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明細書 :ナトリウム電池およびナトリウム電池用の正極部材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5900918号 (P5900918)
公開番号 特開2013-152869 (P2013-152869A)
登録日 平成28年3月18日(2016.3.18)
発行日 平成28年4月6日(2016.4.6)
公開日 平成25年8月8日(2013.8.8)
発明の名称または考案の名称 ナトリウム電池およびナトリウム電池用の正極部材
国際特許分類 H01M  10/054       (2010.01)
H01M  10/0562      (2010.01)
H01M   4/136       (2010.01)
H01M   4/40        (2006.01)
H01M   4/58        (2010.01)
H01M   2/02        (2006.01)
H01M   4/66        (2006.01)
FI H01M 10/054
H01M 10/0562
H01M 4/136
H01M 4/40
H01M 4/58
H01M 2/02 F
H01M 4/66 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2012-013469 (P2012-013469)
出願日 平成24年1月25日(2012.1.25)
審査請求日 平成27年1月22日(2015.1.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】守友 浩
【氏名】松田 智行
【氏名】高地 雅光
【氏名】栗原 佑太朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100137752、【弁理士】、【氏名又は名称】亀井 岳行
審査官 【審査官】山下 裕久
参考文献・文献 特開2010-113892(JP,A)
特開2011-180469(JP,A)
特開平05-217603(JP,A)
特開平01-272044(JP,A)
特開平05-251082(JP,A)
調査した分野 H01M 10/05-0587
H01M 4/13-62
特許請求の範囲 【請求項1】
導電部材の表面に、活物質としてのプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体を含む活物質部が形成された正極部材と、
金属ナトリウムを有し、前記正極部材と対を成す負極部材と、
ナトリウムイオンが移動可能且つ前記正極部材及び負極部材に接触する電解質と、
Aをアルカリ金属の少なくとも一種、xを0より大きく2以下の数、yを0より大きく1以下の数、zを0より大きく14以下の数とした場合に、化学式AMn[Fe(CN)Oで表される前記シアノ架橋金属錯体、
を備えたことを特徴とするナトリウム電池。
【請求項2】
バインダーおよび導電材を含有しない薄膜により構成された前記活物質部、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のナトリウム電池。
【請求項3】
酸化インジウム錫により構成された前記導電部材と、前記導電部材の表面に形成され且つ前記シアノ架橋金属錯体を含む薄膜により構成された前記活物質部と、を有する前記正極部材、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のナトリウム電池。
【請求項4】
透明材料により構成された前記導電部材と、
前記正極部材と前記負極部材との間に配置されて前記正極部材と前記負極部材とを隔離し且つ固体電解質としての白色のセパレータと、
前記正極部材、前記負極部材、前記セパレータを内部に収容すると共に、内部の正極部材を視認可能な透明な透明部を有するケースと、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のナトリウム電池。
【請求項5】
金属ナトリウムを有する負極部材を使用するナトリウム電池用の正極部材であって、導電部材の表面に、活物質としてのプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体を含む活物質部が形成され、前記シアノ架橋金属錯体は、Aをアルカリ金属の少なくとも一種、xを0より大きく2以下の数、yを0より大きく1以下の数、zを0より大きく14以下の数とした場合に、化学式AMn[Fe(CN)Oで表されることを特徴とするナトリウム電池用の正極部材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、負極にナトリウムを使用するナトリウム電池およびナトリウム電池用の正極部材に関する。
【背景技術】
【0002】
充放電可能な二次電池において、負電極として金属ナトリウム(Na)を使用したナトリウム電池が知られている。このようなナトリウム電池として、下記の特許文献1~3および非特許文献1に記載の発明が公知である。
特許文献1(特開2001-223021号公報)や特許文献2(特開2003-282137号公報)には、正極材として硫黄(S)を使用し、負極材として金属ナトリウム(Na)を使用したナトリウム電池(いわゆる「NaS」電池)が記載されている。
特許文献3(国際公開第2010/109889号)には、ナトリウムを吸蔵および放出可能なハードカーボンと結着剤、導電助剤等により構成された負極と、NaMn2O4やNaFePO4、NaCoO2等、NaNi0.5Mn0.5O2のナトリウム-遷移金属複合酸化物(酸化物系の活物質)と結着剤等により構成された正極と、を使用するナトリウム電池が記載されている。また、非特許文献1にも、酸化物系の活物質を使用するナトリウム電池が記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2001-223021号公報(「0002」~「0010」)
【特許文献2】特開2003-282137号公報(「0004」、「0033」、「0034」、「0039」~「0043」)
【特許文献3】国際公開第2010/109889号([0023]~[0033]、「0040」~[0042]、「0065」、図7)
【0004】

【非特許文献1】Shinichi Komaba、他8名,"ハードカーボン電極への電気化学的なNa挿入と固体-電解質界面皮膜(SEI)の形成とNaイオン電池への応用(Electrochemical Na Insertion and Solid Electrolyte Interphase for Hard-carbon Electrodes and Application to Na-ion Batteries)",Wiley online library, Advanced Functional Materials,2011年,21,p3859-p3867
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術の問題点)
前記特許文献1,2記載の構成では、電池の作動温度が300℃程度であり、作動温度に昇温、保持するための構成(ヒータ等)が必要となり、全体の構成が大型化すると共に、製造費用、運用費用等が高くなる問題がある。
また、特許文献3記載の技術のように、酸化物系の正極材を使用した場合、充放電に伴ってナトリウムが引き抜かれる際に、複雑且つ激しい構造相転移を示し、電池の特性(サイクル特性や充放電特性)に悪影響を及ぼす問題があった。また、特許文献3記載の構成では、図7に記載されているように、容量を増大させると、作動電圧(起電力)が2[V]程度(3[V]弱程度)しかなくなってしまい、パワーが小さい問題もある。さらに、特許文献3記載の構成では、段落番号「0065」に記載されているように、充放電の電流密度が25[mA/g]で容量が200~250[mAh/g]程度であることから、充放電レートが0.1Cオーダーでしか充放電が行われておらず、非特許文献1記載の技術でも1.2C程度であり、充放電レートが低い問題がある。
【0006】
本発明は、低コストで電池特性の高い電池を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明のナトリウム電池は、
導電部材の表面に、活物質としてのプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体を含む活物質部が形成された正極部材と、
金属ナトリウムを有し、前記正極部材と対を成す負極部材と、
ナトリウムイオンが移動可能且つ前記正極部材及び負極部材に接触する電解質と、
Aをアルカリ金属の少なくとも一種、xを0より大きく2以下の数、yを0より大きく1以下の数、zを0より大きく14以下の数とした場合に、化学式AMn[Fe(CN)Oで表される前記シアノ架橋金属錯体、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のナトリウム電池において、
バインダーおよび導電材を含有しない薄膜により構成された前記活物質部、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のナトリウム電池において、
酸化インジウム錫により構成された前記導電部材と、前記導電部材の表面に形成され且つ前記シアノ架橋金属錯体を含む薄膜により構成された前記活物質部と、を有する前記正極部材、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のナトリウム電池において、
透明材料により構成された前記導電部材と、
前記正極部材と前記負極部材との間に配置されて前記正極部材と前記負極部材とを隔離し且つ固体電解質としての白色のセパレータと、
前記正極部材、前記負極部材、前記セパレータを内部に収容すると共に、内部の正極部材を視認可能な透明な透明部を有するケースと、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記技術的課題を解決するために、請求項5に記載の発明のナトリウム電池用の正極部材は、
金属ナトリウムを有する負極部材を使用するナトリウム電池用の正極部材であって、導電部材の表面に、活物質としてのプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体を含む活物質部が形成され、前記シアノ架橋金属錯体は、Aをアルカリ金属の少なくとも一種、xを0より大きく2以下の数、yを0より大きく1以下の数、zを0より大きく14以下の数とした場合に、化学式AMn[Fe(CN)Oで表されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、に記載の発明によれば、プルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体を使用しない場合に比べて、低コストで電池特性の高い電池を提供することができる。また、請求項1、5に記載の発明によれば、Mn-Fe系のシアノ架橋金属錯体を使用して、サイクル特性が高く、容量が大きな電池を作成できる。
請求項2に記載の発明によれば、粉体をバインダーで固める構成に比べて、導電部材と活物質との電気的接触を向上させることができ、電池特性を向上させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、ITO製の導電部材の表面にシアノ架橋金属錯体を形成しない場合に比べて、低コスト且つ容易に電気的接触が向上した電極を作製することができる。
請求項4に記載の発明によれば、透明部を通じて、充放電に伴う正極部材の色の変化を観察することができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の実施例1のナトリウム電池の説明図であり、図1Aは斜視図、図1Bは図1AのIB-IB線断面図である。
【図2】図2は実施例1の正極板の要部説明図である。
【図3】図3は実施例1のナトリウム電池の透明部の説明図であり、図1AのIII-III線断面図である。
【図4】図4は実験例1の実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に起電力を取ったグラフである。
【図5】図5は実施例1のナトリウム電池の充放電レートの実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に起電力を取ったグラフである。
【図6】図6は実施例1のプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体の結晶構造の説明図であり、図6Aは充電された状態の説明図、図6Bは放電された状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例1のナトリウム電池の説明図であり、図1Aは斜視図、図1Bは図1AのIB-IB線断面図である。
なお、図1Bにおいて、構成の理解を容易にするために、全体の断面ではなく、一部を模式的に記載している。
図1において、本発明の実施例1のナトリウム電池1は、円筒状のケース2を有する。実施例1のケース2は、導電性の材料の一例としてのアルミニウムにより構成された負極部3と、負極部3の外表面を覆う絶縁材料製の絶縁チューブ4と、を有する。前記負極部3は、円筒状の筒部3aと、筒部3aの下端に支持された円板状の負極端子部3bと、筒部3aの上端に支持された円板状の上板部3cとを有する。上板部3cの中央部には、正極端子支持部の一例としての正極支持孔3dが形成されている。正極支持孔3dには、絶縁性のパッキング6を介して、正極端子部7が支持されている。
【実施例1】
【0017】
前記ケース2の内部には、正極部材の一例としての複数の正極板11と、負極部材の一例としての複数の負極板12と、正極板11と負極板12との間に配置されたセパレータ13と、が配置されている。実施例1では、前記各正極板11および各負極板12は、同心円筒状に交互に配置されており、各正極板11と負極板12との間に同心円筒状のセパレータ13が配置されている。また、各正極板11は、タブ16により正極端子部7に電気的に接続されており、各負極板12は負極部3にタブ17により電気的に接続されている。また、各セパレータ13は、下端が円板状の板部13aにより接続されている。
実施例1の負極板12は、金属ナトリウムをステンレスメッシュに貼り付けた構成となっているが、カーボン系の材料等の従来公知の材料を使用可能である。
【実施例1】
【0018】
実施例1のセパレータ13は、正極板11と負極板12とを隔離すると共に、電解質を保持してナトリウムイオンを透過させることが可能な従来公知の材料を使用可能であり、例えば、ナトリウムイオン伝導性を示す固体電解質であるベータアルミナや、ナトリウムイオンが透過可能なナフィオン(登録商標)膜等の従来公知の材料を使用可能である。なお、実施例1では、表面が白色のセパレータ13を使用している。
なお、実施例1では、固体電解質としてのセパレータ13を例示したが、これに限定されず、液体の電解質、例えば、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)を溶かした炭酸プロピレン(PC)や、EC(炭酸エチレン)とDEC(炭酸ジエチル)を体積比1:1で混合した溶液等の使用可能な任意の電池用の電解質を使用することも可能である。
【実施例1】
【0019】
図2は実施例1の正極板の要部説明図である。
図2において、実施例1の正極板11は、導電部材の一例としての基層部21と、基層部21の表裏両面に形成された活物質部の一例としての薄膜部22とを有する。
実施例1の基層部21は、ITO(酸化インジウム錫、Indium Tin Oxide)の透明電極により構成されている。
実施例1の薄膜部22は、活物質としてのプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体(プルシャンブルー類似体)を含む薄膜により構成されている。なお、実施例1の正極板11では、アセチレンブラック等の導電材およびPTFE等のバインダーが非混合のバインダーフリー電極により構成されている。
【実施例1】
【0020】
また、実施例1では、プルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体の一例としてのMn[Fe(CN)]イオンを含む錯体、いわゆる、Mn-Fe系錯体が使用されている。すなわち、Aをアルカリ金属の少なくとも一種、xを0より大きく2以下の数、yを0より大きく1以下の数、zを0より大きく14以下の数とした場合に、化学式AMn[Fe(CN)Oで表されるシアノ架橋金属錯体を使用している。
【実施例1】
【0021】
実施例1では、薄膜部22は、電解析出法により、基層部21であるITO基板の表面に製膜する。具体的には、シアノ錯体イオンの一例としての[Fe(CN)6]3-を含む1.0[mmol/l]のK3[Fe(CN)6]の溶液と、遷移金属イオンの一例としてのMn2+を含む1.5[mmol/l]のMnCl2の溶液と、アルカリ金属イオンの一例であるNa+を含む1.0[mol/l]のNaNO3の溶液と、を混合した溶液に対して、ITO基板を浸漬し、ITO基板が作用極となるように、3端子型のポテンショスタットに接続して、ITO基板の表面に薄膜部22を電解析出した。なお、ポテンショスタットは、従来公知で市販されている任意のものを採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
このようにして電解析出法で製膜された実施例1の薄膜部22は、Na1.32Mn[Fe(CN)6]0.83・3.6H2Oであった。なお、以下、本願明細書において、このシアノ架橋金属錯体をNaの「N」、Mnの「M」、Feの「F」、0.83の「83」を使用して、「NMF83」と略記し、異なる組成のシアノ架橋金属錯体の説明をする場合も同様の表記法を使用して説明する。
【実施例1】
【0022】
実施例1では、前記薄膜部22を基層部21の表面に対して、電解析出法により成膜したが、これに限定されず、スピンコート法やプリンター技術等の任意の方法を採用可能である。なお、電解析出を行う場合に、本件出願人の先の出願である特願2010-076810号に記載されているように、結晶方位の揃った状態でシアノ架橋金属錯体を析出させるエピタキシャル積層技術を採用して成膜することも可能である。
【実施例1】
【0023】
図3は実施例1のナトリウム電池の透明部の説明図であり、図1AのIII-III線断面図である。
図1A、図3において、実施例1のケース2には、透明部の一例として残量表示窓26が形成されている。前記残量表示窓26は、絶縁チューブ4、負極部3の筒部3a、最外周のセパレータ13を貫通して形成されており、貫通部分には、それぞれ、透明材料の一例としてのPET:ポリエチレンテレフタレート製のフィルムが支持されている。したがって、前記透明窓26を介して、最外周の正極板11が外部から視認可能に構成されている。なお、実施例1の正極板11は、充電時(残量が100%)は茶色であり、放電時(残量0%)は透明であった。
【実施例1】
【0024】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のナトリウム電池1では、導電材やバインダーが非混合のシアノ架橋金属錯体により構成された正極板11と、負極板12との間における、リチウムイオンや電子の移動に伴って、充電・放電が行われる。
充電時の正極、負極における化学反応は、以下となる。
(正極)Na2MnII[FeII(CN)6] → NaMnII[FeIII(CN)6]+Na++e-
→ MnIII[FeIII(CN)6]+2Na++2e-
(負極)Na+ +e- → Na
【実施例1】
【0025】
このとき、実施例1のナトリウム電池1には、残量表示窓26が形成されており、白色のセパレータ13の手前に配置された正極板11が外部から視認可能となっている。そして、実施例1の正極板11では、NMF83が、充電完了時に茶色となり、放電時に透明になるため、電池の残量がある場合には、残量表示窓26を介して、茶色が視認される。そして、電池の残量が無くなると、薄膜部22のNMF83が透明になり且つ基層部21のITOも透明であるため、奥側のセパレータ13の白色が視認されるようになる。
従来技術では、アセチレンブラック等の導電材やバインダーが混合されていると、正極板11の色が、アセチレンブラックの黒色等となり、色変化がほとんど確認できず、残量を表示しようとすると、別個に残量表示計を設ける必要があった。残量表示計を設けると、電池1から電力を供給する必要があり、電力消費が発生してしまう問題があった。
これに対して、実施例1のナトリウム電池1では、導電材やバインダーが混合されていないシアノ架橋金属錯体自体の色変化を残量表示窓26で確認するだけで、残量の有無が視認でき、消費電力を無くしつつ、容易に残量の有無が確認できる。
【実施例1】
【0026】
(実験例)
次に、実施例1の効果を確認するための実験を行った。
(実験例1)
実験例1では、電解析出法でITO基板の表面にプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体の薄膜を作成した。得られた薄膜は無色透明であり、膜厚は、1[μm]程度であった。このようにして得られたNMF86の薄膜が成膜されたITO基板を正極とし、ステンレスメッシュに金属Naを貼り付けたものを負極として、過塩素酸ナトリウムを1「mol/l」溶かした炭酸プロピレン溶液の電解質に浸漬して、充放電特性を測定した。測定は、充放電レートを0.5C、1C、2C、6C、60Cとして、それぞれ5サイクル充放電させて行った。
実験結果を図4に示す。
【実施例1】
【0027】
図4は実験例1の実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に起電力を取ったグラフである。
図4において、実験例1の電圧の上限と下限は4.2[V]と2[V]であった。また、電極の放電時の容量は、0.5Cでは120[mAh/g]であり、充放電レートが高くなるに連れて低下していくが、6Cでも100[mAh/g]以上を確保していることが確認された。さらに、サイクル特性も、60Cを除いて、それぞれ、5回の充放電の繰り返しでは、ほとんど容量が低下せず(劣化が少なく)、高いサイクル特性も示した。
なお、充電曲線は、3.3[V]近傍と3.7[V]に2つのプラトー(停滞状態)を示す。これらプラトーは、それぞれ、[Fe(CN)64-の酸化およびMn2+の酸化に対応する。他方、放電曲線は、3.7[V]近傍、3.5[V]近傍、3.3[V]近傍に3つのプラトーを示す。第1、第2のプラトーは、Mn3+の還元、第3のプラトーは、[Fe(CN)63-の還元に対応すると考えられる。このように、実施例1の正電極は、ナトリウム金属(陰極)に対して、3.3[V]~3.7[V]の起電力を示す。従って、6Cでも0.5Cに対して、80%程度の容量を確保し且つ3V級の起電力を確保できることが確認された。よって、3[V]弱程度の起電力しか得られない従来の酸化物系の電極を使用する場合に比べて、パワーが大きな電池を得ることができる。
【実施例1】
【0028】
(実験例2)
図5は実施例1のナトリウム電池の充放電レートの実験結果の説明図であり、横軸に容量をとり、縦軸に起電力を取ったグラフである。
実験例2では、実験例1に対して、膜厚を50[nm]とし、充放電レートを10C、20C、50C、100Cとした以外は、実験例1と同様に実験を行った。実験結果を図5に示す。
図5に示すように、膜厚が10nmオーダーまで薄膜化された実験例2の構成では、3[V]以上の起電力を確保しつつ、充放電レートが10Cでも100[mAh/g]の容量を確保することができ、サイクル特性でも良好な結果を示した。また、充放電レートが100Cの場合でも、10Cの場合に対して、7割以上の容量を確保することができ、充放電レートを向上させつつ高容量も実現できることが確認された。
【実施例1】
【0029】
図6は実施例1のプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体の結晶構造の説明図であり、図6Aは充電された状態の説明図、図6Bは放電された状態の説明図である。
図6において、実施例1のプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体では、鉄31とマンガン32の2つの遷移金属がシアノ基33に架橋され、三次元的なポリマー構造を形成している。このポリマー構造は隙間の多い構造であり、ナトリウムイオン34は空隙を占有することができる。したがって、ナトリウムイオンは、空隙を通じて、前後左右上下の6方向に3次元的に通過、伝導して、移動することができ、3次元のポリマー構造が崩されることが少ない。
したがって、実施例1の正極板11では、ナトリウムイオンの引き抜き時に構造相転移が発生したり二相共存状態となる酸化物系の従来の材料と異なり、ナトリウムイオンの引き抜きに対して、Mn[Fe(CN)6]の結晶構造が堅固であり、構造相転移や二相共存状態が発生しにくく、構造的に電池特性への悪影響が少ないことが期待でき、実験の結果からも考察できる。特に、ナトリウムイオンが3次元的に移動できる実施例1では、高速でナトリウムが移動可能、すなわち、充放電レートの向上が期待できる。
【実施例1】
【0030】
さらに、実施例1のプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体は、ITO基板上に電解析出により成膜されており、粉状の錯体をバインダー等で固めた構成に比べて、基板に対する電気的な接触が向上している。したがって、実施例1のナトリウム電池1では、従来のように導電材やバインダー等を添加する場合に比べて、充放電時の電池の特性である容量を向上させ、充放電レートを向上させることができ、低コスト且つ容易に電池特性を向上させることができる。
また、実験例1,2から、膜厚を薄くすることで充放電レートが向上することが確認された。すなわち、薄膜の厚さに関し、薄膜がミクロンオーダーまで厚いと、結晶粒が大きくナトリウムは長い距離を移動する必要があるが、ナノオーダーまで薄くすると、結晶粒が小さくなりナトリウムの移動距離が短くなり、充放電レートが向上することが期待できる。言い換えると、厚い膜でも、結晶粒を小さくすることにより、レートを向上させることが可能である。
【実施例1】
【0031】
さらに、実施例1のナトリウム電池では、レアアース(レアメタル)で枯渇の心配があり近年高騰しているリチウムを使用するリチウム電池に比べて、ほぼ無尽蔵に存在するナトリウムを使用しており、低コスト化することが期待できる。また、実施例1のナトリウム電池1では、希少な元素であるLiやCoを使用する従来の正極に比べて、低コストなシアノ架橋金属錯体で実現可能であり、コストを大幅に低下することが可能である。
また、特許文献1,2記載のナトリウム電池(いわゆるNaS電池)のように、300℃程度の高温でしか駆動できずランニングコストのかかる電池に比べて、実施例1のナトリウム電池は常温で使用可能であり、汎用性が高く、ランニングコストも削減できる。
【実施例1】
【0032】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)~(H09)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、ナトリウム電池の形状として、円筒型の構成を例示したが、これに限定されず、ボタン型や角形等の任意の形状とすることが可能である。したがって、同心円筒状の電極板の形状に限定されず、電池の形状に合わせて円板状や四角の平板状とすることも可能である。また、負極板や正極板、セパレータの枚数、すなわち、積層枚数は、実施例に例示した枚数に限定されず、容量等に応じて、任意の枚数とすることが可能である。
【実施例1】
【0033】
(H02)前記実施例において、シアノ架橋金属錯体は、実験例で例示した構成に限定されず、製法や用途等に応じて、Aをアルカリ金属の少なくとも一種、M、M′を遷移金属の少なくとも一種、xを0より大きく2以下の数、yを0より大きく1以下の数、zを0より大きく14以下の数とした場合に、化学式AM[M′(CN)Oで表されるシアノ架橋金属錯体を使用可能である。なお、前記Aのアルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。また、前記Mの遷移金属としては、Fe、Mn、Ni、Co、Cr、V、Cu、Znが挙げられる。また、M′の遷移金属としては、Fe、Cr、V、Mn、Tiが挙げられる。また、x、y、zは、それぞれ、遷移金属Mの1モルに対するアルカリ金属A、M′(CN)、結晶水HOの割合(モル)を示し、シアノ架橋金属錯体では、製法や構造により、xが0~2、yが0~1、zが0~14の値を取りうる。なお、本願明細書および特許請求の範囲において、「異なる組成の錯体」とは、アルカリ金属A、遷移金属M,M′および数x、yの少なくとも1つが異なるものを指している。
したがって、実験例で示したように最も安価で容量が大きなMn-Fe系のシアノ架橋金属錯体に限定されず、その他のシアノ架橋金属錯体、例えば、容量が大きなCu-Fe系やMn-Mn系、あるいは、電池として要求される容量等に応じて、Ni-Fe系、Co-Fe系等のシアノ架橋金属錯体も使用可能である。
【実施例1】
【0034】
(H03)前記実施例において、透明のITO基板にシアノ架橋金属錯体を製膜する構成を例示したが、これに限定されず、不透明の基板、例えば、白金、金、アルミニウム等の導電体の表面に製膜することが可能である。
(H04)前記実施例において、残量表示窓26は、ケース2の一部に形成する構成を例示したが、これに限定されず、ケース2全体を透明にする等の構成とすることも可能である。
【実施例1】
【0035】
(H05)前記実施例において、残量の表示は、色変化に基づいて行う構成を例示したが、これに限定されず、プリント技術等で、シアノ架橋金属錯体を配列して文字を表示することも可能である。例えば、充電時に発色して放電時に透明になるシアノ架橋金属錯体を使用して充電時に「残量あり」と表示して、放電時に表示が消える(透明になる)ようにしたり、充電時に透明になって放電時に着色されるシアノ架橋金属錯体を使用して充電時に表示が消えて、放電時に「充電してください」と表示されるようにすることも可能である。また、これらを組み合わせることも可能である。さらに、3原色を配列して、充電、放電の状態に応じて色が変化するカラー表示としたり、文字をカラー表示することも可能である。なお、残量の表示が不要な場合、残量表示窓26等の構成は省略することも可能である。
【実施例1】
【0036】
(H06)前記実施例において、いわゆる太陽電池等の発電素子と組み合わせて、発電された電気をナトリウム電池1で充電したり、電子機器に給電する等の組み合わせに使用することも可能である。
(H07)前記実施例において、薄膜部22を基層部21の両面に形成する構成を例示したが、これに限定されず、片面のみに形成する構成とすることも可能である。
(H08)前記実施例において、充放電レートを向上させるために結晶粒が小さいナノオーダーの薄膜とすることが望ましいが、これに限定されず、結晶粒を小さくしつつ厚膜化が可能であれば、充放電レートを向上させつつ容量を向上させることが期待できる。
【実施例1】
【0037】
(H09)前記実施例において、活物質部として、バインダーや導電材が非混合の薄膜状の薄膜部22を使用する構成とすることが、電池特性の向上の面からは望ましいが、これに限定されず、要求される仕様や電池の性能に応じて、粉末状のシアノ架橋金属錯体に導電材を加えたり、バインダー(結着剤)を加えて電極を作成する構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
前述の本発明の電池は、リチウムイオン電池に比べて低コストで大量化が可能であるため、安価な大容量蓄電池を開発することが可能であり、例えば、家庭用蓄電池や家電用電池、非常用バッテリー等として好適に使用することが可能である。
また、本発明の電池のパワー密度やエネルギー密度が向上して、製品毎に要求される性能を満足していれば、本発明の電池は、シアノ架橋金属錯体を使用しており、シアノ架橋金属錯体は薄くすることが可能であるため、例えば、ICカード等に埋め込まれるカード埋め込み型の薄膜電池や電化製品(例えば、電動歯ブラシや携帯電話、ノートパソコン等)等に使用することが期待でき、電気自動車にも適用が期待される。
【符号の説明】
【0039】
1…ナトリウム電池、
2…ケース、
11…正極部材、
12…負極部材、
13…電解質、セパレータ、
21…導電部材、
22…活物質部、薄膜、
26…透明部。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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