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明細書 :コロッサル誘電性を持つゲル状ポリマーデバイス及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5946299号 (P5946299)
公開番号 特開2013-192333 (P2013-192333A)
登録日 平成28年6月10日(2016.6.10)
発行日 平成28年7月6日(2016.7.6)
公開日 平成25年9月26日(2013.9.26)
発明の名称または考案の名称 コロッサル誘電性を持つゲル状ポリマーデバイス及びその製造方法
国際特許分類 H02N  11/00        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
C08K   5/00        (2006.01)
H01B   3/30        (2006.01)
FI H02N 11/00 Z
C08L 101/00
C08K 5/00
H01B 3/30 K
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2012-055892 (P2012-055892)
出願日 平成24年3月13日(2012.3.13)
審査請求日 平成27年3月13日(2015.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】平井 利博
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】小林 紀和
参考文献・文献 特表2009-528558(JP,A)
特開昭61-249902(JP,A)
特開昭57-180657(JP,A)
特開2010-191048(JP,A)
特開2008-252958(JP,A)
特表2003-505865(JP,A)
特開2013-190547(JP,A)
調査した分野 H02N 11/00
C08K 5/00
C08L 101/00
H01B 3/30
特許請求の範囲 【請求項1】
コロッサル誘電性を持ち、比誘電率が1Hzで1000以上、10Hzで100以上のゲル状高分子材料と、該ゲル状高分子材料に低周波のバイアス電圧を印加する電極とを有することを特徴とするゲル状ポリマーデバイス。
【請求項2】
前記ゲル状高分子材料を構成する絶縁性高分子化合物が、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリケトン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリnブチルアクリレート、セルロース及び羊毛の群から選ばれるいずれか1又は2以上の高分子化合物である、請求項1に記載のゲル状ポリマーデバイス。
【請求項3】
絶縁性高分子化合物をゲル状にしてコロッサル誘電性を持ち、比誘電率が1Hzで1000以上、10Hzで100以上のゲル状高分子材料を準備する工程と、該ゲル状高分子材料に低周波のバイアス電圧を印加するための電極を形成する工程と、を有することを特徴とするゲル状ポリマーデバイスの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、コロッサル誘電性(巨大誘電性ともいう。)を持つゲル状ポリマーデバイス(高分子素子)及びその製造方法に関し、更に詳しくは、微細アクチュエータ素子、自律応答性変形材料、ソフトチャック、微細部品搬送機能材、ミクロスイッチ、マイクロバルブ、マイクロポンプ、マイクロソフト伸縮アクチュエータ、マイクロフィンガー、変形センサー、圧力センサーアクチュエータ等に利用できるゲル状ポリマーデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、低誘電性の絶縁高分子樹脂として広く使われている。また、PVCに可塑剤を添加した柔軟な高分子材料であるPVC可塑化柔軟体(以下「可塑化PVC」という。)も、テープ、チューブ、壁紙等、広範な分野で多様な用途に利用されている。可塑剤もまた、低誘電率の化学物質である。PVC樹脂及び可塑化PVCのいずれも、低誘電率材料として優れた性能を持ち、多くの用途展開が図られてきた。そして、これらの材料は、電場印加に対して安定した絶縁性等を持つことが期待さている材料である。一方、これらの材料は、外部からの電場等の刺激に対して自律的に応答することは全く期待されていない。
【0003】
電場に応答して自律的に駆動する素材としては、一般に、イオン伝導性高分子(高分子電解質)等のように、電場に応答することが自明の素材が知られている。しかし、イオン伝導性高分子を用いた駆動素子は、低電場で駆動するものの、変形の様式(主に屈曲変形)が限定される上、電流によるエネルギー損失が大きいために充分な性能(応力、速度等)を得ることが困難である。
【0004】
また、導電性高分子も駆動素子の材料として応用されている。この導電性高分子も電場に応答することが知られており、非対称な媒質の吸着等を活用した駆動素子も開発され、注目を集めている。しかし、イオン伝導性高分子の場合と同様、電流による発熱等のエネルギー損失等が避けられず、耐久性等で実用的な駆動素子にはなり得ていない。
【0005】
本発明者は、低誘電率の可塑化PVCが、常識に反して、極めて特異的な大変形を電場印加により生じることを見出し、駆動素子への応用を検討している(特許文献1及び非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2010-191048号公報
【0007】

【非特許文献1】米国特許7,933,081号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低誘電性の汎用高分子材料であるPVCは、電場に対する応答性が期待できないために注目されることはなかったが、上記のように、本発明者は、低誘電率の可塑化PVCに電場を印加することで極めて特異的な大変形を起こすことを見出した。さらに、本発明者は、可塑化PVCが変形する原理として、可塑化PVCが電気レオロジー的に特異的な特性を持つことがなければならないとして、その実態の解明に注力してきた。
【0009】
本発明は、そうした可塑化PVCのようなゲル状高分子材料の原理解明の過程で見出されたものであって、その目的は、エネルギー損失が小さく、新しい用途に応用できるコロッサル誘電性を持つゲル状ポリマーデバイス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、可塑化PVCのようなゲル状高分子材料の原理解明の過程で、特定の可塑化PVCが電場印加での極めて大きな誘電率を低周波数域で示すことを見出した。本発明は、こうした知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係るゲル状ポリマーデバイスは、コロッサル誘電性を持つゲル状高分子材料と、該ゲル状高分子材料に低周波のバイアス電圧を印加する電極とを有することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、コロッサル誘電性を持つゲル状高分子材料と、低周波のバイアス電圧を印加する電極とを有するので、そのゲル状高分子材料がイオン伝導性高分子材料や導電性高分子材料でなくても、印加されたバイアス電圧に応答して自律的に駆動する。こうしたゲル状ポリマーデバイスは、エネルギー損失が小さく、新用途に期待できる機能素子として利用できる。
【0013】
本発明に係るゲル状ポリマーデバイスにおいて、前記ゲル状高分子材料を構成する絶縁性高分子化合物が、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ナイロン(Nylon)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリケトン(PK)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリnブチルアクリレート(PnBA)、セルロース、羊毛等の群から選ばれるいずれか1又は2以上の高分子化合物である。
【0014】
本発明に係るゲル状ポリマーデバイスにおいて、前記ゲル状高分子材料の比誘電率が1Hzで1000以上、10Hzで100以上である。
【0015】
上記課題を解決するための本発明に係るゲル状ポリマーデバイスの製造方法は、上記本発明に係るゲル状ポリマーデバイスを製造する方法であって、絶縁性高分子化合物をゲル状にしてコロッサル誘電性を持つゲル状高分子材料を準備する工程と、該ゲル状高分子材料に低周波のバイアス電圧を印加するための電極を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るゲル状ポリマーデバイス及びその製造方法によれば、コロッサル誘電性を持つゲル状高分子材料を有するので、そのゲル状高分子材料がイオン伝導性高分子材料や導電性高分子材料でなくても、印加されたバイアス電圧に応答して自律的に駆動する。こうしたゲル状ポリマーデバイスは、エネルギー損失が小さく、新用途に期待できる機能素子として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るゲル状ポリマーデバイスの一例を示す模式的な構成図である。
【図2】PVA(重合度1000)/DMSOゲルのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
【図3】PVA(重合度500)/DMSOゲルの誘電率を示すグラフである。
【図4】周波数1000Hz及び10000HzでのPVA:DMSO=1:3のゲル誘電率のPVA重合度依存性を示すグラフである。
【図5】PVC(重合度3728)/DBAゲルのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るゲル状ポリマーデバイス及びその製造方法について説明するが、本発明は下記の説明及び図面に記載された内容のみに限定されない。

【0019】
本発明に係るゲル状ポリマーデバイス1は、図1に示すように、コロッサル誘電性を持つゲル状高分子材料2と、そのゲル状高分子材料2に低周波のバイアス電圧を印加するための電極3,3とを有することに特徴がある。以下、各構成要素について説明する。

【0020】
(ゲル状高分子材料)
ゲル状高分子材料2は、低周波領域でコロッサル誘電性(巨大誘電性)を持つゲルである。そのコロッサル誘電性は、1Hzで1000以上、10Hzで100以上の比誘電率を持つものである。

【0021】
ゲル状高分子材料2は、イオン性材料や導電性材料を含まず、それらのイオン性材料や導電性材料に基づいたイオン伝導性や電気導電性を示さない。にもかかわらず、低周波のバイアス電圧を印加した場合に、そのゲル状高分子材料2を主に構成する絶縁性高分子化合物の誘電率からは想像できない高い誘電率を示す。その誘電率は、ゲル状高分子材料2の種類やゲル化の程度にもよるので一概には言えないが、例えば、比誘電率が10程度のゲル状高分子材料2に1Hzのバイアス電圧を印加すると、ゲル状高分子材料2の比誘電率を1000以上に増加させることができる。また、10Hzのバイアス電圧でも、比誘電率を100以上に増加させることができる。特に後述の実施例3で示すように、ゲル状高分子材料2に1ミリHzのバイアス電圧を印加すると、ゲル状高分子材料2の比誘電率を1×10近くの巨大誘電率にまで増加させることができる。また、100Hzのバイアス電圧でも、100を超える巨大誘電率にまで向上させることができる。

【0022】
コロッサル誘電性(巨大誘電性)は無機材料では知られているが、低誘電率材料である汎用高分子では知られておらず、本発明で初めて実現できる巨大な誘電率(コロッサル誘電率)であるということができる。ゲル状高分子材料2はコロッサル誘電率を示すが、一方で高抵抗材料であることから、電流のリーク(0.1μA)によるエネルギー損失が従来の高分子電解質系(数mA)に比べて無視できる程に小さい。そのため、超省エネルギー、超高効率デバイスに応用できるという利点がある。

【0023】
(絶縁性高分子化合物)
ゲル状高分子材料2は、絶縁性高分子化合物を主に含む。すなわち、絶縁性高分子化合物はゲル状高分子材料2を構成する化合物であり、イオン性材料や導電性材料を含まず、且つそれ自体がイオン伝導性や電気導電性を示さない絶縁材料である。この絶縁性高分子化合物に後述の可塑化剤や有機溶媒等のゲル化剤を配合してゲル状にする前では、一般的な絶縁性の高分子化合物である。絶縁性高分子化合物は、誘電率が小さく、通常、比誘電率として2~9程度の範囲である。しかし、こうした絶縁性高分子化合物をゲル化したゲル状高分子材料2は、イオン性材料や導電性材料を含まないので、それらイオン性材料や導電性材料に基づいて流れる電流による発熱等のエネルギー損失が極めて小さい。

【0024】
絶縁性高分子化合物としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ナイロン(Nylon)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリケトン(PK)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリnブチルアクリレート(PnBA)、セルロース、羊毛等の群から選ばれるいずれか1又は2以上の高分子化合物を用いることができる。

【0025】
(ゲル化)
ゲル状高分子材料2は、上記絶縁性高分子化合物をゲル化したものである。ゲル化は、絶縁性高分子化合物にゲル化剤を付与して行うことができる。ゲル化剤は、絶縁性高分子化合物の種類にもよるが、例えば、可塑化剤、有機溶媒等を用いることができる。可塑化剤や有機溶媒等のゲル化剤は、所望のゲル強度となるようにその配合量が決められる。

【0026】
ゲル強度としては、2kg/cm以上5kg/cm以下の範囲内であることが好ましく、ゲル強度をこの範囲にすることにより、ゲル状ポリマーデバイス1として多様な用途に適用できる。ゲル強度が2kg/cm未満では、軟らかすぎて測定できず、場合によってはゾル化してゲル状ポリマーデバイス1として用いることができないことがある。一方、ゲル強度が5kg/cmを超えると、硬くなってしまい、ゲル状ポリマーデバイス1として用いることができないことがある。なお、ゲル強度は、引張試験機を用い、ゲル状高分子材料2を測定用の試料形状に成形して測定できる。

【0027】
ゲル化のために配合する可塑剤としては、公知の絶縁性の可塑剤を用いることができる。例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル(フタル酸ジ-n-ブチル)等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル;トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル;ポリエステル;リン酸トリクレシル等のリン酸エステル;アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;セバシン酸エステル;アゼライン酸エステル;マレイン酸エステル;安息香酸エステル等を挙げることができる。

【0028】
いずれの可塑剤を用いるかは絶縁性高分子化合物の種類によって選択される。また、その可塑剤の配合割合も絶縁性高分子化合物の種類によって設定されるが、通常、可塑剤を多く配合することが好ましい。配合割合は、絶縁性高分子化合物:可塑剤(質量比)=1:2~1:20の範囲内とすることが好ましい。このように、可塑剤の配合量を一般的な可塑剤の配合量の数倍~20倍に高めて可塑剤の配合比を高めることで、従来のものとは事情が一変し、コロッサル誘電性を持つゲル状高分子材料2とすることができる。

【0029】
ゲル化のために配合する有機溶媒として、ベンゼン、トルエン等の低誘電率(ε=2~8)の有機溶媒を用いてもよいし、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等の高誘電率(ε=20~40)の有機溶媒を用いてもよい。

【0030】
いずれの有機溶媒を用いるかは絶縁性高分子化合物の種類によって選択される。また、その有機溶媒の配合割合も絶縁性高分子化合物の種類によって設定されるが、通常、有機溶媒は上記した可塑剤ほどは配合しない。配合割合は、絶縁性高分子化合物:有機溶媒(質量比)=1:2~1:8の範囲内とすることが好ましい。このように、有機溶媒の配合量を一般的な有機溶媒の配合量よりも多くすることで、従来のものとは事情が一変し、コロッサル誘電性を持つゲル状高分子材料2とすることができる。

【0031】
なお、可塑剤や有機溶媒の配合割合を多くすると力学物性が低下し、ゲル状からゾル状に変化するために使用に耐えない状態となるが、多量の可塑剤や有機溶媒を配合させてもゲル状態を維持できるように絶縁性高分子化合物の分子量等を調整することで、巨大な誘電率を有したゲル状高分子材料2とすることができる。具体的には、上記したゲル強度の範囲になるように、分子量(重量平均分子量)が調整された絶縁性高分子化合物を用いる。

【0032】
そうした絶縁性高分子化合物の分子量としては、例えば、1×10以上1×10以下とすることができ、この範囲で分子量を調整して用いることができる。例えば、軟らかくなりすぎる場合には、分子量が大きめの絶縁性高分子化合物を用い、硬くなりすぎる場合には、分子量が小さめの絶縁性高分子化合物を用いることが好ましい。

【0033】
(電極)
電極3は、ゲル状高分子材料2に低周波のバイアス電圧を印加するために設けられる。電極3の配置は特に限定されないが、例えば、図1に示すように、ゲル状高分子材料2を挟むように設けられる。電極3を構成する材料も特に限定されず、アルミニウム、銅、チタン等の金属材料、インジウム錫オキサイド、カーボン材料等の導電性無機材料、導電性有機材料等、公知の電極材料を選択して用いることができる。電極の形状も特に限定されず、ゲル状ポリマーデバイス1の形状に応じた任意の形状であればよい。

【0034】
電極3は電源に接続され、その電源から低周波のバイアス電圧が供給される。

【0035】
以上説明したように、本発明に係るゲル状ポリマーデバイス1及びその製造方法によれば、コロッサル誘電性を持つゲル状の高分子材料に低周波のバイアス電圧を付与することにより、そのゲル状高分子材料がイオン伝導性高分子材料や導電性高分子材料でなくても、そのバイアス電圧に応答して自律的に駆動するゲル状ポリマーデバイスを提供できる。その結果、新しい用途に応用できる。

【0036】
ゲル状ポリマーデバイス1としては、微細アクチュエータ素子、自律応答性変形材料(人工瞳レンズ等)、ソフトチャック、微細部品搬送機能材、ミクロスイッチ、マイクロバルブ、マイクロポンプ、マイクロソフト伸縮アクチュエータ(ソレノイドタイプ)、マイクロフィンガー、焦点可変レンズ、超省エネルギー駆動素子、高効率デバイス、柔軟駆動素子、人工筋肉、変形センサー、圧力センサー等を挙げることができる。
【実施例】
【0037】
以下の実験例により、本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0038】
[実験例1]
重合度が500のポリビニルアルコール(PVA)を10質量%含む水溶液と、ジメチルスルホキシド(DMSO)を10質量%含む水溶液とを、PVA:DMSO(質量比)が1:0.2、1:0.6、1:1、1:2、1:3の5種類になるように調製した。各溶液をポリスチレンシャーレにキャストし、35℃で2日間乾燥した。さらに、20℃で8時間真空乾燥させ、5種類のPVA/DMSOゲルを得た。なお、このゲル状高分子材料2は、ポリ塩化ビニルも可塑剤も使用しないゲル状材料であり、環境への負担の少ないゲル状高分子材料2として有利である。
【実施例】
【0039】
さらに、重合度が1000と1700のPVAを用いて上記同様の手順で、計10種類のPVA/DMSOゲルを得た。
【実施例】
【0040】
(測定)
作製したPVA/DMSOゲルをフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて、減衰全反射法によりDMSO含有量によるスルホキシド基のピーク位置の変化を確認した。また、作製したPVA/DMSOゲルの誘電率は、インピーダンス測定装置を用い、全測定周波数で測定した。
【実施例】
【0041】
(結果)
図2は、PVA(重合度1000)/DMSOゲルのFT-IRスペクトルを示すグラフである。DMSOのスルホキシド基は通常、1060~1040cm-1に伸縮運動に帰属できるピークを示す。PVA/DMSOゲルでは、DMSOのスルホキシド基とPVAのヒドロキシル基との間の水素結合によりスルホキシド基の伸縮運動が弱まり、ピーク位置が全体的に波数の小さい方にシフトしている。
【実施例】
【0042】
図3は、PVA(重合度500)/DMSOゲルの誘電率を示すグラフである。PVA/DMSOゲルも誘電率は、全測定周波数でDMSO含有量の増加と共に上昇した。特に、PVA:DMSO=1:2及び1:3のゲルでは、1000Hz~1×10Hzの高周波領域において、DMSOの誘電率よりも高くなった。これは、多量のDMSOによってPVAのポリマー鎖が束縛状態から開放されたことで、電場の極性変化に分子の双極子が追随しやすくなり、双極子の配向がより効率的に起こったためであろうと考えられる。
【実施例】
【0043】
図4は、周波数1000Hz及び10000HzでのPVA:DMSO=1:3のゲル誘電率のPVA重合度依存性を示すグラフである。誘電率は、重合度が大きいほど低くなった。具体的な誘電率は、重合度500では、1000Hzで1.35×10、10000Hzで3000であり、重合度1000では、1000Hzで8500、10000Hzで1000であり、重合度1700では、1000Hzで3500、10000Hzで500であった。これは、PVAの重合度が大きいほど、PVAと水素結合したDMSOのモビリティが制御されたためであると考えられる。この実験の範囲内では、重合度が500~1000の範囲が好ましい。
【実施例】
【0044】
[実験例2]
重合度が3728のポリ塩化ビニル(PVC)とアジピン酸ジブチル(DBA)とを1:1、1:2、1:3、1:5、1:7、1:9の質量比でそれぞれ配合し、十分に撹拌した。各溶液を150℃で予熱したガラスセルに注いだ。ガラスセルの対向する壁面には、予めアルミニウム電極を配置しておき、注入した溶液を150℃で20~30分間加熱して、電極間に挟まれたゲル状高分子材料2である可塑化PVCを得た。
【実施例】
【0045】
実施例1と同様の方法で誘電率を測定した。図5は、PVC(重合度3728)/DBAゲルのFT-IRスペクトルを示すグラフである。その結果、ゲル状高分子材料2に1Hzのバイアス電圧を印加すると、ゲル状高分子材料2の比誘電率を1000以上に増加させることができた。また、10Hzのバイアス電圧でも、100以上の誘電率に向上させることができた。
【実施例】
【0046】
[実験例3]
重合度が1140のポリ塩化ビニル(PVC)とアジピン酸ジブチル(DBA)とを1:9の質量比で配合し、十分に撹拌した。この溶液を150℃で予熱したガラスセルに注いだ。ガラスセルの対向する壁面には、予めアルミニウム電極を配置しておき、注入した溶液を150℃で20~30分間加熱して、電極間に挟まれたゲル状の可塑化PVCを得た。
【実施例】
【0047】
実施例1と同様の方法で誘電率を測定した。その結果、ゲル状高分子材料2に1ミリHzのバイアス電圧を印加すると、ゲル状高分子材料2の比誘電率を1×10近くの巨大誘電率にまで増加させることができた。また、100Hzのバイアス電圧でも、100を超える巨大誘電率にまで向上させることができた。
【符号の説明】
【0048】
1 ゲル状ポリマーデバイス
2 ゲル状高分子材料
3 電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4