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明細書 :超音波距離センサシステム及びこれを用いた超音波距離センサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5163194号 (P5163194)
公開番号 特開2009-222445 (P2009-222445A)
登録日 平成24年12月28日(2012.12.28)
発行日 平成25年3月13日(2013.3.13)
公開日 平成21年10月1日(2009.10.1)
発明の名称または考案の名称 超音波距離センサシステム及びこれを用いた超音波距離センサ
国際特許分類 G01S  15/08        (2006.01)
G01S   7/526       (2006.01)
FI G01S 15/08
G01S 7/526 J
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2008-064983 (P2008-064983)
出願日 平成20年3月13日(2008.3.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年9月13日 社団法人日本ロボット学会発行の「第25回日本ロボット学会学術講演会」に発表
審査請求日 平成23年2月22日(2011.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】丹沢 勉
【氏名】清弘 智昭
審査官 【審査官】堀 圭史
参考文献・文献 特開平07-234279(JP,A)
特開昭52-149152(JP,A)
特開平7-104063(JP,A)
調査した分野 G01S 1/72-82,3/80-86
5/18-30,7/52-64
15/00-96
特許請求の範囲 【請求項1】
超音波を送波し対象物からの反射波を受信して前記対象物までの距離を検知する超音波距離センサシステムにおいて、
前記対象物に超音波を送信する送信素子と、前記送信素子に駆動信号を出力する駆動回路と、前記対象物からの反射波を受信する受信素子と、前記受信素子からの信号により前記対象物との間の距離を検出する信号処理回路とを備え、前記信号処理回路は、複数の送信パターンに基づいて送信波を形成し、
第1の送信パターンと、当該第1の送信パターンよりも周期が短い第2の送信パターンとを含む前記複数の送信パターンと前記受信素子からの信号の相関に基づき前記対象物までの距離を算出する手段を備えたことを特徴とする超音波距離センサシステム。
【請求項2】
前記複数の送信パターンは、第1の送信パターンが、第2の送信パターンの振幅よりも大きな振幅を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波距離センサシステム。
【請求項3】
前記複数の送信パターンは、前記第1の送信パターンと、前記第2の送信パターンと、さらに前記第1の送信パターンの位相を異ならせた第3の送信パターンとを含むことを特徴とする請求項1に記載の超音波距離センサシステム。
【請求項4】
前記複数の送信パターンは、3種類以上の送信パターンの組み合わせであり、
少なくともひとつの送信パターンは、他の送信パターンを合成した少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1に記載の超音波距離センサシステム。
【請求項5】
請求項1らのいずれかに記載の超音波距離センサシステムを用いたことを特徴とする超音波距離センサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイドレンジ化を図った超音波距離センサシステム及びこれを用いた超音波距離センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般の超音波センサは、キャリア周波数で変調された幅の狭い一発のパルスを送信信号として出力する。その送信波が物体に反射して戻ってくる反射波を検出し、送信してから反射波を検出するまでの時間を測定することで物体までの距離を測定している。このような超音波センサでは、キャリア周波数を含む雑音のある環境下では、誤動作し、正確な対象物までの距離を測定することができない。
【0003】
このため、送信信号としてある特定の符号系列信号を用い、対象物からの反射信号と、送信符号信号とで相関を計算することにより、雑音に影響されることなく反射信号の遅延時間を測定することができる超音波センサがある(例えば、特許文献1参照)。

【特許文献1】特開平9-21869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら従来の超音波センサは、送信してからの反射信号の遅延時間から距離を算出している。したがって、検出した反射波が、直前に送信した送信信号の反射波か、その前の周期の反射波かの混乱を避けるため、想定する測距レンジに応じた遅延時間より十分大きい周期で送信信号を出力する必要があった。そのため、遠方の対象まで測距しようとすると、反射波の遅延時間が大きくなり、送信信号の周期を長くしなければならず、測定頻度が高くできない。逆に、測定頻度を高くしようとすると、測距レンジが近距離に限定されてしまう問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の超音波センサが有していた問題点を解決するものであり、単一のセンサで幅の広い測定レンジを有しながらも、近距離の物体の高い頻度での測距を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、超音波を送波し対象物からの反射波を受信して前記対象物までの距離を検知する超音波距離センサシステムにおいて、前記対象物に超音波を送信する送信素子と、前記送信素子に駆動信号を出力する駆動回路と、前記対象物からの反射波を受信する受信素子と、前記受信素子からの信号により前記対象物との間の距離を検出する信号処理回路とを備え、前記信号処理回路は、複数の送信パターンに基づいて送信波を形成し、前記複数の送信パターンと前記受信素子からの信号の相関に基づき前記対象物までの距離を算出する手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記複数の送信パターンが、第1の送信パターンと、当該第1の送信パターンよりも周期が短い第2の送信パターンとを含むものが好適である。前記複数の送信パターンは、第1の送信パターンが、第2の送信パターンの出力よりも大きな振幅を有することが好ましく、もしくは前記第1の送信パターンが、周期が短い第2の送信パターンの出力よりも大きな振幅を有することが好ましい。
【0008】
また、前記複数の送信パターンが、前記第1の送信パターンと、前記第2の第1の送信パターンの位相を異ならせた第3の送信パターンとを含むものとしてもよい。
【0009】
さらに、前記複数の送信パターンが、3種類以上の送信パターンの組み合わせであり、少なくともひとつの送信パターンを、他の送信パターンを合成した少なくとも一部を含むものとしてもよい。
【0010】
本発明の超音波距離センサは、上記記載のいずれかの超音波距離センサシステムを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、特性の異なる複数の送信信号パターンを重ね合わせて送信信号として出力し、その反射波と各送信信号パターンとの相関値演処理を独立して行うことにより、単一の超音波センサ上で、測定レンジの異なる測距処理が同時に並行して行うことができる。これにより、短距離対象物は周期の短い送信信号パターンを使用することにより高い測定頻度での測距が可能となり、それと同時に、周期の長い送信信号パターンにより、遠方の対象物の測距も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態として、実施例を図1から図8に基づいて説明する。
図1は本発明の超音波距離センサの構成図である。この超音波距離センサは、超音波送信素子2、超音波受信素子3、及び、制御回路1から構成される。制御回路1は、超音波距離センサを制御するマイコン16を備え、この制御マイコン16により送信信号パターンを合成し(送信信号)、信号線18、19の少なくとも一方に出力する。また、制御マイコン16は超音波キャリア信号を信号線17に出力する。送信信号と超音波キャリア信号を用いて、振幅変調回路12により送信波信号を生成し、増幅回路11により送信波信号を増幅し、超音波送信素子2を駆動する。これにより超音波を対象物に向けて送波する。近い対象物を測距する場合には送信信号パターンを信号線18、19のどちらか一方に出力する。また、遠方の対象物を測距する場合には信号線18、19の両方へ出力する。これにより、遠方の対象物の測距時は、近い対象物の測距時に比べ大きい振幅の送信波を出力する。なお、超音波受信素子3は、超音波送信素子2から送波され対象物により反射した超音波を受信し、電気信号に変換し、増幅器14により電気信号を増幅するとともに復調器15により振幅復調する。制御マイコン16は、一定時間ごとに振幅復調された電気信号を読み込むことで、反射波の強度を測定する。制御マイコン16は、反射波の強度の時間変化と前記送信信号パターンに基づいて、反射波の遅延時間を算出し、対象物までの距離を求める。
【0013】
本発明の超音波距離センサは、複数の送信信号パターンに基づいて、近距離測距処理と遠距離測距処理を同時に並列して行う。近距離用の周期の短い送信信号パターンを用いた測距処理と、遠距離用の周期の長い送信信号パターンを用いた測距処理について図2を用いて説明する。近距離用の測距処理において、周期の短い送信信号パターンを生成する。一方、遠距離用の測距処理において、周期の長い送信信号パターンを生成する。そして、短距離と長距離の送信信号パターンを合成することにより、送信信号を形成する。この送信信号により超音波キャリア信号を変調し、送信波として超音波送信素子2から送波される。一方、対象物に反射し、超音波受信素子3により受信された信号は、増幅・復調され、制御マイコン16に入力される。制御マイコン16において二値化処理を行い、この二値化処理された受信信号と合成前の各送信信号パターンとの相互相関値を(1)式を用いて、近距離用の測距処理と遠距離用の測距処理でそれぞれ独立して演算することにより、近距離、遠距離測距を同時に並行して実行する。
【数1】
JP0005163194B2_000002t.gif
式1中のT(k) は0または1で表された送信信号パターン、R(k)はある閾値により二値化された受信信号、Ndは送信信号パターンの1周期分のサンプリングデータ数である。lは受信信号R(k)のシフト数、つまり遅延時間を示している。送信信号パターンT(k)と受信信号R(k)は、0または1の二値であるため、論理積と加算のみとなるため高速で相関の計算が可能である。
【0014】
相互相関の値C(l)がある閾値より大きいとき、対象物までの距離Dは、(2)式で与えられる。
【数2】
JP0005163194B2_000003t.gif
ここで、fsは受信信号のサンプリング周波数、Vsは、空気中を音が伝搬する速度である。
【0015】
図3は、短距離と長距離の送信信号パターンの周期による測距レンジと測定頻度の関係を示す。短距離用の送信信号パターンの周期が短いことに基づき、長距離用の周期の長い送信信号パターンに比べて、距離は短く測距頻度が高くなる。すなわち、本超音波距離センサにおいては、長い測定レンジと,近距離においては高い測定頻度を有することになる。
【0016】
尚、制御マイコン16における二値化処理は、閾値を一定値とすることができるが、図4に示すように反射波の遅延時間lに基づいて変化させてもよい。
【0017】
次に、送信信号パターンについて説明する。送信信号パターンは、図5に示すような複数の幅の狭いパルスから構成されるパターン信号用いる。このとき送信信号パターンは、受信信号と相関値を演算する際、一意に受信信号の遅延時間を決定できる必要があるため、(3)式、(4)式を満たす必要がある。遅延時間0の受信信号は送信信号パターンと同一であることから、(3)式で示す送信信号パターン自身との相関計算を行う際、遅延時間lが0の時のみ大きな値を持ち、他の時には十分小さい相関値をとなる必要がある。したがって、(3)式のC(l)に対し、(4)式を満たす必要がある。

【数3】
JP0005163194B2_000004t.gif
【数4】
JP0005163194B2_000005t.gif

【0018】
さらに、本発明の超音波距離センサでは、互いの送信信号パターン間の干渉を抑える必要があるため、(4)式に加え、互いの送信信号パターン間の相関値が低くなければならない。すなわち、(5)式に示す値が、すべてのlに対し(6)式を満たす必要がある。
【数5】
JP0005163194B2_000006t.gif

【数6】
JP0005163194B2_000007t.gif

(5)式中のTshort(k)、 Tlong(k)は、近距離、遠距離の送信信号パターンであり、Nは近距離の送信信号パターンの周期である。
【0019】
尚、本実施の形態では、遠距離・近距離の2種類の合成を用いて説明したが、これに限定されることなく3つ以上の送信信号の合成が可能である。この場合には、すべての送信信号パターンの組み合わせで、上式が成り立つ必要がある。
【0020】
次に、送信信号パターンの具体例を示す。図6に示すように、第1の送信パターンと、当該第1の送信信号パターンの位相を異ならせた第2の送信パターンとから構成する。この場合には、第1および第2の送信信号パターンの1周期あたり1回の測定結果が得られ、位相の異なる送信信号パターンを合成することにより、1周期あたり2点の測定結果が得られる。 たとえば、位相の異なる送信信号パターンを3つにすることで、1周期あたり3点の測定結果出力が得られる。さらに、位相の異なる送信信号パターンを追加していくことで、測定結果の出力頻度を高めることができる。
【0021】
図7には、3つ以上の送信パターンの組み合わせを示す。送信パターンの少なくともひとつは、他の送信信号パターンを合成した送信信号パターンから構成する。すなわち、パターンC(遠距離用の送信信号パターン)はパターンA(近距離用の送信信号パターン)とB(近距離用の送信信号パターン)のそれぞれ一部の組み合わせである。このパターンの組み合わせでは、自身のパターンと一致しない信号が低減されるため、送信信号パターンの満たすべき条件を満たすことが容易となる。また、遠方の対象物を測距するためには、超音波の減衰が大きいため、振幅の大きな送信波を出力する必要があるが、近距離用と遠距離用の送信パターンが異なるため、遠距離用に対してのみ、大きな振幅で出力することができる。さらに、図8に示すように、パターンCはパターンAの一部のみを含んで構成してもよい。
【0022】
このように本実施の形態によれば、所定条件を満たす特性の異なる複数の送信信号パターンを重ね合わせて送信信号として出力し、その反射波と各送信信号パターンとの相関値演処理を独立して行うことにより、単一の超音波センサ上で、測定レンジの異なる測距処理が同時に並行して行うことができる。これにより、短距離対象物は周期の短い送信信号パターンを使用することにより高い測定頻度での測距が可能となり、それと同時に、周期の長い送信信号パターンにより、遠方の対象物の測距も可能となる。所定条件とは、送信信号パターンの自己相関値が遅延時間が0のときのみ、大きな値を持ち、それ以外は小さい値をもつことであり。さらに、他の重ね合わせる送信信号パターンに対し、すべての遅延時間に対し、相互相関値が小さい値を持つことである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の超音波距離センサの構成図である。
【図2】2つの送信信号パターンを用いた場合の処理の概念図である。
【図3】送信信号パターンの周期による測距レンジと測定頻度の関係を示す説明図である。
【図4】反射信号を二値化する閾値の特性例の説明図である。
【図5】送信信号パターンの説明図である。
【図6】異なる位相の送信信号パターンの説明図である。
【図7】他の送信信号パターンの一部から構成される送信パターンの説明図である。
【図8】他の送信信号パターンの一部を含む送信パターンの説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 制御回路
2 超音波送信素子
3 超音波受信素子
16 マイコン
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
6
【図8】
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