TOP > 国内特許検索 > 摩耗センサ > 明細書

明細書 :摩耗センサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6083960号 (P6083960)
公開番号 特開2014-002028 (P2014-002028A)
登録日 平成29年2月3日(2017.2.3)
発行日 平成29年2月22日(2017.2.22)
公開日 平成26年1月9日(2014.1.9)
発明の名称または考案の名称 摩耗センサ
国際特許分類 G01B   7/00        (2006.01)
FI G01B 7/00 W
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2012-137209 (P2012-137209)
出願日 平成24年6月18日(2012.6.18)
審査請求日 平成27年1月23日(2015.1.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】岩井 善郎
【氏名】峠 正範
【氏名】宮島 敏郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100087398、【弁理士】、【氏名又は名称】水野 勝文
【識別番号】100067541、【弁理士】、【氏名又は名称】岸田 正行
【識別番号】100126147、【弁理士】、【氏名又は名称】川上 成年
審査官 【審査官】眞岩 久恵
参考文献・文献 特開2008-164377(JP,A)
実開平03-027600(JP,U)
特開平09-138103(JP,A)
特開2013-088173(JP,A)
石川大輔 他,摩耗センサの開発,日本設計工学会北陸支部2011年度研究発表講演会,2011年 6月25日
調査した分野 G01B 7/00-7/34
特許請求の範囲 【請求項1】
回転軸に先端部を向けて前記回転軸の軸受に固定され、前記軸受の摩耗を検知するための摩耗センサであって、
複数の回路絶縁板が、前記回転軸の回転方向と略垂直な方向に積層してなり、当該複数の回路絶縁板の各々には、1本の摩耗検知用プリントラインが配置されるとともに、
前記複数の回路絶縁板内の所定の回路絶縁板上における摩耗検知用プリントラインは、前記複数の回路絶縁板内の他の回路絶縁板上における摩耗検知用プリントラインに対して、前記摩耗センサの先端部から前記積層の方向と垂直な縦方向に所定のピッチをもって配置されており、
前記軸受の摩耗に伴い前記複数の回路絶縁板の各々に形成された前記摩耗検知用プリントラインが、前記先端部に近い摩耗検知用プリントラインから段階的に摩滅し、
前記所定の回路絶縁板上の摩耗検知用プリントラインの摩耗くずは、前記回転軸の回転方向に引きずられ、前記他の回路絶縁板上の摩耗検知用プリントラインに付着することを防ぎ、
前記所定のピッチは、前記摩耗検知用プリントライン自体の前記縦方向の幅より小さいことを特徴とする摩耗センサ。
【請求項2】
前記複数の回路絶縁板の摩耗検知用プリントラインを回路内に各々含む複数の摩耗検知回路を備え、前記複数の回路絶縁板の摩耗検知用プリントラインの段階的な摩滅に伴い、前記複数の摩耗検知回路の各々が段階的に切断する摩耗センサ回路部を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の摩耗センサ。
【請求項3】
前記複数の回路絶縁板の摩耗検知用プリントラインの前記摩耗センサの先端部からの順番と、前記複数の回路絶縁板の積層の順番とは、一部又は全部異なることを特徴とする請求項1または2に記載の摩耗センサ。
【請求項4】
前記複数の回路絶縁板の摩耗検知用プリントライン自体の各々の前記縦方向と垂直な横方向の幅は、前記先端部からの順番に応じて広くなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の摩耗センサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、産業設備の摺動部の摩耗を計測するゲージに関し、特に、摩耗状況を段階的に検出することによりメンテナンス時期を予測できる摩耗センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業機械の摺動部については、摩耗状態を診断するために、実際に機械を分解し、摺動部の摩耗状態を測定することにより検査が行われている。例えば、発電所の海水取水設備の竪型ポンプにおいては、一旦、竪型ポンプを陸上にあげ、主軸側と軸受側の隙間を定期的に測定することによって摩耗状態の診断が行われている。
【0003】
しかしながら、点検に多くの時間と費用を要するという欠点があり、機械が稼働状態であっても実際の摺動部の摩耗量を検知する手法の開発が望まれている。
【0004】
機械が稼働状態であっても摺動部の摩耗量を検知する手法としては、絶縁体の中に一定の抵抗値の薄膜抵抗体を一定間隔で積層し、各薄膜抵抗体の両端を連結ワイヤで並列に接続して摩耗センサとし、これを軸受に埋設して摩耗させ、抵抗変化と温度センサの温度検出値で温度変化にともなう抵抗値を補正して摩耗量を算出・表示する手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。摩耗センサを軸受に埋め込むだけで簡単かつ正確に摩耗量が検出でき、これにより、軸受摩耗量を常時監視して軸受の交換時期を知り、トラブルの発生を未然に防止することができるようになる。
【0005】
また、他の手法として、長手方向の一端が摺動端面1aとなり、その他端が信号導出入端面1bとなっている短形状の絶縁基体1の一側面に、長手方向に沿って複数本の導電体21、22・・・が互いに平行で等間隔にプリント配線され、また、基板1の摺動端面1a側にある導電体21、22・・・の端部は、摺動端面1aに対して所定角度傾斜した状態にその位置が設定されるように構成された摩耗量検出用の基体を用いて、絶縁材にて形成された円柱体の中心部に複数の基体11、12・・・15が重ね合わせて埋設され、さらに、各基体11、12・・・15に設けられた各導電体21、22・・・2nの端部の配置関係がXmmずつ順次ずらすようにされた摩耗量測定装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
さらに、他の手法として、機械成分又は要素の表面の摩耗の量を連続的に監視するための表面摩耗検出装置において、摺動部材に固定可能であり、機械の本体内に、上方閉鎖端部1’、2’、3’・・・・を有する導線部分1、2,3・・・・から成る多数の導線ループを有し、表面が摩耗されるとその摩耗効果が導線ループの閉鎖端部にやがて作用して、第1の或いは左方の導線ループの上端部1’が先ず破られ、しかる後に残りのループが摩耗の進むにつれて順次破られる検出素子が開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平06-193629号公報
【特許文献2】特開昭62-083602号公報
【特許文献3】特開昭47-031646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法によれば、検出素子の積層方向は、絶縁体の積層方向と同一(平行)である。この積層方向の場合には、摩耗検出の分解能は「検出素子の厚さ」+「絶縁体の厚さ」が限界となる。したがって、分解能は検出素子と絶縁体の厚さに制限され、絶縁体の厚さ以下の摩耗量を検出できないという課題がある。
【0009】
また、複数の検出素子が上下方向に積層しているため、プリントラインの摩耗くずが下のプリントラインに付着することによるショートの発生により、誤動作が生じる可能性もある。
【0010】
また、特許文献2に記載のプリントライン配置では、複数のプリントラインが上下方向に配置されているため、プリント技術上の制約により、プリントラインの幅、及び、プリントラインの間隔が必要となり摩耗検知プリントラインのピッチの下限に限界がある。換言すれば、特許文献2の技術は測定範囲(X)を拡大することのみを目的としており、検出分解能を小さくすることは目的としていない。
【0011】
また、複数のプリントラインが同一の基板に形成されているため、プリントラインの摩耗くずが隣接するプリントラインに付着することによるショートの発生により、誤動作が生じる可能性もある。
【0012】
また、特許文献3に記載の方法によれば、複数のプリントラインが同一の基板に形成されているため、プリントラインの幅が分解能の下限となるため、プリント技術により制約が生じてしまい、プリントラインの幅以下の摩耗量を検出できないという問題がある。
【0013】
また、複数のプリントラインが同一の基板に形成されているため、プリントラインの摩耗くずが隣接するプリントラインに付着することによるショートの発生により、誤動作が生じる可能性もある。
【0014】
図7、8は、摩耗くずによる誤動作のメカニズムの一例を説明する図である。図7に示すように摩耗検知部Cは軸受Bに設置される。軸Aの回転に伴い軸受Bが摩耗量dで摩耗すると、軸受Bの摩耗に伴い摩耗検知部Cも同一の量dで摩耗する。摩耗検知部Cが摩耗するにつれ、図8に示す複数の摩耗検知プリントラインa~eが上から順に断線して、摩耗量を検知する。
【0015】
図8は、図7の摩耗部分Dを拡大した図である。図に示すように、複数のプリントラインa~eが同一の基板に形成されているため、プリントラインaの摩耗くずEが隣接するプリントラインbに付着しショートする場合があることがわかる。
【0016】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、産業設備の摺動部の摩耗量を段階的に、かつ、正確に測定できる、より安価な摩耗センサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、回転軸に先端部を向けて回転軸の軸受に固定され軸受の摩耗を検知するための摩耗センサであって、複数の回路絶縁板が、回転軸の回転方向と略垂直な方向に積層してなり、当該複数の回路絶縁板の各々には、1本の摩耗検知用プリントラインが配置されるとともに、複数の回路絶縁板内の所定の回路絶縁板上における摩耗検知用プリントラインは、複数の回路絶縁板内の他の回路絶縁板上における摩耗検知用プリントラインに対して、摩耗センサの先端部から積層の方向と垂直な縦方向に所定のピッチをもって配置されており、軸受の摩耗に伴い複数の回路絶縁板の各々に形成された摩耗検知用プリントラインが、先端部に近い摩耗検知用プリントラインから段階的に摩滅し、所定の回路絶縁板上の摩耗検知用プリントラインの摩耗くずは、回転軸の回転方向に引きずられ、他の回路絶縁板上の摩耗検知用プリントラインに付着することを防ぎ、所定のピッチは、摩耗検知用プリントライン自体縦方向の幅より小さいことを特徴とする。

【発明の効果】
【0018】
本発明の摩耗センサによれば、機械が稼働状態であっても、摩耗センサを軸受に埋め込むだけで簡単かつ正確に摺動部の実際の摩耗状態を常時監視でき、適正な時期に部品の点検や交換を行うことができる。
【0019】
摺動部材の摩耗量に対応する回路の切断を検出することにより、摺動部の実際の摩耗量を段階的に検知することができ、摩耗量の変化の傾向を把握することができる。また、本発明の摩耗センサは、各層のプリントラインの先端からの距離を任意に設計できるので、分解能を高めることができ、微小な摩耗量が検出できる。
【0020】
また、検出法としては、電気抵抗のみの単純な方法であるため、外乱に強く摩耗判定が容易である。そして、摩耗センサは単純な構造であるので、低コストで製作ができる。
【0021】
また、本発明の摩耗センサによれば、プリントラインをプリントする層と、しない層を交互に積層できるので、プリントライン間を広く設計でき、誤動作を防止できる。そして、軸受摩耗量を常時監視して軸受の交換時期を知り、トラブルの発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の摩耗センサの外観を示す図である。
【図2】図1(a)のA-A断面図である。
【図3】本発明の実施形態の摩耗センサの産業機械への取り付けの一例を示す図である。
【図4】図3の本実施形態の摩耗センサの摩耗部Dを拡大した図である。
【図5】本発明の他の実施形態の摩耗センサのプリントラインの配置を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態の摩耗センサのプリントラインの配置を示す図である。
【図7】摩耗くずによる誤動作のメカニズムの一例を説明する図である。
【図8】摩耗くずによる誤動作のメカニズムの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態である摩耗センサについて、図を参照して詳細に説明をする。

【0024】
図1は、本発明の実施形態の摩耗センサの外観を示す図である。図1(a)は本実施形態の摩耗センサの本体部の斜視図であり、図1(b)は本実施形態の摩耗センサの本体部の分解斜視図である。

【0025】
摩耗センサ100は、回路プリント基板101~105が積層して構成される。各回路プリント基板の先端位置は同一となるように積層されている。回路プリント基板101~105は、測定対象となる摺動部材(以下、ターゲットともいう)に応じ、リジッド基板またはフレキシブル基板の中から適宜選択される。

【0026】
なお、本実施形態の摩耗センサは、回路がプリントされた基板とプリントされていない基板を交互に積層するなどしても良い。

【0027】
回路プリント基板101~105にリジッド基板を用いた場合には、摩耗センサ自体が一定の剛性を有するため、特段の保持部材を設けることなく摩耗センサをターゲットに固定することが可能となる。

【0028】
回路プリント基板101~105に、フィルム状のフレキシブル基板を用いた場合には、摩耗センサ自体は変形自在であるため、非測定部材の形状によらず、摩耗センサの接着によるターゲットへの取り付けが可能となる。また、フィルム状であるため、摩耗センサから発生する摩耗粉は微小であり、ターゲットより柔らかい素材で構成することが可能であるため、ターゲット及び相手材料の摩耗に及ぼす影響は極めて小さい。

【0029】
リジッド基板としては、一般的基板として、ベークライト基板、フェノール基板、エポキシ基板(紙エポキシ、ガラスエポキシ等)、ガラスコンポジット基板、ガラスクロス基板、セラミック基板(アルミナ等)、及び、金属基板(鉄、銅、アルミニウム、ステンレス等)等を使用することが可能である。

【0030】
また、リジッド基板の材料としては、特殊樹脂基板材料として、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂、フッ素系樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂、PPO(ポリフェノールオキサイド)樹脂、及び、BT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂等を使用することが可能である。

【0031】
また、リジッド基板の材料としては、その他、近年開発されている基板材料として、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、ポリオレフィン系、液晶性ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、アクリル系樹脂、PVB積層板、PEEK、ポリキノリン、ノルボルネン、ポリパラバン酸、及び、ビスアリルナジド系等を使用することが可能である。

【0032】
フレキシブル基板材料としては、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、ガラスクロス、エポキシ樹脂、及び、ガラス繊維等を使用することが可能である。例えば、樹脂、ガラス繊維等を用い1層あたり0.2mm程度の厚さに形成したものを用いる

【0033】
図1(b)に示すように、本実施形態の摩耗センサ100の各回路プリント基板101~105には、各々プリントライン1~5が設けられている。摩耗センサ本体部100の下部のプリントライン1~5の下端部にはビアホール1b~6bが備わり、後述する回路プリント基板101~105間の電気的導通が図られている。これらプリントライン1~5により、全体として摩耗センサ回路部を構成している。

【0034】
図1(b)は、回路プリント基板101~105のプリントラインの配置を示す図である。

【0035】
回路プリント基板101には、プリントライン1が形成され、回路プリント基板102には、プリントライン2が形成され、回路プリント基板103には、プリントライン3が形成され、回路プリント基板104には、プリントライン4が形成され、回路プリント基板105には、プリントライン5が形成される。さらに、各プリントライン1~5の上端(摩耗検知部分)をそれぞれ摩耗検知用プリントライン1a~5aとする。

【0036】
図2は、図1(a)のA-A断面図である。図に示すように本実施形態の摩耗センサの摩耗検知用プリントライン1a~5aの幅はWであり、間隔Gをもって回路プリント基板101~105に各々配置されている。なお、W及びGについては同一の長さでもよく、測定条件に応じて基板ごとに適宜変化させてもよい。

【0037】
さらに、摩耗検知用プリントライン1a~5aの下端は、本実施形態の摩耗センサ100の先端部(被測定物にまず接触する部分)からそれぞれL1~L5の位置に配置される。

【0038】
本実施形態の摩耗センサ100は、一般的なプリント基板製造技術を用いて製造可能である。

【0039】
本実施形態においては、摩耗検知用プリントライン数は5とするが、これに限られるものではなく、摩耗検知用プリントライン数は任意に設定が可能である。また、同様に各摩耗検知用プリントライン1a~5aの間隔も任意に設定が可能である。また、本実施形態においては、各摩耗検知用プリントライン1a~5aは直線上となっているが、摩耗を測定する構成部材の形状に合わせて任意の曲線や形状とすることもできる。

【0040】
図3は、本実施形態の摩耗センサの産業機械への取り付けの一例を示す図である。Aは産業機械内の回転軸であり、Bは軸受を示す。図に示すように、プリントライン1については、ビアホール1bを介して、測定部101の接続部101-1と接続し、接続部101-6と接続するビアホール6bを介して、1つの回路(摩耗センサ回路部)を形成する。同様に、プリントライン2~5については、ビアホール2b~5bを各々介して、測定部101の接続部101-2~101-5と接続し、接続部101-6と接続するビアホール6bを介して、各々1つの回路(摩耗センサ回路部)を形成する。

【0041】
測定部101は、プリントライン1~5の抵抗値を測定し、プリントライン1の絶縁により、1段目のプリントラインである摩耗検知用プリントライン1aの摩耗を検知する。同様に、各プリントライン2~5の絶縁により、2~5段目のプリントラインである各摩耗検知用プリントライン2a~5aの摩耗を各々検知する。

【0042】
実際に産業機械の運転が開始すると、回転軸Aと軸受Bとの摺動により、軸受Bの内面の摩耗が進行し、摩耗が図2に示すL1進行したところで、摩耗センサ100の一番摺動面に近い場所に位置する摩耗検知用プリントライン1aがまず摩耗する。摩耗検知用プリントライン1aの摩滅により、プリントライン1の電気的接続が切断されることとなり、プリントライン1の抵抗値は無限大となる。摩耗検知用プリントライン1aが、まず摩滅することにより、以後の摩耗量の基準とすることが可能となる。

【0043】
軸受Bの摩耗とともに、摩耗センサ100がさらに摩耗し、摩耗がL2進行したところで、摩耗検知用プリントライン2aは摩耗により消滅し、プリントライン2の電気的接続が切断されることとなる。これにより、プリントライン2の抵抗値は無限大となる。すなわち、プリントライン2の抵抗値が無限大となったことを検知することにより、摩耗がL2進行したことを検知することができる。

【0044】
以後、摩耗センサ100の摩耗が進行するにつれて、摩耗検知用プリントライン3a~5aが摩耗し、プリントライン3~5の導通が順に失われることにより、摩耗がL3~L5進行したことが検知できる。

【0045】
この摩耗センサ100の摩耗量L1~L5は、そのまま軸受Bの摩耗量と同一であるため、摩耗センサ100の摩耗を段階的に検出することにより、軸受Bの摩耗量を段階的に検知することができる。

【0046】
一般に、回路の導通が切断された状態、すなわち抵抗値が無限大の状態を検出することは容易であるため、確実な摩耗を検知することが出来る。

【0047】
図4は、図3の本実施形態の摩耗センサの摩耗部Dを拡大した図である。図に示すように、プリントライン1とプリントライン2が異なる基板101、102に形成されているため、両プリントラインには間隔l1が存在し、これにより、プリントライン1の摩耗くずが隣接するプリントライン2に付着してショートすることを防ぐことが可能である。

【0048】
図5(a)は、他の実施形態の摩耗センサのプリントラインの配置を示す図である。図に示すように、プリントライン1a~3aは各々Wの幅を有すると共に、Wより小さい値の間隔(ピッチ)Gをもって配置されている。これにより、摩耗センサ200の分解能はGとなりプリントライン幅W以下の分解能を実現できる。

【0049】
例えば、一般的なプリント技術を用いた場合には、各回路プリント基板におけるプリントラインのピッチは0.1mm程度となるが、複数の回路プリント基板上に配置を間隔0.05mずつずらしてプリントラインを形成することにより、摩耗センサ本体部200の摩耗検知用プリントライン1a、2a、3aは、0.05mmピッチで配置されることとなり、より高いレベルの検出分解能0.05mmを得ることが可能となる。これにより、高度なプリント技術を用いなくとも高分解能の摩耗センサを低コストで製作することが可能となる。

【0050】
このように、本実施形態の摩耗センサによれば、プリントラインを複数の回路プリント基板に分けて配置することにより、検出の信号を層毎に変えたり、1層では不可能な検出分解能を得ることが可能となる。

【0051】
また、各プリント基板のプリントラインの先端からの距離を任意に設計することにより、測定対象に応じた微小な摩耗量を検出が可能である。

【0052】
図5(b)は、他の実施形態の摩耗センサのプリントラインの配置を示す図である。図に示すように、摩耗検知用プリントライン1a~5aの摩耗センサ300の先端からの順番とプリント基板301~305の積層の順番とを一部又は全部異なるものとし、プリントライン1a~5aの層間距離の拡大を図ったものである。図5(b)に示すように、本実施形態では摩耗検知用プリントライン1aと次に摩耗する摩耗検知用プリントライン3aとの間隔はl2となり、図4に示す間隔l1より層間距離が増大している。このような層間距離の拡大によりプリントラインの摩耗くずが他のプリントラインに付着してショートすることをより一層効果的に防止することが可能である。

【0053】
また、プリントラインをプリントする基板と、しない基板を交互に積層してもよい。これにより、プリントライン間をさらに広く設計でき、誤動作を防止できる。

【0054】
図6は、他の実施形態の摩耗センサのプリントラインの配置を示す図である。図に示すように、摩耗検知用プリントライン1a~5aの幅は、摩耗センサ400の先端部から離れるにつれて広くなっている。このような形状とすることにより、測定対象物の形状に合わせた摩耗センサの設計が可能となる。

【0055】
なお、本実施形態では回路が形成されたプリント基板のみ積層したが、サポート用プリント基板を最外層にさらに積層して摩耗センサ本体部100の剛性向上や保護を図ってもよい。プリント基板表面に導線をプリントした場合には、プリント基板が摩耗してもプリントライン自体は摩耗せず剥がれてしまい、摩耗を検知できない可能性があるが、プリントラインが配置されたプリント面をサポート用プリント基板で挟み込むことにより、確実にプリントラインが破断し、確実な摩耗の検知が可能となる。

【0056】
以上説明したように、本実施形態の摩耗センサによれば、摩耗検知用プリントラインが摩耗したときの回路の切断を検出することにより、摺動部材の摩耗量を段階的に検知することができる。検出法としては電気抵抗のみの単純な方法であるため、外乱に強く摩耗判定が容易である。また、実際の摩耗量を測定するため、誤差のない正確な測定が可能となる。

【0057】
そして、摩耗量の変化を段階的に把握できるため、摩耗量の変化の傾向を把握でき、機械システムの余寿命と最適なメンテナンスの時期を予測が可能となる。

【0058】
本実施形態の摩耗センサは、一般的なプリント基板製造技術を用いて製造可能であるため、高品質、高精度かつ低価格で大量生産をすることが可能である。

【0059】
そして、電気的な構成である回路配置がプリント基板上に一体的になされているので、振動により電極が移動するなどして測定誤差が生じるおそれがなく、また、計測ピッチを任意に精度良く設定することが可能である。

【0060】
以上説明した、上記各実施形態は、様々な変更や改良が加えられて実施されうるものである。

【0061】
上記各実施形態の摩耗センサは、軸受の摩耗や、工作機械の切削工具や、自動車のタイヤ及びブレーキパッドや、一般機械の摺動部や、一般機械のクラッチ及びブレーキや、圧延機のロール等の摺動面の摩耗の検出が可能であり、また、長い軸(シャフト)の中央部、回転体等の触れ回りの計測(ギャップセンサ機能)や、鉄道レール等の摩耗の検出や、工作機械のガイドレール等の摺動部の摩耗の検出や、軸の軸方向(スラスト)の変位量の検出に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0062】
100~400:摩耗センサ
101~105、201~205、301~305:回路プリント基板
1~5:プリントライン
1a~5a:摩耗検知用プリントライン
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7