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明細書 :水利施設の管理システムとその管理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5620296号 (P5620296)
公開番号 特開2012-164215 (P2012-164215A)
登録日 平成26年9月26日(2014.9.26)
発行日 平成26年11月5日(2014.11.5)
公開日 平成24年8月30日(2012.8.30)
発明の名称または考案の名称 水利施設の管理システムとその管理方法
国際特許分類 G05B  23/02        (2006.01)
E02B   1/00        (2006.01)
E02B   7/20        (2006.01)
E02B  13/02        (2006.01)
A01G  27/00        (2006.01)
FI G05B 23/02 302Y
E02B 1/00 Z
E02B 7/20 105
E02B 13/02 A
A01G 27/00 504Z
請求項の数または発明の数 12
全頁数 19
出願番号 特願2011-025319 (P2011-025319)
出願日 平成23年2月8日(2011.2.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成22年8月10日 社団法人農業農村工学会発行の「平成22年度農業農村工学会大会講演会講演要旨集」に発表
審査請求日 平成25年12月12日(2013.12.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】中矢 哲郎
【氏名】森 丈久
【氏名】渡嘉敷 勝
【氏名】森 充広
【氏名】中嶋 勇
個別代理人の代理人 【識別番号】100086852、【弁理士】、【氏名又は名称】相川 守
審査官 【審査官】川東 孝至
参考文献・文献 特開2007-257190(JP,A)
特開平8-61996(JP,A)
特開2003-293344(JP,A)
特開2001-195125(JP,A)
特開2011-54115(JP,A)
特開2002-168674(JP,A)
調査した分野 G05B 23/02
A01G 27/00
E02B 1/00
E02B 7/20
E02B 13/02
特許請求の範囲 【請求項1】
水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて設置され設置場所の水位を計測し計測された水位計測データを出力する水位計測手段と、
この水位計測手段に電気的に接続され水位計測手段から出力される水位計測データを外部に送信する送信手段と、
中央演算処理装置と記憶装置と表示装置とを有し通信装置を通じて送信手段からのデータを受信するセンターサーバとを備えて構成するとともに、
管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、
求められた異常対照データと正常対照データとを記憶装置に予め入力するように構成し、
センターサーバは、送信手段を通じて水位計測手段から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶装置に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別し、異常と判別すると異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された異常事象の場所と原因とを表示装置に表示させる異常判別解析手段を有することを特徴とする水利施設の管理システム。
【請求項2】
異常判別解析手段は、異常事象の原因を特定すると、その原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示することを特徴とする請求項1に記載の水利施設の管理システム。
【請求項3】
異常判別解析手段は、推定された異常箇所の場所と規模の情報を管理対象の水路系の各水利施設利用者のクライアント端末に送信して表示させることを特徴とする請求項2に記載の水利施設の管理システム。
【請求項4】
水位計測手段は多数設置され、
異常判別解析手段は、収集された水位計測データにより水位計測手段が隣り合って設置されている区間内の流れ方向水面形状を判定し、この隣り合って設置された区間内において発生する異常箇所を推定することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の水利施設の管理システム。
【請求項5】
異常対照データは、異常原因のパターンが水路の沈下、障害物の堆積、水路外への漏水、水路外への溢水および水路表面凹凸の進行による粗度低下の各種類からなっていることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1に記載の水利施設の管理システム。
【請求項6】
水路の上流側には、水路の流量を計測し計測された流量データを送信手段を通じてセンターサーバに出力する流量計測手段を設け、
異常判別解析手段は、収集された水位計測データと流量計測データとを異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照することを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1に記載の水利施設の管理システム。
【請求項7】
センターサーバは、水路系全体の監視制御を行う中央監視センターに、クライアント端末は水路の流水を利用する各水利施設にそれぞれ配置され、これらセンターサーバとクライアント端末とは、通信ネットワークを通じて通信することを特徴とする請求項1に記載の水利施設の管理システム。
【請求項8】
送信手段は、特定小電力無線によりデータが送受信される親局と子局とからなり、各子局で収集された水位計測データを子局間の通信を通じて親局に集め、親局からセンターサーバの通信装置に送信する特定小電力無線通信システムを備えて構成されることを特徴とする請求項1に記載の水利施設の管理システム。
【請求項9】
水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて設置された水位計と、
この水位計に電気的に接続され水位計から出力される水位計測データを無線を通じて外部に送信するとともに外部からの指令信号を受信する送受信装置と、
送受信装置から離れた中央監視センターに設置され、中央演算処理装置と記憶部と表示部とを有し通信装置を通じて送受信装置からのデータを受信するとともに外部に指令信号を送信し、管理対象の水路系の各水利施設のクライアント端末に情報を送信するパーソナルコンピュータとを備えて構成され、
管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、
求められた異常対照データと正常対照データとを記憶部に予め入力するように構成し、
パーソナルコンピュータは、送信装置を通じて水位計から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶部に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別し、異常と判別すると異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示部に表示するとともに、クライアント端末に推定された異常箇所の場所と規模の情報を送信して表示させることを特徴とする水利施設の管理システム。
【請求項10】
水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて水位計測手段を設置し、この水位計測手段に送信手段を電気的に接続して、水位計測手段が設置場所の水位を計測すると計測された水位計測データを送信手段を通じて外部のセンターサーバに送信するよう構成し、
管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、センターサーバの記憶装置に求められた異常対照データと正常対照データとを入力する第1のステップと、
センターサーバが、送信手段を通じて水位計測手段から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶装置に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別する第2のステップと、
第2のステップで異常と判別すると、異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された異常事象の場所と原因とをセンターサーバの表示装置に表示させる第3のステップとを有することを特徴とする水利施設の管理方法。
【請求項11】
第3のステップで異常事象の原因を特定すると、その原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示することを特徴とする請求項10に記載の水利施設の管理方法。
【請求項12】
水理解析により異常箇所の場所と規模とが推定されると、この推定情報を管理対象の水路系の各水利施設利用者のクライアント端末に送信して表示させることを特徴とする請求項11に記載の水利施設の管理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水路における水利施設の管理システムとその管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、広域にわたって整備されている農業用水路施設の保全管理には、機能低下要因の早期発見や監視、診断を間断なく行う必要があり、多大の労力を必要とする。このため、従来、水路の異常箇所を早期にかつ効率的に発見するため水利施設の管理システムや管理方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の管理システムでは、監視センタの中央監視装置を、データ通信部を介して河川管理施設と通信しデータ収集保存部によりデータを収集してデータベースに保存するよう構成するとともに、中央監視装置には、水位計異常判断部を設け、水位データについて各サンプリング時刻毎に前回値と比較し、同じ値が数回連続して計測された場合に、水位計に異常が発生したものと判断し、水位計異常の警報を出力し、管理者に注意を喚起するようにしている。つまり、水位センサとしての水位計の異常を常時監視し、水位計を適正な状態に保つことにより、水位異常を早期に発見するようにしている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2001-195125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、水位計の設置場所の水位異常を検知するようにしているため、より正確に水路全体の水位異常を検知するためには、設置場所の距離間隔を短くし多数の水位計を設置しなければならず、たとえ水位計が水位異常を検知しても、その異常の原因や規模を特定することはできない。このため、異常が発見された場合、水利施設の異常箇所を特定するには、現地に出かけて行き水利施設や水路を非通水状態にして目視踏査する必要があり、労力を要するという問題がある。また、マンパワーにより検査を行うため、見落としなどのヒューマンエラーの発生が避けられない。さらに、水位計を設置した箇所毎に自家発電装置と水位計測装置とWANを介して監視センタの中央監視装置と送受信を行う伝送制御装置とが必要になりシステムが長大化、複雑化し、コストがかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡素な構成で、水利施設の異常を現地に出かけることなく中央監視センターで迅速にリアルタイムで把握することができ、しかも異常の場所や原因および異常の規模を容易に推定することができる水利施設の管理システムとその管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る水利施設の管理システムは、水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて設置され設置場所の水位を計測し計測された水位計測データを出力する水位計測手段と、この水位計測手段に電気的に接続され水位計測手段から出力される水位計測データを外部に送信する送信手段と、中央演算処理装置と記憶装置と表示装置とを有し通信装置を通じて送信手段からのデータを受信するセンターサーバとを備えて構成するとともに、管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、求められた異常対照データと正常対照データとを記憶装置に予め入力するように構成し、センターサーバは、送信手段を通じて水位計測手段から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶装置に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別し、異常と判別すると異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された異常事象の場所と原因とを表示装置に表示させる異常判別解析手段を有するようにしたことを特徴としている。
【0007】
本発明の請求項1に係る水利施設の管理システムでは、水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて設置され設置場所の水位を計測し計測された水位計測データを出力する水位計測手段と、この水位計測手段に電気的に接続され水位計測手段から出力される水位計測データを外部に送信する送信手段と、中央演算処理装置と記憶装置と表示装置とを有し通信装置を通じて送信手段からのデータを受信するセンターサーバとを備えて構成するとともに、管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、求められた異常対照データと正常対照データとを記憶装置に予め入力するように構成し、センターサーバは、送信手段を通じて水位計測手段から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶装置に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別し、異常と判別すると異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された異常事象の場所と原因とを表示装置に表示させる異常判別解析手段を有するようにしたことにより、水利施設に異常が発生すると、中央監視センターに設置されたセンターサーバの表示装置に異常箇所と異常原因とが表示されるので、オペレータは迅速かつリアルタイムで異常事象を正確に把握することができる。
【0008】
本発明の請求項2に係る水利施設の管理システムは、異常判別解析手段は、異常事象の原因を特定すると、その原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示するようにしたことを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項2に係る水利施設の管理システムでは、異常判別解析手段は、異常事象の原因を特定すると、その原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示するようにしたことにより、異常原因に基づいて水理解析されるので、異常事象の態様がより正確かつ具体的に把握される。
【0010】
本発明の請求項3に係る水利施設の管理システムは、異常判別解析手段は、推定された異常箇所の場所と規模の情報を管理対象の水路系の各水利施設利用者のクライアント端末に送信して表示させるようにしたことを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項3に係る水利施設の管理システムでは、異常判別解析手段は、推定された異常箇所の場所と規模の情報を管理対象の水路系の各水利施設利用者のクライアント端末に送信して表示させるようにしたことにより、各水利施設利用者が異常事象の原因と場所と規模の情報を共有することができ、異常事象に迅速に対処することができる。
【0012】
本発明の請求項4に係る水利施設の管理システムは、水位計測手段は多数設置され、異常判別解析手段は、収集された水位計測データにより水位計測手段が隣り合って設置されている区間内の流れ方向水面形状を判定し、この隣り合って設置された区間内において発生する異常箇所を推定するようにしたことを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項4に係る水利施設の管理システムでは、水位計測手段は多数設置され、異常判別解析手段は、収集された水位計測データにより水位計測手段が隣り合って設置されている区間内の流れ方向水面形状を判定し、この隣り合って設置された区間内において発生する異常箇所を推定するようにしたことにより、水位計測手段が隣り合って設置された区間内のうちどの区間内で異常が発生したか推定することができる。
【0014】
本発明の請求項5に係る水利施設の管理システムは、異常対照データは、異常原因のパターンが水路の沈下、障害物の堆積、水路外への漏水、水路外への溢水および水路表面凹凸の進行による粗度低下の各種類からなっていることを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項5に係る水利施設の管理システムでは、異常対照データは、異常原因のパターンが水路の沈下、障害物の堆積、水路外への漏水、水路外への溢水および水路表面凹凸の進行による粗度低下の各種類からなっているようにしたことにより、異常原因をより正確かつ具体的に特定することができ、異常事象により迅速に対処することができる。
【0016】
本発明の請求項6に係る水利施設の管理システムは、水路の上流側には、水路の流量を計測し計測された流量データを送信手段を通じてセンターサーバに出力する流量計測手段を設け、異常判別解析手段は、収集された水位計測データと流量計測データとを異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照するようにしたことを特徴としている。
【0017】
本発明の請求項6に係る水利施設の管理システムでは、水路の上流側には、水路の流量を計測し計測された流量データを送信手段を通じてセンターサーバに出力する流量計測手段を設け、異常判別解析手段は、収集された水位計測データと流量計測データとを異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照するようにしたことにより、より精密に異常の場所と規模を把握することができる。
【0018】
本発明の請求項7に係る水利施設の管理システムは、センターサーバは、水路系全体の監視制御を行う中央監視センターに、クライアント端末は水路の流水を利用する各水利施設にそれぞれ配置され、これらセンターサーバとクライアント端末とは、通信ネットワークを通じて通信するようにしたことを特徴としている。
【0019】
本発明の請求項7に係る水利施設の管理システムでは、センターサーバは、水路系全体の監視制御を行う中央監視センターに、クライアント端末は水路の流水を利用する各水利施設にそれぞれ配置され、これらセンターサーバとクライアント端末とは、通信ネットワークを通じて通信するようにしたことにより、クライアント端末の設置された水利施設が多数に上っても容易にかつ迅速に異常情報を送信することができる。
【0020】
本発明の請求項8に係る水利施設の管理システムは、送信手段は、特定小電力無線によりデータが送受信される親局と子局とからなり、各子局で収集された水位計測データを子局間の通信を通じて親局に集め、親局からセンターサーバの通信装置に送信する特定小電力無線通信システムを備えて構成されるようにしたことを特徴としている。
【0021】
本発明の請求項8に係る水利施設の管理システムでは、送信手段は、特定小電力無線によりデータが送受信される親局と子局とからなり、各子局で収集された水位計測データを子局間の通信を通じて親局に集め、親局からセンターサーバの通信装置に送信する特定小電力無線通信システムを備えて構成されるようにしたことにより、水位計測手段ごとに設置される親局または子局の特定小電力無線装置を小型軽量化することができる。
【0022】
本発明の請求項9に係る水利施設の管理システムは、水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて設置された水位計と、この水位計に電気的に接続され水位計から出力される水位計測データを無線を通じて外部に送信するとともに外部からの指令信号を受信する送受信装置と、送受信装置から離れた中央監視センターに設置され、中央演算処理装置と記憶部と表示部とを有し通信装置を通じて送受信装置からのデータを受信するとともに外部に指令信号を送信し、管理対象の水路系の各水利施設のクライアント端末に情報を送信するパーソナルコンピュータとを備えて構成され、管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、求められた異常対照データと正常対照データとを記憶部に予め入力するように構成し、パーソナルコンピュータは、送信装置を通じて水位計から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶部に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別し、異常と判別すると異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示部に表示するとともに、クライアント端末に推定された異常箇所の場所と規模の情報を送信して表示させるようにしたことを特徴としている。
【0023】
本発明の請求項9に係る水利施設の管理システムでは、水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて設置された水位計と、この水位計に電気的に接続され水位計から出力される水位計測データを無線を通じて外部に送信するとともに外部からの指令信号を受信する送受信装置と、送受信装置から離れた中央監視センターに設置され、中央演算処理装置と記憶部と表示部とを有し通信装置を通じて送受信装置からのデータを受信するとともに外部に指令信号を送信し、管理対象の水路系の各水利施設のクライアント端末に情報を送信するパーソナルコンピュータとを備えて構成され、管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、求められた異常対照データと正常対照データとを記憶部に予め入力するように構成し、パーソナルコンピュータは、送信装置を通じて水位計から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶部に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別し、異常と判別すると異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示部に表示するとともに、クライアント端末に推定された異常箇所の場所と規模の情報を送信して表示させるようにしたことにより、水利施設に異常が発生すると、中央監視センターに設置されたパーソナルコンピュータの表示部に異常事象の原因と場所と規模が表示されるので、オペレータは迅速かつリアルタイムで異常事象の態様を正確に把握することができる。各水利施設利用者が異常事象の原因と場所と規模の情報を共有することができ、異常事象に迅速に対処することができる。
【0024】
本発明の請求項10に係る水利施設の管理方法は、水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて水位計測手段を設置し、この水位計測手段に送信手段を電気的に接続して、水位計測手段が設置場所の水位を計測すると計測された水位計測データを送信手段を通じて外部のセンターサーバに送信するよう構成し、管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、センターサーバの記憶装置に求められた異常対照データと正常対照データとを入力する第1のステップと、センターサーバが、送信手段を通じて水位計測手段から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶装置に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別する第2のステップと、第2のステップで異常と判別すると、異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された異常事象の場所と原因とをセンターサーバの表示装置に表示させる第3のステップとを有するようにしたことを特徴としている。
【0025】
本発明の請求項10に係る水利施設の管理方法では、水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて水位計測手段を設置し、この水位計測手段に送信手段を電気的に接続して、水位計測手段が設置場所の水位を計測すると計測された水位計測データを送信手段を通じて外部のセンターサーバに送信するよう構成し、管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、センターサーバの記憶装置に求められた異常対照データと正常対照データとを入力する第1のステップと、センターサーバが、送信手段を通じて水位計測手段から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶装置に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別する第2のステップと、第2のステップで異常と判別すると、異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された異常事象の場所と原因とをセンターサーバの表示装置に表示させる第3のステップとを有するようにしたことにより、水利施設に異常が発生すると、中央監視センターに設置されたセンターサーバの表示装置に異常箇所と異常原因とが表示されるので、オペレータは迅速かつリアルタイムで異常事象を正確に把握することができる。
【0026】
本発明の請求項11に係る水利施設の管理方法は、第3のステップで異常事象の原因を特定すると、その原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示するようにしたことを特徴としている。
【0027】
本発明の請求項11に係る水利施設の管理方法では、第3のステップで異常事象の原因を特定すると、その原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示するようにしたことにより、異常原因に基づいて水理解析されるので、異常事象の態様がより正確かつ具体的に把握される。
【0028】
本発明の請求項12に係る水利施設の管理方法は、水理解析により異常箇所の場所と規模とが推定されると、この推定情報を管理対象の水路系の各水利施設利用者のクライアント端末に送信して表示させるようにしたことを特徴としている。
【0029】
本発明の請求項12に係る水利施設の管理方法では、水理解析により異常箇所の場所と規模とが推定されると、この推定情報を管理対象の水路系の各水利施設利用者のクライアント端末に送信して表示させるようにしたことにより、各水利施設利用者が異常事象の原因と場所と規模の情報を共有することができ、異常事象に迅速に対処することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の請求項1に係る水利施設の管理システムは、水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて設置され設置場所の水位を計測し計測された水位計測データを出力する水位計測手段と、この水位計測手段に電気的に接続され水位計測手段から出力される水位計測データを外部に送信する送信手段と、中央演算処理装置と記憶装置と表示装置とを有し通信装置を通じて送信手段からのデータを受信するセンターサーバとを備えて構成するとともに、管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、求められた異常対照データと正常対照データとを記憶装置に予め入力するように構成し、センターサーバは、送信手段を通じて水位計測手段から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶装置に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別し、異常と判別すると異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された異常事象の場所と原因とを表示装置に表示させる異常判別解析手段を有するようにしたので、システム全体の構成を簡素化してコストダウンを図ることができる。また、水利施設の異常を現地に出かけることなく中央監視センターで迅速にリアルタイムで把握し、各水利施設に知らせることができるので、異常を早期に発見することができ、作業を効率化することができる、しかも、異常の場所や原因および異常の規模を容易に推定することができるので、異常事象に対し迅速に対応することができ、マンパワーによる非通水状態での目視踏査が不要となり運用管理が効率化される。
【0031】
本発明の請求項9に係る水利施設の管理システムは、水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて設置された水位計と、この水位計に電気的に接続され水位計から出力される水位計測データを無線を通じて外部に送信するとともに外部からの指令信号を受信する送受信装置と、送受信装置から離れた中央監視センターに設置され、中央演算処理装置と記憶部と表示部とを有し通信装置を通じて送受信装置からのデータを受信するとともに外部に指令信号を送信し、管理対象の水路系の各水利施設のクライアント端末に情報を送信するパーソナルコンピュータとを備えて構成され、管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、求められた異常対照データと正常対照データとを記憶部に予め入力するように構成し、パーソナルコンピュータは、送信装置を通じて水位計から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶部に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別し、異常と判別すると異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示部に表示するとともに、クライアント端末に推定された異常箇所の場所と規模の情報を送信して表示させるようにしたので、システム全体の構成を簡素化してコストダウンを図ることができる。また、水利施設の異常を現地に出かけることなく中央監視センターで迅速にリアルタイムで把握し、各水利施設に知らせることができるので、異常を早期に発見することができ、作業を効率化することができる、しかも、異常の場所や原因および異常の規模を容易に推定することができるので、異常事象に対し迅速に対応することができ、マンパワーによる非通水状態での目視踏査が不要となり運用管理が効率化される。
【0032】
本発明の請求項10に係る水利施設の管理方法は、水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて水位計測手段を設置し、この水位計測手段に送信手段を電気的に接続して、水位計測手段が設置場所の水位を計測すると計測された水位計測データを送信手段を通じて外部のセンターサーバに送信するよう構成し、管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、センターサーバの記憶装置に求められた異常対照データと正常対照データとを入力する第1のステップと、センターサーバが、送信手段を通じて水位計測手段から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶装置に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別する第2のステップと、第2のステップで異常と判別すると、異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された異常事象の場所と原因とをセンターサーバの表示装置に表示させる第3のステップとを有するようにしたので、水利施設の異常を現地に出かけることなく中央監視センターで迅速にリアルタイムで把握し、各水利施設に知らせることができるので、異常を早期に発見することができ、作業を効率化することができる、しかも、異常の場所や原因および異常の規模を容易に推定することができるので、異常事象に対し迅速に対応することができ、マンパワーによる非通水状態での目視踏査が不要となり運用管理が効率化される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る水利施設の管理システムを示す概念図である。(実施例1)
【図2】図2は、図1の水利施設の管理システムにおける水路と中央監視センターとを示す概略説明図である。
【図3】図3は、水位データの取得状況を示すグラフであるである。
【図4】図4は、水理モデルによる水面形の解析例を示すグラフである。
【図5】図5の(A)ないし(C)はそれぞれ、異常事象の種類を水理解析する際に用いられる水面形モード(水面形パターン)であって、異常事象の種類に応じて異なる形状が表れる水面形モード(水面形パターン)を示す水理情報グラフで、(A)は沈下時の水面形モードを、(B)は堆積時の水面形モードを、(C)は漏水時の水面形モードをそれぞれ示すグラフである。
【図6】図6の(A)ないし(C)はそれぞれ、異常箇所の特定を水理解析する際に用いられる水理情報グラフで、(A)は正常時の観測値のグラフを、(B)は異常発生時の観測値のグラフを、(C)は異常発生時の観測値に基づいて異常箇所の規模や場所を水理解析により特定した状態のグラフをそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
水利施設の異常を中央監視センターで迅速にかつリアルタイムで把握し、しかも異常の場所や原因および異常の規模を速やかに推定するという目的を、水路の上流から下流に沿って所定の距離を隔てて設置された水位計と、この水位計に電気的に接続され水位計から出力される水位計測データを無線を通じて外部に送信する送信装置と、送信装置から離れた中央監視センターに設置され、中央演算処理装置と記憶部と表示部とを有し通信装置を通じて送信装置からのデータを受信するとともに管理対象の水路系の各水利施設のクライアント端末に情報を送信するパーソナルコンピュータとを備えて構成され、管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターンと正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、求められた異常対照データと正常対照データとを記憶部に予め入力するように構成し、パーソナルコンピュータは、送信装置を通じて水位計から水位計測データを収集すると、これら収集された水位計測データを記憶部に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別し、異常と判別すると異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された原因に基づいて異常箇所の場所と規模とを水理解析により推定して表示部に表示するとともに、クライアント端末に推定された異常箇所の場所と規模の情報を送信して表示させるようにしたことにより実現した。
【実施例1】
【0035】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1および図2はそれぞれ、本発明の一実施例に係る水利施設の管理システムの概要を示す概念図および水利施設の管理システムにおける水路と中央監視センターとを示す概略説明図である。本実施例に係る水利施設の管理システム2は、図1および図2に示すように、幹線水路3Aや支線水路3B等の水路(開水路)3、貯水池4、貯水池に設置されたポンプ5やゲート6等を備えた水利施設に適用される。
【実施例1】
【0036】
本実施例に係る水利施設の管理システム2は、水路3の上流から下流に沿って所定の距離Dを隔てて設置された水位計10(10A、10A1・・・10An(nは任意の整数))と、貯水池4の水を水路3へ流下させるポンプ5に設置された流量計11とを備えている。これら水位計10と流量計11とにはそれぞれ、電気的に接続され、水位計10から出力される水位計測データLと流量計11から出力される流量計測データFとを小電力無線(例えば、430MHz、1.2GHz、2.5GHz帯)を通じて外部に送信するとともに外部からの情報(指令信号、データ)を受信する送受信装置12が設けられる。
【実施例1】
【0037】
送受信装置12は、特定小電力無線を通じてデータが送信される親局12Aと子局12A1、12A2・・・12An(nは任意の整数)とからなり、各子局12A1~12Anで収集された水位計測データLと流量計測データFとを子局12A1~12An間の通信を通じて親局12Aに集めて外部に送信するとともに外部からの指令信号を受信するようになっている。送受信装置12の親局12Aから離れた場所に移動可能に設けられ水路系全体の監視制御を行う中央監視センター(監視局)13には、センターサーバ(パーソナルコンピュータ)14が設置される。センターサーバ14は、中央演算処理装置(図示せず)と記憶部(図示せず)と表示部(図示せず)と通信装置15を備えて構成される。センターサーバ14は、通信装置15を通じて送受信装置12の親局12Aで収集された水位計測データLと流量計測データFとを受信するとともに収集されたデータL、Fを解析して解析結果を水系の水利施設を利用する施設利用者16のクライアント端末17に通信ネットワーク(インターネット)を介して送信するようになっている。また、センターサーバ14は、例えば親局12A(子局12A1~12Anでもよい)がポンプ5のon/OFF制御やゲート6の開閉制御を行う機構を備えている場合、外部から受信した水位情報に基づいて、通信装置15と送受信装置12とを通じて制御指令信号を送出するようになっている。すなわち、センターサーバ14は外部から「水路から水が溢れている」という溢水情報を水位情報として入手すると、ポンプ5を停止させる指令信号やゲート6を開く指令信号を送出するようになっている。なお、クライアント端末17は、水系の各水利施設に設置するようにしてもよい。
【実施例1】
【0038】
送受信装置12は特定小電力無線により通信を行うもので、消費電力を低く抑えることができる。このため、送受信装置12には、太陽電池18が電気的に接続され太陽電池18で発電された電力を内部の図示しないバッテリに供給するようになっている。このため、送受信装置12は水位計10または流量計11毎に独立して設置される。また、送受信装置12は用途や中央監視センター13までの距離に応じて種類の異なる小電力無線装置に変更可能となっている。センターサーバ14は、送受信装置12から取得したデータF、Lは自動で任意のフォルダに保存され、任意の時間間隔で指定したアドレスあてに電子メールで通知するようになっている(例えば、図3の水位データの取得状況を表すグラフ参照)。日報データはCSV形式で電子メールに添付される。また、センターサーバ14は、予め設定された水位の閾値(危険値)を越えた場合、親局12Aから自立的に指定したアドレスあてに緊急情報を電子メールで送信するようになっている。
【実施例1】
【0039】
ところで、本実施例に係る水利施設の管理システム2は、まず簡易計測により得られた粗度計数等の現地の水路情報に基づいて、流れ方向の水位の変化の形状を示す水面形に対して水路の異常事象に起因する変化状態の影響を把握するため、一次元水理解析モデルを作成する(図4の「水理モデルによる水面形の解析例」参照)。作成された一次元水理解析モデルに基づいて図4に示すような水理モデルによる水面形の解析例を導く。この解析例は、水路床の沈下や粗度係数の変化が水面形に与える影響の解析例を示し、図4の左側縦軸は水位(m)を、図4の右側縦軸は基準面からの水路床高さ(m)を、図4の横軸は縦断距離(m)をそれぞれ示す。なお、図4中、DAMは堰上げ施設を示す。そして、一次元水理解析モデルに基づいて、図5の(A)ないし(C)にそれぞれ示すように、水路床沈下時の水面形モード(水面の流れ方向の形状のパターン)(図5の(A)参照)、水路床への障害物堆積時の水面形モード(図5の(B)参照)、水路床から水路外へ漏水発生時の水面形モード(図5の(C)、図2の漏水箇所X参照)、正常時の水面形モード(図6の(A)参照)を導く。このように管理システム運用前に、これら予め想定される不具合について、異常事象の種別に応じて異常事象の種別毎に表れる水面形のパターンを把握し、これら異常対照データ(図5の(A)ないし(C)参照)と正常対照データ(図6の(A)参照)とを予めセンターサーバ14の記憶部に入力しておく。
【実施例1】
【0040】
センターサーバ14は、異常判別解析部(異常判別解析手段)(図示せず)を備えている。異常判別解析部は、通信装置15が送受信装置12の親局12Aを介して各水位計10A、10A1~10Anから水位計測データL1(L1-10A、L1-10A1・・・L1-10An)またはL2(L2-10A、L2-10A1・・・L2-10An)(図6の(A)、(B)参照)を受信すると、これら実際に収集された水位計測データL1またはL2が、記憶部に予め入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて正常または異常のどちらの水面形モードに当てはまるか比較判別し、異常と判別した場合(図6の水位計測データL2参照)、実際に収集された水位計測データL2からどの原因による水面形モードに当てはまるか比較判別し(図5の(A)~(C)参照)、異常原因を特定すると、例えば、図5の(A)の水面形モードに当てはまれば、「水路床の沈下」と推定し、図5の(B)に当てはまれば、「水路床に障害物が堆積」していると推定し、図5の(C)に当てはまれば、「水路床から外部に漏水が発生」していると異常原因を特定し、その異常原因に基づいて、異常箇所の場所と規模を水理解析により推定するようになっている。そして、異常判別解析部は、異常原因ととともに推定された異常箇所の場所と規模の解析結果を表示部に表示するとともに、この異常原因と場所と規模の推定情報を、管理対象の水路系3の各水利施設の利用者16のクライアント端末17にインターネットを通じて送信して表示させるようになっている。
【実施例1】
【0041】
すなわち、異常判別解析部は、図6の(B)に示すように、送受信装置12の親局12Aから水位計測データL2を受信し、例えば、図2に示す幹線水路3Aの上流側第1の水位計10A1から水位計測データL2-10A1を、幹線水路3Aの上流側第2の水位計10A2から水位計測データL2-10A2を、幹線水路3Aの上流側第3の水位計10A3から水位計測データL2-10A3をそれぞれ受け取ると、これら水位計測データL2-10A1、L2-10A2およびL2-10A3を正常対照データの正常時の水面形モードと比較対照し、合致しないと異常と判別し、水位計測データL2-10A1、L2-10A2およびL2-10A3の配置のパターンが図5の(A)ないし(C)のうち、どの水面形モードに相当するか判別して異常原因を特定する。そして、異常原因が特定されると、これら水位計測データL2-10A1、L2-10A2およびL2-10A3の各座標上のポイントを水理解析により結んで予測モードの線C-estを生成し、この予測モードの線C-estに基づいて異常箇所の場所と規模を推定するようになっている。すなわち、予測モードの線C-estにより異常事象は流れ方向でどこからどこまでの範囲で生じていするか、その範囲において沈下の程度や障害物の堆積の量や広がりや高さの程度(図6の(C)のC-est-pile)が推定できるようになっている。漏水の場合、図5の(C)に示すように、予測モードの線C-estに高低の段差が大きい箇所P(推定リークポイント)が表れる場合、漏水箇所の上下流側で高低の段差が大きくなることから漏水と推定するようになっている。このように、本実施例に係る水利施設の管理システムでは、多数設置された水位計10の水位計測データに基づいて、水位計10が隣り合って設置されている区間内の水面形状を判定し、この隣り合って設置された区間内において発生する異常箇所を流れ方向に沿って線状に推定することができるようになっている。すなわち、従来の技術では、異常部に計測器が必要であり異常部に計測器がないと異常を見つけるとができないのに対し、本願発明では、異常部に計測器(水位計10)がなくとも、複数のデータを用いることにより異常部の場所と原因とを特定することができる。
【実施例1】
【0042】
なお、上記実施例では、水位計10からの水位計測データL1、L2に基づいて異常の判別と異常原因の特定、異常箇所の場所と規模の推定を行うようにしているが、流量計11から得られた流量データを送受信装置12を通じてセンターサーバ14が受け取り、収集された水位計測データと流量計測データとを異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照するようにしてもよい。このように構成することにより、より精密に異常の場所と規模を把握することができる。
【実施例1】
【0043】
次に、本発明に係る水利施設の管理方法について、上記実施例に係る水利施設の管理システムの作用に基づいて説明する。まず、予め管理対象となる実際の水路の情報に基づいて予め一次元水理解析モデルを作成し、この水理解析モデルに基づいて異常事象の種別毎に表れる水面の流れ方向の形状のパターン(水面形モード)と正常時に表れる水面の流れ方向の形状のパターンとをそれぞれ異常対照データと正常対照データとして求め、センターサーバ14の記憶部に入力する(第1のステップS1)。すなわち、第1のステップS1では、まず簡易計測により得られた粗度計数等の現地の水路情報に基づいて、流れ方向の水位の変化の形状を示す水面形に対して水路の異常事象に起因する変化状態の影響を把握するため、一次元水理解析モデルを作成し、作成された一次元水理解析モデルに基づいて水理モデルによる水面形の解析例を導く(図4参照)。そして、一次元水理解析モデルに基づいて、図5の(A)ないし(C)にそれぞれ示すように、水路床沈下時の水面形モード、水路床への障害物堆積時の水面形モード、水路床から水路外へ漏水発生時の水面形モード、正常時の水面形モード(図6の(A)参照)を導く。このように管理システム運用前に、これら予め想定される不具合について、異常事象の種別に応じて異常事象の種別毎に表れる水面形のパターンを把握し、これら異常対照データ(図5の(A)ないし(C)参照)と正常対照データ(図6の(A)参照)とを予めセンターサーバ14の記憶部に入力しておく。
【実施例1】
【0044】
次に、センターサーバ14が、送受信装置12を通じて水位計から水位計測データL1、L2を収集すると、これら収集された水位計測データL1、L2を記憶部に入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて比較対照して異常の有無を判別する(第2のステップS2)。すなわち、第2のステップS2では、センターサーバ14は、通信装置15が送受信装置12の親局12Aを介して各水位計10A、10A1~10Anから水位計測データL1(L1-10A、L1-10A1・・・L1-10An)またはL2(L2-10A、L2-10A1・・・L2-10An)を受信すると、これら実際に収集された水位計測データL1またはL2が、記憶部に予め入力された異常対照データと正常対照データとに基づいて正常または異常のどちらの水面形モードに当てはまるか比較判別する。
【実施例1】
【0045】
第2のステップS2で異常と判別すると、異常対照データに基づいて異常事象の場所と原因とを特定し、特定された異常事象の場所と原因とをセンターサーバ14の表示部に表示させる(第3のステップS3)。つまり、第3のステップS3では、センターサーバ14が異常と判別した場合(図6の水位計測データL2参照)、実際に収集された水位計測データL2からどの原因による水面形モードに当てはまるか比較判別し(図5の(A)~(C)参照)、異常原因を特定すると、例えば、図5の(A)の水面形モードに当てはまれば、「水路床の沈下」と推定し、図5の(B)に当てはまれば、「水路床に障害物が堆積」していると推定し、図5の(C)に当てはまれば、「水路床から外部に漏水が発生」していると異常原因を特定し、特定された異常事象の場所と原因とをまずセンターサーバ14の表示部に表示させる。
【実施例1】
【0046】
次に、第3のステップS3で特定された異常原因に基づいて、センターサーバ14は、異常箇所の場所と規模を水理解析により推定し、異常原因ととともに推定された異常箇所の場所と規模の解析結果を表示部に表示し(第4のステップS4)、この異常原因と場所と規模の推定情報を、管理対象の水路系の各水利施設の利用者16のクライアント端末17にインターネットを通じて送信して表示させる(第5のステップS5)。このように、本実施例に係る水利施設の管理システム2による管理方法では、水利施設に異常が発生すると、中央監視センターに設置されたセンターサーバの表示装置に異常箇所と異常原因とが表示されるので、オペレータは迅速かつリアルタイムで異常事象を正確に把握することができる。しかも、異常原因に基づいて水理解析されるので、異常事象の態様がより正確かつ具体的に把握される。また、各水利施設利用者が異常事象の原因と場所と規模の情報を共有することができるので、異常事象に迅速に対処することができる。
【実施例1】
【0047】
なお、上記実施例では、農業用の水路について述べたがこれに限られるものではなく、地下、地上を問わず内部で流体が流れ水面が存在する水路や下水道等にも適用可能であることはいうまでもない。また、上記実施例では、水利施設を幹線水路3Aや支線水路3B等の水路3、貯水池4、貯水池に設置されたポンプ5やゲート6等を備えた水利施設としているがこれに限られるものではなく、利水に供されるものであって、予め現地の水路情報に基づいて一次元水理解析モデルを作成し異常対照データと正常対照データとが取得できるのであれば、人工的な水路に限らず河川にも適用可能である。さらに、上記実施例では、水路3から収集する計測データを水位計測データや流量データとしているがこれに限られるものではなくπゲージ(ひずみ検出器)20(図1参照)の計測データを用いるようにしてもよい。また、上記実施例では、異常対照データとして異常原因のパターンを、水路の沈下、障害物の堆積および水路外への漏水の各種類からなっているとしているが、これらに限られるものではなく、他にも水路外への溢水や水路表面凹凸の進行による粗度低下の各種類が含まれることはいうまでもない。さらに、上記実施例では、送受信装置12には、太陽電池18により電力が供給されるようになっているがこれに限られるものではなく、独立した小電力供給装置であればよく、例えば、水路の流れを利用した小水力発電装置を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
3 水路
10 水位計(水位計測手段)
12 送信装置(送信手段)
14 センターサーバ
L1、L2 水位計測データ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5