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明細書 :炭酸ガス固定化材及び該炭酸ガス固定化材を用いた炭酸ガス固定化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5131017号 (P5131017)
公開番号 特開2009-268957 (P2009-268957A)
登録日 平成24年11月16日(2012.11.16)
発行日 平成25年1月30日(2013.1.30)
公開日 平成21年11月19日(2009.11.19)
発明の名称または考案の名称 炭酸ガス固定化材及び該炭酸ガス固定化材を用いた炭酸ガス固定化方法
国際特許分類 B01D  53/62        (2006.01)
B01J  20/24        (2006.01)
B01J  19/00        (2006.01)
FI B01D 53/34 135Z
B01J 20/24 ZABA
B01J 19/00 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 14
出願番号 特願2008-120366 (P2008-120366)
出願日 平成20年5月2日(2008.5.2)
審査請求日 平成23年4月28日(2011.4.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
発明者または考案者 【氏名】潮 秀樹
【氏名】長阪 玲子
【氏名】福森 武
【氏名】金本 繁晴
【氏名】前原 裕之
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
審査官 【審査官】松本 直子
参考文献・文献 国際公開第2006/080089(WO,A1)
特開2001-038142(JP,A)
特開2006-175404(JP,A)
特開2004-131672(JP,A)
特開2006-281024(JP,A)
調査した分野 B01D 53/62
B01J 20/00- 20/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
さくら木質部チップ又は穀類糠デンプン糖化残渣からなるリグニン高含有植物材料を炭酸ガス固定化材とし、圧力0.6MPa~20MPa、温度100℃~150℃の加圧、加熱条件下で炭酸ガスと接触させることにより、炭酸ガスを固定化材に固定することを特徴とする炭酸ガスの固定化方法。
【請求項2】
穀類糠デンプン糖化残渣が、米糠デンプン糖化残渣或いは小麦フスマデンプン糖化残渣であることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガスの固定化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リグニン高含有木材チップや穀類糠デンプン糖化残渣のようなリグニン高含有植物材料を炭酸ガスの固定化成分とする炭酸ガス固定化材、及び該炭酸ガス固定化材を用いた炭酸ガスの固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガス等の温室効果による地球温暖化現象に対する対応として、各製造業における化石燃料の消費による炭酸ガスの排出規制が検討されている。しかしながら、化石燃料を使い続ける限り、炭酸ガスの排出を根本的に解決することが難しいのが現状である。そこで、その対応策の1つとして、大気中の炭酸ガスを固定化するための方法が各国において研究されている。古来より、天然界における炭酸ガスの固定化としては、植物や樹木による炭酸同化作用による炭酸ガスの固定や、海洋生物による炭酸ガスの固定や、海水による炭酸ガスの固定が知られているが、これらの炭酸ガスの固定化を積極的に利用して、炭酸ガスの有効な固定を行なうためには膨大な設備と費用とが要求される。
【0003】
そこで、これらの地球温暖化現象に関連して、大気中の二酸化炭素の低減化技術が提案され、その関連で、各種の二酸化炭素の固定化方法が提案されている。該二酸化炭素の固定化方法として、各種の二酸化炭素吸着剤或いは二酸化炭素吸着材も開示されている。例えば、特開昭63-252528号公報には、炭酸ガス吸着剤として、アミン系イオン交換樹脂を用いることが開示されている。また、特開平5-49918号公報には、アルミナ、シリカゲル、又はゼオライトからなる吸着剤に、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸水素ナトリウムを添着せしめた炭酸ガス吸着剤が、特開平5-115775号公報には、吸着性多孔質炭素構造体からなる炭酸ガス吸着剤が開示されている。
【0004】
更に、特開平7-88362号公報には、石炭灰又は高炉スラグからなる産業廃棄物に水を加え、造粒又は破砕することにより得た炭酸ガス吸着体が、特開平11-79722号公報には、炭酸ガス吸着用炭素粒子が、特開2001-300306号公報には、D-グルコサミン単位を有するキチン誘導体単体或いはキチン誘導体を含有する組成物からなる炭酸ガス吸着剤が開示されている。また、特開2003-190733号公報には、絹フィブロインやセリシンのような蛋白質の水溶液、水分散液、又はゲルからなる炭酸ガス固定化用蛋白質材料が、特開2005-111438号公報には、Ca、Mg、Sr、Ba、Fe、貝殻のバイオマスの酸化物、水酸化物からなる二酸化炭素吸収物質が、特開2007-112669号公報には、フエノール樹脂、活性炭などのバイオマス由来の炭化物の多孔質素材からなる二酸化炭素吸着材が開示されている。
【0005】
また、特開2008-19099号公報には、石綿又は石綿含有蛇紋岩を焼成して得たフォルステライトを炭酸ガスの吸着に用いることが開示されている。更に、非特許文献(学術論文)にも、二酸化炭素補足用の固体アミン収着を用いた二酸化炭素の補足について(Int. J. Environ. Technol. Manag. Vol. 4 No. 1/2 Page. 82-88, 2004)、CO分子かご吸着剤を用いた二酸化炭素の吸着について(Int. J. Environ. Technol. Manag. Vol. 4 No. 1/2 Page. 32-52, 2004)、それぞれ報告されている。これら各種の二酸化炭素補足用の吸着剤や吸着材が開示されているが、吸着後の二酸化炭素の処理が解決されていない。環境改善のための炭酸ガスの固定の観点からは、安全で、安価、かつ有効な二酸化炭素の固定化剤や固定化材の更なる開発が望まれているところである。
【0006】

【特許文献1】特開昭63-252528号公報
【特許文献2】特開平5-49918号公報
【特許文献3】特開平5-115775号公報
【特許文献4】特開平7-88362号公報
【特許文献5】特開平11-79722号公報
【特許文献6】特開2001-300306号公報
【特許文献7】特開2003-190733号公報
【特許文献8】特開2005-111438号公報
【特許文献9】特開2007-112669号公報
【特許文献10】特開2008-19099号公報
【非特許文献1】Int. J. Environ. Technol. Manag. Vol. 4 No. 1/2 Page. 82-88, 2004.
【非特許文献2】Int. J. Environ. Technol. Manag. Vol. 4 No. 1/2 Page. 32-52, 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、環境改善のための二酸化炭素の低減化技術として、安全で、安価、かつ有効な二酸化炭素の固定化材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、安全で、安価、かつ有効な二酸化炭素の固定化材について、鋭意探索する中で、リグニン高含有木材チップや穀類糠デンプン糖化残渣のようなリグニン高含有植物材料を炭酸ガス固定化材として用いることにより、有効に炭酸ガスの固定を行うことができることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、リグニン高含有木材チップ又は穀類糠デンプン糖化残渣のようなリグニン高含有植物材料を炭酸ガスの固定化成分とする炭酸ガス固定化材からなる。
【0009】
本発明においては、上記リグニン高含有植物材料を炭酸ガスの固定化成分とする炭酸ガス固定化材を用いて、加圧、加熱条件下で炭酸ガスと接触させることにより、炭酸ガスを有効に固定化材に固定することができる。本発明は、炭酸ガス固定化材として、リグニン高含有木材チップ又は穀類糠デンプン糖化残渣のようなリグニン高含有植物材料を用いるものであるが、木質や穀類糠などの植物性素材中には、デンプン、セルロースおよびリグニンなどの炭素化合物素材が豊富に含まれ、その地球上に存在する資源量は膨大である。しかしながら、これらの素材の利用において、例えば、リグニンの難分解性を完全に解決する手法はなく、多くの炭素を含む資源であるにもかかわらず、その利用は進んでおらず、現時点では、廃棄や熱源として用いられているのが現状である。
【0010】
本発明においては、これら地球上に豊富に存在する天然の資源を炭酸ガス固定化材として用いることができるので、安全で、安価、かつ有効な二酸化炭素の固定化材を提供することが可能となる。
【0011】
本発明の炭酸ガス固定化材のリグニン高含有植物材料による炭酸ガスの固定原理を推定すると、次の化学式[1]におけるような炭酸ガス固定のメカニズムが想定される。すなわち、リグニンはフェノール骨格を有するヒドロキシ桂皮酸の多量体であることから、ヒドロキシ桂皮酸の同様な官能基が豊富に含まれる。そして、このフェノール基をターゲットとしてCOの固定が行なわれると推定される。
【0012】
【化1】
JP0005131017B2_000002t.gif
[1]

【0013】
本発明の炭酸ガス固定化材の炭酸ガス固定成分であるリグニンによる炭酸ガスの固定は、活性炭等による炭酸ガスの「吸着」と相違して、リグニンによる炭酸ガスの「固定」であることが検証されている。すなわち、本発明のリグニン高含有植物材料と、従来、二酸化炭素の吸着剤として使用されている活性炭とを用いて、「固定」と「吸着」との相違を検証したところ、活性炭による「吸着」は、100℃に加熱すると二酸化炭素(CO)の解離が見られたのに対して、本発明のものは、二酸化炭素(CO)が固定されたままであり、再放出は見られなかった。
【0014】
本発明において、炭酸ガス固定化材として用いられるリグニン高含有植物材料としては、リグニンを豊富に含有する植物材料であれば、特に限定されないが、さくら木質部チップや、米糠デンプン糖化残渣或いは小麦フスマデンプン糖化残渣のようなリグニン高含有木材チップ又は穀類糠デンプン糖化残渣を特に好ましい炭酸ガス固定化材として挙げることができる。
【0015】
本発明の炭酸ガス固定化材を用いて、炭酸ガスの固定を行なうには、リグニン高含有植物材料を炭酸ガス固定化材とし、加圧、加熱下で炭酸ガスと接触させることにより有効に炭酸ガスを固定化材に固定することができる。かかる炭酸ガス固定化材と炭酸ガスとの加圧、加熱下での接触条件としては、圧力0.6MPa~20MPa、温度100℃~150℃であることが好ましい。
【0016】
すなわち具体的には本発明は、(1)さくら木質部チップ及び/又は穀類糠デンプン糖化残渣からなるリグニン高含有植物材料を炭酸ガス固定化材とし、圧力0.6MPa~20MPa、温度100℃~150℃の加圧、加熱条件下で炭酸ガスと接触させることにより、炭酸ガスを固定化材に固定することを特徴とする炭酸ガスの固定化方法や、(2)穀類糠デンプン糖化残渣が、米糠デンプン糖化残渣或いは小麦フスマデンプン糖化残渣であることを特徴とする上記(1)記載の炭酸ガスの固定化方法からなる。

【発明の効果】
【0018】
本発明の炭酸ガス固定化材として用いられる、リグニン高含有木材チップ又は穀類糠デンプン糖化残渣のようなリグニン高含有植物材料は、地球上に豊富に存在し、かつ、安全な天然の資源を炭酸ガス固定化材として用いるものであるので、本発明により、安全で、安価、かつ有効な二酸化炭素の固定化材を提供することができる。また、かかる炭酸ガス固定化材を用いる炭酸ガスの固定化方法の提供により、環境改善のための二酸化炭素の低減化技術として、安全で、安価、かつ有効な二酸化炭素の固定化方法を提供する。更に、本発明の炭酸ガス固定化材は、リグニン含量の高い木質のチップや、穀類糠の有効成分であるデンプン糖化後の穀類糠デンプン糖化残渣のような廃物を利用することができるから、資源の有効利用という観点からも、産業上の有用性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、リグニン高含有木材チップや穀類糠デンプン糖化残渣のようなリグニン高含有植物材料を炭酸ガスの固定化成分とする炭酸ガス固定化材からなる。また、該炭酸ガス固定化材を用いて、リグニン高含有植物材料を炭酸ガス固定化材とし、加圧、加熱下で炭酸ガスと接触させることにより、炭酸ガスを固定化材に固定する炭酸ガスの固定化方法からなる。
【0020】
本発明において、炭酸ガス固定化材として用いられるリグニン高含有植物材料としては、リグニンを豊富に含有する植物材料が用いられる。該リグニン高含有植物材料としては、リグニン高含有木材チップや、穀類糠デンプン糖化残渣のようなリグニンを高含量で含有する植物材料を用いることができる。リグニン高含有木材チップとしては、リグニン含量の高い木質としてのさくら木質部チップを好ましい木材チップとして用いることができる。さくら木質部チップは、さくらの木質部を粉砕することにより、調製することができるが、その粉砕手段としては適宜公知の粉砕手段を用いることができる、また、その粉砕物の形状や粉砕度等は、その利用目的に応じて適宜設定することができる。さくら木質部チップを調製するための原材料として、適宜、市販のさくらチップ(SOTO製)を用いることができる。
【0021】
リグニン高含有植物材料として、穀類糠デンプン糖化残渣のようなリグニンを高含量で含有する植物材料を用いることができる。かかる穀類糠デンプン糖化残渣としては、米糠デンプン糖化残渣或いは小麦フスマデンプン糖化残渣を用いることができる。該米糠デンプン糖化残渣或いは小麦フスマデンプン糖化残渣は、米糠或いは小麦フスマを、アミラーゼのような糖化酵素で糖化し、デンプン糖化物を利用・分離した後の残渣を利用することができる。これらは糖化処理により、残渣中のリグニン以外の含量が減少し、リグニンを高含量で含有する植物材料として調製することができる。更に、リグニンを高含量で含有する植物材料としては、「稲藁などの食用草本廃棄物」、「家畜糞」、「製紙業の廃棄物黒液」等を挙げることができる。
【0022】
本発明において、リグニン高含有植物材料を炭酸ガス固定化材とし、炭酸ガスを固定化材に固定するには、該固定化材を、加圧、加熱下で炭酸ガスと接触させることにより行うことができる。かかる加圧、加熱下での炭酸ガス固定化材と炭酸ガスとの接触条件としては、圧力0.6MPa~20MPa、温度100℃~150℃の条件を設定することができる。特に、好ましい炭酸ガス固定化材と炭酸ガスとの接触条件としては、圧力0.6MPaあるいは1.5MPa、温度125℃を条件の設定指標とした条件を挙げることができる。本発明において、炭酸ガス固定化材と炭酸ガスとを加圧、加熱下で接触させるために用いる装置や設備としては、公知の適宜の固体-ガス接触装置や設備を用いることができる。
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
[炭酸ガス固定化材の調製]
【0025】
(さくら木質部チップの調製)
回転刃式粉砕機(サン製FM-50)にて、サクラチップ市販品(SOTO製)を粉砕後、孔径0.300mm及び孔径0.425mmのふるいによって粒子径をそろえた。
【0026】
(小麦フスマデンプン糖化残渣の調製)
小麦ふすまを、気流粉砕機(ホソカワミクロン製気流粉砕機パルベライザ ACMD-10A、粒径約20μm)或いは遠心粉砕機(レッチ製ZM200、粒径約80μm)にて粉砕し、加水後αアミラーゼ(ノボザイムズ製Liquozyme SC)存在下でpH6及び80℃で1時間攪拌反応させた。遠心分離によって小麦ふすま残渣を回収し、加水後5回、同様な加水・遠心操作を繰り返して洗浄した。得られた残渣を凍結乾燥して小麦フスマデンプン糖化残渣を得た。
【実施例2】
【0027】
[小麦フスマデンプン糖化残渣によるCO固定]
【0028】
小麦フスマ中のデンプンをαアミラーゼ等によって糖化し、分離した残渣について、CO固定の状況を検討した。
【0029】
(試料)
デンプン糖化後の小麦フスマデンプン糠化残渣を、実施例1の方法により調製した。残渣を5倍量のクロロホルムメタノール混液にて10回洗浄した後、有機溶媒をロータリーエバポレーターにて溜却した。得られた残渣を1Lの2M水酸化ナトリウム水溶液中に懸濁し、12時間緩やかに攪拌した。得られた懸濁液をブフナー漏斗にて減圧濾過し、得られた残渣を更に1Lの純水で5回洗浄した(図1:有機溶媒洗浄、アルカリ処理、水洗浄後のデンプン糖化後、小麦デンプン糠化残渣)。ろ液のpHを確認し、pH8以下になったことを確認して次項の操作に用いた。
【0030】
(反応)
耐圧硝子工業株式会社製ポータブルリアクター(TVS-1型、20ml容)に上記試料(約0.1g)を入れ、125℃に設定したヒートブロックに設置し、24時間放置した。冷却後、試料の量を精秤し、再度リアクターに入れた後、レギュレーターを装備したCOボンベから0.6MPa(約6気圧)となるようにCOを充填した。リアクターを125℃に設定したヒートブロックに設置し、6日まで加熱反応を続けた。1日ごとにリアクターごと冷却し、試料を取り出し、その重量を測定した。当初の値を100mgに換算して重量および重量増を評価した。
【0031】
(結果及び考察)
糖化後小麦糠残渣へのCO固定による重量の増加及び増加量を図2(糖化後の小麦フスマデンプン糠化残渣の重量変化(n=3))、及び図3(糖化後の小麦フスマデンプン糠化残渣の重量増加量(n=3))に示す。図に示されるように、0.6MPa、CO雰囲気下、125℃の加熱によって、糖化後小麦フスマデンプン糖化残渣は経過時間に伴って増加し、4日目頃からプラトーに達する様相を示した。また、その増加量は初期増加域で1日当たり約0.1mg/100mg残渣、プラトー時で約0.25mg/100mg残渣であり、これを換算すると約23及び58mol、CO/g残渣であった。
【0032】
本実験によって、0.6MPa、CO雰囲気下、125℃の加熱によって糖化後の小麦フスマデンプン糖化残渣のCO固定によるものと考えられる重量増が観察された。
【0033】
そこで、次の実験として、リグニン含量が高い木質粉砕物について検討を加え、リグニンそのもののCO固定能力について検討を加えることとした。また、ヒドロキシ桂皮酸類の多量体化反応時に、COが付加されるはずのフェノール性水酸基からみてオルトの位置が消費されているために、有効フェノール構造が少なかった可能性がある。この意味では、重合度のできるだけ低いリグニンを対象として本CO固定原理を利用することがCO固定能力を高めることにつながると考えられた。
【実施例3】
【0034】
[木質粉砕物によるCO固定]
【0035】
この実施例では、リグニンを高含量に含有する木質を用いてCO固定量を評価した。
【0036】
(試料)
実施例1で調製した、市販サクラチップを回転刃式粉砕機で粉砕したものを用い、これを5倍量のクロロホルムメタノール混液にて10回洗浄した後、有機溶媒をロータリーエバポレーターにて溜却した。得られた残渣を1Lの2M水酸化ナトリウム水溶液中に懸濁し、12時間緩やかに攪拌した。得られた懸濁液をブフナー漏斗にて減圧濾過し、得られた残渣を更に1Lの純水で5回洗浄した(図4:有機溶媒洗浄、アルカリ処理、水洗浄後のサクラ木質部チップ)。ろ液のpHを確認し、pH8以下になったことを確認して次項の操作に用いた。対照として、そのCOの吸収が、CO固定ではないCO吸着である対照実験として活性炭(和光純薬、0.2-1mm破砕状)を用いて実験を行なった。
【0037】
(反応)
ポータブルリアクターに上記試料(約1g)を入れ、125℃或いは150℃に設定したヒートブロックに設置し、24時間放置した。冷却後、試料の量を精秤し、再度リアクターに入れた後、レギュレーターを装備したCOボンベから1.5MPa(約15気圧)となるようにCOを充填した。リアクターを125℃或いは150℃に設定したヒートブロックに設置し、15日間加熱反応させた。3日毎にリアクターごと冷却し、試料を取り出し、その重量を測定した。当初の値を1gに換算して重量および重量増を評価した。
【0038】
(解離反応)
上記試料の反応後、ポータブルリアクターから取り出し、ガラス製秤量瓶に移し、100℃にて加熱し、経時的に重量を測定した。
【0039】
(結果及び考察)
木質チップへのCO固定による重量の増加及び増加量を、図5(サクラチップの重量変化(n=3)。1.5MPa、125℃)、及び、図6(サクラチップの重量変化量(n=3)。1.5MPa、125℃)に示す。1.5MPa、CO雰囲気下、125℃の加熱によって木質チップの重量は3日目まで速やかに増加し、その後漸増し、増加量としてはほぼ0.01g/gチップで安定した。これを換算すると0.23mmol、CO/gチップであった。このようにリグニン含量が低いと考えられる小麦フスマデンプン糖化残渣に比べて4倍程度の固定量が見積もられた。したがって、小麦フスマデンプン糖化残渣においても、デンプン、セルロース、ヘミセルロースが完全に糖化された材料を用いることによってそのCO固定能力は格段に高まることが考えられた。
【0040】
一方、加熱温度を150℃に設定した場合、試行は1検体のみであるが、木質チップの重量が減少した(図7:サクラチップの重量変化(n=1)。1.5MPa、150℃)。これは、木質チップ中の何らかの成分が加熱によって気化したため、重量が減少したものと考えられた。また、COを吸着する活性炭について同様の検討を行ったところ、COの吸着による増重が認められた(図8:活性炭の重量変化(n=1)。1.5MPa、125℃)。
【0041】
次いで、COが吸着されたのかあるいは固定されたのかを確認するために、常圧、100℃における解離反応を行ったところ、活性炭では速やかに吸着量に匹敵する重量減が認められた(図9:活性炭の重量変化(n=1)。1.5MPa、125℃)。このことから、活性炭はCOを固定したのではなく、吸着したものと考えられた。一方、木質チップでは若干の減少が認められただけで、固定化されたCOはこの温度では解離しないことが明らかとなった(図9)。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例において調製された小麦フスマデンプン糖化残渣を、有機溶媒洗浄、アルカリ処理、水洗した後の小麦フスマデンプン糖化残渣を写した写真である。
【図2】本発明の実施例における小麦フスマデンプン糖化残渣によるCO固定実験の結果(糖化後の小麦フスマデンプン糠化残渣の重量変化(n=3))について示す図である。
【図3】本発明の実施例における小麦フスマデンプン糖化残渣によるCO固定実験の結果(糖化後の小麦フスマデンプン糠化残渣の重量増加量(n=3))について示す図である。
【図4】本発明の実施例において調製されたサクラ木質部チップを、有機溶媒洗浄、アルカリ処理、水洗した後のサクラ木質部チップを写した写真である。
【図5】本発明の実施例におけるサクラ木質部チップによるCO固定実験の結果(サクラチップの重量変化(n=3)。1.5MPa、125℃)について示す図である。
【図6】本発明の実施例におけるサクラ木質部チップによるCO固定実験の結果(サクラチップの重量変化量(n=3)。1.5MPa、125℃)について示す図である。
【図7】本発明の実施例におけるサクラ木質部チップによるCO固定実験の結果(サクラチップの重量変化(n=1)。1.5MPa、150℃)について示す図である。
【図8】本発明の実施例におけるサクラ木質部チップによるCO固定実験において、対照として活性炭を用いてCOを吸着させた結果(活性炭の重量変化(n=1)。1.5MPa、125℃)について示す図である。
【図9】本発明の実施例におけるサクラ木質部チップによるCO固定実験において、COが吸着されたのか或いは固定されたのかを確認するための実験における解離反応の結果(活性炭の重量変化(n=1)。1.5MPa、125℃)について示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8