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明細書 :CaMKII阻害ペプチドおよびこれを含有するCaMKII阻害剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5754008号 (P5754008)
公開番号 特開2012-158525 (P2012-158525A)
登録日 平成27年6月5日(2015.6.5)
発行日 平成27年7月22日(2015.7.22)
公開日 平成24年8月23日(2012.8.23)
発明の名称または考案の名称 CaMKII阻害ペプチドおよびこれを含有するCaMKII阻害剤
国際特許分類 C07K   5/037       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  25/16        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  25/08        (2006.01)
A61P   9/04        (2006.01)
A61P  19/10        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI C07K 5/037 ZNA
A61P 43/00 111
A61K 37/02
A61P 25/16
A61P 25/28
A61P 25/08
A61P 9/04
A61P 19/10
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2011-017295 (P2011-017295)
出願日 平成23年1月28日(2011.1.28)
審査請求日 平成26年1月24日(2014.1.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
発明者または考案者 【氏名】西川 喜代孝
【氏名】高橋 美帆
【氏名】西村 浩輝
【氏名】高柳 広
【氏名】尾藤 晴彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】松浦 安紀子
参考文献・文献 国際公開第2006/001542(WO,A1)
Biochemical and Biophysical Research Communications,1995年,212, 3,p.806-812
調査した分野 C07K 5/037
A61K 38/00
A61P 9/04
A61P 19/10
A61P 25/08
A61P 25/16
A61P 25/28
A61P 35/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1~6のうちのいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであることを特徴とするCaMKII阻害ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、配列番号1~6のうちのいずれかのアミノ酸配列を複数有する多価ペプチドであることを特徴とする請求項1のCaMKII阻害ペプチド。
【請求項3】
リジンが3つ結合した以下の分子核部、
【化1】
JP0005754008B2_000006t.gif
を有し、この分子核部の端部の各々の-NHに、直接またはスペーサーを介して、配列番号1~6のうちのいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドが結合した4価ペプチドであることを特徴とする請求項2のCaMKII阻害ペプチド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかのCaMKII阻害ペプチドを含有することを特徴とするCaMKII阻害剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Ca2+/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ(CaMKII)の活性を阻害するペプチドおよびこれを含有するCaMKII阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
Ca2+/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ(Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase; CaMK)は、Ca2+結合性蛋白質であるカルモデュリンにCa2+が結合したCa2+/カルモデュリンによって活性化されるセリン/スレオニンキナーゼの総称である。CaMKには3種のファミリー(CaMKI, CaMKII, CaMKIV)が存在し、各々が生体内で異なった役割を果たしている。なかでもCaMKIIは脳に豊富に存在し、神経伝達物質の合成や分泌、神経伝達の長期増強の誘導など、高次神経機能の制御に重要な役割を果たすことが知られている。その一方で、CaMKIIの異常な活性化がパーキンソン病や認知障害、痙攣などの神経疾患の発症と密接に関連していることが示されている。さらに神経疾患に限らず、心不全の誘発、骨粗鬆症の発症、アポトーシスの誘導阻害を介した発癌促進など、ヒトの様々な疾患発症に関与していることが知られている。
【0003】
そして、CaMKII阻害剤としては、その制御ドメインに存在している自己リン酸化部位の配列に由来するペプチドAIP:Autocamtide 2 Related Inhibitory Peptide、配列番号15:Lys-Lys-Ala-Leu-Arg-Arg-Gln-Glu-Ala-Val-Asp-Ala-Leu(KKALRRQEAVDAL)が知られている(非特許文献1)。また、例えば、特許文献1~3には、CaMKII阻害剤として、前記AIPのアミノ酸配列と類似するアミノ酸配列からなるペプチドが提案されている。
【0004】
一方、近年CaMKIIの構造解析が行われ、その極めてユニークな高次構造が明らかになっている。CaMKIIはアソシエーションドメインとよばれる領域を中心にして12分子が円盤状に会合し、この円盤状の核構造の周りに各々のCaMKIIのキナーゼドメイン(触媒ドメイン)がリング状にパッキングされた状態で配置している。Ca2+非存在下ではこの状態で安定に存在しているが、種々の刺激によって細胞内Ca2+濃度が上昇し、Ca2+が結合したカルモデュリンが供給されるとパッキングがほどけ、12量体の各々のキナーゼが協調的に順次活性化すると考えられている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許2963986号公報
【特許文献2】特表2001-509808号公報
【特許文献3】特表2005-504829号公報
【特許文献4】WO2006/001542号公報
【0006】

【非特許文献1】Biochem Biophys Res Commun. 1995 Jul 26;212(3):806-12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、AIPやその他特許文献1~3のペプチドの場合、アミノ酸配列における各ポジションの重要性、阻害メカニズムに関する詳細な検討が難しく、生体内動態の制御や膜透過性、安定性の向上など、目的に合わせたさまざまな機能付加、機能改善が困難であるという問題がある。この点を克服することができれば、上記の種々の重要疾患に対する優れた治療薬開発が大きく促進されると期待される。
【0008】
一方、本発明者らはこれまでに、多価型の相互作用(クラスター効果)に基づく強い結合を阻害するペプチドを同定する新しい方法、多価型ペプチドライブラリー法を確立している(上記特許文献4)。ペプチドライブラリー法は、同定されるペプチド配列の各位置のアミノ酸に関する相対的な重要度が定量化できるという大きな特徴を有する。
【0009】
そこで、本発明者らは、多価型ペプチドライブラリー法をCaMKIIに対して適用することにより、クラスター化したCaMKIIに対して作用するペプチド配列のスクリーニングが容易になるのではないかとの想定のもと、一連の優れたCaMKII阻害ペプチドの取得を試みた。
【0010】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、AIPとは異なる新規なアミノ酸配列を有するCaMKII阻害ペプチドおよびこれを含有するCaMKII阻害剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のCaMKII阻害ペプチドは、配列番号1~6のうちのいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであることを特徴としている。
【0012】
本発明のCaMKII阻害ペプチドでは、前記ペプチドは、配列番号1~6のうちのいずれかのアミノ酸配列を複数有する多価ペプチドであることが好ましい。
【0013】
本発明のCaMKII阻害ペプチドでは、リジンが3つ結合した以下の分子核部、
【0014】
【化1】
JP0005754008B2_000002t.gif

【0015】
を有し、この分子核部の端部の各々の-NHに、直接またはスペーサーを介して、配列番号1~6のうちのいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドが結合した4価ペプチドであることが好ましい。
【0016】
本発明のCaMKII阻害剤は、上記のCaMKII阻害ペプチドを含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明のCaMKII阻害ペプチドは、新規なアミノ酸配列を有するペプチドであり、目的に合わせたさまざまな機能付加等が可能になる。また、このCaMKII阻害ペプチドを含有するCaMKII阻害剤は、CaMKIIの異常な活性化などに起因する疾患の治療に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】多価型ペプチドライブラリーの構造を例示した図である。
【図2】M1~M6のそれぞれの合成ペプチドの阻害効果の結果を示す図である。
【図3】PKAに対するM1~M6の合成ペプチドの阻害効果を示す図である。
【図4】PKCに対するM1~M6の合成ペプチドの阻害効果を示す図である。
【図5】CaMKIIα-KDのキナーゼ活性に対する4価ペプチドT1~T6の阻害効果を示す図である。
【図6】CaMKIIα-KDのキナーゼ活性に対する4価ペプチドT1~T6の阻害効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のCaMKII阻害ペプチドは、CaMKIIに強い結合親和性で結合することで、CaMKIIの活性を阻害することができる。具体的には、本発明のCaMKII阻害ペプチドは、以下のアミノ酸配列、
配列番号1:Arg-Arg-Arg-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-His-His
(RRRLLLLLARHH)
配列番号2:Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-His-His
(RRILLLLLARHH)
配列番号3:Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-Leu-His
(RRILLLLLARLH)
配列番号4:Arg-Ile-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Leu-Leu-His
(RIILLLLLALLH)
配列番号5:Arg-Ile-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-Leu-His
(RIILLLLLARLH)
配列番号6:Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Leu-Leu-His
(RRILLLLLALLH)
のいずれかを1以上含む、一価または多価のペプチドである。配列番号1~6のアミノ酸配列は、後述の実施例に示すスクリーニングによって特定されたものである。

【0020】
CaMKII阻害ペプチドは、CaMKIIとの結合親和性を損なわないものであれば、配列番号1~6のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に、ペプチドの電荷や親水性等を考慮して、1以上のアミノ酸や修飾基などの修飾分子を適宜付加することができる。例えば、配列番号1~6のアミノ酸配列のC末端には、ペプチドの水溶性を担保するためのアミノ酸として、リジンが3つ連続する配列(KKK)を含むペプチドを付加することができる。CaMKII阻害ペプチドの長さは、アミノ酸の数がおよそ10~20程度の範囲を例示することができる。また、配列番号1~6のアミノ酸配列のC末端には、CaMKIIの分子構造に対応させ、分子長を調節するための修飾分子を付加することもできる。分子長を調節するための修飾分子としては、例えば、炭素数4~10程度の鎖長のものが好ましく、具体的には、amino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]等を例示することができる。

【0021】
CaMKII阻害ペプチドが配列番号1~6のアミノ酸配列を複数含む多価ペプチドを作製する場合、例えば、リジンが複数個結合した分子核部の端部に配列番号1~6のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドを複数結合させることができる。具体的には、分子核部として、例えば、リジンが3つ結合して形成された以下の構造を例示することができる。

【0022】
【化2】
JP0005754008B2_000003t.gif

【0023】
この分子核部の、末端の-NHに、配列番号1~6のうちのいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドを結合させることで、4価のCaMKII阻害ペプチドを作製することができる。この場合も、配列番号1~6のアミノ酸配列のN末端、C末端にはアミノ酸等の修飾分子を付加することができる。例えば、分子核部と配列番号1~6のアミノ酸配列のC末端との間にamino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]等をスペーサーとして導入することや、リジンが3つ連続する配列(KKK)を導入すること等が考慮される。

【0024】
CaMKII阻害ペプチドは、配列番号1~6のうちのいずれかのアミノ酸配列を含んでいることによって、CaMKIIに対して優れた結合親和性を発揮し、CaMKIIの活性を阻害することができる。特に配列番号1~6のうちのいずれかのアミノ酸配列を複数含む多価ペプチドである場合には、CaMKIIに対して優れた結合親和性を発揮する。また、CaMKII阻害ペプチドに含まれる配列番号1~6のアミノ酸配列は、従来の知られているAIPなどとは異なる新規な配列であり、生体内動態の制御や膜透過性、安定性の向上など、目的に合わせたさまざまな機能付加のための検討に用いることができる。

【0025】
本発明のCaMKII阻害剤は、上記のCaMKII阻害ペプチドを有効成分として含有する。本発明のCaMKII阻害剤は、上記CaMKII阻害ペプチド以外に、任意の製薬上許容される担体、賦形剤または安定化剤と混合することにより調製され保存される。許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、用いられる用量および濃度において患者に非毒性であることを条件として、剤形や投与経路に応じて適宜に選択することができる。例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)またはトゥイーン(TWEEN)(商品名)、プルロニクス(PLURONICS)(商品名)、およびポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤等である。

【0026】
また、本発明のCaMKII阻害剤は徐放性を有していてもよい。徐放性剤として、例えば、固体疎水性ポリマーの半透性マトリクス(例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形状)である。除放性マトリクスの例は、ポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸およびγ-エチル-L-グルタメート、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商品名)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-3-ヒドロキシブチル酸等を適宜使用することができる。

【0027】
このようにして製剤化したCaMKII阻害剤は、例えば、疾患の種類や症状に応じて、経口投与、局所投与、あるいは静脈等を介して全身投与することができる。投与量は、患者の体重、症状等に応じて決定することができる。

【0028】
本発明のCaMKII阻害剤は、例えば、CaMKIIの異常な活性化に起因するパーキンソン病や認知障害、痙攣などの神経疾患の治療・予防に利用することができる。また、その他、心不全、骨粗鬆症、アポトーシスの誘導阻害を介した発癌など、ヒトの様々な疾患の治療、発症の抑制に利用することができる。
【実施例】
【0029】
(1)CaMKIIの調製
CaMKIIのアイソザイムのひとつであるCaMKIIαを用い、そのキナーゼドメインを標的とした。CaMKIIαのキナーゼドメイン (KD)にhis-tagをつけたもの(CaMKIIα-KD)を調製し、Ni-ビーズ上に固定化した。CaMKIIの大量調製にはバキュロウイルス発現系を利用し、ビーズ上に固定化されたCaMKIIα-KD は90%以上の純度であることを確認した。
(2)CaMKIIα に好適化した多価型ペプチドライブラリーのデザイン
図1に、多価型ペプチドライブラリーの構造を示す。この多価型ペプチドライブラリーは、[化1]にも示したように、中央に3つのリジンが結合した分子核部を有し、4つに分岐した構造とされている。そして、この分子核部の端部には、スペーサーとして、図1中「U」で示されるamino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]が結合している。スペーサー長は、CaMKIIに好適化するように設計されている。そして、このスペーサーの端部からは、図1中のXXXXで示されるライブラリー部を含むペプチドが4個結合した、4価のペプチドライブラリーに設計されている。この各々のライブラリー部の末端には、Met-Ala(MA)が結合している。このMAは、スクリーニングに際して導入したものであり、本発明のCaMKII阻害ペプチドにおいては必ずしも付加する必要はない。なお、ライブラリー部は、便宜的にXXXXで示しているに過ぎず、そのアミノ酸の数等については以下に詳しく述べる。
ライブラリー部の設計に関して、本発明者らは、1)これまでにCaMKIIαによってリン酸化されることが知られている数多くの基質では、リン酸化されるSer/Thrの位置から-5位のアミノ酸がLeuであることが多く、2)AIPの配列中におけるこの位置に相当するLeuを別のアミノ酸に置換すると阻害効果が著しく低下する、との知見のから、-5位のLeuが基質との高親和性結合に重要であると推測した。
そこで、多価型ペプチドライブラリーのライブラリー部(図1中で「XXXX」で表示)の配列は、XXXLXXXXAXXX(配列番号13: Xaa-Xaa-Xaa-Leu-Xaa-Xaa-Xaa-Xaa-Ala-Xaa-Xaa-Xaa)と設定した(X部(Xaa)は、Cys以外の19種のアミノ酸のミックスチャーからなるdegenerate positionを示す)。配列中、基質のリン酸化位置に相当する0位をAla(A)に固定することでリン酸化を防ぎ、-5位をLeu(L)に固定することでライブラリー部とCaMKIIα-KDとの結合親和性が高まるように設計した。また、ライブラリー部とスペーサーの間には、Ala-Lys-Lys-Lys(AKKK)を導入した。この3個のLysは、多価型ペプチドライブラリーの水溶性を担保するために導入している。
【実施例】
【0030】
(3)多価型ペプチドライブラリースクリーニング
スクリーニング方法は、特許文献(WO2006/001542)に記載の方法に準じる。CaMK IIα に好適化した上記の多価型ペプチドライブラリー(240μg)を用い、Ni-ビーズ上に固定化したCaMKIIα-KD(200μg)と4℃で18時間インキュベート(反応溶液の組成;50 mM HEPES-NaOH(pH=7.5), 1 mM EGTA, 20 mM β-glycerophosphate, 0.02% NP-40, 1 mM DTT, 10 μM ATP, final volume 300μl)した。ビーズをPBSならびに0.5%NP-40 PBSで洗浄後、30%酢酸で溶出し、CaMKIIα-KDに強く結合する画分を調製した。この画分についてアミノ酸シークエンスを行い、各degenerate positionについて、検出される19種のアミノ酸のモル比を算出した。さらに、オリジナルの多価型ペプチドライブラリー(ライブラリー部として配列番号13: Xaa-Xaa-Xaa-Leu-Xaa-Xaa-Xaa-Xaa-Ala-Xaa-Xaa-Xaaを有するスクリーニング前の多価型ペプチドライブラリー)についても同様にアミノ酸シークエンスを行い、各degenerate positionでのアミノ酸の検出モル比を算出した。各degenerate positionの各アミノ酸について、それぞれスクリーニングから得られた数値をオリジナルの多価型ペプチドライブラリーから得られた数値で割ることによって、何倍選択性が向上したのかを数値化した。さらに、あるdegenerate positionの19種類の全てのアミノ酸の数値をたすと19となるように補正した。このとき各アミノ酸の間で、選択性に差がないと値は1となる。この値が1.3を越えると強い選択性がみられたと判断した。
【実施例】
【0031】
CaMKIIα に好適化した多価型ペプチドライブラリーを用いたスクリーニングを2回行い、各Xの位置で選択されるアミノ酸を決定した。表1にその結果を示す。
【実施例】
【0032】
【表1】
JP0005754008B2_000004t.gif
【実施例】
【0033】
その結果、両者で共通して、position -1~-4でLeuが非常に強く選択されること、position -8でArgが、position +3でHisがそれぞれ選択されることが示された。またposition +1, +2ではArgとLeuの2種のアミノ酸が共通して選択されていた。一方、position -7, -6, +2では両者で選択されるアミノ酸に若干の相違がみられた。
【実施例】
【0034】
以上の結果から、これらの情報をカバーする配列として、以下の6種類のアミノ酸配列(配列番号1~6)をCaMKIIα 結合モチーフとして同定した。
【実施例】
【0035】
配列番号1:Arg-Arg-Arg-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-His-His
(RRRLLLLLARHH)
配列番号2:Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-His-His
(RRILLLLLARHH)
配列番号3:Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-Leu-His
(RRILLLLLARLH)
配列番号4:Arg-Ile-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Leu-Leu-His
(RIILLLLLALLH)
配列番号5:Arg-Ile-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-Leu-His
(RIILLLLLARLH)
配列番号6:Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Leu-Leu-His
(RRILLLLLALLH)
(4)阻害活性測定
スクリーニングの結果得られた上記アミノ酸配列(配列番号1~6)を基に、上記アミノ酸配列(配列番号1~6)を含む以下に示すペプチド(配列番号7~12)を合成し、CaMKIIα阻害ペプチドとしての効果を検討した。
【実施例】
【0036】
配列番号7:
Met-Ala-Arg-Arg-Arg-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-His-His-Ala-Lys-Lys-Lys
(MARRRLLLLLARHHAKKK)
配列番号8:
Met-Ala-Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-His-His-Ala-Lys-Lys-Lys
(MARRILLLLLARHHAKKK)
配列番号9:
Met-Ala-Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-Leu-His-Ala-Lys-Lys-Lys
(MARRILLLLLARLHAKKK)
配列番号10:
Met-Ala-Arg-Ile-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Leu-Leu-His-Ala-Lys-Lys-Lys
(MARIILLLLLALLHAKKK)
配列番号11:
Met-Ala-Arg-Ile-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-Leu-His-Ala-Lys-Lys-Lys
(MARIILLLLLARLHAKKK)
配列番号12:
Met-Ala-Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Leu-Leu-His-Ala-Lys-Lys-Lys
(MARRILLLLLALLHAKKK)
これらの合成ペプチド(配列番号7~12)は、上記スクリーニングの結果得られたCaMKIIα 結合モチーフ(配列番号1~6)のN末端にMet-Ala(MA)を付加し、C末端に、配列番号14:Ala-Lys-Lys-Lys(AKKK)を付加している。N末端のMAは、多価型ペプチドライブラリーの構造に対応させて付加しているが省略することが可能である。また、C末端のAKKK(配列番号14:Ala-Lys-Lys-Lys)は、合成ペプチドの水溶性を担保するために導入している。さらに、CaMKIIαの分子構造に対応させるため、配列番号7~12で示す合成ペプチドのC末端にamino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]を付加して分子鎖長を調整したものを使用した。以下、配列番号7の合成ペプチドにamino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]を付加したものをM1(monomer 1)と記載し、同様に、配列番号8~12の合成ペプチドにamino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]を付加したものを順に、M2(monomer 1)~M6(monomer 6)と記載する。
【実施例】
【0037】
合成ペプチドM1~M6と、合成基質AIPを用いて、CaMKIIα-KDのキナーゼ活性に対する阻害効果を検討した。また、細胞内に存在する一般的キナーゼであるprotein kinase A(PKA)およびprotein kinase C(PKC)の活性に及ぼす影響についても検討した。
【実施例】
【0038】
CaMKIIα-KDのキナーゼ活性に対するM1~M6の合成ペプチドの阻害効果の結果を図2に示す。図2から分かるように、M4については高濃度で阻害活性が減弱するものの、その他の合成ペプチドについてはいずれも強い阻害活性を示すことが示され、その効果はAIPと同程度であった。
【実施例】
【0039】
一方、PKAに対するM1~M6の合成ペプチドの阻害効果を図3に、PKCに対するM1~M6の合成ペプチドの阻害効果を図4に示す。図3、図4に示したように、PKAおよびPKCに対してはいずれのペプチドも全く阻害効果を示さなかった。
【実施例】
【0040】
以上の通り、多価型スクリーニング法によって、AIPとは全く異なる新規配列を有し、特異的に CaMKIIαを強く阻害するCaMKIIα阻害ペプチド、M1~M6を同定することができた。M1~M6が得られたことによって、生体内動態の制御や膜透過性、安定性の向上など、目的に合わせたさまざまな機能付加、機能改善の検討が可能となり、CaMKIIの異常な活性化に伴う種々の重要疾患に対する優れた治療薬開発が大きく促進される。
(5)多価CaMKII阻害ペプチドの阻害効果
図1に示した多価型ペプチドライブラリーの4つのライブラリー部(図1中で「XXXX」と表示)に、配列番号1~6に示したCaMKIIα 結合モチーフのうちのいずれかを導入した4価のペプチドを作製した。この4価ペプチドを配列番号1を含むものから順にT1~T6と記載する。なお、この4価ペプチド(T1~T6)は、以下に示した分子核部、
【実施例】
【0041】
【化3】
JP0005754008B2_000005t.gif
【実施例】
【0042】
の端部の各々の-NHに、配列番号7~12のうちのいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドが結合した4価ペプチドと同様の構造を有している。
【実施例】
【0043】
そして、4価ペプチドT1~T6と、合成基質AIPを用いて、CaMKIIα-KDのキナーゼ活性に対する阻害効果を検討した。
【実施例】
【0044】
CaMKIIα-KDのキナーゼ活性に対する4価ペプチドT1~T6の阻害効果の結果を図5、図6に示す。図5では、横軸が、4価ペプチド(T1~T6)に含まれるCaMKIIα 結合モチーフ(配列番号1~6)のモル数に換算している。図6では、横軸が4価ペプチド(T1~T6)のモル数を表している。
【実施例】
【0045】
図5、図6から分かるように、配列番号1~6に示したCaMKIIα 結合モチーフのうちのいずれかを導入した4価のペプチドは、CaMKIIαの活性阻害効果があることが確認された。特に、4価ペプチド(T1~T6)に含まれるCaMKIIα 結合モチーフの濃度および4価ペプチド(T1~T6)の濃度が低濃度(例えば、1μM~10μM)の場合、AIPと同等またはそれ以上の阻害効果が確認された。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図1】
5