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明細書 :舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御方法及びその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5061347号 (P5061347)
登録日 平成24年8月17日(2012.8.17)
発行日 平成24年10月31日(2012.10.31)
発明の名称または考案の名称 舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御方法及びその装置
国際特許分類 F02D  41/04        (2006.01)
F02D  29/02        (2006.01)
FI F02D 41/04 380F
F02D 29/02 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2006-542447 (P2006-542447)
出願日 平成17年11月4日(2005.11.4)
国際出願番号 PCT/JP2005/020305
国際公開番号 WO2006/049252
国際公開日 平成18年5月11日(2006.5.11)
優先権出願番号 2004321024
優先日 平成16年11月4日(2004.11.4)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2011-023867(P2011-023867/J1)
審査請求日 平成20年10月29日(2008.10.29)
審判請求日 平成23年11月4日(2011.11.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
発明者または考案者 【氏名】大 津 皓 平
【氏名】伊 藤 雅 則
【氏名】清 水 悦 郎
【氏名】廣 瀬 典 樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100117787、【弁理士】、【氏名又は名称】勝沼 宏仁
【識別番号】100091982、【弁理士】、【氏名又は名称】永井 浩之
【識別番号】100107537、【弁理士】、【氏名又は名称】磯貝 克臣
【識別番号】100105795、【弁理士】、【氏名又は名称】名塚 聡
【識別番号】100096895、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 淳平
【識別番号】100106655、【弁理士】、【氏名又は名称】森 秀行
参考文献・文献 実開昭61-25559(JP,U)
特開昭62-17345(JP,A)
特開平8-200131(JP,A)
特開平9-42016(JP,A)
実開昭63-42836(JP,U)
特開昭60-169647(JP,A)
特開平3-210043(JP,A)
特開昭60-195355(JP,A)
特開昭60-195356(JP,A)
特開昭60-195357(JP,A)
特開昭60-204944(JP,A)
特開平1-311983(JP,A)
特開平4-31645(JP,A)
特開昭63-143355(JP,A)
調査した分野 F02D41/00-41/40
F02D29/00-29/06
F02D43/00-45/00
F02M37/00-37/22
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の時間間隔で燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数を所定回数計測して入力する段階と、
前記所定回数の燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数を下記の近似式に入力する段階と、
【数1】
JP0005061347B2_000013t.gif
前記所定回数の燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数を前記近似式に入力することにより、下記の複数の連立方程式を得る段階と、
【数2】
JP0005061347B2_000014t.gif
前記連立方程式を解いて係数(a,b)を求める段階と、
前記係数(a,b)を前記近似式に入力して該近似式を決定する段階と、
前記近似式の舶用ディーゼル機関の回転数を一定に設定した場合の現在噴射すべき燃料噴射量(uk)を算出する段階と、
前記算出した現在の燃料噴射量に整合するように舶用ディーゼル機関の燃料噴射弁の開度を制御する段階と、を有することを特徴とする舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御方法。
【請求項2】
舶用ディーゼル機関の燃料噴射弁を開閉する燃料噴射弁開閉機構と、
前記燃料噴射弁開閉機構の動作を制御する燃料噴射量制御機構と、
前記舶用ディーゼル機関の回転数を検出する第1センサーと、
前記燃料噴射弁の開度を検出する第2センサーとを有し、
前記燃料噴射量制御機構は、所定の時間間隔で前記第1センサーと前記第2センサーからそれぞれ前記舶用ディーゼル機関の回転数と前記燃料噴射弁の開度のデータを入力し、所定回数の舶用ディーゼル機関の回転数と燃料噴射弁の開度から得られる燃料噴射量のデータを下記の近似式に入力し
【数3】
JP0005061347B2_000015t.gif
前記所定回数の燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数を前記近似式に入力することにより、下記の複数の連立方程式を得て、
【数4】
JP0005061347B2_000016t.gif
前記連立方程式を解いて係数(a,b)を求め、
前記係数(a,b)を前記近似式に入力して該近似式を決定し、
前記近似式の舶用ディーゼル機関の回転数を一定に設定した場合の現在噴射すべき燃料噴射量(uk)を算出し、算出した現在の燃料噴射量に整合するように、前記燃料噴射弁開閉機構を制御することを特徴とする舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
前記燃料噴射弁開閉機構は、燃料噴射弁を駆動する液圧シリンダーと、前記液圧シリンダーのピストンの両側に形成された隔室に切り換え可能に油圧を供給する逆止弁機構と、前記逆止弁機構を介して前記隔室に加圧された液体を供給する原動機付きの双方向ポンプと、前記双方向ポンプの動作を制御するドライバーからなることを特徴とする請求項2に記載の汎用ディーゼル機関の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記燃料噴射量制御機構は、
目標とする舶用ディーゼル機関の設定回転数と、前記第1センサーによって検出された舶用ディーゼル機関の回転数と、前記第2センサーによって検出された燃料噴射弁の開度のデータとを入力し、目標とする燃料噴射弁の開度の一次制御信号を出力する第1コントローラーと、
前記第1コントローラーからの一次制御信号と、前記第2センサーからの燃料噴射弁の開度の信号とを入力し、燃料噴射弁の開度を目標とする燃料噴射弁の開度に整合させる二次制御信号を出力する第2コントローラーと、を有することを特徴とする請求項2または3に記載の汎用ディーゼル機関の燃料噴射制御装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御方法及びその装置に関する。
特に、本発明は、舶用ディーゼル機関において周期的に訪れる高負荷、低負荷の状態に対し、燃料噴射時の舶用ディーゼル機関の負荷状態に正しく整合する燃料噴射の制御を行い、舶用ディーゼル機関の回転数を一定に維持することができる舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶は海洋を航行する間、波の影響と船体の動揺を受けて、周期的な抵抗を受けて航行する。このため、舶用ディーゼル機関は周期的に高負荷状態と低負荷状態にさらされる。
【0003】
船舶の場合、車両と異なり、巡航中は一定の速度を維持するよりも、舶用ディーゼル機関の回転数を一定に維持することの方が舶用ディーゼル機関にとって好ましい。
【0004】
従来から、舶用ディーゼル機関の回転数を一定にするために燃料の噴射を制御することが行われていた。
【0005】
図3に従来の舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御装置を示す。
図3に示すように、従来の燃料噴射制御装置31は、制御対象の舶用ディーゼル機関32と、燃料噴射弁開閉機構33と、燃料噴射量制御機構34とを有している。
【0006】
燃料噴射制御装置31は、舶用ディーゼル機関32の回転軸35の近傍に設けられ、舶用ディーゼル機関32の回転数を検出する第1センサー36と、舶用ディーゼル機関32の燃料噴射弁37の開度(実際には液圧シリンダー39のピストン移動量)を検出する第2センサー38とを有している。
【0007】
燃料噴射弁開閉機構33は、燃料噴射弁37を駆動する液圧シリンダー39と、液圧シリンダー39のピストン40の両側に形成された隔室41に切り換え可能に油圧を供給するサーボ機構42と、加圧された油を供給する油圧ポンプ43と、サーボ機構42に制御用の信号を入力するドライバー44とを有している。
【0008】
油圧ポンプ43は、舶用ディーゼル機関32の回転軸35に連結され、回転軸35の動力の一部によって駆動される。
【0009】
油圧ポンプ43は、舶用ディーゼル機関32の回転軸35によって常に回転し、舶用ディーゼル機関32の回転数が高いときには、過剰に加圧された油をリリーフ弁45から逃がし、タンク46に戻すようにしている。
【0010】
燃料噴射量制御機構34は、目標とする舶用ディーゼル機関の設定回転数と、第1センサー36によって検出された舶用ディーゼル機関32の回転数とを入力し、目標とする燃料噴射弁の開度の一次制御信号を出力する第1コントローラー47と、前記第1コントローラー47からの一次制御信号と、第2センサー38からの燃料噴射弁37の開度の信号とを入力し、実際の燃料噴射弁37の開度を目標とする燃料噴射弁の開度に整合させる二次制御信号を出力する第2コントローラー48を有している。
【0011】
上記従来の燃料噴射制御装置31は、第1コントローラー47が設定回転数と第1センサー36によって検出された舶用ディーゼル機関の回転数とを入力し、それらを比較し、舶用ディーゼル機関の回転数が設定回転数より高い場合には燃料噴射弁の開度を小さくする一次制御信号を、舶用ディーゼル機関の回転数が設定回転数より低い場合には燃料噴射弁の開度を大きくする一次制御信号を出力する。
【0012】
上記一次制御信号は、ドライバー44を介してサーボ機構42に入力され、サーボ機構42は一次制御信号に応じて液圧シリンダー39のいずれかの隔室41に油圧を供給する。
【0013】
第2センサー38は、液圧シリンダー39のピストン移動量を検出し、第2コントローラー48に入力する。第2コントローラー48は、目標とする燃料噴射量と燃料噴射弁の開度とを比較し、目標とする燃料噴射弁の開度に達しない場合は追加して燃料噴射弁を開く二次制御信号を、目標とする燃料噴射弁の開度より大きく燃料噴射弁が開かれている時は燃料噴射弁を絞る二次制御信号を燃料噴射弁開閉機構33のドライバー44に出力する。
【0014】
上述したとおり、従来の舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御装置は、舶用ディーゼル機関の回転数によって舶用ディーゼル機関の負荷状態を検出し、回転数が低下すれば燃料噴射弁の開度を大きくして回転数を上昇させ、回転数が高くなれば燃料噴射弁の開度を小さくして回転数を抑えるようにしていた。
【0015】
しかし、前述したように、海洋では船舶は周期的に抵抗を受け、舶用ディーゼル機関は周期的な高負荷状態と低負荷状態にさらされるので、上記従来技術による燃料噴射制御では、燃料噴射弁を開いた時には既に低負荷状態に移りつつあったり、逆に燃料噴射弁を絞った時には既に高負荷状態に移りつつあったりすることがあった。
【0016】
つまり、従来の燃料噴射制御は舶用ディーゼル機関の実際の負荷状態に遅れて燃料の噴射量を制御し、常に後追いの燃料噴射制御になり、燃費効率が低かった。
【0017】
また、実際には高負荷状態になっているのに燃料の噴射量が不足したり、低負荷状態になっているのに燃料の噴射量が多すぎたりすることにより、機関の構成部品に周期的な負荷をかけることになり、好ましくなかった。
【0018】
また、従来の技術は、油圧ポンプが舶用ディーゼル機関の回転軸に直接連結されて駆動されている点で種々の問題があった。
【0019】
従来の燃料噴射制御装置は、舶用ディーゼル機関の回転数が低下したときに燃料噴射弁を開くことができるようにするために、油圧ポンプを余裕もって駆動できるように設定されている。
【0020】
このため、舶用ディーゼル機関の回転数が上昇した時は、油圧ポンプが必要以上に回転して高い加圧を行ってしまうので、余剰の圧力を逃がすためにリリーフ弁から油をタンクに戻している。すなわち、従来の燃料噴射制御装置では、周期的に油圧ポンプが必要以上に回転し、その結果余剰の圧力を逃がすためにリリーフ弁から油をタンクに戻すようにしている。これにより、油圧ポンプの駆動効率が悪いだけでなく、高温の油がタンクに戻されるため、油の劣化を招き、温度の上昇を抑えるためにタンクが大型化した。
【0021】
また、舶用ディーゼル機関の回転軸が常に油圧ポンプを駆動しているため、舶用ディーゼル機関の燃費が悪かった。
【0022】
以上の従来技術の問題を鑑み、本発明が解決しようとする課題は、周期的に訪れる舶用ディーゼル機関の高負荷と低負荷の状態を予測し、燃料を噴射する時点の負荷状態と整合するように制御する舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御方法及び燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0023】
また、上記燃料を噴射する時点の負荷状態と整合する燃料噴射制御を実現すると共に、上記油圧ポンプが舶用ディーゼル機関の回転軸に直接連結されていることによる問題を解決する舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御装置を提供する。
【0024】
日本国の特許公開公報、特開昭62-26503号には、舶用ディーゼル機関の回転数を検出し、燃料噴射弁37の制御信号に前記回転数から決定される所定のパラメーターを乗じる技術が開示されている。
【0025】
この技術は、荒天時にスクリュープロペラが海面上に露出してスクリュープロペラが空転し回転数が過度に上昇する現象に対して、前記パラメーターによって前記スクリュープロペラの回転を抑制するものである。 日本国の実用新案登録出願(実公昭63-42836号)には、本発明の燃料噴射弁開閉機構に類似する燃料噴射量調整装置が記載されている。
【発明の開示】
【0026】
本発明による舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御方法は、
所定の時間間隔で燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数を所定回数計測して入力する段階と、
前記所定回数の燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数の関係を満足する下記の近似式を求める段階と、
【数1】
JP0005061347B2_000002t.gif
前記近似式の舶用ディーゼル機関の回転数を一定に設定した場合の現在噴射すべき燃料噴射量(uk)を算出する段階と、
前記算出した現在の燃料噴射量に整合するように舶用ディーゼル機関の燃料噴射弁の開度を制御する段階と、を有することを特徴とする。
【0027】
前記近似式は、
【数2】
JP0005061347B2_000003t.gif
からなるようにすることができる。
【0028】
本発明による舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御装置は、
舶用ディーゼル機関の燃料噴射弁を開閉する燃料噴射弁開閉機構と、
前記燃料噴射弁開閉機構の動作を制御する燃料噴射量制御機構と、
前記舶用ディーゼル機関の回転数を検出する第1センサーと、
前記燃料噴射弁の開度を検出する第2センサーとを有し、
前記燃料噴射量制御機構は、所定の時間間隔で前記第1センサーと前記第2センサーからそれぞれ前記舶用ディーゼル機関の回転数と前記燃料噴射弁の開度を入力し、所定回数の舶用ディーゼル機関の回転数と燃料噴射弁の関係を満足する下記の近似式を求め、
【数3】
JP0005061347B2_000004t.gif
前記近似式の舶用ディーゼル機関の回転数を一定に設定した場合の現在噴射すべき燃料噴射量(uk)を算出し、算出した現在の燃料噴射量に整合するように、前記燃料噴射弁開閉機構を制御することを特徴とする。
【0029】
前記近似式は、
【数4】
JP0005061347B2_000005t.gif
であるようにすることができる。
【0030】
前記燃料噴射弁開閉機構は、燃料噴射弁を駆動する液圧シリンダーと、前記液圧シリンダーのピストンの両側に形成された隔室に切り換え可能に油圧を供給する逆止弁機構と、前記逆止弁機構を介して前記隔室に加圧された液体を供給する原動機付きの双方向ポンプと、前記双方向ポンプの動作を制御するドライバーからなるようにすることができる。
【0031】
前記燃料噴射量制御機構は、
目標とする舶用ディーゼル機関の設定回転数と、前記第1センサーによって検出された舶用ディーゼル機関の回転数と、前記第2センサーによって検出された燃料噴射弁の開度のデータとを入力し、目標とする燃料噴射弁の開度の一次制御信号を出力する第1コントローラーと、
前記第1コントローラーからの一次制御信号と、前記第2センサーからの燃料噴射弁の開度の信号とを入力し、燃料噴射弁の開度を目標とする燃料噴射弁の開度に整合させる二次制御信号を出力する第2コントローラーと、を有するようにすることができる。
【0032】
本発明の舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御方法及び燃料噴射制御装置は、所定の時間間隔で燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数を所定回数計測して入力し、燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数の関係を求めるようにしている。
【0033】
燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数の関係式は、
【数5】
JP0005061347B2_000006t.gif
となっている。関係式に制御しようとする時点以前の所定回数(n)の燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数の関係が含められているため、変動する燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数の関係を加味した燃料噴射量の制御を行うことができる。
【0034】
すなわち、本発明によれば、過去の燃料噴射量と回転数の関係から、燃料を噴射する時点の回転数を一定にするように、舶用ディーゼル機関の負荷状態と整合するように燃料噴射量を制御することができる。これにより、変動する舶用ディーゼル機関の負荷状態に後から追随するように燃料噴射量を制御することがなくなり、効率のよい燃料の噴射制御を行うことができる。
【0035】
換言すれば、海上における定常運行時に船体がローリングやピッチングを繰り返している場合、ある一定時間間隔(時系列パラメータ)でスクリュープロペラの海中にける状態が変化し、それによって負荷変動が起き、舶用ディーゼル機関の回転数が変化する。
【0036】
本発明は、上記回転数変動を燃料噴射量との関係で一定時間計測し、かつその規則性を推定し、その後の変動周期を予測し、スクリュープロペラ回転数を常に一定に保つよう制御することができるのである。
【0037】
燃料噴射量が適正に制御されるため、排気ガス中のNO,SOを減少させることができる。
【0038】
本発明によれば、上述したように最適な燃料噴射量により、設定した舶用ディーゼル機関の回転数を維持することができる。
【0039】
また、燃料噴射弁開閉機構が、液圧シリンダーと、前記液圧シリンダーのピストンの両側に形成された隔室に切り換え可能に油圧を供給する逆止弁機構と、前記逆止弁機構を介して前記隔室に加圧された液体を供給する原動機付きの双方向ポンプと、前記双方向ポンプの動作を制御するドライバーとを有する本発明の燃料噴射制御装置によれば、油圧を提供するポンプが舶用ディーゼル機関の回転軸と切り離され、舶用ディーゼル機関の回転数に拘わらず燃料噴射量を自由に制御することができる。
【0040】
これにより、上述したように、燃料噴射時の舶用ディーゼル機関の回転数を予測して自由に燃料噴射弁の開度を開閉することができる。
【0041】
また、舶用ディーゼル機関が低回転時に油圧ポンプを高回転させ、あるいは逆に舶用ディーゼル機関が高回転時に油圧ポンプを低回転させられ、舶用ディーゼル機関の負荷状態に合わせて油圧ポンプを作動させることができ、従来技術のように無駄に油圧ポンプの加圧された油をタンクに戻すことがない。
【0042】
第1コントローラーと第2コントローラーとを有する本発明の燃料噴射制御装置によれば、燃料噴射弁の開度に対する制御信号と、実際の燃料噴射弁の開度の相違を低減して、より正確に舶用ディーゼル機関の回転数を一定に維持することができる。
【0043】
本発明によれば、第1コントローラーは、舶用ディーゼル機関の設定回転数と、実際の舶用ディーゼル機関の回転数と、実際の燃料噴射弁の開度とを入力し、燃料噴射弁の開度の一次制御信号を出力する。
【0044】
すなわち、第1コントローラーは、舶用ディーゼル機関の設定回転数と実際の回転数の差から、必要な燃料噴射弁の開度を計算し、計算による燃料噴射弁の開度と実際の燃料噴射弁の開度の差から、一次制御信号を出力する。
【0045】
第2コントローラーは、上記燃料噴射弁の開度の一次制御信号と、実際の燃料噴射弁の開度とを入力し、燃料噴射弁の開度の二次制御信号を出力する。
【0046】
すなわち、第2コントローラーは、一次制御信号によって開くべき燃料噴射弁の開度と、実際の燃料噴射弁の開度とを入力し、それらの差がなくなるように、二次制御信号を出力する。
【0047】
これにより、本発明によれば、燃料噴射弁の制御信号によって開くべき燃料噴射弁の開度と、実際の燃料噴射弁の開度の差が無くなるように、制御を行うことができ、より正確に舶用ディーゼル機関の回転数を一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御装置の構成を示すブロック図。
【図2】図2は、第1コントローラーに記憶される燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数のデータの例を示した図。
【図3】図3は、従来の舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御装置の構成を示すブロック図。

【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による舶用ディーゼル機関の燃料噴射制御装置の構成を示している。
【0050】
図1の燃料噴射制御装置1は、制御対象の舶用ディーゼル機関2と、燃料噴射弁開閉機構3と、燃料噴射量制御機構4とを有している。
【0051】
センサーの系統として、燃料噴射制御装置1は、舶用ディーゼル機関2の回転軸5の近傍に設けられ、舶用ディーゼル機関2の回転数を検出する第1センサー6と、舶用ディーゼル機関2の燃料噴射弁7の開度を検出する第2センサー8とを有している。第2センサー8は、燃料噴射弁7の開度を直接検出するより、後述するように、燃料噴射弁開閉機構3の液圧シリンダーのピストン移動量を検出することにより間接的に燃料噴射弁7の開度を検出するようにするのが好ましい。
【0052】
燃料噴射弁開閉機構3は、燃料噴射弁7を駆動する液圧シリンダー9と、液圧シリンダー9のピストン10の両側に形成された隔室11に切り換え可能に油圧を供給する逆止弁機構12と、逆止弁機構12を介して隔室11に加圧された作動流体を供給する双方向ポンプ13と、双方向ポンプ13を駆動する原動機14と、双方向ポンプ13と原動機14の動作を制御するドライバー15とを有している。
【0053】
本実施形態では、第2センサー8は、燃料噴射弁7の開度を直接検出する代わりに液圧シリンダー9のピストン10の移動量を検出している。
【0054】
逆止弁機構12は、二つの逆止弁16,17が許容する流れ方向が互いに逆になるように配置されてその間を管で接続し、該管に流出した作動流体をタンク18に導く管が設けられている。
【0055】
各逆止弁16,17の上流側管路から他の逆止弁まで、加圧流体を導いて他の逆止弁を押し上げる(開く)ための管19,20が設けられている。
【0056】
燃料噴射量制御機構4は、目標とする舶用ディーゼル機関の設定回転数と、第1センサー6によって検出された舶用ディーゼル機関2の回転数と、第2センサー8によって検出された燃料噴射弁7の開度のデータとを入力し、目標とする燃料噴射弁の開度の一次制御信号を出力する第1コントローラー21と、前記第1コントローラー21からの一次制御信号と、第2センサー8からの燃料噴射弁7の開度の信号とを入力し、実際の燃料噴射弁7の開度を目標とする燃料噴射弁の開度に整合させる二次制御信号を出力する第2コントローラー22とを有している。
【0057】
一次制御信号に加えて二次制御信号によって制御を行うのは、一次制御信号によって目標とする燃料噴射量すなわち燃料噴射弁7の開度の制御信号が燃料噴射弁開閉機構3のドライバー15に入力されても、双方向ポンプ13の回転だけでは正確な燃料噴射弁7の開度を制御することが難しいため、実際の液圧シリンダー9のピストン移動量を第2センサー8によって検出し、燃料噴射弁の開度を目標とする燃料噴射弁の開度に正確に整合させるためである。
【0058】
燃料噴射弁開閉機構3の動作は以下の通りである。
原動機14はドライバー15の制御信号により、起動、停止、正転、逆転等を行う。今、図1の液圧シリンダー9の上側の隔室11に加圧された作動流体を供給する場合を例に説明する。
【0059】
双方向ポンプ13は、原動機14によって駆動され、タンク18から作動流体を吸入し、逆止弁16の上流側の管系統に加圧された作動流体を供給する。加圧された作動流体は、逆止弁16の上流側の管系統から液圧シリンダー9の上側の隔室11に流入し、ピストン10を押し下げる。同時に、逆止弁16の上流側の管系統の加圧された作動流体は、管19を通って逆止弁17の弁体を押し上げて逆止弁17を開くようにする。ピストン10が押し下げられたことにより、液圧シリンダー9の下側の隔室11の作動流体は逆止弁17の上流側管系統に流出する。逆止弁17が開かれていることにより、逆止弁17の上流側管系統に流出した作動流体は逆止弁17を通ってタンク18に流出する。
【0060】
液圧シリンダー9の下側の隔室11に加圧された作動流体を供給する場合は、上述した作用の逆が行われる。
【0061】
ピストン10が移動することにより、ピストン10のロッドを介して燃料噴射弁7が開閉される。
【0062】
次に、本発明による燃料噴射制御、すなわち燃料噴射時の舶用ディーゼル機関の負荷状態に整合するように燃料噴射量を制御する方法について説明する。
【0063】
燃料噴射制御装置1は、所定の時間間隔で燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数を所定回数計測して入力する。該燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数のデータは第1センサー6と第2センサー8によって取得される。燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数のデータはたとえば図2に示すように対応づけられて第1コントローラー21の図示しない記憶装置に記憶される。
【0064】
燃料噴射量uと舶用ディーゼル機関の回転数yの間には、下式の関係が成り立つと考えられる。
【数6】
JP0005061347B2_000007t.gif
上記関係式Gは、制御しようとする回(時点)舶用ディーゼル機関の回転数は、それ以前の舶用ディーゼル機関の回転数と、過去の燃料噴射量と、現在の燃料噴射量によって規定されることを示すものである。
【0065】
ここで、関係式Gの一例として次の関係式が成り立つと考えられる。
【数7】
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係数a,bを求めれば現在の燃料噴射量からそれによってもたらされる舶用ディーゼル機関の回転数が求められる。
【0066】
係数a,bは、舶用ディーゼル機関ごとに異なるばかりでなく、舶用ディーゼル機関の負荷状態によっても変化する。したがって、燃料噴射制御装置1の第1コントローラー21は燃料噴射量と舶用ディーゼル機関の回転数を随時入力しながら、上記係数a,bを算出する。
【0067】
図2の燃料噴射量uと舶用ディーゼル機関の回転数yを上記関係式に代入すると、
【数8】
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【0068】
という複数の式が時間経過と共に得られる。これらの式より、
【数9】
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【0069】
という行列が得られる。十分に時間経過により、係数行列Aは以下のように求められる。
【数10】
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【0070】
係数行列Aが求められれば、
【数11】
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【0071】
から現在の燃料噴射量とそれによってもたらされる舶用ディーゼル機関の回転数の関係が得られ、舶用ディーゼル機関の回転数を目標の設定回転数とすることにより、現在噴射すべき燃料の噴射量が求められる。
【0072】
本発明によれば、従来の燃料噴射制御のように舶用ディーゼル機関の実際の負荷状態に遅れて燃料の噴射量を制御することがなくなり、燃料噴射時の舶用ディーゼル機関の負荷状態に合った噴射量の燃料を噴射させることができ、効率がよく舶用ディーゼル機関の回転数を目標の回転数に維持し、かつ、実際の負荷状態を後追いで燃料噴射弁を開閉することによる機関の不安定な挙動を防止することができる。適正な量の燃料を噴射できることにより、本発明によれば舶用ディーゼル機関の排気ガスのNO,SOを低減することができる。
【0073】
さらに、本発明によれば、燃料噴射弁開閉機構の油圧ポンプが舶用ディーゼル機関の回転軸から切り離され、適正な動力で燃料噴射弁開閉機構の油圧ポンプを駆動することができ、従来の燃料噴射制御装置のように余剰の圧力を逃がすためにリリーフ弁から作動流体をタンクに戻すことを防止でき、さらに燃料噴射制御装置のコンパクト化を図ることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2