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明細書 :レーザー走査型生体内特定物質量計測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-126443 (P2013-126443A)
公開日 平成25年6月27日(2013.6.27)
発明の名称または考案の名称 レーザー走査型生体内特定物質量計測方法
国際特許分類 A61B   3/10        (2006.01)
A61B   3/12        (2006.01)
FI A61B 3/10 R
A61B 3/10 Z
A61B 3/12 E
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2011-276295 (P2011-276295)
出願日 平成23年12月16日(2011.12.16)
発明者または考案者 【氏名】和田 智之
【氏名】坪田 一男
【氏名】神成 淳司
出願人 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
個別代理人の代理人 【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
【識別番号】100111006、【弁理士】、【氏名又は名称】藤江 和典
【識別番号】100116241、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 一郎
審査請求 未請求
要約 【課題】眼底におけるルテインの濃度と分布を定量的に非侵襲で測定することが可能なレーザー走査型生体内特定物質量計測方法を提供すること。
【解決手段】本発明のレーザー走査型生体内特定物質量計測方法は、反ストークス線の波長を、特定物質の波長吸収帯より大きくし、プローブ光の波長を、反ストークス線の波長から特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせ、ストークス光の波長を、プローブ光の波長から特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせることで、反ストークス線の信号強度レベルからルテインの密度を測定することを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
波長の異なるプローブ光とストークス光とを生体内の特定物質に照射することで反ストークス線を発生させ、前記反ストークス線の信号強度レベルから前記特定物質の密度を測定するレーザー走査型生体内特定物質量計測方法であって、
前記反ストークス線の波長を、前記特定物質の波長吸収帯より大きくし、
前記プローブ光の波長を、前記反ストークス線の波長から前記特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせ、
前記ストークス光の波長を、前記プローブ光の波長から前記特定物質のラマン散乱の前記シフト量だけシフトさせたことを特徴とするレーザー走査型生体内特定物質量計測方法。
【請求項2】
前記特定物質を眼底に存在するルテインとし、前記反ストークス線の波長を550nm以上としたことを特徴とする請求項1に記載のレーザー走査型生体内特定物質量計測方法。
【請求項3】
前記反ストークス線の波長を700nm以下としたことを特徴とする請求項2に記載のレーザー走査型生体内特定物質量計測方法。
【請求項4】
波長の異なるプローブ光とストークス光とを生体内の特定物質に照射することで反ストークス線を発生させ、前記反ストークス線の信号強度レベルから前記特定物質の密度を測定するレーザー走査型生体内特定物質量計測装置であって、
パルス動作による可視2波長レーザーを用いるレーザー装置と、前記プローブ光を前記生体に集光し、集光した点から発生する信号のみを検出する共焦点光学系とを備え、
前記反ストークス線の波長を、前記特定物質の波長吸収帯より大きくし、
前記プローブ光の波長を、前記反ストークス線の波長から前記特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせ、
前記ストークス光の波長を、前記プローブ光の波長から前記特定物質のラマン散乱の前記シフト量だけシフトさせて用いることを特徴とするレーザー走査型生体内特定物質量計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、特に眼底におけるルテインの濃度と分布を定量的に非侵襲で測定できるレーザー走査型生体内特定物質量計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
失明原因の上位を占め、50歳以降、加齢と共に増加する加齢黄斑変性は、現代の長寿社会においては、大きな社会問題となっている。発症の基盤に慢性炎症があるとされており、その予防にかかる時間とコストを考えると、検診によりハイリスク群を診断することが必要である。その指標となる眼底黄斑色素には、現在のところ認可された測定法が無く、発症前診断は不可能である。一般検診によるハイリスク群判定と、予防治療の効果判定ができれば、加齢黄斑変性による失明とそれに基づく行動制限を未然に防ぎ、健康的な長寿社会の形成に貢献する一端となるが、現行の検査機器を用いたのでは、それは不可能である。
現行の治療は、加齢黄斑変性のうち、滲出型に対するものだけであり、その効果は増悪を防ぐことを目的とするものに過ぎない。早期発見・早期治療が望まれると共に、できれば発症予防をしたいところである。しかし、現行の診断方法(眼底検査もしくは眼底カメラ、光干渉断層計(OCT)、血管造影など)では、既に発症した症例に対しては利用可能であるが、ハイリスク群を判定することにはならない。
最近では、マスメディア等を介した啓蒙活動により、加齢黄斑変性に対する国民の認識は非常に高まっている。高齢になっても活動的な人口は多く、外部情報の80%は視覚から入ると言われることから、高齢者自体の視機能確保の意識は高い。超早期診断を求めて来院する患者が多いが、現行の検査機器では発症していない限り診断がつかず、医師が介入できることは無い。現行の眼底の形態変化を見るための検査機器だけでは、この問題は解決し得ない。
一方、これまでの研究により、黄斑色素であるルテインの摂取量と加齢黄斑変性発症の関連が報告され、その検証のために米国NIH主導の大規模臨床試験Age-related Eye Disease Study 2 (AREDS2)が進行中である。そこで、眼底黄斑色素の測定は、そのハイリスク群検出と予防治療効果の判定に必須である。しかし、その測定法は確立していない。採血等による生体内ルテイン濃度の測定も考えられるが、これは、侵襲的である上に、必ずしも黄斑色素量を反映しているとは言えないという問題点がある。
生体内の黄斑色素量を調べるためには、非侵襲的色素測定技術が不可欠であるが、今のところ確実な方法は無い。本技術を開発して、これまで眼科として発展してきた生体内の形態を見るための眼底カメラ・光干渉断層計(OCT)などに組み合わせることは、現行の検査法では未知の生体内変化をとらえることになり切望されている。
これまで、実現されている眼底の計測装置は、眼球を通して光を照射し、その散乱光を利用して眼底の計測を行っている。従来技術の測定原理としては、共鳴ラマン散乱や単純な吸収を基にした計測法が利用されている。共鳴ラマン散乱の方法では、利用したプローブレーザーの強度に比べ6桁以上、信号強度が減衰する。眼底のダメージを考慮すると、強いレーザーが利用できないために、結果的に大きな信号強度が得られず、ルテインの濃度変化にともなう十分な信号を得ることができなかった。吸収や、蛍光に関する計測では、それぞれのスペクトルの広がりが大きく、他の生体物質との区別が十分でなく、精度のよい観測ができなかった。従って、十分な定量性のある観測がなされていなかった。また、眼底全体や比較的大きなスポットに一度にプローブ光を当る方法では、十分な空間分解能を得ることができなかった。これらの定量性、空間分解能の不十分さが、加齢黄斑変性症の早期診断において課題となっていた。
なお、眼底にレーザーを照射し、散乱光を利用して眼底上の血管を検査する眼底検査装置としては、例えば特許文献1に示すものがある。
また、コヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)(coherent anti-Stokes Raman scattering)を利用した、糖化ヘモグロビンの量を測定する生体内物質量測定方法が特許文献2で提案されている。
特許文献2にも記載されている通り、CARSは、ラマン散乱の一種であり、ポンプ光(プローブ光(振動数ωp))とストークス光(振動数ωs)という二つの異なる振動数の光を物質に入射したとき、2ωp-ωsという振動数の散乱光が放出される現象である。ωp-ωsが分子の固有振動数ωVと一致すると、多数の分子の振動モードが共鳴的に励振され、非常に強く、かつ指向性のよいコヒーレントな散乱光を得ることができる。
ラマン散乱とは、ω1の振動数を持つ入射光が物質に照射されたとき、ω1+ωRまたはω1-ωRの振動数を持つ微弱な散乱光が現れる現象である。ωRは分子の振動モードによる固有の振動数であり、ラマン散乱スペクトルには、分子の各振動モードに由来する多くのスペクトル線が現れる。従って、スペクトルを解析することで分子を検出できる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2001-275976号公報
【特許文献2】特開2010-5062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、定量性のある説明をするために、プローブレーザーの電場をEp、量子ノイズをQとすると、従来技術であるラマン散乱は、量子ノイズとプローブレーザーの電場の積QEpに比例した、双極子p=cQEpEpが誘起され、双極子がプラスマイナスに電気的に振動することによりストークス光が発生する。
Qの値は、10-12Wレベルである。プローブに利用できるレーザーは、人体の損傷を考えると1mW(10-6W)以下である。この組み合わせによる信号はおおよそ、励起レーザーに比べ6桁以上減衰すると言われている。
これまでは、レーザーの照射により発生するルテイン特有のシフト量をもったラマン散乱光を計測していた。従って、散乱強度を稼ぐために、488nm付近にある共鳴線付近の光を励起光に利用していた。しかしながら、ラマン散乱の散乱強度は、励起レーザーより6桁程度減衰するために、強い信号を得ることができなかった。
【0005】
本発明では、眼底におけるルテインの濃度と分布を定量的に非侵襲で測定することが可能なレーザー走査型生体内特定物質量計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明のレーザー走査型生体内特定物質量計測方法は、波長の異なるプローブ光とストークス光とを生体内の特定物質に照射することで反ストークス線を発生させ、前記反ストークス線の信号強度レベルから前記特定物質の密度を測定するレーザー走査型生体内特定物質量計測方法であって、前記反ストークス線の波長を、前記特定物質の波長吸収帯より大きくし、前記プローブ光の波長を、前記反ストークス線の波長から前記特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせ、前記ストークス光の波長を、前記プローブ光の波長から前記特定物質のラマン散乱の前記シフト量だけシフトさせたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のレーザー走査型生体内特定物質量計測方法において、前記特定物質を眼底に存在するルテインとし、前記反ストークス線の波長を550nm以上としたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載のレーザー走査型生体内特定物質量計測方法において、前記反ストークス線の波長を700nm以下としたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、波長の異なるプローブ光とストークス光とを生体内の特定物質に照射することで反ストークス線を発生させ、前記反ストークス線の信号強度レベルから前記特定物質の密度を測定するレーザー走査型生体内特定物質量計測装置であって、
パルス動作による可視2波長レーザーを用いるレーザー装置と、前記プローブ光を前記生体に集光し、集光した点から発生する信号のみを検出する共焦点光学系とを備え、
前記反ストークス線の波長を、前記特定物質の波長吸収帯より大きくし、
前記プローブ光の波長を、前記反ストークス線の波長から前記特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせ、
前記ストークス光の波長を、前記プローブ光の波長から前記特定物質のラマン散乱の前記シフト量だけシフトさせて用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
CARSは、2つのレーザー光(プローブ光(角振動数ω1)aとストークス光(角振動数ω2)b)の波長の差により、計測した特定物質のみの情報(振動モードの角振動数Ω)を取り出すことができ、得られる信号が特定物質の密度に比例するため、特定物質の密度を同定することができる。
本発明によれば、得られる信号の波長は、CARSを利用することで、プローブ光より、ラマンシフトと言われる特定物質特有のエネルギーだけ短波長にシフトした反ストークス光が得られ、この反ストークス光によって強い信号が得られる。そして、反ストークス光の波長で得られる信号光は特定物質の密度に比例するために、信号と密度の比例係数から、特定物質の密度を知ることができる。
また本発明によれば、眼底におけるルテインの濃度と分布を定量的に非侵襲で測定することが可能となることで、今後、失明の最も大きな要因となる加齢黄班変性症が発症する前の、眼底のルテイン濃度の減少をいち早く診断し、必要な栄養の補給による予防を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例によるレーザー走査型生体内特定物質量計測方法を示す構成図
【図2】CARS課程のエネルギーダイアグラムを示す図
【図3】測定結果によるルテインの吸収特性を示す図

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態によるレーザー走査型生体内特定物質量計測方法は、反ストークス線の波長を、前記特定物質の波長吸収帯より大きくし、前記プローブ光の波長を、前記反ストークス線の波長から前記特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせ、前記ストークス光の波長を、前記プローブ光の波長から前記特定物質のラマン散乱の前記シフト量だけシフトさせたものである。本実施の形態によれば、CARSを利用することで、プローブ光より、ラマンシフトと言われる特定物質特有のエネルギーだけ短波長にシフトした反ストークス光が得られ、この反ストークス光によって強い信号が得られる。そして、反ストークス光の波長で得られる信号光は特定物質の密度に比例するために、信号と密度の比例係数から、特定物質の密度を知ることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態におけるレーザー走査型生体内特定物質量計測方法において、特定物質を眼底に存在するルテインとし、反ストークス線の波長を550nm以上としたものである。本実施の形態によれば、眼底に存在するルテインの密度を、水晶体に存在するルテインの影響を受けることなく計測することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態におけるレーザー走査型生体内特定物質量計測方法において、反ストークス線の波長を700nm以下としたものである。本実施の形態によれば、可視化の範囲でルテインの計測ができる。
本発明の第4の実施の形態は、パルス動作による可視2波長レーザーを用いるレーザー装置と、プローブ光を生体に集光し、集光した点から発生する信号のみを検出する共焦点光学系とを備え、反ストークス線の波長を、特定物質の波長吸収帯より大きくし、プローブ光の波長を、反ストークス線の波長から特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせ、ストークス光の波長を、プローブ光の波長から特定物質のラマン散乱のシフト量だけシフトさせて用いるものである。本実施の形態によれば、特定物質の密度を知ることができる装置を提供できる。
【実施例】
【0012】
本発明の一実施例によるレーザー走査型生体内特定物質量計測方法を説明する。
図1はCARS分光法等に基づく、レーザー走査型生体内特定物質量計測方法を示す構成図、図2はCARS課程のエネルギーダイアグラムを示す図、図3は測定結果によるルテインの吸収特性を示す図である。
レーザー装置1には、パルス動作による可視2波長レーザーを用い、面内分解能を100x100μm、深さ分解能を20μm、レーザー走査はガルバノ方式、観測精度は光学濃度変化3%、計測対象とする特定物質を眼底に存在するルテインとする。レーザー装置1には、例えばチタンサファイアレーザーが適している。
プローブ光(Ep電場強度)aとともに、ストークス光(Es電場強度)bを同時に物質に照射すると、3次の非線形分極EsEpEpという積の分極ができる。この分極は、物質特有のラマンシフト量だけ短波長で振動しており、レーザーが作った強い電場により反ストークス線を強制的に発生する。
【0013】
眼底の黄斑部cには、ルテインとゼアキサンチンから成る黄斑色素がある。この色素は、最も光暴露にさらされる黄斑を守るためにあるとされる。本色素は最もエネルギーの高い青色光を吸収し、さらに抗酸化ストレス能を持つため、黄斑組織障害を防止する。しかし、年齢と共に減少することが報告され、それが加齢黄斑変性の発症と関連するとされる。黄斑色素のルテインの投与が加齢黄斑変性の予防につながるという報告がある。本実施例では、この黄斑色素を生体内で測定するものである。
【0014】
共焦点光学系2は、プローブ光aを生体(眼底)に集光し、集光した点から発生する信号のみを検出する。対物レンズ4の反対側に、仮想焦点位置があり、ピンホール3を置き、ピンホール3を抜ける信号光(反ストークス線)dを検出器5で検出することにより、焦点位置から発生した光のみを検出することができる。眼底の黄斑部cの深さ方向に焦点位置を移動すると、深さ方向で光が届く限り、焦点位置から得られる信号のみを検出するので、黄斑部cの深さ方向の分解能を得ることができる。結果として、黄斑部cの面内、深さ方向の分解能が得られる。このレーザーの照射位置を観測希望の領域で走査することで、観測領域全ての情報が得られる。
生物学で利用されているレーザー走査型共焦点顕微鏡システムを利用して、2つのレーザーの波長、ルテインから得られる信号強度とルテイン濃度との関係をあらかじめ測定する。また、同時に、眼底に存在するルテインのおおよその密度を計測し、ルテインの密度と信号強度レベルとの関係をあらかじめ決定する。信号強度レベルと密度は比例関係にある。
【0015】
本実施例の検査対象であるルテインは、波長400nmから550nmにかけて波長吸収帯を持つ色素であり、ルテインは、わずかであるが、水晶体eにも存在する。CARSを利用した計測では、この色素の吸収によって信号の絶対強度が変化することを防ぎ、さらに、眼底における深さ方向の情報を得るために、励起レーザー(プローブ光)の波長を近赤外(近赤外に近い可視領域含む)に設定し、反ストークス線の波長を550nm以上にすることで、ルテイン自身の直接の波長吸収帯を避けることができる。ルテインは、網膜だけでなく、水晶体eそのものにも含まれており、光計測をするパスそのものに含まれている。従って、直接の波長吸収帯を見るだけでは、この点が問題となるため、反ストークス線の波長を550nm以上とする。反ストークス線の波長を550nmとした場合には、CARSのプローブ光aの波長にあたる励起レーザーは、ルテインのラマン散乱のシフト量である1500cm-1だけ、反ストークス線の波長よりも赤外側にシフトした600nmの波長を利用する。波長のシフトは、光パラメトリック発振(OPO)や波長変換法による。
またストークス光bの波長は、ルテインのラマン散乱のシフト量である1500cm-1だけ、プローブ光aの波長よりも赤外側にシフトした659nmの波長を利用する。
図3では、ルテインが400~500nmの波長にかけて波長吸収帯を持つことを示している。プローブ光aの波長を659nm、ストークス光bの波長を732nmとすることで、反ストークス線の波長を600nmとすることができ、眼底に存在するルテインの密度を、水晶体に存在するルテインの影響を受けることなく計測でき、可視化の範囲でルテインの計測ができる。
【0016】
なお、本実施例では反ストークス線の波長を550nmとして説明したが、ルテインの吸収を避ける上では、反ストークス線の波長を550nmより大きい波長、例えば600nm以上とし、可視化の面では、反ストークス線の波長を700nm以下として、プローブ光a及びストークス光bを設定することが好ましい。例えば、プローブ光aの波長を730nm、ストークス光bの波長を816.6nmとすることで、反ストークス線の波長を660nmとすることができる。
プローブ光a及びストークス光bとして必要なレーザー出力は、通常のラマン散乱よりも弱くしても、得られる信号強度は、通常のラマン散乱よりも数桁高くなるために、得られる出力は十分な強度を持つ。すなわち、本発明は、必要な双極子を誘導ラマン散乱過程における4光波混合過程で置き換え、2つのレーザーを用いると、EpEpEsという形になる。単純なQとEs(1mWレベル)の置き換えであるが、強度の比較で、6桁以上強い双極子を作り出すことができ、理論的には、6桁強い信号出力が得られる。
【0017】
以上のように、本発明では、励起レーザーと、ストークス線に当たるレーザー光とを同時に2波長照射することにより、3次のラマン分極を強制的に生成して、強い散乱強度の反ストークス線を得る。概算では、これまでの共鳴散乱よりも4桁以上強い信号を得ることができる。さらに、レーザーをパルス化して、電場強度を稼ぎ、入射するレーザーの平均強度を低減することにより信号強度を増強する。分極の大きさを考慮すると、共鳴散乱の手法に対して最終的には、5桁程度強い信号が得られる。この信号は、ルテイン濃度に比例するために、強度からルテインの濃度を知ることができる。信号強度が十分強いために、大きなダイナミックレンジと精度を兼ね備えた計測が可能となる。
なお、本実施例では特定物質としてルテインを用いて説明したが、生体内に存在するアミノ酸、核酸、糖類、脂質、その他の物質であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、加齢黄斑変性の予防検診に利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 レーザー装置
2 共焦点光学系
3 ピンホール
a プローブ光
b ストークス光
c 黄斑部
d 反ストークス線
e 水晶体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2