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明細書 :電磁波検出方法及び電磁波検出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5963080号 (P5963080)
公開番号 特開2014-016303 (P2014-016303A)
登録日 平成28年7月8日(2016.7.8)
発行日 平成28年8月3日(2016.8.3)
公開日 平成26年1月30日(2014.1.30)
発明の名称または考案の名称 電磁波検出方法及び電磁波検出装置
国際特許分類 G01J   1/02        (2006.01)
G02F   1/377       (2006.01)
G01N  21/3581      (2014.01)
FI G01J 1/02 C
G02F 1/377
G01N 21/3581
請求項の数または発明の数 8
全頁数 16
出願番号 特願2012-155368 (P2012-155368)
出願日 平成24年7月11日(2012.7.11)
審査請求日 平成27年4月17日(2015.4.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
【識別番号】390013815
【氏名又は名称】学校法人金井学園
発明者または考案者 【氏名】谷 正彦
【氏名】栗原 一嘉
【氏名】山本 晃司
【氏名】桑島 史欣
個別代理人の代理人 【識別番号】100110814、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 敏郎
審査官 【審査官】塚本 丈二
参考文献・文献 特開2000-275107(JP,A)
TANI, M., et al.,Efficient Electro-Optic Sampling Detection of Terahertz Radiation via Cherenkov Phase Matching,遠赤外領域開発研究,日本,福井大学 遠赤外領域開発研究センター,2011年 6月,第12巻,第193-199頁
K. Iwaszczuk et al.,Terahertz field enhancement to the MV/cm regime ina tapered parallel plate waveguide,OPTICS EXPRESS,2012年 4月 9日,Vol.20,No.8,8344-8354
SCHELLER, M., et al.,Heterodyne Detection of Intracavity Generated Terahertz Radiation,IEEE TRANSACTIONS OF TERAHERTZ SCIENCE AND TECHNOLOGY,2012年 5月,Vol. 2, No. 3,pp. 271-277
RANGEL, N. L., et al.,Graphene Signal Mixer for Sensing Applications,J. Phys. Chem. C,2011年,115,pp. 12128-12134
調査した分野 G01J 1/00-1/60
G01N 21/00-21/61
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus

特許請求の範囲 【請求項1】
電気光学効果を用いたEOサンプリング法により電磁波を検出する電磁波検出方法において、
サンプリング光照射手段から照射されたサンプリング光を非線形光学結晶に入射させ、
電磁波照射手段から照射された検出対象の電磁波を集束させて増強し、
増強した電磁波を前記非線形光学結晶に前記サンプリング光の光軸に対してチェレンコフ位相整合角で入射させ、
位相整合された前記電磁波と前記サンプリング光とを結合させて出力される和周波成分及び差周波成分を含む波数ベクトル整合された出力を、この出力の中心で対称に二分割し、
分割された前記出力の各々を、予め信号極性が反転する位置に配置した二つの検出部に入力し、
一方の前記検出部で前記和周波成分を検出させ他方の前記検出部で前記差周波成分を検出させ、
前記検出部の各々でヘテロダイン検波法又はホモダイン検波法によって検出された二つの信号の差分を求めること、
を特徴とする電磁波検出方法。
【請求項2】
前記電磁波照射手段から照射された電磁波を、少なくとも表面が金属で形成されたV溝に導入した後、このV溝の先端部まで伝搬させて増強することを特徴とする請求項1に記載の電磁波検出方法。
【請求項3】
前記非線形光学結晶で導波路を形成し、この導波路に前記サンプリング光を入射させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波検出方法。
【請求項4】
電気光学効果を用いたEOサンプリング法により電磁波を検出する電磁波検出装置において、
サンプリング光を照射するサンプリング光照射手段と、
検出対象の電磁波を照射する電磁波照射手段と、
前記電磁波を集束させて増強する電磁波増強手段と、
増強された前記電磁波を前記サンプリング光の光軸に対してチェレンコフ位相整合角で入射させる位相整合手段と、
非線形光学結晶で形成され、位相整合された前記電磁波と前記サンプリング光とを結合させて和周波成分及び差周波成分を含む出力を発生させる和差周波発生手段と、
前記和周波成分及び前記差周波成分を含む波数ベクトル整合された出力を、この出力の中心で対称に二分割する分割手段と、この分割手段によって分割された前記出力の各々が入力されるとともに一方で前記和周波成分を検出し他方で前記差周波成分を検出し、検出した信号の極性が反転する位置に配置された二つの検出部とを備え、前記検出部の各々でヘテロダイン検波法又はホモダイン検波法で検出された二つの信号の差分を求める検出手段と、
を有することを特徴とする電磁波検出装置。
【請求項5】
前記電磁波増強手段が、少なくとも表面が金属で形成されたV溝から形成されていることを特徴とする請求項に記載の電磁波検出装置。
【請求項6】
前記V溝の頂部の角度を、前記V溝に入射される電磁波の集束角に基づいて決定したことを特徴とする請求項に記載の電磁波検出装置。
【請求項7】
前記位相整合手段及び前記和差周波発生手段が、一方の傾斜面から入射した前記電磁波をチェレンコフ位相整合角で他方の傾斜面に出力されるように形成されたプリズムと、前記他方の傾斜面に形成された非線形光学結晶との結合体であり、
前記プリズムを前記V溝の先端部に配置したこと、
を特徴とする請求項5又は6に記載の電磁波検出装置。
【請求項8】
前記V溝の先端部に平行部を設け、この平行部に前記プリズムを配置したことを特徴とする請求項に記載の電磁波検出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波の検出方法及びその装置に関し、特に、周波数30GHz~30THz光長10mm~10μmの周波数領域の電磁波を検出するのに適した電磁波検出方法及び電磁波検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の周波数領域の中では、特にテラヘルツ光帯の電界強度を検出することで非破壊的に検査等を行う技術が近年開発され、例えば、X線装置に代わる安全な透視検査装置を構成してイメージングを行う技術などへの利用が進んでいる。また、物質内部の吸収スペクトルや複素誘電率を求めて分子の結合状態などの物性を調べる分光技術、キャリア濃度や移動度、導電率などの物性を調べる計測技術、生体分子の解析技術などへの利用も進められている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2011-33700号公報
【特許文献2】特開2010-204488号公報
【特許文献3】特開2011-203718号公報
【0004】

【非特許文献1】IQEC/CLEO Pacific Rim 2011 「Efficient electro-optic sampling detection and generation of intenseTHz radiation via Cherenkov-type phase matching in a LiNbO3 crystalcoupled to a Si prism」
【非特許文献2】S. P. Kovalev and G. Kh.Kitaeva, JETP Lett. Vol.94,No.2, pp.91-96 (2011).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、テラヘルツ光のような電磁波の電界強度を検出する方法としては、電気光学(EO)効果を用いて電場を検出するEOサンプリング法を用いることができるが、このEOサンプリング法において電気光学結晶として非線形光学係数の大きな非線形光学結晶を用いる場合は、検出を高効率に行うためにサンプリングするテラヘルツ光の位相速度とサンプリング光として用いるフェムト秒レーザーパルスの群速度との速度が一致している(位相整合が成立している)こと、複屈折特性を有する結晶に対してはその複屈折による位相遅延を補償することが必要条件となる。
【0006】
前者はチェレンコフ位相整合法を用いることで、どのような結晶及びサンプリング光長でも位相整合条件を得ることができる技術が本願出願人によって提案されている(非特許文献1参照)。しかし、後者の固有複屈折の問題については、偏光板を90度回転させて同じ結晶光路を2度伝搬させるという手法が特許出願人により提案されている(非特許文献1参照)ものの、装置構成が複雑になるという欠点があった。
さらに、非特許文献2では、”Energy sensitive electro optical detection”と称する手法によるTHz光のEOサンプリング検出法を提案しているが、この検出法では従来法よりも感度がωTHz/ω0(ωTHz:THz光の周波数、ω0:サンプリング光の周波数)だけ小さくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、固有複屈折のある結晶に対しても位相遅延補償なしに電磁波の検出ができ、波長板や偏光素子、光検出器による差分検出が不要で構成を簡素化できるとともに、高感度かつ高効率で電磁波の検出が可能な電磁波の検出方法及び電磁波の検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、電気光学効果を用いたEOサンプリング法により電磁波を検出する電磁波検出方法において、サンプリング光照射手段から照射されたサンプリング光を非線形光学結晶に入射させ、電磁波照射手段から照射された検出対象の電磁波を集束させて増強し、増強した電磁波を前記非線形光学結晶に前記サンプリング光の光軸に対してチェレンコフ位相整合角で入射させ、位相整合された前記電磁波と前記サンプリング光とを結合させて出力される和周波成分及び差周波成分を含む波数ベクトル整合された出力を、この出力の中心で対称に二分割し、分割された前記出力の各々を、予め信号極性が反転する位置に配置した二つの検出部に入力し、一方の前記検出部で前記和周波成分を検出させ他方の前記検出部で前記差周波成分を検出させ、前記検出部の各々でヘテロダイン検波法又はホモダイン検波法によって検出された二つの信号の差分を求める方法としてある。
【0009】
電磁波を増強する手段としては、表面プラズモンを発生させるものを利用することができ、例えば請求項2に記載するように、前記電磁波照射手段から照射された電磁波を、少なくとも表面が金属で形成されたV溝に導入した後、このV溝の先端部まで伝搬させて増強するとよい。
前記非線形光学結晶は単結晶であってもよいが、請求項3に記載するように、前記非線形光学結晶から形成された導波路であってもよい。
【0010】
上記方法の発明を実施するための本発明の装置は、請求項に記載するように、電気光学効果を用いたEOサンプリング法により電磁波を検出する電磁波検出装置において、サンプリング光を照射するサンプリング光照射手段と、検出対象の電磁波を照射する電磁波照射手段と、前記電磁波を集束させて増強する電磁波増強手段と、増強された前記電磁波を前記サンプリング光の光軸に対してチェレンコフ位相整合角で入射させる位相整合手段と、非線形光学結晶で形成され、位相整合された前記電磁波と前記サンプリング光とを結合させて和周波成分及び差周波成分を含む出力を発生させる和差周波発生手段と、前記和周波成分及び前記差周波成分を含む波数ベクトル整合された出力を、この出力の中心で対称に二分割する分割手段と、この分割手段によって分割された前記出力の各々が入力されるとともに一方で前記和周波成分を検出し他方で前記差周波成分を検出し、検出した信号の極性が反転する位置に配置された二つの検出部とを備え、前記検出部の各々でヘテロダイン検波法又はホモダイン検波法で検出された二つの信号の差分を求める検出手段とを有する構成としてある。
【0011】
前記電磁波増強手段としては、表面プラズモンを発生させるものを利用することができ、例えば請求項に記載するように、前記電磁波増強手段が、少なくとも表面が金属で形成されたV形の溝から形成されているものを用いることができる。前記V溝の頂部の角度は、請求項に記載するように、前記V溝に入射される電磁波の集束角に基づいて決定することができる。そして、請求項に記載するように、前記位相整合手段及び前記和差周波発生手段を、一方の傾斜面から入射した前記電磁波をチェレンコフ位相整合角で他方の傾斜面に出力されるように形成されたプリズムと、前記他方の傾斜面に形成された非線形光学結晶との結合体から構成し、前記プリズムを前記V溝の先端部に配置するようにしてもよい。請求項に記載するように、前記V溝の先端部に平行部を設けて、この平行部に前記プリズムを配置するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のように構成されているので、固有複屈折のある結晶に対しても位相遅延補償なしに検出対象の電磁波のEOサンプリングを可能にするとともに、波長板,偏光素子,2つの光検出器による差分検出法を用いる必要がなく、簡素な構成で、かつ、高感度かつ高効率でEOサンプリング検出ができる。
特に本発明では、電磁波増強手段によってEOサンプリングで検出されるテラヘルツ波の電界強度を増強することで、EOサンプリングの検出感度を飛躍的に増大させることができる。
さらに、前記和周波成分及び前記差周波成分を含む出力を二つに分割するとともに信号極性が反転するように二つの検出部を配置し、二つの検出部によって検出された信号の差分を求めることで、検出器による検出感度を高めることができるとともにノイズ成分も低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[装置構成]
図1に本発明の装置構成をブロック図で示す。
図1の装置は、サンプリング光を照射するサンプリング光照射部1と、検出対象の電磁波であるテラヘルツ(以下、「THz」と記載する)波を照射するTHz光照射部2と、THz光の位相調整を行う位相整合部3と、THz光照射部2から照射されたTHz光を金属の表面プラズモンと結合させて増強する増強部9と、位相調整及び増強されたTHz光とサンプリング光とを光結合して和周波を発生させる和差周波発生器4と、この和差周波発生器4からの出力から和周波成分を検出する検出器5とを有する。
【0014】
[サンプリング光照射部1及びTHz光照射部2]
サンプリング光照射部1やTHz光照射部2としてはフェムト秒レーザー装置を用いることができる。なお、これらレーザー装置から照射されるレーザー光を公知の2倍波発生器に通すことで、半分の波長のレーザー光に変換してもよい。また、サンプリング光照射部1から照射されたサンプリング光は、次に説明する位相整合部3でTHz光と光結合できるように、公知の遅延手段によって位相整合部3に入射されるタイミングが調整される。
【0015】
[増強部9]
この実施形態の増強部9は、THz光をV形の溝(V溝)内の金属の表面プラズモンと結合させ、前記V溝の先端に集束させることでTHz光を増強するものである。このような増強部9の原理としては、9 April
2012/Vol.20,No.8/OPTICS EXPRESS 8355に掲載されたK. Iwaszczukらによる”Terahertz field enhancement to the MV/cm regime in
a tapered parallel plate waveguide”を利用することができる。
表面プラズモンとの結合を生じさせるものであれば、金属の種類は特に問わないが、金(Au)や銀(Ag)を好適に用いることができる。アルミニウムや鉄などで形成された金属製のブロックにV溝を形成し、V溝の内面に金(Au)や銀(Ag)等の金属をメッキ又は蒸着等してもよいし、樹脂やセラミック等の非金属材料のブロックにV溝を形成し、V溝の内面に金(Au)や銀(Ag)等の金属層を形成してもよい。
V溝の頂部の角度(図4中、符号αで示す角度)はできるだけ小さいほうがよいとされるが、V溝の角度を入射するTHz光のビーム集束角に合わせることで、V溝の頂部の角度αが大きくても効率よくTHz光を集束させることができる。最適なV溝の頂部の角度αは、THz光のビーム集束角を目安に最適値を実験等で求めることができ、例えば、THz光のビーム集束角が18°の場合には、V溝の頂部の角度αは20°程度とすることができる。
V溝の先端に狭幅の平行溝を設け、集束させたTHz光をこの平行溝内で伝搬させることで、増強したTHz光を次に説明する位相整合部3に導くことができる。前記平行溝の幅は、狭いほど増強効果を高めることができ、THz光の波長よりも狭くするのが好ましい。
【0016】
[位相整合部3]
サンプリング光とTHz光の二つの光を光結合する場合は、結合しようとする二つの光を位相整合する必要があり、二つの光の媒質中の位相速度が一致していることが条件となる。位相整合部3は、入射されたTHz光の位相速度がサンプリング光の群速度と同じになるように調整する。本発明では、サンプリング光の光軸に対して斜めにTHz光を入射させるチェレンコフ(Cherenkov)位相整合法を利用したものを用いる。
なお、THz光の位相速度がサンプリング光の群速度と同じになるように調整するための材料としては、ニオブ酸リチウム(LiNbO:略称LN)や四ほう酸リチウム(Li247:略称LBO)、βバリウムボレイト(略称BBO)など、二次の非線形光学効果を有する結晶を用いることができるが、電気光学係数の高いLN結晶を用いるのが好ましい。
【0017】
LN結晶や導波路に入射されたサンプリング光に対してTHz光をチェレンコフ位相整合角(θ)で入射させるには、例えば傾斜角(90°-θ)のSiプリズムを用いるとよい。このときチェレンコフ位相整合角θcはSiプリズム中のTHz光の位相屈折率nTHzとLN結晶中のサンプリングパルス光の群屈折率ngの比で決まる。すなわち、cosθc=n/nTHzでチェレンコフ位相整合角θが決まる。LN結晶としては、バルク結晶を用いるよりも導波路構造を持った結晶を用いるほうが、LN結晶内での吸収をさけ、検出帯域を広くとるために望ましい。
【0018】
[和差周波発生器4]
和差周波発生器4は、位相調整された二つの光の和周波又は差周波を発生させる。
前記した非線形光学効果を有する材料の単結晶や、この材料で形成された導波路は和差周波発生器4として利用することができる。
【0019】
ここで、サンプリング光の周波数をω0,THz光の周波数をωTHzとすると、導波路を構成する非線形光学結晶内ではこれら2つの波の和周波ωSFG(=ω0THz)が発生する。有効非線形光学係数(サンプリング光とテラヘルツ光の偏光方向,および非線形光学結晶の結晶方位に依存して決まる)をdeffとすると和周波発生(Sum Frequency
Generation, 略してSFG)による非線形分極は以下の式で与えられる。和周波P(2)は、
【0020】
【数1】
JP0005963080B2_000002t.gif
εは真空の誘電率である。この非線形分極により和周波が発生する。サンプリング光が十分強く,その非線形相互作用による減衰を無視できるとし、SFGにより発生した光波の電界振幅をESFGとすると
【0021】
【数2】
JP0005963080B2_000003t.gif

である。ここでμは真空の透磁率,cは真空中の光速度,Lはサンプリング光が電気光学結晶中を伝搬する距離,nω0+ωTHzは周波数ω0+ωTHzにおける屈折率,
g(ΔkL)は次で定義される位相不整合因子である。
【0022】
【数3】
JP0005963080B2_000004t.gif
ここで波数不整合Δkは次で与えられる。
【0023】
【数4】
JP0005963080B2_000005t.gif
k0はサンプリング光の波数,kSFGはSFGによる光波の波数,kTHzはTHz光の波数である。光波の周波数はTHz光の周波数に比べて2桁以上大きい(ω0>>ωTHz)ので、ω0+ωTHzはω0,nω0+ωTHzはnω0で近似してよい。すると(2)式は
【0024】
【数5】
JP0005963080B2_000006t.gif
と書き換えられる。
【0025】
もともとのサンプリング光と和周波発生によって発生した光は重ね合わさって検出される。和周波発生の効率が小さく、もとのサンプリング光がほとんど減衰しないと仮定すると、光強度の変化率(もともとのサンプリング光の強度I0で規格化した全光強度)は次式で与えられる。
【0026】
【数6】
JP0005963080B2_000007t.gif
最後の式では発生した和周波発生の電界振幅ESFGは、サンプリング光の電界振幅E0よりずっと小さいとしているので、ESFGの自乗に対応する項は無視した。
【0027】
[検出器5]
検出器5は、和差周波発生器4からの出力から和周波成分又は差周波成分を検出する。
サンプリング光強度の変化量だけをロックイン検出法で検出する場合は、信号強度は次式で与えられる。(6)式においては、和周波発生による発生した光波の電界振幅ETHzはもとのサンプリング光の波長とほとんど同じであり、このため干渉により、ETHzはE0との積((6)式2目の真ん中の項)として検出されることが示されている。これはヘテロダイン検波と同じであり、信号はE0だけ増強される。
(6)式を書き直すと、
【0028】
【数7】
JP0005963080B2_000008t.gif

となり、これに(5)式を用いると、(7)式は次式で与えられる。
【0029】
【数8】
JP0005963080B2_000009t.gif
LN結晶の場合,非線形感受率テンソル成分のなかでd33が一番大きい。
また
【0030】
【数9】
JP0005963080B2_000010t.gif
の関係を用いて(8)式を書き換えると
【0031】
【数10】
JP0005963080B2_000011t.gif
を得る。ここでneはLN結晶の異常光の屈折率で、r33はd33に対応した電気光学係数である。
さらにIm[g(ΔkL)]はΔkL=2.216 のとき最大値gmax=0.723をとる。チェレンコフ位相整合では波数不整合Δkを結晶の角度で任意に調整できるので、ΔkL =2.216となるように調整することで容易にgmax=0.723を得る(結晶の伝搬長Lは一定とする)ことができる。
すなわち、波数不整合Δkを最適化することでヘテロダイン方式による信号の最大値を得ることができ、このときのヘテロダイン方式による信号強度は
【0032】
【数11】
JP0005963080B2_000012t.gif
で与えられる。
【0033】
[比較]
本発明の方法を、LN結晶を用いた従来のEOサンプリング法と比較する。
従来のEOサンプリング法における信号変調度は次式で与えられる(完全位相整合条件を仮定)。
【0034】
【数12】
JP0005963080B2_000013t.gif
ここで、DGはTHz光によって引き起こされた位相遅延である。noはLN結晶の正常光の屈折率である。
例えば、r13 =9.6 [pm/V], r33 =30.9 [pm/V], no= 2.255 and ne=2.176 (800
nm)を用いてそれぞれの性能指数を計算すると従来のEOサンプリング法では、
【0035】
【数13】
JP0005963080B2_000014t.gif
となり、本発明のEOサンプリング法では、
【0036】
【数14】
JP0005963080B2_000015t.gif
となる。
以上から、本発明のEOサンプリング法は従来のEOサンプリング法よりも高効率(LN結晶の場合で約2倍)であることがわかる。
【0037】
[他の実施形態]
上記では和周波の検出を行っているが、本発明では差周波の検出を行ってもよい。結晶中では和周波だけではなく差周波も同時に発生している。この場合、差周波発生による光波のヘテロダイン信号は、和周波の場合に対して符号が反転する。どちらの信号が優勢になるかはTHz光の,サンプリング光波に対する位相で決まる。
また、上記ではサンプリング光とTHz光は単一周波数としているが、実際にはそれぞれパルス波であるので、有限の周波数スペクトル分布を持つ。差周波発生と有限の周波数スペクトルを考慮した(10)式に対応する表式は次式で与えられる。
【0038】
【数15】
JP0005963080B2_000016t.gif
ここでC(ωTHz)は次で定義されるサンプリング光の相互相関関数である。
【0039】
【数16】
JP0005963080B2_000017t.gif
ωTHz =0のとき
【0040】
【数17】
JP0005963080B2_000018t.gif
はサンプリング光の自己相関関数であり、サンプリング光強度に比例した量である。サンプリング光のスペクトル分布がTHz光のそれよりも十分広い(サンプリング光のパルス幅がTHz光に対して十分狭い場合に相当)とすると
【0041】
【数18】
JP0005963080B2_000019t.gif
と近似でき、(15)式は
【0042】
【数19】
JP0005963080B2_000020t.gif
とあらわされる。(19)式の導出においてはΔkはωTHzに依存しないと仮定した。この仮定はチェレンコフ位相整合では妥当な仮定である。
(19)式は(10)式と類似しているが,周波数ωTHzに対するTHz光の振幅ETHz(ωTHz)の代わりに、THz光の時間波形ETHz(τ)が用いられている。ここでτはTHz光とサンプリング光の相対遅延時間である。したがって(19)式はTHz光の時間波形に依存したEO信号が検出されることを示している。
【0043】
[具体的装置構成]
本発明の具体的な装置構成の一例を図2に示す。
図2に示すように、このテラヘルツ光検出装置は、フェムト秒レーザー装置11とレンズ12とを備えたサンプリング光照射部1と、フェムト秒レーザー装置21とTHzエミッタ22とを備えたTHz光照射部2と、THz光照射部2から照射されたTHz光を金属の表面プラズモンと結合させて増強する増強部9とを有する。
図2の例では、位相整合部3及び和差周波発生器4は、プリズム31とこのプリズム31の一面に形成された導波路41とを有する構成としてある。
プリズム31としては、テラヘルツ帯での吸収と分散が小さいシリコン(Si)プリズムを用いるのが好ましい。
図3に、図2の装置に用いられる位相整合部3及び和差周波発生器4の一例を示す。
【0044】
プリズム31は、一つの傾斜面がTHz光の入射面として形成された三角形状をなしていて、前記傾斜面から入射したTHz光が斜めに入射する面にLN結晶の薄膜からなる導波路41が形成されている。
前記傾斜面の傾斜角は、前記傾斜面から入射したTHz光がチェレンコフ位相整合に適した角度θになるように形成されている。チェレンコフ位相整合角はプリズム31中のTHz光の位相屈折率nTHzとLN結晶中のサンプリングパルス光の群屈折率ngの比で決まる。すなわち、cosθc=n/nTHzでチェレンコフ位相整合角θが決定される。
【0045】
上記構成のプリズム31は、図4に示すような増強部9に取り付けられる。
増強部9は、金属ブロックで形成された本体90と、この本体90に形成されたV溝91と、このV溝91の先端に形成された細幅の平行部92とを有している。本体90をアルミニウムや鉄等の金属材料で形成する場合や、樹脂やセラミックスなどの非金属材料で形成する場合は、V溝91及び平行部92の内表面に金(Au)や銀(Ag)等の金属層を形成するのが好ましい。
本体90の一端面には、V溝の幅広部分が開口し、この開口から取り入れたTHz光がV溝の金属の表面プラズモンと結合して増強されながら細幅の先端部へと伝搬される。
【0046】
平行部92の幅寸法t1は小さいほど増強効果が大きくなることから、幅寸法t1は可能な限り小さいものとするのが好ましい。より好ましくは、THz光の波長よりも小さいものであるのがよい。例えば、THz光の波長が1THz(波長0.3mm)である場合には、幅寸法t1は0.3mm以下とするのが好ましい。
【0047】
平行部92の先端が開口する本体90の他端面には、二つのプリズム保持部93,93が対向して設けられている。プリズム保持部93,93は、本体90と一体に形成されていてもよいし、図示するように本体90とは別体のブロック状の部材から形成されていてもよい。この二つのプリズム保持部93,93は、平行部92に連通する隙間を有するように互いに離間して平行に配置される。そして、前記隙間に、平行部92を伝搬したTHz光が入射するプリズム31が挿入して保持される。
【0048】
プリズム31と接触する二つのプリズム保持部93,93の対向面は、平行部92の一部を構成するように、平行部92の内面と同様に仕上げられているのが好ましい。
プリズム31は、THz光を入射させる斜面を平行部92側に差し向け、かつ、THz光が前記斜面に対して垂直に入射するように、向きを調整してプリズム保持部93,93に保持させる。
【0049】
プリズム31の幅寸法t2は、平行部92の幅寸法t1と同じとするのが好ましいが、薄肉のプリズム31や導波路41の形成が困難な場合には、平行部92の幅寸法t1よりも大きいものであってもよい。
なお、図4の例では図3に示した支持基板6を省略しているが、図4の例ではプリズム保持部材93,93が図3の支持基板6に相当するためである。図4の例では、必要に応じて、プリズム保持部材93,93間の隙間から露出する導波路41を覆う被覆材を設けてもよい。
【0050】
[導光経路]
サンプリング光照射部1から照射されたサンプリング光及びTHz光照射部2から照射されたTHz光を、増強部9を経てプリズム31及び導波路41に導く導光経路は、図2に示すように、サンプリング光照射部1に対向して設置された反射鏡8と、THz光照射部2に対向して設置された凹面鏡7aと、この凹面鏡7aに対向して設置された凹面鏡7bとから構成される。
【0051】
反射鏡8は、サンプリング光が導波路41に入射するように配置され、凹面鏡7a,7bは、THz光が増強部9のV溝91からプリズム31の傾斜面に入射するように配置される。
以上の構成より、サンプリング光照射部1から照射されたサンプリング光は、反射鏡8によってその進行方向を変換されて導波路41の側面から入射する。
また、THz光照射部2から照射されたTHz光は、凹面鏡7a,7bによってその進行方向を変換され、増強部9のV溝91に導入され、その先端部で集束される。このように増強されたTHz光は、平行部92を伝搬してプリズム31の傾斜面に入射される。
増強されたTHz光とサンプリング光は導波路41内で結合され、和周波出力又は差周波出力として導波路41から出力される。出力された和周波出力又は差周波出力は、検出する信号が最大になるように位置調整されたヘテロダイン方式の検出器5によって検出される。
【0052】
[実施例1]
以下の条件で本発明の効果の試験を行った。
レーザー光源:波長780nm,パルス幅<100fs,繰り返し50MHz
THz光発生素子:ボウタイ型光伝導アンテナ,バイアス+/-50 Vp-p @95kHz (Sin波),ポンプパワー約6mW
EO素子:Siプリズム結合LiNbO3結晶(厚さ 2mm, 1% Mol. MgO-doped stoichiometric LN),プローブパワー約1mW
増強部のV溝の頂部の角度α:20°(THz光の集束角18°)
増強部の平行部92の幅寸法t1:0.3mm
プリズムの幅寸法t2:0.3mm
導波路:プリズム保持部93,93の表面にプリズムに接するように肉厚2mmの導波路を貼り付けた。
[実施例2]
導波路の肉厚を40μmとした以外は実施例1と同じである。
[比較例]
増強部9を設けず、THz光が直接プリズム31に入射されるようにしたこと以外は実施例1と同じである。
【0053】
図5に、比較例及び従来方法によるTHz光の検出結果を示す。図5は、比較例におけるEOサンプリング方式で検出したTHzパルス波の時間領域波形を,従来のEOサンプリングで検出した場合の波形とともに示したものである。増強部9を有しない比較例においても、波長板や偏光素子等を用いずに従来と同様にTHz光の検出ができることがわかる。
図6は、増強部9を用いない比較例と、増強部9を使った実施例1,2との比較結果を示す図5と同様のグラフである。
本発明のように増強部9を用いることで、信号強度が増強されるのがわかる。実施例1と比較例のように導波路の肉厚が同じ場合(肉厚2mm)では、実施例1は比較例の約5.5倍である。また、増強の度合いは導波路の肉厚が小さいほど高くなり、実施例2のように導波路の肉厚を40μmとすると比較例の約17倍になる。
【0054】
[他の実施形態]
図7(a)に、本発明の検出方法及び検出装置における検出器5の他の実施形態を示す。上記したように、結晶中では和周波だけではなく差周波も同時に発生していて、差周波発生による光波のヘテロダイン信号は、和周波の場合に対して符号が反転する。また、和周波出力と差周波出力は、波数ベクトル整合により、出力のほぼ中心で対称に二分割することができる。そこで、この実施形態の検出器5は、左右一対のフォトダイオードPDA,PDBを備えているとともに、導波路41からレンズ52を経て出力された和周波出力及び差周波出力が、三枚の反射鏡51a,51b,51cにより分割されるようになっている。すなわち、反射鏡51aにより反射鏡51bに指し向けられた出力は、図7(b)にA部を拡大して示すように、反射鏡51bにより真っ直ぐ検出器5に向かう出力IIと、向きを変えて反射鏡51cに向かう出力Iとに二分割される。分割された二つの出力は、それぞれのフォトダイオードPDA,PDBに入力される。この実施形態において検出器5は、図7(a)(i)(ii)に示すようにフォトダイオードPDA,PDBによって検出される信号の極性が反転するように、位置合わせされる。
【0055】
図8に、フォトダイオードPDA,PDBによって検出されたそれぞれの信号を重ね合わせたグラフと、両信号の差分(Balance detection)を求めたグラフを示す。
図8のグラフからわかるように、この実施形態の検出器5では、フォトダイオードPDA,PDBによって検出されたそれぞれの信号の差分を求めることで、検出感度をほぼ倍にすることができる。また、ノイズ信号は左右のフォトダイオードPDA,PDBで極性が同じであるため、差分を求めることでノイズ成分も低減することができる。
【0056】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明に限定されるものではない。
例えば、上記の説明ではV溝91の先端に平行部92を設けて、V溝91で増強したTHz光を平行部92を介してプリズム31にまで導くようにしているが、V溝91の先端にプリズム31を配置して平行部92を設けないようにすることも可能である。また、この場合、プリズム31はV溝91の先端の外側に配置してもよいし、V溝91の先端の内側に配置してもよい。
さらに、THz光を伝搬させる平行部92は直線状に限らず、一部又は全部が湾曲していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、ミリ波帯、マイクロ波帯及びテラヘルツ光帯を含む領域(周波数30MHz~30THz:10m~10μm)の電磁波の検出に好適に適用が可能である。
また、本発明は各種センシング装置やイメージング装置などに適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の装置構成を説明するブロック図である。
【図2】具体的な装置構成を示す概略図である。
【図3】図2の装置に用いられる位相整合部及び和差周波発生器の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の増強部の一実施形態にかかり、その構成を説明する概略斜視図である。
【図5】比較例及び従来方法によるTHz光の検出結果を示すグラフである。
【図6】実施例1,2と比較例によるTHz光の検出結果を示すグラフである。
【図7】本発明の他の実施形態にかかり、二分割した出力を二つの検出部で検出させる検出器の構成を説明する概略図である。
【図8】他の実施形態における検出器の効果を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 サンプリング光照射部
2 テラヘルツ光照射部
3 位相整合部
4 和差周波発生器
5 検出器
9 増強部
90 本体
91 V溝
92 平行部
93 プリズム保持部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7