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明細書 :アディポネクチン分泌調節剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5499415号 (P5499415)
公開番号 特開2011-063554 (P2011-063554A)
登録日 平成26年3月20日(2014.3.20)
発行日 平成26年5月21日(2014.5.21)
公開日 平成23年3月31日(2011.3.31)
発明の名称または考案の名称 アディポネクチン分泌調節剤
国際特許分類 A61K  31/19        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61P  19/08        (2006.01)
A61P   3/04        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
A61P   3/06        (2006.01)
A61P   5/50        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
FI A61K 31/19
A61P 43/00 111
A61P 9/00
A61P 19/08
A61P 3/04
A61P 9/10 101
A61P 9/12
A61P 3/06
A61P 5/50
A61P 29/00
A61P 1/16
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2009-216785 (P2009-216785)
出願日 平成21年9月18日(2009.9.18)
審査請求日 平成24年9月12日(2012.9.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
発明者または考案者 【氏名】潮 秀樹
【氏名】大原 和幸
【氏名】清谷 優香
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
審査官 【審査官】▲高▼岡 裕美
参考文献・文献 国際公開第2006/013750(WO,A1)
特開2010-111585(JP,A)
Eric P.Plaisance et al.,'Niacin stimulates adiponectin secretion through the GPR109A receptor',Am J Physiol Endocrinol Metab,Vol.296, MARCH 2009,E549-E558
調査した分野 A61K 31/00-31/80
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
アセト酢酸及び/又は3-ヒドロキシ酪酸、又はそれらの塩を有効成分とする、アディポネクチンの分泌抑制によりアディポネクチンの分泌を調節するアディポネクチン分泌調節剤。
【請求項2】
アディポネクチンの分泌抑制が、アディポネクチン多量体の分泌抑制であることを特徴とする請求項1に記載のアディポネクチン分泌調節剤。
【請求項3】
アディポネクチンの分泌調節が、アディポネクチンの分泌抑制による過剰な血中アディポネクチン濃度の減少であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアディポネクチン分泌調節剤。
【請求項4】
アディポネクチンの分泌調節が、アディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善のためのものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のアディポネクチン分泌調節剤。
【請求項5】
アディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善が、冠動脈疾患における高アディポネクチン濃度の予防、緩和、又は改善のためのものであることを特徴とする請求項4に記載のアディポネクチン分泌調節剤。
【請求項6】
アディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善が、過剰な血中アディポネクチンの存在による骨形成の抑制、或いは骨密度の低下の予防、緩和、又は改善のためのものであることを特徴とする請求項4に記載のアディポネクチン分泌調節剤。
【請求項7】
アディポネクチンの分泌調節が、体重調節による抗肥満作用のためのものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のアディポネクチン分泌調節剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内でアディポサイトカインとして機能しているアディポネクチンの分泌抑制作用を有するアディポネクチン分泌調節剤、及び、該分泌調節剤による、冠動脈疾患における高アディポネクチン濃度、又は、過剰な血中アディポネクチンの存在による骨形成の抑制、或いは骨密度の低下のようなアディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善、更には、該分泌調節剤による、体重調節による抗肥満作用のための分泌調節剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アディポネクチンは、1996年にヒト脂肪組織から分離された、脂肪組織に特異的な分泌タンパク質アディポサイトカインで(Food Style 21, 第6巻、第5号、第72~78頁)、マウスやヒトなどの哺乳動物に見いだされた蛋白質で、正常ヒト血中に5~10μg/mlという高濃度で存在している。アディポネクチンには動脈硬化症の改善、高血圧の改善、脂質代謝改善、インスリン感受性の改善、抗炎症作用、肝線維化抑制など多岐にわたる作用が見出されており、血中のアディポネクチン濃度を上昇せしめる薬品又は飲食物は、メタボリックシンドロームの予防・改善作用を有することが示されている。
【0003】
アディポネクチンは、脂肪組織から特異的に分泌されているにも関わらず、血中のアディポネクチン濃度は、体重減少によって上昇することが明らかにされている。アディポネクチンは、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、マクロファージに対して抗動脈硬化作用を有していることが知られており、異種のアディポサイトカインであるレプチンとは異なるメカニズムを介する体重減少が確認され、アディポネクチンが体重調節等の機能を担っていることが明らかにされており、抗肥満作用及び抗糖尿病作用も有することが知られている。
【0004】
従来より、アディポネクチンの産生を促進する物質として、各種の物質が植物等から抽出され、開示されている。例えば、特開2009-196981号公報には、サラシア属植物の粉砕物又は抽出物を有効成分とする血中アディポネクチン量増加剤が、特開2009-149635号公報、特開2009-143917号公報、特開2009-143910号公報には、キサンチン類を有効成分とするアディポネクチン産生促進剤が、特開2009-120491号公報には、メチル化カテキン類を有効成分とするアディポネクチン産生促進剤が、特開2008-179609号公報には、アスタキサンチンを有効成分とするアディポネクチン産生促進剤が、及び、特開2008-115163号公報、特開2008-31076号公報には、カルコン類を有効成分とするアディポネクチン産生促進剤がそれぞれ開示されている。その他、今までに、各種のアディポネクチン産生促進剤及びアディポネクチン低下抑制剤が開示され、動脈硬化症の予防、治療、糖尿病の治療又は予防、抗炎症等の用途への利用が開示されている。
【0005】
一方で、最近、アディポネクチン産生を抑制する物質が見出され、アディポネクチンに起因する各種疾患、疾病、症状などの予防、緩和、改善に有用な用途剤として、アディポネクチン産生抑制剤が開示されている(特開2008-24620号公報)。該アディポネクチン産生抑制剤は、ルイボス葉、オウバク、チクジョから選ばれる生薬を有効成分とするアディポネクチン産生抑制剤であり、アディポネクチン産生抑制による痩身効果が示されており、痩身用皮膚外用剤、痩身用浴用剤、痩身用飲食物及び痩身用飼料としての用途が示されている。
【0006】
従来から、生体内でアディポサイトカインとして機能しているアディポネクチンについては、その動脈硬化症の改善、高血圧の改善、脂質代謝改善、インスリン感受性の改善、抗炎症作用、肝線維化抑制など多岐にわたる作用が見出されたことにより、その医薬的な利用の目的から、前記のように、もっぱら、アディポネクチンの産生を促進する物質の開発が行われ、開示されてきた。しかし、近年の研究の進展により、過剰なアディポネクチンの産生の弊害の問題も指摘されてきている。例えば、冠動脈疾患患者にとっては、高い血中アディポネクチン濃度が危険因子となることや、また、過剰な血中アディポネクチンの存在は骨形成を抑制し、骨密度を低下させる原因となることが指摘されている。そこで、従来のように、アディポネクチンの分泌を促進する薬剤だけでなく、高い若しくは過剰な血中アディポネクチン濃度を低下させ、血中アディポネクチンを適正な濃度に調節する薬剤の開発が求められているところである。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2008-24620号公報
【特許文献2】特開2008-31076号公報
【特許文献3】特開2008-115163号公報
【特許文献4】特開2008-179609号公報
【特許文献5】特開2009-120491号公報
【特許文献6】特開2009-143910号公報
【特許文献7】特開2009-143917号公報
【特許文献8】特開2009-149635号公報
【特許文献9】特開2009-196981号公報
【0008】

【非特許文献1】Food Style 21, 第6巻、第5号、第72~78頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、動脈硬化症の改善、高血圧の改善、脂質代謝改善、インスリン感受性の改善、抗炎症作用、肝線維化抑制など多岐にわたる作用を有し、生活習慣病の予防或いは治療上重要なサイトカインとして、その分泌促進が検討されているアディポネクチンについて、その過剰な血中アディポネクチンの存在を回避し、アディポネクチンの適正な血中濃度を維持するために、アディポネクチンの分泌を効果的に抑制し、アディポネクチンの分泌を調節できるアディポネクチン分泌調節剤を提供すること、及び、該ディポネクチン分泌調節剤により、冠動脈疾患における高アディポネクチン濃度、又は、過剰な血中アディポネクチンの存在による骨形成の抑制、或いは骨密度の低下のようなアディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善を行うことが可能な、更には、該分泌調節剤による、体重調節による抗肥満作用を有する用途剤として使用することが可能なアディポネクチン分泌調節剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来、医薬的な利用の目的から、もっぱら、アディポネクチンの産生を促進する物質の開発が行われてきた中で、近年の研究の進展により、過剰なアディポネクチンの産生の弊害の問題が指摘され、したがって、該過剰なアディポネクチンの産生の弊害の問題を回避するために、高い若しくは過剰な血中アディポネクチン濃度を低下させ、血中アディポネクチンを適正な濃度に調節する手段が求められているところ、本発明者は、アディポネクチンの分泌を効果的に抑制できる物質について、鋭意探索する中で、アセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸からなるケトン体が、アディポネクチンの分泌を効果的に抑制することを見出し、該ケトン体を用いて、アディポネクチン分泌の抑制を行うことにより、生体における血中濃度を調節できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、アセト酢酸及び/又は3-ヒドロキシ酪酸、又はそれらの塩を有効成分とするアディポネクチン分泌調節剤からなる。本発明におけるアディポネクチンの分泌調節剤により、アディポネクチンの分泌を抑制し、過剰な血中アディポネクチン濃度の減少を図ることができる。また、本発明のアディポネクチン分泌調節剤により、分泌されるアディポネクチンの単量体及び多量体の組成比を変更し、アディポネクチン多量体の分泌抑制を行うことができる。そして、本発明のアディポネクチン分泌調節剤により、アディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善を図ることができる。該アディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善としては、冠動脈疾患における高アディポネクチン濃度の予防、緩和、又は改善を挙げることができる。また、該アディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善として、過剰な血中アディポネクチンの存在による骨形成の抑制、或いは骨密度の低下の予防、緩和、又は改善を挙げることができる。更に、本発明におけるアディポネクチンの分泌調節剤を、体重調節による抗肥満作用のためのアディポネクチンの分泌調節に用いることができる。
【0012】
すなわち具体的には本発明は、(1)アセト酢酸及び/又は3-ヒドロキシ酪酸、又はそれらの塩を有効成分とする、アディポネクチンの分泌抑制によりアディポネクチンの分泌を調節するアディポネクチン分泌調節剤や、(2)アディポネクチンの分泌抑制が、アディポネクチン多量体の分泌抑制であることを特徴とする上記(1)に記載のアディポネクチン分泌調節剤や、(3)アディポネクチンの分泌調節が、アディポネクチンの分泌抑制による過剰な血中アディポネクチン濃度の減少であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のアディポネクチン分泌調節剤からなる。

【0013】
また、本発明は、(4)アディポネクチンの分泌調節が、アディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善のためのものであることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のアディポネクチン分泌調節剤や、(5)アディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善が、冠動脈疾患における高アディポネクチン濃度の予防、緩和、又は改善のためのものであることを特徴とする上記(4)に記載のアディポネクチン分泌調節剤や、(6)アディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善が、過剰な血中アディポネクチンの存在による骨形成の抑制、或いは骨密度の低下の予防、緩和、又は改善のためのものであることを特徴とする上記(4)に記載のアディポネクチン分泌調節剤や、(7)アディポネクチンの分泌調節が、体重調節による抗肥満作用のためのものであることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のアディポネクチン分泌調節剤からなる。

【発明の効果】
【0014】
本発明は、アディポネクチンの分泌を効果的に抑制し、アディポネクチンの分泌を調節できるアディポネクチン分泌調節剤を提供する。本発明のディポネクチン分泌調節剤は、冠動脈疾患における高アディポネクチン濃度、又は、過剰な血中アディポネクチンの存在による骨形成の抑制、或いは骨密度の低下のようなアディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善を行うことが可能であり、更には、該分泌調節剤による、体重調節による抗肥満作用を有する用途剤として使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例におけるアディポネクチンの分泌抑制についての試験において、アセト酢酸投与によるマウス脂肪細胞のアディポネクチンの分泌への影響について試験した結果を示す図である。
【図2】本発明の実施例におけるアディポネクチンの分泌抑制についての試験において、3-ヒドロキシ酪酸投与によるマウス脂肪細胞のアディポネクチンの分泌への影響について試験した結果を示す図である。
【図3】本発明の実施例におけるアディポネクチンの分泌抑制についての試験において、3-ヒドロキシ酪酸投与によるマウス脂肪細胞のアディポネクチンの分泌における総単量体アディポネクチン値について、Odyssey Infrared Imaging Systemsを用いて検出した結果を示す写真である。
【図4】本発明の実施例におけるアディポネクチンの分泌抑制についての試験において、3-ヒドロキシ酪酸投与によるマウス脂肪細胞のアディポネクチンの分泌における多量体アディポネクチン値について、Odyssey Infrared Imaging Systemsを用いて検出した結果を示す写真である。
【図5】本発明の実施例におけるアディポネクチンの分泌抑制についての試験において、アセト酢酸投与によるマウス脂肪細胞のアディポネクチンの分泌における高分子量アディポネクチン多量体、中分子量及び低分子量アディポネクチンの分泌状況について検出した結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例におけるアディポネクチンの分泌抑制についての試験において、3-ヒドロキシ酪酸投与によるマウス脂肪細胞のアディポネクチンの分泌における高分子量アディポネクチン多量体、中分子量及び低分子量アディポネクチンの分泌状況について検出した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、アセト酢酸及び/又は3-ヒドロキシ酪酸、又はそれらの塩を有効成分とするアディポネクチンの分泌抑制により血中アディポネクチン濃度を調節するアディポネクチン分泌調節剤からなる。本発明のアディポネクチン分泌調節剤の有効成分であるアセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸は、それ自体、或いは、その医薬的に許容される塩の形で用いることができる。医薬に許容可能な塩として、金属塩(無機塩)と有機塩との両方が含まれる。

【0017】
本発明のアディポネクチン分泌調節剤は、有効成分である化合物を、製剤学的に許容される製剤担体と組み合わせて、経口的、又は非経口的にヒトを含む哺乳動物に投与することができる。該製剤形態は特に限定されず、予防及び治療目的に応じて適宜選択でき、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、点鼻剤等を例示できる。製剤化にあたっては製剤担体として通常汎用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。また、本発明の効果を損なわない限り、本発明の化合物等と、他のアディポネクチン分泌調節剤とを併用してもよい。

【0018】
本発明のアディポネクチン分泌調節剤は、医薬品、化粧品をはじめとする各種の皮膚外用剤や内用剤、浴用剤、飲食物などに配合することができる。本発明のアディポネクチン分泌調節剤において、有効成分の製剤における総配合量は剤型によっても異なるが、目的の用途によって適宜、配合量を調整することができる。

【0019】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
[アセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸を用いたアディポネクチン分泌抑制効果試験]
【実施例1】
【0021】
<試験方法>
マウス3T3-L1前駆脂肪細胞懸濁液5×10cells/mlを200μlずつ96ウェルプレートの各ウェルに分注し、脂肪細胞に分化させた。アセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸を25mM HEPESを含む無血清DMEMで適宜希釈し、0.1mMから50mMのアセト酢酸或いは3-ヒドロキシ酪酸を含む無血清培地とした。0.1mMから50mMのアセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸を含む無血清培地をそれぞれ200μlずつ脂肪細胞に加えて培養を行い、24時間後に培地を回収した。回収した培地についてSDS-PAGEを行った後、ウェスタンブロッティングを行い、Odyssey Infrared Imaging Systemsを用いてアディポネクチンを検出した。
【実施例1】
【0022】
<結果>
得られたデジタル画像をImage Jを用いて解析し、総単量体アディポネクチン値を算出した。図1(アセト酢酸投与によるマウス3T3-L1脂肪細胞のアディポネクチン分泌への影響)に示すように、5mM以上のアセト酢酸を含む無血清培地で培養した結果、脂肪細胞のアディポネクチン分泌は有意に抑制された。また、3-ヒドロキシ酪酸を含む無血清培地で培養した結果、10mM以上で有意なアディポネクチン分泌抑制が認められた(図2:3-ヒドロキシ酪酸投与によるマウス3T3-L1脂肪細胞のアディポネクチン分泌への影響)。
以上のように、ケトン体であるアセト酢酸あるいは3-ヒドロキシ酪酸が有意にアディポネクチン分泌の抑制効果が認められた。
【実施例2】
【0023】
[アセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸を用いたアディポネクチン単量体及び多量体の分泌抑制効果試験]
【実施例2】
【0024】
<材料の調製;検出>
【実施例2】
【0025】
(マウス3T3-L1前駆脂肪細胞の培養)
マウス3T3-L1前駆脂肪細胞(IFO50416,HSRRB)を購入し、24ウェルプレートを用いて、10%FBS(SIGMA)を含むタルベッコ変法イーグル増殖培地(DMEM)(日水製薬)で培養した。48hごとに培地を交換して細胞を増殖させ、25cmフラスコ、75cmフラスコへと細胞を継代した。細胞を回収してBICELL(日本冷凍)にて1分約1℃で-85℃まで冷却し、以下の検討に用いるまで-85℃で保存した。
【実施例2】
【0026】
(脂肪細胞への分化)
マウス3T3-L1前駆脂肪細胞を75cmフラスコからトリプシン-EDTA(免疫生物研究所)を用いて50mlプラスチックチューブに回収した。450×g、5分間遠心し、上清を除いた後、新らたな培地を加えて細胞を懸濁させた。細胞懸濁液を6ウェルプレートへ分注し、コンフルエントに達するまで培養した。細胞がコンフルエントに達した後、10μg/mlインスリン(Wako)、0.5mM/l 3-isobutyl-1-methyl-xanthine (IBMX)(SIGMA)及び1M/lデキサメタゾン(Wako)を加えた分化誘導培地に交換した。48時間ごとに新しい分化誘導培地に交換し、7日間培養した。その後、増殖培地に交換し、更に2日間培養した。
【実施例2】
【0027】
(脂肪細胞の確認)
Oil red O染色によって分化させた脂肪細胞の脂肪滴を確認した。分化させた脂肪細胞のプレートから培地を除き、PBSで洗浄した後、10%ホルマリン(SIGMA)を加え、1時間静置して細胞を化学固定した。10%ホルマリンを除き、蒸留水で洗浄した後、0.2% Oil red O(SIGMA)染色液(イソプロパノール:蒸留水=6:4)を加え、1時間静置して脂肪滴を染色した(Trouba et al,2000)。染色液を除き、蒸留水で洗浄し、顕微鏡(Olympus IX-70,オリンパス)で確認し、デジタルカメラにて撮像した。
【実施例2】
【0028】
(アセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸溶液の調製)
Lithium acetoacetate(SIGMA)或いは(R)-(-)-3-hydroxybutyric acid,sodium saltを微量のフェノールレッドを含むミリQ水に溶解した。HClを用いて中性付近にpHを調整し、1Mの3-ヒドロキシ酪酸及びアセト酢酸溶液を調製した。孔径0.2μmのマイクロフィルターでろ過して下記の実験に使用した。
【実施例2】
【0029】
[アセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸のマウス3T3-L1脂肪細胞のアディポネクチン分泌に及ぼす影響]
【実施例2】
【0030】
<試験方法>
マウス3T3-L1前駆脂肪細胞懸濁液5×10cells/mlを200μlずつ96ウェルプレートの各ウェルに分注し、脂肪細胞に分化させた。1Mのアセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸溶液を適宜希釈し、それらの溶液を無血清培地で20倍希釈した。これを適宜無血清培地で希釈し、1mMから50mMのアセト酢酸或いは3-ヒドロキシ酪酸を含む無血清培地とした。1mMから50mMのアセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸を含む無血清培地をそれぞれ200μlずつ脂肪細胞に加えて培養を行い、48時間後に培地を回収した。ネガティブコントロールとしてミリQ水を用いた。
【実施例2】
【0031】
培養上清を適宜希釈し、2×SDS-PAGEsample buffer(0.125M Tris-HCl (pH6.5)、20%グリセロール、4%SDS、10%2-メルカプトエタノール、0.004%ブロモフェノールブルー)と混合し、5分間煮沸した。10%ポリアクリルアミドゲルを用いて、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)を行った後、セミドライブロッティング装置(BIO CRAFT)を用いてゲル一枚当たり100mAで60分間通電し、polyvinylidene difluoride (PVDF)膜(MILLIPORE)にタンパク質を転写した。得られたPVDF膜をブロッキング溶液(5%スキムミルク、0.1%アジ化ナトリウム/TBS)中で室温、1時間振とうし、ブロッキングを行った。
【実施例2】
【0032】
次いで、0.5%polyoxyethylene(20) sorbitan monolaurate (Tween-20)を含むTBS(Tween-TBS)で3分間×4回洗浄した後、biotinylated anti-mouse adiponectin polyclonal antibody (R&D Systems,Inc)をTween-TBSで適宜希釈した溶液中でPVDF膜を1時間振とうした。Tween-TBSで3分間×4回洗浄した後、streptavidin、Alexa Fluor(R) 680 conjugate(Molecular Probes, Inc.)を含むTween-TBS中でPVDF膜を室温1時間振盪した。Tween-TBSで3分間×4回洗浄した後,Odyssey Infrared Imaging Systems(LI-COR Biosciences)を用いて検出した。得られたデジタル画像をImage Jを用いて解析し、総単量体アディポネクチン値を算出した。
【実施例2】
【0033】
<結果>
結果を図3に示す。
【実施例2】
【0034】
[アセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸がアディポネクチン多量体の分泌に及ぼす影響]
アディポネクチンは単量体、3分子の単量体からなる3量体(Low molecular weight:LMW)、6量体(Middle molecular weight:MMW)及びそれらの複合体である多量体(High molecular weight:HMW)として血中に存在しており、その中でも特に多量体(HMW)がインスリン耐性の改善などに活性を持つと考えられている(J. Biol. Chem. 278, 40352-40363, 2003)。そこで,更に、アセト酢酸のアディポネクチン分泌抑制作用を検討するために,多量体アディポネクチンの分泌を測定した。
【実施例2】
【0035】
<試験方法>
マウス3T3-L1前駆脂肪細胞懸濁液5×10cells/mlを200μlずつ96ウェルプレートの各ウェルに分注し、脂肪細胞に分化させた。1mMから50mMのアセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸を含む無血清培地を調製した。培地を除去後、1mMから50mMのアセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸を含む無血清培地をそれぞれ200μlずつ加えた。ネガティブコントロールとしてミリQ水を用いた。培地を加えて48時間後、各ウェルの培地を回収した。得られた培地を、2-メルカプトエタノールを除いた5×SDS-PAGEsample buffer(0.3125M Tris-HCl (pH6.5)、50%グリセロール、10%SDS、0.004%ブロモフェノールブルー、2-メルカプトエタノール不含)と混合し、1時間室温に静置した。2-15%のグラジェントゲル(マルチゲル(R)IIミニ2/15,コスモ・バイオ株式会社)を用いてSDS-PAGEを行った後、セミドライブロッティング装置を用いてゲル一枚当たり100mAで90分間通電し、PVDF膜にタンパク質を転写した。
【実施例2】
【0036】
得られたPVDF膜をブロッキング溶液(3% Bovine Serum Albumin Fraction V (BSA)(Roche)、0.1%アジ化ナトリウム/TBS)中で室温、1時間振とうし、ブロッキングを行った。次いで,Tween-TBSで3分間×4回洗浄した後、mouse anti-adiponectin,mouse monoclonal antibody(CHEMICON(R) INRERNATIONAL)を含むTween-TBS中でPVDF膜を1時間振とうした。Tween-TBSで3分間×4回洗浄した後、Alexa Flour(R) 680 goat anti-mouse IgG(H+L)(Molecular Probes., Inc.)を含むTween-TBS中でPVDF膜を室温1時間振盪した。Tween-TBSで3分間×4回洗浄した後、Odyssey Infrared Imaging Systemsを用いて検出した。
【実施例2】
【0037】
<結果>
結果を図4に示す。得られたデジタル画像をImage Jを用いて解析し、多量体アディポネクチン値を評価した。
【実施例2】
【0038】
[アセト酢酸及び3-ヒドロキシ酪酸がアディポネクチン多量体の分泌に及ぼす影響の評価]
図5に示されるように、アセト酢酸を投与した場合、高分子量アディポネクチン多量体の減少に比べて、中分子量および低分子量アディポネクチン多量体の減少が著しかった。このことから、アセト酢酸はインスリン感受性向上など生理活性の高い高分子量アディポネクチン多量体の生成に強い影響を及ぼさずに、中分子量及び低分子量アディポネクチン多量体の生成を抑制することが明らかとなった。
【実施例2】
【0039】
一方、図6に示されるように、3-ヒドロキシ酪酸を投与したところ、アディポネクチン多量体の組成比には大きな差異がなく、上述したように総量が減ずることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、アディポネクチンの分泌を効果的に抑制し、アディポネクチンの分泌を調節できるアディポネクチン分泌調節剤を提供する。本発明のディポネクチン分泌調節剤は、冠動脈疾患における高アディポネクチン濃度、又は、過剰な血中アディポネクチンの存在による骨形成の抑制、或いは骨密度の低下のようなアディポネクチンに起因する疾患、症状の予防、緩和、又は改善剤として、更には、該分泌調節剤による、体重調節による抗肥満作用を有する用途剤として使用することできる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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