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明細書 :低温熱交換器の性能向上方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3020168号 (P3020168)
登録日 平成12年1月14日(2000.1.14)
発行日 平成12年3月15日(2000.3.15)
発明の名称または考案の名称 低温熱交換器の性能向上方法
国際特許分類 F02B 29/04      
F02C  7/143     
F02M 31/20      
F28F 13/02      
FI F02B 29/04 A
F02C 7/143
F02M 31/20
F28F 13/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 4
出願番号 特願平11-107801 (P1999-107801)
出願日 平成11年4月15日(1999.4.15)
審査請求日 平成11年4月15日(1999.4.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012693
【氏名又は名称】宇宙科学研究所長
発明者または考案者 【氏名】棚次 亘弘
【氏名】原田 賢哉
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】佐藤 正浩
参考文献・文献 特開 平4-77308(JP,A)
調査した分野 F02B 29/04
F02C 7/143
F02M 31/20
F28F 13/02
要約 【課題】 エアーブリージングエンジン用のプリクーラにおいて、着霜による熱交換性能の低下を防止するための方法を提供する。
【解決手段】 プリクーラ1の内部には伝熱管2が配置され、伝熱管2の内部には冷媒として液体水素12が供給されている。空気11は、ダクト3を介してプリクーラ1に送られ、冷却された後、エアーブリージングエンジンの圧縮機に送られる。ダクト3の途中に設けられたノズル4を介して、ダクト3内にエタノール13を混入する。エタノール13は、プリクーラ1の内部に運ばれ、水蒸気とともに伝熱管2の表面で凝縮する。この様にして形成された霜層は、水蒸気が単独で凝結した場合に形成される霜層と比べて空隙が少なく、熱抵抗が小さく、厚みも薄い。この結果、着霜に伴う伝熱管2の熱交換性能の低下を防止することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
低温熱交換器の性能を向上させるための方法であって、着霜物質を含有する被冷却気体の流れの中に、伝熱面の上流側で前記着霜物質と比べて融点が低い凝縮性気体を混入し、この凝縮性気体を前記着霜物質とともに伝熱面上で凝縮または凝結させることを特徴とする低温熱交換器の性能向上方法。

【請求項2】
前記被冷却気体は空気であり、前記着霜物質は水蒸気であり、前記凝縮性気体は、分子量90以上120以下の炭化水素類、炭素数3以下の低級アルコール、または酢酸エチルのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の低温熱交換器の性能向上方法。

【請求項3】
前記凝縮性気体は、エチルアルコールであることを特徴とする請求項2に記載の低温熱交換器の性能向上方法。

【請求項4】
吸入側のダクト内に、分子量90以上120以下の炭化水素類、炭素数3以下の低級アルコール、または酢酸エチルのいずれかを混入するためのノズルを備えたことを特徴とするエアーブリージングエンジン用のプリクーラ。

【請求項5】
吸入側のダクト内にエチルアルコールを混入するためのノズルを備えたことを特徴とするエアーブリージングエンジン用のプリクーラ。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、低温熱交換器の性能を向上させるための方法に係り、特に、エアーブリージングエンジン用のプリクーラに対して好適な熱交換性能の向上方法に関する。

【10】
エアーブリージングエンジン(図示せず)に予冷された空気を送るプリクーラ1の内部には、伝熱管2が配置されている。伝熱管2の内部には、冷媒として液体水素12が供給される。被冷却気体である空気11は、ダクト3を介してプリクーラ1に送られ、プリクーラ1内で冷却された空気は、エアーブリージングエンジンの圧縮機に送られる。

【11】
ダクト3の途中には、ノズル4が設けられている。このノズル4を介して、ダクト3内の空気中にエタノール13が混入される。混入されたエタノール13は、空気11の主流れに乗ってプリクーラ1の内部に運ばれ、水蒸気とともに伝熱管2の表面上(または伝熱面上に既に成長した霜層内)に凝縮(または昇華凝結)する。この様にして形成された霜層は、水蒸気が単独で凝結した場合に形成される霜層と比べて空隙が少なく、密度が高い。空隙の減少に伴い、霜層の熱抵抗が小さくなる。更に、空隙の減少に伴い霜層の厚みが減少することによって、空気の主流れに対する流動抵抗も減少する。これらの結果、着霜に伴う伝熱管2の熱交換性能の低下を防止することができる。

【12】
なお、エタノールの混入量は、空気11の主流れ中のエタノールの濃度が、伝熱管2の伝熱面温度における飽和濃度以上となる様に設定される。

【13】

【実施例】図2~図4に、本発明の方法を、一列管群要素熱交換器モデル(伝熱管外径8mm、ピッチ12mm)に適用した場合の、空気の主流れの圧力損失及び熱流束の時間履歴を示す。なお、これらの実験において、主流の流速を3m/s、主流れの温度を293℃、主流れ中の水蒸気濃度を4×10-3kg/kgとした。また、主流れに対するエタノールの混入量は、空気1kg当たり4gとした。なお、図中に、比較のため、エタノールを混入しない場合の結果も併せて示した。

【14】
図2は、冷媒として液体窒素を用いて伝熱面温度を90Kとした場合の、主流れの圧力損出係数の時間変化の様子を示したものである。図3は、この場合の、熱流速の時間変化の様子を示したものである。主流れにエタノールを混入することによって、エタノールを混入しない従来の場合と比較して、着霜による主流れの圧力損失の増加及び熱流束の低下が大幅に抑制されている。

【15】
図4は、冷媒として低温窒素ガスを用いて伝熱面温度を200Kとした場合の、主流れの圧力損出係数の時間変化の様子を示したものである。図5は、この場合の、熱流速の時間変化の様子を示したものである。この場合にも、主流れにエタノールを混入することによって、従来の場合と比較して、着霜による主流れの圧力損失の増加及び熱流束の低下が大幅に抑制されている。

【16】
以上の様に、本発明の方法によれば、エタノールの融点(159K)と比べて伝熱面温度が低い場合(90K;図2、図3)、及び高い場合(200K;図4、図5)のいずれの場合においても、熱交換器の性能が大幅に向上することが確認された。

【17】

【発明の効果】本発明の低温熱交換器の性能向上方法によれば、伝熱面上に形成される霜層の密度が増大することによって、熱交換器の熱交換性能が増大するとともに、被冷却気体の主流れの圧力損失が減少する。

【18】
本発明の方法は、被冷却気体の流れの中に微量の凝縮性気体を混入するのみなので、比較的簡素な構成によって実施することができる。

【2】

【従来の技術】空気液化サイクルエンジンや予冷ターボ系エンジンの実用化に際して、高性能なプリクーラ(空気予冷却器)の開発がキーテクノロジーとなっている。この様なプリクーラの開発において、最も懸念されているのが熱交換器の伝熱面における着霜の問題である。

【3】
伝熱面に着霜が起きると、霜層の熱抵抗によって熱伝達性能が低下し、また、空気(主流れ)の流路が狭まることによって、その圧力損失が増大する。特に、極低温状態の伝熱面に形成される霜層は、密度が低く、熱伝導率が小さいので、熱交換器の性能に大きな影響を及ぼす。

【4】
特に、スペースプレーンに使用されるエアーブリージングエンジン用のプリクーラにおいて着霜が問題となるのは、加速フェーズにある低高度飛行時であり、この間(数十~数百秒程度)に、エンジンの運転を中断することはできない。即ち、この様な場合には、冷凍・空調用の熱交換器などにおいて採用されている様な間欠的な除霜運転を行うことはできない。

【5】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の様な従来の低温熱交換器の問題点に鑑み成されたもので、本発明の目的は、エアーブリージングエンジン用のプリクーラなどの低温の伝熱面を有する熱交換器において、着霜による熱交換性能の低下を防止するための方法を提供することにある。

【6】

【課題を解決するための手段】本発明は、低温熱交換器の性能を向上させるための方法であって、着霜物質を含有する被冷却気体の流れの中に、伝熱面の上流側で前記着霜物質と比べて融点が低い凝縮性気体を混入し、この凝縮性気体を前記着霜物質とともに伝熱面上で凝縮または凝結させることを特徴とする。

【7】
本発明の方法によれば、伝熱面の上流側で被冷却気体の流れの中に前記凝縮性気体を混入することによって、前記凝縮性気体を前記着霜物質とともに伝熱面上で凝縮または昇華凝結させる。この様にして形成された霜層には、前記凝縮性気体が凝縮した液体または昇華凝結した固体が含まれているので、前記着霜物質が単独で凝結した場合に形成される霜層と比べて空隙が少なく、密度が高い。空隙の減少に伴い、霜層の熱抵抗が小さくなる。更に、空隙の減少に伴い霜層の厚みが減ることによって、被冷却気体の流れに対する流動抵抗も減少する。これらの結果、着霜に伴う伝熱面の熱交換性能の低下を防止することができる。

【8】
なお、伝熱面上に前記凝縮性気体を、着霜物質と同程度の量、凝縮または昇華凝結させるためには、主流温度と伝熱面温度との間での飽和蒸気量の差が、主流に含まれる着霜物質の量と比べて大きいことが必要である。一方、必要な混入量が増大するのは実用上不利であるので、飽和蒸気量自体は小さい方が望ましい。低温熱交換器がエアーブリージングエンジン用のプリクーラの場合、被冷却気体は空気であり、着霜物質は水蒸気である。この場合、上記の条件を満たす凝縮性気体として、例えば、分子量90から120程度の炭化水素類(トルエン、n-ヘプタン、エチルベンゼン、n-オクタン、イソオクタン)、炭素数3以下の低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール)、または酢酸エチルなどを挙げることができる。

【9】

【発明の実施の形態】図1に、本発明に基づく低温熱交換器の性能向上方法をエアーブリージングエンジン用のプリクーラに適用する場合の模式図を示す。図中、1はプリクーラ、2は伝熱管(伝熱面)、3はダクト(吸入側のダクト)、4はノズル、11は空気(被冷却気体)、12は液体水素(冷媒)、13はエタノール(凝縮性気体)を表す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4