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明細書 :イチゴの花芽分化促進方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5660571号 (P5660571)
公開番号 特開2012-139154 (P2012-139154A)
登録日 平成26年12月12日(2014.12.12)
発行日 平成27年1月28日(2015.1.28)
公開日 平成24年7月26日(2012.7.26)
発明の名称または考案の名称 イチゴの花芽分化促進方法
国際特許分類 A01G   1/00        (2006.01)
A01G   7/06        (2006.01)
C05G   3/00        (2006.01)
C05C   9/00        (2006.01)
FI A01G 1/00 301H
A01G 7/06 A
C05G 3/00 103
C05C 9/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2010-293564 (P2010-293564)
出願日 平成22年12月28日(2010.12.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 園芸学会平成22年度秋季大会にて発表 刊行物名:園芸学研究 第9巻 別冊2 -2010-(園芸学会平成22年度秋季大会研究発表およびシンポジウム講演要旨) 発行者名:園芸学会 会長 金浜 耕基 開催日 :平成22年9月19日~20日 発表日 :平成22年9月19日 講演番号:P115 講演要旨集発行日:平成22年9月19日
審査請求日 平成25年12月24日(2013.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】山崎 敬亮
【氏名】熊倉 裕史
【氏名】浜本 浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100169579、【弁理士】、【氏名又は名称】村林 望
審査官 【審査官】木村 隆一
参考文献・文献 特開昭61-181321(JP,A)
登録実用新案第3117983(JP,U)
特開2005-102636(JP,A)
特開平03-180125(JP,A)
特開平08-051857(JP,A)
特開平10-004782(JP,A)
特開平11-319693(JP,A)
特開2000-201542(JP,A)
特開平08-289671(JP,A)
高橋好範,“畑圃場における被覆窒素肥料の溶出特性と追肥省略栽培法 第3報 イチゴに対する被覆窒素肥料の施用効果”,東北農業研究,1992年,45,p.223-224
調査した分野 A01G 1/00
A01G 7/06
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
イチゴ苗を、緩効性被覆尿素肥料を施与した培地に定植させる工程を含む、イチゴの花芽分化を促進する方法であって、前記緩効性被覆尿素肥料が、初期溶出抑制期間100日及び溶出期間100日の緩効性被覆尿素肥料と初期溶出抑制期間40~50日及び溶出期間50日の緩効性被覆尿素肥料と初期溶出抑制期間30日及び溶出期間30日の緩効性被覆尿素肥料との混合物である、前記方法
【請求項2】
イチゴ苗が、頂花房が分化した苗である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
花芽分化が一次腋花房の花芽分化である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
緩効性被覆尿素肥料を有効成分として含有するイチゴ花芽分化促進剤であって、前記緩効性被覆尿素肥料が、初期溶出抑制期間100日及び溶出期間100日の緩効性被覆尿素肥料と初期溶出抑制期間40~50日及び溶出期間50日の緩効性被覆尿素肥料と初期溶出抑制期間30日及び溶出期間30日の緩効性被覆尿素肥料との混合物である、前記イチゴ花芽分化促進剤
【請求項5】
花芽分化が一次腋花房の花芽分化である、請求項4記載のイチゴ花芽分化促進剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば緩効性被覆尿素肥料を利用したイチゴの花芽分化促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴの促成栽培では、高設や地床という栽培方式に関わらず、近年の気候の温暖化により秋期の花芽分化時期が遅れ、作型によっては年内収量の減少や比較的高単価な時期に出荷の谷間を迎えてしまう、いわゆる「収穫の中休み」等の問題が顕在化しつつある。
【0003】
特に、10~11月出荷を目指す超促成(早期出荷)作型では、頂花房(第1花房)の出荷後、定植後の高温により一次腋花房の分化が遅延し、約2ヶ月間の無収穫期間(収穫の中休み)が発生することとなる。従って、単価が比較的高い時期(12月~1月)に出荷できず、収量及び収入が共に減少する事態となっている。
【0004】
さらに、培地が隔離され温度に対する緩衝能が小さい高設栽培では、培地温度が気温の影響を受けて高温になりやすく、温暖化の影響をより顕著に受ける。省力及び軽労化の面で優れる高設栽培は、新規就農者を中心に現在も設置面積を増やしており、今後も導入が見込まれる栽培法だけに、温暖化による「収穫の中休み」対策を早急に講じる必要がある。また対策を講じる際に、高設栽培の初期導入時の高コストに鑑みて、開発する技術や方法はできる限りコストを抑えることが望まれる。
【0005】
一方、従来においては、イチゴの花芽分化が低温で誘導される点に着目し、クラウン部を局所的に冷却する方法(非特許文献1及び2)や気化潜熱を利用して培地の昇温を抑制する方法(特許文献1及び非特許文献3)で、定植後の一次腋花房の分化を早める技術が開発されている。
【0006】
クラウン部の冷却を、非特許文献1ではスポットクーラーからの冷気を細いダクトに通して株元に送ることで、非特許文献2では冷水を特殊な2連チューブに流してそのチューブをクラウン部に密着させることで実施している。いずれの方法も効果は高く、イチゴの花芽分化時期を高精度に制御できるが、導入コストやランニングコストが高い点が課題である(例えば、非特許文献2に開示の装置は10a当たりの導入コストが約250万円である)。また、上述の気化潜熱を利用した培地の昇温抑制法は、低コストで実施できる利点があるものの、自然発生的な熱量を利用するため、精密な温度制御が困難であり、条件によっては期待するような効果が得られにくい場合がある。
【0007】
非特許文献4は、イチゴの地床マルチ栽培において、肥効調節型窒素肥料を利用して全栽培期間中の窒素分を定植時に施与する方法を試行して、減肥しながら収量性を維持できる施肥方法を開示する。また、同様に非特許文献5は、肥効調節型窒素肥料を用いて、育苗ポット中に全栽培期間中の窒素成分を施与し、肥培管理の省力化試験を実施したことを開示する。非特許文献5では、肥効時期や期間の異なる肥効調節型窒素肥料を組み合わせ、育苗ポットへ施用後速やかに窒素肥料が溶出し、定植1ヶ月前には育苗用肥料の溶出がほぼ終了し、さらに定植後速やかに本圃用肥料の溶出が開始し、収穫終了時まで肥効が持続する溶出パターンを作製している。また、非特許文献6は、緩効性被覆尿素肥料を用いて育苗ポットへの全量基肥施肥による肥培管理の省力化試験を実施したことを開示する。
【0008】
このように既に報告されている肥効調節型窒素肥料や緩効性被覆尿素肥料を利用した栽培法や施肥方法では、いずれもがイチゴ栽培における肥培管理の省力化を目的とする。肥効調節型窒素肥料や緩効性被覆尿素肥料を、「収穫の中休み」軽減や一次腋花房の分化促進といった目的では使用されていない。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2006-271314号公報
【0010】

【非特許文献1】齋藤・矢部, 「園学雑」, 2005年, 74(別2):440
【非特許文献2】曽根ら, 「園学研」, 2007年, 6(別2):162
【非特許文献3】K. Yamazaki et al., 「Acta Horticulturae」, 2009年, 第842巻, pp. 733-736
【非特許文献4】小管佐代子・東隆夫・三枝正彦, 「園学雑」, 2001年, 第70巻, pp. 616-621
【非特許文献5】小管佐代子・山田ゆき・東隆夫・三枝正彦, 「日本土壌肥料学雑誌」, 2001年, 第72巻, pp. 88-91
【非特許文献6】高森ら, 「園学雑」, 1997年, 66(別1):801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、イチゴ栽培における「収穫の中休み」の期間を減ずると共に、イチゴの収量性を維持する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、イチゴの苗を定植する際に、基肥の窒素成分として肥効開始時期や肥効持続期間の異なる緩効性の被覆尿素肥料を組み合わせて施与することで、「収穫の中休み」の原因となっていた一次腋花房(第2花房)の分化及び発達の遅れを解消して飛躍的に早め、収穫の中休みを減ずると共に、頂花房と一次腋花房とにおける収量性を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、以下を包含する。
(1)イチゴ苗を、緩効性被覆尿素肥料を施与した培地に定植させる工程を含む、イチゴの花芽分化を促進する方法。
(2)イチゴ苗が、頂花房が分化した苗である、(1)記載の方法。
(3)花芽分化が一次腋花房の花芽分化である、(1)又は(2)記載の方法。
(4)緩効性被覆尿素肥料が、初期溶出抑制期間100日及び溶出期間100日の緩効性被覆尿素肥料と初期溶出抑制期間40~50日及び溶出期間50日の緩効性被覆尿素肥料と初期溶出抑制期間30日及び溶出期間30日の緩効性被覆尿素肥料との混合物である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)緩効性被覆尿素肥料を有効成分として含有するイチゴ花芽分化促進剤。
(6)花芽分化が一次腋花房の花芽分化である、(5)記載のイチゴ花芽分化促進剤。
(7)緩効性被覆尿素肥料が、初期溶出抑制期間100日及び溶出期間100日の緩効性被覆尿素肥料と初期溶出抑制期間40~50日及び溶出期間50日の緩効性被覆尿素肥料と初期溶出抑制期間30日及び溶出期間30日の緩効性被覆尿素肥料との混合物である、(5)又は(6)記載のイチゴ花芽分化促進剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、イチゴ栽培の生産現場において「収穫の中休み」の期間を軽減し、イチゴの初期収量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】緩効性被覆尿素肥料を施肥して栽培したイチゴ品種「さちのか」における第3新葉の葉柄汁液中の硝酸イオン濃度の推移を示すグラフである。
【図2】緩効性被覆尿素肥料を使用したことによる培地温度の昇温抑制作用を示すグラフである。
【図3】緩効性被覆尿素肥料を施肥して栽培したイチゴ品種「さちのか」における頂花房と一次腋花房の旬ごとの1株当たり収量の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るイチゴの花芽分化を促進する方法(以下、「本方法」と称する)は、イチゴ苗を、緩効性被覆尿素肥料を施与した培地に定植させる工程を含む方法である。本方法では、イチゴが体内窒素濃度の低下によって花芽を分化しやすくなる生態に着目し、基肥で与える窒素成分として初期溶出を抑制する緩効性被覆尿素肥料を使用し、定植後、特定の期間の間窒素成分を極力供給しない状態とし、イチゴの体内窒素濃度を低い状態に維持して、一次腋花房等の花房の花芽分化を早期に誘導し、一方、分化に差し掛かる時期から緩効性被覆尿素肥料の窒素成分の溶出を始まるようにし、速やかに株や花房の生育を促進する。また、肥料として緩効性被覆尿素肥料を使用することで、尿素が水に溶け出す際に吸熱して、高温期の培地温度を低下させることができ、培地の昇温を抑制することで、花房分化を補助的に促進する。

【0017】
本方法の対象となるイチゴの品種としては、特に限定されるものではないが、例えばさちのか、紅ほっぺ等が挙げられる。

【0018】
ここで、「花芽分化」とは、発芽後、成長し、花になる芽(花芽)を形成することを意味する。本方法では、花芽分化が促進され、花芽が一次腋花房(第2花房)等の花房に成長して、開花結実する。

【0019】
また、本方法で使用するイチゴ苗としては、例えば頂花房(第1花房)が分化した苗が挙げられる。例えば育苗後、苗を夜冷短日処理(例えば、8時間日長、暗期15℃)下に10~30日間供することで、頂花房(第1花房)が分化した苗を準備することができる。

【0020】
本方法では、培地として緩効性被覆尿素肥料を施与した有機質培地を使用する。ここで、「緩効性被覆尿素肥料」とは、成分である尿素含有肥料を樹脂等でコーティングし、肥料の初期溶出を抑制し、一定の期間後、肥料が徐々に溶出し、肥効が持続する肥料を意味する。緩効性被覆尿素肥料としては、例えば肥料の溶出がシグモイド曲線を示す(シグモイド型)尿素肥料が挙げられる。また、具体的な緩効性被覆尿素肥料としては、例えばLPコート、エムコート(以上、販売元:ジェイカムアグリ株式会社)、被覆尿素(住友化学株式会社製)、セラコート(製造元:セントラル化成株式会社、販売元:セントラル合同肥料株式会社)、シグマコート(片倉チッカリン株式会社製)、ユーコート(エムシー・ファーティコム株式会社製)、タキコート(多木化学株式会社製)等が挙げられる。

【0021】
本方法では、好ましくは、初期溶出抑制期間100日程度及び溶出期間100日程度の緩効性被覆尿素肥料と初期溶出抑制期間40~50日程度及び溶出期間50日程度の緩効性被覆尿素肥料と初期溶出抑制期間30日程度及び溶出期間30日程度の緩効性被覆尿素肥料との混合物を、緩効性被覆尿素肥料として使用する。当該混合物を使用することで、定植後、特定の期間の間(例えば、15~25日間)、窒素成分を極力供給しない状態とし、イチゴの体内窒素濃度を低い状態に維持する一方で、分化に差し掛かる時期(例えば、定植後、20~30日後)から緩効性被覆尿素肥料の窒素成分の溶出を始め、持続的に窒素をイチゴに供給することができる。ここで、「初期溶出抑制期間」とは、25℃の水中において、緩効性被覆尿素肥料の成分である尿素が保有含有成分の約10%溶出するまでの目安の期間を意味する。また、「溶出期間」とは、25℃の水中において、緩効性被覆尿素肥料の成分である尿素が、保証含有成分の10%から80%を溶出するまでの目安の期間を意味する。

【0022】
初期溶出抑制期間100日程度及び溶出期間100日程度の緩効性被覆尿素肥料としては、例えばLPコートS200(販売元:ジェイカムアグリ株式会社)、被覆尿素W39-1号、被覆尿素W38.5-1号(以上、住友化学株式会社製)等が挙げられる。

【0023】
初期溶出抑制期間40~50日程度及び溶出期間50日程度の緩効性被覆尿素肥料としては、例えばLPコートSS100(販売元:ジェイカムアグリ株式会社)、セラコートR90、セラコートR110(以上、製造元:セントラル化成株式会社、販売元:セントラル合同肥料株式会社)、シグマコートS200 4M(片倉チッカリン株式会社製)等が挙げられる。

【0024】
初期溶出抑制期間30日程度及び溶出期間30日程度の緩効性被覆尿素肥料としては、例えばLPコートS60(販売元:ジェイカムアグリ株式会社)、セラコートR50、セラコートR70(以上、製造元:セントラル化成株式会社、販売元:セントラル合同肥料株式会社)、シグマコートS200 2.5M(片倉チッカリン株式会社製)等が挙げられる。

【0025】
混合物における初期溶出抑制期間100日程度及び溶出期間100日程度の緩効性被覆尿素肥料(「100/100」)と初期溶出抑制期間40~50日程度及び溶出期間50日程度の緩効性被覆尿素肥料(「50/50」)と初期溶出抑制期間30日程度及び溶出期間30日程度の緩効性被覆尿素肥料(「30/30」)の割合としては、例えば「100/100」:「50/50」:「30/30」=67:20:13や=67:13:20、=53:20:27等が挙げられる。

【0026】
緩効性被覆尿素肥料を施与した培地は、例えば緩効性被覆尿素肥料に含まれる窒素量がイチゴ苗1株当たり3~4gとなるように緩効性被覆尿素肥料を含有する。また、緩効性被覆尿素肥料を施与した培地は、イチゴの正常な生育を支えるために緩効性被覆尿素肥料の他に、例えばリン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を含む単独の肥料や複合肥料を適宜含む必要がある。

【0027】
本方法では、準備したイチゴ苗を、緩効性被覆尿素肥料及びその他の必要成分を含有した肥料を施与した培地に定植させ、生育させる。生育したイチゴは、開花し、さらに結実することで、実を収穫することができる。例えば10~11月の早期出荷作型を対象とし、頂花房(第1花房)が分化した苗を8月下旬から9月上旬に定植させることができる。栽培方法は、いずれの栽培方法であってもよいが、高設栽培方法が好ましい。

【0028】
本方法では、頂花房(第1花房)の果実の成熟及び収穫期間中に、一次腋花房(第2花房)の花芽分化が促進されることで、頂花房の出荷後の無収穫期間(「収穫の中休み」)の期間が軽減される。また、下記の実施例に示すように、頂花房と一次腋花房との果実の収穫量は、慣行栽培で使用されている硝酸系被覆肥料に比べて同程度であり、収量は維持することができる。さらに、本方法では、定植後の肥培管理を、液肥混入装置等を使用することで養液の濃度を制御し、行うことができるが、一方でこれらの高価な機器を使用せず、省力的な基肥での化成肥料施与のみで行うことができる。

【0029】
一方、本発明に係るイチゴ花芽分化促進剤は、緩効性被覆尿素肥料を有効成分として含有するものであり、本方法で使用することができる。当該促進剤における緩効性被覆尿素肥料の種類及び配合量等は、例えば上述の本方法で説明した緩効性被覆尿素肥料の種類及び培地における含有量等に準じたものとすることができる。さらに、本発明に係るイチゴ花芽分化促進剤は、緩効性被覆尿素肥料の他に、例えばリン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を適宜含有することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
〔実施例1〕緩効性被覆尿素肥料を利用したイチゴの花芽分化促進
1.材料及び方法
試験地は、京都府綾部市であった。
高設栽培の基肥として慣行法で使用されている成分溶出がリニア型のロングトータル313-180(販売元:ジェイカムアグリ株式会社;硝酸系被覆肥料、「対照区」)と、シグモイド型の肥効時期及び肥効期間がそれぞれ異なる緩効性被覆尿素肥料のLPコート(販売元:ジェイカムアグリ株式会社)3種類の組み合わせを変えた3試験区を設定した。
【実施例】
【0032】
本実施例では、初期溶出を100日程度抑制し、その後100日程度持続的に溶出する肥料(「100/100」)として、緩効性被覆尿素肥料LPコートS200(販売元:ジェイカムアグリ株式会社)を使用した。また、初期溶出を40~50日程度抑制した後、50日程度溶出する肥料(「50/50」)として、緩効性被覆尿素肥料LPコートSS100(販売元:ジェイカムアグリ株式会社)を使用した。さらに、初期溶出を30日程度抑制した後、30日程度溶出する肥料(「30/30」)として、緩効性被覆尿素肥料LPコートS60(販売元:ジェイカムアグリ株式会社)を使用した。
各肥料をそれぞれ一株当たり窒素量が3gとなるよう培地に混合して、定植前日に施与した。
【実施例】
【0033】
イチゴ品種「さちのか」を用いて、2009年6月25日に採苗して小型ポットに挿し苗した。育苗後30日間の夜冷短日処理(8時間日長、暗期15℃)により花芽分化を確認した苗を、各肥料区の高段栽培装置に22株ずつ定植した。
【実施例】
【0034】
なお、緩効性被覆尿素肥料を使用した区では、定植時に一株当たり1Omgの窒素を大塚A処方培養液(大塚化学株式会社製)で施与した。1O日毎に新生第3葉(第3新葉)の葉柄汁液中硝酸イオン濃度を測定し、また頂花房及び一次腋花房の出蕾日、収穫開始日並びに収量について調査した。
【実施例】
【0035】
2.結果
結果を下記の表1及び図1~3に示す。
【実施例】
【0036】
【表1】
JP0005660571B2_000002t.gif
【実施例】
【0037】
表1は、イチゴ品種「さちのか」において緩効性被覆尿素肥料が連続出蕾性と収量性に及ぼす影響を示す。
【実施例】
【0038】
図1は、緩効性被覆尿素肥料を施肥して栽培したイチゴ品種「さちのか」における第3新葉の葉柄汁液中の硝酸イオン濃度の推移を示すグラフである。
【実施例】
【0039】
図2は、緩効性被覆尿素肥料を使用したことによる培地温度の昇温抑制作用を示すグラフである。
【実施例】
【0040】
図3は、緩効性被覆尿素肥料を施肥して栽培したイチゴ品種「さちのか」における頂花房と一次腋花房の旬ごとの1株当たり収量の推移を示すグラフである。図3において、パネル(A)が従来の緩効性被覆肥料(硝酸系被覆肥料)を施肥した結果であり、パネル(B)が緩効性被覆尿素肥料(「100/100+50/50+30/30」)を施肥した結果である。
【実施例】
【0041】
基肥で与える窒素成分として、初期溶出を抑制する緩効性被覆尿素肥料を使用することで、定植後にある期間窒素成分を極力供給しない状態を作り、イチゴの体内窒素濃度を低い状態に維持することで、一次腋花房の分化を早期に誘導し、分化に差し掛かる時期から被覆尿素肥料の窒素成分の溶出が始まり、速やかに株や花房の生育を促進した。
【実施例】
【0042】
図1に示すように、緩効性被覆尿素肥料のうち、初期溶出を100日程度抑制し、その後100日程度持続的に溶出する肥料(「100/100」)と、初期溶出を40~50日程度抑制した後、50日程度溶出する肥料(「50/50」)と、初期溶出を30日程度抑制した後、30日程度溶出する肥料(「30/30」)とを混合した肥料(「100/100+50/50+30/30」;以下、「3種混合肥料」と称する場合がある)を施肥した区(「100/100+50/50+30/30」区)では、定植後20日程度体内窒素濃度が低く抑えられていた。
【実施例】
【0043】
また、図2に示すように、緩効性被覆尿素肥料を使用することで、尿素が水に溶け出す際に吸熱して、高温期の培地温度を日中最大で2℃程度低下させることができた。このように、培地の昇温を抑制することで、一次腋花房の分化が補助的に促進される。
【実施例】
【0044】
表1に示すように、緩効性被覆尿素肥料のうち、初期溶出を100日程度抑制し、その後100日程度持続的に溶出する肥料(「100/100」)と、初期溶出を40~50日程度抑制した後、50日程度溶出する肥料(「50/50」)と、初期溶出を30日程度抑制した後、30日程度溶出する肥料(「30/30」)を、1株当たりの窒素量を3.0gとしてそれぞれ66.7%、20.0%、13.3%の割合で混合(「100/100+50/50+30/30」区)した場合、従来のイチゴ栽培で普及している緩効性被覆肥料(硝酸系被覆肥料)を利用した施肥法と比較すると、一次腋花房の出蕾が平均17日早く、収穫開始日では約20日早かった。
【実施例】
【0045】
また、緩効性被覆尿素肥料を施肥した場合において、頂花房と一次腋花房との間において、収量は同等以上に確保できており(表1及び図3)、収量性を維持したまま一次腋花房の出蕾・開花を飛躍的に早めることができた。実際に、従来の緩効性被覆肥料(硝酸系被覆肥料)を用いた施肥法(図3(A))では、1月に1ヶ月の中休みが発生しているのに対して、緩効性被覆尿素肥料の3種混合肥料を利用した施肥法(図3(B))では全く収穫できなかった期間は現れなかった。当該結果を平成20年産の東京市場での平均単価に照らして販売額として試算した場合、10a当たり8000株栽培したと想定して頂花房と一次腋花房の収穫時期(11月から4月まで)に限って比較すると、緩効性被覆尿素肥料の3種混合肥料を利用した施肥法によれば、販売額が10a当たり約18万円多くなった。
【実施例】
【0046】
さらに、上述の3種の緩効性被覆尿素肥料のうち、初期溶出を100日程度抑制し、その後100日程度溶出する肥料(「100/100」)をベース(66.7%)として、他の2種をそれぞれ33.3%分混合した肥料(2種混合肥料:「100/100+30/30」及び「100/100+50/50」)では、初期溶出を40~50日程度抑制した後50日程度溶出する肥料を混合した場合(「100/100+50/50」区)、肥効が長期に渡り抑制されすぎ(図1)、生育全体が停滞し、一次腋花房の出蕾が遅れるだけでなく収量の減少も確認された(表1)。一方、初期溶出を30日程度抑制した後、30日程度溶出する肥料を混合した場合(「100/100+30/30」区)、一次腋花房の出蕾は、従来の硝酸系被覆肥料を用いた施肥法に比べ10日程度早くなり収量性も良好であったが、3種の混合肥料を上記の割合で混合した場合よりも、「収穫の中休み」軽減という点では劣っていた(表1)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2