算に用いられる空間一次片側差分に基づくフィルタ関数の行列を示す行列図である。
【図7】本実施形態における差分演算に用いられる空間二次中心差分に基づくフィルタ関数の行列を示す行列図である。
【図8】本実施形態における差分演算に用いられる通常ゾーベル差分(時間拡散空間勾配差分)に基づくフィルタ関数の行列を示す行列図である。
【図9】本実施形態における差分演算に用いられる補強ゾーベル差分(時間強拡散空間勾配差分)に基づくフィルタ関数の行列を示す行列図である。
【図10】本実施形態における差分演算に用いられる面平均差分(時空間平均化差分)に基づくフィルタ関数の行列を示す行列図である。
【図11】本実施形態における差分演算に用いられる二次元ラプラシアン差分に基づくフィルタ関数の行列を示す行列図である。
【図12】本実施形態における差分演算に用いられる空間ラプラシアン差分に基づくフィルタ関数の行列を示す行列図である。
【図13】本実施形態における差分演算に用いられる時空間ラプラシアン差分(時間拡散空間ラプラシアン差分)に基づくフィルタ関数の行列を示す行列図である。
【図14】本実施形態における差分演算に用いられる補強時空間ラプラシアン差分に基づくフィルタ関数の行列を示す行列図である。
【図15】本実施形態における差分演算に用いられるフロッグ時空間ラプラシアン差分に基づくフィルタ関数の行列を示す行列図である。
【図16】本発明に係る超音波を用いた混相流量計測方法の計測手順を示すフローチャートである。
【図17】本実施例において数値解析により算出された円管内の所定時刻における液相と気相との状態を示した円管断面モデル図およびボイド率の算出結果である。
【図18】本実施例により算出されたボイド率と正確なボイド率との誤差を示したグラフである。
【図19】計測線数とボイド率の誤差との関係を示したグラフである。
【図20】本実施例により算出された流量と正確な流量とを比較したグラフである。
【図21】本実施例における流速分布算出結果を示す時空間図である。
【図22】本実施例における(a)空間一次片側差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図、および(b)極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図、である。
【図23】本実施例における(a)空間二次中心差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図、および(b)極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図、である。
【図24】本実施例における(a)通常ゾーベル差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図、および(b)極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図、である。
【図25】本実施例における(a)補強ゾーベル差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図、および(b)極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図、である。
【図26】本実施例における(a)面平均差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図、および(b)極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図、である。
【図27】本実施例における(a)二次元ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図、および(b)極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図、である。
【図28】本実施例における(a)空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図、および(b)極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図、である。
【図29】本実施例における(a)時空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図、および(b)極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図、である。
【図30】本実施例における(a)補強時空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図、および(b)極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図、である。
【図31】本実施例における(a)フロッグ時空間ラプラシアン差分に基づいたフィルタ関数により得られた極大極小の値gを示す時空間図、および(b)極大極小の値gに基づき、決定された界面位置より上方となる空気の相を白抜きで表した、流速分布の時空間図である。
【図32】本実施例において決定した界面位置および実際の界面位置と、時間変化との関係を示すグラフである。
【図33】本実施例における表示手段に表示されるグラフィカルインターフェースを示す図である。
【符号の説明】
【0128】
1 超音波混相流量計
1a 超音波混相流量計測プログラム
2 超音波送受信手段
21 超音波トランスデューサ
22 トランスデューサホルダー
23 残響超音波吸収シート
3 表示手段
4 入力手段
5 記憶手段
51 プログラム記憶部
52 データ記憶部
6 演算処理手段
7 流速分布算出手段
8 界面位置決定手段
81 差分演算部
82 二値化演算部
83 音響強度取得部
84 圧力振幅取得部
9 流量算出手段
10 相判別手段
11 位相差取得部
12 相判別部
P 円管
G 気相
W 液相
L 計測線
R 円管Pの半径
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図32】
20
【図33】
21
【図21】
22
【図22】
23
【図23】
24
【図24】
25
【図25】
26
【図26】
27
【図27】
28
【図28】
29
【図29】
30
【図30】
31
【図31】
32