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明細書 :高分子タンニンの高粘性溶液及びゲルの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5608903号 (P5608903)
公開番号 特開2012-184285 (P2012-184285A)
登録日 平成26年9月12日(2014.9.12)
発行日 平成26年10月22日(2014.10.22)
公開日 平成24年9月27日(2012.9.27)
発明の名称または考案の名称 高分子タンニンの高粘性溶液及びゲルの製造方法
国際特許分類 C08J   3/03        (2006.01)
FI C08J 3/03 CFJ
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2011-046507 (P2011-046507)
出願日 平成23年3月3日(2011.3.3)
審査請求日 平成25年5月27日(2013.5.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】松尾 友明
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
審査官 【審査官】柴田 昌弘
参考文献・文献 特開2008-285458(JP,A)
特開2008-072961(JP,A)
国際公開第2006/085541(WO,A1)
調査した分野 C08J 3/00- 3/28
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子タンニン水溶液を、アルキルグリコシド系界面活性剤及びN-アシルアミノ酸系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤で処理することを含む高分子タンニンの高粘性溶液又はゲルの製造方法。
【請求項2】
高分子タンニンが縮合型タンニンである請求項1記載の方法。
【請求項3】
縮合型タンニンがカキタンニンである請求項2記載の方法。
【請求項4】
アルキルグリコシド系界面活性剤がアルキルチオグリコシドである請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
N-アシルアミノ酸系界面活性剤がN-ラウロイルサルコシンもしくはN-ステアロイルグルタミン酸又はそれらの塩である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
界面活性剤がn-ヘプチル-β-D-チオグルコシドもしくはN-ラウロイルサルコシンナトリウム、又はこれらの組み合わせである請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によって得られた高分子タンニン高粘性溶液を有機溶媒又は水含有有機溶媒で処理することを含む高分子タンニンゲルの製造方法。
【請求項8】
有機溶媒又は水含有有機溶媒による処理が水含有有機溶媒による透析である請求項7記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子タンニンの高粘性溶液及びゲルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチック等の有機材料の多くは石油などの化石資源を原料に製造されているが、その供給量には限りがある。また、プラスチックの廃棄物による深刻な環境汚染が指摘されている。このため、化石資源に代わる有機資源として天然高分子の利用が期待されている。
【0003】
タンニンは、植物の果実、葉、種子、樹皮、心材等から抽出される天然物であり、一般に皮なめし剤として用いられている環境に優しい物質である。タンニンには、ピロガロール系の加水分解型タンニンとカテコール系の縮合型タンニンがある。加水分解型タンニンとは単純型ポリフェノールカルボン酸のエステル縮合化合物であり、縮合型タンニンとはフラボノイド型ポリフェノールを構成成分とする重合体であり、近年はプロアントシアニジンポリマーとして同定されている。タンニンは植物の果実、葉、種子、樹皮、心材といったさまざまな組織や器官に含まれているが、加水分解型タンニンは双子葉植物の離弁花植物の比較的限られた局在であり、一方、縮合型タンニンは双子葉植物に限らずほとんどの樹木植物に局在している。そして、この樹木の心材や樹皮、及び果実に含まれるタンニンは古くから人々によって生活の様々な場面で利用されてきた。
【0004】
しかし、タンニンは、重金属、アルカロイド、タンパク質との強い結合力や消臭作用、抗酸化性など種々の特性を有している反面、水への溶解性や品質の不安定さ、安定した保存方法のなさから現在のところ用途が限られており、ほとんどが未利用資源となっている。このため、これらを産業的な原材料として有効利用できれば、有用な資源となると考えられ、本発明者は、これまでホウ酸塩、リン酸塩等とアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを用いたゲル化(特許文献1)、酵素によるゲル化(特許文献2)、過酸化水素及び金属ポルフィリン錯体を用いたゲル化(特許文献3)について報告している。
【0005】
しかしながら、作成されたゲルの品質や特性などが限られているため、使用用途が限定されるなどの問題点があり、異なる方法によるゲル化方法が望まれている。特に、高価な試薬や過激な試薬を使わずに、短時間で無臭かつ無色透明なゲルの作製が広く望まれている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2006/085541号パンフレット
【特許文献2】特開2008-72961号公報
【特許文献3】特開2008-285458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、従来とは異なる方法で高分子タンニンの高粘性溶液及びゲルを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題に鑑み研究を重ねた結果、本発明者は、高分子タンニン水溶液を、特定の界面活性剤で処理することにより、高分子タンニン高粘性溶液が得られ、この高粘性溶液から界面活性剤を除去することにより、高分子タンニンゲルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)高分子タンニン水溶液を、アルキルグリコシド系界面活性剤及びN-アシルアミノ酸系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤で処理することを含む高分子タンニンの高粘性溶液又はゲルの製造方法。
(2)高分子タンニンが縮合型タンニンである前記(1)に記載の方法。
(3)縮合型タンニンがカキタンニンである前記(2)に記載の方法。
(4)アルキルグリコシド系界面活性剤がアルキルチオグリコシドである前記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)N-アシルアミノ酸系界面活性剤がN-ラウロイルサルコシンもしくはN-ステアロイルグルタミン酸又はそれらの塩である前記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(6)界面活性剤がn-ヘプチル-β-D-チオグルコシドもしくはN-ラウロイルサルコシンナトリウム、又はこれらの組み合わせである前記(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記(1)~(6)のいずれかに記載の方法によって得られた高分子タンニン高粘性溶液を有機溶媒又は水含有有機溶媒で処理することを含む高分子タンニンゲルの製造方法。
(8)有機溶媒又は水含有有機溶媒による処理が水含有有機溶媒による透析である前記(7)に記載の方法。
(9)前記(1)~(6)のいずれかに記載の方法によって得られる高分子タンニン高粘性溶液。
(10)前記(1)~(8)のいずれかに記載の方法によって得られる高分子タンニンゲル。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来とは異なる方法で高分子タンニンの高粘性溶液及びゲルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カテキンの標準曲線を示す図である。
【図2】N-ラウロイルサルコシンナトリウムを添加したときのカキタンニン溶液の粘度変化を示す図である。
【図3】n-ヘプチル-β-D-チオグルコシドを添加したときのカキタンニン溶液の粘度変化を示す図である。
【図4】SDSを添加したときのカキタンニン溶液の粘度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
タンニンは、植物の果実、葉、種子、樹皮、心材等から抽出される天然物であり、環境に優しい物質である。タンニンには、ピロガロール系の加水分解型タンニンとカテコール系の縮合型タンニンがある。

【0013】
本発明に用いる高分子タンニンとは、植物の果実、葉、種子、樹皮、心材等から熱水やアルコール等で抽出されるポリフェノール重縮合体であり、渋みを呈し、多くのタンパク質と強く結合して沈殿を生じるものをいい、通常分子量は約2千~約100万であり、好ましくは分子量1万以上のものを用いる。本発明においては、加水分解型及びカテコール系の縮合型のいずれの高分子タンニンを用いてもよいが、カテコール系の縮合型タンニンが好ましい。高分子タンニンとしては、例えばケブラチョタンニン、ミモザタンニン、ワットルタンニン等の心材や樹皮に含まれる高分子タンニン;バナナ、リンゴ、カキ等の未熟果実に含まれる高分子タンニン;キャロブ豆、ブドウ等の未熟なサヤや種子に含まれる高分子タンニンが挙げられる。

【0014】
一般に「タンニン」と呼ばれる緑茶や紅茶に含まれるカテキン等のポリフェノールは低分子であるため、皮の鞣し作用はほとんどなく、タンパク質との結合も弱く、分子量もカテキンが290で、大きなものでも400から500であり、本発明に用いる高分子タンニンとは異なる。

【0015】
前記高分子タンニンは、原料から抽出後、通常は乾燥して粉末として用いられる。下記の実施例では、前記粉末の高分子タンニンを水に溶解したものを前記高分子タンニン水溶液として用いたが、原料からの抽出液をそのまま高分子タンニン水溶液として用いてもよい。

【0016】
高分子タンニンの原材料(例えば、柿渋や熱水抽出物)には、高分子タンニン以外に各種の糖、有機酸、アミノ酸等が含まれているため、必要に応じて精製して、これらの不純物を除去したものを用いることが好ましい。

【0017】
本発明において、高分子タンニン水溶液における高分子タンニン濃度は、通常0.5~25重量%であり、力学的特性や作業効率の点から、好ましくは2~15重量%、更に好ましくは4~10重量%である。

【0018】
本発明においては、高分子タンニン水溶液を、アルキルグリコシド系界面活性剤及びN-アシルアミノ酸系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤で処理することにより、高分子タンニンの高粘性溶液を製造することができる。
本発明において、高粘性溶液とは、処理前の高分子タンニン水溶液よりも粘度が高い溶液をいう。

【0019】
本発明に用いるアルキルグリコシド系界面活性剤とは糖と高級アルコールがグリコシド結合した非イオン(ノニオン)性界面活性剤であり、糖と高級アルコールがチオグリコシド結合したものもアルキルチオグリコシドも包含される。

【0020】
本発明に用いるアルキルグリコシド系界面活性剤としては、例えばn-オクチル-β-D-グルコシド、n-オクチル-β-D-マルトシド、n-デシル-β-D-グルコシド、n-デシル-β-D-マルトシド、n-ヘプチル-β-D-チオグルコシド、n-オクチル-β-D-チオグルコシド、n-ノニル-β-D-チオマルトシド、好ましくはn-ヘプチル-β-D-チオグルコシド、n-オクチル-β-D-チオグルコシド、n-ノニル-β-D-チオマルトシドが挙げられる。

【0021】
本発明に用いるN-アシルアミノ酸系界面活性剤としては、次式(I)で表されるものが挙げられる。
-CO-N(R)-CH(R)-COOM (I)
(式中、Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数7~21のアルキル基又はアルケニル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基もしくはアルケニル基を示し、Rは水素原子又は-(CH(Rは水素原子、水酸基又は-COOMを示し、pは1~4の整数を示す。)を示し、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカノールアミンを示す。)

【0022】
前記式(I)中、Rとしては、炭素数6~18のアルキル基が好ましい。Rとしては、水素原子、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、特に水素原子、メチル基が好ましい。Rとしては、水素原子、-(CHが好ましい。Mとしては、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアミンが好ましい。

【0023】
前記式(I)で表されるN-アシルアミノ酸系界面活性剤のうち、好ましいものとしては、N-ココイルグリシン、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミリストイルグルタミン酸、N-ステアロイルグルタミン酸、N-ラウロイルサルコシン(N-ラウロイル-N-メチルグリシン)、N-ラウロイル-β-アラニン、N-ミリストイル-β-アラニン、N-ラウロイルアスパラギン酸、N-ラウロイルセリン等;又はそれらの塩、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。なお、前記式(I)で表わされる化合物には、L体、D体、ラセミ体があるが、本発明においては、これらのいずれをも用いることができる。

【0024】
前記界面活性剤の反応溶液中の濃度は、通常0.1~15重量%、好ましくは0.5~10重量%、更に好ましくは1~5重量%である。

【0025】
処理温度は、通常3~30℃、好ましくは5~25℃であり、処理時間は、通常20分~24時間、好ましくは30分~12時間である。

【0026】
前記のようにして得られた高粘性溶液から界面活性剤を除去することにより、高分子タンニンゲルを得ることができる。

【0027】
高粘性溶液から界面活性剤を除去する方法としては、例えば高粘性溶液を有機溶媒又は水含有有機溶媒で処理、好ましくは水含有有機溶媒を用いて透析する方法が挙げられる。前記水含有有機溶媒における有機溶媒の濃度は、好ましくは30~90重量%、更に好ましくは50~80重量%である。

【0028】
前記有機溶媒としては、水混和性の有機溶媒であれば特に制限はなく、例えばアセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、好ましくはアセトン、エタノールが挙げられる。

【0029】
透析の処理温度は、通常2~30℃、好ましくは4~10℃であり、透析時間は、通常12~48時間、好ましくは12~30時間である。3、4時間おきに3回透析外液を交換すると透析の効果が高まる。透析後、溶液を適当な容器に移し、例えば、常温あるいは低温(冷蔵庫内)で通常1~7日間放置することにより、有機溶媒をゆっくりと気散させることにより高分子タンニンゲルを得ることができる。
本発明には、必要に応じ本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において濃度の単位「%」は、特に明示がない限り「重量%」を示す。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
1.カキタンニンの抽出と精製
<カキタンニンの抽出>
サンプルは2009年7月13日に鹿児島大学農学部付属唐湊果樹園で摘果した渋柿(品種:平種無)を用いた。
【実施例】
【0032】
カキタンニン(KT)の抽出は、以下のような方法で行った。
(1)まず包丁で果実の皮をむき、1センチ四方のダイズ状に切りジューサーを用いて果汁を絞り出した。
(2)その後果汁に含まれるKTの酸化防止のため0.5%となるようにL-アスコルビン酸を加えポリボトルに詰めて-20℃で冷凍保存した。
以下の実験では、この冷凍保存されたKT溶液を冷蔵庫や常温で自然解凍して用いた。
【実施例】
【0033】
<カキタンニンの精製>
カキタンニン(KT)溶液に含まれる比較的大きな夾雑物を除去するために、KT溶液約180mlを遠心チューブに取り大型冷却遠心機(RB-18IV)を用いて7500rpmで30分間遠心分離した。その上澄み液を遠心チューブに約35ml取り更に15000rpmで30分間遠心分離し、無色透明な上澄み液をサンプルとして用いた(やや薄黄色や薄緑色を呈することもある)。
【実施例】
【0034】
遠心分離により夾雑物を除去したKT溶液を、自動連続限外ろ過装置(マクロテック 株式会社)を用いて更に限外ろ過を施した。自動限外ろ過装置の特徴は、省力化と安定した純度の溶液が精製できることなどが挙げられる。原理は、精製する溶液に圧を加えて繰り返し限外ろ過するというものだが、そのろ過の繰り返しの過程では、水分減少による粘度上昇やろ過滞留が起こってしまうため、薄め液を定期的に自動補給しながら行った。
【実施例】
【0035】
本実施例で行ったKT溶液の限外ろ過では分子量1万以下の夾雑物を除去できるろ過膜を用いた。
まず、KT溶液250mlと特級エタノール(ナカライテスク)250mlの混合液を調製した。エタノールを混合させる目的は、ろ過膜にKTが付着し、ろ過が滞留することを防ぐためである。このKT溶液とエタノールの混合液500mlをサンプルとし(エタノール濃度50%が特に好ましい)、連続15回(ろ液が100mlになると1回とカウントされる)の限外ろ過を行った。また、100mlろ過されると50%のエタノールが入った薄め液タンクから100ml自動的に補水された。連続15回のろ過を行うために薄め液タンクには1.5L以上の50%エタノールを準備した。
【実施例】
【0036】
最終的にこの連続15回の限外ろ過によってKT溶液の夾雑物終濃度は、1回のろ過で100ml(20%)ずつ夾雑物が薄まっていくことになるので、
(80/100)15=0.03518
より夾雑物終濃度3.52%となった。通常、約70時間要した。ろ過の終了したKT溶液500mlを回収し、ロータリーエバポレータRII(BUCHI)でエタノールを蒸留除去した。最終液量は約250mlとなり、次にこのKT溶液の濃度を測定した。
【実施例】
【0037】
以下に濃度を規定すると同時に安定した品質を持つ高粘性カキタンニン溶液を作製するために、品質の規格化を実施した。精製したカキタンニン水溶液を高純度のRO水で希釈して1%として、以下の測定を行い、品質の確認を行った。用途によっては、この数値を超える試料は実験、あるいは、素材原料として用いないことを規定している。
精製カキタンニン:1%水溶液:無臭でかつほぼ無色透明である。
電気伝導度:188μS/cm、酸化還元電位:72.8mV、pH:6.6
5%水溶液の粘度:6.36cPの特性を持つ。
それ以外に、紫外部検出器を装備したゲル浸透クロマトグラフィーで高分子側にカキタンニン以外の高分子物質は検出されない。
【実施例】
【0038】
2.カキタンニン溶液のFolin-Ciocalteu法による濃度検定
(目的)
カテキンの標準曲線を用いてカキタンニン(KT)溶液の濃度を測定する。
【実施例】
【0039】
(実験方法)
ポリフェノールの還元性を利用して、アルカリ性でリンタングステン、モリブデン酸を還元して生じる青色を比色定量した。
【実施例】
【0040】
まず、カテキンの標準曲線を作成した。方法は、600μg/mlのカテキン(SIGMA)を10倍希釈して60μg/mlカテキンをつくり、表1の通りに試験管にそれぞれの試薬と共に加えた。フェノール試薬(F-C溶液)(ナカライテスク(株))はRO水を用いて50%に調製したもの、NaCOはRO水にて10%に調製したしたものを用いた。これを各3本ずつ、計18本の試験管に入れた。
【実施例】
【0041】
【表1】
JP0005608903B2_000002t.gif
【実施例】
【0042】
全ての試験管をvoltexにかけ1時間放置後、分光光度計(UVmini1240)を用いてOD760nmを測定し、吸光度の値から標準曲線を作成した(図1)。
【実施例】
【0043】
次に、このカテキンの標準曲線を用いてサンプルの濃度を測定した。方法は、まず測定したいKT溶液をRO水にて1000倍、2000倍、4000倍に希釈した。そして、各々の希釈率のKT溶液を試験管にそれぞれの試薬と共に表2の通りに加えた。これを各3本ずつ、計9本の試験管に入れた。また、コントロールとしてRO水を加えた試験管を1本用意した。
【実施例】
【0044】
【表2】
JP0005608903B2_000003t.gif
【実施例】
【0045】
全ての試験管をvoltexにかけ1時間放置後、分光光度計を用いてOD760nmを測定し、作成したカテキンの標準曲線から濃度を求め、最終的に補正係数をかけてタンニン濃度を計算した。
【実施例】
【0046】
3.界面活性剤の添加によるカキタンニン高粘性溶液の調製
前記1.において自動連続限外ろ過装置により精製したカキタンニン(KT)を用いて調製した。5.2%KT溶液に表3に示す各種界面活性剤を0%、1%、2%、4%となるように添加した。N-ラウロイルサルコシンナトリウム(NLS)においては、0%、1%、2%、4%、6%になるように添加した。また、n-ヘプチル-β-D-チオグルコシド(HTG)においては、0%、6%、8%になるように添加した。各濃度のサンプル量は2mlで、それぞれを試験管に用意した。コントロールは、RO水に前記と同じ濃度になるように界面活性剤を添加したものを用いた。界面活性剤を添加した全ての溶液をVORTEX-GENIE 2(エムエス機器(株))を用いて撹拌し、冷蔵庫で約30分間冷却した後、音叉振動式(SV-1H型)粘度計(エー・アンド・デイ(株))を用いて粘度を測定した。なお、測定温度は一律19.5℃で行った。
【実施例】
【0047】
【表3】
JP0005608903B2_000004t.gif
【実施例】
【0048】
結果を図2~4に示す。これらの図における「相対粘度」は、界面活性剤が無添加のときの粘度を1とした相対粘度である。
【実施例】
【0049】
NLS、HTG、SDS以外の界面活性剤はKT溶液に添加すると沈殿が生じたため測定できなかった。現在までに測定できた界面活性剤の中ではNLSの添加による粘度上昇が一番大きく、3~4%のときは無添加のときに比べ約100倍以上も上昇した。また、NLS添加による粘度上昇ほどではないが、HTGの添加による粘度上昇も観察された。8%のときの粘度は無添加のときに比べ、約3倍上昇した。SDSの添加では、4%のときの粘度は無添加のときに比べ、約1.3倍上昇した。このように、NLSあるいは類似界面活性剤を添加することにより、ほとんど品質を変化させずに高粘性のカキタンニン水溶液(無臭、無色透明)を作製することに成功した。
【実施例】
【0050】
また、NLSの添加により大きく粘度が上昇したKT溶液をしばらく冷蔵庫で放置したが、ゲルが形成されることはなかった。
【実施例】
【0051】
4.有機溶媒による高粘性溶液のゲル化
水含有アセトン(75%)で透析することによりカキタンニン(KT)の溶液中にあるN-ラウロイルサルコシンナトリウム(NLS)を除去した。
【実施例】
【0052】
前記1.において自動連続限外ろ過装置により精製したカキタンニン(KT)を用いて調製した5.2%KT溶液にNLSを添加し、その濃度が6%となるように調製した。高粘度状態にあるこの6%NLS-KT溶液10mlを75%アセトン(ナカライテスク)1150mlで約24時間透析した。透析方法は、まず分画分子量3,500の標準グレード再生セルロース膜(透析チューブ)(Spectrum Laboratories, Inc.)約12cmを15分間煮沸消毒し、片方の口を結び、透析膜の中をRO水で数回すすいだ。そして、6%NLS-KT溶液10mlをこのチューブに入れ、少し空気を入れた状態でもう一方の口をタコ糸で結んだ。最後に、この透析チューブを75%アセトンの入った1Lメスフラスコにビニルテープで吊るし、適度な速度で透析した。なお、透析チューブを吊るすときは75%アセトンの液面が6%NLS-KT溶液の液面よりも高い位置にくるように設置した。約24時間の透析後、溶液を試験管に移し、試験管の口を塞がずに常温放置した。また、条件を変えずに透析したKT溶液を市販のプラスチック容器に移し、試験管よりも空気に接する面積を大きくした状態で常温放置した。
【実施例】
【0053】
口の狭い試験管に移したKT溶液は、常温放置2日目から大きく粘度が上昇し、5日目には試験管を傾けてもKT溶液が流れないほどに粘度が上がり、弾力のあるゼリー状のものになった。そのまま放置し続けると更に弾力のあるものになった。このKT溶液は、ゲル化により褐変し薄黄色から薄赤茶色になったが、ゲル自体は透き通っていた。市販のプラスチック容器に移したKT溶液は、放置2日目には弾力のあるゼリー状のものになった。色はやはり薄黄色から薄赤茶色に変色していた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の方法によって得られる高粘性溶液は、繊維、紙や木材への塗料として、又は糸や紙、布への染料などとして利用でき、従来のタンニン水溶液を用いた場合よりも作業効率が高まり、耐久性に優れたものができる。また、防水、防虫、静菌、耐摩耗性、消臭効果などが期待されることから、各種容器へのコーティング剤、あるいは各種の生活化成品(歯磨き用の練り製品・湿布薬など)や化粧品としても利用できる。
【0055】
本発明の方法によって得られるゲルは、細かく砕いて飼料に添加することによって、ポリフェノール含量の高い抗酸化性飼料を家禽、家畜、ペットに与えることができ、ストレスの軽減化、血圧降下作用や疲労回復効果が期待できる。また、細菌、ウイルスの吸着除去フィルター、産業用水の浄化カラム及び飲料品の成分調整剤として利用することが期待できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3