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明細書 :ヒドロゲル化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5649073号 (P5649073)
登録日 平成26年11月21日(2014.11.21)
発行日 平成27年1月7日(2015.1.7)
発明の名称または考案の名称 ヒドロゲル化剤
国際特許分類 C07H  15/203       (2006.01)
C08G  65/26        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/566       (2006.01)
FI C07H 15/203 CSP
C08G 65/26
G01N 33/53
G01N 33/566
請求項の数または発明の数 13
全頁数 46
出願番号 特願2011-502762 (P2011-502762)
出願日 平成22年3月2日(2010.3.2)
国際出願番号 PCT/JP2010/053342
国際公開番号 WO2010/101147
国際公開日 平成22年9月10日(2010.9.10)
優先権出願番号 2009049660
優先日 平成21年3月3日(2009.3.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年2月26日(2013.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】山中 正道
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】瀬下 浩一
参考文献・文献 山道 幸代 等,トリスウレアゲル化剤への糖の導入,日本化学会講演予稿集,2008年,Vol.88th, No.2,p.1468
調査した分野 C07H 15/203
C08G 65/26
G01N 33/53
G01N 33/566
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(II)で表される置換芳香族化合物。
【化1】
JP0005649073B2_000028t.gif

〔一般式(II)において、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Zはアリーレン基を表し、Q、Q、及びQは、それぞれ独立に、二価又は三価の芳香族炭化水素基を表す。Eはエチレン基を表し、S、S、及びSは、それぞれ独立に、糖基を表す。m1、m2、及びm3はそれぞれ独立に、1又は2を表し、n1、n2、及びn3は、それぞれ独立に、1~10の整数を表す。〕
【請求項2】
前記Rが、水素原子である請求項1に記載の置換芳香族化合物。
【請求項3】
前記n1、前記n2、及び前記n3は、それぞれ独立に、1~3の整数を表す請求項1又は請求項2に記載の置換芳香族化合物。
【請求項4】
下記例示化合物(1)~(5)のいずれか1つである請求項1に記載の置換芳香族化合物。
【化2】
JP0005649073B2_000029t.gif

〔例示化合物(1)~(5)において、1βGluは、βグルコースの1位の水酸基から水素原子を除いた1価の基を示し、1βMalは、βマルトースの1位の水酸基から水素原子を除いた1価の基を示す。〕
【請求項5】
前記例示化合物(1)~(3)のいずれか1つである請求項4に記載の置換芳香族化合物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の置換芳香族化合物を含むヒドロゲル化剤。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の置換芳香族化合物を含むヒドロゲル。
【請求項8】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の置換芳香族化合物と水系試料とを接触させることを含む水系試料のゲル化方法。
【請求項9】
下記一般式(I)で表される置換芳香族化合物と、該置換芳香族化合物の親水性基に相互作用する特定化合物と、を含む水系試料に、被検化合物を添加すること、
前記添加後の水系試料のゲル化活性を検出すること、
及び、
ゲル化活性が検出された水系試料に含まれる被検化合物を、前記親水性基よりも強く前記特定化合物に相互作用する標的化合物として選別すること、
を含むスクリーニング方法。
【化3】
JP0005649073B2_000030t.gif

〔一般式(I)において、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Y、Y、及びYは、それぞれ独立に、親水性基により置換されたアリール基を表す。
は、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は-[CH-(O)r1-Zs1-基を表し、Lは、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は-[CH-(O)r2-Zs2-基を表し、Lは、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は-[CH-(O)r3-Zs3-基を表す。
、Z、及びZは、それぞれ独立に、アリーレン基を表し、r1、r2、及びr3は、それぞれ独立に、0又は1を表し、s1、s2、及びs3は、それぞれ独立に、0又は1を表す。〕
【請求項10】
前記一般式(I)における親水性基が糖基を含む親水性基であり、前記特定化合物がレクチンであり、前記被検化合物が糖であり、前記標的化合物が糖である請求項9に記載のスクリーニング方法。
【請求項11】
前記一般式(I)における親水性基がアルキレンオキシ基及び糖基を含む親水性基であり、前記特定化合物がレクチンであり、前記被検化合物が糖であり、前記標的化合物が糖である請求項9に記載のスクリーニング方法。
【請求項12】
前記アルキレンオキシ基が、エチレンオキシ基である請求項11に記載のスクリーニング方法。
【請求項13】
下記一般式(II)で表される置換芳香族化合物と、該置換芳香族化合物の糖基に相互作用する特定化合物としてのレクチンと、を含む水系試料に、被検化合物としての糖を添加すること、
前記添加後の水系試料のゲル化活性を検出すること、
及び、
ゲル化活性が検出された水系試料に含まれる被検化合物としての糖を、前記糖基よりも強く前記レクチンに相互作用する糖として選別すること、
を含むスクリーニング方法。
【化4】
JP0005649073B2_000031t.gif

〔一般式(II)において、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Zはアリーレン基を表し、Q、Q、及びQは、それぞれ独立に、二価又は三価の芳香族炭化水素基を表す。Eはエチレン基を表し、S、S、及びSは、それぞれ独立に、糖基を表す。m1、m2、及びm3はそれぞれ独立に、1又は2を表し、n1、n2、及びn3は、それぞれ独立に、1~10の整数を表す。〕
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロゲル化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゲルは、塗料や樹脂等の分野において塗料や樹脂等に添加して流動性を調整したり、廃油、廃液、廃水等をゲル化して固形物とし水質汚染を防止したりする等、食品、環境保全の分野において幅広く利用されている。ゲルとは化学物質により形成された三次元網目構造中に水や有機溶剤などの流体が含まれている構造体をいい、流体が有機溶剤である場合をオルガノゲル、流体が水である場合をヒドロゲルという。
【0003】
近年では、生体関連試料や環境試料のセンシングやスクリーニング等の技術にゲルを応用することが検討されているが、この場合には、水系環境におけるゲル化、即ちヒドロゲルやヒドロゲル化剤に関する開発が不可欠である。
ヒドロゲルやヒドロゲル化剤に関する技術としては、特定のグリコシドアミノ酸誘導体から成るヒドロゲル化剤(例えば、特開2003-327949号公報及び特開2005-13174号公報参照)や、特定の2’-デオキシウリジン誘導体から製造されたヒドロゲル(例えば、特開2005-194257号公報参照)、特定のベンズアミド誘導体を有効成分とするヒドロゲル化剤(例えば、特開2007-217551号公報参照)が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特開2003-327949号公報、前記特開2005-13174号公報、及び前記特開2007-217551号公報に記載のヒドロゲル化剤は、長鎖アルキル基を有する化合物であり、分子の対称性が低い構造となっている。また、前記特開2005-194257号公報に記載の2’-デオキシウリジン誘導体は、長鎖アルキル基は有しないものの、やはり分子の対称性が低い構造となっている。上記従来のヒドロゲル化剤が長鎖アルキル基を有する理由や対称性の低い構造となっている理由は明らかではなく、これら従来のヒドロゲル化剤の構造は、ゲル化剤の経験則上見出された構造と考えられる。
即ち、従来のヒドロゲル化剤の開発の方法は、多数の化合物からなる群(化合物ライブラリー)を構築し、その中からゲル化が達成される化合物を見出す、という経験則に頼った方法であり、ヒドロゲル化剤の明確な分子設計指針は未だ確立されていない。また、長鎖アルキル基を有する構造や対称性の低い構造は、選択し得る構造の数が膨大であり、系統的な化合物ライブラリーを構築すること自体が困難である。
以上により、従来にない化学構造の化合物をデザインし、該化合物を用いたヒドロゲル化剤やゲル化方法、及び該化合物の用途を開発することが望まれている。
【0005】
従って、本発明の目的は、従来にない化学構造を有し、水系試料に対し優れたゲル化活性を発現する置換芳香族化合物を提供することである。
また、本発明の目的は、前記置換芳香族化合物を含むヒドロゲル化剤及びヒドロゲルを提供することである。
また、本発明の目的は、前記置換芳香族化合物を用い、水系試料を容易にゲル化できる水系試料のゲル化方法を提供することである。
また、本発明の目的は、前記置換芳香族化合物を用い、特定化合物に対して相互作用を示す標的化合物を簡単な方法により選別できるスクリーニング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は以下のとおりである
【0011】
> 下記一般式(II)で表される置換芳香族化合物である。
【0012】
【化2】
JP0005649073B2_000002t.gif

【0013】
一般式(II)において、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Zはアリーレン基を表し、Q、Q、及びQは、それぞれ独立に、二価又は三価の芳香族炭化水素基を表す。Eはエチレン基を表し、S、S、及びSは、それぞれ独立に、糖基を表す。m1、m2、及びm3はそれぞれ独立に、1又は2を表し、n1、n2、及びn3は、それぞれ独立に、1~10の整数を表す。
【0014】
<2> 前記Rが、水素原子である<1>に記載の置換芳香族化合物である。
<3> 前記n1、前記n2、及び前記n3は、それぞれ独立に、1~3の整数を表す<1>又は<2>に記載の置換芳香族化合物である。
<4> 後述の例示化合物(1)~(5)のいずれか1つである<1>に記載の置換芳香族化合物である。
<5> 後述の例示化合物(1)~(3)のいずれか1つである<4>に記載の置換芳香族化合物である。
<6> <1>~<5>のいずれか1つ記載の置換芳香族化合物を含むヒドロゲル化剤である。
<7> <1>~<5>のいずれか1つ記載の置換芳香族化合物を含むヒドロゲルである。
<8> <1>~<5>のいずれか1つ記載の置換芳香族化合物と水系試料とを接触させることを含む水系試料のゲル化方法である。
【0015】
> 下記一般式(I)で表される置換芳香族化合物と、該置換芳香族化合物の親水性基に相互作用する特定化合物と、を含む水系試料に、被検化合物を添加すること、
前記添加後の水系試料のゲル化活性を検出すること、
及び、
ゲル化活性が検出された水系試料に含まれる被検化合物を、前記親水性基よりも強く前記特定化合物に相互作用する標的化合物として選別すること、
を含むスクリーニング方法である。
【0016】
【化3】
JP0005649073B2_000003t.gif

【0017】
一般式(I)において、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Y、Y、及びYは、それぞれ独立に、親水性基により置換されたアリール基を表す。
は、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は-[CH-(O)r1-Zs1-基を表し、Lは、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は-[CH-(O)r2-Zs2-基を表し、Lは、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は-[CH-(O)r3-Zs3-基を表す。
、Z、及びZは、それぞれ独立に、アリーレン基を表し、r1、r2、及びr3は、それぞれ独立に、0又は1を表し、s1、s2、及びs3は、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0018】
10> 前記一般式(I)における親水性基が糖基を含む親水性基であり、前記特定化合物がレクチンであり、前記被検化合物が糖であり、前記標的化合物が糖である<9>に記載のスクリーニング方法である。
11> 前記一般式(I)における親水性基がアルキレンオキシ基及び糖基を含む親水性基であり、前記特定化合物がレクチンであり、前記被検化合物が糖であり、前記標的化合物が糖である<9>に記載のスクリーニング方法である
12> 前記アルキレンオキシ基が、エチレンオキシ基である<11>に記載のスクリーニング方法である
【0019】
13> 下記一般式(II)で表される置換芳香族化合物と、該置換芳香族化合物の糖基に相互作用する特定化合物としてのレクチンと、を含む水系試料に、被検化合物としての糖を添加すること、
前記添加後の水系試料のゲル化活性を検出すること、
及び、
ゲル化活性が検出された水系試料に含まれる被検化合物としての糖を、前記糖基よりも強く前記レクチンに相互作用する糖として選別すること、
を含むスクリーニング方法である
【0020】
【化4】
JP0005649073B2_000004t.gif

【0021】
一般式(II)において、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Zはアリーレン基を表し、Q、Q、及びQは、それぞれ独立に、二価又は三価の芳香族炭化水素基を表す。Eはエチレン基を表し、S、S、及びSは、それぞれ独立に、糖基を表す。m1、m2、及びm3はそれぞれ独立に、1又は2を表し、n1、n2、及びn3は、それぞれ独立に、1~10の整数を表す。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来にない化学構造を有し、水系試料に対し優れたゲル化活性を有する置換芳香族化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記置換芳香族化合物を含むヒドロゲル化剤及びヒドロゲルを提供することができる。
また、本発明によれば、前記置換芳香族化合物を用い、水系試料を容易にゲル化できる水系試料のゲル化方法を提供することができる。
また、本発明によれば、前記置換芳香族化合物を用い、特定化合物に対して相互作用を示す標的化合物を簡単な方法により選別できるスクリーニング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施例2において、加熱後超音波照射することによる水のゲル化を行ったときの写真である。
【図2】本実施例2において、静置することによる水のゲル化を行ったときの写真である。
【図3】本実施例3において、ホウ酸緩衝液のゲル化を行ったときの写真である。
【図4】本実施例4において水及びホウ酸緩衝液のゲル化を行ったときの写真である。
【図5】本実施例5におけるゾル-ゲル相転移の実験を行ったときの写真である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<置換芳香族化合物>
本発明の置換芳香族化合物は、下記一般式(I)で表される置換芳香族化合物(以下、「一般式(I)で表される化合物」ともいう)である。
【0025】
【化5】
JP0005649073B2_000005t.gif

【0026】
一般式(I)において、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Y、Y、及びYは、それぞれ独立に、親水性基により置換されたアリール基を表す。
は、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は-[CH-(O)r1-Zs1-基を表し、Lは、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は-[CH-(O)r2-Zs2-基を表し、Lは、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は-[CH-(O)r3-Zs3-基を表す。
、Z、及びZは、それぞれ独立に、アリーレン基を表し、r1、r2、及びr3は、それぞれ独立に、0又は1を表し、s1、s2、及びs3は、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0027】
一般式(I)で表される化合物は、該化合物の外郭に位置する親水性部と、前記親水性部以外の部位(本明細書中では「疎水性部」という)と、から構成される平面状の分子である。
前記親水性部は、Y、Y、及びY中の親水性基により構成される。
前記疎水性部は、3つのウレア構造(又はチオウレア構造)を有する対称性の高い構造となっている。
【0028】
一般式(I)で表される化合物は、水を溶媒とする水系試料を容易にゲル化できる。即ち、一般式(I)で表される化合物は水系試料に対し優れたゲル化活性を示すヒドロゲル化剤として有用である。
【0029】
以下、一般式(I)で表される化合物による水系試料のゲル化について、推測されるゲル化機構を説明するが、本発明は以下のゲル化機構に限定されることはない。
一般式(I)で表される化合物(以下、単に「分子」ともいう)と水とが接触すると、疎水性部同士の相互作用及びウレア部分(又はチオウレア部分)同士の水素結合を主たる駆動力として、各分子が自己集合して相互に重なり合い、一次元集積する。その結果、各分子が一次元集積した、繊維状の超分子集合体が形成される。この際に、一の分子中のY、Y、及びYにおけるアリール基に存在するπ電子が、他の分子中のY、Y、及びYにおけるアリール基に存在するπ電子と相互作用(πスタッキング)することで、分子同士の結合(重なり合い)をより強固にするものと考えられる。
以上のようにして形成された繊維状の超分子集合体は、水系試料中で集合し、三次元網目構造を形成する。三次元網目構造を形成した超分子集合体は、各分子の有する親水性部により水との親和性を有しているので、水系試料中で沈殿することはない。
従って、形成された三次元網目構造の隙間部分に水が存在することとなり、水系試料の流動性が低下し、ゲル化が起こるものと考えられる。
【0030】
本発明において、ゲル化活性の検出は、水系試料のゲル化を目視で確認することにより行う。
具体的には、内径5~20mmの試験管に0.1~5mLの水系試料を入れ、試験管を上下反転させて(試験管の底が上、試験管の口が下となるようにして)、60秒間静止させる。
60秒間経過しても試料が流れ落ちなかった場合を、ゲル化したもの(ゲル化活性有り)と判定する。
【0031】
また、一般式(I)で表される化合物は、従来にない対称性が高い化学構造を有している。このため、合成の容易性や、化合物同定の容易性の面で優れている。
このように、分子の対称性が高いゲル化剤としては、オルガノゲル化剤として、特開2008-189559号公報に記載の尿素化合物又はチオ尿素化合物が知られている。
一般式(I)で表される化合物は、上記オルガノゲル化剤の末端に親水性基を導入する、という明確な分子設計指針に基づいて合成できるものである。このため、例えば後述するスクリーニング方法に用いる場合には、スクリーニングの対照となる標的化合物に応じ、適切な親水性基を選択して導入する、といった従来にない自由度(融通性)の高い合成が可能となる。
【0032】
一般式(I)において、3つのRは同一の基を表す。
一般式(I)におけるRとしては、ゲル化活性の観点からは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0033】
前記L、前記L、及び前記Lにおけるメチレンオキシ基は、酸素原子側でベンゼン環に結合していても炭素原子側でベンゼン環に結合していてもよいが、合成容易性等の観点からは、炭素原子側でベンゼン環に結合していることが好ましい。
また、前記L、前記L、及び前記Lにおけるアリーレンオキシ基は、ゲル化活性等の観点からは、炭素原子側でベンゼン環に結合していることが好ましい。該アリーレンオキシ基としては、フェニレンオキシ基、ビフェニレンオキシ基、ナフチレンオキシ基、等が挙げれられる。
また、前記L、前記L、及び前記Lにおける、-[CH-(O)r1-Zs1-基、-[CH-(O)r2-Zs2-基、及び、-[CH-(O)r3-Zs3-基は、ゲル化活性等の観点からは、「-CH-」側でベンゼン環に結合していることが好ましい。
【0034】
一般式(I)において、Lは、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は、-[CH-(O)r1-Zs1-基を表すが、これらの中でも、ゲル化活性の観点からは、-[CH-(O)r1-Zs1-基が好ましく、「-CH-」側でベンゼン環に結合する-[CH-(O)r1-Zs1-基がより好ましい。
前記-[CH-(O)r1-Zs1-基において、Zはアリーレン基を表し、r1は、0又は1を表し、s1は0又は1を表す。
前記r1は、ゲル化活性の観点からは1であることが好ましい。
また、同様の観点より、前記s1は1であることが好ましい。
【0035】
一般式(I)において、Lは、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は、-[CH-(O)r2-Zs2-基を表すが、これらの中でも、ゲル化活性の観点からは、-[CH-(O)r2-Zs2-基が好ましく、「-CH-」側でベンゼン環に結合する-[CH-(O)r2-Zs2-基がより好ましい。
前記-[CH-(O)r2-Zs2-基において、Zはアリーレン基を表し、r2は、0又は1を表し、s2は0又は1を表す。
前記r2は、ゲル化活性の観点からは1であることが好ましい。
また、同様の観点より、前記s2は1であることが好ましい。
【0036】
一般式(I)において、Lは、単結合、酸素原子、メチレンオキシ基、アリーレンオキシ基、又は、-[CH-(O)r3-Zs3-基を表すが、これらの中でも、ゲル化活性の観点からは、-[CH-(O)r3-Zs3-基が好ましく、「-CH-」側でベンゼン環に結合する-[CH-(O)r3-Zs3-基がより好ましい。
前記-[CH-(O)r3-Zs3-基において、Zはアリーレン基を表し、r3は、0又は1を表し、s3は0又は1を表す。
前記r3は、ゲル化活性の観点からは1であることが好ましい。
また、同様の観点より、前記s3は1であることが好ましい。
【0037】
また、一般式(I)において、前記L、前記L、及び前記Lは、同一の基であっても異なる基であってもよいが、一般式(I)で表される化合物の対称性の観点からは、同一の基であることが好ましい。
【0038】
前記Z、前記Z、及び前記Zで表されるアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、等が挙げられるが、一般式(I)で表される化合物の低分子量化の観点等からは、フェニレン基が好ましい。
、Z、及びZは、同一の基であっても異なる基であってもよいが、一般式(I)で表される化合物の対称性の観点からは、同一の基であることが好ましい。
【0039】
また、一般式(I)において、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。
一般式(I)の3つのXは、同一の基である。
前記Xとしては、ゲル化活性及び合成容易性の観点より、酸素原子であることが好ましい。
【0040】
一般式(I)において、Y、Y、及びYは、それぞれ独立に、親水性基により置換されたアリール基を表す。
、Y、及びYは、同一の基であっても異なる基であってもよいが、一般式(I)で表される化合物の対称性の観点からは、同一の基であることが好ましい。
また、Y、Y、及びYにおいて、アリール基に対する親水性基の数は、要求される親水性の度合いに応じて適宜調整できるが、合成容易性等の観点からは、1又は2であることが好ましい。
【0041】
また、Y、Y、及びYにおいて、アリール基に対する親水性基の置換位置は、ゲル化活性の観点からは、親水性基が一般式(I)で表される化合物の最外郭に位置する置換位置であることが好ましい。
具体的には、前記アリール基が、1つの親水性基により置換されたフェニル基である場合、前記親水性基は、前記フェニル基の4位に置換することが好ましい。また、前記アリール基が、2つの親水性基により置換されたフェニル基である場合、前記親水性基は、前記フェニル基の3位及び5位に置換することが好ましい。
【0042】
一般式(I)において、Y、Y、及びY中のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、等が挙げられるが、一般式(I)で表される化合物の低分子量化の観点等からは、フェニル基が好ましい。
【0043】
また、Y、Y、及びY中の親水性基としては特に限定はないが、-OH基、-SOH基、-SOM基(Mはアルカリ金属元素を表す)、-OSOH基、-OSOM基(Mはアルカリ金属元素を表す)、-COOH基、-COOM基(Mはアルカリ金属元素を表す)、-NRX基(R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Xはハロゲン元素を表す)、-NH基、アルキレンオキシ基、及び糖基から選択される少なくとも1種を含む基であることが好ましい。
【0044】
ここで、糖基とは、糖に由来する一価の基を表す。
具体的には、糖の水酸基のうちの一つから水素原子を除いた残基を指す。
前記糖基は、アルキル基(メチル基やエチル基等)、スルホ基、等の置換基によって置換されていてもよい。
前記糖の種類には特に限定はないが、ゲル化活性の観点からは、単糖又はオリゴ糖が好ましく、単糖又は二糖であることがより好ましく、単糖であることが特に好ましい。
【0045】
前記単糖としては、5炭糖又は6炭糖が好ましい。
前記5炭糖としては、リボース、デオキシリボース、フルクトース、等が挙げられる。
前記6炭糖としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、メチル-α-グルコース、メチル-α-マンノース、等が挙げられる。
上記の中でも、6炭糖が好ましく、グルコース、マンノース、ガラクトース、メチル-α-グルコース、メチル-α-マンノース、が特に好ましい。
【0046】
前記二糖類としては、例えば、マルトース、イソマルトース、ラクトース、トレハロース、スクロース、セルビオース、等が挙げられる。
上記の中でも、マルトースが特に好ましい。
【0047】
また、前記アルキレンオキシ基は、親水性を保つ観点からは、炭素数1~10のアルキレンオキシ基が好ましく、炭素数1~4のアルキレンオキシ基がより好ましく、エチレンオキシ基(即ち、炭素数2のアルキレンオキシ基)が特に好ましい。
また、前記アルキレンオキシ基は、酸素原子側で前記アリール基に結合することが好ましい。また、1個の親水性基中には、前記アルキレンオキシ基(以下、「-AO-基」ともいう)が1個のみ単独で含まれていてもよいし、複数が鎖状に連結し、-(AO)-構造(nは、例えば1~10の整数)の状態で含まれていてもよい。
【0048】
前記R及びRで表されるアルキル基としては、親水性を保つ観点からは、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
前記Mで表されるアルカリ金属としては、K又はNaが好ましい。
前記Xで表されるハロゲン元素としては、F、Cl、Br、又はIが好ましい。
【0049】
上述した中でも、ゲル化活性の観点からは、Y、Y、及びY中の親水性基としては、糖基(好ましくは、単糖類由来の糖基)と、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1~4のアルキレンオキシ基、より好ましくはエチレンオキシ基)と、の組み合わせを含む親水性基が好ましい。
このような親水性基の中でも、特に、1個の糖基(好ましくは、単糖類由来の糖基)と、1~10個のエチレンオキシ基と、の組み合わせである親水性基が好ましく、-[(OE)]基(ここで、Eはエチレン基を表し、nは1~10の整数(好ましくは1~3の整数)を表し、Sは糖基(好ましくは、単糖類由来の糖基)を表す。)が特に好ましい。
【0050】
一般式(I)で表される化合物は、合成容易性の観点等から、低分子化合物であること、具体的には分子量5000以下の化合物であることが好ましく、分子量3000以下の化合物であることがより好ましい。また、一般式(I)で表される化合物の分子量の下限は、ゲル化活性の観点等から、500が好ましい。
より具体的には、一般式(I)で表される化合物の分子量は、ゲル化活性及び合成容易性の観点等から、500~3000が好ましく、1500~2500がより好ましい。
【0051】
以上で説明した一般式(I)で表される置換芳香族化合物としては、本発明の効果をより効果的に得る観点より、下記一般式(II)で表される置換芳香族化合物(以下、「一般式(II)で表される化合物」ともいう)が好ましい。
【0052】
【化6】
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【0053】
一般式(II)において、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Zはアリーレン基を表し、Q、Q、及びQは、それぞれ独立に、二価又は三価の芳香族炭化水素基を表す。Eはエチレン基を表し、S、S、及びSは、それぞれ独立に、糖基を表す。m1、m2、及びm3はそれぞれ独立に、1又は2を表し、n1、n2、及びn3は、それぞれ独立に、1~10の整数を表す。
【0054】
一般式(II)中の3つのRは、同一の基である。一般式(II)中のRは、一般式(I)中のRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(II)中の3つのZは、同一のアリーレン基である。一般式(II)中のZは、一般式(I)中のZと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0055】
一般式(II)中、Qで表される二価又は三価の芳香族炭化水素基は、換言すれば、1つ又は2つの-[(OE)n1]基で置換されたアリール基である。該アリール基としては、前記一般式(I)中、Y、Y、及びYにおけるアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記アリール基に対する-[(OE)n1]基の置換位置は、ゲル化活性の観点からは、親水性基が一般式(I)で表される化合物の最外郭に位置する置換位置であることが好ましい。
具体的には、前記アリール基が、1つの-[(OE)n1]基により置換されたフェニル基である場合、前記-[(OE)n1]基は、前記フェニル基の4位に置換することが好ましい。また、前記アリール基が、2つの-[(OE)n1]基により置換されたフェニル基である場合、前記-[(OE)n1]基は、前記フェニル基の3位及び5位に置換することが好ましい。
【0056】
一般式(II)中、Qで表される二価又は三価の芳香族炭化水素基は、換言すれば、1つ又は2つの-[(OE)n2]基で置換されたアリール基である。該アリール基としては、前記一般式(I)中、Y、Y、及びYにおけるアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
に対する-[(OE)n2]基の好ましい置換位置については、前述のQに対する-[(OE)n1]基の好ましい置換位置と同様である。
【0057】
一般式(II)中、Qで表される二価又は三価の芳香族炭化水素基は、換言すれば、1つ又は2つの-[(OE)n3]基で置換されたアリール基である。該アリール基としては、前記一般式(I)中、Y、Y、及びYにおけるアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
に対する-[(OE)n3]基の好ましい置換位置については、前述のQに対する-[(OE)n1]基の好ましい置換位置と同様である。
【0058】
、Q、及びQは、同一の基であっても異なる基であってもよいが、一般式(II)で表される化合物の対称性の観点からは、同一の基であることが好ましい。
また、前記n1、n2、及びn3は、それぞれ独立に、1~3の整数であることが好ましい。
【0059】
一般式(II)中、S、S、及びSで表される糖基は、前記一般式(I)の説明で述べた糖基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
、S、及びSで表される糖基は同一の基であっても異なる基であってもよいが、一般式(II)で表される化合物の対称性の観点からは、同一の基であることが好ましい。
また、前記m1、m2、及びm3は、1又は2であり、要求される親水性の度合いに応じて適宜選択できる。
【0060】
本発明の置換芳香族化合物(一般式(I)又は一般式(II)で表される化合物)は、例えば、ベンゼン誘導体を原料として、以下の3段階で合成できる。
1,3,5-トリス(ブロモメチル)-2,4,6-トリエチルベンゼン等のハロゲン化ベンゼン誘導体とニトロフェノールとを反応させて、トリスニトロ化合物を合成する(第1段階)。
得られたトリスニトロ化合物を還元して、トリスアミン化合物を得る(第2段階)。
得られたトリスアミン化合物に対し、親水性基(例えば、前記「-[(OE)n1]基」、前記「-[(OE)n2]基」、前記「-[(OE)n3]基」、等)及びイソシアネート基(-NCO基)又はチオイソシアネート基(-NCS基)を有する芳香族化合物を反応させ、トリスウレア化合物又はトリスチオウレア化合物である本発明の置換芳香族化合物を得る(第3段階)。
【0061】
このような合成は、第3段階におけるイソシアネート基を有する芳香族化合物に、親水性基を導入すること以外は、特開2008-189559号公報段落番号〔0020〕~〔0023〕に詳細に記載されているオルガノゲル化剤の合成方法と同様の方法により行うことができる。
以上のように、本発明の置換芳香族化合物は、公知のオルガノゲル化剤の合成方法において、第3段階で用いる芳香族化合物に親水性基を導入するという、従来にない論理的な分子設計により合成できるものである。
【0062】
以下、一般式(I)又は一般式(II)で表される置換芳香族化合物の例示化合物(例示化合物(1)~(5))を示す。但し、本発明はこれらの例示化合物に限定されるものではない。
【0063】
【化7】
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【0064】
上記例示化合物群において、「1βGlu」で表される基は、βグルコースの1位の水酸基から水素原子を除いた1価の基であることを示し、「1βMal」で表される基は、βマルトースの1位の水酸基から水素原子を除いた1価の基であることを示す。
【0065】
<ヒドロゲル化剤>
本発明のヒドロゲル化剤は、前述の一般式(I)で表される化合物(一般式(II)で表される化合物を含む。以下同じ)を含む。
即ち、本発明のヒドロゲル化剤の形態としては、前述の一般式(I)で表される化合物のみである形態であっても、前述の一般式(I)で表される化合物と他の成分との組み合わせの形態(混合物の形態、混合物でない形態のいずれであってもよい)であってもよい。
前記混合物でない形態のヒドロゲル化剤を水に添加する場合は、一般式(I)で表される化合物及び他の成分を同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。
前記他の成分としては、バインダー成分や、ヒドロゲル化をさらに促進する成分(例えば、後述する緩衝液の溶質、等)等が挙げられる。
【0066】
<ヒドロゲル>
本発明のヒドロゲルは、前述の一般式(I)で表される化合物を含む。
本発明のヒドロゲルの具体的な形態として、一般式(I)で表される化合物の自己集合により形成された三次元網目構造の隙間部分に、少なくとも水(更に、必要に応じ、その他の成分)が存在する形態が挙げられる。
ここで、三次元網目構造は前述のとおり、一般式(I)で表される化合物同士の自己集合により形成された繊維状の超分子集合体が、更に集合することにより形成された構造である。
三次元網目構造の隙間部分に水とともに含まれ得るその他の成分としては、後述するレクチン等のタンパク質、緩衝液の溶質、糖、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤、等が挙げられる。
【0067】
本発明のヒドロゲルは、例えば、後述する水系試料のゲル化方法によって好適に作製される。
以下、水系試料がゲル化する反応を、「ゾルからゲルへの相転移反応」ともいう。
このゾルからゲルへの相転移反応を利用して、未知の被検化合物の群から特定の性質(特定化合物に対し強く相互作用する性質)を有する標的化合物を選別する、スクリーニングを行うことができる。具体的な方法については、後述の<スクリーニング方法>の項で詳述する。
【0068】
また、本発明のヒドロゲルは一般的なヒドロゲルと同様に、室温(15℃~25℃)でゲルの状態であるが、外部刺激(加熱による刺激、攪拌などの物理的な刺激、化学物質の添加など)により、一般式(I)で表される化合物同士の自己集合が解消されてゾル化する。
化学物質の添加によるヒドロゲルのゾル化の一例として、アニオンを添加することにより、一般式(I)で表される化合物同士の自己集合を解消させてゾル化させる反応が挙げられる。アニオンは、ナトリウム塩等の金属塩等の形態で添加することができる。
ここで添加するアニオンとしては、一般式(I)で表される化合物同士の自己集合をより効果的に解消させる観点より、一般式(I)で表される化合物のウレア基(またはチオウレア基)と相互作用するアニオンが好ましい。このようなアニオンとして、具体的には、フッ素イオン(F)、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲンイオンや、酢酸イオン(CHCOO)、等が挙げられる。
化学物質の添加によるヒドロゲルのゾル化の別の一例として、一般式(I)で表される化合物の末端の親水性基と強く相互作用するレクチンを添加することにより、一般式(I)で表される化合物同士の自己集合を解消させてゾル化させる反応が挙げられる。
以下、ヒドロゲルがゾル化する反応を、「ゲルからゾルへの相転移反応」ともいう。
【0069】
本発明のヒドロゲルは、必要に応じドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有させることにより、電気泳動用のゲルとして用いることもできる。
即ち、本発明のヒドロゲルに、電気泳動により標的物質(タンパク質や核酸など)を展開させることができる。この場合、標的物質が展開されたヒドロゲルを、ゲルからゾルへの相転移反応によりゾル化させることにより、標的物質を効率よく回収できる。
例えば、本発明のヒドロゲルをタンパク質の電気泳動用ゲルとして用いた場合には、電気泳動後の各スポットから、MALDI/TOFMS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)等の解析を行うことが可能な量のタンパク質サンプルを回収することができる。
【0070】
<水系試料のゲル化方法>
本発明の水系試料のゲル化方法は、前述の一般式(I)で表される化合物と水系試料とを接触させることを含む。
前記接触は、一般式(I)で表される化合物を水系試料に添加して混合することにより行うことができる。
前記混合後、必要に応じ、1時間以上放置することにより、前述のとおり水系試料をゲル化させることができる。
従って、本発明の水系試料のゲル化方法は、水系の環境試料や、タンパク質や糖等を含む水系の生体関連試料のセンシング(例えば、後述する本発明のスクリーニング方法等)に好適に用いることができる。
【0071】
ここで、水系試料は、水であってもよいし、水を溶媒とする水溶液や分散液であってもよい。
前記水溶液は、ゲル化活性の観点から、緩衝液が好適である。
前記緩衝液としては、3リン酸ナトリウム(sodium phosphate)緩衝液、トリス-塩酸(Tris-HCl)緩衝液、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸-水酸化ナトリウム(HEPES-NaOH)緩衝液、酢酸ナトリウム(NaOAc)緩衝液、ホウ酸緩衝液(borate)、ホウ酸-水酸化ナトリウム(borate NaOH)緩衝液、トリス-グリシン-ドデシル硫酸ナトリウム(Tris-glycine-SDS)緩衝液などの各種の緩衝液を用いることができる。
前記水系試料(例えば、緩衝液)のpHとしては、ゲル化活性の観点からは、3~11が好ましく、4~10がより好ましい。
【0072】
本発明の水系試料のゲル化方法では、必要に応じ、ゲル化活性をより高めるために、前記一般式(I)で表される化合物との接触後の水系試料に、加熱処理及び超音波処理の少なくとも一方を施してもよい。
ここで、加熱処理及び超音波処理は併用してもよい。
併用の方法としては、加熱処理及び超音波処理を順次行ってもよいし(いずれの処理が先であってもよい)、加熱処理及び超音波処理を同時に行ってもよい。
【0073】
前記加熱処理は、例えば、70℃以上(好ましくは80℃以上)の条件で行う。
加熱時間は、例えば、30分間以上(好ましくは60分間以上)行う。
前記加熱処理後は、例えば室温(15℃~25℃)まで冷却することにより、ゲル化をより進行させることができる。
また、前記超音波処理は、例えば、市販されている超音波処理装置を用い、5分間以上(好ましくは15分間以上)を行う。
【0074】
以上、加熱処理や超音波処理について説明したが、本発明の水系試料のゲル化方法において、これらの処理は必須ではない。タンパク質や糖等を含む生体関連試料等の変性を抑制する観点からは、寧ろ、加熱処理や超音波処理を行わないことが好ましい。
【0075】
<スクリーニング方法>
本発明のスクリーニング方法は、前述の一般式(I)で表される化合物と、該一般式(I)で表される化合物の親水性基に相互作用する特定化合物と、を含む水系試料に、被検化合物を添加すること、前記添加後の水系試料のゲル化活性を検出すること、及び、ゲル化活性が検出された水系試料に含まれる被検化合物を、前記親水性基よりも強く前記特定化合物に相互作用する標的化合物として選別すること、を含むスクリーニング方法である。
以下、本発明のスクリーニング方法により、親水性基よりも強く特定化合物に相互作用する標的化合物を選別する機構について推定される機構を説明するが、本発明は以下の機構に限定されることはない。
【0076】
本発明のスクリーニング方法では、一般式(I)で表される化合物と、該一般式(I)で表される化合物の親水性基に相互作用する特定化合物と、を含む水系試料を用いる。
前述のとおり、一般式(I)で表される化合物と水系試料とを接触させると水系試料がゲル化する。
ところが、水系試料が更に前記親水性基に相互作用する特定化合物を含む場合には、該水系試料はゲル化しない。ゲル化しない理由は以下のように推測される。
即ち、一般式(I)で表される化合物と前記特定化合物とを含む水系試料においては、前記一般式(I)で表される化合物と特定化合物とが会合した会合体(以下、「会合体A」ともいう)が形成される(前記会合体Aでは、一般式(I)で表される化合物の親水性基と特定化合物とが相互作用している)。このような会合体Aの状態では、特定化合物による立体障害の影響等により、一般式(I)で表される化合物同士の自己集合が阻害されるものと考えられる。
従って、水系試料が前記特定化合物を含む場合は、水系試料はゲル化せず、前記会合体Aが分散された水分散物(ゾル)の状態を保つものと考えられる。
【0077】
次に、前記水分散物(ゾル)の状態である水系試料に被検化合物を添加する。ここで、被検化合物は、検査の対象となる不特定の化合物を指す。
前記添加後は、親水性基-特定化合物間の相互作用(以下、「相互作用A」ともいう)の強さと、特定化合物-被検化合物間の相互作用(以下、「相互作用B」ともいう)の強さと、の関係により、水系試料がゲル化するかゾルの状態を保つか、の2通りの結果に分かれる。
【0078】
(1)相互作用Aよりも相互作用Bの方が強い場合
この場合には、水分散液のゲル化が起こる(即ち、ゲル化活性が現れる)。
この理由は以下のように考えられる。
即ち、前記水系試料に被検化合物を添加すると、被検化合物が前記会合体Aから特定化合物を引き抜き、特定化合物と被検化合物との会合体(以下、「会合体B」ともいう)が形成される。前記会合体Bの形成とともに、前記会合体Aにおける会合は解消され、一般式(I)で表される化合物が単体で存在することとなる。その結果、一般式(I)で表される化合物が自己集合するので、水分散液のゲル化が起こると考えられる。
【0079】
(2)相互作用Aよりも相互作用Bの方が弱い場合
この場合には、水分散液のゲル化は起こらない(即ち、ゲル化活性は現れない)。
この理由は以下のように考えられる。
即ち、前記水系試料に被検化合物を添加しても、被検化合物が前記会合体Aから特定化合物を引き抜くことはなく、前記会合体Aはそのまま維持される。
従って、前記水系試料に被検化合物を添加しても、一般式(I)で表される化合物同士の自己集合が阻害されたまま維持されるので、水分散液のゲル化が起こらないと考えられる。
【0080】
以上により、前記水系試料に被検化合物を添加し、ゲル化活性が検出された(水系試料がゲル化した)ときの被検化合物を、前記親水性基よりも強く前記特定化合物に相互作用する標的化合物として(即ち、前記親水性基-特定化合物間の相互作用(相互作用A)よりも、特定化合物-標的化合物間の相互作用(相互作用B)の方が強い関係を満たす標的化合物として)選別することができる。この選別は、目視によるゲル化の確認という簡易な方法で行うことができる。
【0081】
本発明のスクリーニング方法によれば、既に知られている親水性基-特定化合物間の相互作用の情報を利用して、不特定の化合物群(被検化合物の群)から、前記親水性基よりも強く特定化合物に相互作用する標的化合物を選別することができる。
一般式(I)で表される化合物は、前述のとおり、公知のオルガノゲル化剤の末端に親水性基を導入することにより合成できるため、前記標的化合物に応じて自由に親水性基を選択して合成できる。
以上のように、本発明のスクリーニング方法は、標的化合物に応じてヒドロゲル化剤となる化合物の構造を決定できる点で、自由度(融通性)の高いスクリーニング方法である。
【0082】
本発明のスクリーニング方法は、例えば、糖-レクチンの相互作用を利用したスクリーニング方法とすることができる。
このスクリーニング方法としては、前記一般式(I)における親水性基が糖基を含む親水性基(より好ましくは、糖基及びアルキレンオキシ基を含む親水性基)であり、前記特定化合物がレクチンであり、前記被検化合物が糖であり、前記標的化合物が糖である形態が好適である。
より好適には、前述の一般式(II)で表される化合物と、該一般式(II)で表される化合物の糖基に相互作用する特定化合物としてのレクチンと、を含む水系試料に、被検化合物としての糖を添加すること、前記添加後の水系試料のゲル化活性を検出すること、及び、ゲル化活性が検出された水系試料に含まれる被検化合物としての糖を、前記糖基よりも強く前記レクチンに相互作用する糖として選別すること、を含むスクリーニング方法の形態である。
本発明のスクリーニング方法における、〔糖基に対応する糖、レクチン〕の組み合わせとしては、例えば、〔βグルコース、コンカナバリンA〕の組み合わせが挙げられる。
また、その他の組み合わせとして、〔メチル-α-グルコース、コンカナバリンA〕、〔メチル-α-マンノース、コンカナバリンA〕、〔マンノース3量体、コンカナバリンA〕、〔ガラクトース、ガレクチン-1(P-type)〕、〔ガラクトース、ガレクチン-3(C-type)〕、〔ガラクトース、ガレクチン-9(T-type)〕等の組み合わせを用いることができる。
【0083】
上記糖-レクチンの相互作用を利用したスクリーニング方法は、糖機能の解明に関する簡便な評価系として有用である。
糖-レクチンの相互作用の簡便な評価系は、現在においても生命機能の解明を目的とした基礎研究分野において高い要求があるが、今後テーラーメイド医療など個人に対応した医療技術の確立や糖鎖医薬の実用化に向けて、産業的及び社会的要求はますます高まるものである。
【0084】
また、本発明のスクリーニング方法は、前記親水性基が抗原に由来する基であり、前記特定化合物が抗体である組み合わせにも適用できる。この系は、抗原-抗体の相互作用を利用したスクリーニング方法である。この場合には、前記抗原に由来する基よりも抗体との相互作用が強い抗原の選別を行うことができる。
また、本発明のスクリーニング方法は、前記親水性基がDNAに由来する基であり、前記特定化合物がDNA結合タンパクである組み合わせにも適用できる。この系は、DNA-DNA結合タンパクの相互作用を利用したスクリーニング方法である。この場合には、前記DNAに由来する基よりもDNA結合タンパクとの相互作用が強いDNAの選別を行うことができる。
【0085】
本発明のスクリーニング方法の変形例として、上記特定化合物と被検化合物との関係を入れ替えたスクリーニング方法も好適である。
前記変形例に係るスクリーニング方法は、前述の一般式(I)で表される化合物と、該一般式(I)で表される化合物の親水性基に相互作用する被検化合物(不特定の化合物)と、を含む水系試料に、特定化合物を添加すること、前記添加後の水系試料のゲル化活性を検出すること、及び、ゲル化活性が検出された水系試料に含まれる被検化合物を、前記親水性基との相互作用よりも特定化合物との相互作用の方が強い標的化合物として選別すること、を含むスクリーニング方法である。
【実施例】
【0086】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「%」や「wt%」は、特に断わりのない限り「質量%」を表す。また、実施例中の「室温」は15℃~25℃を表す。
【0087】
〔実施例1〕
実施例1として、本発明の置換芳香族化合物の例示化合物の合成を行った。
<例示化合物(1)の合成>
下記反応スキーム1-1~1-6に従って、例示化合物(1)を合成した。
以下、例示化合物(1)の合成例について詳細に説明する。
【0088】
まず、下記反応スキーム1-1に従い、化合物(1-c)を合成した。
【0089】
【化8】
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【0090】
以下、反応スキーム1-1の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、遮光氷冷した出発原料である化合物(1-a)4.00 g(10.3 mmol)の酢酸(30.7 mL)溶液に臭化アセチル2.65 mL(35.8 mmol)、メタノール(MeOH) 0.55 mL(13.6 mmol)を順次加えた。室温で18時間撹拌した後、80 ℃に加熱しながら減圧下、低沸点化合物を留去し、化合物(1-b)の粗生成物を得た。得られた粗生成物は、これ以上の精製操作をすることなく次の反応に用いた。
アルゴン雰囲気下、氷冷した上記粗生成物の塩化メチレン(400 mL)溶液に硫酸ナトリウム14.6 g(103 mmol)、ジエチレングリコール(diethyleneglycol) 10.0 mL(105 mmol)を順次加え、室温で15分撹拌した。得られた溶液を再度氷冷した後、炭酸銀5.89 g (21.4 mmol)を加え、室温で20時間撹拌した。得られた溶液から、吸引ろ過により塩化メチレンに不溶な成分を除去した。ろ液を水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液から溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 2/1→AcOEt)で精製し、目的物である化合物(1-c)を白色固体として2.83 g(収率63%)得た。
【0091】
~化合物(1-c)のNMRデータ~
1H NMR(600 MHz, CDCl3)
δ = 2.01 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 2.06 (s, 3H), 2.09 (s, 3H), 2.21 (t, J = 6.2 Hz, 1H), 3.56-3.61 (m, 2H), 3.66 (t, J = 4.5 Hz, 2H), 3.70-3.76 (m, 4H), 3.97 (dt, J = 5.5, 8.9 Hz, 2H), 4.15 (dd, J = 2.1, 12.4 Hz, 1H), 4,26 (dd, J = 4.8, 13.4 Hz, 1H), 4.61 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.00 (dd, J = 7.6, 9.6 Hz, 1H), 5.10 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 5.22 (t, J = 9.6 Hz, 1H).
【0092】
次に、下記反応スキーム1-2に従い、化合物(1-d)を合成した。
【0093】
【化9】
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【0094】
以下、反応スキーム1-2の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、トシルクロリド1.22 g(6.39 mmol)とN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP) 24.6 mg(0.201 mmol)との塩化メチレン(12.5 mL)溶液に、出発物質として上記で合成した化合物(1-c)2.78 g(6.36 mmol)を加え、更に、トリエチルアミン 2.65 mL(19.0 mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。攪拌後の反応液に対し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、更に水と塩化メチレンとを加えて希釈し、水層と有機層とに分液した。水層に対し塩化メチレンを用いて2回抽出操作を行い、有機層を回収した。
次に、上記で分液された有機層と上記で回収された有機層とを合わせ、飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 1/1→2/1)で精製し、目的物である化合物(1-d)を白色固体として3.54 g(収率95%)得た。
【0095】
~化合物(1-d)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, CDCl3)
δ = 2.00 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 2.08 (s, 3H), 2.45 (s, 3H), 3.57-3.59 (m, 2H), 3.66 (dt, J = 1.4, 4.8 Hz, 2H), 3.68-3.71 (m, 2H), 3.89 (dt, J = 5.5, 9.4 Hz, 1H), 4.13-4.15 (m, 3H), 4.26 (dd, J = 4.8, 12.4 Hz, 1H), 4.58 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 4.97 (dd, J = 8.2, 9.6 Hz, 1H), 5.08 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 5.21 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.80 (d, J = 8.3 Hz, 2H).
13C NMR (150 MHz, CDCl3)
δ = 170.75, 170.32, 169.53, 169.49, 144.98, 133.10, 129.97, 128.08, 100.91, 72.91, 71.90, 71.38, 70.51, 69.30, 69.09, 68.90, 68.49, 62.03, 21.74, 20.84, 20.75, 20.72, 20.70.
【0096】
次に、下記反応スキーム1-3に従い、化合物(1-e)を合成した。
【0097】
【化10】
JP0005649073B2_000010t.gif

【0098】
以下、反応スキーム1-3の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、5-アジドレソルシノール(5-Azideresorcinol) 154 mg(1.02 mmol)、炭酸カリウム841 mg(6.10 mmol)のジメチルホルムアミド(DMF)(10.0 mL)懸濁液に、出発物質としての上記化合物(1-d)1.50 g(2.54 mmol)のDMF(13.0 mL)溶液を加えた。得られた反応液を100 ℃で5.5時間加熱した。加熱後の反応液を室温まで冷却し、不溶成分を吸引ろ過により除去した。ろ液に水と塩化メチレンとを加えて希釈し、水層と有機層とに分液した。水層に対し塩化メチレンを用いて3回抽出操作を行い、有機層を回収した。
次に、上記で分液された有機層と上記で回収された有機層とを合わせ、飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 2/3)で精製し、目的物である化合物(1-e)を黄色オイルとして903 mg(収率90%)得た。
【0099】
~化合物(1-e)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, CDCl3)
δ= 2.00 (s, 6H), 2.02 (s, 6H), 2.03 (s, 6H), 2.08 (s, 6H), 3.70-3.72 (m, 6H), 3.74-3.78 (m, 2H), 3.80-3.82 (m, 4H), 3.97 (dt, J = 4.1, 11.0 Hz, 2H), 4.06 (t, J = 4.5 Hz, 4H), 4.13 (dd, J = 2.4, 12.0 Hz), 4.25 (dd, J = 4.8, 12.4 Hz, 2H), 4.60 (d, J = 8.3 Hz), 5.00 (dd, J = 8.9, 9.6 Hz, 2H), 5.09 (t, J = 9.8 Hz, 2H), 5.20 (t, J = 9.6 Hz, 2H), 6.21 (s, 2H), 6.27 (s, 1H).
【0100】
次に、下記反応スキーム1-4に従い、化合物(1-f)を合成した。
【0101】
【化11】
JP0005649073B2_000011t.gif

【0102】
以下、反応スキーム1-4の詳細について説明する。
水素雰囲気下、出発原料としての上記化合物(1-e)874 mg(0.885 mmol)と、触媒(10%パラジウム on 活性炭素)87.5 mgと、の酢酸エチル(13.0 mL)懸濁液を室温で3.5 時間撹拌した。攪拌後の溶液から、ろ過により触媒を除去し、ろ液の溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 2/1→4/1)により精製し、目的物である化合物(1-f)を白色固体として806 mg(収率95%)得た。
【0103】
~化合物(1-f)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, CDCl3)
δ = 2.00 (s, 6H), 2.02 (s, 6H), 2.03 (s, 6H), 2.08 (s, 6H), 3.68-3.71 (m, 6H), 3.78-3.79 (m, 6H), 3.95 (dt, J = 4.1, 11.7 Hz, 2H), 4.04 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 4.13 (dd, J = 2.7, 12.4 Hz, 2H), 4.25 (dd, J = 4.9, 12.4 Hz, 2H), 4.65 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 5.00 (dd, J = 7.6, 9.6 Hz, 2H), 5.09 (t, J = 9.6 Hz, 2H), 5.22 (t, J = 9.2 Hz, 2H), 5.91 (s, 3H).
13C NMR (150 MHz, CDCl3)
δ = 20.96, 21.00, 21.02, 21.11, 55.98, 62.31, 67.59, 68.79, 69.31, 70.18, 71.00, 71.67, 72.10, 73.24, 95.13, 101.19, 148.94, 161.13, 169.79, 169.82, 170.69, 171.06.
【0104】
次に、下記反応スキーム1-5に従い、化合物(1-g)を合成した。
【0105】
【化12】
JP0005649073B2_000012t.gif

【0106】
以下、反応スキーム1-5の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、出発原料である化合物(1-f)208 mg(208 μmol)の1,2-ジクロロエタン(1,2-dichloroethane)(0.4 mL)溶液に、トリホスゲン62.8 mg(212 μmol)の1,2-dichloroethane(0.4 mL)溶液、トリエチルアミンを順次加え、室温で1 時間撹拌した後、低沸点化合物を減圧留去しイソシアネートを主成分とする白色固体を得た。この白色固体を1,2-dichloroethane(1.0 mL)に溶解し、トリスアミン32.0 mg(72.5 μmol)を加え、17時間加熱還流した。還流後の反応液を室温に冷却した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、更に水と塩化メチレンとを加えて希釈し、水層と有機層とに分液した。水層に対し塩化メチレンを用いて3回抽出操作を行い、有機層を回収した。
次に、上記で分液された有機層と上記で回収された有機層とを合わせ、飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 7/1→1/0)で精製し、目的物である化合物(1-g)を175 mg(収率71%)得た。
【0107】
~化合物(1-g)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, Acetone-d6)
δ = 1.94 (s, 18 H), 1.98 (s, 18H), 1.99 (s, 18H), 2.01 (s, 18H), 3.66-3.70 (m,18H), 3.75-3.78 (m, 6H), 3.80 (t, J = 4.5 Hz, 12H), 3,90-3.92 (m, 18H), 4.09-4.12 (m, 18 H), 4.25 (dd, J = 4.8, 12.4 Hz, 6H), 4.82 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 4.91 (t, J = 8.9 Hz, 6H), 5.02 (t, J = 9.6 Hz, 6H), 5.17 (s, 6H), 5.24 (t, J = 9.3 Hz, 6H), 6.21 (t, J = 2.1 Hz, 3H), 6.67 (dd, J = 2.1, 8.2 Hz, 3H), 6.82 (d, J = 2.1 Hz, 6H), 7.07 (d, J = 8.2 Hz, 3H), 7.17 (t, J = 7.9 Hz, 3H), 7.36 (s, 3H), 7.58 (s, 3H), 8.15 (s, 3H), 8.16 (s, 3H).
13C NMR (150 MHz, Acetone-d6)
δ = 20.69, 20.72, 20.78, 20.81, 62.83, 68.39, 69.52, 69.88, 70.26, 70.43, 71.07, 72.26, 72.43, 73.66, 96.44, 98.78, 101.48, 106.62, 109.66, 112.36, 126.97, 130.55, 139.04, 141.93, 142.45, 153.44, 160.31, 161.35.
【0108】
次に、下記反応スキーム1-6に従い、最終生成物として例示化合物(1)を合成した。
【0109】
【化13】
JP0005649073B2_000013t.gif

【0110】
以下、反応スキーム1-6の詳細について説明する。
出発物質である化合物(1-g)159 mg(46.8 μmol)のエタノール(1.1 mL)溶液にNaOEtを20.0 mg(294 μmol)を加え、室温で18時間撹拌した。攪拌後の反応混合物を透析膜を用いて精製した。この精製により、濃縮して得られた生成物には、反応不十分な中間体が含まれていたため、生成物を再度エタノール(1.1 mL)に溶解し、NaOEtを30.6 mg(450 μmol)を加え、室温で22時間撹拌した。攪拌後の溶液を透析膜を用いて精製し、溶媒を減圧留去することで、目的化合物である例示化合物(1)が黄土色固体として96.1 mg(収率86%)得られた。
エレクトロンスプレーイオン化質量分析(JEOL JMS-T100LC AccTOF)により、得られた目的化合物(例示化合物(1))の分子量が2395であることを確認した。
【0111】
~例示化合物(1)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6)
δ = 2.93-2.97 (m, 6H), 3.01-3.05 (m, 6H), 3.06-3.09 (m, 6H), 3.10-3.14 (m, 6H), 2.40-3.44 (m, 6H), 3.59-3.66 (m, 24H), 4.02 (s, 12H), 3.88-3.90 (m, 6H), 4.15 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 4.50 (t, J = 5.8 Hz,6H), 4.89 (d, J = 4.8 Hz, 6H), 4.95 (s, 6H), 5.02 (d, J = 4.1 Hz, 6H), 5.11 (s, 6H), 6.13 (s, 3H), 6.62 (d, J = 7.7 Hz, 3H), 6.70 (s, 6H), 7.06 (s, 3H), 7.15 (t, J = 7.9 Hz, 3H), 7.18 (s, 3H), 7.50 (s, 3H), 8.98 (s, 3H).
【0112】
<例示化合物(2)の合成>
下記反応スキーム2-1~2-6に従って、例示化合物(2)を合成した。
以下、例示化合物(2)の合成例について詳細に説明する。
【0113】
まず、下記反応スキーム2-1に従い、化合物(2-c)を合成した。
【0114】
【化14】
JP0005649073B2_000014t.gif

【0115】
以下、反応スキーム2-1の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、遮光氷冷した出発物質である化合物(2-a)4.01 g(10.3 mmol)の酢酸(37.0 mL)溶液に臭化アセチル2.65 mL(35.8 mmol)、MeOH 0.55 mL(13.6 mmol)を順次加えた。得られた溶液を室温で19時間撹拌した後、80 ℃に加熱しながら減圧下、低沸点化合物を留去し、化合物(2-b)の粗生成物を得た。
得られた粗生成物は、これ以上の精製操作をすることなく次の反応に用いた。
アルゴン雰囲気下、氷冷した上記粗生成物の塩化メチレン(400 mL)溶液に硫酸ナトリウム14.6 g(103 mmol)、ethyleneglycol 6.00 mL(105 mmol)を順次加え、室温で15分撹拌した。得られた溶液を再度氷冷した後、炭酸銀5.94 g (21.5 mmol)を加え、室温で36時間撹拌した。得られた溶液から、吸引ろ過により塩化メチレンに不溶な成分を除去した。ろ液を水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液から、溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 2/1→AcOEt)で精製し、目的物である化合物(2-c)を白色固体として2.24 g(収率56%)得た。
【0116】
~化合物(2-c)のNMRデータ~
1H NMR(600 MHz, CDCl3)
δ = 2.01 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 2.06 (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 2.41 (t, J = 6.5 Hz, 1H), 3.69 -3.77 (m, 2H), 3.84-3.85 (m, 2H), 4.20 (d, J = 4.1 Hz, 2H), 4.55 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.01(t, J = 8.9 Hz, 1H), 2.06 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 5.22 (t, J = 9.3 Hz, 1H).
【0117】
次に、下記反応スキーム2-2に従い、化合物(2-d)を合成した。
【0118】
【化15】
JP0005649073B2_000015t.gif

【0119】
以下、反応スキーム2-2の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、トシルクロリド0.74 g(3.87 mmol)とDMAP 14.5 mg(0.119 mmol)の塩化メチレン(7.8 mL)溶液に、出発物質である化合物(2-c)1.50 g(3.82 mmol)トリエチルアミン 1.50 mL(10.8 mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。攪拌後の反応液に対し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、更に水と塩化メチレンとを加えて希釈し、水層と有機層とに分液した。水層に対し塩化メチレンを用いて2回抽出操作を行い、有機層を回収した。
次に、上記で分液された有機層と上記で回収された有機層とを合わせ、飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 1/2→1/1)で精製し、目的物である化合物(2-d)を白色固体として1.64 g(収率79%)得た。
【0120】
~化合物(2-d)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, CDCl3)
δ = 2.00 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 2.05 (s, 3H), 2.08 (s, 3H), 2.46 (s, 3H), 3.65-3.68 (m, 1H), 3.78-3.82 (m, 1H), 3.97-4.00 (m, 1H), 4.10-4.18 (m, 3H), 4.23 (dd, J = 4.8, 12.4 Hz, 1H), 4.51 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.92 (dd, J = 8.2, 9.8 Hz, 1H), 5.05 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 5.18 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.78 (d, J = 8.2 Hz, 2H).
【0121】
次に、下記反応スキーム2-3に従い、化合物(2-e)を合成した。
【0122】
【化16】
JP0005649073B2_000016t.gif

【0123】
以下、反応スキーム2-3の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、5-Azideresorcinol 57.6 mg(0.381 mmol)、炭酸カリウム316 mg(2.29 mmol)のDMF(4.2 mL)懸濁液に、トシル体である化合物(2-d)499 mg(0.913 mmol)のDMF(4.6 mL)溶液を加えた。反応液を90 ℃で8時間加熱した。加熱後の反応液を室温まで冷却し、不溶成分を吸引ろ過により除去した。ろ液に水と塩化メチレンを加え希釈し、水層と有機層とに分液した。水層に対し塩化メチレンを用いて3回抽出操作を行い、有機層を回収した。
次に、上記で分液された有機層と上記で回収された有機層とを合わせ、飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 2/3)で精製し、目的物である化合物(2-e)を黄色オイルとして287 mg(収率84%)得た。
【0124】
~化合物(2-e)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, CDCl3)
δ = 1.94 (s, 6H), 1.98 (s, 6H), 2.01 (s, 6H), 2.06 (s, 6H) , 3.70-3.72 (m, 2H) , 3.88-3.92 (m, 2H) , 4.05-4.14 (m, 8H), 4.25 (dd, J = 4.8, 12.4 Hz, 2H), 4.63 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 4.99 (t, J = 8.6 Hz, 2H), 5.08 (t, J = 9.6 Hz, 2H), 5.20 (t, J = 9.3 Hz, 2H), 6.16 (d, J = 2.1 Hz, 2H), 6.21 (s, 1H).
【0125】
次に、下記反応スキーム2-4に従い、化合物(2-f)を合成した。
【0126】
【化17】
JP0005649073B2_000017t.gif

【0127】
以下、反応スキーム2-4の詳細について説明する。
水素雰囲気下、出発原料である化合物(2-e)269 mg(0.299 mmol)と、触媒(10%パラジウム on 活性炭素)27.8 mgと、の酢酸エチル(3.0 mL)懸濁液を、室温で7.5 時間撹拌した。攪拌後の溶液から、ろ過により触媒を除去し、ろ液の溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 2/1→3/1)により精製し、目的物として化合物(2-f)を白色固体として199 mg(収率77%)得た。
【0128】
~化合物(2-f)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, CDCl3)
δ = 1.95 (s, 6H), 2.00 (s, 6H), 2.03 (s, 6H), 2.08 (s, 6H) , 3.70-3.73 (m, 4H) , 3.88-3.92 (m, 2H) , 4.04 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 4.08-4.18 (m, 4H), 4.26 (dd, J = 4.5, 12.0 Hz, 2H), 4.65 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 5.02 (dd, J = 8.2, 9.6 Hz, 2H), 5.09 (t, J = 9.6 Hz, 2H), 5.22 (t, J = 9.6 Hz, 2H), 5.86 (s, 3H).
13C NMR (150 MHz, CDCl3)
δ = 20.92, 20.97, 21.09, 62.25, 67.55, 68.72, 71.55, 72.24, 73.14, 92.66, 95.13, 101.47, 148.89, 161.08, 169.76, 169.85, 170.62, 171.04.
【0129】
次に、下記反応スキーム2-5に従い、化合物(2-g)を合成した。
【0130】
【化18】
JP0005649073B2_000018t.gif

【0131】
以下、反応スキーム2-5の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、出発原料である化合物(2-f)177 mg(202 μmol)の1,2-dichloroethane溶液に、トリホスゲンの1,2-dichloroethane溶液、トリエチルアミンを順次加え、室温で1 時間撹拌した後、低沸点化合物を減圧留去し、イソシアネートを主成分とする白色固体を得た。この白色固体を1,2-dichloroethaneに溶解し、トリスアミンを加え、24時間加熱還流した。還流後の反応液を室温に冷却した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、更に水と塩化メチレンとを加えて希釈し、水層と有機層とに分液した。水層に対し塩化メチレンを用いて3回抽出操作を行い、有機層を回収した。
次に、上記で分液された有機層と上記で回収された有機層とを合わせ、飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 2/1→15/1)で精製し、目的物として化合物(2-g)を110 mg(収率52%)得た。
【0132】
~化合物(2-g)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, Acetone-d6)
δ = 1.93 (s, 18H), 1.93 (s, 18H), 1.98 (s, 18H), 2.02 (s, 18H) , 3.91-3.96 (m, 12H) , 4.05-4.12 (m, 24H) , 4.27 (dd, J = 4.8, 12.4 Hz, 6H), 4.85 (d, J = 8.2 Hz, 6H), 4.93 (dd, J = 8.2, 9.6 Hz, 6H), 5.03 (t, J = 9.6 Hz, 6H), 5.12 (s, 6H), 5.26 (t, J = 9.6 Hz, 6H), 6.20 (s, 3H), 6.68 (dd, J = 2.1, 8.2 Hz, 3H), 6.79 (d, J = 8.2 Hz, 6H), 7.06 (d, J = 8.2 Hz, 3H), 7.18 (t, J = 8.2 Hz, 3H), 7.34 (s, 3H), 7.53 (s, 3H), 8.10 (s, 3H), 8.13 (s, 3H).
13C NMR (150 MHz, Acetone-d6)
δ = 20.54, 20.60, 20.64, 20.67, 62.72, 67.93, 68.95, 69.39, 70.14, 72.07, 72.40, 73.47, 96.44, 98.70, 101.54, 106.52, 109.55, 112.26, 126.88,130.43,138.93, 141.81, 142.39, 153.32, 160.19, 161.13, 169.78, 170.01, 170.30, 170.78.
【0133】
次に、下記反応スキーム2-6に従い、例示化合物(2)を合成した。
【0134】
【化19】
JP0005649073B2_000019t.gif

【0135】
以下、反応スキーム2-6の詳細について説明する。
出発物質である化合物(2-g)107 mg(34.2 μmol)のエタノール(0.8 mL)溶液にNaOEtを29.8 mg(438 μmol)を加え、室温で36時間撹拌した。攪拌後の反応混合物を透析膜を用いて精製した。この精製により、濃縮して得られた生成物には、反応不十分な中間体が含まれていたため、生成物を再度エタノール(0.8 mL)に溶解し、NaOEtを13.2 mg(194 μmol)を加え、室温で24時間撹拌した。攪拌後の溶液を透析膜を用いて精製し、溶媒を減圧留去することで、目的化合物である例示化合物(2)が黄色固体として60.2 mg(収率83%)得られた。
エレクトロンスプレーイオン化質量分析(JEOL JMS-T100LC AccTOF)により、得られた目的化合物(例示化合物(2))の分子量が2131であることを確認した。
【0136】
~例示化合物(2)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6)
δ = 2.98-3.02 (m, 6H), 3.05-3.09 (m, 6H), 3.11-3.18 (m, 12H), 3.45-3.48 (m, 6H), 3.68 (dd, J = 4.5, 10.7 Hz, 6H), 3.79-3.82 (m, 6H), 4.03-4.10 (m, 18H), 4.23 (d, J = 4.2 Hz, 6H), 4.37 (t, J = 5.8 Hz, 6H), 4.77 (dd, J = 4.5, 12.0 Hz, 12H), 4.87 (d, J = 4.8 Hz, 6H), 5.11 (s, 6H), 5.71 (s, 3H), 6.65 (dd, J = 2.1, 8.3 Hz, 3H), 6.68 (d, J = 2.1 Hz, 6H), 7.01 (d, J = 7.8 Hz, 3H), 7.17 (t, J =8.2 Hz, 3H), 7.19 (s, 3H), 7.51 (s, 3H), 8.62 (s, 3H), 8.64 (s, 3H).
【0137】
<例示化合物(3)の合成>
下記反応スキーム3-1~3-5に従って、例示化合物(3)を合成した。
以下、例示化合物(3)の合成例について詳細に説明する。
【0138】
まず、下記反応スキーム3-1に従い、化合物(3-b)を合成した。
【0139】
【化20】
JP0005649073B2_000020t.gif

【0140】
以下、反応スキーム3-1の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、4-nitrophenol(325 mg、2.34 mmol)、K2CO3(745 mg, 5.39 mmol)のDMF (26.0 mL)懸濁液にグルコース誘導体である化合物(3-a)(1.06 g 1.80 mmol)の DMF (9.0 mL)溶液を加え、100 °Cで1.5時間加熱した。加熱後の溶液から吸引濾過により不溶な成分を除き、ろ液に水と塩化メチレンとを加え、水層と有機層とに分液した。水層に対し塩化メチレンを用いて3回抽出操作を行い、有機層を回収した。
次に、上記で分液された有機層と上記で回収された有機層とを合わせ、飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 1/1→2/1)で精製し、目的の生成物である化合物(3-b)を無色透明のシロップとして956 mg (収率95%)得た。
【0141】
~化合物(3-b)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, CDCl3)
δ = 2.01 (s, 3H), 2.02 (s, 6H), 2.08 (s, 3H), 3.68 (ddd, J = 2.4, 4.5, 10.0 Hz, 1H), 3.71-3.77 (m, 3H), 3.87 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.98 (dt, J = 4.0, 10.7 Hz, 1H), 4.14 (dd, J = 2.7, 12.4 Hz, 1H), 4.19-4.21 (m, 2H), 4.25 (dd, J = 4.8, 12.4 Hz, 1H), 4.59 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.00 (dd, J = 7.6, 9.6 Hz, 1H), 5.08 (t, J = 10.0 Hz, 1H), 5.19 (t, J = 9.3 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 8.21 (d, J = 8.9 Hz, 2H).
13C NMR (150 MHz, CDCl3)
δ = 170.56, 170.20, 169.37, 169.27, 163.76, 141.66, 125.89, 114.55, 100.81, 72.71, 71.80, 71.26, 70.60, 69.47, 69.05, 68.37, 68.15, 61.93, 20.69, 20.62, 20.58, 20.56
【0142】
次に、下記反応スキーム3-2に従い、化合物(3-c)を合成した。
【0143】
【化21】
JP0005649073B2_000021t.gif

【0144】
以下、反応スキーム3-2の詳細について説明する。
水素雰囲気下、出発原料である化合物(3-b)650 mg(1.17 mmol)と、触媒(10%パラジウム on 活性炭素)65.0 mgと、の酢酸エチル懸濁液を室温で1.5 時間撹拌した。攪拌後の溶液から、ろ過により触媒を除去し、ろ液の溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane = 1/1→2/1)により精製し、目的物である化合物(3-c)をオレンジシロップとして532 mg(収率87%)得た。
【0145】
~化合物(3-c)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, CDCl3)
δ = 2.01 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 2.08 (s, 3H), 3.43 (s, 2H), 3.67-3.73 (m, 3H), 3.76-3.79 (m, 3H), 3.96 (dt, J = 4.3, 11.2 Hz, 1H), 4.03 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 4.13 (dd, J = 2.1, 12.4 Hz, 1H), 4.25 (dd, J1 = 4.8, 12.4 Hz, 1H), 4.62 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.00 (dd, J = 8.2, 9.6 Hz, 1H), 5.08 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 5.20 (t, J = 9.3 Hz, 1H), 6.63 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 6.76 (d, J = 8.9 Hz, 2H).
13C NMR (150 MHz, CDCl3)
δ = 170.77, 170.35, 169.51, 151.90, 140.38, 116.41, 115.92, 100.89, 72.90, 71.80, 71.33, 70.57, 70.13, 69.17, 68.47, 68.22, 61.99, 20.82, 20.74, 20.70, 20.68
【0146】
次に、下記反応スキーム3-3に従い、化合物(3-d)を合成した。
【0147】
【化22】
JP0005649073B2_000022t.gif

【0148】
以下、反応スキーム3-3の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、出発原料である化合物(3-c)562 mg(1.07 mmol)の1,2-dichloroethane(2.0 mL)溶液に、トリホスゲン317 mg(1.07 mmol)の1,2-dichloroethane(2.2 mL)溶液、トリエチルアミン0.30 mL(2.15 mmol)を順次加え、室温で30分撹拌した後、低沸点化合物を減圧留去し、イソシアネートを主成分とする白色固体を得た。この白色固体を1,2-dichloroethane(4.2 mL)に溶解し、トリスアミン157 mg(0.355 mmol)を加え、36時間加熱還流した。還流後の反応液を室温に冷却した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、更に水と塩化メチレンとを加えて希釈し、水層と有機層とに分液した。水層に対し塩化メチレンを用いて3回抽出操作を行い、有機層を回収した。
次に、上記で分液された有機層と上記で回収された有機層とを合わせ、飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物をAcOEt/Hexaneの再沈殿により精製し、目的物である化合物(3-d)を白色の固体として624 mg(収率84%)得た。
【0149】
~化合物(3-d)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6)
δ = 1.92 (s, 9H), 1.96 (s, 18H), 2.00 (s, 9H), 3.53-3.61 (m, 6H), 3.62-3.66 (m, 3H), 3.69 (t, J = 4.8 Hz, 6H), 3.81 (ddd, J = 3.8, 5.5, 11.3 Hz, 3H), 3.95 (ddd, J1 = 2.4, 4.8, 10.0 Hz, 3H), 3.99-4.01 (m, 9H), 4.16 (dd, J = 4.8, 12.4 Hz, 3H), 4.75 (dd, J = 8.2, 9.6 Hz, 3H), 4.83 (d, J = 8.3 Hz, 3H), 4.89 (t, J = 9.6 Hz, 3H), 5.10 (s, 6H), 5.24 (t, J = 9.6 Hz, 3H), 6.62 (dd, J = 2.1, 8.2 Hz, 3H), 6.84 (d, J = 8.9 Hz, 6H), 6.95 (d, J = 8.2 Hz, 3H), 7.15 (t, J = 8.2 Hz, 3H), 7.24 (s, 3H), 7.32 (d, J = 8.9 Hz, 6H), 7.51 (s, 3H), 8.50 (s, 3H), 8.63 (s, 3H).
13C NMR (150 MHz, DMSO-d6)
δ = 20.28, 20.36, 20.38, 20.50, 61.71, 67.28, 68.19, 68.62, 68.94, 69.06, 69.47, 70.57, 70.89, 72.07, 99.51, 104.77, 107.85, 110.75, 114.62, 120.00, 126.32, 129.57, 132.77, 137.66, 141.15, 152.63, 153.63, 158.77, 169.09, 169.29, 169.56, 170.05
【0150】
次に、下記反応スキーム3-4に従い、例示化合物(3)を合成した。
【0151】
【化23】
JP0005649073B2_000023t.gif

【0152】
以下、反応スキーム3-4の詳細について説明する。
出発物質である化合物(3-d)300.1 mg(143 μmol)のエタノール(3.4 mL)溶液にNaOEtを29.1 mg(428 μmol)を加え、室温で18時間撹拌した。攪拌後の反応混合物を透析膜を用いて精製し、溶媒を減圧留去することで、目的化合物である例示化合物(3)が黄土色固体として221 mg(収率97%)得られた。
エレクトロンスプレーイオン化質量分析(JEOL JMS-T100LC AccTOF)により、得られた目的化合物(例示化合物(3))の分子量が1597であることを確認した。
【0153】
~例示化合物(3)のNMRデータ~
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6)
δ = 2.93-2.96 (m, 3H), 3.01-3.05 (m, 3H), 3.06-3.10 (m, 3H), 3.10-3.13 (m, 3H), 3.40-3.44 (m, 3H), 3.60-3.66 (m, 12H), 3.72 (t, J = 5.2 Hz, 6H), 3.89 (t, J = 6.2 Hz, 3H), 4.01 (t, J = 4.5 Hz, 6H), 4.15 (d, J = 8.2 Hz, 3H), 4.49 (t, J = 5.8 Hz, 3H), 4.89 (d, J = 5.5 Hz, 3H), 4.93 (d, J = 4.8 Hz, 3H), 4.99 (d, J = 4.8 Hz, 3H), 5.10 (s, 6H), 6.63 (dd, J = 2.1, 8.2 Hz, 3H), 6.84 (d, J = 8.9 Hz, 6H), 7.00 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 7.14 (t, J = 8.2 Hz, 3H), 7.25 (s, 3H), 7.35 (d, J = 8.9 Hz, 6H), 7.51 (s, 3H), 8.98 (s, 3H), 9.10 (s, 3H).
13C NMR (150 MHz, DMSO-d6)
δ = 61.09, 67.29, 67.87, 68.94, 69.04, 69.84, 70.05, 73.41, 76.75, 76.91, 103.01, 104.79, 107.80, 110.78, 114.62, 120.01, 126.33, 129.56, 132.83, 137.67, 141.22, 152.69, 153.62, 158.76.
【0154】
以上、例示化合物(1)~例示化合物(3)の合成例について説明したが、その他の一般式(I)で表される化合物も、これらの合成例と同様の方法により合成できる。
【0155】
〔実施例2〕
<水系試料のゲル化1>
上記で合成した例示化合物(1)をゲル化剤として用い、水系試料のゲル化を行った。
~加熱後超音波照射することによるゲルの形成~
上記ゲル化剤2.0mgを2.2mL試験管(内径5mm)に入れ、水100 μL(ゲル化剤濃度2.0wt%)を加えて混合して水系試料を調製した。
調製した水系試料に対し、超音波洗浄器(BRANSON社製B2510J)を用いて30分間超音波照射を行った後、90℃で60分間加熱し、室温にて静置したところ、透明で黄色のゲルが形成された。
ゲル化の判定は、前記室温による静置後、試験管を、底が上、口が下となるように上下反転させて、60秒間経過させることにより行った(以降の実施例及び参考例におけるゲル化の判定方法も同様である)。
図1中の中央の写真に示すように、試験管を上下反転させて60秒間経過しても水系試料は下に向かって流れ落ちることはなく、水系試料がゲル化されていることが確認された。
なお、以下の実施例及び参考例におけるゲル化の判定も、上記と同様の方法により行った。
以下、上記ゲル化剤濃度2.0wt%条件で形成されたゲルを「2.0wt%のゲル」と称することがある(他の濃度についても同様に称することがある)。
【0156】
また、図示は省略するが、上記水のゲル化と同様の条件にてホウ酸緩衝液(pH8.6)を用いてもゲルの形成が確認できた。
【0157】
次に、上記水のゲル形成において、ゲル化剤の量を、1.0mg(ゲル化剤濃度1.0wt%)、1.5mg(ゲル化剤濃度1.5wt%)、3.0mg(ゲル化剤濃度3.0wt%)にそれぞれ変更した以外は上記と同様の方法により水系試料を調製し、超音波処理及び加熱処理を施し、室温にて静置した。室温による静置後、試験管を上下反転させたときの写真を図1に示す。
図1中、左側の写真に示すように、ゲル化剤濃度1.5wt%の条件では水系試料は流れ落ちず、ゲル化が確認された。また、図1中、右側の写真に示すように、ゲル化剤濃度3.0wt%の条件でも水系試料は流れ落ちず、ゲル化が確認された。
一方、図示しないが、ゲル化剤濃度1.0wt%の条件では、水系試料はゲル化しなかった。
以上により、水に対しての最小ゲル化濃度は1.5 wt%と求められた。
【0158】
また、図1に示すように、ゲル化剤濃度を上昇させると、ゲルの透明度の低下がみられ、ゲル化剤濃度3.0 wt%のゲルは白色で不透明であった。
これらのゲルは、室温においては、数か月経過してもゲル状態を保持した。
【0159】
~静置することによるゲルの形成~
また、ゲル化剤(例示化合物(1))と水を混合し、室温で静置するのみでもゲルが形成された。
具体的には、ゲル化剤2.0 mgに水100 μL(ゲル化剤濃度2.0wt%)を加え、室温で2~3時間静置した。室温で2~3時間静置した後、試験管を上下反転させたときの写真を図2に示す。
図2に示すように、水系試料は流れ落ちず、ゲル化が確認された。ゲルの色はほぼ無色透明であった。
このゲルは、室温にて数日間経過すると白濁化が進行し、ゲルを形成し約4日後には白色の懸濁液へと変化した。
【0160】
〔実施例3〕
<水系試料のゲル化2>
上記で合成した例示化合物(2)をゲル化剤として用い、水系試料のゲル化を行った。
~水のゲル化~
上記ゲル化剤に水100 μL(ゲル化剤濃度2.0wt%)を加え、室温で2~3時間静置すると、白く濁った部分ゲルが得られた(不図示)。
【0161】
~ホウ酸緩衝液のゲル化~
ゲル化剤にホウ酸緩衝液(pH8.6)100 μL(ゲル化剤濃度1.0wt%)を加え、室温で2~3時間静置すると、ほぼ無色透明のゲルが得られた。前記静置後、試験管を上下反転させたときの写真を図3に示す。
図3に示すように、水系試料(ホウ酸緩衝液)は流れ落ちず、ゲル化が確認された。ゲルの色はほぼ無色透明であった。
ホウ酸緩衝液のゲルは、室温にて数日静置した後も、ゲル状態を保持した。
【0162】
〔実施例4〕
<水系試料のゲル化3>
上記で合成した例示化合物(3)をゲル化剤として用い、水系試料のゲル化を行った。
~水のゲル化~
ゲル化剤と水を混合し(ゲル化剤濃度1.0wt%)、90℃の油浴中で振り混ぜながら加熱し、溶解後ゆっくりと冷却した。前記冷却後、試験管を上下反転させたときの写真を図4中の左側に示す。
図4中の左側の写真に示すように、水系試料(ゲル化剤濃度1.0wt%の水)は流れ落ちず、ゲル化が確認された。形成されたゲルは白色の半透明であった。
【0163】
~ホウ酸緩衝液のゲル化~
次に、上記の水をホウ酸緩衝液(Borate Buffer)に変え、ゲル化剤濃度を2.0wt%とした以外は上記水のゲル化と同様の条件にてホウ酸緩衝液のゲル化を行った。冷却後、試験管の口が底よりも下となるように傾けたときの写真を図4中の右側に示す。
図4中の右側の写真に示すように、水系試料(ゲル化剤濃度1.0wt%のホウ酸緩衝液)は流れ落ちず、ゲル化が確認された。ゲルの色は白色の半透明であった。
【0164】
~その他の緩衝液のゲル化~
次に、上記のホウ酸緩衝液を、下記表1に示す各pHの各緩衝液(3リン酸ナトリウム(sodium phosphate)緩衝液、トリス-塩酸(Tris-HCl)緩衝液、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸-水酸化ナトリウム(HEPES-NaOH)緩衝液、酢酸ナトリウム(NaOAc)緩衝液、ホウ酸-水酸化ナトリウム(borate NaOH)緩衝液)、トリス(25mM)-グリシン(192mM)-0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(Tris-Glycine-SDS)緩衝液)に変えた以外は上記ホウ酸緩衝液のゲル化と同様の条件にて、各緩衝液のゲル化を行った。
評価の結果を下記表1に示す。なお、ゲル化の判定方法は実施例2におけるゲル化の判定方法と同様である。
【0165】
【表1】
JP0005649073B2_000024t.gif

【0166】
表1に示すように種々のpHの種々の緩衝液において、ゲル化が確認された。
【0167】
〔実施例5〕
<コンカナバリンA(ConA)の添加によるゾル-ゲル相転移>
上記で合成した例示化合物(1)をゲル化剤として用い、該ゲル化剤とコンカナバリンA(ConA)とを含む水分散物のゾル-ゲル相転移に関する実験を行った。
以下、実験結果について、図5を参照して説明する。
【0168】
上記ゲル化剤2.0 mgに水100 μL(ゲル化剤濃度2.0wt%)を加え、室温で2~3時間静置した。静置後、試験管を上下反転させたときの写真を図5中の左側に示す。
図5中の左側の写真に示すように、水系試料は流れ落ちず、水系試料のゲル化が確認された。形成されたゲルは、ほぼ無色透明であった。
【0169】
また、ゲル化剤2.0 mgとコンカナバリンA(ConA)1.0 mgに水100 μL(ゲル化剤濃度2.0wt%)を加え、室温で2~3時間静置した。静置後、試験管を水平にした(底と口とが同じ高さとなるようにした)ときの写真を図5中の中央に示す。
図5中の中央の写真に示すように、水系試料は流動性を有する白色の懸濁液(ゾル)であった。即ち、ゲル化は起こらなかった。
この結果は、ゲル化剤の親水性基であるβグルコース由来の1βGlu基と、ConAと、が相互作用を示すことにより、ゲル化剤とConAとの会合体が形成され、ゲル化剤分子同士の自己集合が阻害されたことにより生じた結果と考えられる。
なお、グルコースとConAとが相互作用を示す(会合定数8.0×10)ことは既に知られている(e.g.Biochemistry 33, 1149-1156, 1994)。
【0170】
また、ゲル化剤2.0 mgとConA1.0 mgとメチル-α-マンノース(Me-α-Man)0.15 mgとの混合物に水100 μL(ゲル化剤濃度2.0wt%)を加え、室温で2~3時間静置した。静置後、試験管を上下反転させたときの写真を図5中の右上に示す。
図5中の右上の写真に示すように、水系試料は流れ落ちず、水系試料のゲル化が確認された。形成されたゲルは、微白色であった。
この結果は、ゲル化剤分子の親水性基であるβグルコース由来の基とConAとの相互作用よりも、Me-α-ManとConAとの相互作用の方が強いことにより、Me-α-ManとConAとの会合体が形成され、ゲル化剤が単独で存在し、ゲル化剤同士が自己集合したことにより生じた結果と考えられる。
なお、グルコースとConAとの相互作用(会合定数8.0×10)よりも、Me-α-ManとConAとの相互作用(会合定数1.1×10)の方が強いことは既に知られている(e.g.Biochemistry 33, 1149-1156, 1994)。
【0171】
また、ゲル化剤2.0 mg、ConA1.0 mgとガラクトース(Gal)0.15 mgの混合物に水100 μL(ゲル化剤濃度2.0wt%)を加え、室温で2~3時間静置した。静置後、試験管を水平にした(底と口とが同じ高さとなるようにした)ときの写真を図5中の右下に示す。
図5中の右下の写真に示すように、水系試料は流動性を有する白色の懸濁液(ゾル)であった。即ち、ゲル化は起こらなかった。
この結果は、ゲル化剤分子の親水性基であるβグルコース由来の基とConAとの相互作用よりも、ガラクトースとConAとの相互作用の方が弱いことにより、ガラクトースとConAとの会合体は形成されず、ゲル化剤分子とConAとの会合体が維持され、ゲル化剤分子同士の自己集合が阻害されたことにより生じた結果と考えられる。
なお、βグルコースとConAとの相互作用よりも、ガラクトースとConAとの相互作用の方が弱いことは既に知られている。
【0172】
以上のゾル-ゲル相転移に関する実験の結果は、ConAとグルコースとの相互作用や、ConAとMe-α-Manとの相互作用、という既知の情報を利用したスクリーニングが可能であることを示唆するものである。
例えば、1βGlu基を有するゲル化剤と、ConAと、を含む水系試料を準備し、該水系試料に不特定の糖を添加してゲル化を確認することにより、ConAとβグルコースとの相互作用よりも強くConAに相互作用する糖(例えば、Me-α-Man)を選別することができる。
また、変形例として、1βGlu基を有するゲル化剤と、不特定のレクチンと、を含む水系試料を準備し、該水系試料にMe-α-Manを添加してゲル化を確認することにより、βグルコースとの相互作用よりもMe-α-Manとの相互作用の方が強いレクチン(例えば、ConA)を選別することもできる。
【0173】
〔実施例6〕
<レクチン-糖の相互作用に関する実験>
上記実施例5では、ゲル化剤(例示化合物(1))2.0 mgとConA1.0 mgとメチル-α-マンノース(Me-α-Man)0.15 mgとの混合物に水100 μL(ゲル化剤濃度2.0wt%)を加え、室温で2~3時間静置したときに、微白色のヒドロゲルが生じた例を示した。上記実施例5では、この結果は、ゲル化剤分子の1βGlu基とConAとの相互作用よりも、Me-α-ManとConAとの相互作用の方が強いことにより、Me-α-ManとConAとの会合体が形成され、ゲル化剤分子が単独で存在し、ゲル化剤分子同士が自己集合したことにより生じた結果であることを説明した。
なお、上記実施例5における糖(Me-α-Man)の量(0.15 mg)は、レクチン(ConA)1.0 mgに対し、1当量に相当する。
【0174】
次に、添加する糖の種類及び量(実施例5における「Me-α-Man0.15 mg」)を種々変化させたこと以外は上記実施例5と同様の条件で、レクチン-糖の相互作用に関する実験を行った。実験の結果を下記表2に示す。
【0175】
【表2】
JP0005649073B2_000025t.gif

【0176】
~表2の説明~
・「S」はゾルの状態、「OG」は濁ったゲルの状態、「G」は透明なゲルの状態をそれぞれ示す。
・「Me-α-Man」はメチル-α-マンノース、「Me-α-Glu」はメチル-α-グルコース、「Man」はマンノース、「Isomal」はイソマルトース、「Gal」はガラクトース、「Ara」はアラビノース、「L-Glu」はL-グルコース、「Mal」はマルトース、「Me-β-Glu」はメチル-β-グルコース、をそれぞれ示す。
【0177】
表2に示すように、ゲル化剤分子の1βGlu基とConAとの相互作用よりも強くConAと相互作用する糖(Me-α-Man、Me-α-Glu、Man、Isomal、Mal、Me-β-Glu)を添加した場合に、ゲル化が起こることが確認された。また、糖の種類によりゲル化に必要な添加量が異なることも確認された。この添加量の相違は、糖とConAとの相互作用の強さの相違に起因するものと考えられる。
以上の結果より、1βGlu基を有するゲル化剤と、ConAと、を含む水系試料を準備し、該水系試料に不特定の糖を添加してゲル化を確認することにより、ConAと1βGlu基との相互作用よりも強くConAに相互作用する糖を選別するスクリーニングを行うことができることが確認された。
【0178】
〔参考例1〕
<ゾル-ゲル相転移とConAの量との相関に関する実験>
上記実施例5では、ゲル化剤(例示化合物(1))2.0 mg及びコンカナバリンA(ConA)1.0 mgに水100 μL(ゲル化剤濃度2.0wt%)を加え、室温で2~3時間静置したときに、ゲル化が起こらず、流動性を有する白色の懸濁液(ゾル)が生じた例を示した。この例におけるConAの量は、ゲル化剤に対し4.6×10-2当量に相当する。
上記の例において、ConAの量を、1.0mg(ゲル化剤に対し4.6×10-2当量)から0.5mg(ゲル化剤に対し2.3×10-2当量)に変更すると、ConAの量が1.0mgである場合と同様にゲル化が起こらず、流動性を有する白色の懸濁液(ゾル)が生じた。
一方、上記において、ConAの量を、1.0mg(ゲル化剤に対し4.6×10-2当量)から0.2mg(ゲル化剤に対し9.2×10-3当量)に変更すると、ゲル化が起こった(濁ったゲルを生じた)。
以上のように、親水性基として1βGlu基を含むゲル化剤(例示化合物(1))と、ConAと、の組み合わせの系では、ConAの量をゲル化剤に対し2.3×10-2当量以上としたときに、ゲル化剤同士の自己集合の阻害(即ち、ゾル化)が起こることがわかった。
【0179】
上記参考例1の結果より、未知の量の特定のレクチンを含む水系試料に対して特定量のゲル化剤を添加し、ゲル化の有無を確認することで(即ち、ゲル化活性を検出することで)、水系試料中のレクチンの量を滴定できることがわかった。
【0180】
〔参考例2〕
<アニオン存在下におけるゲル化>
上記実施例2では、ゲル化剤(例示化合物(1))2.0 mgに水100 μL(ゲル化剤濃度2.0wt%)を加え、室温で2~3時間静置することにより、ほぼ無色透明のヒドロゲルが生じた例を示した。
ここでは、上記水系試料(ゲル化剤(例示化合物(1))2.0 mg及び水100 μL)に対し様々な種類及び量のアニオンを添加した(ここでアニオンは塩の形態で添加した)こと以外は上記の例と同様の操作を行い、アニオン存在下におけるゲル化の有無を確認する実験を行った。
実験結果を下記表3に示す。
【0181】
【表3】
JP0005649073B2_000026t.gif

【0182】
~表3の説明~
・「S」はゾルの状態、「V」は粘性液体(ゾルの一形態)の状態、「OG」は濁ったゲルの状態、「G」は透明なゲルの状態をそれぞれ示す。
【0183】
表3に示すように、水系試料に対し一定以上の量のアニオンを添加した場合には、ゲル化が起こらなかった。
以上の結果は、ゲル化剤分子中のウレア基と、アニオンと、が相互作用することにより、ゲル化剤同士の自己集合が阻害されたことにより生じた結果と考えられる。また、アニオンの種類により、ゾルを維持するためのアニオン添加量が異なることも確認された。このアニオン添加量の相違は、アニオンとゲル化剤中のウレア基との相互作用の強さの相違に起因するものと考えられる。
また、以上の結果より、ヒドロゲルに対しアニオンを添加することにより、ゲル化剤同士の自己集合が解消され、ゲルからゾルへの相転移が起こることも示唆された。
【0184】
〔参考例3〕
<ミネラルウォーターのゲル化に関する実験>
アニオン存在下におけるゲル化に関する実験として、市販のミネラルウォーターのゲル化に関する実験を行った。
具体的には、下記表4に示すミネラルウォーター(試料1~試料4)について、各試料100 μLに、ゲル化剤(例示化合物(1))2.0 mgを加え、室温で2~3時間静置したときのゲル化の有無を確認した。
実験結果を下記表4に示す。
【0185】
【表4】
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【0186】
~表4の説明~
・「OS」は濁ったゾル(ゾルの一形態)の状態、「OG」は濁ったゲルの状態、「G」は透明なゲルの状態をそれぞれ示す。
・イオン量としてはカチオンの量を示しているが、各資料中には、これらのカチオンに対する対イオンとして、アニオンが存在している。
【0187】
表4に示すように、アニオン量が少ない試料1及び試料2ではゲル化が起こった。
一方、アニオン量が多い試料3及び試料4ではゲル化が起こらず、ゾルの状態を維持していた。
【0188】
参考例2及び参考例3の結果より、未知の量のアニオンを含む水系試料に対して特定量のゲル化剤を添加し、ゲル化の有無を確認することで(即ち、ゲル化活性を検出することで)、水系試料中のアニオンの量を滴定できることがわかった。
【0189】
日本出願2009-049660の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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