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明細書 :親油性分子で表面修飾された温度応答性磁性微粒子および該微粒子と両親媒性分子を含むリポソーム様構造体を形成する組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5565546号 (P5565546)
公開番号 特開2010-066200 (P2010-066200A)
登録日 平成26年6月27日(2014.6.27)
発行日 平成26年8月6日(2014.8.6)
公開日 平成22年3月25日(2010.3.25)
発明の名称または考案の名称 親油性分子で表面修飾された温度応答性磁性微粒子および該微粒子と両親媒性分子を含むリポソーム様構造体を形成する組成物
国際特許分類 G01N  33/553       (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI G01N 33/553
G01N 33/53 W
請求項の数または発明の数 12
全頁数 15
出願番号 特願2008-234579 (P2008-234579)
出願日 平成20年9月12日(2008.9.12)
審査請求日 平成23年9月1日(2011.9.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】307014555
【氏名又は名称】北海道公立大学法人 札幌医科大学
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
発明者または考案者 【氏名】小海 康夫
【氏名】相馬 仁
【氏名】江口 優
【氏名】大西 徳幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100106622、【弁理士】、【氏名又は名称】和久田 純一
【識別番号】100089244、【弁理士】、【氏名又は名称】遠山 勉
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
【識別番号】100131392、【弁理士】、【氏名又は名称】丹羽 武司
【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
【識別番号】100131392、【弁理士】、【氏名又は名称】丹羽 武司
審査官 【審査官】海野 佳子
参考文献・文献 特表平08-500700(JP,A)
特開2007-112904(JP,A)
国際公開第2008/001868(WO,A1)
特開2004-251794(JP,A)
調査した分野 G01N 33/48-33/98

特許請求の範囲 【請求項1】
鉄酸化物とポリアルキレンイミンとの複合体からなる磁性微粒子であり、該磁性微粒子の表面が温度応答性高分子および親油性分子で修飾された、有機溶媒に分散し、温度に応答して凝集して磁気による回収が可能な温度応答性磁性微粒子。
【請求項2】
前記鉄酸化物が、マグネタイト、フェライト、ヘマタイトおよびゲーサイトから選択される少なくとも一種類である、請求項1に記載の磁性微粒子。
【請求項3】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項1または2に記載の磁性微粒子。
【請求項4】
前記温度応答性高分子が、下限臨界溶液温度または上限臨界溶液温度を有する高分子である、請求項1~3のいずれかに記載の磁性微粒子。
【請求項5】
前記温度応答性高分子が、N-イソプロピルアクリルアミドとN-t-ブチルアクリルアミドとの共重合体である、請求項1~3のいずれかに記載の磁性微粒子。
【請求項6】
前記親油性分子が、炭化水素またはコレステロールである、請求項1~5のいずれかに記載の磁性微粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の磁性微粒子と両親媒性分子を含む組成物であり、水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成する組成物。
【請求項8】
前記両親媒性分子が、リン脂質、糖脂質、コレステロールから選ばれる一種またはそれ以上である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の磁性微粒子と両親媒性分子を含むキットであり、水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成させるためのキット。
【請求項10】
前記両親媒性分子が、リン脂質、糖脂質、コレステロールから選ばれる一種またはそれ以上である、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
請求項1~6のいずれかに記載の磁性微粒子と両親媒性分子を用いて水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成させる工程、該リポソーム様構造体と試料を混合して該リポソーム様構造体上の両親媒性分子に試料中の両親媒性分子結合物質を結合させる工程、リポソーム様構造体を磁集する工程、および該結合物質を検出する工程、を含む、両親媒性分子結合物質の検出方法。
【請求項12】
前記両親媒性分子がリン脂質であり、前記結合物質がアポE(ApoE)またはアネキシン(Annexin)である、請求項11に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、親油性分子で表面修飾された温度応答性磁性微粒子およびそれと両親媒性分子を含む水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成する組成物並びにそれを用いた両親媒性分子結合物質を検出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病態の分子マーカーの検索は、疾病の診断や予後、更には早期発見のために有用である。特に血漿マーカーは、簡便な方法で診断や治療効果の評価などに応用可能である。
体液(血液など)には、さまざまな病態を反映する分子マーカーが存在するが、その存在量は微量で、体液中の脂質成分と結合している可能性がある。
【0003】
例えば、Ca2+-ホメオスタシスの障害(Ca2+-ストレス)では、Ca2+-結合タンパク質を含むタンパク質分子が、細胞から分泌や漏出することが予測されており、それらを捕捉し分析することが有効であると考えられている。このCa2+-結合タンパク質は酸性リン脂質に結合することが知られている。
また、神経細胞障害の指標となる分子マーカーは神経細胞から分泌後、血液脳関門を通過して血管に出現することが予想されている。一般に疎水性タンパク質は、血液脳関門を通過しやすく、脂質との相互作用を有する可能性も高いことから、脂質と疎水性タンパク質とが結合した脂質結合物質を解析することは、疾病の発見のために有効と考えられる。
このように、脂質結合物質の解析は重要であるが、体液中の脂質結合物質は解析が難しく、選択的に血漿などに含まれる微量の脂質結合物質を安定かつ効果的に濃縮するための方法が要望されていた。
【0004】
脂質結合物質を単離するためにリポソーム(以下、「MLV」と略すことがある。)を作製する方法が知られている。この方法では、有機溶媒に溶解したリン脂質を乾固後、水系溶媒を加え、ボルテックスミキサー等で振盪し作製する。このリポソームの大きさは不均一で、従って表面積の大きさは調製によって異なる。また、リポソーム同士が会合を作りやすいため、ボルテックスミキサーでの攪拌やピペッティングが必要で、分散に手間と時間を要する。従って、脂質結合物質を補足する全工程に要する時間、再現性に問題を抱える。
また、MLVではない単層膜リポソーム(SUV、LUV)は、保存過程で融合やMLV形成を起こしうる不安定さを持っている。
【0005】
一方、生体試料中の標的物質を分離して検出する方法として、磁性微粒子を用いる方法が提案されている。
水溶液の状態で下限臨界溶液温度(以下「LCST」と記述する。)を示すポリイソプロピルアクリルアミドや上限臨界溶液温度(以下「UCST」と記述する。)を示すポリグリシンアミドなどの温度応答性高分子を、粒径が100~200nm程度のデキストランなどの多価アルコールとマグネタイトを主成分とした磁性微粒子に固定した温度応答性磁性微粒子が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1および2参照)。
そして、前記温度応答性磁性微粒子に抗体、抗原などを固定化した温度応答性磁性微粒子を用い、種々の生体分子や微生物の分離を行う試みがなされており、ミクロンサイズの粒子と比較して、より高い結合容量や反応性を示すことが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、ここで開示されているのは主に水溶性の物質の検出であり、脂質結合物質の検出に関しては開示されていない。
【0006】
特許文献3には、カチオン性官能基を有する物質、水酸基を有する物質および磁性を有する物質を共有結合または物理吸着により複合化させた水溶性のカチオン性磁性微粒子が開示されており、カチオン性官能基を有する物質としてポリエチレンイミンが例示されている。しかしながら、これは多価アルコールなどの水酸基を有する物質を必須成分とし、それにカチオン性官能基を有する物質を結合させたものであり、また、温度応答性高分子や炭化水素鎖で表面修飾することについては開示されていない。
また、ここで開示されているのは主にカチオン性官能基を介してウィルス等のリン脂質ベシクルを分離する方法であって、脂質二重膜を利用して脂質結合物質の検出や分離を行うことは開示されていない。

【特許文献1】特開2005-082538号公報
【特許文献2】特開2007-056094号公報
【特許文献3】特開2007-112904号公報
【非特許文献1】アプライドマイクロバイオロジーアンドバイオテクノロジー(Appl.Microbiol.Biotechnol.)1994年、41巻、99~105頁
【非特許文献2】ジャーナルオブファーメンテーションアンドバイオテクノロジー(Journal of fermentation and Bioengineering)1997年、84巻、337~341頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような公知の温度応答性磁性微粒子は、水溶液中では安定した分散状態であるが、メタノール、エタノール、クロロホルム、メチルクロライド、またはそれらの混合溶媒中では安定した分散状態にはならない。温度応答性磁性微粒子表面に脂質ドメインを構築するためには、温度応答性磁性微粒子が、これら溶媒に分散していなければならない。そのため、前記温度応答性磁性微粒子は、脂質ドメインを構築するための最適な担体ではない。
一方、有機溶媒に分散する磁性微粒子を任意の脂質と混合し、その後、有機溶媒を乾燥し、次に再び、水系の溶媒に分散する過程で磁性微粒子の表面上に脂質ドメインを構築するような磁性微粒子単体は存在せず、脂質結合物質を効率よく検出する方法はほとんど知られていない。
【0008】
本発明は、脂質ドメイン構築の場を提供でき、有機溶媒に分散し、温度に応答して凝集して磁気による回収が可能な温度応答性磁性微粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、金属酸化物とポリエチレンイミンとの複合体からなる磁性微粒子の表面を温度応答性高分子および親油性分子で修飾することにより、有機溶媒に分散することができ、かつ、温度に応答して凝集して磁気による回収が可能な磁性微粒子が得られることを見いだした。また、この微粒子にリン脂質などの両親媒性分子をコートすることで、リポソーム様構造体を得ることができ、これを用いて血漿などに含まれる親油性分子結合物質を分離したり、検出したりすることができることを見いだして本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)鉄酸化物とポリアルキレンイミンとの複合体からなる磁性微粒子であり、該磁性微粒子の表面が温度応答性高分子および親油性分子で修飾された、磁性微粒子(以下、本発明の磁性微粒子ともよぶ)。
(2)前記鉄酸化物が、マグネタイト、フェライト、ヘマタイトおよびゲーサイトから選
択される少なくとも一種類である、(1)の磁性微粒子。
(3)ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、(1)または(2)の磁性微粒子。
(4)前記温度応答性高分子が、下限臨界溶液温度または上限臨界溶液温度を有する高分子である、(1)~(3)のいずれかの磁性微粒子。
(5)前記温度応答性高分子が、N-イソプロピルアクリルアミドとN-t-ブチルアクリルアミドとの共重合体である、(1)~(3)のいずれかの磁性微粒子。
(6)前記親油性分子が、炭化水素またはコレステロールである、(1)~(5)のいずれかの磁性微粒子。
(7)(1)~(6)のいずれかの磁性微粒子と両親媒性分子を含む組成物であり、水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成する組成物。
(8)前記両親媒性分子が、リン脂質、糖脂質、コレステロールから選ばれる一種またはそれ以上である、(7)の組成物。
(9)(1)~(6)のいずれかの磁性微粒子と両親媒性分子を含むキットであり、水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成させるためのキット。
(10)前記両親媒性分子が、リン脂質、糖脂質、コレステロールから選ばれる一種またはそれ以上である、(9)のキット。
(11)(1)~(6)のいずれかの磁性微粒子と両親媒性分子を用いて水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成させる工程、該リポソーム様構造体と試料を混合して該リポソーム様構造体上の両親媒性分子に試料中の両親媒性分子結合物質を結合させる工程、リポソーム様構造体を磁集する工程、および該結合物質を検出する工程、を含む、両親媒性分子結合物質の検出方法。
(12)前記両親媒性分子がリン脂質であり、前記結合物質がアポE(ApoE)またはアネキシン(Annexin)である、(11)の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の親油性分子で修飾された温度応答性磁性微粒子は、その表面をさまざまな種類のリン脂質や糖脂質などの両親媒性分子でコートでき、安定な人工脂質ドメイン(リポソーム様構造)を作ることができる。この温度応答性磁性微粒子-親油性分子-両親媒性分子からなるリポソーム様構造体を用いることで、例えば、脂質結合タンパク質の調製や解析を行うことができる。さらには、血液の脂質結合分画を調製することで、微量成分を濃縮し、その中に含まれうる疾患マーカーの探索や疾患の早期診断への応用が期待できる。
【0012】
本発明の微粒子を用いて得られるリポソーム様構造体は、均一なプローブであり、微粒子であるため、リポソーム(MLV)と比べてより大きな表面積を持つことになり、標的分子群の捕捉効率の上昇を図ることができる。また、プローブ表面(外層)の脂質分子種を簡単に変えることが可能で種々の条件を用意することが容易になる。
【0013】
本発明の微粒子には温度応答性高分子が結合しているため、温度に応答して効率よく分散・回収ができる。その結果、ばらつきの少ない結果が得られる。また、自動化することにより多数の検体処理が可能である。
本発明の磁性微粒子は鉄酸化物とポリアルキレンイミンとの複合体からなるため、凍結乾燥処理後も、溶媒への分散性を維持しており、温度応答機能を失うことはない。したがって、再利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の磁性微粒子は、鉄酸化物とポリアルキレンイミンとの複合体からなり、その表面が温度応答性高分子および親油性分子で表面修飾された磁性微粒子である。鉄酸化物とポリアルキレンイミンとの複合体は他の無機物や有機物を含んでもよいが、デキストランなどの多価アルコールを含まないことが好ましい。
鉄酸化物としては、マグネタイト、フェライト、ヘマタイトおよびゲーサイトなどが挙げられ、マグネタイトがより好ましい。
ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミンやポリプロピレンイミンなどが挙げられ、ポリエチレンイミンがより好ましい。ポリアルキレンイミンの数平均分子量は好ましくは600~70,000である。
鉄酸化物とポリアルキレンイミンとの複合体は、水中で鉄酸化物とポリアルキレンイミンを混合することによって得ることができる。pH3~6で複合体を形成することが好ましく、pH4~5であることがより好ましい。
【0015】
本発明の磁性微粒子のキュムラント解析平均粒径は、50~500nmであることが好ましく、80~200nmであることがより好ましい。
【0016】
本発明に用いられる温度応答性高分子は、温度変化に応答して構造変化を起こし、凝集と分散が調整できる高分子である。温度応答性高分子としては、上限臨界溶液温度(以下「UCST」と記述することがある。)を有する高分子と、下限臨界溶液温度(以下「LCST」と記述することがある。)を有する高分子が存在するが、操作性などの点からLCSTを有する高分子がより好ましい。
【0017】
LCSTを有する高分子としては、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルモルホリン、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メタクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルモルホリン等のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体から選ばれる少なくとも1種のモノマーを重合して得られるポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテル、(ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル誘導体;(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート類;及び(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(メタ)アクリレート類等のポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0018】
本発明では、N-イソプロピルアクリルアミドとN-t-ブチルアクリルアミドとの共重合体がさらに好ましく利用できる。
【0019】
UCSTを有する高分子としては、アクリロイルグリシンアミド、アクリロイルニペコタミド、及びアクリロイルアスパラギンアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを重合して得られるホモポリマーまたはコポリマー等を挙げることができる。
【0020】
LCSTを有する高分子、UCSTを有する高分子ともに、重合または共重合するモノマーの種類、割合を変えることでLCSTまたはUCSTを制御できるため、使用する温度に合わせたポリマー設計が可能である。
【0021】
本発明に好適に用いることのできる温度応答性高分子の重合度は、通常50~10000である。
【0022】
温度応答性高分子の製造方法としては、上記モノマーを有機溶媒または水に溶解し、不活性ガスで系中を置換した後、重合温度まで昇温し、有機溶媒中であればアゾビスイソブ
チロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、水系であれば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等の重合開始剤を添加し、攪拌下加熱を続けることにより得ることができる。その後、貧溶媒中で再沈殿を行い、析出したポリマーをろ取したり、ポリマーを凝集させる温度変化刺激を与えて凝集させ、遠心によりポリマーを分離する等の手法で、製造したポリマーを精製することができる。
【0023】
磁性微粒子に温度応答性高分子を結合させる方法としては、温度応答性高分子自身の、あるいは温度応答性高分子に導入された反応性の官能基と、ポリアルキレンイミンのイミノ基とを反応させて共有結合を形成させる方法などが挙げられる。このようにして温度応答性高分子で表面修飾された磁性微粒子を得ることができる。
【0024】
本発明の磁性微粒子は、その表面に、さらに親油性分子が結合したものである。親油性分子は有機溶媒に親和性をもつ分子であればよく、炭化水素やコレステロールが例示される。
ここで、炭化水素は飽和炭化水素でもよいし、不飽和炭化水素でもよい。炭化水素の長さは好ましくは炭素数5~25である。炭化水素を磁性微粒子の表面に導入する方法としては、例えば、脂肪酸を用い、該脂肪酸のカルボキシル基と磁性微粒子を構成するポリアルキレンイミンのイミノ基を反応させてアミド基を形成させることにより導入する方法が挙げられる。脂肪酸としては、任意に選択することができるが、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が例示される。
コレステロールを導入する方法としては、コレステロールの水酸基を1,1’-カルボニルジイミダゾールを用いて活性化し、ポリアルキレンイミンのイミノ基と反応させる方法、水酸基にカルボキシル基を導入し、このカルボキシル基とポリアルキレンイミンのイミノ基を反応させてアミド基を形成させることにより導入方法、または、水酸基をアミノ基に置換し、ポリアルキレンイミンのイミノ基と架橋するという方法が挙げられる。コレステロールの水酸基にカルボキシル基を導入する方法としては、無水コハク酸と反応させる方法または、水酸基をアミノ基に置換し、無水コハク酸を反応させカルボキシル基を導入する方法がある。
【0025】
磁性微粒子に導入される親油性分子と温度応答性高分子との重量比は、0.5:1~5:1が好ましく、1.5:1~2:1がより好ましい。親油性分子と温度応答性高分子はポリアルキレンイミンのイミノ基を介して別々に導入されてもよいし、同時に導入されてもよい。
【0026】
磁性微粒子表面に修飾される温度応答性高分子層および親油性分子層の厚みは、0.1~100nmであることが好ましく、1.0~50nmであることがより好ましい。
【0027】
本発明の磁性微粒子は、有機溶媒に分散することができる。本発明の磁性微粒子を分散させる有機溶媒としては、クロロホルム/メタノール(容量比で2:1)混合液などが挙げられる。
【0028】
本発明の磁性微粒子を有機溶媒に分散させ、両親媒性分子と混合乾固後、再び水系溶媒に分散することで、本発明の磁性微粒子と両親媒性分子とからなるリポソーム様構造体を形成する組成物が得られる。
ここで、両親媒性分子は、疎水性基と親水性基の両方を含む物質であればよいが、リン脂質、コレステロール、糖脂質、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
リポソーム様構造体は、図1に示すように、磁性微粒子からなるコア、コアに結合した親油性分子からなる内側の膜、および、親油性分子側に疎水性基、水相側に親水性基が来るように配置された両親媒性分子からなる外側の膜によって構成される。
【0029】
本発明のキットは、本発明の磁性微粒子と両親媒性分子を含むキットであって、水系溶媒中でリポソーム様構造体を形成させるためのキットである。本発明のキットはさらに、後述のような両親媒性分子検出用の試薬を含むものであってもよい。
【0030】
上記リポソーム様構造体を形成する組成物は、選択する両親媒性分子の種類に応じて様々な脂質結合物質を検出したり、単離したりするために使用することができる。
例えば、両親媒性分子としてリン脂質を結合させた場合、本発明の磁性微粒子はリン脂質結合物質を検出したり、単離したりするために使用することができる。検出対象に応じて、リン脂質を構成する脂質の種類や組成を変化させることもできる。
また、両親媒性分子としてコレステロールを結合させた場合、本発明の磁性微粒子はコレステロール結合物質を検出したり、単離したりするために使用することができる。また、両親媒性分子として糖脂質を結合させた場合、本発明の磁性微粒子は糖脂質結合物質を検出したり、単離したりするために使用することができる。
【0031】
本発明の磁性微粒子と両親媒性分子を用いて試料中の検出対象物質(両親媒性分子結合物質)を分離する方法は、(1)磁性微粒子と両親媒性分子からなるリポソーム様構造体と試料とを混合する工程、及び(2)試料中の両親媒性分子結合物質が吸着したリポソーム様構造体を磁力により回収する工程、を含む。
【0032】
本発明の磁性微粒子と両親媒性分子とからなるリポソーム様構造体の回収に用いる磁石等の磁力は、用いる磁性微粒子の有する磁力の大きさ等によって異なる。磁力は、目的の磁性微粒子を磁集可能な程度の磁力を適宜使用できる。磁石の素材には、例えばマグナ社製ネオジ磁石が利用できる。磁性微粒子の表面に温度応答性高分子が固定されていることで、分散状態では回収困難なナノサイズの磁性微粒子を意図的に凝集させて、回収率を高めることが可能になる。
【0033】
試料中の検出対象物質を検出する方法は、(1)、(2)の工程の後に、さらに(3)リポソーム様構造体上の両親媒性分子に吸着した前記検出対象物質を検出する工程、を含む。
【0034】
以下に、検出対象物質としてリン脂質結合タンパク質を、蛍光色素を用いた抗体染色法により検出及び測定する例を示す。(a)リン脂質(両親媒性分子)と温度応答性高分子表面修飾磁性微粒子から形成されるリポソーム様構造体と、検出対象物質であるリン脂質結合タンパク質を含む検体を混合し、反応容器中で反応させる。(b)該リポソーム様構造体を磁石により反応容器壁に磁集し、検体中の不要成分を含む液体部分を除去する。洗浄バッファーを加え、磁石を外してリポソーム様構造体を再分散する。さらに、磁集し、洗浄バッファーを除く。同様な操作を繰り返し、リポソーム様構造体を洗浄する。(c)検出及び測定しようとするリン脂質結合タンパク質を認識する蛍光標識抗体を反応容器中で反応させる。(d)リポソーム様構造体を磁石により反応容器壁に磁集し、蛍光色素溶液中の過剰成分を含む液体部分を除去し、磁石を外してリポソーム様構造体を再分散する。同様な操作を繰り返し、リポソーム様構造体を洗浄する。(e)リポソーム様構造体に結合した蛍光色素の蛍光強度を測定する。
【0035】
この例では検出試薬として、抗原を認識する蛍光色素標識抗体を使用し、蛍光を測定する方法を例として示したが、放射ラベルした抗体を用いて放射能を測定する方法、西洋ワサビペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した抗体及び酵素の基質である発光または発色試薬を用いて発光または発色強度を測定する方法等各種方法が適用できる。
2次元電気泳動やSDS-PAGEなどの電気泳動で検出してもよく、電気泳動と抗体
検出を組み合わせて検出してもよい。
【0036】
上記のような分離方法または検出方法は、臨床診断に利用される各種物質の分離、検出及び定量に好適に使用できる。具体的には、例えば、血液などの体液、組織、生体膜等に含まれるリン脂質結合タンパク質、糖脂質結合タンパク質、コレステロール結合タンパク質などの脂質結合物質を挙げることができる。
【0037】
ApoE遺伝子にはε2、ε3、ε4の3つの対立遺伝子(アリル)があり、ApoEタンパク質には、それぞれに対応するApoE2、ApoE3、ApoE4の3つのアイソフォームが存在する。これらのアイソフォーム間には、112位と158位のアミノ酸に違いがある。ApoE3は正常型(Wild Type)であり、ApoE4はアルツハイマー病(AD)の危険因子と見なされている。このApoEタンパク質は、脂質結合タンパク質であることから、通常の方法では検出が難しい。
本発明の磁性微粒子とリン脂質から形成されるリポソーム様構造体を用いてヒト血漿中のApoEタンパク質を特異的に吸着して解析し、そのアイソフォームを判別することにより、アルツハイマー病の診断に有用なデータを得ることができる。
【0038】
神経培養細胞からCa2+-障害によって分泌される脂質結合タンパク質として、脂質・Ca2+-結合タンパク質であるAnnexin A5が発見された。抗Annexin A5モノクローン抗体を用いて、ヒト血漿中のAnnexin A5を定量した結果、健常人に比べて、認知症患者で有意に上昇していることが判明し、Annexin A5が認知症の分子マーカーであることが報告された(大川浩子他 痴呆の分子マーカー 血中に出現するカルシウム結合蛋白質アネキシンを指標にして 老年精神医学会雑誌 2003; 14: 227-235; Sohma H et al., Elevation of plasma level of annexin A5 in Alzheimer’s disease. Alzheimer's Disease: New Advances (Proceedings of 10th International Conference on Alzheimer's Disease and Related Disorders. 2006; pp145-151)。
本発明の修飾磁性微粒子とリン脂質とから形成されるリポソーム様構造体を用いてヒト血漿中のAnnexin A5を特異的に吸着して定量することにより、認知症の診断に有用なデータを得ることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
(マグネタイトの調製) 200ml容のフラスコに、塩化第二鉄・六水和物(1.0mol)及び塩化第一鉄・四水和物(0.5mol)混合水溶液を100ml入れ、メカニカルスターラーで攪拌し、この混合溶液を50℃に昇温した後、これに28重量%アンモニア水溶液5.0mlを滴下し、1時間程度攪拌した。この操作で、平均粒径が約5nmのマグネタイトが得られた。
【0041】
(マグネタイト-ポリエチレンイミン複合体の調製)
10重量%マグネタイト水溶液10mlとポリエチレンイミン(数平均分子量600)5gを混合し、超音波処理をしながら、氷浴中で1時間分散処理をした。磁気分離により、過剰なポリエチレンイミンを除去した。10mlの水を添加し再分散後、1mM 塩酸水溶液で分散液のpHを4にすることで、粒子径が約70nmのマグネタイト-ポリエチレンイミン複合体を得た。
【0042】
(ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド-co-N-t-ブチルアクリルアミド-co-アクリル酸共重合体の調製)
200mlの三口フラスコに、N-イソプロピルアクリルアミド0.75g、N-t-ブチルアクリルアミド0.28gおよびアクリル酸15mgを精製水(ミリポア社製純水
製造装置「Direct-QTM」によって精製された導電率18MΩcmの水であり、MillQ水と呼ばれることもある。)100mlに溶解し、30分間窒素置換した。その後、テトラメチルエチレンジアミン0.1mlおよびペルオキソ二硫酸アンモニウム150mgを加えることにより重合反応を行った。3時間の反応の後、分画分子量10,000の透析膜により精製を行い、凍結乾燥によりポリ-N-イソプロピルアクリルアミド-co-N-ビオチニル-N’-メタクロイルトリメチレンアミド-co-アクリル酸共重合体0.89gを得た。
【0043】
(温度応答性磁性微粒子の調製)
マグネタイト-ポリエチレンイミン複合体300mgを100mM MESバッファー(MES:2-(N-Morpholino)ethanesulfonic Acid、pH4.75)30mlに分散した(分散液)。この分散液を超音波により粒子径約70nmに分散させた。また、一方でポリ-N-イソプロピルアクリルアミド-co-N-ビオチニル-N’-メタクロイルトリメチレンアミド-co-アクリル酸共重合体100mgを、100mM MESバッファー10mlに溶解し、そこへ、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDAC:1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide, hydrochloride) 100mgを添加し、30分反応させた(ポリマー液)。その後、分散液とポリマー液とを溶解し、6時間の反応の後、水により2回洗浄を行い温度応答性磁性微粒子を得た。得られた温度応答性磁性微粒子の平均粒径は、大塚電子株式会社社製レーザーゼーター電位計ELS-8000で測定したところ、約105nmであった。得られた温度応答性磁性微粒子をEYELA社製凍結乾燥機により凍結乾燥を行った。
【0044】
(ミリスチン酸スクシンイミドエステル調製)
ミリスチン酸2gをクロロホルム10mlに溶解した。一方で、N-ヒドロキシスクシンイミド1.5gとジシクロヘキシルカルボジイミド2.7gとをジメチルホルムアミド5mlに溶解した。これらのクロロホルム溶液とジメチルホルムアミド溶液を混合し、5時間反応させた。発生したジシクロヘキシルウレア(DCウレア)をろ過により除去し、ろ液を減圧濃縮することでスクシンイミドエステル化ミリスチン酸を得た。
【0045】
(有機溶媒に分散する温度応答性磁性微粒子:ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子)
凍結乾燥した温度応答性磁性微粒子10mgを分取し、ジメチルスルホキシド1mlに分散し、ここにミリスチン酸スクシンイミドエステル0.5gを含むクロロホルム溶液0.5mlを加え12時間反応させた。反応液を15000rpmで遠心分離し、沈降物をクロロホルムに分散した。さらに15000rpmで遠心分離し、クロロホルム:メタノール(容量比で2:1)混合溶媒に分散し、有機溶媒に分散する磁性微粒子を得た。得られた温度応答性磁性微粒子の平均粒径は、大塚電子株式会社社製レーザーゼーター電位計ELS-8000で測定したところ、約143nmであった。
【0046】
(有機溶媒に分散する磁性微粒子へのリン脂質導入:リポソーム様構造体の形成(図1、2)
上記ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とリン脂質(容量比でクロロホルム:メタノール=2:1に溶解したもの)を混合し、窒素ガスでエバポレートした。溶媒(50mM Hepes (pH7.5), 0.15M NaCl)を加えて、超音波処理(20分を3回)を行い分散させた。分散液を室温にし、室温で10分間、ネオジウム磁石により磁気分離した。分離物に溶媒(50mM Hepes (pH7.5), 0.15M NaCl)を加えて軽く、ボルテックスミキサーで攪拌後、氷中で5分磁気分離し、その後さらに10分間室温で磁気分離を行った。分離物に溶媒(50mM Hepes (pH7.5), 0.15M NaCl)を加えて軽く、ボルテックスミキサーで攪拌し、ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とリン脂質からなるリポソーム様構造体を調製した。これを4℃保存した。
【0047】
(濁度測定にもとづく導入されたリン脂質(PL)量の検討)
上記ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子1ml(10mg/ml)にホスファチジルセリンのクロロホルム溶液(10mg/ml)を任意の量添加していき、窒素ガスにより乾燥し、溶媒(50mM Hepes (pH7.5), 0.15M NaCl)にて再分散を行った。分散液を室温にて磁気分離し、上清の350nmおよび660nmの吸光度を測定した(図3)。その結果、図3中、矢印は、ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とホスファチジルセリン重量比が1:1を示している。ホスファチジルセリン添加量がこの量までは、濁度の変化は認められず、すなわちほとんどが磁性微粒子にコートされたと考えられる。一方、ホスファチジルセリン添加量をさらに増大させていくと濁度が上昇し始めた。これは余剰PLの増加によるものと推測された。以上の結果から重量比約1:1でミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とPLが結合すると算出された。
【0048】
(結合したPLの直接定量にもとづく導入されたリン脂質量の検討)
(検量線の作成)
ホスファチジルコリン(PC)またはホスファチジルセリン(PS)を各0, 2, 5, 10,
20μgを取り、減圧乾燥した。10N H2SO4(0.25ml)を加え、インキュベートした(150℃、3時間)。2.3ml Ammonium Molybdate、0.1ml ANSA(1-amino-2-naphthol-4-sufonate)を加え、830nmの吸光度を測定し、検量線を作成した(図4)。
【0049】
(サンプルの測定)
上記のようにして作製したリポソーム様構造体(脂質はPC または PS)を1mg/mlの濃度に調整した後、10μlを取り、検量線作成と同様の方法で吸光度測定を行った。なお、リポソーム様構造体の作製は、ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子:PLの重量比が、1:1.5、1:3、1:5で行った。
その結果、リポソーム様構造体-PC(1:1.5)は、20μg:5.44μg; リポソーム様構造体-PC(1:3)は、20μg:8.22μg; リポソーム様構造体-PC(1:5)は、20μg:6.38μgと見積もられ、リポソーム様構造体-PS(1:1.5)は、20μg:9.75μg; リポソーム様構造体-PC(1:3)は、20μg:4.05μg; リポソーム様構造体-PC(1:5)は、20μg:7.33μgと見積もられた。
以上の結果より、温度応答性磁性微粒子にコートされるPLは、ばらつきが認められるが(温度応答性磁性微粒子:PC⇒1:0.33;温度応答性磁性微粒子:PS⇒1:0.35)、重量比は約1:0.35(磁性微粒子:PL)で結合すると考えられた。
【0050】
(リポソーム様構造体の結合タンパク質プロファイル)
(Ca2+/リン脂質(PL)結合タンパク質Annexin(リコンビナントタンパク質)を用いた検討)(タンパク質:リコンビナントアネキシン(rAnnexin A1, rAnnexin A4, rAnnexin A5, およびBSA (fatty acid free)のリポソーム様構造体への結合)

方法 (図5):
10ml の1mg/ml リポソーム様構造体(PC100は、PCが100重量%であることを示す。PC90PS10は、PCが90重量%であり、PSが10重量%である混合物を示す。PC80PS20は、PCが80重量%であり、PSが20重量%である混合物を示す。PC50PS50は、PCが50重量%であり、PSが50重量%である混合物を示す。PS100は、PSが100重量%であることを示す。これらの一種をリポソーム様構造体として使用する。以下、PCとPSの重量%については、同様に表記することができる。)と、各タンパク質 (1μg)に、10mM になるようにCaCl2を加え、氷上で1時間インキュベートした。その後、室温にし、10分間磁気分離した。上清を除去し、20mM Hepes (pH7.5)(0.1M NaCl, 2mM CaCl2)に分散し、5分間氷上でインキュベートした。室温で10分間磁気分離をした後、同様の洗浄操作を再度行った。10mM EGTA/10mM Hepes (pH7.5)に分散し、氷上で3分間インキュベートした。5分間室温で磁気分離した後
、上清を回収し、SDS-PAGEを行った。
rAnnexin A1,rAnnexin A4, またはrAnnexin A5を用いた結果(インキュベート1時間)を図6に示す。rAnnexin A1,rAnnexin A4, またはrAnnexin A5と、BSA の混合物 (各1μg) 用いた結果(インキュベート1時間)を図7に示す。その結果、異なるPL種(PCとPS)で異なる脂質結合タンパク質を分画できることがわかり、その結果、図8のようなプロファイルが推察できた。
【0051】
(結合のTime course)
また、rAnnexin A5 と BSA の混合物(各1μg)と、10ml (1mg/ml) ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とPS100を用いて、結合のtime courseをSDS-PAGEにより解析した。その結果を図9に示す。rAnnexin A5は即座に結合したのに対し、BSAは1時間以下のインキュベートでは結合はわずかであるが、3時間以上のインキュベートで結合するようになった。すなわち、アルブミンとの結合親和性はAnnexinに比べて弱いことが分かった。
【0052】
(血漿を用いた検討)
血漿(100μl)とPBS(865μl),リポソーム様構造体(PC100は、PCが100重量%であることを示す。PC90PS10は、PCが90重量%であり、PSが10重量%である混合物を示す。PC50PS50は、PCが50重量%であり、PSが50重量%である混合物を示す。または、PS100は、PSが100重量%であることを示す。これらの一種をリポソーム様構造体として使用する。)25μl (10mg/ml)に、10mMになるようにCaCl2を加え、氷上で1時間インキュベートした。その後、室温にし、10分間磁気分離した。上清を除去し、20mM Hepes (pH7.5)(0.1M NaCl,
2mM CaCl2)に分散し、5分間氷上でインキュベートした。室温で10分間磁気分離をした後、同様の洗浄操作を再度行った。10mM EGTA/10mM Hepes (pH7.5)に分散し、氷上で3分間インキュベートした。5分間室温で磁気分離した後、上清を回収し、2次元電気泳動(タンパク質Apply量が、リポソーム様構造体-PC100は13.6μgであり、リポソーム様構造体-PC90PS10は11.9μgであり、リポソーム様構造体-PC50PS50は13.1μgであり、リポソーム様構造体-PS100は17.5μgである。)を行った。その結果を図10に示す。PS含量が多いほど捉えられるアルブミン量は減少した。また、PS含量が多いほど見えるスポット(マイナースポット)が多くなった。
【0053】
(血漿成分濃縮用リポソーム様構造体の調製)
上記ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子0.1ml(1mg)とクロロホルム/メタノール(容量比で2:1)混合溶媒に溶かしたフォスファチジルセリン0.15mgとフォスファチジルコリン1.35mgとを混合し、窒素ガスで乾固した。水系溶媒A(50mM Hepes (pH7.5), 0.15M NaCl) 1mlを加えて、超音波処理(バスソニケーション、20分を3回)を行い分散した。この分散液を室温にし、室温で10分間磁気分離した。上清を除き、再び溶媒Aを1ml加えて軽く、ボルテックスミキサーで攪拌した後、氷中で5分インキュベートし分散した。その後、10分間室温で磁気分離し、上清を除き、再び溶媒Aを1ml加えて軽く、ボルテックスミキサーで攪拌した後、これをリポソーム様構造体として用いた。使用まで4℃保存した。
【0054】
(リポソーム様構造体による血漿成分の濃縮)
血漿 100μlを865μlのPBSで希釈し、25μl(1mg/ml) リポソーム様構造体と10μlの1M CaCl2を加え、4℃で一晩インキュベートした。その後、室温にし、10分間磁気分離した。上清を除去し、20mM Hepes (pH7.5)(0.1M NaCl, 2mM CaCl2)に分散し、5分間氷上でインキュベートした。再び室温で10分間磁気分離をした後、同様の洗浄操作を再度行った。リン脂質結合画分抽出のために、100μl の10mM EGTA/10mM Hepes (pH7.5)を加え分散させ、氷上で3分間インキュベートした。5分間室温で磁気分離した後、上清を回収した。次にこの抽出液の2次元電気泳動を行った。
その結果(図11)、左上の血漿中にはApoEのアイソフォームであるApoE2とApoE3に由
来するスポット、左下には、ApoE3とApoE4に由来するスポット、右上図にはApoE2およびApoE4に由来するスポット、右下図にはApoE4のみに由来するスポットが得られた。以上より、ミリスチン酸修飾温度応答性磁性微粒子とリン脂質からなるリポソーム様構造体を用い、2次元電気泳動を行うことより、血漿中からApoEのアイソフォームを分離同定できるとこができた。さらに、質量分析、ELISAなどでより容易にApoEのアイソフォームを同定することができた。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】磁性微粒子と、それを用いたリポソーム様構造体の模式図。
【図2】磁性微粒子と両親媒性分子を混合してリポソーム様構造体を調製する手順を示す模式図。
【図3】加えたホスファチジルセリン(PS)の量に伴う、350nmおよび660nmの吸光度変化を示す図。
【図4】ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルセリン(PS)の検量線を示す図。
【図5】リポソーム様構造体を用いた脂質結合タンパク質の単離の手順を示す模式図。
【図6】リポソーム様構造体に対するアネキシンの結合を示す図(電気泳動写真)。リン脂質の組成は以下の通りである。レーン1:PC100;レーン2:PC90PS10;レーン3:PC80PS20;レーン4:PC50PS50;レーン5:PS100。
【図7】リポソーム様構造体に対するアネキシンと BSA の混合物の結合を示す図(電気泳動写真)。リン脂質の組成は以下の通りである。レーン1:PC100;レーン2:PC90PS10;レーン3:PC80PS20;レーン4:PC50PS50;レーン5:PS100。
【図8】BSAと各アネキシンのリポソーム様構造体に対する結合プロファイルを示す図。
【図9】PS100からなるリポソーム様構造体に対するrAnnexin A5 と BSA の混合物の結合のtime courseをSDS-PAGEにより解析した結果を示す図(電気泳動写真)。
【図10】リポソーム様構造体に対する血漿中の結合タンパク質を2次元電気泳動で解析した結果を示す図(電気泳動写真)。リン脂質の組成は以下の通りである。左上 PC100;右上 PC90PS10;左下 PC50PS50;右下 PS100。
【図11】ApoEのアイソフォームを判別するために、リポソーム様構造体に対する血漿中の結合タンパク質を2次元電気泳動で解析した結果を示す図(写真)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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