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明細書 :健康機能成分を吸着・濃縮した乾燥脱脂穀類糠、該糠から調製した健康機能成分の濃縮物、及びそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5463526号 (P5463526)
公開番号 特開2009-225702 (P2009-225702A)
登録日 平成26年1月31日(2014.1.31)
発行日 平成26年4月9日(2014.4.9)
公開日 平成21年10月8日(2009.10.8)
発明の名称または考案の名称 健康機能成分を吸着・濃縮した乾燥脱脂穀類糠、該糠から調製した健康機能成分の濃縮物、及びそれらの製造方法
国際特許分類 A23L   1/30        (2006.01)
A23L   1/302       (2006.01)
A23L   2/52        (2006.01)
FI A23L 1/30 B
A23L 1/302
A23L 2/00 F
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2008-073390 (P2008-073390)
出願日 平成20年3月21日(2008.3.21)
審査請求日 平成23年3月18日(2011.3.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
発明者または考案者 【氏名】潮 秀樹
【氏名】長阪 玲子
【氏名】大原 和幸
【氏名】寺島 亜実
【氏名】福森 武
【氏名】金本 繁晴
【氏名】若林 敬士
【氏名】前原 裕之
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
審査官 【審査官】小金井 悟
参考文献・文献 国際公開第03/004044(WO,A1)
特開2005-176799(JP,A)
特開2001-017092(JP,A)
国際公開第2007/003425(WO,A2)
特開2004-329019(JP,A)
特開平09-182562(JP,A)
特開平07-075505(JP,A)
特開平09-107888(JP,A)
国際公開第91/017985(WO,A1)
Pap. Am. Soc. Agric. Eng.,2004年,Paper number 046140
Food Chem.,2008年 1月15日,Vol.106, No.2,pp.752-759
調査した分野 A23L 1/27- 1/308
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
穀類糠をn-ヘキサン又はクロロホルムからなる低極性有機溶媒及びアセトン、メタノール又はエタノールからなる高極性有機溶媒で洗浄し、極性の高い化学物質を吸着する吸着担体として改質した脱脂穀類糠を、乾燥処理することによって調製した乾燥脱脂穀類糠を吸着担体とし、γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分を含有する原料から、有機溶媒によって抽出された抽出物を、該乾燥脱脂穀類糠からなる吸着担体によって、中性乃至酸性条件下で非極性有機溶媒を用いて吸着処理することを特徴とするγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法。
【請求項2】
γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分を含有する原料から、有機溶媒によって抽出された抽出物が、米糠或いはコンブから抽出された抽出物であることを特徴とする請求項1に記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法。
【請求項3】
乾燥脱脂穀類糠が、乾燥脱脂米糠又は乾燥脱脂小麦フスマであることを特徴とする請求項1又は2に記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法。
【請求項4】
乾燥脱脂穀類糠が、脱脂穀類糠を50~100℃で、12~24時間乾燥処理したものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法。
【請求項5】
γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分を含有する原料から、有機溶媒によって抽出された抽出物を、乾燥脱脂穀類糠からなる吸着担体によって、非極性有機溶媒を用いて行う吸着処理を、n-ヘキサンを用いて行なうことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法を用いて、該乾燥脱脂穀類糠を製造し、該乾燥脱脂穀類糠から、該極性のある健康機能成分を極性の溶出・分離溶媒を用いて中性乃至アルカリ条件下で溶出・分離することを特徴とするγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分の濃縮物の製造方法。
【請求項7】
極性の溶出・分離溶媒として、n-ヘキサン・エタノール混合溶媒を用いることを特徴とする請求項6に記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分の濃縮物の製造方法。
【請求項8】
γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分の濃縮物が、健康機能成分含有飲食品用、医薬品用、医薬部外品用、化粧品用、動物飼料用、又は水産飼料用の素材であることを特徴とする請求項6又は7に記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分の濃縮物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、γオリザノール、トコフェロール、ポリフェノール類等の極性のある健康機能成分を吸着・濃縮した乾燥脱脂穀類糠、該糠から調製した該健康機能成分の濃縮物;該健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠又は健康機能成分の濃縮物からなる極性のある健康機能成分含有飲食品用、医薬用、医薬部外品用、化粧品用、動物飼料用、又は水産飼料用素材;及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、米糠等を原料として、米油等の植物油が製造されている。近年の研究により、この米油等植物油の原料となる米糠等には、γオリザノール、トコフェロール、ポリフェノール等の有用な健康機能成分が含まれていることが確認されている。例えば、γオリザノールについては、生長促進作用、性腺刺激作用、ビタミンE様作用、抗ストレス作用、脱コレステロール作用、抗高脂血症等の薬理作用や、抗酸化作用、紫外線吸収作用、チロシナーゼ活性抑制作用、皮膚温上昇作用等の生理活性作用が知られている。また、トコフェロールについては、脂質代謝改善作用、膜安定化作用、内分泌賦活作用、性機能向上作用、免疫増強作用、創傷修復作用、放射線障害防御作用、抗老化作用等が、カテキン類等のポリフェノールについては、抗菌活性、抗酸化活性、抗う食活性、抗ウイルス活性、抗アレルギー活性、α-アミラーゼ阻害活性、血圧上昇抑制作用、血中コレステロール低下作用等の生理活性作用が知られている。
【0003】
γオリザノール等の生理活性物質は、米糠等に多く含まれるものであるが、従来行なわれていた米油等の製造方法においては、これらの生理活性物質を、該食油中に残存させて、精製することが難しく、食油の利用に際してこれらの生理活性物質を有効に利用することができなかった。すなわち、従来、米油等の精製法としては、アルカリ精製法と蒸留脱酸法とが知られているが、アルカリ精製法においては、採油;脱ガム;脱ロウ;アルカリ脱酸;脱色;脱臭の工程において、γオリザノールが、油脂相から油滓に移行してしまい、アルカリ脱酸油には、極微量のγオリザノールしか残存しなかった。一方、蒸留脱酸法においては、アルカリ精製法におけるアルカリ脱酸に代えて、蒸留によって脂肪酸を除去しようとするものであり、高温真空蒸留によって、遊離脂肪酸を留去し、かつ、γオリザノールを油脂相に残存せしめる。しかし、この方法では、その後の脱臭工程においてγオリザノールの消失を防ぐためには、通常よりも低温での脱臭工程を経なければならず、このような脱臭処理では、良好な風味の油脂を得るのが難しく、γオリザノールを含有し、しかも、良好な風味の油脂を製造することは難かしかった。
【0004】
そこで、米糠等に含まれるγオリザノール等の健康機能物質を有効に利用するために、従来より、該成分を含有する食用油等の各種の調製方法が提案されている。例えば、特開平6-340889号公報には、米糠原油を精製するに際し、真空下で水蒸気蒸留により、含有される脂肪酸除去し、オリザノール類を濃縮させた米油を製造する方法が開示されている。また、特開2000-119681号公報には、米糠から油を抽出する際に、米糠を予めアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ等の酵素を用いて処理し、炭化水素系有機溶剤で抽出することにより、オリザノールやステロールを1.8重量%以上含有する生理活性米糠油を製造することについて、特開2002-238455号公報には、米糠原料から原油を抽出し、該原油の脱ガム、脱ロウ、脱酸工程を経て、原油を精製する米油の製造方法において、原油を210~250℃の蒸留温度で真空状態で蒸留し、更に、アルカリ処理して脱酸し、或いは原油の脱ガム、脱ロウ、脱臭工程を経て、原油を精製する米油の製造方法において、原油を減圧下、250℃以下で蒸留することにより脱臭し、γオリザノールやトコフェノール、ステロール等を含有する米油を製造する方法が開示されている。
【0005】
また、特開2002-293793号公報、特開2004-300034号公報には、米糠油ソープストックに水酸化ナトリウムのようなアルカリを加えて鹸化し、脱水した鹸化ソープストックを、酢酸エチル、アセトンのような有機溶媒で抽出してオリザノール富化フラクションを得、更には、カラムクロマトグラフィーにかけて、オリザノール富化画分を得る方法について、特開2007-124917号公報には、米糠から製造される米油を原料として、アルカリ抽出、或いは、リパーゼのような酵素で処理して、高濃度のオリザノールを含有する米油を製造する方法について開示されている。これらの従来の方法は、米糠等に含まれるγオリザノール等の健康機能物質を利用するために、該成分を含有する食用油として調製するものであるが、いずれも複雑な処理を必要とするため、実用的な食用油の製造方法としては適用性に欠け、しかも、かかる方法で調製される製品は、いずれも食用油の形であるため、これを食品や医薬、或いは化粧品や飼料等の各種の用途における機能性素材として用いる場合に、その利用対象が制限され、利用上制約があった。
【0006】
他方で、米糠のような穀類糠を、各種成分の吸着担体として用いることが知られている。例えば、特開平9-182562号公報には、コレステロールを含む動物性液化脂肪物質に、大豆、菜種、綿実、米糠のような油糧植物の種子又は油脂を抽出した油糧植物残滓を接触させることによって、コレステロールを吸着させ、このコレステロールを吸着させた油糧植物残滓を動物性液化脂肪物質から分離することによりコレステロールを除去する方法が開示されている。また、特開2004-329019号公報には、脱脂糠やパーライトのようなグリセリン吸着担体とグリセリンとを混合して、グリセリン吸着担体にグリセリンを吸着させ、グリセリン吸着飼料を調製する方法が開示されている。しかしながら、米糠のような穀類糠を、γオリザノール等の健康機能物質の吸着に用い、該成分の精製・濃縮に用いるようなことについては知られていなかった。
【0007】

【特許文献1】特開平6-340889号公報。
【特許文献2】特開平9-182562号公報。
【特許文献3】特開2000-119681号公報。
【特許文献4】特開2002-238455号公報。
【特許文献5】特開2002-293793号公報。
【特許文献6】特開2004-300034号公報。
【特許文献7】特開2004-329019号公報。
【特許文献8】特開2007-124917号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、γオリザノール、トコフェロール、ポリフェノール類等からなる極性のある健康機能成分を有効に利用するために、該成分を含有する原料から該健康機能成分を、実用的に適用できる簡便かつ効果的な手段で、精製、取得し、しかも、精製、取得した健康機能成分を含有する素材が、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、動物飼料又は水産飼料等の広い利用分野で、有効に利用できる素材を製造する方法、及び該方法によって製造された健康機能成分を含有する素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、米糠等に含まれるγオリザノール、トコフェロール、ポリフェノール類等からなる極性のある健康機能成分を有効に利用するために、該健康機能成分を精製、濃縮、分離する方法について鋭意検討する中で、乾燥脱脂米糠のような乾燥脱脂穀類糠が、γオリザノール、トコフェロール、ポリフェノール類等の比較的極性の高い健康機能成分を特異的に吸着し、該健康機能成分を穀類糠内に濃縮できる性質を持つことを見い出し、該乾燥脱脂穀類糠の性質を利用して、γオリザノール、トコフェロール、ポリフェノール類等の極性のある健康機能成分を含有する原料から、該健康機能成分を選択的にかつ効果的に吸着し、濃縮することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類等の極性のある健康機能成分を含有する原料から、有機溶媒によって抽出された抽出物を、乾燥脱脂穀類糠を吸着担体として吸着処理することにより、γオリザノール、トコフェロール、ポリフェノール等の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠を製造する方法からなる。本発明において原料として用いられる、有機溶媒によって抽出され、γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類等の極性のある健康機能成分を含有する抽出物としては、好ましくは、米糠或いはコンブから抽出された抽出物を挙げることができる。
【0011】
本発明において、γオリザノール、トコフェロール、ポリフェノール等の極性のある健康機能成分を吸着・濃縮する担体として用いられる乾燥脱脂穀類糠としては、好ましくは、乾燥脱脂米糠又は乾燥脱脂小麦糠(乾燥脱脂小麦フスマ)を挙げることができる。本発明における特に好ましい態様として、乾燥脱脂穀類糠は、穀類糠を低極性有機溶媒及び高極性有機溶媒で洗浄し、極性の高い化学物質を吸着する吸着担体であるように改質した脱脂穀類糠を乾燥したものを用いることができる。本発明において、かかる洗浄処理に用いる、低極性有機溶媒としては、n-ヘキサン又はクロロホルムからなる低極性有機溶媒を挙げることができ、高極性有機溶媒としては、アセトン、メタノール又はエタノールからなる高極性有機溶媒を挙げることができる。本発明において、極性の高い化学物質を吸着する吸着担体であるように改質した脱脂穀類糠を乾燥するには、脱脂穀類糠を50~100℃で、12~24時間乾燥する条件で行なうことができる。
【0012】
本発明において、乾燥脱脂穀類糠を吸着担体として行う、健康機能成分の吸着・濃縮処理は、非極性有機溶媒を用いて行なわれる。かかる場合の特に好ましい非極性有機溶媒としては、n-ヘキサンを挙げることができる。また、かかる乾燥脱脂穀類糠を吸着担体として用いる健康機能成分の吸着処理は、中性乃至酸性条件下で行なうことが好ましい。
【0013】
本発明においては、本発明の方法によって製造されたγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類等の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠から、極性の溶出・分離溶媒を用いて該健康機能成分を溶出・分離することにより、γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類等の極性のある健康機能成分を濃縮した濃縮物を製造することができる。かかる溶出・分離に用いる好ましい極性溶出・分離溶媒としては、n-ヘキサン・エタノール混合溶媒を挙げることができる。
【0014】
本発明において、健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠から、γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類等の極性のある健康機能成分を溶出・分離溶媒を用いて溶出・分離する処理は、アルカリ条件下で行なうことが好ましい。
【0015】
本発明の製造方法によって製造されたγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類等の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠、又は、該健康機能成分の濃縮物は、種々の用途に利用することができ、健康機能成分含有飲食品用、医薬品用、医薬部外品用、化粧品用、動物飼料用、又は水産飼料用の素材として、特に、制約なく用いることができる。
【0016】
すなわち具体的には本発明は、[1]穀類糠をn-ヘキサン又はクロロホルムからなる低極性有機溶媒及びアセトン、メタノール又はエタノールからなる高極性有機溶媒で洗浄し、極性の高い化学物質を吸着する吸着担体として改質した脱脂穀類糠を、乾燥処理することによって調製した乾燥脱脂穀類糠を吸着担体とし、γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分を含有する原料から、有機溶媒によって抽出された抽出物を、該乾燥脱脂穀類糠からなる吸着担体によって、中性乃至酸性条件下で非極性有機溶媒を用いて吸着処理することを特徴とするγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法や、[2]γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分を含有する原料から、有機溶媒によって抽出された抽出物が、米糠或いはコンブから抽出された抽出物であることを特徴とする上記[1]に記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法や、[3]乾燥脱脂穀類糠が、乾燥脱脂米糠又は乾燥脱脂小麦フスマであることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法からなる。

【0017】
また本発明は、[4]乾燥脱脂穀類糠が、脱脂穀類糠を50~100℃で、12~24時間乾燥処理したものであることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法や、[]γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分を含有する原料から、有機溶媒によって抽出された抽出物を、乾燥脱脂穀類糠からなる吸着担体によって、非極性有機溶媒を用いて行う吸着処理を、n-ヘキサンを用いて行なうことを特徴とする上記[1]~[4]のいずれかに記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法からなる。

【0018】
さらに本発明は、[]上記[1]~[5]のいずれかに記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠の製造方法を用いて、該乾燥脱脂穀類糠を製造し、該乾燥脱脂穀類糠から、該極性のある健康機能成分を極性の溶出・分離溶媒を用いて中性乃至アルカリ条件下で溶出・分離することを特徴とするγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分の濃縮物の製造方法や、[]極性の溶出・分離溶媒として、n-ヘキサン・エタノール混合溶媒を用いることを特徴とする上記[]に記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分の濃縮物の製造方法や、[]γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分の濃縮物が、健康機能成分含有飲食品用、医薬品用、医薬部外品用、化粧品用、動物飼料用、又は水産飼料用の素材であることを特徴とする上記[6]又は[7]に記載のγオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類から選択される1又は2以上の極性のある健康機能成分の濃縮物の製造方法からなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、γオリザノール、トコフェロール、ポリフェノール類等の極性のある健康機能成分を有効に利用するために、該成分を含有する原料から該健康機能成分を吸着・濃縮した素材、或いは、該健康機能成分を吸着・濃縮した素材から、該健康機能成分を溶出・分離した該健康機能成分の濃縮物を、実用的に適用できる簡便かつ安価に、更に、効果的な手段で、取得する方法を提供する。本発明で製造される健康機能成分を吸着・濃縮した素材や、該素材から溶出・分離した該健康機能成分の濃縮物は、乾燥脱脂穀類糠を担体としていることから、素材的に安全で、しかも、各種の用途に対して適応性の高い性質を有し、飲食品、医薬品、化粧品、医薬部外品、動物飼料又は水産飼料等の広い利用分野で、健康機能を付与した製品の製造に有効に利用できる素材を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類等の極性のある健康機能成分を含有する原料から、有機溶媒によって抽出された抽出物を、乾燥脱脂穀類糠を吸着担体として吸着処理することにより、γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類等の極性のある健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠を製造する方法からなる。
【0021】
γオリザノール、トコフェロール、及びポリフェノール類等の健康機能成分は、米糠や、コンブに豊富に含まれることから、本発明においては、該植物材料から有機溶媒によって抽出された抽出物を原料として用いる。植物材料から該健康機能成分を含有する抽出物を抽出するために使用される有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル等のエーテル類、n-ヘキサンのような低分子飽和炭化水素、及びそれらの混合溶媒を適宜用いることができるが、その後の乾燥脱脂穀類糠による吸着・濃縮処理等からすると、n-ヘキサンを用いることが特に好ましい。
【0022】
本発明において、健康機能成分の吸着・濃縮担体として用いられる脱脂穀類糠としては、脱脂された米糠、小麦糠(小麦フスマ)、玉蜀黍糠、大麦糠、ライ麦糠、燕麦糠、高粱糠、鳩麦糠等の脱脂穀類糠を挙げることができるが、好ましい脱脂穀類糠としては、脱脂米糠、脱脂小麦糠(小麦フスマ)を挙げることができる。
本発明において用いられる乾燥脱脂穀類糠は、穀類糠を低極性有機溶媒及び高極性有機溶媒で洗浄し、極性の高い化学物質を吸着する吸着担体であるように改質した脱脂穀類糠を乾燥したものであることが好ましい。該処理は、穀類糠をヘキサン又はクロロホルムからなる低極性有機溶媒及びアセトン、メタノール又はエタノールからなる高極性有機溶媒で洗浄処理することにより行われる。乾燥脱脂穀類糠の調製は、脱脂穀類糠を50~100℃で、12~24時間乾燥処理することにより調製される。
【0023】
本発明において、乾燥脱脂穀類糠を吸着担体として行う吸着処理は、健康機能成分を溶解した非極性有機溶媒を用いて行なわれる。該非極性有機溶媒としては、担体への非吸着性等の観点から、n-ヘキサンを用いて行なうことが特に好ましい。また、該乾燥脱脂穀類糠を吸着担体として健康機能成分を吸着する処理は、中性乃至酸性条件下で行なうことが好ましい。本発明において、乾燥脱脂穀類糠を用いて健康機能成分を吸着・濃縮するには、乾燥脱脂穀類糠を健康機能成分を溶解した溶媒に浸漬することにより行なうことができるが、好ましくは、乾燥脱脂穀類糠吸着担体を充填したカラムを用いて、健康機能成分を溶解した溶媒を通液することにより実施される。
【0024】
本発明において、健康機能成分を吸着・濃縮した乾燥脱脂穀類糠は、健康機能成分含有素材として各種の用途に用いることができるが、該健康機能成分を吸着・濃縮した乾燥脱脂穀類糠から、健康機能成分を溶出・分離溶媒を用いて溶出・分離することにより、健康機能成分の濃縮物を製造することができる。該健康機能成分の溶出・分離溶媒としては、極性の溶出・分離溶媒が用いられ、該溶出・分離溶媒としては、n-ヘキサン・エタノール混合溶媒が特に好ましい溶出・分離溶媒として用いられる。かかる健康機能成分の溶出・分離には、溶出・分離の効率を上げるために、該溶出・分離をアルカリ条件下で行なうことが好ましい。
【0025】
本発明における健康機能成分が吸着・濃縮された乾燥脱脂穀類糠或いは濃縮物は、健康機能成分含有素材として、健康機能を付与した飲食品或いは医薬用食品用、錠剤、塗り薬、ドリンク剤のような医薬用、医薬部外品用、乳液、クリーム、ローションのような化粧品用、家畜やペットのような動物飼料用、又は水産動物のための水産飼料用等の各種の用途に用いられる。
【0026】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
[乾燥脱脂米糠を用いた健康機能成分の吸着]
【0028】
(乾燥脱脂米糠の調製)
米糠を順次n-ヘキサン、n-ヘキサンエタノール混合液、エタノール、水にて十分に洗浄し、極性の低いトリグリセリドや極性の高いフェルラ酸までほぼ全ての脂溶性成分を除去した。得られた完全脱脂米糠を100℃で24時間乾燥し、乾燥米糠を得た。
【0029】
(健康機能成分含有抽出液の調製)
γオリザノールを含む市販米糠油を、ヘキサンにて抽出し、n-ヘキサン飽和溶液を作成した。
【0030】
(吸着処理と結果)
調製された乾燥米糠に対して体積換算で5倍量のγオリザノールn-ヘキサン飽和溶液を加え、30分間振とう攪拌した。これをn-ヘキサンで十分に洗浄し、過剰のγオリザノールを除去した。次いで、クロロホルムメタノールにて乾燥米糠に吸着したγオリザノールを完全に採取した。得られたγオリザノール抽出液をロータリーエバポレーター及び真空乾燥機にて完全に乾固し、その重量を測定した。その結果、乾燥米糠1g当たり1.67±0.18mgのγオリザノールが吸着していた(図1:γオリザノールを付加した脱脂米糠から再回収したγオリザノール)。乾重量1gあたりの脱脂米糠のγオリザノール含量が最大で80μg程度であることから、20倍もの強化が可能であることが明らかとなった。このように、脱脂米糠はγオリザノール強化担体としての利用が可能であることが確認された。
【0031】
植物性ステロール及びαトコフェロールについても同様の検討を行ったところ、米糠1g当たりそれぞれ0.81±0.11及び0.58±0.08mgの植物性ステロール及びαトコフェロールが吸着された。更に、油脂1g当たり14mgのγオリザノールを含む市販米糠油ヘキサン溶液に本担体を用いたところ、γオリザノールを米糠1g当たり2.30±0.27mg吸着し、結果的に油脂1g当たり480mgまで濃縮することができた。γオリザノール単独で吸着試験を行った際よりも吸着量が増加したのは、米糠油にトリグリセリドなどの他の成分が存在することでn-ヘキサンへのγオリザノール溶解量が増大したため、吸着量も増えたものと予想される。
【実施例2】
【0032】
[乾燥脱脂米糠を用いた健康機能成分の吸着と分離・濃縮]
米糠をn-ヘキサン、ジエチルエーテル、エタノールにて順次10回以上洗浄した後、図2(脱脂米糠充填カラム)のようにガラスカラム内に充填した。クロロホルムメタノールによって乾燥利尻昆布から抽出した全脂質を重層し、10カラム容のジエチルエーテルを流した。その後、ジエチルエーテル・エタノール混液(98:2)にて溶出される画分をTLCにて検出した。
【0033】
図3(ジエチルエーテル・エタノールにて溶出された画分の紫外蛍光像(左)及び硫酸検出像(右))に示すように、脱脂米糠に吸着されたγオリザノールがジエチルエーテル・エタノール混液にて溶出されることが明らかとなった。したがって、脱脂米糠は化学修飾を施すことなく、植物性ステロール、γオリザノールやクロロフィルなどの比較的極性の高い成分を特異的に吸着することが明らかとなった。これを利用してこれらの健康機能物質を脱脂米糠に濃縮することが可能である。
【0034】
分離・溶出溶媒について検討した。食品への適用を考えると、溶媒として麻酔作用などを有するジエチルエーテルを用いると残留性の問題が残る。一方、n-ヘキサンは残留性が低く、米糠油の抽出にも用いられる。また、エタノールは飲用としても使用されることから、これらの混合溶媒にて同様の効果が得られるか否かについて検討を加えた。図4(n-ヘキサン・エタノール混合溶媒によるγオリザノールの分離。図中白い星印がγオリザノール)に示すように、脱脂米糠カラムに吸着したγオリザノールは、n-ヘキサン・エタノール混合溶媒(100:1,v/v)によって溶出された。
【0035】
そこで、更に詳細な溶出パターンを明らかにした。図5(ヘキサン・エタノール混合溶媒によるγオリザノールの分離。図中白い星印がγオリザノール。)に示すように、γオリザノールは脱脂米糠カラムより、n-ヘキサン・エタノール(100:0.7)で溶出されることが明らかとなった。
【実施例3】
【0036】
[乾燥脱脂米糠に吸着した健康機能成分の溶出・分離条件の検討]
脱脂穀類糠によるγオリザノール吸着に及ぼすpHの影響について検討した。種々のpH に調整した100mM 3,3-dimethylglutaric acid(GTA)緩衝液を作製し,γオリザノール吸着済み米糠(1g)を緩衝液中(50ml)中に分散して1時間室温で攪拌した.吸引濾過にて米糠を回収し,クロロホルムメタノール混液にて全脂質を抽出した.得られた抽出液を,クロロホルムを展開溶媒としたSi60シリカゲルにて分離し,302nmにおける蛍光強度から定量し,吸着残増量を算出した。
【0037】
図6に示すようにγオリザノール吸着米糠はpHの上昇とともに吸着したγオリザノールを保持できなくなることが明らかとなった.これは,米糠中に含まれるリグニンのフェノール基がイオン化することによって,γオリザノールの吸着力が著しく低下することが主な原因であると考えられた.したがって,γオリザノール吸着米糠は,酸性である胃ではγオリザノールを吸着しており,中性から弱アルカリ性となる腸でγオリザノールを徐々に放出する徐放性を有することが明らかとなった。
【実施例4】
【0038】
[完全脱脂小麦フスマを用いた健康機能成分の吸着]
上記実施例1の乾燥脱脂米糠と同様の処理によって調製した完全脱脂小麦フスマ及び小麦フスマからデンプン並びにセルロースを糖化処理によって除いたバイオマス残渣について、γオリザノールの結合量を測定した。
【0039】
結果、前者では0.75±0.12mg/g 完全脱脂小麦フスマ、後者では4.21±0.65mg/g バイオマス残渣、の結合が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例における乾燥脱脂米糠を用いた健康機能成分の吸着試験において、脱脂米糠から再回収したγオリザノールについて示す図である。
【図2】本発明の実施例において用いられた脱脂米糠充填カラムの写真である。
【図3】本発明の実施例における乾燥脱脂米糠を用いた健康機能成分の吸着試験において、TLCによる各画の検出結果を示す写真である。
【図4】本発明の実施例における乾燥脱脂米糠を用いた健康機能成分の吸着・分離溶出試験において、n-ヘキサン・エタノール混合溶媒によるγオリザノールの分離結果を示す写真である。
【図5】本発明の実施例における乾燥脱脂米糠を用いた健康機能成分の吸着・分離溶出試験において、n-ヘキサン・エタノール混合溶媒(100:1,v/v)によるγオリザノールの分離結果を示す写真である。
【図6】本発明の実施例における乾燥脱脂米糠に吸着した健康機能成分の溶出・分離条件の試験において、pH条件による溶出・分離の状況を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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