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明細書 :飼料原料用抗酸化組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5429750号 (P5429750)
登録日 平成25年12月13日(2013.12.13)
発行日 平成26年2月26日(2014.2.26)
発明の名称または考案の名称 飼料原料用抗酸化組成物
国際特許分類 A23K   1/16        (2006.01)
A23K   1/10        (2006.01)
FI A23K 1/16 304C
A23K 1/10 101
請求項の数または発明の数 11
全頁数 11
出願番号 特願2009-553462 (P2009-553462)
出願日 平成21年2月13日(2009.2.13)
国際出願番号 PCT/JP2009/052411
国際公開番号 WO2009/102019
国際公開日 平成21年8月20日(2009.8.20)
優先権出願番号 2008031561
優先日 平成20年2月13日(2008.2.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年2月13日(2012.2.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】508045790
【氏名又は名称】ケミン・ジャパン株式会社
発明者または考案者 【氏名】後 藤 直 宏
【氏名】和 田 俊
【氏名】角 田 淳
【氏名】タン ハイメン
個別代理人の代理人 【識別番号】100117787、【弁理士】、【氏名又は名称】勝沼 宏仁
【識別番号】100091487、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 行孝
【識別番号】100107342、【弁理士】、【氏名又は名称】横田 修孝
【識別番号】100111730、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 武泰
【識別番号】100152423、【弁理士】、【氏名又は名称】小島 一真
審査官 【審査官】松本 隆彦
参考文献・文献 国際公開第2007/132688(WO,A1)
特開2006-333791(JP,A)
特開昭55-069688(JP,A)
特開平08-308509(JP,A)
特開2001-323295(JP,A)
調査した分野 A23K1/00-3/04
C11B5/00
C09K15/00-15/34
CiNii
JSTPlus/JST7580(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
植物油の製造過程で生じるスカム、油溶性電子供与体成分、および粘度低下剤としての植物由来の液状油を含んでなり、前記油溶性電子供与体成分が、レシチン、ポリフェノール類、緑茶抽出物、ケファリン、スペルミン、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、飼料原料用抗酸化組成物。
【請求項2】
前記スカムが、大豆油、菜種油、米油、えごま油、しそ油、ごま油、椰子油、綿実油、ひまわり油、コーン油、べに花油およびパーム油からなる群から選ばれた少なくとも1種の植物油の製造過程で副生される脱臭スカムからなる、請求項1に記載の飼料原料用抗酸化組成物。
【請求項3】
前記油溶性電子供与体成分が、レシチンからなる、請求項1に記載の飼料原料用抗酸化組成物。
【請求項4】
前記植物由来の液状油が、しょうゆ油、オリーブ油、大豆油、菜種油、えごま油、しそ油、綿実油、ひまわり油、コーン油、べに花油、サラダ油、およびMCTからなる群から選ばれた少なくとも1種からなる、請求項1に記載の飼料原料用抗酸化組成物。
【請求項5】
前記スカム、油溶性電子供与体成分、および植物由来の液状油の配合比が、
スカム:10~60重量部、
油溶性電子供与体成分:1~45重量部、および
植物由来の液状油:10~90重量部
の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の飼料原料用抗酸化組成物。
【請求項6】
組成物の粘度が0.1 dPa・s~1.0 dPa・sの範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の飼料原料用抗酸化組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の飼料原料用抗酸化組成物で、固体物質を除いた液状部分のみからなる飼料原料用抗酸化組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗酸化組成物を飼料原料に噴霧ないし散布することを特徴とする、飼料原料の酸化防止方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗酸化組成物を飼料原料に噴霧ないし散布することを特徴とする、抗酸化性にすぐれた飼料原料の製造方法。
【請求項10】
前記飼料原料が魚粉である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗酸化組成物を含有することを特徴とする、飼料原料としての魚粉。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料原料の酸化防止技術に関し、特に魚粉等の飼料原料の酸化を効果的かつ安全に防止するための抗酸化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鰯、アンチョビ、鯖、鰹、鮪などの有色魚を原料としたブラウンミール、あるいは鰈や鱈などの白身魚を原料としたホワイトミールなどの魚粉は、飼料として重要なリジン、メチオニン、ミスチンなどのアミノ酸やタンパク質を豊富に含むことから、家畜用、家禽用、養魚用あるいはペットフード用の飼料原料として従来から広く使用されている。
【0003】
このような飼料原料としての魚粉は、魚粉中に8%程度含有されている魚油が比較的酸化されやすいため、通常、特定の抗酸化剤を添加した状態で流通される。抗酸化剤が添加されていない魚粉は、流通過程や保存中に酸化劣化を起こすことはもちろんのこと、船舶などによる外洋の運搬中や比較的高温条件下での保存中などの一定の条件下においては酸化熱に起因する火災の危険性も生じる。
【0004】
従来、このような飼料原料の酸化を防止するために、エトキシキン(6-ethoxy-1,2-dihydro-2,2,4-trimethylquinoline)が抗酸化剤として使用されている。合成抗酸化剤としてのエトキシンは、それ自体抗酸化能にすぐれた薬剤であり、日本においては、飼料原料への添加剤としては、一定の添加基準量(150ppm以下)の添加が認められているが、食品原料への添加物としては認められていない。このことからも、ペット用飼料原料の安全性や家畜や養魚等の食肉を介する人体への安全性の観点から、従来の合成抗酸化剤は必ずしも充分満足のいくものではなく、エトキシンに代替され得るより安全性の高い飼料原料用抗酸化剤の開発が求められている。
【0005】
従来、様々な天然物由来の抗酸化剤が提案されている。たとえば、魚油にエトキシン、ビタミンE、レシチンを添加したもの(例えば、特開2001-323295号公報を参照)、リグナン系抗酸化剤(例えば、特開2001-139579号公報および特開2005-23125号公報を参照)、オリーブの抽出物を用いるもの(例えば、特開2001-181632号公報を参照)、また、大豆スカム等から抗酸化作用を有するトコフェロールの精製方法についても知られている(例えば、特開昭60-149582号公報を参照)。
【0006】
さらにまた、食品の製造過程において副生される資源を有効利用する観点からも様々の酸化抑制成分の研究が報告されている(例えば、食品と開発、第28巻、No. 2、1993、Extraction and Application of Novel Type of Antioxidants, in Particular, Isolated from Sesame Seed, Bio Ind., Vol. 10, No. 3, Page 141-148, 1993、Stereochemical structures of antioxidative bisepoxylignans, sesaminol and its isomers, transformed from sesamolin, Agric Biol Chem., Vol. 51, No. 5, Page 1285-1289, 1987、日本水産学会大会講演要旨集、Vol. 1998, Page 117, 1998、三重大学農学部学術報告、No. 72, Page 105-111, 1986、および食品関連未利用資源の素材化に関する調査研究-脱臭スカムの有効利用の検討、福岡県報告、を参照)。
【0007】
しかしながら、従来提案されている抗酸化剤は、実用性の観点から飼料原料に対する抗酸化効果の長期にわたる持続性については必ずしも充分ではなく、また、製造コスト的にも満足のいくものではない。たとえば、天然物由来のトコフェロール(ビタミンE)自体はそれ自体抗酸化能を有することが知られており、その精製方法についても知られているが(例えば、特開昭60-149582号公報を参照)、精製されたトコフェロールは高価であり、飼料原料にこれを適用することは現実的ではない。
【0008】
さらにまた、従来提案されている抗酸化剤は、その性状から、これをそのまま飼料原料に噴霧や散布等で添加することが困難な場合があり、使用段階においても容易に適用することができないという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、天然物由来の比較的安価な原料から製造することができ、飼料原料の酸化防止効果にすぐれた安全かつ安価な抗酸化組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る飼料原料用抗酸化組成物は、植物油の製造過程で生じるスカム、油溶性電子供与体成分、および粘度低下剤としての植物由来の液状油を含んでなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、上記スカムが、大豆油、菜種油、米油、えごま油、しそ油、ごま油、椰子油、綿実油、ひまわり油、コーン油、べに花油およびパーム油からなる群から選ばれた少なくとも1種の植物油の製造過程で副生される脱臭スカムからなり、上記油溶性電子供与体成分が、レシチンからなり、さらに、上記植物由来の液状油が、しょうゆ油、大豆油、菜種油、えごま油、しそ油、綿実油、ひまわり油、コーン油、べに花油、サラダ油、およびMCTからなる群から選ばれた少なくとも1種からなる。
【0012】
本発明の別の好ましい態様においては、上記スカム、油溶性電子供与体成分、および植物由来の液状油の配合比が、
スカム:10~60重量部、
油溶性電子供与体成分:1~45重量部、および
植物由来の液状油:10~90重量部
の範囲である。
【0013】
さらに、本発明の別の好ましい態様においては、本発明に係る組成物の粘度が0.1 dPa・s~1.0 dPa・sの範囲である。
【0014】
本発明は、上記の抗酸化組成物を飼料原料に噴霧ないし散布することからなる飼料原料の酸化防止方法を包含する。
【0015】
さらに、本発明は、上記の抗酸化組成物を飼料原料に噴霧ないし散布することからなる抗酸化性にすぐれた飼料原料の製造方法ならびに上記抗酸化組成物を含有する飼料原料としての魚粉を包含する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、食用植物油の製造過程において生じるスカムを有効利用し、これと油溶性電子供与体成分ならびに植物由来液状油と複合的に組み合わせることによって抗酸化組成物が構成されてなるので、従来の合成エトキシンに代替され得る安全で抗酸化能の持続性においてもすぐれた飼料原料用抗酸化組成物を低コストで提供することができ、食品産業上すこぶる有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例、比較例の実験結果を示すグラフ。
【図2】本発明の実施例、比較例の実験結果を示すグラフ。
【図3】本発明の実施例、比較例の実験結果を示すグラフ。
【図4】本発明の実施例、比較例の実験結果を示すグラフ。
【図5】本発明の実施例、比較例の実験結果を示すグラフ。
【図6】本発明の実施例、比較例の実験結果を示すグラフ。
【図7】本発明の実施例、比較例の実験結果を示すグラフ。
【図8】本発明の実施例、比較例の実験結果を示すグラフ。
【図9】本発明の実施例、比較例の実験結果を示すグラフ。

【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上述したように、本発明による飼料原料用抗酸化組成物は、植物油の製造過程で生じるスカム、油溶性電子供与体成分、および粘度低下剤としての植物由来の液状油を含んでなることを特徴とするものである。以下、本発明の構成成分について説明する。
【0019】
本発明においては、抗酸化能を有する成分として、植物油の製造過程で生じるスカムを使用する。このようなスカムは、食用植物油の製造プロセスにおいて副生される精製残さであり、たとえば、大豆油、菜種油、米油、えごま油、しそ油、ごま油、椰子油、綿実油、ひまわり油、コーン油、べに花油およびパーム油のような食用植物油の製造過程において生じる脱臭スカムを意味する。
【0020】
たとえば、大豆油の製造プロセスにおいては、通常、大豆原油を脱ガム工程、乾燥工程、脱色工程、脱ロウ工程、ならびに脱臭工程を経て精製油が製造されるが、このうち脱臭工程の際に生じるスカム(脱臭スカム)が本発明におけるスカム成分として好適に使用され得る。このようにして副生される脱臭スカムはヘドロ状の物質からなり、スカム中には抗酸化能を有するトコフェロールがおよそ1~13重量部含有されているが、本発明においては、副生物として得られた脱臭スカムをそのまま原料として用い、スカム中のトコフェロールを精製分離する必要がない点でも製造工程が簡便であり、さらに製造コスト的にもきわめて有利である。
【0021】
なお、大豆スカムは、従来、Ca源を附加して脂肪酸石鹸の形態で飼料に混合して、整腸剤や栄養剤として使用されてきたことからも安全性が高いことが知られている。
【0022】
本発明においては、上記のスカムに油溶性の電子供与体成分と植物由来液状油とを複合的に配合する。
【0023】
本発明における油溶性電子供与体成分は、スカムと併用的に配合することによって、スカム中に含有されているトコフェロールが本来有する抗酸化作用をより相乗的に高めるとともにその作用の持続性を向上させる成分となる。具体的には、レシチン、アスコルビン酸、ポリフェノール類、緑茶抽出物、アスコルビン酸脂肪酸エステル、ケファリン、スペルミン、あるいはこれらから適宜選択された混合物が好ましく用いられ得る。本発明においては、上記のうちでも、大豆レシチン、卵黄レシチンなどに代表されるレシチンが特に好ましく用いられる。これら、油溶性電子供与体成分は、活性酸素によってラジカル化したトコフェロール成分に対する還元反応に寄与し、これにより上記の抗酸化能の増大と持続性の向上が発現するものと推測される。
【0024】
さらに、本発明においては、上記成分に加えて植物由来の液状油を必須成分として添加する。上述したスカムとレシチン等の油溶性電子供与体成分との混合物は、粘度が比較的高いため、これを魚粉に噴霧する使用態様で用いることは極めて困難である。そこで、本発明においては、粘度低下剤として、天然物由来の液状油成分を添加する。
【0025】
このような粘度低下剤として、上記2成分との組み合わせにおいて好ましい成分としては、しょうゆ油、オリーブ油、大豆油、菜種油、えごま油、しそ油、綿実油、ひまわり油、コーン油、べに花油、および中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)からなる群から選ばれた少なくとも1種からなる植物油が用いられ得るが、特に、しょうゆ油が最も好ましく用いられ得る。
【0026】
しょうゆ油は、主として丸大豆しょうゆの醸造過程において産出される副産物であり、より詳しくは、丸大豆(脱脂しない大豆)および小麦を原料としてこれに麹菌を作用させてしょうゆを製造する過程において、圧搾工程において生成する油脂成分である。このようなしょうゆ製造工程における副産物であるしょうゆ油は、従来廃棄されるか燃焼されていたが、本発明においては、このような副産物を有効利用する上でも産業上有益である。
【0027】
しょうゆ油の添加によって、上記の脱臭スカムと油溶性電子供与体成分との混合物の粘性が効果的に低下する理由は必ずしも明かではないが、しょうゆ油中には、その生成過程において大豆油より加水分解により生じる遊離脂肪酸が主成分として含まれることより、通常の植物油より粘度が低くなっていることが原因ではないかと考えられる。
【0028】
本発明に係る飼料原料用抗酸化組成物の粘度は、噴霧形態で使用する際の噴霧装置の性能によって適宜選択され得るが、通常の場合、0.1 dPa・s~1.0 dPa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1 dPa・s~0.8 dPa・sの範囲である。
【0029】
また、本発明においては、上述した抗酸化能の発現ならびにその持続性の向上や噴霧に適した粘度への調製の観点から、前記スカム、油溶性電子供与体成分、および植物由来の液状油の配合比は、
スカム:10~60重量部、好ましくは20~50重量部
油溶性電子供与体成分:1~45重量部、好ましくは1~30重量部および
植物由来の液状油:10~90重量部、好ましくは20~60重量部
の範囲であることが望ましい。
【0030】
スカム中にはおよそ1~13重量部のトコフェロールが含有されており、魚粉の酸化を有効に抑えるためには、トコフェロールを魚粉に対し130ppm以上添加することが望まれる。よってスカムの配合量はスカムに含有されるトコフェロールの量に大きく影響を受けるが、スカムには遊離型の飽和脂肪酸も多く含まれるため、抗酸化組成物に60重量部を超えてスカムを添加することは、多くの液層部が遊離型の飽和脂肪酸に吸収され、抗酸化組成物製造の歩留まり低下、およびハンドリング低下の観点より好ましくない。
【0031】
また、油溶性電子供与体成分の配合量は抗酸化組成物の抗酸化能を持続させる観点上多く添加することが望ましいが、45重量部を超えて添加することは、抗酸化組成物の急激な粘度上昇を招き、抗酸化組成物の噴霧もしくは散布量を低下させるため望ましくない。
【0032】
さらに、植物由来の液状油の配合量が、10重量部未満の場合は、他の配合物を均一に分散できなくなる一方で、90重量部を超えて添加することは、十分な量のスカムを添加できなくなる点で望ましくない。
【0033】
本発明においては、その最も好ましい態様の一例として、大豆スカム:レシチン:しょうゆ油=2:1:1の配合比で混合された混合物の上澄み液を噴霧用の抗酸化組成物として用いることができる。
【0034】
本発明は、上述した抗酸化組成物を飼料原料に噴霧ないし散布することを含む飼料原料の酸化防止方法を包含する。
【0035】
さらに、本発明は、上記抗酸化組成物を飼料原料に噴霧ないし散布することを含む抗酸化性にすぐれた飼料原料の製造方法を包含する。
【0036】
本発明に係る抗酸化組成物を適用する飼料原料としては、特に限定されるものではなく、従来飼料原料として用いられ酸化防止の必要がある材料全般が使用され得るが、典型的には、飼料原料用魚粉に好適に使用することができる。したがって、本発明は、上記の本発明に係る抗酸化組成物を含有する飼料原料としての魚粉を包含する。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例、比較例について、下記実験例に基づいて説明する。
【0038】
実験1
内容積130mLのオートクレーブ中に、表1に示した各種物質と均一に混合した魚粉(カツオ肉より製造)40gをビーカーに入れて設置し、密封後、酸素ボンベと接続し、内圧が345kPaになるように酸素を封入した。このオートクレーブを60℃の恒温器中に72時間放置し、72時間後の圧力を読み取り、初期値との差を魚粉40gへの酸素吸収量とした。結果を図1に示す。
【表1】
JP0005429750B2_000002t.gif

【0039】
結果、しょうゆ油、レシチン、大豆スカム(トコフェロール含有量(w/w):12.23%)の3成分を混合することにより、魚粉に対し強い抗酸化能を示すことが判明した。
【0040】
実験2
表2に示した各種成分より製造した抗酸化製剤の液層(添加量は1,000ppm~6,000ppm)と魚粉(カツオ肉より製造)40gを均一に混合し、ビーカーに入れたのち、内容積130mLのオートクレーブ中に設置した。密封後、酸素ボンベと接続し、内圧が345kPaになるように酸素を封入した。このオートクレーブを98℃の恒温器中に36時間放置し、36時間後の圧力を読み取り、初期値との差を魚粉40gへの酸素吸収量とした。結果を図2に示す。
【表2】
JP0005429750B2_000003t.gif

【0041】
結果、表2に示した抗酸化製剤を2,000ppm(トコフェロール添加量で260ppm)添加することで、エトキシキンと同等の魚粉に対する抗酸化力が得られることが判明した。
【0042】
実験3
内容積130mLのオートクレーブ中に、表3に示した各種物質の液層を撒布した魚粉(カツオ肉より製造)40gをビーカーに入れて設置し、密封後、酸素ボンベと接続し、内圧が345kPaになるように酸素を封入した。このオートクレーブを60℃の恒温器中に72時間放置し、72時間後の圧力を読み取り、初期値との差を魚粉40gへの酸素吸収量とした。結果を図3に示す。
【表3】
JP0005429750B2_000004t.gif

【0043】
結果、どのような起源のスカムを魚粉に添加しても強い抗酸化能を示すことが判明した。
【0044】
実験4
抗酸化製剤(しょうゆ油+レシチン+大豆スカム(混合比1:1:2)の液層)を魚粉に対し、2,000ppm、4,000ppm、6,000ppm、8,000ppm、10,000ppm、もしくはエトキシキンを魚粉に対し150ppm添加し、この魚粉を60℃の恒温器の中に、5週間保存した。途中、保存2、3、4、5週間目でサンプリングを行った。サンプリングした魚粉よりBligh&Dyer法により魚油を抽出し、その魚油の過酸化物価(図4)および残存トコフェロール量(図5)を測定した。なおこれらの測定は、日本油化学会制定・基準油脂分析試験法に準じた。
【0045】
結果、全ての魚粉で酸化が抑制され、保存5週間目でも魚粉中に添加されたトコフェロールが残っていた。このことより、実際の魚粉の輸送においても開発製剤は有効に魚粉の酸化を抑制できることが判明した。(魚粉を南米から北半球へ輸送する際に要する時間は約1ヶ月、さらに60℃は赤道下を通過する際のコンテナ内の最高到達温度である。)
実験5
成分Aとして、しょうゆ油:レシチン=1:1混合物(重量比混合)したものを、成分Bとして、市販サラダ油:レシチン=1:1混合物(重量比混合)したものを用意し、これらを表4に示すような混合比で混ぜ合わせた。その後、B型回転粘度計により各混合物の粘度を測定した。続けて、吸い上げ式のスプレーガンに混合物を入れ、0.4MPasの空気圧で30秒間噴霧したときの噴霧量を測定した。結果を表4に示す。また、粘度と噴霧量の関係を図6に示す。
【0046】
結果、粘度が増加するに従い噴霧量が低下することが判明した。
【表4】
JP0005429750B2_000005t.gif

【0047】
実験6
市販サラダ油、しょうゆ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)に対し、レシチンを添加していった際の粘度変化を、B型回転粘度計を用いて測定した(図7)。
【0048】
結果、レシチンの含有比率が45%を超えると、しょうゆ油およびMCTで急激な粘度上昇が起こること、また、しょうゆ油およびMCTにレシチンを混合した場合は、サラダ油に混合した場合と比較して粘度上昇が抑制されることが判明した。
【0049】
実験7
魚粉製造ラインを用い、以下の(1)~(3)の3種類の魚粉を作成した。(1)開発抗酸化製剤(しょうゆ油+レシチン+大豆スカム(混合比:1:1:2))を魚粉に対し3,000ppm(トコフェロール散布量として195ppm)散布した、開発抗酸化製剤含有魚粉。(2)エトキシキンを魚粉に対し150ppm散布した、エトキシキン含有魚粉。(3)コントロール魚粉(何も添加せず)。各魚粉を魚粉輸送用の麻袋500kgに詰め、保存倉庫に6週間保存した。保存時の平均温度は31℃であった。保存後、1、2、4、および6週間目に、保存中の魚粉(500kg麻袋)より50gの魚粉を3箇所からサンプリングした。その後、サンプリングした魚粉より油脂を抽出し、各油脂の過酸化物価(meq/kg)を測定した。さらに、麻袋中にはデータロガーを入れ、製造直後から6週間の魚粉の温度変化も合わせて測定した。
【0050】
上記測定の結果について、3種類の魚粉の酸化度(サンプリングした3箇所の値の平均値)の変化を図8に、保存中のコントロール魚粉の温度変化を図9に示す。図9より、魚粉は製造直後に55℃まで達しており、その後1~2週間かけて室温付近まで温度が低下することが判明した。したがって、魚粉の強い酸化劣化は製造直後にまず起こるものと考えられる。さらに、保存試験結果(図8)より、製造後1週間で抗酸化剤を添加していない魚粉が強く酸化されることが判明した((3)コントロールの魚粉)。対して、(1)開発抗酸化製剤含有魚粉、および(2)エトキシキン含有魚粉においては、この初期の酸化が抑制されており、(2)および(3)ともに魚粉の酸化に対して有効な抗酸化剤であることが判明した。なお、(3)の魚粉において、2週目以降に過酸化物価が低下しているが、これは測定対象の物質が分解し、測定ができなくなったためだと推察され、(3)の魚粉の酸化が抑制されたものではないと考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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