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明細書 :電気光学効果を示すゲル状ポリマーデバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5986402号 (P5986402)
公開番号 特開2013-190547 (P2013-190547A)
登録日 平成28年8月12日(2016.8.12)
発行日 平成28年9月6日(2016.9.6)
公開日 平成25年9月26日(2013.9.26)
発明の名称または考案の名称 電気光学効果を示すゲル状ポリマーデバイス
国際特許分類 G02F   1/061       (2006.01)
G02F   1/361       (2006.01)
C08J   3/075       (2006.01)
G02B   1/04        (2006.01)
G02B   3/14        (2006.01)
G02B   3/06        (2006.01)
FI G02F 1/061 501
G02F 1/361
C08J 3/075
G02B 1/04
G02B 3/14
G02B 3/06
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2012-055891 (P2012-055891)
出願日 平成24年3月13日(2012.3.13)
審査請求日 平成27年3月13日(2015.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】平井 利博
【氏名】植木 崇充
【氏名】佐藤 洸
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】林 祥恵
参考文献・文献 特開2005-148617(JP,A)
特開2007-011120(JP,A)
特開2002-105327(JP,A)
米国特許出願公開第2005/0244589(US,A1)
調査した分野 G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/39
C81J 3/00-3/11
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
電気光学効果を示す高誘電性ゲル状高分子材料と、該ゲル状高分子材料にバイアス電圧を印加する電極とを有し、前記ゲル状高分子材料の比誘電率が0.01Hzで1×10以上であることを特徴とするゲル状ポリマーデバイス。
【請求項2】
前記ゲル状高分子材料の比誘電率が、0.001Hzで1×10以上である、請求項1に記載のゲル状ポリマーデバイス。
【請求項3】
前記ゲル状高分子材料を構成する絶縁性高分子化合物が、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリケトン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリnブチルアクリレート、セルロース及び羊毛の群から選ばれるいずれか1又は2以上の高分子化合物である、請求項1又は2に記載のゲル状ポリマーデバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学効果を示すゲル状ポリマーデバイス(高分子素子)及びその製造方法に関し、更に詳しくは、電場制御型薄膜フレネルレンズ、電場制御型光導波路スイッチ、変形を伴わない電場による屈折率制御素子、電場感応型光応答センサー等に利用できるゲル状ポリマーデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、低誘電性の絶縁高分子樹脂として広く使われている。また、PVCに可塑剤を添加した柔軟な高分子材料であるPVC可塑化柔軟体(以下「可塑化PVC」という。)も、テープ、チューブ、壁紙等、広範な分野で多様な用途に利用されている。可塑剤もまた、低誘電率の化学物質である。PVC樹脂及び可塑化PVCのいずれも、低誘電率材料として優れた性能を持ち、多くの用途展開が図られてきた。そして、これらの材料は、電場印加に対して安定した絶縁性等を持つことが期待さている材料である。一方、これらの材料は、外部からの電場等の刺激に対して自律的に応答することは全く期待されていない。
【0003】
電場に応答して自律的に駆動する素材としては、一般に、イオン伝導性高分子(高分子電解質)等のように、電場に応答することが自明の素材が知られている。しかし、イオン伝導性高分子を用いた駆動素子は、低電場で駆動するものの、変形の様式(主に屈曲変形)が限定される上、電流によるエネルギー損失が大きいために充分な性能(応力、速度等)を得ることが困難である。
【0004】
また、導電性高分子も駆動素子の材料として応用されている。この導電性高分子も電場に応答することが知られており、非対称な媒質の吸着等を活用した駆動素子も開発され、注目を集めている。しかし、イオン伝導性高分子の場合と同様、電流による発熱等のエネルギー損失等が避けられず、耐久性等で実用的な駆動素子にはなり得ていない。
【0005】
本発明者は、低誘電率の可塑化PVCが、常識に反して、極めて特異的な大変形を電場印加により生じることを見出し、駆動素子への応用を検討している(特許文献1及び非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2010-191048号公報
【0007】

【非特許文献1】米国特許7,933,081号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、エネルギー損失が小さく、新しい用途に応用できる電気光学効果を示すゲル状ポリマーデバイス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
低誘電性の汎用高分子材料であるPVCは、電場に対する応答性が期待できないために注目されることはなかったが、上記のように、本発明者は、低誘電率の可塑化PVCに電場を印加することで極めて特異的な大変形を起こすことを見出した。さらに、本発明者は、可塑化PVCが変形する原理として、可塑化PVCが電気レオロジー的に特異的な特性を持つことがなければならないとして、その実態の解明に注力してきた。
【0010】
そして、本発明者は、可塑化PVCのようなゲル状高分子材料の原理解明の過程で、特定の可塑化PVCの誘電率が直流電場領域で著しく上昇することを見出した。その誘電率の値は、強誘電体で電気光学効果を示すタンタル酸ニオブ酸カリウムと同程度であったことから、可塑化PVCも同様の電気光学効果を示すのではないかと期待し、さらに研究を重ねて本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するための本発明に係るゲル状ポリマーデバイスは、電気光学効果を示す高誘電性ゲル状高分子材料と、該ゲル状高分子材料にバイアス電圧を印加する電極とを有し、前記ゲル状高分子材料の比誘電率が0.01Hzで1×10以上であることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、電気光学効果を示す高誘電性ゲル状高分子材料と、バイアス電圧を印加する電極とを有するので、そのゲル状高分子材料がイオン伝導性高分子材料や導電性高分子材料でなくても、印加されたバイアス電圧によって誘起される超常誘電特性が電気光学効果をもたらす。その結果、その電気光学効果を示すゲル状ポリマーデバイスは、光学駆動素子に応用したり、電場による屈折率制御材料に応用したりすることができる。そして、こうしたゲル状ポリマーデバイスは、エネルギー損失が小さく、新用途に期待できる機能素子として利用できる。
【0013】
本発明に係るゲル状ポリマーデバイスにおいて、前記ゲル状高分子材料の比誘電率が、0.001Hzで1×10以上であることが好ましい。
【0014】
本発明に係るゲル状ポリマーデバイスにおいて、前記ゲル状高分子材料を構成する絶縁性高分子化合物が、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ナイロン(Nylon)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリケトン(PK)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリnブチルアクリレート(PnBA)、セルロース、羊毛等の群から選ばれるいずれか1又は2以上の高分子化合物である。
【0015】
上記課題を解決するための本発明に係るゲル状ポリマーデバイスの製造方法は、上記本発明に係るゲル状ポリマーデバイスを製造する方法であって、絶縁性高分子化合物をゲル状にして電気光学効果を示す高誘電性ゲル状高分子材料を準備する工程と、該ゲル状高分子材料にバイアス電圧を印加するための電極を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るゲル状ポリマーデバイス及びその製造方法によれば、ゲル状ポリマーデバイスを構成するゲル状高分子材料がイオン伝導性高分子材料や導電性高分子材料でなくても、印加されたバイアス電圧によって誘起される超常誘電特性が電気光学効果をもたらす。その結果、その電気光学効果を示すゲル状ポリマーデバイスは、光学駆動素子に応用したり、電場による屈折率制御材料に応用したりすることができる。そして、こうしたゲル状ポリマーデバイスは、エネルギー損失が小さく、新用途に期待できる機能素子として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るゲル状ポリマーデバイスの一例を示す模式的な構成図である。
【図2】PVC:DBAの質量比を1:5として作製したゲル状ポリマーデバイスに電場を印加した際のレーザースポット位置のx軸方向の経時変化を示すグラフである。
【図3】x軸方向へのレーザーの屈折角の電場依存性を示すグラフである。
【図4】ゲル状ポリマーデバイスの他の一例を示す模式的な構成図である。
【図5】電場のON/OFFそれぞれでのレンズの焦点変化を示す模式図である。
【図6】電場のON/OFFそれぞれでのレンズの平面写真(a)(b)及び正面写真(c)(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るゲル状ポリマーデバイス及びその製造方法について説明するが、本発明は下記の説明及び図面に記載された内容のみに限定されない。

【0019】
本発明に係るゲル状ポリマーデバイス1は、図1に示すように、電気光学効果を示す高誘電性ゲル状高分子材料2と、そのゲル状高分子材料2にバイアス電圧を印加するための電極3,3とを有し、そのゲル状高分子材料2の比誘電率が0.01Hzで1×10以上であることを特徴とする。「電気光学効果」とは、電場によって物質の屈折率や吸光度等の光学特性が変化する現象であり、特に電場の二乗に比例して物質の屈折率が変化する現象はカー効果と呼ばれているが、本発明では、こうした電気光学効果及びそれに類似する効果を奏し、具体的には、電場印加時に極めて特異的な大変形を起こすことに起因したて光学要素に変化が起こるという効果を見出した。

【0020】
以下、各構成要素について説明する。

【0021】
(ゲル状高分子材料)
ゲル状高分子材料2は、直流電場領域で高誘電性(コロッサル誘電性)を持つゲルである。直流電場領域とは、0.001Hz~0.01Hzの範囲程度の周波数領域のことであり、その高誘電性は、0.01Hzで1×10以上の比誘電率を持つものである。また、好ましくは0.001Hzで1×10以上の比誘電率を持つものである。

【0022】
ゲル状高分子材料2は、イオン性材料や導電性材料を含まず、それらのイオン性材料や導電性材料に基づいたイオン伝導性や電気導電性を示さない。にもかかわらず、直流電場領域のバイアス電圧を印加した場合に、そのゲル状高分子材料2を主に構成する絶縁性高分子化合物の誘電率からは想像できない高い誘電率を示す。その誘電率は、ゲル状高分子材料2の種類やゲル化の程度にもよるので一概には言えないが、例えば、後述の実施例1で示すように、比誘電率が10程度のゲル状高分子材料2に0.001Hzのバイアス電圧を印加すると、ゲル状高分子材料2の比誘電率を1×10以上、顕著な場合には1×10程度に増加させることができる。また、低周波である100Hzのバイアス電圧を印加した場合も、100以上の高い比誘電率を示す。

【0023】
このような高い誘電性(超常誘電性)は、タンタル酸ニオブ酸カリウム等の無機材料では知られているが、低誘電率材料である汎用高分子では知られておらず、本発明で初めて実現できる超常誘電性であるということができる。ゲル状高分子材料2は超常誘電性を示すが、一方で高抵抗材料であることから、電流のリーク(0.1μA)によるエネルギー損失が従来の高分子電解質系(数mA)に比べて無視できる程に小さい。そのため、超省エネルギー、超高効率デバイスに応用できるという利点がある。

【0024】
(絶縁性高分子化合物)
ゲル状高分子材料2は、絶縁性高分子化合物を主に含む。すなわち、絶縁性高分子化合物はゲル状高分子材料2を構成する化合物であり、イオン性材料や導電性材料を含まず、且つそれ自体がイオン伝導性や電気導電性を示さない絶縁材料である。この絶縁性高分子化合物に後述の可塑化剤や有機溶媒等のゲル化剤を配合してゲル状にする前では、一般的な絶縁性の高分子化合物である。こうした絶縁性高分子化合物は、誘電率が小さく、通常、比誘電率として2~9程度の範囲である。しかし、絶縁性高分子化合物をゲル化したゲル状高分子材料2は、イオン性材料や導電性材料を含まないので、それらイオン性材料や導電性材料に基づいて流れる電流による発熱等のエネルギー損失が極めて小さい。

【0025】
絶縁性高分子化合物としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ナイロン(Nylon)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリケトン(PK)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリnブチルアクリレート(PnBA)、セルロース、羊毛等の群から選ばれるいずれか1又は2以上の高分子化合物を用いることができる。

【0026】
(ゲル化)
ゲル状高分子材料2は、上記絶縁性高分子化合物をゲル化したものである。ゲル化は、絶縁性高分子化合物にゲル化剤を付与して行うことができる。ゲル化剤は、絶縁性高分子化合物の種類にもよるが、例えば、可塑化剤、有機溶媒等を用いることができる。可塑化剤や有機溶媒等のゲル化剤は、所望のゲル強度となるようにその配合量が決められる。

【0027】
ゲル強度としては、2kg/cm以上5kg/cm以下の範囲内であることが好ましく、ゲル強度をこの範囲にすることにより、ゲル状ポリマーデバイス1として多様な用途に適用できる。ゲル強度が2kg/cm未満では、軟らかすぎて測定できず、場合によってはゾル化してゲル状ポリマーデバイス1として用いることができないことがある。一方、ゲル強度が5kg/cmを超えると、硬くなってしまい、ゲル状ポリマーデバイス1として用いることができないことがある。なお、ゲル強度は、引張試験機を用い、ゲル状高分子材料2を測定用の試料形状に成形して測定できる。

【0028】
ゲル化のために配合する可塑剤としては、公知の絶縁性の可塑剤を用いることができる。例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル(フタル酸ジ-n-ブチル)等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル;トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル;ポリエステル;リン酸トリクレシル等のリン酸エステル;アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;セバシン酸エステル;アゼライン酸エステル;マレイン酸エステル;安息香酸エステル等を挙げることができる。

【0029】
いずれの可塑剤を用いるかは絶縁性高分子化合物の種類によって選択される。また、その可塑剤の配合割合も絶縁性高分子化合物の種類によって設定されるが、通常、可塑剤を多く配合することが好ましい。配合割合は、絶縁性高分子化合物:可塑剤(質量比)=1:2~1:20の範囲内とすることが好ましい。このように、可塑剤の配合量を一般的な可塑剤の配合量の数倍~20倍に高めて可塑剤の配合比を高めることで、従来のものとは事情が一変し、超常誘電性を持ち、電気光学効果を示すゲル状高分子材料2とすることができる。

【0030】
ゲル化のために配合する有機溶媒として、ベンゼン、トルエン等の低誘電率(ε=2~8)の有機溶媒を用いてもよいし、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等の高誘電率(ε=20~40)の有機溶媒を用いてもよい。

【0031】
いずれの有機溶媒を用いるかは絶縁性高分子化合物の種類によって選択される。また、その有機溶媒の配合割合も絶縁性高分子化合物の種類によって設定されるが、通常、有機溶媒は上記した可塑剤ほどは配合しない。配合割合は、絶縁性高分子化合物:有機溶媒(質量比)=1:2~1:8の範囲内とすることが好ましい。このように、有機溶媒の配合量を一般的な有機溶媒の配合量よりも多くすることで、従来のものとは事情が一変し、コロッサル誘電性を持つゲル状高分子材料2とすることができる。

【0032】
なお、可塑剤や有機溶媒の配合割合を多くすると力学物性が低下し、ゲル状からゾル状に変化するために使用に耐えない状態となるが、多量の可塑剤や有機溶媒を配合させてもゲル状態を維持できるように絶縁性高分子化合物の分子量等を調整することで、巨大な誘電率を有したゲル状高分子材料2とすることができる。具体的には、上記したゲル強度の範囲になるように、分子量(重量平均分子量)が調整された絶縁性高分子化合物を用いる。

【0033】
そうした絶縁性高分子化合物の分子量としては、例えば、1×10以上1×10以下とすることができ、この範囲で分子量を調整して用いることができる。例えば、軟らかくなりすぎる場合には、分子量が大きめの絶縁性高分子化合物を用い、硬くなりすぎる場合には、分子量が小さめの絶縁性高分子化合物を用いることが好ましい。

【0034】
(電極)
電極3は、ゲル状高分子材料2に直流電圧又は低周波のバイアス電圧(0.001Hz、0.01Hz、等)を印加するために設けられる。電極3の配置は特に限定されないが、例えば、図1に示すように、ゲル状高分子材料2を挟むように設けられる。電極3を構成する材料も特に限定されず、アルミニウム、銅、チタン等の金属材料、インジウム錫オキサイド、カーボン材料等の導電性無機材料、導電性有機材料等、公知の電極材料を選択して用いることができる。電極の形状も特に限定されず、シート状、フィルム状等、ゲル状ポリマーデバイス1の形状に応じた任意の形状であればよい。

【0035】
電極3は電源に接続され、その電源から直流電圧又は低周波のバイアス電圧が供給される。

【0036】
以上説明したように、本発明に係るゲル状ポリマーデバイス1及びその製造方法によれば、ゲル状ポリマーデバイス1を構成するゲル状高分子材料2がイオン伝導性高分子材料や導電性高分子材料でなくても、印加されたバイアス電圧によって誘起される超常誘電特性が電気光学効果をもたらす。その結果、その電気光学効果を示すゲル状ポリマーデバイス1は、光学駆動素子に応用したり、電場による屈折率制御材料に応用したりすることができる。そして、こうしたゲル状ポリマーデバイス1は、エネルギー損失が小さく、新用途に期待できる機能素子として利用できる。

【0037】
特に、電場制御型薄膜フレネルレンズ、電場制御型光導波路スイッチ、変形を伴わない電場による屈折率制御素子、電場感応型光応答センサー等を挙げることができる。
【実施例】
【0038】
以下の実験例により、本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0039】
[実験例1]
重合度が1140のポリ塩化ビニル(PVC)とアジピン酸ジブチル(DBA)とを1:2、1:5、1:8の質量比で配合し、十分に撹拌した。各溶液を150℃で予熱したガラスセルに注いだ。ガラスセルの対向する壁面には、予めアルミニウム電極を配置しておき、注入した溶液を150℃で20~30分間加熱して、電極間にゲル状の可塑化PVCを作製した。こうして3種類のゲル状ポリマーデバイス1を得た。
【実施例】
【0040】
(測定)
作製したゲル状ポリマーデバイス1に、He-Neレーザー(波長633nm、出力5mW)を照射し、一定周期で電場を250V/mmとなるように印加した。透過したレーザーをスクリーンに投影し、レーザースポットの動きをビデオカメラで撮影した。レーザースポット位置の経時変化を動画解析によりグラフ化し、図2に示した。また、質量比1:5のゲル状ポリマーデバイス1に関し、電場印加時のレーザースポットの変位量を求め、レーザーの屈折角を算出した。また、ゲル状ポリマーデバイス1の誘電率は、インピーダンス測定装置を用い、全測定周波数で測定した。
【実施例】
【0041】
(結果)
図2は、PVC:DBAの質量比を1:5として作製したゲル状ポリマーデバイス1に電場を印加した際のレーザースポット位置のx軸方向の経時変化を示している。図2では、電場を印加する前のスポット位置を0とし、1分ごとのスポット位置をプロットしている。図2の結果より、スポット位置は電場のON/OFFに応じて変化しているのがわかる。また、その変位量は、1サイクル目は±15mm程度の大きな値を示すものの、2サイクル目以降は±5mm~±7mm程度でほぼ一定の値を示した。
【実施例】
【0042】
レーザースポット位置の変位量を各質量比のゲル状ポリマーデバイス1について検討した。その結果、変位量の大きさは、1:5>1:8>1:2となった。実験に使用したゲル状ポリマーデバイス1の誘電率は、直流電場域である0.01Hzで、質量比1:5のゲル状ポリマーデバイス1が1×10以上で1×10近くの最も高い値となり、質量比1:8のゲル状ポリマーデバイス1が1×10であり、質量比1:2のゲル状ポリマーデバイス1が1×10であった。この結果から、好ましい質量比を1:5~1:8とすることができる。また、質量比1:5~1:8では、100Hzのバイアス電圧でも、100を超えていた。スポット位置の変位量とゲル状ポリマーデバイス1の誘電率の大小は一致しており、レーザースポット位置の変位量はゲル状ポリマーデバイス1の誘電率に比例することがわかった。
【実施例】
【0043】
図3は、x軸方向へのレーザーの屈折角の電場依存性を示すグラフである。カー効果の場合、レーザーの屈折率は電場の二乗に比例していることから、ゲル状ポリマーデバイス1もカー効果を示すことを確認した。具体的な屈折角は、250V/mmで0.5°、200V/mmで0.3°、150V/mmで0.15°、100V/mmで0.05°であった。電圧を変化させることによって、所望の屈折角とすることができる。
【実施例】
【0044】
以上のように、直流電場の印加下のゲル状ポリマーデバイス1を透過したレーザーのスポット位置の変位量と誘電率との関係、及びレーザーの屈折角と電場強度との関係から、ゲル状ポリマーデバイス1のカー効果を確認できた。
【実施例】
【0045】
[実験例2]
ゲル状ポリマーデバイス1の応用実験として、実施例1のゲル状高分子材料2(PVC:DBA=1:5)を用いて電場制御型薄膜レンズを作製した。図4は、その構成図であり、レンズ状のゲル状高分子材料2の下にはカソード電極3(ITO付きガラス)を設け、レンズ状のゲル状高分子材料2を平面視で挟むようにアノード電極3(ITO付きガラス)を設けた。なお、直流電圧をカソード電極3とアノード電極3との間に印加し、カソード電極3とアノード電極3とが接触しないように両電極が重なる箇所には絶縁フィルムを設けた。図5は、レンズ状のゲル状高分子材料2に電圧をON又はOFFしたときの、レンズの焦点変化を示す模式図であり、図6は、そのときの実際の平面写真(a)(b)及び正面写真(c)(b)である。
【実施例】
【0046】
図6の結果からわかるように、レンズ状のゲル状高分子材料2に直流電圧を印加することにより、ゲル状高分子材料2は大きく変形し、図5に示すような焦点変化を起こしていた。このように、本発明では、電場を印加してゲル状ポリマーデバイス1に大変形を生じさせることにより、焦点等の光学要素を変化させることができた。
【符号の説明】
【0047】
1 ゲル状ポリマーデバイス
2 ゲル状高分子材料
3 電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5