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明細書 :DNAマーカーを用いたブタの親子判定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4982746号 (P4982746)
公開番号 特開2008-092904 (P2008-092904A)
登録日 平成24年5月11日(2012.5.11)
発行日 平成24年7月25日(2012.7.25)
公開日 平成20年4月24日(2008.4.24)
発明の名称または考案の名称 DNAマーカーを用いたブタの親子判定方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 16
全頁数 23
出願番号 特願2006-281014 (P2006-281014)
出願日 平成18年10月16日(2006.10.16)
審査請求日 平成21年8月28日(2009.8.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
【識別番号】591014710
【氏名又は名称】千葉県
発明者または考案者 【氏名】美川 智
【氏名】林 武司
【氏名】粟田 崇
【氏名】山口 倫子
【氏名】神山 佳三
個別代理人の代理人 【識別番号】100102978、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 初志
【識別番号】100128048、【弁理士】、【氏名又は名称】新見 浩一
審査官 【審査官】引地 進
参考文献・文献 特開2004-154024(JP,A)
特開2000-350586(JP,A)
Animal Biotechnology,2001年,Vol.12, No.2,pp.141-144
Animal Genetics,1996年,Vol.27,pp.137-148
Genetics,1994年,Vol.136,pp.231-245
日本畜産学会大会講演要旨,2005年,Vol.105,p.60
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
CA/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(1)~(4)の工程を含む、ブタの親子判定を行う方法。
(1)被検対象となる種ブタおよび子ブタ、それぞれよりDNAを抽出する工程
(2)抽出した種ブタおよび子ブタのそれぞれのDNAにおいて、ACR(配列番号:1)、SW24(配列番号:2)、SW2429(配列番号:3)、SW1550(配列番号:4)、SW1027(配列番号:5)、SW1328(配列番号:6)、SW443(配列番号:7)、S0316(配列番号:8)、SWR1921(配列番号:9)、および、SW1263(配列番号:10)の全てのDNAマーカーについて、それぞれの該DNAマーカー、もしくは、その一部の配列であってマイクロサテライト配列を含む配列からなるDNA断片をそれぞれ増幅する工程
(3)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片を解析し、該解析結果を比較する工程
(4)相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子において、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の解析結果が一致する場合に、親子関係が否定されないと判断する工程
【請求項2】
工程(2)において増幅される塩基配列が、下記(a)~(j)から選択される少なくとも一つの部分配列を含む塩基配列であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列において、359位~544位の配列
(b)配列番号:2に記載の塩基配列において、211位~506位の配列
(c)配列番号:3に記載の塩基配列において、291位~540位の配列
(d)配列番号:4に記載の塩基配列において、255位~447位の配列
(e)配列番号:5に記載の塩基配列において、21位~151位の配列
(f)配列番号:6に記載の塩基配列において、151位~461位の配列
(g)配列番号:7に記載の塩基配列において、359位~478位の配列
(h)配列番号:8に記載の塩基配列において、6位~155位の配列
(i)配列番号:9に記載の塩基配列において、155位~348位の配列
(j)配列番号:10に記載の塩基配列において、269位~534位の配列
【請求項3】
工程(2)において、塩基配列の増幅がPCR法によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PCR法がマルチプレックスPCRであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
配列番号:11~39に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つ以上をプライマーとして用いることを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
【請求項6】
下記(a)~(j)のいずれかに記載のプライマーセットからなる群から選択される、少なくとも一つ以上のプライマーセットを同時に使用することを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
(a)配列番号:11および12に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(b)配列番号:15および16に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(c)配列番号:19および20に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(d)配列番号:21および22に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(e)配列番号:23および24に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(f)配列番号:27および28に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(g)配列番号:29および30に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(h)配列番号:32および33に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(i)配列番号:34および35に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(j)配列番号:38および39に記載の塩基配列からなるプライマーセット
【請求項7】
プライマーが蛍光修飾されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の塩基配列を決定する工程
(ii)(i)により決定したDNA断片の塩基配列を比較する工程
【請求項9】
工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片をゲル上で分離し、その長さを決定する工程
(ii)(i)により決定したDNA断片の長さを比較する工程
【請求項10】
工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片において、マイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数を決定する工程
(ii)(i)により決定したマイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数を比較する工程
【請求項11】
種ブタおよび子ブタの親子関係が、種雄ブタと子ブタとの間の親子関係であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
種ブタおよび子ブタの親子関係が、種雄ブタ、種雌ブタおよび子ブタの三者間の親子関係であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
種ブタが、デュロック(D)種、ランドレース(L)種、大ヨークシャー(W)種、LW交雑種(ランドレース種と大ヨークシャー種の交雑種)のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
種雄ブタがデュロック種、種雌ブタがLW交雑種であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
下記(a)~(j)の全てのプライマーセットを含むブタの親子判定を行なうためのキット。
(a)配列番号:11および12に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(b)配列番号:15および16に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(c)配列番号:19および20に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(d)配列番号:21および22に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(e)配列番号:23および24に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(f)配列番号:27および28に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(g)配列番号:29および30に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(h)配列番号:32および33に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(i)配列番号:34および35に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(j)配列番号:38および39に記載の塩基配列からなるプライマーセット
【請求項16】
前記プライマーセットを同時に使用することによって、複数のDNAマーカーを検出することを特徴とする、請求項15に記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロサテライト配列を含むDNAマーカーを検出することを特徴とする、ブタの親子判定を行う方法に関する。
さらに詳細には、被検対象となる種ブタおよび子ブタ、それぞれよりDNAを抽出する工程、抽出した種ブタおよび子ブタのそれぞれのDNAから、マイクロサテライト配列を含む10個のDNAマーカーに相当する配列の少なくとも一つを増幅する工程、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の塩基配列、断片長、該DNA断片に含まれる対立遺伝子の種類および数を比較することにより、被検対象となる種ブタおよび子ブタの親子関係に矛盾があるか否かを判定する工程を含む、ブタの親子判定を行う方法に関する。
また、本発明はブタの親子判定を行うためのプライマー、キットに関する。
【背景技術】
【0002】
BSE問題や食品偽装問題を契機に消費者の食品の安全性に対する関心の高まりから、農畜産物のトレーサビリティーシステムが注目されている。ウシについては、耳標による個体識別の義務付けが確立され、また国内で生産されたすべての個体のDNAを採取できる体制にあり、DNAを用いた個体識別が利用可能な状況にある。ブタについてはウシよりも遅れてはいるが、トレーサビリティーシステムへの社会的な関心は高く、システムを保証する基盤としてDNAを利用した判定技術の開発と普及が要望されている。しかしながらブタにおいては飼養頭数が多く、1頭あたりの単価が安いことからウシのような個体識別はコスト面から実用的でない。国内では主に大ヨークシャー(W)種とランドレース(L)種の交雑種を種雌ブタとし、デュロック(D)種を種雄ブタとしたLWD三元交雑種である肉ブタが生産されそのブタ肉が流通している。日本では約1600万頭の肉ブタが生産されているがその半数以上が約3万8千頭のデュロック(D)種種雄ブタから生産されている。肉ブタ生産のための種雌ブタは約90万頭が飼養され、約3~4年で更新されるのに対し、種雄ブタは約5~6年間使われることからも、父子検定がブタのトレーサビリティーシステムには最も有効である。
【0003】
FAO(国連食糧農業機関)はブタ、ウシ、鶏、羊などの家畜の遺伝的多様性を分析するためのマイクロサテライトマーカー(ブタでは27個)をリストとして提唱しており、最も一般的に用いられている(非特許文献1)。しかしながらこれらは国内で生産に用いられていない品種やアジア在来ブタなどのアリルも含めて選定されているので日本国内での肉ブタのトレーサビリティーシステムにそのまま用いることは有効ではない。またNechtelbergerら(非特許文献2)はランダムサンプルの解析より、L種およびW種においては父母子の三者により99.97%以上、父子の二者により99.18%以上の効率で親子判定ができるとする10個のマイクロサテライトマーカーを報告しているが、日本国内で飼養されているD種を種雄ブタとして生産されたLWD三元交雑ブタでの父子検定の実証試験を行った結果96.99%の効率であり、また特定の単一農場において血縁が認められるサンプルを用いて解析すると効率はさらに低下し89.10%となり、実用レベルには至らなかった。その原因は種雄ブタとして利用されているD種と、L種およびW種との遺伝的差異、また日本国内に導入された個体の遺伝的背景によるものと考えられる。日本国内でブタの親子判定にマイクロサテライトマーカーを使用した報告は数例あるが、いずれも供試個体数が少なく、限定した家系内での調査である(非特許文献3、4)。また島貫ら(非特許文献5)によってブタの個体識別および親子判定のための14個のマイクロサテライトマーカーからなるセットが報告されており、親子判定の効率はランダムサンプリングから父子により99.64%と計算されているが、実証試験に関するデータの報告はまだ無い。また一般にマイクロサテライトマーカーには解析に再現性が保証されないものも含まれており、解析の確からしさによる視点でマーカーを選抜する必要がある。
【0004】
これまでに他の動物種において個体識別や親子判定を目的としたマーカーセットとその父権否定確率についていくつかの報告があるが(非特許文献6~10)、いずれもマーカーは20個前後である。しかしながら流通するブタ肉のトレーサビリティーシステムにおいて20個のマーカーを解析するにはコストの面で問題があり、多様性の大きいマーカーを検索することで解析マーカー数を少なくする必要がある。
【0005】
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。

【非特許文献1】Secondary Guidelines for Development of National Farm Animal Genetic Resources Management Plans. Measurement of Domestic Animal Diversity (MoDAD): Recommended Microsatellite Markers. P19-24 Food and Agriculture Organisation of the United Nations (FAO)
【非特許文献2】Nechtelberger D, et al., 2001. Anim Biotechnol. 12:141-144.
【非特許文献3】吉岡豪ら、2000、食肉に関する助成研究調査成果報告書、18:162-167
【非特許文献4】松本尚子ら、2001、群馬畜試研究報告、8:36-42
【非特許文献5】島貫 伸一ら、2005、日本畜産学会第105回大会講演要旨集、p60
【非特許文献6】DeNise S, et al., 2004. Anim. Genet., 35:14-17
【非特許文献7】Ichikawa Y, et al., 2001. J.Vet.Med. Sci., 63:1209-1213
【非特許文献8】Sherman GB, et al., 2004. Anim. Genet., 35:220-226
【非特許文献9】Tozaki T, et al., 2001. J.Vet.Med. Sci., 63(11):1191-1197
【非特許文献10】Luikart G, et al., 1999. Anim. Genet., 30:431-438
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイクロサテライト配列を含むDNAマーカーを検出することを特徴とする、ブタの親子判定を行う方法を提供することにある。
【0007】
さらに詳細には、被検対象となる種ブタおよび子ブタ、それぞれよりDNAを抽出する工程、抽出した種ブタおよび子ブタのそれぞれのDNAから、10個のマイクロサテライト配列を含むDNAマーカーの少なくとも一つに相当するDNA断片を増幅する工程、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の塩基配列、断片長、該DNA断片に含まれる対立遺伝子の種類および数を比較することにより、被検対象となる種ブタおよび子ブタが親子であることに矛盾するか否かを判定する工程を含む、ブタの親子判定を行う方法の提供を課題とする。
さらに、ブタの親子判定を行うためのプライマー、キットの提供についても課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、国内で主に流通するブタ肉を想定し、デュロック(D)種が種雄ブタとして用いられた場合に、より効率的に父子検定ができるように、デュロック(D)種、大ヨークシャー(W)種、およびランドレース(L)種の多型性を指標として、ブタの父子検定を目的としたマイクロサテライトマーカーの選定を行った。また親子サンプルを用いてマーカーの非特異的増幅、また増幅および伝達が不明瞭なアリルを評価し、アリルの判定がコンピューターソフトにおいて自動で行え、人的な誤判定が無く、精度が向上するようにマーカーを選定した。
【0009】
さらにマイクロサテライトマーカーについては、蛍光標識したプライマーを用いることで複数のマーカーの解析を同時に行う技術が開発されている。そこで本発明においては3種類の蛍光標識を用い、さらに増幅断片長の違いを利用することで、複数のマーカーを同時に解析した。複数のマーカーを1チューブ内でPCR反応により増幅するために、プライマーの再設計、またプライマーの混合比の調整を行った。
【0010】
即ち、本発明者らは、一般的には99%以上、単一農場においても98%以上の確率で偽父を検出できる、ブタの親子判定のための10個のマイクロサテライトマーカーを選定することに成功し、これにより本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、より具体的には以下の〔1〕~〔23〕を提供するものである。
〔1〕 以下の(1)~(4)の工程を含む、ブタの親子判定を行う方法。
(1)被検対象となる種ブタおよび子ブタ、それぞれよりDNAを抽出する工程
(2)抽出した種ブタおよび子ブタのそれぞれのDNAにおいて、ACR(配列番号:1)、SW24(配列番号:2)、SW2429(配列番号:3)、SW1550(配列番号:4)、SW1027(配列番号:5)、SW1328(配列番号:6)、SW443(配列番号:7)、S0316(配列番号:8)、SWR1921(配列番号:9)、SW1263(配列番号:10)からなる群から選択される、少なくとも一つ以上のDNAマーカーに相当するDNA断片を増幅する工程
(3)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片を解析し、該解析結果を比較する工程
(4)相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子において、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の解析結果が一致する場合に、親子関係が否定されないと判断する工程
〔2〕 DNAマーカーに相当するDNA断片が、マイクロサテライト配列を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔3〕 工程(2)において増幅される塩基配列が、下記(a)~(j)から選択される少なくとも一つの部分配列に相当する塩基配列であることを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列において、359位~544位の配列
(b)配列番号:2に記載の塩基配列において、211位~506位の配列
(c)配列番号:3に記載の塩基配列において、291位~540位の配列
(d)配列番号:4に記載の塩基配列において、255位~447位の配列
(e)配列番号:5に記載の塩基配列において、21位~151位の配列
(f)配列番号:6に記載の塩基配列において、151位~461位の配列
(g)配列番号:7に記載の塩基配列において、359位~478位の配列
(h)配列番号:8に記載の塩基配列において、6位~155位の配列
(i)配列番号:9に記載の塩基配列において、155位~348位の配列
(j)配列番号:10に記載の塩基配列において、269位~534位の配列
〔4〕 工程(2)において、塩基配列の増幅がPCR法によって行われることを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔5〕 PCR法がマルチプレックスPCRであることを特徴とする、〔4〕に記載の方法。
〔6〕 配列番号:1~10に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを、少なくとも一つ以上プライマーとして用いることを特徴とする、〔4〕または〔5〕に記載の方法。
〔7〕 配列番号:11~39に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つ以上をプライマーとして用いることを特徴とする、〔4〕または〔5〕に記載の方法。
〔8〕 下記(a)~(j)のいずれかに記載のプライマーセットからなる群から選択される、少なくとも一つ以上のプライマーセットを同時に使用することを特徴とする、〔4〕または〔5〕に記載の方法。
(a)配列番号:11および12に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(b)配列番号:15および16に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(c)配列番号:19および20に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(d)配列番号:21および22に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(e)配列番号:23および24に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(f)配列番号:27および28に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(g)配列番号:29および30に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(h)配列番号:32および33に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(i)配列番号:34および35に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(j)配列番号:38および39に記載の塩基配列からなるプライマーセット
〔9〕 プライマーが蛍光修飾されていることを特徴とする、〔6〕~〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕 工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の塩基配列を決定する工程
(ii)(i)により決定したDNA断片の塩基配列を比較する工程
〔11〕 工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片をゲル上で分離し、その長さを決定する工程
(ii)(i)により決定したDNA断片の長さを比較する工程
〔12〕 工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片において、マイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数を決定する工程
(ii)(i)により決定したマイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数を比較する工程
〔13〕 配列番号:1~10に記載のDNAマーカーのうち、少なくとも6個以上のDNAマーカーに相当するDNA断片を解析することを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔14〕 種ブタおよび子ブタの親子関係が、種雄ブタと子ブタとの間の親子関係であることを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔15〕 種ブタおよび子ブタの親子関係が、種雄ブタ、種雌ブタおよび子ブタの三者間の親子関係であることを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔16〕 種ブタが、デュロック(D)種、ランドレース(L)種、大ヨークシャー(W)種、LW交雑種(ランドレース種と大ヨークシャー種の交雑種)のいずれかであることを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔17〕 種雄ブタがデュロック種、種雌ブタがLW交雑種であることを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔18〕 配列番号:1~10のいずれかに記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドからなる、ブタの親子を判定するためのプライマー。
〔19〕 配列番号:15、16、19、20、27、28、33、38、39のいずれかに記載の塩基配列からなる、〔18〕に記載のプライマー。
〔20〕蛍光修飾されていることを特徴とする、〔18〕または〔19〕に記載のプライマー。
〔21〕 配列番号:1~10に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドからなるプライマーを少なくとも一つ以上含む、ブタの親子判定を行なうためのキット。
〔22〕 下記(a)~(j)のいずれかに記載のプライマーセットからなる群から選択される、少なくとも一つ以上のプライマーセットを含む〔21〕記載のキット。
(a)配列番号:11および12に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(b)配列番号:15および16に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(c)配列番号:19および20に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(d)配列番号:21および22に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(e)配列番号:23および24に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(f)配列番号:27および28に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(g)配列番号:29および30に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(h)配列番号:32および33に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(i)配列番号:34および35に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(j)配列番号:38および39に記載の塩基配列からなるプライマーセット
〔23〕 少なくとも一つ以上のプライマーセットを同時に使用することによって、複数のDNAマーカーを検出することを特徴とする、〔22〕に記載のキット。
【発明の効果】
【0012】
本発明の、マイクロサテライト配列を含むDNAマーカーを検出することを特徴とするブタの親子判定を行う方法により、従来のマイクロサテライトマーカーセットよりも少ないマーカー数で高確率のブタの親子判定ができることが実証された。特に、日本国内で飼養されているLDW三元交雑ブタにおいては、一般的に99%以上、単一農場においても98%以上の確率で偽父子間において父子関係がないことを判定できる。
【0013】
本発明により、流通するブタ肉のトレーサビリティーシステムにおいて、低いコストで親子判定を行なうことができる。肉ブタ生産のための種雄ブタは種雌ブタよりも使用期間が長いことから、高確率の父子検定が可能な本発明の方法は、トレーサビリティーシステムにおいて有用である。さらに、現在の生産履歴をとるトレーサビリティーシステムにおいて、本発明の方法を確認的に使用することもできる。
【0014】
〔発明の実施の形態〕
本発明者らは、一般的には99%以上、単一農場においても98%以上の確率で偽父を検出できる、ブタの親子を判定するための10個のマイクロサテライトマーカーを選定した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0015】
本発明は、以下の(1)~(4)の工程を含む、ブタの親子判定を行う方法を提供する。
(1)被検対象となる種ブタおよび子ブタ、それぞれよりDNAを抽出する工程
(2)抽出した種ブタおよび子ブタのそれぞれのDNAにおいて、少なくとも一つ以上のDNAマーカーに相当するDNA断片を増幅する工程
(3)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片を解析し、該解析結果を比較する工程
(4)相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子において、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の解析結果が一致する場合に、親子関係が否定されないと判断する工程
【0016】
本発明において、ブタの親子判定を行うとは、被検対象となる種ブタと子ブタ間の親子関係を判定することをいう。具体的には、本発明の方法により、被検対象となる種ブタと子ブタ間のDNAマーカーに相当するDNA断片の解析結果を比較した場合に、両者の解析結果において相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子に由来するDNA断片が一致する場合には種ブタと子ブタ間の親子関係が否定されないということができる。また、本発明の方法により、被検対象となる種ブタと子ブタ間のDNAマーカーに相当するDNA断片の解析結果を比較した場合に、両者に共有される遺伝子が無いと判断できる場合に種ブタと子ブタ間の親子関係が否定されるということもできる。
【0017】
被検対象となる種ブタと子ブタ間の親子関係は、種雄ブタと子ブタまたは種雌ブタと子ブタとの間の親子関係であってもよいし、種雄ブタ、種雌ブタおよび子ブタの三者間の親子関係であってもよい。
【0018】
本発明における親子判定は、種ブタがデュロック(D)種、ランドレース(L)種、大ヨークシャー(W)種、LW交雑種(ランドレース種と大ヨークシャー種の交雑種)などの品種の場合が挙げられ、最も好ましくは、種雄ブタがデュロック種、種雌ブタがLW交雑種である場合が挙げらる。
【0019】
本発明の方法は、必ずしもブタ個体の親子関係を判定する方法に限定されず、例えば、食肉もしくは精肉加工品の種ブタを判定する方法もまた、本発明の判定方法に含まれる。
【0020】
本発明の方法は、以下の(i)~(iv)の工程によって選定されたDNAマーカーを用いることができる。
選定の対象となるDNAマーカーは、公知のDNAマーカーを用いることができ、その情報は例えば、公知のデータベース、Animal Genome Database (http://animal.dna.affrc.go.jp/agp/database.html) から得ることができる。
【0021】
(i)種雄ブタ集団、種雌ブタ集団において、選定の対象とされるDNAマーカーの部分配列に含まれる、対立遺伝子の数または頻度を決定した後、下記式(1)によって各DNAマーカーにおける父母子三者間における父権否定確率Q(A)を求める工程
【0022】
【数1】
JP0004982746B2_000002t.gif
(各DNAマーカーにおける複数のアリルをAu、Av等で表し、母ブタ集団におけるそれらの頻度をpu、pv等で、雄ブタ集団におけるそれらの頻度をqu、qv等で表す。mはアリル数を表す)
【0023】
(ii)選定の対象とされるDNAマーカーの部分配列に含まれる、対立遺伝子の数または頻度を決定した後、下記式(2)によって各DNAマーカーにおける母親の情報がない場合の父権否定確率Q(B)を求める工程
【0024】
【数2】
JP0004982746B2_000003t.gif
(各DNAマーカーにおける複数のアリルをAu、Av等で表し、母ブタ集団におけるそれらの頻度をpu、pv等で、雄ブタ集団におけるそれらの頻度をqu、qv等で表す。mはアリル数を表す)
【0025】
(iii)各DNAマーカーにおける父権否定確率Q(A)およびQ(B)から、総合父権否定確率Qを求める工程
Q=1-(1- Q1)(1- Q2) (1- Q3)・・・(1- Qn) ・・・(3)
(nは検出したDNAマーカーの数を示す)
【0026】
(iv)Qが一定以上の確立であった場合に、該マーカーが効率的に父子による親子判定ができると判断する工程
工程(iv)において総合父権否定確率Qは、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上を挙げることができる。
【0027】
本発明の方法に用いるDNAマーカーに相当するDNA断片としては、具体的にはACR(配列番号:1)、SW24(配列番号:2)、SW2429(配列番号:3)、SW1550(配列番号:4)、SW1027(配列番号:5)、SW1328(配列番号:6)、SW443(配列番号:7)、S0316(配列番号:8)、SWR1921(配列番号:9)、SW1263(配列番号:10)を挙げることができる。
【0028】
本発明のDNAマーカーに相当するDNA断片は、マイクロサテライト配列を含むことを特徴とする。マイクロサテライト配列とは、ゲノム上に存在する短い単位配列の繰り返しからなる繰り返し配列をいう。特定のゲノム上の位置にあるマイクロサテライト配列は個体により繰り返し数が異なる場合があり、多型が存在する。本発明の「マイクロサテライト配列」としては、例えば、以下の(a)~(j)のいずれかに記載の配列に相当するマイクロサテライト配列を挙げることができる。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列において、359位~544位の配列
(b)配列番号:2に記載の塩基配列において、211位~506位の配列
(c)配列番号:3に記載の塩基配列において、291位~540位の配列
(d)配列番号:4に記載の塩基配列において、255位~447位の配列
(e)配列番号:5に記載の塩基配列において、21位~151位の配列
(f)配列番号:6に記載の塩基配列において、151位~461位の配列
(g)配列番号:7に記載の塩基配列において、359位~478位の配列
(h)配列番号:8に記載の塩基配列において、6位~155位の配列
(i)配列番号:9に記載の塩基配列において、155位~348位の配列
(j)配列番号:10に記載の塩基配列において、269位~534位の配列
【0029】
本発明のマイクロサテライト配列は、繰り返し配列の種類および単位数は個体によって異なるものであり、必ずしも上記に例示した配列のみに限定されるものではない。
【0030】
本発明における親子判定は、上記DNAマーカーのうち、少なくとも6個以上、好ましくは7~9個以上、最も好ましくは10個のDNAマーカーに相当するDNA断片を解析することにより行われることが好ましい。本発明のDNAマーカーを6個以上用いることにより、偽親子の親子関係が否定される確立は98%以上となる。
【0031】
本発明の方法は、(1)被検対象となる種ブタおよび子ブタ、それぞれよりDNAを抽出する工程、を含む。DNAの抽出は、当業者においては公知の方法によって行なうことができる。まず、ブタからDNA試料を調製する。DNA試料の調製は、例えば、ブタ各種組織、血液、精液サンプルより行うことができるが、これらに特に限定されない。これらのサンプルは市販のものを用いてもよいし、自ら採取して得てもよい。ブタからのDNAの抽出は、当業者においては一般的に公知の方法、例えば、フェノール・クロロホルム法または市販のゲノムDNA抽出キットを用いて行うことができる。
【0032】
本発明の方法においては次いで、(2)抽出した種ブタおよび子ブタのそれぞれのDNAにおいて、少なくとも一つ以上のDNAマーカーに相当するDNA断片を増幅する工程、を行なう。該DNAの増幅は、例えば、本発明のDNAマーカーに相当するDNA断片にハイブリダイズするプライマーを用いて、DNA試料を鋳型としたPCRを実施することにより行うことが可能である。PCRは、当業者においては、その反応条件等について実験または経験によって最適な条件を適宜選択して実施することが可能である。通常、PCRは、反応液および耐熱性ポリメラーゼを含む市販の試薬キット、および市販のPCR装置等を利用して、簡便に実施することができる。PCRにより増幅するDNA領域としては、DNAマーカーに相当する部分を含むDNA領域であれば特に制限はないが、配列番号:1~10のいずれかに記載の塩基配列における上記マイクロサテライト配列を含むDNA領域であることが好ましい。
【0033】
本発明のPCRに用いるプライマーとしては、配列番号:1~10に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであれば特に限定されない。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、サムブルックら,Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,第2版1989に記載の条件)において、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。
【0034】
ハイブリダイゼーションの条件は、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、5×SSC及び0.1%SDSの条件である。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0035】
本発明において使用されるマイクロサテライト配列を増幅し得るプライマーオリゴヌクレオチドの配列は、当業者においては、鋳型となるDNAの配列情報に基づいて、適宜、設計することが可能である。好ましくは、配列番号:1から10のいずれかに記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖であるDNAに相補的な連続する15塩基を含むオリゴヌクレオチドである。PCRにおいて、上記マイクロサテライト配列を含むDNA領域を増幅する場合には、通常、上記マイクロサテライト配列を挟み込むように設定されたオリゴヌクレオチドのペアが用いられる。配列番号:11~39に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、最も好ましい本発明のオリゴヌクレオチドの例である。またこれらのプライマーは、下記の例のように特定のマイクロサテライト配列を増幅するためのプライマーセットとして用いることができる。
ACR増幅用プライマーセット
配列番号:11(フォワードプライマー)、配列番号:12(リバースプライマー)
SW24増幅用プライマーセット
配列番号:15(フォワードプライマー)、配列番号:16(リバースプライマー)
SW2429増幅用プライマーセット
配列番号:19(フォワードプライマー)、配列番号:20(リバースプライマー)
SW1550増幅用プライマーセット
配列番号:21(フォワードプライマー)、配列番号:22(リバースプライマー)
SW1027増幅用プライマーセット
配列番号:23(フォワードプライマー)、配列番号:24(リバースプライマー)
SW1328増幅用プライマーセット
配列番号:27(フォワードプライマー)、配列番号:28(リバースプライマー)
SW443増幅用プライマーセット
配列番号:29(フォワードプライマー)、配列番号:30(リバースプライマー)
S0316増幅用プライマーセット
配列番号:32(フォワードプライマー)、配列番号:33(リバースプライマー)
SWR1921増幅用プライマーセット
配列番号:34(フォワードプライマー)、配列番号:35(リバースプライマー)
SW1263増幅用プライマーセット
配列番号:38(フォワードプライマー)、配列番号:39(リバースプライマー)
【0036】
本発明のオリゴヌクレオチドは、上記マイクロサテライト配列を含むDNA領域を増幅しうる限り、該DNA領域に完全に相補的である必要はない。例えば、5'末端側に数ベース程度の他の塩基への置換変異を有する、もしくは5'末端側に任意の塩基が付加されたオリゴヌクレオチドであっても、本発明のオリゴヌクレオチドとして利用することが可能であるものと考えられる。
【0037】
本発明の上記オリゴヌクレオチドは、当業者においては、通常、市販されたオリゴヌクレオチド合成機もしくは合成オリゴヌクレオチド受託サービスを利用して容易に取得することが可能である。
【0038】
本発明のプライマーは、さらに修飾することができる。たとえば、蛍光物質や、ビオチンまたはジゴキシンのような結合親和性物質で標識したプライマーも本発明の方法に使用することができる。
【0039】
本発明のDNAマーカーに相当するDNA断片の増幅には、マルチプレックスPCRを用いることもできる。マルチプレックスPCRによって、上記プライマーセットを二以上用いて、同時に複数のDNAマーカーに相当するDNA断片を増幅することができる。
【0040】
本発明においては次いで、(3)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片を解析し、該解析結果を比較する工程を行なう。増幅されたDNA断片の解析は、当業者においては種々の方法によって行なうことができる。
【0041】
例えば、増幅されたDNA断片の塩基配列を決定することにより、当該DNA断片を解析することができる。増幅したDNA断片の塩基配列の決定は、当業者においては、DNAシークエンサー等を用いて容易に実施することができる。また、塩基配列の決定により、増幅されたDNA断片において、マイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数を決定することもできる。
【0042】
マイクロサテライト配列の検出においては、上記のように塩基配列の決定により直接的に検出する方法以外に、塩基配列の決定なしに間接的に検出する方法を利用することもできる。間接的な方法としては、代表的には、SSLP(Simple Sequence Length Polymorphism)法が挙げられる(Nucleic Acids Res. 1989; 17: 6463、Genomics. 1994; 19: 137)。本方法は、ゲノム中に存在するマイクロサテライトの長さ(構成する塩基数)がブタのタイプによって相違することを利用して、マイクロサテライトを挟むようなプライマーを設定してPCRを行い、増幅されたDNA断片の長さの差を検出する方法である。
【0043】
本方法においては、まず、ブタからDNA試料を調製し、次いで、本発明のマイクロサテライト部位を含むDNAにハイブリダイズするプライマーを用いて、DNA試料を鋳型としたPCRを実施する。次いで、PCRにより増幅されたDNAをゲル上で分離し、分離されたDNAの鎖長を解析する。ゲル上で分離されたDNAの鎖長の差は、DNA断片を電気泳動した後のバンドパターンの違いとして検出することができる。PCRに用いるプライマーの片方を蛍光ラベルしておけば、ソフトウェア(例えば、GeneScanソフトウェア、Genotyperソフトウェア(Applied Biosystems))を用いて、電気泳動後のDNA断片の解析を行うことができる。
【0044】
上記DNA断片の解析を行なった後、種ブタおよび子ブタの該解析結果を比較する。増幅されたDNA断片の解析結果とは、具体的には被検対象となる種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片において、決定された塩基配列、決定されたマイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数、またはDNA断片の長さ等をいう。
【0045】
本発明は、次いで(4)相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子において、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の解析結果が一致する場合に、親子関係が否定されないと判断する工程を含む。言い換えれば、相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子において、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の解析結果が一致しない場合には、該種ブタおよび子ブタは親子ではないと判定される。
【0046】
本発明は、配列番号:1~10のいずれかに記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドからなる、ブタの親子を判定するためのプライマーを提供する。
【0047】
本発明のプライマーの具体的な例としては、上記PCRに使用されるプライマーまたはプライマーセットが挙げられる。本発明のプライマーとして好ましい例としては、配列番号:11~39に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号:11、12、15、16、19、20、21、22、23,24、27、28、29、30、32、33、34、35、38、39に記載のオリゴヌクレオチド、最も好ましくは配列番号:15、16、19、20、27、28、33、38、39に記載のオリゴヌクレオチドを挙げることができる。
【0048】
また、本発明は上記プライマーを少なくとも一つ以上含む、ブタの親子判定を行なうためのキットを提供する。本発明のプライマーをキットとして用いる場合には、試薬として上記プライマーオリゴヌクレオチドの他に、Tris-HCl、EDTA、KCl、MgCl2、ゼラチン、Tween-20、NP-40、ヌクレオチド類 (dATP, dCTP, dGTP, dTTP)、ヌクレオチド誘導体(7 deaza-dGTP等)等を含んでいてもよい。
【0049】
さらに、本発明は上記プライマーセットを少なくとも一つ以上含むキットを提供することができる。当該プライマーセットを含むキットは、プライマーを同時に使用することによって、複数のDNAマーカーを検出する際に使用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0051】
供試動物とDNA調製
千葉県内の肉ブタ生産者が飼養する種ブタを中心にデュロック(D)種124頭、およびLW交雑種(ランドレース(L)種と大ヨークシャー(W)種の交雑種)348頭より血液、精液、耳片を採取し、フェノール法によりDNAの抽出を行った。その際、広く遺伝的多様性を検索するために血縁が無いようにサンプリングした。
選定したマーカーの有効性を評価するためのサンプルとして交配記録を持つ1戸の生産農家から父子の確認ができる親子についてD種種雄ブタ18頭、LWD三元交雑種35頭について毛根を採取し、フェノール法によりDNAを抽出した。また、種雄ブタのDNAを採取した生産者とは異なる生産農家3戸から、先のD種種雄ブタ18頭と血縁がないことを確認したLWD三元交雑種62頭分の毛根を採取しDNAを抽出した。なお、これらLWD三元交雑種62頭については、母ブタは全て違う個体である。
【0052】
〔実施例1〕マーカー選定
1) 一次スクリーニング
多様なマイクロサテライトマーカーを基に、一次スクリーニングを行った。まず、D種16頭、LW交雑種16頭のDNAを無作為に選抜し、それぞれを混合したDNAを用いて725個のマイクロサテライトマーカーについて解析した。これらのマイクロサテライトマーカーはRohrerらによって開発されたものである(Rohrer GA, et al., 1996. Genome Research, 6:371-391.)。PCR産物はABI3100シークエンサーで電気泳動し、GeneScanソフトウェアおよびGenotyperソフトウェアにより遺伝子型の解析を行った(以後も解析は同じ手法)。
【0053】
上記725個のマーカーについてアリル数を調査した結果、メジャーなアリルの数が全体で5個以上かつD種で4個以上のものは71個であった。この71個のうちPCR反応条件が同一であるものから、染色体上の位置を考慮して30マーカーを選定した。これら30マーカーは、1、2、4、14番染色体上のそれぞれ3マーカー、3、5、6、8、13番上のそれぞれ2マーカー、7、9、10、12、15、16、17、18番上のそれぞれ1マーカーである(表1)。この時点でFAOが推奨するマイクロサテライトマーカーとの重複は3マーカーであった。
【0054】
【表1】
JP0004982746B2_000004t.gif
多型情報、父権否定確率はランダムサンプル(D種124頭、LW種348頭)からの予測値
1 三次スクリーニングに用いた16マーカー
2 最終の10マーカー
3 FAOにより推奨されているマイクロサテライトマーカー
【0055】
2) 二次スクリーニング
30個のマーカーについてD種124頭、LW交雑種348頭の遺伝子型を個別のDNAを用いて解析した。個々のマーカーについてアリル数、アリル頻度からヘテロ接合率および父権否定確率を計算した。通常、父権否定確率は、父親、母親となる個体が同じメンデル集団(その集団内では交配が無作為に行われるような集団)に属することを仮定して計算されるが、ここでは肉ブタのトレーサビリティーへの応用を考慮して父権否定確率はD種を雄として、LW交雑種が雌として用いられた場合の値を算出した。各マーカーにおける複数のアリルをAu、Av等で表し、母ブタ集団におけるそれらの頻度をpu、pv等で、雄ブタ集団におけるそれらの頻度をqu、qv等で表すと、アリル数をmとした場合、母ブタと子ブタ(肉ブタ)の組み合わせに対して、その子ブタの父ブタからは排除される父権否定確率Q(A)は
【0056】
【数3】
JP0004982746B2_000005t.gif
と推定される。また母親の情報がないときの父権否定確率Q(B)は
【0057】
【数4】
JP0004982746B2_000006t.gif
と推定される。複数のマーカーを用いた父子判定の場合には、調べた雄個体について少なくとも一つのマーカーで偽の父親として排除されれば、その雄個体は父親候補から除外できる。したがって、複数のマーカー、例えばn個のマーカーを用いた父子判定における総合父権否定確率Qは、個々のマーカーの父権否定確率Q1、Q2、Q3、・・・、Qnから
Q=1-(1- Q1)(1- Q2) (1- Q3)・・・(1- Qn) ・・・(3)
と計算される。このように各マーカーについて父権否定確率を算出し、その値が高くまた解析が比較的容易な16個について次の親子サンプルを用いた解析を行った。
【0058】
具体的には、一次スクリーニングにより選定した30マーカーについてD種124頭、LW交雑種348頭の個々についてタイピングを行い、そのアリル数、アリル頻度から父権否定確率およびヘテロ接合率について計算した(表1)。その結果、各マーカーの父権否定確率は父母子(母親の情報を導入した場合)において0.688から0.206、父子(母親の情報を導入しない場合)において0.567から0.178という結果となった。このときD種を雄親とせず全体で父権否定確率を求めると、父母子において0.718から0.330と高くなった。また全体では単一マーカーで0.609の値を示すにもかかわらず、D種を雄親とした時に0.242という小さな値となるもの(SW1984)もあった。つまり全体での解析によってマーカーを選定すると、実際よりも効率は高く見積もられ、LWD三元交雑種の親子判定に適さないものが含まれる。よってD種を雄親としてマーカーを選定することが必須である。
【0059】
またマイクロサテライト配列のスリップのため単一バンドにならないものなど遺伝子型判定の難しいマーカーは、誤判定を招く危険性が多く(図1)、また非特異的な増幅は他のマーカーの解析を妨げる。そのため、これらのマーカーを除去し、16マーカーを選定した。
【0060】
3) 三次スクリーニング(親子サンプルによるスクリーニング)
二次スクリーニングで得られた16マーカーを使用して、実際の親子についての判定をD種種雄ブタ18頭とその子であるLWD三元交雑種35頭を用いて行った。これらのマーカーの内、PCR増幅されないアリルの存在等により父子の間で見かけ上のアリルの遺伝に矛盾が見られるマーカー等を除き、また遺伝子型解析ソフト(GeneScanおよびGenotyper)によりほぼ自動で遺伝子型を決定できる10マーカーを選出した。二次スクリーニングの16マーカーおよび最終の10マーカーではFAOが推奨するマイクロサテライトマーカーとの重複はともに1マーカー(SW24)のみであった。これら10マーカーによる総合父権否定確率は父母子において0.9999、父子において0.9977と計算された(表2)。
【0061】
【表2】
JP0004982746B2_000007t.gif
1 D種種雄ブタ18頭とそれらに血縁の無いLWD三元交雑種62頭(他3農場由来)における1116の組合せを用いた父子判定での父権否定確率。
2 D種124頭、LW種348頭を用いた解析からのD種を雄親とした時の推定値。
3 10マーカーの父権否定確率より求めた。父子関係を否定できた実数は1113組で実際の父権否定確率は1113/1116 = 0.9973であった。
【0062】
また表3に親子判定の一例を示す。表中、種豚において下線で示された遺伝子型は父子関係を否定するものである。
【0063】
【表3】
JP0004982746B2_000008t.gif

【0064】
4) 父権否定確率の検証
選定された10個のマーカーを用いて3) 三次スクリーニングで用いたD種種雄ブタ18頭と他3農場で飼養された血縁の無い62頭のLWD三元交雑種のDNAについて解析を行い、親子関係の無い種雄ブタと肉ブタの間で父子関係を否定できる確率を調べ、このサンプルにおける各マーカーの父権否定確率を求めた。またヘテロ個体の割合からこのサンプルにおけるヘテロ接合率を求めた。さらに10マーカーによる総合父権否定確率および実際に否定された確率についても評価した。また単一農家における検証として3)で用いたD種種雄ブタ18頭とLWD三元交雑種35頭より、親子関係に無い595の組合せについても検証した。
【0065】
その結果、LWD三元交雑種62頭×D種種雄ブタ18頭=1116組のうち1113組について父子関係が否定された (1113/1116 = 0.9973)。また個々のマーカーの父権否定確率から計算した父子による総合父権否定確率は0.9986となった。
単一農家に由来する親子関係の無いD種種雄ブタとLWD三元交雑種の595の組合せにおいては586組について否定された(586/595 = 0.9849)。また個々のマーカーの父権否定確率から計算した父子による総合父権否定確率は0.9820となった。
【0066】
〔実施例2〕マーカーのマルチプレックス化
プライマーの再設計には登録されているマイクロサテライトマーカー近傍配列を含むブタのホールゲノムショットガン配列(NCBI, Blast Pig sequencesにより検索 )を利用した。S0316については片方の、SW2429、SW24、SW1263、SW1328については両方のプライマーを再設計した(図2AおよびB)。PCRプライマーの混合比・濃度(表4)、PCR反応条件についても検討した(表5、6)。その際、PCR反応を行ったチューブにおいて10倍希釈になるように水を加え、その1 μlをABI3100シーケンサーによる多型解析に使用した。
【0067】
【表4】
JP0004982746B2_000009t.gif

【0068】
【表5】
JP0004982746B2_000010t.gif

【0069】
【表6】
JP0004982746B2_000011t.gif

【0070】
これらのプライマーを用いたマルチプレックスPCRによる多型解析結果については図3に示した。この結果、PCR反応のための作業量、コストはともに1/10になった。また反応液の混合、希釈の作業が省力化できた。
【0071】
〔実施例3〕 実用性についての検討
(1)ランダムサンプル、特定地域の農場、単一農場における総合父権否定確率
広く遺伝的多様性の維持が期待されるランダムサンプルの解析では総合父権否定確率は父母子において0.9999、父子において0.9977であった。実証に用いた4農場由来のサンプルでは父子において総合父権否定確率は0.9986という値が得られており、ランダムサンプルからの推測値とほぼ等しかった。ランダムサンプルで得られた父権否定確率はサンプルデータからのアリル頻度をもとに各マーカーの独立性や無作為交配などを想定した理論式より算出されている。しかし個々の農場で飼養するブタ群には遺伝的な偏りのためアリル頻度にも差異があり、また複数の種雄ブタに血縁関係が認められる。このような理由から小さな集団では精度が低下することがあると考えられる。単一農場に限った場合、本発明の10マーカーにおいては父子による総合父権否定確率は0.9820という値が得られている。Nechtelbergerらは本発明者らと同数の10個のマーカーを用いて、ランドレース種、大ヨークシャー種において父母子で0.9997および0.9999、父子で0.9918および0.9976の総合父権否定確率を報告している。しかし本発明者らが行った日本国内でのデュロック種を種雄ブタとして生産した肉ブタにおいてのNechtelbergerらの10マーカーによる父子判定では4農場由来のサンプルで0.9699(本発明0.9986)、単一農場由来のサンプルでは0.8910(本発明0.9820)であった。つまり本発明には約20倍、約6倍の精度が認められた(表7)。また検出できなかった偽父の実数は、4農場由来のサンプルで1116の組合せ中35(本発明では3)、および単一農場由来のサンプルで595の組み合わせ中63(本発明では9)であり本発明は約12倍、7倍の精度であった。このように本発明において本発明者らが選抜したマーカーは日本国内で生産されたブタ、特にデュロック種を種雄ブタとした場合の解析に適しており、一般的には99%以上、単一農場においても98%以上の確率で偽父を検出することができ、実用の期待に応えられる。
【0072】
【表7】
JP0004982746B2_000012t.gif
1 父子関係の無いD種種雄豚18頭および他3農場由来LWD三元交雑種62頭の1116の組合せより計算した。本発明に関しては表2を父権否定確率で並び替えたものである。
2 単一農場由来のD種種雄豚18頭およびLWD三元交雑種35頭の中から父子関係に無い595の組合せより計算した。
3 個々のマーカーの父権否定確率より計算した。

【0073】
(2)解析の正確性および簡便性
マイクロサテライトマーカーには非特異的増幅や単一ピークとならないアリルの存在など、単にサンプルを解析しただけではアリルを正確に判断できないものが存在し、再現性に問題があるということも指摘されている。理論的には解析可能であっても実用には適さないものが多いのである。今回は各スクリーニング段階において多型性が大きいこととともに解析が容易で誤判定がおきにくいマーカーを選定している。
またマルチプレックス化のために、PCRプライマーを再設計しており、プライマーの混合比率、PCRの条件においても最適化を行った。これによりPCR反応の作業量、コストをともに1/10にできただけでなく、PCR反応後の作業についてもマーカーを混合する10過程が必要なくなった(図4)。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】マイクロサテライトマーカーの解析の難易度を示す図である。A)、B) は一つのアリルから複数のバンドが生じるマーカーで解析が困難である。血縁のある他の個体の解析からA)、B)の一段目はホモ型、二・三段目はヘテロ型であることがわかっているが、これらは単独では判断しがたい。このような現象はPCR時のマイクロサテライト配列のスリップにより起こる。C)、D)は解析が容易で誤判定の少ないマーカーである。
【図2A】SW24およびSW2429についての再設計したプライマーの位置を示す図である。既存のPCRプライマー(左、下線)と再設計したPCRプライマー(右、ボックス)。
【図2B】SW1328、S0316およびSW1263についての再設計したプライマーの位置を示す図である。既存のPCRプライマー(左、下線)と再設計したPCRプライマー(右、ボックス)。
【図3】10マーカーのマルチプレックスPCRによる多型解析の結果を示す図である。
【図4】従来のPCR解析と10プレックスPCR解析の工程の比較を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
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【図3】
3
【図4】
4