TOP > 国内特許検索 > 被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法および装置 > 明細書

明細書 :被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5861225号 (P5861225)
公開番号 特開2013-253861 (P2013-253861A)
登録日 平成28年1月8日(2016.1.8)
発行日 平成28年2月16日(2016.2.16)
公開日 平成25年12月19日(2013.12.19)
発明の名称または考案の名称 被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法および装置
国際特許分類 G01N  21/27        (2006.01)
G01N  21/59        (2006.01)
FI G01N 21/27 A
G01N 21/59 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 15
出願番号 特願2012-129578 (P2012-129578)
出願日 平成24年6月7日(2012.6.7)
審査請求日 平成27年4月22日(2015.4.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
発明者または考案者 【氏名】松本 和也
【氏名】植木 賢
【氏名】上原 一剛
【氏名】市野 邦男
【氏名】柄 武志
【氏名】岡本 芳晴
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100078204、【弁理士】、【氏名又は名称】滝本 智之
審査官 【審査官】比嘉 翔一
参考文献・文献 国際公開第2011/163624(WO,A1)
特開平06-138118(JP,A)
特開2002-253298(JP,A)
特開2009-192336(JP,A)
特開2009-039510(JP,A)
特開平08-313432(JP,A)
特開2011-247662(JP,A)
調査した分野 G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G01N 33/48-33/98
C12M 1/00- 3/10
C12N 1/00- 7/08
C12Q 1/00- 3/00
A61B 9/00-10/06
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
超音波内視鏡下穿刺吸引生検で採取した血液および検体細胞を含む被検サンプル組織体に、当該被検サンプル組織体の一方側から、発光強度が最大となる波長が600~610nmの範囲内で、且つその発光スペクトルの半値幅が30nm以下の範囲内である光を照射し、この照射光が前記被検サンプル組織体を透過した透過光による透過画像に基づいて、前記被検サンプル組織体中に検体細胞が存在するか否かを判別することを特徴とする被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法。
【請求項2】
超音波内視鏡下穿刺吸引生検で採取した血液および検体細胞を含む被検サンプル組織体を収容する検査用容器と、前記検査用容器の一方側に配置された光照射装置とよりなる装置であって、前記光照射装置の光源が発光強度の最大となる波長が600~610nmの範囲内で且つその発光スペクトルの半値幅が30nm以下の範囲内であることを特徴とする被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別装置。
【請求項3】
超音波内視鏡下穿刺吸引生検で採取した血液および検体細胞を含む被検サンプル組織体を収容する検査用容器と、前記検査用容器の一方側に配置された光照射装置と、前記検査用容器と前記光照射装置との間に介在させた波長フィルタとよりなる装置であって、前記光照射装置よりの光が前記波長フィルタにより発光強度の最大となる波長が600~610nmの範囲内で且つその発光スペクトルの半値幅が30nm以下の範囲内の光に変換されるようにしたことを特徴とする被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の装置において、前記検査用容器と前記光照射装置との間に散乱シートを介在させたことを特徴とする被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、画像診断などにより見つかった腫瘍などの人体病変部から採取した小さな塊の被検サンプル組織体の内部に検査目的の検体細胞が存在するか否かの有無を光照射手段によって迅速、且つ正確に判別することができる検体細胞の有無判別方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の体内に存在する腫瘍が悪性か否かを判別する検査は、病理医もしくは細胞検査士の立会いの下に生検検体内に目標とする細胞が採取されていることを確認することが望ましいが、人員不足などの問題により、多くの施設で立会いが困難な状況にある。
【0003】
ところで、患者の体内に何らかの腫瘍が存在する否かを検査することを目的とした生体組織検査装置は既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、後述するように、本発明の対象とする、人体病変部から採取した小さな塊の被検サンプル組織体の内部に検査目的の検体細胞が存在するか否かの有無を判別する技術分野とは異なる分野に属するものであるが、光照射装置を用いる技術が示されているので、以下、概要を述べる。
【0004】
この生体組織検査装置は、インコヒーレントな光源から、その発光強度が最大となる波長が750~1200nmの範囲内で、且つその発光スペクトルの半値幅が70~200nmとなる光を生体組織に照射して、この照射光が生体組織を透過した光を光検出器で検出し、この光検出器の出力に基づいて画像出力部から出力される透過像を観察して腫瘍部が存在するか否かを判別するようになっている。この生体組織検査装置は、光源の発光スペクトルに水の吸収帯域とPSA(Prostate Specific Antigen )の吸収帯域とが含まれていることから、特に、PSA濃度が高くなる前立腺がんの腫瘍部の存在の有無の検査に適している。すなわち、前立腺がんの腫瘍部の検査に際しては、PSA濃度が高い腫瘍部に対して多くの光が吸収されてこの部分が暗く表示される結果、前立腺がんの腫瘍部に明確なコントラストが現れる画像が得られるからである。
【0005】
ところで、人体における膵臓は、人体の深部にあり、胃や肝臓などの臓器に囲まれていることから、エコーやCTなどによる既存の画像検査では膵臓がんを正確に発見することが困難であり、例えば、画像検査おいて膵臓がんであるとの診断結果に基づき手術された症例の5~10%が慢性膵炎などの良性疾患であったという報告が散見される。近年では、超音波内視鏡を使うことによってエコーやCTなどによる画像検査では見つけられなかった小さい膵臓がんを発見し、同時にその血液を含む検体細胞を顕微鏡検査のためのサンプルとして採取することが可能になった。
【0006】
具体的には、観察用の光源とレンズを備えた細いチューブ状の内視鏡の先端部に超音波プローブと生検針を取り付けた超音波内視鏡を用意し、この超音波内視鏡を臨床(検査)時に患者の口から食道内に挿入して、超音波プローブから出力する高エネルギーの音波である超音波を膵臓に近い胃壁や十二腸壁から膵臓に当てて反響させながら、これによる画像をモニタ上に映し出し、その画像の観察に基づいて悪性と疑われる部位を生検針の挿入により採取している。このようにして採取された血液を含む検体細胞は、顕微鏡検査のためのサンプルとして用いられるので、被検サンプル組織体と称することとする。また、上述のように超音波内視鏡を用いて被検サンプル組織体を採取する手法は、一般にEUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引生検)と称せられている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2011-247662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
EUS-FNAによって採取された被検サンプル組織体は、血液中に検査目的の微細な検体細胞が埋もれた状態で存在しているか否かの判別が行われ、存在していると判別した場合に、その検体細胞が悪性か否かの判別を行うための顕微鏡検査に供せられる。この被検サンプル組織体の顕微鏡検査の検査結果が悪性である場合に限り、手術もしくは化学療法を施すように図っており、これにより、良性疾患であるにも拘わらず手術などを施すといったことを未然に防止することができる。
【0009】
しかしながら、被検サンプル組織体中に検査目的の検体細胞が存在するか否かの判別は、被検サンプル組織体の血液中に埋もれている微小物をピンセットで闇雲に摘んで掻き回すようにしながら、血液中に埋もれている検体細胞を目視による観察で探すことにより、EUS-FNAによって採取された検体細胞中に検体細胞が含まれているか否かを判別しているのが実情である。このような判別方法では、検体細胞の存在を確認するまでに多くの時間を費やして非能率である。しかも、多くの時間を費やしたにも拘わらず検体細胞の存在を正確に判別できない場合があり、このような場合には医師の職人的な「勘」で検体細胞が採取されていると見做して終了している場合もある。
【0010】
一方、上述の特許文献1の生体組織検査方法は、手術により患者から摘出した良性疾患部位を含む大きな塊である生体組織に腫瘤が存在するか否かを判別するものであるから、EUS-FNAなどによって採取した血液を含む小さな塊の被検サンプル組織体の内部に検体細胞が存在するか否かの判別に応用することができない。
【0011】
本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたものであり、被検サンプル組織体中の検体細胞の存在の有無を簡便な手段により迅速、且つ正確に判別できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、超音波内視鏡下穿刺吸引生検で採取した血液および検体細胞を含む被検サンプル組織体に、当該被検サンプル組織体の一方側から、発光強度が最大となる波長が600~610nmの範囲内で、且つその発光スペクトルの半値幅が30nm以下の範囲内である光を照射し、この照射光が前記被検サンプル組織体を透過した透過光による透過画像に基づいて、前記被検サンプル組織体中に検体細胞が存在するか否かを判別することを特徴とする被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法を提供する。
【0013】
請求項2に係る発明は、超音波内視鏡下穿刺吸引生検で採取した血液および検体細胞を含む被検サンプル組織体を収容する検査用容器と、前記検査用容器の一方側に配置された光照射装置とよりなる装置であって、前記光照射装置の光源が発光強度の最大となる波長が600~610nmの範囲内で且つその発光スペクトルの半値幅が30nm以下の範囲内であることを特徴とする被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別装置を提供する。
【0014】
請求項3に係る発明は、超音波内視鏡下穿刺吸引生検で採取した血液および検体細胞を含む被検サンプル組織体を収容する検査用容器と、前記検査用容器の一方側に配置された光照射装置と、前記検査用容器と前記光照射装置との間に介在させた波長フィルタとよりなる装置であって、前記光照射装置よりの光が前記波長フィルタにより発光強度の最大となる波長が600~610nmの範囲内で且つその発光スペクトルの半値幅が30nm以下の範囲内の光に変換されるようにしたことを特徴とする被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別装置を提供する。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項2または3に記載の装置において、前記検査用容器と前記光照射装置との間に散乱シートを介在させたことを特徴とする被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、血液による光の吸収が大き過ぎず、且つ小さ過ぎない、特に適度な吸収度合いとなる波長域である600~610nmの範囲内の波長の光を被検サンプル組織体に照射することにより、検体細胞に対して適量の照射光を透過させるとともに、血液部が適量の照射光を光吸収する。なお、半値幅が30nmを超えると血液による光の吸収または透過が次第に大となり、画像が不鮮明となってくるので30nm以下、更に望ましくは15nm以下が好適である。

【0017】
その結果、被検サンプル組織体を透過した光による画像は、検体細胞と血液部との間にこれらを明確に区分できる差を有するものとなって両者を目視によっても、一目瞭然に判別できるものとなる。したがって、この検体細胞の有無判別方法および装置によると、患者の悪性腫瘍と思われる部分を採取した極めて小さい塊である被検サンプル組織体を判別対象としているにも拘わらず、ピンセットで摘んだりする操作などを行うことなく、検体細胞と血液とを明確に区別できる差を有して表示される透過画像を観察するだけで、被検サンプル組織体中の血液内に埋もれている検体細胞の存在の有無を迅速、且つ正確に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法を具現化した一実施形態に係る概略構成図である。
【図2】図1における光源の配置の一例を示す図である。
【図3】被検サンプル組織体への照射光の波長と検体細胞および血液部の各々の透過光強度との関係並びに波長と検体細胞および血液部のコントラストとの関係を示す特性図である。
【図4】透過画像の一例を示す図である。
【図5】照射光の波長を変化させたときの各透過画像を示す図である。
【図6】本発明の被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法を具現化した他の実施形態に係る概略構成図である。
【図7】本発明の被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法を具現化した他の実施形態に係る概略構成図である。
【図8】本発明の被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法を具現化した他の実施形態に係る概略構成図である。
【図9】本発明の被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法を具現化した他の実施形態に係る概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳述する。図1は本発明の被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法を極めて簡便な手段により具現化した一実施形態に係る概略構成図であり、この実施形態では、膵臓がんの検体細胞の有無の判別に適用した場合を例示してある。

【0020】
例えば、膵臓がんの疑いのある患者への治療を行うのに先だって、前述したように、EUS-FNAによって患者の検査を要する部分を被検サンプル組織体1として採取され、
この被検サンプル組織体1が検査用容器であるシャーレ4内に収容される。この被検サンプル組織体1が収容されたシャーレ(検査用容器)4は、散乱シート7を間に介在して光源ボックス9上に載置される。光源ボックス9上には、ケース10の上端開口を施蓋する配置で設けられた透光板11上に散乱シート7を介在してシャーレ4が載置されている。

【0021】
光源ボックス9の内部には光照射装置12が配置されている。この光照射装置12は、光源である複数のLED14(ピーク波長605nmで半値幅15nm)が、図2に示すように円形の配置でプリント配線基板13上に設けられており、各LED14はバッテリー17から給電されて光放射する。このLED14からの照射光L1は、散乱シート7およびシャーレ4の底板を透過して被検サンプル組織体1に照射される。この照射光L1は、上述のように発光強度が最大となる波長が605nmで、且つその発光スペクトルの半値幅が15nmであるが、一般的には、波長フィルタ等を使用することにより、発光強度が最大となる波長が595~615nmの範囲内で、且つその発光スペクトルの半値幅が30nm以下、望ましくは15nm以下の範囲内で出射するように調整される。さらに、出射した光は、散乱シート7を透過する際に散乱されたのちにシャーレ4の底板を透過してシャーレ4内の被検サンプル組織体1に照射される。被検サンプル組織体1は、有無の判別対象である検体細胞1aが血液部1b内に埋もれた状態で含まれている。

【0022】
被検サンプル組織体1を透過した透過光L2は、撮像装置18により受光されて、被検サンプル組織体1の透過画像として撮影される。この撮像装置18としては、例えば、CCDイメージセンサなどを好適に用いることができる。撮像装置18により撮影された透過画像の画像データは、モニタなどの画像表示装置19に表示されるとともに、画像記録装置20に記録される。医師または検査技師は、画像表示装置19に画像表示された被検サンプル組織体1の透過画像を観察しながら、被検サンプル組織体1中に検体細胞1aが血液部1bに埋もれた状態で存在するか否かを判別する。

【0023】
換言すると、医師または検査技師は、被検サンプル組織体1を採取した際に検査目的である検体細胞1aを確実に採取できたか否かを判別して、検体細胞1aが採取されていると判別した被検サンプル組織体1を顕微鏡検査のためのサンプルに用いて、腫瘍が悪性または良性のいずれであるか等を判断する。この判断を正確に行えるようにすることが本発明の目的であり、そのために、被検サンプル組織体1の透過画像において、検体細胞1aが他の血液部1bなどに対して良好な明暗のコントラストで鮮明に画像表示されるように図っており、この点について、以下に詳述する。

【0024】
図3は被検サンプル組織体1の透過画像における光源からの照射光の波長に対する検体細胞1aおよび血液部1bの各々の透過光強度(明度)並びに前記波長に対する検体細胞1aおよび血液部1bの各々の透過光強度のコントラストを示した特性図である。この場合、光源としてはキセノンランプ(浜松ホトニクス製のL2273で、波長特性は400~800nmの範囲においてほぼ同一強度)の光を分光器を介して波長435~695nmの範囲内の単色光(半値幅は6nm)を得て技術確認を行った。

【0025】
同図において、Aは照射光波長の変化に対する被検サンプル組織体1中の検体細胞1aの透過光強度の変化を示す特性曲線、Bは照射光波長の変化に対する被検サンプル組織体1中の血液部1b部の透過光強度の変化を示す特性曲線、Cは照射光波長の変化に対する検体細胞1aの透過光強度と血液部1bの透過光強度とのコントラストの変化を示す特性曲線である。なお、図3の照射光波長は、その発光強度が最大となる波長である。

【0026】
図3に示すように、照射光の波長が595nm未満の場合には、検体細胞1aおよび血液部1bのいずれにも照射光が殆ど透過しないことから、検体細胞1aおよび血液部の各々の透過光強度が共に極めて低い。これは、波長が595nm未満の照射光は血液中に完
全に吸収されてしまうためであると思われる。このため、被検サンプル組織体1に595nm未満の波長の光を照射した場合には、検体細胞1aおよび血液部1bの各々の透過光強度が共に極めて低いことから、図5に示すように、検体細胞1aと血液部1bとの明暗のコントラストが明確に現れない透過画像となり、検体細胞1aの存在の有無を目視等で判別するのが難しい。

【0027】
一方、照射光の波長を615nm超に設定した場合には、検体細胞1aおよび血液部1bのいずれにも照射光が十分に透過して、検体細胞1aおよび血液部1bの各々の透過光強度が共に高くなる。これは、波長が615nm超の照射光に対する血液による吸収が極めて弱くなって光が検体細胞1aおよび血液部1bの双方に透過するためであると思われる。このため、被検サンプル組織体1に615nm超の波長の光を照射した場合には、図5に示すように、検体細胞1aと血液部1bとの間に明暗のコントラストが殆ど生じない透過画像となり、検体細胞1aの存在の有無を目視で判別することがやはり難しい。

【0028】
そこで、この実施形態では、光源から被検サンプル組織体1に照射する光を、その発光強度が最大となる波長が595~615nmの範囲内で、且つその発光スペクトルの半値幅が30nmの範囲内となるように設定している。これにより、照射光の下限の波長である595nmは、血液によって光が完全に吸収されてしまう波長よりも大きいことから、血液による光吸収が弱くなって検体細胞1aに照射光が透過し始める。この照射光の波長が595nmから徐々に大きくなっていくと、この波長が大きくなるのに対応して血液による光吸収も徐々に弱くなっていき、これに伴って検体細胞1aの透過光強度が徐々に高くなっていく。このときの照射光の波長の上限は、血液による光吸収が極めて弱くなって検体細胞1aに加え血液部1bにも光が透過し始める波長よりも小さい615nmに設定されている。

【0029】
このように被検サンプル組織体1に照射する595~615nmの範囲内の波長の光は、血液による吸収が大き過ぎず、且つ小さ過ぎない適度な光吸収度合いとなる波長域であるから、検体細胞1aに対して適量の照射光を透過させるとともに、血液部1bが適量の照射光を光吸収する。その結果、図5に示すように、被検サンプル組織体1を透過した光による画像は、検体細胞1aと血液部1bとの間にこれらを明確に区分できる明暗の差が生じるものとなる。

【0030】
さらに、照射光は、その発光スペクトルの半値幅が、広過ぎない30nm、更に望ましくは15nmの範囲内に設定されているから、透過光画像は、検体細胞1aと血液部1bとの間に明確なコントラストを有するものとなる。さらにまた、各LED14からの照射光L1が散乱シート7を透過する際に散乱されるから、被検サンプル組織体1の透過画像は、光源である各LED14の存在が直接的に現れない画像となる結果、血液部1b中の検体細胞1aの存在の有無を観察し易くなる。また、光源である複数のLED14は、円形状に配置されているから、リング照明となってハレーションを有効に防ぐことができる。

【0031】
これらにより、被検サンプル組織体1の透過画像は、検体細胞1aと血液部1bとを目視により一目瞭然に判別できる明瞭な表示画像になる。このことは、図5における605nmの波長の光を照射したときの透過画像を拡大した図4においても明らかに示されている。なお、図4の(a)、(b)は同一画像であるが、(b)は(a)において検体細胞部と血液部の説明を加えたものである。

【0032】
したがって、この検体細胞1aの有無判別方法では、手術前の患者の悪性腫瘍と思われる部分を採取した極めて小さい塊である被検サンプル組織体1を判別対象としているにも拘わらず、ピンセットで摘んだりする操作などを一切行うことなく、検体細胞1aと血液
とを明確に区別できる差を有して表示される透過画像を観察するだけの簡便な手段により、被検サンプル組織体1中の血液内に埋もれている検体細胞1aの存在の有無を迅速、且つ正確に判別することができる。これにより、検体細胞1aが確実に採取されている有効な被検サンプル組織体1のみが顕微鏡検査のサンプルに供せられることになる。

【0033】
この検体細胞1aの有無判別方法は、特に、実施形態で説明したように、膵臓がんの患者に対して、手術前に腫瘍が悪性か良性疾患であるかの別を判別するのに極めて有効であることが確認されているが、膵臓以外の他の臓器の腫瘍の観察にも適用することができる。

【0034】
図6は、本発明の被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法を具現化した他の実施形態に係る概略構成図であり、同図において、図1と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この実施形態では、図1の撮像装置18、画像表示装置19および画像記録装置20を除外して、医師または検査技師が、被検サンプル組織体1の透過光L2による像を直接目視して、その透過像中の検体細胞1aの有無を判断するようになっている。このような手段においても、被検サンプル組織体1の透過画像が検体細胞1aと血液部1bとを目視により一目瞭然に判別できる明瞭な表示画像となることから、正確に判別することができる。

【0035】
図7は、本発明の被検サンプル組織体中の検体細胞の有無判別方法を具現化した他の実施形態に係る概略構成図であり、同図において、図1と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この実施形態では、図6の装置に加えて、波長フィルタ8を採用している。この場合、光源は発光強度が広い波長範囲に亘ってほぼ一定の白色光源であってもよく、波長フィルタの使用により発光強度が最大となる波長が595~615nmの範囲内で且つその発光スペクトルの半値幅が30nm以下の範囲内である光に変換することが出来る。このような装置においても、被検サンプル組織体1の透過画像が検体細胞1aと血液部1bとを目視等により一目瞭然に判別できる明瞭な表示画像となることから、正確に判別することができる。

【0036】
図8は、図6の装置において、LED14の設置方向を斜め方向としたもので、目視などの時に眩しさ低減、検査者の見やすさ向上という意味から好適な場合がある。同図においても、図1と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略している。

【0037】
図9は、同図でも明らかなように、光源ボックス9の透光板11を傾斜して設置したものであり、目視などのときの検査者の検体確認のしやすさ向上という意味から好適な場合がある。同図においても、図1と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略している。

【0038】
なお、本発明は、以上の実施形態で示した内容に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、患者の悪性腫瘍と思われる部分を採取した極めて小さい塊である被検サンプル組織体に対して、ピンセットで摘んだりする操作などを一切行うことなく、検体細胞と血液とを明確に区別できる差を有して表示される透過画像を観察するだけの簡便な手段により、血液内に埋もれている検体細胞の存在の有無を迅速、且つ正確に判別する用途に極めて好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 被検サンプル組織体
1a 検体細胞
1b 血液部
L1 照射光
L2 透過光
4 シャーレ(検査用容器)
7 散乱シート
8 波長フィルタ
12 光照射装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8