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明細書 :フィッシャートロプシュ合成触媒及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-146652 (P2013-146652A)
公開日 平成25年8月1日(2013.8.1)
発明の名称または考案の名称 フィッシャートロプシュ合成触媒及びその製造方法
国際特許分類 B01J  23/78        (2006.01)
B01J  37/03        (2006.01)
B01J  37/14        (2006.01)
C10G   2/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 23/78 Z
B01J 37/03 B
B01J 37/14
C10G 2/00
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2012-007067 (P2012-007067)
出願日 平成24年1月17日(2012.1.17)
発明者または考案者 【氏名】藤元 薫
【氏名】朝見 賢二
出願人 【識別番号】802000031
【氏名又は名称】公益財団法人北九州産業学術推進機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100095603、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 一郎
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
4H039
4H129
Fターム 4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB10B
4G169BB16B
4G169BC01A
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169CB59
4G169CC23
4G169DA05
4G169EB18Y
4G169EC05Y
4G169EC06Y
4G169EC13Y
4G169EC14X
4G169EC14Y
4G169EC25
4G169EC27
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB09
4G169FB19
4G169FB20
4G169FB29
4G169FB39
4G169FB57
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC09
4H039CA10
4H039CA20
4H039CL35
4H129AA06
4H129BA12
4H129BB07
4H129BC44
4H129KA15
4H129KB03
4H129KC23X
4H129KC23Y
4H129KD04X
4H129KD04Y
4H129KD19X
4H129KD19Y
4H129KD28X
4H129KD28Y
4H129KD44X
4H129KD44Y
4H129NA26
4H129NA37
要約 【課題】
担体の表面をオゾンで酸化処理することにより2nm程度の平均細孔が3~6nmに拡張されるので、触媒活性に優れるとともに、フィッシャートロプシュ合成で生成されるワックス等で活性点が被覆され難いので、触媒の活性を長時間維持することができるフィッシャートロプシュ合成触媒を提供することを目的とする
【解決手段】
少なくとも鉄が担持された活性炭で作成されたフィッシャートロプシュ合成用触媒であって、活性炭がオゾンによる酸化処理により、平均孔径3~6nmの細孔を有し、表面の非結晶構造が除去されている構成を有している。
【選択図】図10
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも鉄が担持された活性炭で作成されたフィッシャートロプシュ合成用触媒であって、前記活性炭がオゾンによる酸化処理により、平均孔径3~6nmの細孔を有し、表面の非結晶構造が除去されていることを特徴とするフィッシャートロプシュ合成触媒。
【請求項2】
前記活性炭に銅又はアルカリ金属の内いずれか1以上が担持されていることを特徴とする請求項1に記載のフィッシャートロプシュ合成触媒。
【請求項3】
前記アルカリ金属がカリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィッシャートロプシュ合成触媒。
【請求項4】
350℃以下の雰囲気下で活性炭粒子にオゾンを接触させて前記活性炭の表面を酸化処理し細孔の平均孔径を3~6nmにする表面処理工程と、前記活性炭と鉄を共沈し前記活性炭に鉄を担持させる担持工程と、前記活性炭を乾燥後に不活性ガス雰囲気の下350~500℃で数時間焼成する焼成工程と、を備えることを特徴とするフィッシャートロプシュ合成触媒の製造方法。
【請求項5】
前記焼成工程後の前記活性炭に銅又はアルカリ金属の内いずれか1以上の水溶液を含浸させる含浸工程と、前記含浸工程に次いで前記活性炭を乾燥する乾燥工程と、を備えることを特徴とする請求項4に記載のフィッシャートロプシュ合成触媒の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素選択性の高いフィッシャートロプシュ合成触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界のエネルギー供給の大半は化石燃料に依存しており、石油や石炭,天然ガスを含めた化石燃料依存度は極めて高い。そこで、従来から代替化石燃料の技術としてGTL(Gas to Liquids)技術が注目されており、一酸化炭素と水素の合成ガスから炭化水素を合成する過程でフィッシャートロプシュ合成が用いられている。このフィッシャートロプシュ合成において活性を示す触媒として、Fe,Co,Ni,Ptが用いられ、Feを触媒とする場合は担体を使用しないことが一般的である。
フィッシャートロプシュ合成触媒において、鉄を担体に担持させたものとして、(特許文献1)には「触媒の担体にグラファイトを用い、少なくとも鉄を含むことを特徴とするフィッシャートロプシュ合成触媒」が開示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2011-45874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、使用を続けると、生成するオイルへのカリウムの流出、炭化鉄の微細化や流出が起こるとともに、ワックスポリマーによる活性点の被覆が起こり、触媒の劣化を惹起するという課題を有していた。また、担体に比較的高価なグラファイトを用いるので、コストがかかり、生産性に欠けるという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、担体の表面を酸化処理することにより2nm程度の平均細孔が3~6nmに拡張されるので、触媒活性に優れるとともに、フィッシャートロプシュ合成で生成されるワックス等で活性点が被覆され難いので、触媒の活性を長時間維持することができるフィッシャートロプシュ合成触媒を提供することを目的とする。
また、グラファイトに比べ触媒活性が低い活性炭をオゾンで酸化処理することにより、高活性で且つ活性の持続性に優れたフィッシャートロプシュ合成触媒を低原価で量産できるフィッシャートロプシュ合成触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために、本発明のフィッシャートロプシュ合成触媒及びその製造方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のフィッシャートロプシュ合成触媒は、少なくとも鉄が担持された活性炭で作成されたフィッシャートロプシュ合成用触媒であって、前記活性炭がオゾンによる酸化処理により、平均孔径3~6nmの細孔を有し、表面の非結晶構造が除去されている構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)活性炭の細孔の平均孔径が3~6nmであるので、フィッシャートロプシュ合成における高沸点生成物であるワックスやポリマーによる活性点の被覆が起き難く、活性の持続性に優れる。
(2)表面の非結晶構造が除去され、グラファイト構造が露出するので、高い触媒活性を有することができる。
【0007】
本発明において、フィッシャートロプシュ合成触媒の担体としては活性炭を用いることが望ましい。また、活性炭の原料の種類は特に限定されず石炭や木炭、竹炭、ヤシ殻、石油ピッチ等が用いられる。担体がグラファイトの場合、高価で原価が上がるとともに、多孔体構造ではなく比表面積が小さいので好ましくない。担体には、活性炭のように非結晶構造とグラファイト構造の両方を備える多孔体等の炭素系担体を用いても良い。
酸化処理後の活性炭の物性は特に限定されないが、平均粒径は0.01~5mm,細孔容積は0.1mL/g以上,比表面積は200m2/g以上であることが好ましい。平均粒径が0.01mmよりも小さくなるにつれ、触媒と生成物との固液分離操作の効率が低下する恐れがあり好ましくない。また、5mmより大きくなるにつれ、比表面積が小さくなり、触媒活性が十分に発揮できない傾向があり好ましくない。尚、平均粒径はレーザー式回折法で測定される。
細孔容積が0.1mL/gより小さくなる又は比表面積が200m2/gより小さくなるにつれ、触媒が合成ガスと接触できる面積が小さくなるので、合成効率が悪くなる傾向にあり好ましくない。
【0008】
表面の酸化処理方法としてはオゾンガスを接触させることが望ましい。酸化力の強いオゾンガスを活性炭に接触させるので、酸素ガスで酸化処理するよりも低温で処理できるとともに、担体が燃焼することもなく安定した処理が行える。加えて、活性炭の表面にある非結晶構造が酸化除去されグラファイト構造が露出することで導電性が増し、細孔の平均孔径が3~6nm好ましくは3~4nmとするので、ワックスやポリマーによる活性点の被覆が起き難く高い触媒活性と活性の持続性が得られる。また、ガスなので従来の硝酸酸化と異なり後処理が不要である。
酸化処理方法としては、活性炭表面の非結晶構造を除去できる酸化処理であればオゾンガスによる処理以外の方法を用いても良いが、酸の溶液による酸化処理では、活性炭の非結晶構造が除去されず、触媒の活性や持続性が向上せず好ましくない。
オゾンガスで処理する場合、密閉された反応容器中で350℃以下、好ましくは250~350℃の雰囲気下でオゾンガスを濃度2g/Nm3以上の条件化で数時間処理することが望ましい。尚、オゾンガスの濃度の上限はオゾン発生装置の性能による。オゾンガスの濃度が2g/Nm3より小さくなるにつれ、表面処理が十分に行われず、表面の非結晶構造が十分に除去できなくなる傾向にあり好ましくない。また、酸化処理時の温度が350℃より高くなるにつれ、酸化が過度に起こり、表面のグラファイト構造が壊れる可能性が高くなるとともに、活性炭が燃焼する可能性があり傾向にあり好ましくなく、250℃より低くなるにつれ、酸化力が低下し、非結晶構造の除去が十分に行えなくなる傾向にあり好ましくない。
【0009】
鉄が担持された活性炭の製造は、鉄と活性炭の配合比として質量比で鉄:活性炭=10:1~1:5、好ましくは鉄:活性炭=3:1~1:3が選択される。上記配合比に対して活性炭に担持される鉄の量が多くなるにつれ、鉄表面に形成される鉄カーバイドが電子的に安定化され難くなり、また、粒子成長が大きくなるため分散性が悪くなるとともに、形成される鉄カーバイトの剥離が懸念されるので好ましくない。また、上記配合比に対して活性炭に担持される鉄の量が少なくなるにつれ、触媒の単位質量あたりの活性金属量が減少するので、触媒の単位質量当たりの活性が低下する傾向にあり好ましくない。
また、鉄の他に銅,プラチナ等の貴金属類やアルカリ金属を担持させても良い。これらを担持させることで鉄の還元性を増すとともに、触媒の触媒活性や連鎖成長を促進させ、ディーゼル留分の炭化水素収率を向上させることができる。
鉄は共沈法によって担持されることが好ましいが、含浸法、沈殿法、ゾルゲル法、イオン交換法、混練法、蒸発乾固法等の方法を用いても良い。また、鉄を担持させる場合の前駆体としては硝酸塩、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物等の無機化合物でも良く、酢酸塩等の有機化合物でも良いが、中でも硫酸塩を用いることが好ましい。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記活性炭に銅又はアルカリ金属の内いずれか1以上が担持されている構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え以下のような作用が得られる。
(1)銅やアルカリ金属を担持させることにより、触媒活性が向上するとともに、フィッシャートロプシュ合成において生成される炭化水素の連鎖成長を促進させ、ディーゼル留分の炭化水素収率を向上させることができる。
(2)銅が担持されるので、鉄の還元性を維持することができ、触媒の活性化を安定させることができるとともに、他の貴金属よりも低原価の触媒とすることができる。
【0011】
本発明のフィッシャートロプシュ合成触媒には、鉄とは別に助触媒として銅やアルカリ金属の金属を担持させても良い。これらは、触媒の活性を向上させるとともに、生成される炭化水素の連鎖成長が促進されるので、炭素数の高い炭化水素を得ることができ好ましい。
これらの金属の配合比は、活性金属の鉄に対して質量比で鉄:銅=500:1~10:1、好ましくは鉄:銅=300:1~20:1が選択される。また、アルカリ金属の中でもカリウムにおいては鉄:カリウム=100:1~4:1、好ましくは鉄:カリウム=40:1~10:1が選択される。上記配合比に対して助触媒の担持量が鉄の担持量よりも多くなるにつれ、鉄や活性炭の含有量が減少するので、触媒の単位質量当たりの触媒活性が低下する傾向にあり好ましくない。また、助触媒の担持量が鉄の担持量よりも少なくなるにつれ、フィッシャートロプシュ合成前に酸化物の状態で存在する触媒中の鉄が、合成ガス雰囲気下で金属鉄又は金属カーバイドへ還元され難くなり、助触媒としての機能が発揮できなくなる傾向にあり好ましくない。
【0012】
電子供与性を持つアルカリ金属を助触媒として担持させると、活性金属の電子密度を増加させるので、鉄表面に吸着した一酸化炭素のC-O結合を弱めると考えられ、その結果、連鎖成長が起こり易くなるものと推測される。
また、炭素系担体上に存在した場合、アルカリ金属から担体に供与される電子が鉄に供与され、鉄カーバイドの剥離を抑制すると同時に、電子密度の増加した鉄表面上の一酸化炭素にも電子が供与されるので、該一酸化炭素のC-O結合が弱くなり、連鎖成長が起こり易くなる。この効果は、特にπ電子を持つグラファイトにおいて大きくなることが知られており、表面を酸化処理することで表面のグラファイト構造が露出された本件のフィッシャートロプシュ合成触媒においても、生成される炭化水素の連鎖成長が促進され炭素数の大きい炭化水素の生成を期待することができる。
更に、通常は鉄に対して局所的な電子供与が起こるとされているリチウムやナトリウムに関しても、グラファイト構造が露出することで活性炭の導電性が増大するので、担体である活性炭を通して全体的な電子供与が起き、助触媒として有用性を期待することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明であって、前記アルカリ金属がカリウムである構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用に加え以下のような作用が得られる。
(1)アルカリ金属がカリウムであるので、他のアルカリ金属よりも触媒の活性に優れ、生成される炭化水素の連鎖成長を促進させ、ディーゼル留分の炭化水素収率を向上させることができる。
【0014】
アルカリ金属の中でもカリウムは電子供与性が高く、〔0012〕段落に記載されているように連鎖成長が促進され炭素数の大きい炭化水素の生成がより期待されるので、担持させることが望ましい。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載のフィッシャートロプシュ合成触媒の製造方法であって、350℃以下の雰囲気下で活性炭粒子にオゾンを接触させて前記活性炭の表面を酸化処理し細孔の平均孔径を3~6nmにする表面処理工程と、前記活性炭と鉄を共沈し前記活性炭に鉄を担持させる担持工程と、前記活性炭を乾燥後に不活性ガス雰囲気の下350~500℃で数時間焼成する焼成工程と、を備える構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用に加え以下の作用を有している。
(1)活性炭表面をオゾンで酸化処理するので、表面の非結晶構造を除去することができ、2nm程度の細孔が平均3~6nm、好ましくは3~4nmとすることができ、フィッシャートロプシュ合成により生成するワックスやポリマーにより細孔が被覆され難く、触媒活性の持続性に優れるとともに、表面のグラファイト構造が残り、導電性が増すので触媒活性に優れたフィッシャートロプシュ合成触媒を提供することができる。
【0016】
表面処理工程において、活性炭の酸化処理は350℃以下、好ましくは250~350℃
の雰囲気下で行われる。酸化処理時の温度が350℃より高くなるにつれ、酸化が過度に起こり、表面のグラファイト構造が壊れる可能性が高くなるとともに、活性炭が燃焼する可能性があり傾向にあり好ましくなく、250℃より低くなるにつれ、酸化力が低下し、非結晶構造の除去が十分に行えなくなる傾向にあり好ましくない。
また、表面処理する際のオゾンガス濃度は2g/Nm3以上であることが望ましい。オゾンガス濃度が2g/Nm3より小さくなるにつれ、表面処理が十分に行われず、表面の非結晶構造が十分に除去できなくなる傾向にあり好ましくない。尚、オゾンガスの濃度の上限は、オゾン発生装置の性能による。
表面処理の時間としては、表面の非結晶構造が十分に除去できる時間であれば良い。
【0017】
担持工程において、鉄は共沈法によって担持されることが好ましいが、含浸法、沈殿法、ゾルゲル法、イオン交換法、混練法、蒸発乾固法等の方法を用いても良い。
また、鉄を担持させる場合の前駆体としては硝酸塩、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物等の無機化合物でも良く、酢酸塩等の有機化合物でも良いが、中でも硫酸塩を用いることが好ましい。
例えば、鉄を担持する場合、活性炭のスラリーにpHを制御しながら硫酸鉄水溶液と沈殿剤(例えば炭酸ナトリウム水溶液)を70℃に保ちながら滴下することで、鉄と活性炭からなる触媒の前駆体である沈殿物が得られる。硫酸鉄水溶液としては、硫酸第一鉄を水に溶解したFeSO4水溶液や硫酸第二鉄を水に溶解したFe2(SO43水溶液を用いることができるが、FeSO4水溶液を用いると活性に優れた触媒が製造できるため好ましい。滴下中のpHとしては7~9、好ましくは8.0~8.2に調節される。得られた沈殿物をイオン交換水を用いて洗浄し、熟成(例えば、70℃で数時間)させ、恒量になるまで乾燥し、焼成工程に移される。
【0018】
焼成工程において、焼成温度は350~500℃であることが好ましい。焼成温度が350℃より低くなるにつれ、担体に担持させた水酸化物の分解が不十分となる傾向にあり好ましくない。また、500℃より高くなるにつれ、焼成によって生成される酸化物の粒子成長により触媒の分散率が低下する傾向にあり好ましくない。また、焼成は数時間で行われる。
【0019】
焼成工程に使用される不活性ガスとしては窒素やアルゴン等の反応性の無いガスであればどのようなものでも良い。不活性ガス雰囲気下で焼成する理由としては、酸素等の酸化性ガスが存在すると担体の酸化が起こるからである。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明であって、前記焼成工程後の前記活性炭に銅又はアルカリ金属の内いずれか1以上の水溶液を含浸させる含浸工程と、前記含浸工程に次いで前記活性炭を乾燥する乾燥工程と、を備える構成を有している。
この構成により、以下の作用を有している。
(1)銅、カリウム、ルビジウム、セシウム等を担持させるので、触媒の活性や連鎖成長度に優れたフィッシャートロプシュ合成触媒を提供することができる。
(2)銅により鉄の還元性が維持されるので、触媒の活性化が安定し、触媒の寿命を長くすることができる。
【0021】
含浸工程において、銅やカリウム等の助触媒は含浸法で担持させるが、担持させる金属によっては鉄と同様に共沈法を用いても良いし、沈殿法、ゾルゲル法、イオン交換法、混練法、蒸発乾固法等の方法を用いても良い。
【0022】
乾燥工程において、触媒の乾燥は110℃の不活性ガス雰囲気中で恒量になるまで乾燥させることが好ましい。
【0023】
請求項1乃至3の内いずれか1に記載のフィッシャートロプシュ合成触媒を使用してフィッシャートロプシュ合成を行った場合、以下の作用が得られる。
(1)触媒の活性が高く、安定性に優れるので、0.5~5MPaの低圧力下で反応を行うことができ、安全性に優れる。
【0024】
フィッシャートロプシュ合成反応は、合成ガスと触媒を接触させることで炭化水素を製造するが、合成ガス中の水素と一酸化炭素のモル比(水素/一酸化炭素)は、0.5~4の範囲であることが好ましい。モル比が0.5より小さくなるにつれ、原料ガス中の水素が少なくなり、一酸化炭素の水素化反応が進み難くなるので、炭化水素の生産量が低下する傾向にあり好ましくない。また、モル比が4より大きくなるにつれ、原料ガス中の一酸化炭素が少なくなり、触媒の活性の良し悪しに係わらず、炭化水素の生産量が低下する傾向にあり好ましくない。鉄系の触媒を用いる場合、水素ガスのシフト反応が起こるので、一酸化炭素を多く含む合成ガスを用いることができる。
また、フィッシャートロプシュ合成反応に用いる反応容器の形式としては、固定床や流動床、噴流床、スラリー床のどれを用いても良い。フィッシャートロプシュ合成反応の反応条件としては合成ガスから炭化水素を製造することができれば特に限定しない。一般的には、反応温度は220~300℃、圧力は0.5~5MPaの範囲で実施することが好ましい。
【0025】
本願のフィッシャートロプシュ合成触媒は、反応前に還元処理によって活性化されるが、還元処理に用いる反応容器の形式は、フィッシャートロプシュ合成反応に用いる反応容器と同じ形式のものを使用することができる。還元処理に用いる還元ガスとしては、特に限定されないが、水素、一酸化炭素などを含有するガスであれば良い。温度や接触時間も特に限定されないが、一般的には300℃程度の温度で5~12時間程度処理することが好ましい。
また、鉄系の触媒であるため、フィッシャートロプシュ合成反応に用いる合成ガスと同じガスを触媒の還元処理に使用することができるので、還元処理から合成反応に移行する際の手間が掛からない。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明のフィッシャートロプシュ合成触媒とその製造方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)活性点の被覆が起き難く、触媒活性の持続性に優れるとともに、高い触媒活性を有するフィッシャートロプシュ合成触媒を提供することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)触媒活性が高く、連鎖成長度の高いフィッシャートロプシュ合成触媒を提供することができる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)触媒活性や連鎖成長を促進させ、ディーゼル留分の炭化水素収率を向上させることができるフィッシャートロプシュ合成触媒を提供することができる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、
(1)活性炭の触媒活性を向上させるとともに、活性の持続性にも優れたフィッシャートロプシュ合成触媒を得ることができるフィッシャートロプシュ合成触媒の製造方法を提供することができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の効果に加え、
(1)活性炭の触媒活性に優れ、生成される炭化水素の連鎖成長を促進させ、ディーゼル留分の炭化水素収率を向上させることができるフィッシャートロプシュ合成触媒を得ることができるフィッシャートロプシュ合成触媒の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の活性炭のTG-DTAの結果を示したグラフ
【図2】比較例1の活性炭のTG-DTAの結果を示したグラフ
【図3】実施例1の活性炭表面の電子顕微鏡写真
【図4】比較例1の活性炭表面の電子顕微鏡写真
【図5】実施例1乃至3の触媒の担体のXRDを示したグラフ
【図6】実施例1乃至3の触媒のXRDを示したグラフ
【図7】実施例1及び2と比較例1乃至4の触媒活性を示したグラフ
【図8】実施例1の触媒を用いたフィッシャートロプシュ合成の経時変化を示したグラフ
【図9】比較例1の触媒を用いたフィッシャートロプシュ合成の経時変化を示したグラフ
【図10】実施例1の触媒を用いたフィッシャートロプシュ合成によって生成された炭化水素の炭素数分布を示したグラフ
【図11】比較例1の触媒を用いたフィッシャートロプシュ合成によって生成された炭化水素の炭素数分布を示したグラフ

【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
粒径が75μm以下,細孔の平均孔径が1.88nm,細孔容積が0.06mL/g,比表面積が1190m2/gのヤシ殻を原料とした活性炭を3g準備した。酸化処理工程として、準備した活性炭と、空気をオゾン発生器に通して発生させた7g/Nm3のオゾンガスを密閉された石英ガラス管中に封入し、電気炉内で接触させた。この時、電気炉の温度を室温から約1時間で300℃又は330℃まで上昇させ、1時間その状態で保ち、常温まで温度を下げた。この工程を繰り返し、酸化処理をした該活性炭を20g得た。
次に、担持工程として、1M硫酸鉄(II)7水和物溶液(和光純薬工業株式会社製)360mLと0.5M硫酸銅5水和物溶液(和光純薬工業株式会社製)7mLを準備し、重量比で鉄:銅=100:1となるように混合した。この混合液と沈殿剤の2M炭酸ナトリウム溶液(和光純薬工業株式会社製)280mLを、70℃のイオン交換水1000mLに撹拌しながら滴下した。このとき、イオン交換水には重量比で鉄:活性炭=1:1となるように該活性炭を分散させた。また、滴下の際は、pHを8.0~8.2に保ち、滴下速度は12mL/minとした。
担持工程後、70℃に保ちながら該イオン交換水を3時間撹拌し続け、得られた沈殿物3時間後に遠心分離機にて洗浄した。洗浄は電気伝導度が100mS/m以下になるまで行った。洗浄後、真空乾燥機を用いて窒素雰囲気下で110℃、12時間乾燥した。次に、燃焼行程として、該沈殿物を同じく窒素中で400℃、3時間焼成を行った。
次いで、含浸工程として、1M炭酸カリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)を用いて、重量比で鉄:カリウムが100:5となるように、焼成後の触媒に含浸させ、担持工程後と同様に乾燥させフィッシャートロプシュ合成触媒を得た。
【0033】
(比較例1)
実施例1の活性炭をオゾン処理せずに、鉄と銅とカリウムを担持させた以外は実施例1と同様にした。
実施例1の酸化処理後の活性炭と比較例1の未処理の活性炭のTG-DTAの結果を図1及び図2に示す。
【0034】
図1は実施例1の活性炭のTG-DTAの結果を示したグラフであり、図2は比較例1の活性炭のTG-DTAの結果を示したグラフである。
図1より、実施例1のオゾン処理した活性炭は発熱による酸化分解後の重量の減少が5.88%であった。また、図2より比較例1の未処理の活性炭は重量の減少率が13.9%であった。これらの結果から、オゾン処理をした活性炭は、オゾンの酸化力の強さから、空気中の酸素や水素と反応して一酸化炭素や二酸化炭素として分解され、表面の多くの非結晶部分が既に削られていたため、TG-DTAによる重量変化が少なかったものと推測される。
これを確かめるために、実施例1のオゾン処理後の活性炭と比較例1の未処理の活性炭の表面を電子顕微鏡で観察した。その結果を図3及び図4に示す。
【0035】
図3は実施例1の活性炭表面の電子顕微鏡写真であり、図4は比較例1の活性炭表面の電子顕微鏡写真である。
図3の実施例1の活性炭の表面には、図4の比較例1に見られる非結晶構造がみられず、より凹凸が粗くなっており、また、3~4nmの細孔が増加していることが分かった。このことからも、オゾン処理により活性炭表面の非結晶構造が除去されたことが確認できた。
【0036】
(実施例2)
石炭を原料とした粒径が0.9~1.1mm,細孔の平均孔径が1.88nm,細孔容積が0.14mL/g,比表面積が1010m2/gの活性炭を準備した以外は実施例1と同様にした。
【0037】
(比較例2)
実施例2の活性炭をオゾン処理せずに用いた以外は、比較例1と同様にした。
実施例1及び2、比較例1及び2の活性炭の物性変化を表1に示す。物性は、日本ベル株式会社の自動比表面積/細孔分布測定装置及びガス/蒸気吸着量測定装置を用いてJIS Z8830等に準じて測定した。
【0038】
【表1】
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【0039】
表1から、比較例1及び2よりも実施例1及び2の細孔径が大きくなり、細孔容積が同じ又は上昇し、比表面積が減少していることから、非結晶構造が除去されたり細孔が削られることで、いくつかの細孔が合体して大きなひとつの細孔となり平均孔径3.75nmの細孔が形成されたものだと推測される。
【0040】
(実施例3)
木炭を原料とした粒径が150μm以下,比表面積が1170m2/gの活性炭を準備した以外は実施例1と同様にした。細孔の平均孔径及び細孔容積については測定しなかった。尚、実施例3におけるオゾン処理後の活性炭の平均細孔径は3.76nm,細孔容積が0.47mL/g,メソ孔容積が0.21mL/g,比表面積は1070m2/gであった。
実施例1乃至3のオゾン処理後の活性炭のXRDと実施例1乃至3で得られたフィッシャートロプシュ合成触媒のXRDをそれぞれ図5及び図6に示す。
【0041】
図5は実施例1乃至3の触媒の担体のXRDを示したグラフであり、図6は実施例1乃至3の触媒のXRDを示したグラフである。
図5より、XRDのベースラインに違いが見られず、どの活性炭にも基本的に結晶構造が無いことが分かる。また、実施例2及び3に見られるピークは、活性炭そのもののピークではなく不純物によるものだと推測される。
図6より、実施例1乃至3の触媒は活性炭の種類による表面構造の違いは殆ど見られず、活性炭の種類に関係なく、同様の触媒の効果が得られるものと推測される。
【0042】
(比較例3)
実施例3の活性炭にオゾン処理をせずに用いた以外は、比較例1と同様にした。
【0043】
(比較例4)
担体として比表面積が17.7m2/gグラファイトを用いた以外は、比較例1と同様にした。粒径及び細孔の平均孔径、細孔容積については測定しなかった。
実施例1及び2と比較例1乃至4の触媒を3g、溶媒のn-ヘキサデカン50mLを混合しスラリー床反応器に入れ、合成ガス(水素48.5%,一酸化炭素48.4%,アルゴン3.1%)を250mL/minの流速で流通下、触媒の還元処理を0.5MPa,300℃で3時間行った後、還元処理と同様の合成ガスと流量で2MPa,260℃の条件で反応を行った。結果を表2及び図7に示す。
尚、触媒の物性は、日本ベル株式会社の自動比表面積/細孔分布測定装置及びガス/蒸気吸着量測定装置を用いてJIS Z8830等に準じて測定した。また、CO転化率、C5+選択率CH4選択率等の触媒活性は、反応容器の出口ガスの各成分濃度から算出した。
【0044】
【表2】
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【0045】
表2は、実施例1及び2と比較例1乃至4の触媒活性と物性等を示した表であり、図7は実施例1及び2と比較例1乃至4の触媒活性を示したグラフである。
図7より、オゾン処理を行った実施例1及び2はグラファイトを担体とした比較例4に比べCO転化率及びC5+選択率が高く、比較例と比べても触媒活性に優れることが分かった。
また、表2より、細孔容積や比表面積は触媒活性には影響が小さく、平均細孔径が関係しているものと推測される。このことから、本願のフィッシャートロプシュ合成触媒は、グラファイトを担体とする従来の触媒よりも低原価で高い効果を得られると考えられる。
次に触媒の持続性を確かめるために実施例1及び比較例1の触媒を280℃、2MPaの条件で約30時間連続使用した結果を図8及び図9に示す。
【0046】
図8は実施例1の触媒を用いたフィッシャートロプシュ合成の経時変化を示したグラフであり、図9比較例1の触媒を用いたフィッシャートロプシュ合成の経時変化を示したグラフである。
図8から、実施例1の触媒は30時間経過後もCO転化率、CO2選択率、CH4選択率に低下が見られず、触媒の活性が維持されていることが分かった。また図9より、比較例1の触媒は15時間を過ぎたあたりからCO転化率やCO2選択率の値が乱れ始めており、CH4選択率は反応開始から徐々に減少傾向が見られることが分かった。
このことから、実施例1の触媒は触媒活性が比較例1に比べても2倍以上維持されていることが示された。
この時、得られた炭化水素の炭素数分布を図10及び図11に示す。
【0047】
図10は実施例1の触媒を用いたフィッシャートロプシュ合成によって生成された炭化水素の炭素数分布を示したグラフであり、図11は比較例1の触媒を用いたフィッシャートロプシュ合成によって生成された炭化水素の炭素数分布を示したグラフである。
図10及び図11より、実施例1で生成された炭化水素は、比較例1に比べて炭素数5未満のものが比較的少なく、炭素数5以上のものが多いことがわかる。また、生成された炭化水素はオレフィンの割合が多く、オゾン処理によってオレフィンの選択率も高くなってことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、表面の酸化処理により2nm程度の平均細孔が3~6nmに拡張されるので、触媒活性に優れるとともに、フィッシャートロプシュ合成で生成されるワックス等が活性点を被覆し難いので、触媒の活性を長時間維持することができるフィッシャートロプシュ合成触媒を提供することができる。
また、グラファイトに比べ触媒活性が低い活性炭をオゾン処理することにより、高活性で活性の持続性に優れたフィッシャートロプシュ合成触媒を低原価で量産できるフィッシャートロプシュ合成触媒の製造方法を提供することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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