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明細書 :個別化治療診断のためのマーカータンパク質絶対量の定量方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2012-197258 (P2012-197258A)
公開日 平成24年10月18日(2012.10.18)
発明の名称または考案の名称 個別化治療診断のためのマーカータンパク質絶対量の定量方法
国際特許分類 C07K   7/06        (2006.01)
G01N  27/62        (2006.01)
C07K   7/08        (2006.01)
FI C07K 7/06 ZNA
G01N 27/62 V
G01N 27/62 X
C07K 7/08
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 29
出願番号 特願2011-064145 (P2011-064145)
出願日 平成23年3月23日(2011.3.23)
発明者または考案者 【氏名】大槻 純男
【氏名】寺崎 哲也
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査請求 未請求
テーマコード 2G041
4H045
Fターム 2G041CA01
2G041EA04
2G041FA12
2G041GA09
2G041HA01
2G041JA02
2G041LA08
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045EA50
4H045FA15
要約 【課題】疾患の診断又は治療のための指標となるタンパク質を一斉に定量することができる、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)を用いた高感度なタンパク質の定量方法を提供すること。
【解決手段】被定量タンパク質のペプチド断片を調製する工程において、試料中の被定量タンパク質を、リシルエンドペプチダーゼを用いて断片化した後に、さらに、トリプシンを用いて断片化する。また、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)の液体クロマトグラフ部において30~70分の間に溶出されるペプチドを同定し、該ペプチドを定量対象ペプチドとして用いる。
【選択図】 なし
特許請求の範囲 【請求項1】
液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)によって、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量するために用いるペプチドであって、以下の工程[A]及び[B]により選択されることを特徴とするペプチド。
[A]以下の必須クライテリア(1)~(3)を満たすペプチドを選択する工程;
(1)前記疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質をトリプシンにより断片化することにより得られるペプチドであること;
(2)前記疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質に特異的なアミノ酸配列からなるペプチドであること;
(3)各アミノ酸における溶出時間パラメータを設定し、該溶出時間パラメータに基づいて、以下の条件(i)~(v)の液体クロマトグラフィによる予測溶出時間を算定したとき、該予測溶出時間が30~70分の範囲内であるペプチドであること;
(i)HPLC:Agilent 1200 HPLCシステム(アジレント・テクノロジー社製);
(ii)カラム:XBridge BEH130 C18、3.5μm、100x1.0mm(ウォーターズ社製);
(iii)移動相:0.1%ギ酸/ミリQ水からなる移動相A、0.1%ギ酸/アセトニトリルからなる移動相B;
(iv)流速:0~60分では50μL/min、60~90分では100μL/min;
(v)濃度勾配:0分~5分では99/1(移動相A/移動相B)、5分~55分では99/1(移動相A/移動相B)から50/50(移動相A/移動相B)、56~58分では100%移動相B、60~90分にでは99/1(移動相A/移動相B);
[B]以下の選択クライテリア(4)~(15)に基づいてスコア合計値を算定し、該スコア合計値の高いペプチドを優先的に選択する工程;
(4)トリプトファン、チロシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びフェニルアラニンから選択される疎水アミノ酸の含量が80%以下であり、且つ、前記疎水アミノ酸が10アミノ酸以上連続しないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(5)アミノ酸残基数が4~30のペプチドである場合、スコア3を付与する;
(6)タンパク質データベースのアノテーション情報において、糖鎖付加されないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(7)翻訳後修飾タンパク質を定量する場合を除き、翻訳後修飾部位を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(8)1塩基多型(SNP)部位を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(9)タンパク質分解酵素切断部がアルギニン-アルギニン、アルギニン-リジン、リジン-アルギニン、リジン-リジンではないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(10)タンパク質の構造が決定又は予測されている場合に、膜貫通領域を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(11)メチオニン、システインを含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(12)トリプトファンを含まないペプチドである場合、スコア1を付与する;
(13)グルタミン酸を含まないペプチドである場合、スコア1を付与する;
(14)ヒスチジンを含まないペプチドである場合、スコア2を付与する;
(15)プロリンを含むペプチドである場合、スコア2を付与する;
【請求項2】
配列番号1~308のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
選択クライテリア(3)の予測溶出時間が40~60分であることを特徴とする請求項1又は2記載のペプチド。
【請求項4】
選択クライテリア(4)の疎水アミノ酸の含量が50%以下であり、且つ、選択クライテリア(5)のアミノ酸残基数が6~16のペプチドであることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のペプチド。
【請求項5】
以下の工程(a)~(d)を備えた、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)によって、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量する方法であって、定量対象ペプチドが、請求項1~4のいずれか記載のペプチドであることを特徴とする方法。
(a)試料中の被定量タンパク質をトリプシンによって断片化し、被定量タンパク質のペプチド断片を調製する工程;
(b)前記定量対象ペプチド、及び前記定量対象ペプチドと同配列の安定同位体標識ペプチドを用いて、それぞれの所定濃度段階に対するLC/MS/MSを用いた質量分析を行い、検量線を作成する工程;
(c)前記被定量タンパク質のペプチド断片に、前記安定同位体標識ペプチドを添加してLC/MS/MSを用いた質量分析を行い、被定量タンパク質ペプチド/安定同位体標識ペプチドのマススペクトル面積比を算出する工程;
(d)該面積比から検量線を用いて定量値を算出する工程;
【請求項6】
ペプチド断片を調製する工程が、あらかじめリシルエンドペプチダーゼを用いて断片化した試料中の被定量タンパク質を、さらにトリプシンを用いて断片化する工程であることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
試料が、生体から採取された細胞、組織、又は血液であることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか記載のペプチドを備えることを特徴とする、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量するためのキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)よる、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質の定量に用いるペプチドや、該ペプチドを用いた定量方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトゲノム計画の進展により、薬剤に対する感受性の個人差を遺伝子レベルで解析して医薬の開発に応用する、薬理ゲノミクスに関する研究が盛んに行われている。薬剤に対する感受性の個人差を診断できるようになれば、試行錯誤的な投薬を実施することなく、治療の初期から適切な投薬が可能な、いわゆる個別化治療が可能となる。特に、がん治療の分野においては、従来の抗がん剤と比較して副作用の少ない分子標的薬が盛んに開発されており、臨床現場においても使用されるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。分子標的薬は標的となるタンパク質に特異的に作用する薬剤であるため、個々の患者におけるタンパク質発現量のプロファイルを解析し、どのような標的タンパク質が高発現しているかを知ることができれば、適切な個別化治療を計画/実施することが可能となると考えられている。
【0003】
しかし、現在、臨床現場において主に使用されている検査法は、単一のタンパク質を検出することを目的としたものであり、多数の異なるタンパク質を同時に検出することはできない。さらに、前記検査法の多くは抗体を用いたものであるため、交差反応等のため特異的な定量検査を行うことが困難であり(例えば、非特許文献1、2参照)、また、タンパク質ごとに異なる抗体を使用しなければならないことから、多数のタンパク質を検出するためには莫大な手間と費用がかかる。このような問題を解決するために、最近、マイクロアレイ遺伝子発現分析法の開発が進み、様々な種類のRNA発現を一度に定量することが可能な遺伝子発現検査方法が確立されてきている。(例えば、非特許文献3~6参照)。しかし、分子標的薬の標的タンパク質の多くは細胞膜上に発現する膜タンパク質であり、膜タンパク質発現量とRNA発現量との相関性は極めて悪いことから、マイクロアレイ解析により得られたRNA発現プロファイルが、必ずしも患者のタンパク質発現プロファイルと一致するとは考えられていない。以上のことから、マイクロアレイ解析の結果に基づいて、分子標的薬による個別化治療を行うことは困難であり、実際に発現しているタンパク質を、網羅的に定量することが可能な検査方法を確立することが強く求められている。
【0004】
近年、質量分析法(mass spectrometry)の進展がめざましく、種々の生物学材料の検出や測定にこの方法が応用されている。これまでに、エレクトロスプレー・イオン化法による質量分析計(mass spectrometer;MS)や、質量分析計の前に液体クロマトグラフ(liquid chromatograph;LC)部を連結した液体クロマトグラフ-質量分析計(LC/MS)や、直列に接続された2台の質量分析計からなるタンデム質量分析計(MS/MS)や、タンデム質量分析計の前に液体クロマトグラフ部を連結した液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)等、種々の機能をもつ質量分析計が開発されており、生物学材料の測定、定量に広く利用されている(例えば、特許文献2~4参照)。
【0005】
質量分析計を用いたタンパク質の定量を正確に行うためには、被定量タンパク質を酵素処理することによって断片化し、断片化されたペプチドの中から、質量分析計による解析に適した性質を有するペプチド断片を選択して定量することが重要であると考えられている。特許文献5~7において、発明者らは、既にLC/MS/MSを用いて膜タンパク質及び代謝酵素の絶対発現量を一斉定量する方法を確立しており、その中で、LC/MS/MSによる定量に適した、イオン化効率の高い定量対象ペプチドを選択するためのクライテリアを示している。しかし、特許文献5~7には、LC/MS/MSの液体クロマトグラフ部において、確実に分離されたペプチドのみを選択するためのクライテリアは示されていない。また、非特許文献7には、LC/MS/MSの液体クロマトグラフ部における保持時間(retention times)予測モデルから、リン酸化ペプチドと非リン酸化ペプチドの保持時間を予測し、タンパク質定量の精度を高めることが可能であることが示唆されている。しかし、分子標的薬の標的タンパク質や、一般診断において診断対象となるタンパク質等の測定に、保持時間予測モデルが利用できるかどうかについては何ら示唆されていない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2003-192603号公報
【特許文献2】特開2004-28993号公報
【特許文献3】特開2004-77276号公報
【特許文献4】特表2004-533610号公報
【特許文献5】国際公開第2007/055116号パンフレット
【特許文献6】特開2010-197110号公報
【特許文献7】特開2010-85103号公報
【0007】

【非特許文献1】Baron et al., Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention, 10: 1175-1185 (2001)
【非特許文献2】Michaud et al., Nature Biotechnology, 21: 1509-1512 (2003)
【非特許文献3】Golub et al., Science 286: 531-537 (1999)
【非特許文献4】Bhattacharjae et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 13790-13795 (2001)
【非特許文献5】Chen-Hsiang et al., Bioinformatics 17 (Suppl.1): S316-S322 (2001)
【非特許文献6】Ramaswamy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 15149-15154 (2001)
【非特許文献7】Perlova et al., Proteomics, 10: 3458-3468 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の課題は、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を一斉に定量することができる、LC/MS/MSを用いた高感度なタンパク質の定量方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討する中で、LC/MS/MSの液体クロマトグラフ部において、適切に分離されたペプチドのみを定量対象ペプチドとして選択することにより、特許文献5等に記載の定量方法の精度をさらに改善させることができ、より感度の高い定量を行うことが可能であると考えた。そして、本発明者らは、様々なペプチド断片を用いた実験を行った結果、LC/MS/MSの液体クロマトグラフ部において35~60分の間に溶出されるペプチドを定量対象ペプチドとして選択することにより、LC/MS/MSによる定量の感度が上がることを見い出した。次に、本発明者らは、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量するための定量対象ペプチドとして、前記の溶出時間に関するクライテリア、及び特許文献5等に記載のクライテリアを満たすペプチドの同定を試みた。そして、溶出時間を予測するための各アミノ酸に対するパラメータを既知のペプチド溶出位置データから導き出し、該パラメータを用いて、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質のアミノ酸配列の中から、前記のクライテリアを満たすペプチドを検索した結果、配列番号1~309に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを定量対象ペプチドとして同定するに至り、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、[1]液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)によって、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量するために用いるペプチドであって、以下の工程[A]及び[B]により選択されることを特徴とするペプチドに関する。
[A]以下の必須クライテリア(1)~(3)を満たすペプチドを選択する工程;
(1)前記疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質をトリプシンにより断片化することにより得られるペプチドであること;
(2)前記疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質に特異的なアミノ酸配列からなるペプチドであること;
(3)各アミノ酸における溶出時間パラメータを設定し、該溶出時間パラメータに基づいて、以下の条件(i)~(v)の液体クロマトグラフィによる予測溶出時間を算定したとき、該予測溶出時間が30~70分の範囲内であるペプチドであること;
(i)HPLC:Agilent 1200 HPLCシステム(アジレント・テクノロジー社製);
(ii)カラム:XBridge BEH130 C18、3.5μm、100x1.0mm(ウォーターズ社製);
(iii)移動相:0.1%ギ酸/ミリQ水からなる移動相A、0.1%ギ酸/アセトニトリルからなる移動相B;
(iv)流速:0~60分では50μL/min、60~90分では100μL/min;
(v)濃度勾配:0分~5分では99/1(移動相A/移動相B)、5分~55分では99/1(移動相A/移動相B)から50/50(移動相A/移動相B)、56~58分では100%移動相B、60~90分にでは99/1(移動相A/移動相B);
[B]以下の選択クライテリア(4)~(15)に基づいてスコア合計値を算定し、該スコア合計値の高いペプチドを優先的に選択する工程;
(4)トリプトファン、チロシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びフェニルアラニンから選択される疎水アミノ酸の含量が80%以下であり、且つ、前記疎水アミノ酸が10アミノ酸以上連続しないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(5)アミノ酸残基数が4~30のペプチドである場合、スコア3を付与する;
(6)タンパク質データベースのアノテーション情報において、糖鎖付加されないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(7)翻訳後修飾タンパク質を定量する場合を除き、翻訳後修飾部位を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(8)1塩基多型(SNP)部位を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(9)タンパク質分解酵素切断部がアルギニン-アルギニン、アルギニン-リジン、リジン-アルギニン、リジン-リジンではないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(10)タンパク質の構造が決定又は予測されている場合に、膜貫通領域を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(11)メチオニン、システインを含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;
(12)トリプトファンを含まないペプチドである場合、スコア1を付与する;
(13)グルタミン酸を含まないペプチドである場合、スコア1を付与する;
(14)ヒスチジンを含まないペプチドである場合、スコア2を付与する;
(15)プロリンを含むペプチドである場合、スコア2を付与する;
【0011】
また本発明は、[2]配列番号1~308のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする上記[1]記載のペプチドや、[3]選択クライテリア(3)の予測溶出時間が40~60分であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載のペプチドや、[4]選択クライテリア(4)の疎水アミノ酸の含量が50%以下であり、且つ、選択クライテリア(5)のアミノ酸残基数が6~16のペプチドであることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか記載のペプチドに関する。
【0012】
さらに本発明は、[5]以下の工程(a)~(d)を備えた、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)によって、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量する方法であって、定量対象ペプチドが、上記[1]~[4]のいずれか記載のペプチドであることを特徴とする方法に関する。
(a)試料中の被定量タンパク質をトリプシンによって断片化し、被定量タンパク質のペプチド断片を調製する工程;
(b)前記定量対象ペプチド、及び前記定量対象ペプチドと同配列の安定同位体標識ペプチドを用いて、それぞれの所定濃度段階に対するLC/MS/MSを用いた質量分析を行い、検量線を作成する工程;
(c)前記被定量タンパク質のペプチド断片に、前記安定同位体標識ペプチドを添加してLC/MS/MSを用いた質量分析を行い、被定量タンパク質ペプチド/安定同位体標識ペプチドのマススペクトル面積比を算出する工程;
(d)該面積比から検量線を用いて定量値を算出する工程;
【0013】
本発明はまた、[6]ペプチド断片を調製する工程が、あらかじめリシルエンドペプチダーゼを用いて断片化した試料中の被定量タンパク質を、さらにトリプシンを用いて断片化する工程であることを特徴とする上記[5]記載の方法や、[7]試料が、生体から採取された細胞、組織、又は血液であることを特徴とする上記[5]又は[6]記載の方法に関する。
【0014】
本発明はさらに、[8]上記[1]~[4]のいずれか記載のペプチドを備えることを特徴とする、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量するためのキットに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタンパク質の定量方法により、従来法では困難であった様々な種類の疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質の定量を、簡便、且つ迅速に、精度よく行うことが可能となる。本発明のタンパク質の定量方法を用いることによって、患者から採取されたわずかな試料から、個々の患者におけるタンパク質発現量のプロファイルを解析することでき、疾患の個別化治療を行う上で極めて有用な知見を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のタンパク質診断を用いた分子標的薬によるがん個別化治療の概要を示す図である。
【図2】本発明のタンパク質酵素処理工程の概要を示す図である。図中、Kはリシン残基を、Rはアルギニン残基を示す。
【図3】ntcpタンパク質を、トリプシン単独により消化した場合と、リシンエンドペプチダーゼ(Lys-C)とトリプシンを組み合わせて消化した場合の、消化率の経時的な変化を示す図である。縦軸はトリプシンによる消化率(%)を、横軸はトリプシン消化時間(hr)を示す。また、グラフ中の、-◆-はLys-Cによる3時間の消化後にトリプシン消化した場合の消化率を、…●…はトリプシンのみで消化した場合の消化率をそれぞれ示す。
【図4】mct1タンパク質を、トリプシン単独により消化した場合と、リシンエンドペプチダーゼ(Lys-C)とトリプシンを組み合わせて消化した場合の、消化率の経時的な変化を示す図である。縦軸はトリプシンによる消化率(%)を、横軸はトリプシン消化時間(hr)を示す。また、グラフ中の、-◆-はLys-Cによる3時間の消化後にトリプシン消化した場合の消化率を、…●…はトリプシンのみで消化した場合の消化率をそれぞれ示す。
【図5】4F2hc、mrp6、abcg5、abcg8、oatp1、mct1、bsep、ntcp、glut1、bgt1、及びNa/K ATPaseを、トリプシン単独で16時間消化した場合と、Lys-Cによる3時間の消化後にトリプシンで消化した場合とでは、LC/MS/MSによる定量値が変化することを示す図である。
【図6】本発明の溶出位置予測パラメータにより予測された、配列番号309~379に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの予測溶出時間と、実測溶出時間との相関を示す図である。図の縦軸は実測溶出時間(分)を、横軸は溶出予測パラメータ(分)を示す。
【図7】本発明のHPLC又はnanoLCによるペプチドの分離と予測溶出時間の関連について示した図である。
【図8】本発明の溶出位置予測を選択基準に加えることによって、測定感度が改善されたタンパク質を示す図である。ABCA9、NET、xCT、BOIT(BOCT)、MDR1、CYP2C8、及びCYP2B6の定量には、配列番号380~386に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを用いた。
【図9】分子標的薬の標的タンパク質について示した図である。
【図10】分子標的薬の標的タンパク質を、本発明の高感度定量方法によって定量した結果を示す図である。
【図11】脳腫瘍検体細胞膜分画におけるヒト分子標的薬の標的タンパク質を、本発明の高感度定量方法によって定量した結果を示す図である。
【図12】本発明のタンパク質を定量する方法による分子標的薬の脳腫瘍個別化治療について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のペプチドとしては、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)によって、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量するために用いるペプチドであって、
[A](1)上記疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質をトリプシンにより断片化することにより得られるペプチドであること;(2)上記疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質に特異的なアミノ酸配列からなるペプチドであること;(3)各アミノ酸における溶出時間パラメータを設定し、該溶出時間パラメータに基づいて、(i)HPLC:Agilent 1200 HPLCシステム(アジレント・テクノロジー社製);(ii)カラム:XBridge BEH130 C18、3.5μm、100x1.0mm(ウォーターズ社製);(iii)移動相:0.1%ギ酸/ミリQ水からなる移動相A、0.1%ギ酸/アセトニトリルからなる移動相B;(iv)流速:0~60分では50μL/min、60~90分では100μL/min;(v)濃度勾配:0分~5分では99/1(移動相A/移動相B)、5分~55分では99/1(移動相A/移動相B)から50/50(移動相A/移動相B)、56~58分では100%移動相B、60~90分にでは99/1(移動相A/移動相B);の(i)~(v)の条件からなる液体クロマトグラフィによる予測溶出時間を算定したとき、該予測溶出時間が30~70分の範囲内であるペプチドであること;の(1)~(3)からなる必須クライテリアを満たすペプチドを選択する工程;及び
[B](4)トリプトファン、チロシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びフェニルアラニンから選択される疎水アミノ酸の含量が80%以下であり、且つ、前記疎水アミノ酸が10アミノ酸以上連続しないペプチドである場合、スコア10を付与する;(5)アミノ酸残基数が4~30のペプチドである場合、スコア3を付与する;(6)タンパク質データベースのアノテーション情報において、糖鎖付加されないペプチドである場合、スコア10を付与する;(7)翻訳後修飾タンパク質を定量する場合を除き、翻訳後修飾部位を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;(8)1塩基多型(SNP)部位を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;(9)タンパク質分解酵素切断部がアルギニン-アルギニン、アルギニン-リジン、リジン-アルギニン、リジン-リジンではないペプチドである場合、スコア10を付与する;(10)タンパク質の構造が決定又は予測されている場合に、膜貫通領域を含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;(11)メチオニン、システインを含まないペプチドである場合、スコア10を付与する;(12)トリプトファンを含まないペプチドである場合、スコア1を付与する;(13)グルタミン酸を含まないペプチドである場合、スコア1を付与する;(14)ヒスチジンを含まないペプチドである場合、スコア2を付与する;(15)プロリンを含むペプチドである場合、スコア2を付与する;の(4)~(15)からなる選択クライテリアに基づいてスコア合計値を算定し、該スコア合計値の高いペプチドを優先的に選択する工程;
により選択されるペプチドであれば特に制限されないが、前記選択クライテリア(4)において、疎水アミノ酸の含量が50%以下であり、且つ、前記選択クライテリア(5)において、アミノ酸残基数が6~16であることペプチドであることがより好ましい。前記本発明の「疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質をトリプシンにより断片化することにより得られるペプチド」には、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を、実際にトリプシンにより断片化して得られたペプチドの他、かかるペプチドと同じアミノ酸配列を有する合成ペプチドも含まれる。また、前記選択クライテリア(6)における、タンパク質データベースとしては、Protein Information Resource(PIR)、SWISS-PROT&TrEMBL、Protein Research Foundation(PRF)、NCBI Protein Database、UniProt(http://www.uniprot.org/)等の公知のタンパク質データベースであれば特に制限されないが、中でも、NCBI Protein DatabaseやUniProt(http://www.uniprot.org/)であることが好ましい。前記選択クライテリア(6)における、「タンパク質データベースのアノテーション情報において、糖鎖付加されないペプチド」としては、具体的には、アスパラギン-X-セリン、アスパラギン-X-スレオニン、又は、アスパラギン-X-システインの配列を含まないペプチドであって、前記Xがプロリン以外のアミノ酸であるペプチド等を好適に例示することができる。

【0018】
前記必須クライテリア(3)における、各アミノ酸における溶出時間パラメータとしては、既知のアミノ酸配列からなるペプチド断片を、(i)HPLC:Agilent 1200 HPLCシステム(アジレント・テクノロジー社製);(ii)カラム:XBridge BEH130 C18、3.5μm、100x1.0mm(ウォーターズ社製);(iii)移動相:0.1%ギ酸/ミリQ水からなる移動相A、0.1%ギ酸/アセトニトリルからなる移動相B;(iv)流速:0~60分では50μL/min、60~90分では100μL/min;(v)濃度勾配:0分~5分では99/1(移動相A/移動相B)、5分~55分では99/1(移動相A/移動相B)から50/50(移動相A/移動相B)、56~58分では100%移動相B、60~90分にでは99/1(移動相A/移動相B);の(i)~(v)の条件からなる液体クロマトグラフィにより分離することにより得られる溶出時間データに基づいて設定されたものであれば特に制限されないが、より具体的には、例えば、アラニン(A)の溶出時間パラメータとしては-0.672を、システイン(C)の溶出時間パラメータとしては+1を、アスパラギン酸(D)の溶出時間パラメータとしては+0.769を、グルタミン酸(E)の溶出時間パラメータとしては+0.081を、フェニルアラニン(F)の溶出時間パラメータとしては+16.309を、グリシン(G)の溶出時間パラメータとしては-0.251を、ヒスチジン(H)の溶出時間パラメータとしては-2.995を、イソロイシン(I)の溶出時間パラメータとしては+7.763を、リジン(K)の溶出時間パラメータとしては-3.201を、ロイシン(L)の溶出時間パラメータとしては+10.468を、メチオニン(M)の溶出時間パラメータとしては+8.313を、アスパラギン(N)の溶出時間パラメータとしては-1を、プロリン(P)の溶出時間パラメータとしては+2.195を、グルタミン(Q)の溶出時間パラメータとしては-1を、アルギニン(R)の溶出時間パラメータとしては-0.013を、セリン(S)の溶出時間パラメータとしては-2.181を、トレオニン(T)の溶出時間パラメータとしては+4.215を、バリン(V)の溶出時間パラメータとしては+6.422を、トリプトファン(W)の溶出時間パラメータとしては+18.65を、チロシン(Y)の溶出時間パラメータとしては+7.37を好適に挙げることができる。上記(i)~(v)の条件からなる液体クロマトグラフィによるペプチドの溶出時間は、これらの各アミノ酸の溶出時間パラメータに基づいて算出することができる。

【0019】
また、前記必須クライテリア(3)において、「予測溶出時間が30~70分の範囲内であるペプチド」とは、前記各アミノ酸における溶出時間パラメータに基づいて、(i)HPLC:Agilent 1200 HPLCシステム(アジレント・テクノロジー社製);(ii)カラム:XBridge BEH130 C18、3.5μm、100x1.0mm(ウォーターズ社製);(iii)移動相:0.1%ギ酸/ミリQ水からなる移動相A、0.1%ギ酸/アセトニトリルからなる移動相B;(iv)流速:0~60分では50μL/min、60~90分では100μL/min;(v)濃度勾配:0分~5分では99/1(移動相A/移動相B)、5分~55分では99/1(移動相A/移動相B)から50/50(移動相A/移動相B)、56~58分では100%移動相B、60~90分にでは99/1(移動相A/移動相B);の条件(i)~(v)の液体クロマトグラフィによる溶出時間を算出したときに、30~70分の範囲内で溶出されると予測されるペプチドを意味し、ここで「溶出時間」とは、液体クロマトグラフに導入してから流出してくるまでに掛かる時間、すなわち、液体クロマトグラフィ用カラムにおける保持時間を意味する。また、上記本発明のペプチドの予測溶出時間は、30~70分の範囲内であれば特に制限されず、例えば、30~65分、30~60分、35~70分、35~65分、35~60分、40~70分、40~65分、40~60分などであってもよいが、40~60分であることが好ましい。

【0020】
本発明において、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質としては、特に制限されないが、具体的には、例えば、分子標的薬の標的タンパク質である、PDGFRα(アクセッションナンバーP16234)、PDGFRβ(アクセッションナンバーP09619)、EGFR(アクセッションナンバーP00533)、EGFR-variant(アクセッションナンバーP00533)、ERBB2(アクセッションナンバーP04626)、VEGFR1(アクセッションナンバーP17948)、VEGFR2(アクセッションナンバーP35968)、VEGFR3(アクセッションナンバーP35916)、MET(アクセッションナンバーsp_P08581)、IGFR(アクセッションナンバーP08069)、CD33(アクセッションナンバーP20138)、CD37(アクセッションナンバーP11049)、c-kit(アクセッションナンバーP10721)、FLT3(アクセッションナンバーP36888)、mTOR(アクセッションナンバーP42345)や、一般診断において診断対象となるタンパク質である、血清アミラーゼ(アクセッションナンバーP04745、P04746、P19961)、Apo-A1(アクセッションナンバーP02647)、Apo-A2(アクセッションナンバーP02652)、Apo-B(48+100)(アクセッションナンバーP04114)、Apo-B100(アクセッションナンバーP04114)、Apo-C2(アクセッションナンバーP02655)、ApoC3(アクセッションナンバーP02656)、Apo-E(アクセッションナンバーP02649)、GOT(細胞質)(アクセッションナンバーP17174)、GOT(ミトコンドリア)(アクセッションナンバーP00505)、GPT(アクセッションナンバーQ8TD30)、LDH_M(アクセッションナンバーP00338)、LDH_H(アクセッションナンバーP07195)、ALP(アクセッションナンバーP05186)、g-GTP(アクセッションナンバーP19440、P36268、A6NGU5)、ZTT(アクセッションナンバーP01857)、CHE(アクセッションナンバーP06276)、CEA(アクセッションナンバーP06731)、PSA(アクセッションナンバーP07288)、CA125(アクセッションナンバーQ8WXI7)、CA15-3(アクセッションナンバーP15941)、CYFRA(アクセッションナンバーP08727)、PIVKA-II(アクセッションナンバーP00734)、血清HER2タンパク質(アクセッションナンバーP04626)、CRP(アクセッションナンバーP02741)、AFP(アクセッションナンバーP02771)、SCCA1(アクセッションナンバーP29508)、SCCA2(アクセッションナンバーP48594)、NSE(アクセッションナンバーP09104)、ferritin_H(アクセッションナンバーP02794)、ferritin_L(アクセッションナンバーP02792)、elastase1(アクセッションナンバーQ14237)、Pro-GRP(アクセッションナンバーP07492)、PAP(アクセッションナンバーP15309)や、腫瘍関連マーカータンパク質であるVimentin(アクセッションナンバーP08670)、Neurofilament medium polypeptide(アクセッションナンバーP07197)、Nestin(アクセッションナンバーP48681)、Telomerase transcriptase(アクセッションナンバーO14746)、beta-catenin(アクセッションナンバーP35222)、C-MYC(アクセッションナンバーP01106)、N-MYC(アクセッションナンバーP04198)、GSTP1(アクセッションナンバーP09211)、MGMT(アクセッションナンバーP16455)、CD133(アクセッションナンバーO43490)、SNAT3(アクセッションナンバーQ99624)、SNAT5(アクセッションナンバーQ8WUX1)、SNAT6(アクセッションナンバーQ8IZM9)や、分子標的薬の標的となり得るタンパク質である、HER3(アクセッションナンバーP21860)、FGFR1(アクセッションナンバーP11362)、FGFR2(アクセッションナンバーP21802)、FGFR3(アクセッションナンバーP22607)、FGFR4(アクセッションナンバーP22455)、RET(アクセッションナンバーP07949)、EphA1(アクセッションナンバーP21709)、EphA2(アクセッションナンバーP29317)、EphA3(アクセッションナンバーP29320)、EphA4(アクセッションナンバーP54764)、EphA5(アクセッションナンバーP54756)、EphA6(アクセッションナンバーQ9UF33)、EphA7(アクセッションナンバーQ15375)、EphA8(アクセッションナンバーP29322)、EphA10(アクセッションナンバーQ5JZY3)、EphB1(アクセッションナンバーP54762)、EphB2(アクセッションナンバーP29323)、EphB3(アクセッションナンバーP54753)、EphB4(アクセッションナンバーP54760)、EphB6(アクセッションナンバーO15197)、AKT1(アクセッションナンバーP31749)、AKT2(アクセッションナンバーP31751)、AKT3(アクセッションナンバーQ9Y243)、ERK1(アクセッションナンバーP27361)、ERK2(アクセッションナンバーP28482)、MEK1(アクセッションナンバーQ02750)、MEK2(アクセッションナンバーP36507)、HSP90α(アクセッションナンバーP07900)、p38α(アクセッションナンバーQ16539)、p38β(アクセッションナンバーQ15759)、p38γ(アクセッションナンバーP53778)、p38δ(アクセッションナンバーO15264)、Notch1(アクセッションナンバーP46531)、Notch2(アクセッションナンバーQ04721)、Notch3(アクセッションナンバーQ9UM47)、Notch4(アクセッションナンバーQ99466)、HIF-1α(アクセッションナンバーQ16665)、DLL1(アクセッションナンバーO00548)、DLL3(アクセッションナンバーQ9NYJ7)、DLL4(アクセッションナンバーQ9NR61)、B7-H1(アクセッションナンバーQ9NZQ7)、CD19(アクセッションナンバーP15391)、CD22(アクセッションナンバーP20273)、CD26(アクセッションナンバーP27487)、CD28(アクセッションナンバーP10747)、CD44(アクセッションナンバーP16070)、CD66d(アクセッションナンバーP40198)、EpCAM(アクセッションナンバーP16422)、CTLA4(アクセッションナンバーP16410)、IL6(アクセッションナンバーP05231)、IL6Rα(アクセッションナンバーP08887)、IL6Rβ(アクセッションナンバーP40189)、IL10(アクセッションナンバーP22301)、IL10Rα(アクセッションナンバーQ13651)、IL10Rβ(アクセッションナンバーQ08334)、RANTES(アクセッションナンバーP13501)、CCR1(アクセッションナンバーP32246)、CCR3(アクセッションナンバーP51677)、CDK1(アクセッションナンバーP06493)、CDK2(アクセッションナンバーP24941)、CDK4(アクセッションナンバーP11802)、CDK6(アクセッションナンバーQ00534)、TNFα(アクセッションナンバーP01375)、Fas(アクセッションナンバーP25445)、TRAILR1(アクセッションナンバーO00220)、TRAILR2(アクセッションナンバーO14763)、BCL2(アクセッションナンバーP10415)、cIAP1(アクセッションナンバーQ13490)、XIAP(アクセッションナンバーP98170)、PARP1(アクセッションナンバーP09874)、KRAS(アクセッションナンバーP01116)、BRAF(アクセッションナンバーP15056)、APC(アクセッションナンバーP25054)、MMP1(アクセッションナンバーP03956)、MMP7(アクセッションナンバーP09237)、MMP9(アクセッションナンバーP14780)、MT-MMP1(アクセッションナンバーP50281)、VCAM1(アクセッションナンバーP19320)、RANKL(アクセッションナンバーO14788)等を好適に挙げることができる。なお、分子標的薬の標的タンパク質としてのERBB2(アクセッションナンバーP04626)と、一般診断において診断対象となるタンパク質としての血清HER2タンパク質(アクセッションナンバーP04626)とは、同一のタンパク質である。

【0021】
本発明のペプチドとしては、具体的には、例えば、分子標的薬の標的タンパク質を定量するための配列番号1~45のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドや、一般診断において診断対象となるタンパク質を定量するための配列番号46~111のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドや、腫瘍関連マーカータンパク質を定量するための配列番号112~133のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドや、分子標的薬の標的となり得るタンパク質を定量するための配列番号134~308のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチド等を挙げることができる。

【0022】
本発明の分子標的薬の標的タンパク質を定量するためのペプチドとしては、具体的には、PDGFRα(アクセッションナンバーP16234)の部分配列である、VEETIAVR(配列番号1)、GSTFLPVK(配列番号2)、及びLVYTLTVPEATVK(配列番号3);PDGFRβ(アクセッションナンバーP09619)の部分配列である、EVDSDAYYVYR(配列番号4)、LPGFHGLR(配列番号5)、及びYVSELTLVR(配列番号6);EGFR(アクセッションナンバーP00533)の部分配列である、ELIIEFSK(配列番号7)、IPLENLQIIR(配列番号8)、及びNLQEILHGAVR(配列番号9);EGFR-variant(アクセッションナンバーP00533)の部分配列である、ITDFGR(配列番号10)、ITDFGLAK(配列番号11)、NYDLSFLK(配列番号12)、及びEISDGDVIISGNK(配列番号13);ERBB2(アクセッションナンバーP04626)の部分配列である、VLQGLPR(配列番号14)、GLQSLPTHDPSPLQR(配列番号15)、及びGIWIPDGENVK(配列番号16);VEGFR1(アクセッションナンバーP17948)の部分配列である、AFPSPEVVWLK(配列番号17)、LGDLLQANVQQDGK(配列番号18)、及びNILLSENNVVK(配列番号19);VEGFR2(アクセッションナンバーP35968)の部分配列である、YLGYPPPEIK(配列番号20)、TFEDIPLEEPEVK(配列番号21)、NQFALIEGK(配列番号22);VEGFR3(アクセッションナンバーP35916)の部分配列である、LAAYPPPEFQWYK(配列番号23)、GPILEATAGDELVK(配列番号24)、YGNLSNFLR(配列番号25);MET(アクセッションナンバーsp_P08581)の部分配列である、VFPNSAPLEGGTR(配列番号26)、DLIGFGLQVAK(配列番号27)、YVNDFFNK(配列番号28);IGFR(アクセッションナンバーP08069)の部分配列である、AENGPGPGVLVLR(配列番号29)、QPQDGYLYR(配列番号30)、DLISFTVYYK(配列番号31);CD33(アクセッションナンバーP20138)の部分配列である、FAGAGVTTER(配列番号32)、ILIPGTLEPGHSK(配列番号33)、NSPVHGYWFR(配列番号34);CD37(アクセッションナンバーP11049)の部分配列である、VILPQLSR(配列番号35)、NLDHVYNR(配列番号36);c-kit(アクセッションナンバーP10721)の部分配列である、VVEATAYGLIK(配列番号37)、LVVQSSIDSSAFK(配列番号38)、AVPVVSVSK(配列番号39);FLT3(アクセッションナンバーP36888)の部分配列である、TGVSIQVAVK(配列番号40)、ILFAFVSSVAR(配列番号41)、TWTEIFK(配列番号42);mTOR(アクセッションナンバーP42345)の部分配列である、IDTPRPLVGR(配列番号43)、LLVVGITDPDPDIR(配列番号44)、IQSIAPSLQVITSK(配列番号45);等を例示することができる。

【0023】
また、前記分子標的薬の標的タンパク質を定量するためのペプチドの中でも、PDGFRα(アクセッションナンバーP16234)の部分配列である、VEETIAVR(配列番号1);PDGFRβ(アクセッションナンバーP09619)の部分配列である、EVDSDAYYVYR(配列番号4);EGFR(アクセッションナンバーP00533)の部分配列である、ELIIEFSK(配列番号7);EGFR-variant(アクセッションナンバーP00533)の部分配列である、ITDFGR(配列番号10)、ITDFGLAK(配列番号11)、NYDLSFLK(配列番号12)、及びEISDGDVIISGNK(配列番号13);ERBB2(アクセッションナンバーP04626)の部分配列である、VLQGLPR(配列番号14);VEGFR1(アクセッションナンバーP17948)の部分配列である、AFPSPEVVWLK(配列番号17);VEGFR2(アクセッションナンバーP35968)の部分配列である、YLGYPPPEIK(配列番号20);VEGFR3(アクセッションナンバーP35916)の部分配列である、LAAYPPPEFQWYK(配列番号23);MET(アクセッションナンバーsp_P08581)の部分配列である、VFPNSAPLEGGTR(配列番号26);IGFR(アクセッションナンバーP08069)の部分配列である、AENGPGPGVLVLR(配列番号29);CD33(アクセッションナンバーP20138)の部分配列である、FAGAGVTTER(配列番号32);CD37(アクセッションナンバーP11049)の部分配列である、VILPQLSR(配列番号35);c-kit(アクセッションナンバーP10721)の部分配列である、VVEATAYGLIK(配列番号37);FLT3(アクセッションナンバーP36888)の部分配列である、TGVSIQVAVK(配列番号40);mTOR(アクセッションナンバーP42345)の部分配列である、IDTPRPLVGR(配列番号43);等を特に好適な定量対象ペプチドとして例示することができる。

【0024】
本発明の一般診断において診断対象となるタンパク質を定量するためのペプチドとしては、具体的には、血清アミラーゼ(アクセッションナンバーP04745、P04746、P19961)の部分配列である、SSDYFGNGR(配列番号46)、及びIYVSDDGK(配列番号47);Apo-A1(アクセッションナンバーP02647)の部分配列である、QGLLPVLESFK(配列番号48)、DLATVYVDVLK(配列番号49)、及びLLDNWDSVTSTFSK(配列番号50);Apo-A2(アクセッションナンバーP02652)の部分配列である、SPELQAEAK(配列番号51);Apo-B(48+100)(アクセッションナンバーP04114)の部分配列である、IEIPLPFGGK(配列番号52)、EFQVPTFTIPK(配列番号53)、及びTGISPLALIK(配列番号54);Apo-B100(アクセッションナンバーP04114)の部分配列である、NPNGYSFSIPVK(配列番号55)、NIILPVYDK(配列番号56)、及びIPSVQINFK(配列番号57);Apo-C2(アクセッションナンバーP02655)の部分配列である、TYLPAVDEK(配列番号58);ApoC3(アクセッションナンバーP02656)の部分配列である、GWVTDGFSSLK(配列番号59);Apo-E(アクセッションナンバーP02649)の部分配列である、LGPLVEQGR(配列番号60);GOT(細胞質)(アクセッションナンバーP17174)の部分配列である、ITWSNPPAQGAR(配列番号61)、LALGDDSPALK(配列番号62)、VGNLTVVGK(配列番号63)、及びINVSGLTTK(配列番号64);GOT(ミトコンドリア)(アクセッションナンバーP00505)の部分配列である、FVTVQTISGTGALR(配列番号65);GPT(アクセッションナンバーQ8TD30)の部分配列である、ILVSGGGK(配列番号66)、TPSSWGR(配列番号67)、AVEYAVR(配列番号68)、及びVQLPPR(配列番号69);LDH_M(アクセッションナンバーP00338)の部分配列である、LVIITAGAR(配列番号70);LDH_H(アクセッションナンバーP07195)の部分配列である、IVVVTAGVR(配列番号71);ALP(アクセッションナンバーP05186)の部分配列である、FPFVALSK(配列番号72);g-GTP(アクセッションナンバーP19440、P36268、A6NGU5)の部分配列である、GGLSVAVPGEIR(配列番号73)、及びFVDVTESTR(配列番号74);ZTT(アクセッションナンバーP01857)の部分配列である、EPQVYTLPPSR(配列番号75)、ALPAPIEK(配列番号76)、及びGPSVFPLAPSSK(配列番号77);CHE(アクセッションナンバーP06276)の部分配列である、NIAAFGGNPK(配列番号78)、FWTSFFPK(配列番号79)、及びYLTLNTESTR(配列番号80);CEA(アクセッションナンバーP06731)の部分配列である、INGIPQQHTQVLFIAK(配列番号81);PSA(アクセッションナンバーP07288)の部分配列である、HSQPWQVLVASR(配列番号82);CA125(アクセッションナンバーQ8WXI7)の部分配列である、LTSPVVTTSTR(配列番号83)、FPDIFSVASSR(配列番号84)、及びLTATQSTAPK(配列番号85);CA15-3(アクセッションナンバーP15941)の部分配列である、SSVPSSTEK(配列番号86)、及びATTTPASK(配列番号87);CYFRA(アクセッションナンバーP08727)の部分配列である、ILGATIENSR(配列番号88);PIVKA-II(アクセッションナンバーP00734)の部分配列である、ANTFLEEVR(配列番号89);血清HER2タンパク質(アクセッションナンバーP04626)の部分配列である、VLQGLPR(配列番号90)、及びGGVLIQR(配列番号91);CRP(アクセッションナンバーP02741)の部分配列である、ESDTSYVSLK(配列番号92);AFP(アクセッションナンバーP02771)の部分配列である、TFQAITVTK(配列番号93)、及びDFNQFSSGEK(配列番号94);SCCA1(アクセッションナンバーP29508)の部分配列である、GLVLSGVLHK(配列番号95)、及びTNSILFYGR(配列番号96);SCCA2(アクセッションナンバーP48594)の部分配列である、VLHFDQVTENTTEK(配列番号97)、及びTNSILFYGR(配列番号98);NSE(アクセッションナンバーP09104)の部分配列である、YITGDQLGALYQDFVR(配列番号99)、IEEELGDEAR(配列番号100)、及びLGAEVYHTLK(配列番号101);ferritin_H(アクセッションナンバーP02794)の部分配列である、NVNQSLLELHK(配列番号102);ferritin_L(アクセッションナンバーP02792)の部分配列である、LGGPEAGLGEYLFER(配列番号103)、及びDDVALEGVSHFFR(配列番号104);elastase1(アクセッションナンバーQ14237)の部分配列である、AGYDIALLR(配列番号105)、及びTNGQLAQTLQ(配列番号106);Pro-GRP(アクセッションナンバーP07492)の部分配列である、NLLGLIEAK(配列番号107)、及びNHQPPQPK(配列番号108);PAP(アクセッションナンバーP15309)の部分配列である、SPIDTEPTDPIK(配列番号109)、FVTLVFR(配列番号110)、及びFQELESETLK(配列番号111);等を例示することができる。

【0025】
前記一般診断において診断対象となるタンパク質を定量するためのペプチドの中でも、血清アミラーゼ(アクセッションナンバーP04745、P04746、P19961)の部分配列である、SSDYFGNGR(配列番号46)、及びIYVSDDGK(配列番号47);Apo-A1(アクセッションナンバーP02647)の部分配列である、QGLLPVLESFK(配列番号48)、及びDLATVYVDVLK(配列番号49);Apo-A2(アクセッションナンバーP02652)の部分配列である、SPELQAEAK(配列番号51);Apo-B(48+100)(アクセッションナンバーP04114)の部分配列である、IEIPLPFGGK(配列番号52)、及びEFQVPTFTIPK(配列番号53);Apo-B100(アクセッションナンバーP04114)の部分配列である、NPNGYSFSIPVK(配列番号55)、及びNIILPVYDK(配列番号56);Apo-C2(アクセッションナンバーP02655)の部分配列である、TYLPAVDEK(配列番号58);ApoC3(アクセッションナンバーP02656)の部分配列である、GWVTDGFSSLK(配列番号59);Apo-E(アクセッションナンバーP02649)の部分配列である、LGPLVEQGR(配列番号60);GOT(細胞質)(アクセッションナンバーP17174)の部分配列である、ITWSNPPAQGAR(配列番号61)、及びLALGDDSPALK(配列番号62);GOT(ミトコンドリア)(アクセッションナンバーP00505)の部分配列である、FVTVQTISGTGALR(配列番号65);GPT(アクセッションナンバーQ8TD30)の部分配列である、ILVSGGGK(配列番号66)、及びTPSSWGR(配列番号67);LDH_M(アクセッションナンバーP00338)の部分配列である、LVIITAGAR(配列番号70);LDH_H(アクセッションナンバーP07195)の部分配列である、IVVVTAGVR(配列番号71);ALP(アクセッションナンバーP05186)の部分配列である、FPFVALSK(配列番号72);g-GTP(アクセッションナンバーP19440、P36268、A6NGU5)の部分配列である、GGLSVAVPGEIR(配列番号73);ZTT(アクセッションナンバーP01857)の部分配列である、EPQVYTLPPSR(配列番号75)、及びALPAPIEK(配列番号76);CHE(アクセッションナンバーP06276)の部分配列である、NIAAFGGNPK(配列番号78)、及びFWTSFFPK(配列番号79);CEA(アクセッションナンバーP06731)の部分配列である、INGIPQQHTQVLFIAK(配列番号81);PSA(アクセッションナンバーP07288)の部分配列である、HSQPWQVLVASR(配列番号82);CA125(アクセッションナンバーQ8WXI7)の部分配列である、LTSPVVTTSTR(配列番号83)、及びFPDIFSVASSR(配列番号84);CA15-3(アクセッションナンバーP15941)の部分配列である、SSVPSSTEK(配列番号86)、及びATTTPASK(配列番号87);CYFRA(アクセッションナンバーP08727)の部分配列である、ILGATIENSR(配列番号88);PIVKA-II(アクセッションナンバーP00734)の部分配列である、ANTFLEEVR(配列番号89);血清HER2タンパク質(アクセッションナンバーP04626)の部分配列である、VLQGLPR(配列番号90)、及びGGVLIQR(配列番号91);等を特に好適な定量対象ペプチドとして例示することができる。

【0026】
本発明の腫瘍関連マーカータンパク質を定量するためのペプチドとしては、具体的には、Vimentin(アクセッションナンバーP08670)の部分配列である、FADLSEAANR(配列番号112);Neurofilament medium polypeptide(アクセッションナンバーP07197)の部分配列である、VSGSPSSGFR(配列番号113)、及びFVEEIIEETK(配列番号114);Nestin(アクセッションナンバーP48681)の部分配列である、LELQFPR(配列番号115)、及びGAVAGAPK(配列番号116);Telomerase transcriptase(アクセッションナンバーO14746)の部分配列である、GGPPEAFTTSVR(配列番号117)、及びSYLPNTVTDALR(配列番号118);beta-catenin(アクセッションナンバーP35222)の部分配列である、SGGIPALVK(配列番号119)、及びLLNDEDQVVVNK(配列番号120);C-MYC(アクセッションナンバーP01106)の部分配列である、DQIPELENNEK(配列番号121);N-MYC(アクセッションナンバーP04198)の部分配列である、NAALGPGR(配列番号122);GSTP1(アクセッションナンバーP09211)の部分配列である、TLGLYGK(配列番号123)、及びEEVVTVETWQEGSLK(配列番号124);MGMT(アクセッションナンバーP16455)の部分配列である、EWLLAHEGHR(配列番号125)、及びTTLDSPLGK(配列番号126);CD133(アクセッションナンバーO43490)の部分配列である、ANSLPPGNLR(配列番号127)、及びTGNGLLER(配列番号128);SNAT3(アクセッションナンバーQ99624)の部分配列である、AYEQLGYR(配列番号129)、及びEPHFTDFEGK(配列番号130);SNAT5(アクセッションナンバーQ8WUX1)の部分配列である、IVPSEVEPFLSWPK(配列番号131)、及びAFGPAGK(配列番号132);SNAT6(アクセッションナンバーQ8IZM9)の部分配列である、VESELLK(配列番号133);等を例示することができる。

【0027】
前記腫瘍関連マーカータンパク質を定量するためのペプチドの中でも、Vimentin(アクセッションナンバーP08670)の部分配列である、FADLSEAANR(配列番号112);Neurofilament medium polypeptide(アクセッションナンバーP07197)の部分配列である、VSGSPSSGFR(配列番号113);Nestin(アクセッションナンバーP48681)の部分配列である、LELQFPR(配列番号115)、及びGAVAGAPK(配列番号116);Telomerase transcriptase(アクセッションナンバーO14746)の部分配列である、GGPPEAFTTSVR(配列番号117);beta-catenin(アクセッションナンバーP35222)の部分配列である、SGGIPALVK(配列番号119);C-MYC(アクセッションナンバーP01106)の部分配列である、DQIPELENNEK(配列番号121);N-MYC(アクセッションナンバーP04198)の部分配列である、NAALGPGR(配列番号122);GSTP1(アクセッションナンバーP09211)の部分配列である、TLGLYGK(配列番号123);MGMT(アクセッションナンバーP16455)の部分配列である、EWLLAHEGHR(配列番号125)、及びTTLDSPLGK(配列番号126);CD133(アクセッションナンバーO43490)の部分配列である、ANSLPPGNLR(配列番号127);SNAT3(アクセッションナンバーQ99624)の部分配列である、AYEQLGYR(配列番号129);SNAT5(アクセッションナンバーQ8WUX1)の部分配列である、IVPSEVEPFLSWPK(配列番号131);SNAT6(アクセッションナンバーQ8IZM9)の部分配列である、VESELLK(配列番号133);等を特に好適な定量対象ペプチドとして例示することができる。

【0028】
本発明の分子標的薬の標的となり得るタンパク質を定量するためのペプチドとしては、具体的には、HER3(アクセッションナンバーP21860)の部分配列である、GVWIPEGESIK(配列番号134)、LTFQLEPNPHTK(配列番号135)、GTQVYDGK(配列番号136);FGFR1(アクセッションナンバーP11362)の部分配列である、DDVQSINWLR(配列番号137);FGFR2(アクセッションナンバーP21802)の部分配列である、DAAVISWTK(配列番号138)、TVLIGEYLQIK(配列番号139)、EAVTVAVK(配列番号140);FGFR3(アクセッションナンバーP22607)の部分配列である、VGPDGTPYVTVLK(配列番号141);FGFR4(アクセッションナンバーP22455)の部分配列である、YNYLLDVLER(配列番号142)、VLLAVSEEYLDLR(配列番号143)、GGHWYK(配列番号144);RET(アクセッションナンバーP07949)の部分配列である、VFLSPTSLR(配列番号145)、TLGEGEFGK(配列番号146)、ADGTNTGFPR(配列番号147);EphA1(アクセッションナンバーP21709)の部分配列である、TIANFDPR(配列番号148)、AQGELGWLLDPPK(配列番号149)、VTTVAADQSFTIR(配列番号150);EphA2(アクセッションナンバーP29317)の部分配列である、WTPPQDSGGR(配列番号151)、NGVSGLVTSR(配列番号152)、TLADFDPR(配列番号153);EphA3(アクセッションナンバーP29320)の部分配列である、FEQIVSILDK(配列番号154)、QEQETSYTILR(配列番号155);EphA4(アクセッションナンバーP54764)の部分配列である、IGITAITHQNK(配列番号156)、ETFNLYYYESDNDK(配列番号157)、GLNPLTSYVFHVR(配列番号158);EphA5(アクセッションナンバーP54756)の部分配列である、DQETSYTIIK(配列番号159);EphA6(アクセッションナンバーQ9UF33)の部分配列である、VDSSSLVEVR(配列番号160)、TATGYSGYSQK(配列番号161)、FTDIVSFLDK(配列番号162);EphA7(アクセッションナンバーQ15375)の部分配列である、FEQIVGILDK(配列番号163)、AFTAAGYGNYSPR(配列番号164)、AVHQFAK(配列番号165);EphA8(アクセッションナンバーP29322)の部分配列である、DLGASTQESQFLK(配列番号166)、DVISSVEEGYR(配列番号167)、AFQDSDEEK(配列番号168);EphA10(アクセッションナンバーQ5JZY3)の部分配列である、WLPPADSGGR(配列番号169)、VEPQSVSLSWR(配列番号170)、EALLSGISALQAR(配列番号171);EphB1(アクセッションナンバーP54762)の部分配列である、EIDVSFVK(配列番号172)、TVAGYGK(配列番号173)、LQHYSTGR(配列番号174);EphB2(アクセッションナンバーP29323)の部分配列である、FGQIVNTLDK(配列番号175)、EIQGIFFK(配列番号176)、TVAGYGR(配列番号177);EphB3(アクセッションナンバーP54753)の部分配列である、ESSQNNWLR(配列番号178)、YTFEVQAVNGVSGK(配列番号179);EphB4(アクセッションナンバーP54760)の部分配列である、EVPPAVSDIR(配列番号180)、FPETVPR(配列番号181)、FPQVVSALDK(配列番号182);EphB6(アクセッションナンバーO15197)の部分配列である、SFGPLTQR(配列番号183)、ETFTLYYR(配列番号184)、WAAPEVIAHGK(配列番号185);AKT1(アクセッションナンバーP31749)の部分配列である、NDGTFIGYK(配列番号186)、TFHVETPEER(配列番号187)、DEVAHTLTENR(配列番号188);AKT2(アクセッションナンバーP31751)の部分配列である、SDGSFIGYK(配列番号189)、YDSLGLLELDQR(配列番号190)、TFHVDSPDER(配列番号191);AKT3(アクセッションナンバーQ9Y243)の部分配列である、SLLSGLLIK(配列番号192)、HPFLTSLK(配列番号193)、EEWTEAIQAVADR(配列番号194);ERK1(アクセッションナンバーP27361)の部分配列である、GQPFDVGPR(配列番号195)、ELIFQETAR(配列番号196)、NYLQSLPSK(配列番号197);ERK2(アクセッションナンバーP28482)の部分配列である、GQVFDVGPR(配列番号198);MEK1(アクセッションナンバーQ02750)の部分配列である、IPEQILGK(配列番号199)、ISELGAGNGGVVFK(配列番号200);MEK2(アクセッションナンバーP36507)の部分配列である、DDDFER(配列番号201)、ISELGAGNGGVVTK(配列番号202);HSP90α(アクセッションナンバーP07900)の部分配列である、DQVANSAFVER(配列番号203)、VVVSNR(配列番号204);p38α(アクセッションナンバーQ16539)の部分配列である、HENVIGLLDVFTPAR(配列番号205)、YIHSADIIHR(配列番号206);p38β(アクセッションナンバーQ15759)の部分配列である、TVWEVPQR(配列番号207);p38γ(アクセッションナンバーP53778)の部分配列である、YIHAAGIIHR(配列番号208);p38δ(アクセッションナンバーO15264)の部分配列である、VTGVPGTEFVQK(配列番号209)、DYLDQLTQILK(配列番号210)、YIHSAGVVHR(配列番号211);Notch1(アクセッションナンバーP46531)の部分配列である、GSIVYLEIDNR(配列番号212)、LLDEYNLVR(配列番号213)、VLLDHFANR(配列番号214);Notch2(アクセッションナンバーQ04721)の部分配列である、ALGTLLHTNLR(配列番号215)、EPLPPIVTFQLIPK(配列番号216);Notch3(アクセッションナンバーQ9UM47)の部分配列である、LDFPYPLR(配列番号217)、SSADFLQR(配列番号218)、EITDHLDR(配列番号219);Notch4(アクセッションナンバーQ99466)の部分配列である、EQTPLFLAAR(配列番号220)、TWSVDLAAR(配列番号221)、EAGPFPR(配列番号222);HIF-1α(アクセッションナンバーQ16665)の部分配列である、TTVPEEELNPK(配列番号223)、SPNVLSVALSQR(配列番号224)、NLLQGEELLR(配列番号225);DLL1(アクセッションナンバーO00548)の部分配列である、GTPTTLR(配列番号226)、YPAVDYNLVQDLK(配列番号227)、YQSVYVISEEK(配列番号228);DLL3(アクセッションナンバーQ9NYJ7)の部分配列である、AGAWELR(配列番号229)、EVATPLFPPLHTGR(配列番号230);DLL4(アクセッションナンバーQ9NR61)の部分配列である、DNLIPAAQLK(配列番号231);B7-H1(アクセッションナンバーQ9NZQ7)の部分配列である、LQDAGVYR(配列番号232)、NIIQFVHGEEDLK(配列番号233);CD19(アクセッションナンバーP15391)の部分配列である、GTSDGPTQQLTWSR(配列番号234)、LYVWAK(配列番号235)、GPLSWTHVHPK(配列番号236);CD22(アクセッションナンバーP20273)の部分配列である、VTPSDAIVR(配列番号237)、QAAVTSTSLTIK(配列番号238)、EVQFFWEK(配列番号239);CD26(アクセッションナンバーP27487)の部分配列である、VLEDNSALDK(配列番号240)、WISDHEYLYK(配列番号241)、IISNEEGYR(配列番号242);CD28(アクセッションナンバーP10747)の部分配列である、YSYNLFSR(配列番号243);CD44(アクセッションナンバーP16070)の部分配列である、EQWFGNR(配列番号244)、YGFIEGHVVIPR(配列番号245);CD66d(アクセッションナンバーP40198)の部分配列である、EQQPQALAPGR(配列番号246);EpCAM(アクセッションナンバーP16422)の部分配列である、TYWIIIELK(配列番号247);CTLA4(アクセッションナンバーP16410)の部分配列である、QFQPYFIPIN(配列番号248);IL6(アクセッションナンバーP05231)の部分配列である、EALAENNLNLPK(配列番号249)、FESSEEQAR(配列番号250);IL6Rα(アクセッションナンバーP08887)の部分配列である、DDDNILFR(配列番号251);IL6Rβ(アクセッションナンバーP40189)の部分配列である、TLPPFEANGK(配列番号252)、LTWTNPSIK(配列番号253)、DGPEFTFTTPK(配列番号254);IL10(アクセッションナンバーP22301)の部分配列である、DQLDNLLLK(配列番号255)、AHVNSLGENLK(配列番号256);IL10Rα(アクセッションナンバーQ13651)の部分配列である、GQDDSGIDLVQNSEGR(配列番号257);IL10Rβ(アクセッションナンバーQ08334)の部分配列である、LSVIAEDSESGK(配列番号258);RANTES(アクセッションナンバーP13501)の部分配列である、EYFYTSGK(配列番号259);CCR1(アクセッションナンバーP32246)の部分配列である、WLPFLSVDR(配列番号260);CCR3(アクセッションナンバーP51677)の部分配列である、YIPFLPSEK(配列番号261);CDK1(アクセッションナンバーP06493)の部分配列である、NLDENGLDLLSK(配列番号262);CDK2(アクセッションナンバーP24941)の部分配列である、VVPPLDEDGR(配列番号263)、AFGVPVR(配列番号264)、ELNHPNIVK(配列番号265);CDK4(アクセッションナンバーP11802)の部分配列である、APPPGLPAETIK(配列番号266)、DPHSGHFVALK(配列番号267)、VTLVFEHVDQDLR(配列番号268);CDK6(アクセッションナンバーQ00534)の部分配列である、VPEPGVPTETIK(配列番号269)、FVTDIDELGK(配列番号270);TNFα(アクセッションナンバーP01375)の部分配列である、DLSLISPLAQAVR(配列番号271);Fas(アクセッションナンバーP25445)の部分配列である、DITSDSENSNFR(配列番号272);TRAILR1(アクセッションナンバーO00220)の部分配列である、IQDLLVDSGK(配列番号273)、VWGSSAGR(配列番号274)、NASIHTLLDALER(配列番号275);TRAILR2(アクセッションナンバーO14763)の部分配列である、IEDHLLSSGK(配列番号276);BCL2(アクセッションナンバーP10415)の部分配列である、FATVVEELF


R(配列番号277);cIAP1(アクセッションナンバーQ13490)の部分配列である、ILTTGENYK(配列番号278)、GQEFVDEIQGR(配列番号279)、EIDSTLYK(配列番号280);XIAP(アクセッションナンバーP98170)の部分配列である、NFPNSTNLPR(配列番号281)、AGFYALGEGDK(配列番号282)、AGFLYTGEGDTVR(配列番号283);PARP1(アクセッションナンバーP09874)の部分配列である、AQNDLIWNIK(配列番号284)、TLGDFAAEYAK(配列番号285)、DPIDVNYEK(配列番号286);KRAS(アクセッションナンバーP01116)の部分配列である、SFEDIHHYR(配列番号287);BRAF(アクセッションナンバーP15056)の部分配列である、LTQEHIEALLDK(配列番号288)、NQFGQR(配列番号289);APC(アクセッションナンバーP25054)の部分配列である、TSSVTIPELDDNK(配列番号290)、ELNLDSSNFPGVK(配列番号291)、QSTFPQSSK(配列番号292);MMP1(アクセッションナンバーP03956)の部分配列である、TYFFVANK(配列番号293)、SQNPVQPIGPQTPK(配列番号294)、LTFDAITTIR(配列番号295);MMP7(アクセッションナンバーP09237)の部分配列である、DLPHITVDR(配列番号296);MMP9(アクセッションナンバーP14780)の部分配列である、SLGPALLLLQK(配列番号297)、GVVVPTR(配列番号298)、QLAEEYLYR(配列番号299);MT-MMP1(アクセッションナンバーP50281)の部分配列である、VWEGIPESPR(配列番号300)、EVPYAYIR(配列番号301)、FYGLQVTGK(配列番号302);VCAM1(アクセッションナンバーP19320)の部分配列である、VPSVYPLDR(配列番号303)、LTAFPSESVK(配列番号304)、NTVISVNPSTK(配列番号305);RANKL(アクセッションナンバーO14788)の部分配列である、VSLSSWYHDR(配列番号306)、QAFQGAVQK(配列番号307)、ELQHIVGSQHIR(配列番号308);等を例示することができる。

【0029】
本発明のタンパク質を定量する方法としては、(a)試料中の被定量タンパク質をトリプシンによって断片化し、被定量タンパク質のペプチド断片を調製する工程;(b)前記定量対象ペプチド、及び前記定量対象ペプチドと同配列の安定同位体標識ペプチドを用いて、それぞれの所定濃度段階に対するLC/MS/MSを用いた質量分析を行い、検量線を作成する工程;(c)前記被定量タンパク質のペプチド断片に、前記安定同位体標識ペプチドを添加してLC/MS/MSを用いた質量分析を行い、被定量タンパク質ペプチド/安定同位体標識ペプチドのマススペクトル面積比を算出する工程;(d)該面積比から検量線を用いて定量値を算出する工程;の工程(a)~(d)を備えた、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)によって、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量する方法であって、定量対象ペプチドが、前記本発明のペプチドあることを特徴とする方法であれば、特に制限されるものではなく、前記ペプチド断片を調製する工程としては、試料中の被定量タンパク質をトリプシンによって断片化し、被定量タンパク質のペプチド断片を調製する工程であれば特に制限されないが、被定量タンパク質のアルギニン残基及びリシン残基の両方の部位を効率よく切断できるという点から、あらかじめリシルエンドペプチダーゼを用いて断片化した試料中の被定量タンパク質を、さらにトリプシンを用いて断片化する工程であることが好ましい。前記ペプチド断片を調製する工程は、タンパク質消化酵素の標準的な反応条件により行うことができ、トリプシンの反応条件としては、例えば、30℃~45℃において1~36時間であることが好ましく、36~37℃において16~24時間であることがさらに好ましい。また、前記ペプチド断片を調製する工程における、リシルエンドペプチダーゼの反応条件としては、例えば、室温~45℃において1~36時間であることが好ましく、室温~25℃において3時間であることがさらに好ましい。前記本発明のタンパク質を定量する方法に用いる試料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、生体から採取された細胞、組織、又は血液等を好適に例示することができる。

【0030】
上記定量対象ペプチドとしては、本発明のペプチドであれば特に制限されないが、具体的には、本発明の分子標的薬の標的タンパク質を定量するための配列番号1~45のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドや、一般診断において診断対象となるタンパク質を定量するための配列番号46~111のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドや、腫瘍関連マーカータンパク質を定量するための配列番号112~133のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドや、分子標的薬の標的となり得るタンパク質を定量するための配列番号134~308のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチド等を好適に例示することができる。また、上記本発明のペプチドは、一般的な化学合成法により製造することができる。かかるペプチド合成法として、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させ鎖を延長させていくステップワイズエロゲーション法や、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法のいずれも採用することができる。

【0031】
また、本発明の安定同位体標識ペプチドとしては、前記の本件非標識ペプチドを構成するアミノ酸の1個以上が、15N,13C,18O,及びHのいずれか1以上を含む安定同位体標識ペプチドであれば、アミノ酸の種類、位置、及び数は、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)で分離可能な質量差を有する限りにおいて特に制限されないが、中でも13Cで6箇所標識されたロイシンを含むことがより好ましい。かかる安定同位体標識ペプチドは、安定同位元素により標識されたアミノ酸を用いてF-moc法(Amblard., et al. Methods Mol Biol.298:3-24(2005))等の適当な手段で目的ペプチドを化学合成することができる。また、安定同位体標識ペプチドは、定量対象ペプチドと標識アミノ酸の質量が異なる点以外では化学的に同一でLC/MS/MSによる測定において同一の挙動を示すことから、質量分析装置を用いたタンパク質定量における内部標準ペプチドとして有利に用いることができる。

【0032】
本発明のキットとしては、本発明のペプチドを備えることを特徴とする、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量するためのキットであれば特に制限されないが、上記本発明のペプチドと同じアミノ酸配列からなる安定同位体標識ペプチドをさらに備えたものであることが好ましい。また、本発明のタンパク質定量用キットは、トリプシン又はリシルエンドペプチダーゼや、必要と目的に応じた緩衝液、pH調製剤、反応容器等をさらに備えたものであってもよい。

【0033】
本発明の使用方法としては、本発明のペプチドを、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)によって、疾患の治療又は診断の指標となるタンパク質を定量するための定量対象ペプチドとして使用する方法であれば特に制限されず、上記本発明のペプチドは、定量用の検量線作成に用いられ、上記本発明のペプチドと同じアミノ酸配列からなる安定同位体標識ペプチドは、定量用の検量線作成及び内部標準ペプチドとして用いられる。

【0034】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
1.より高感度なタンパク質の定量方法の確立
国際公開第2007/055116号パンフレット、特開2010-197110号公報、及び特開2010-85103号公報に記載された定量方法(以下、これらの定量方法を「従来の定量方法」と総称する場合もある)は、質量分析計で高感度に検出できるペプチドを選定するためのクライテリアを備えたものであった。本実施例においては、従来の定量方法と比較して、より高感度なタンパク質の定量方法(以下、「本発明の定量方法」と称する場合もある)を確立する目的で、(1)タンパク質の酵素処理工程の改良実験、及び(2)定量対象ペプチドとして、液体クロマトグラフィにより確実に分離できるペプチドを選択する基準を確立するための検討を行った。
【実施例2】
【0036】
(1)タンパク質の酵素処理工程の改良
質量分析計を用いたタンパク質の定量を行う際に、酵素によるタンパク質の消化が不完全であると正確な定量値を得ることが出来ない。従来の定量方法においては、トリプシンによってタンパク質の消化を行っていた。トリプシンは、リシン(K)及びアルギニン(R)のカルボキシル基側のペプチド結合を加水分解する酵素であるが、アルギニン残基における切断効率と比較して、リシン残基における切断効率が低いと考えられていた。そこで、本実験においては、リシン残基を切断する活性を有する酵素であるリシルエンドペプチダーゼ(以下、「Lys-C」と記載する場合もある)を、トリプシンと組み合わせて用いることによって、効率的なタンパク質の分解が可能となるかを検討した(図2)。
そこで、マウス肝臓から、超遠心処理及びスクロース密度勾配遠心によって細胞膜画分を調製し、細胞膜上に発現するタンパク質(ntcp及びmct1)の消化効率について、トリプシン単独で消化した場合と、Lys-Cによる3時間の消化後に、トリプシンで16時間消化した場合とを比較した。トリプシン及びLys-Cの反応条件は以下の通りである。
<トリプシン>
トリプシン:Sequencing Grade Modified Trypsin,Frozen(プロメガ社製)
濃度:タンパク質量の1/100量
バッファー組成:1.2M urea、0.1M Tris-HCl、0.05%ProteaseMaxTM Surfactant
温度:37℃
<Lys-C>
Lys-C:Lysyl Endopeptidase生化学用(和光純薬工業社製)
濃度:タンパク質量の1/100量
バッファー組成:1.2M urea、0.1M Tris-HCl、0.05%ProteaseMaxTM Surfactant
温度:室温
【実施例2】
【0037】
結果を図3及び4にそれぞれ示す。図3及び4に示されるように、ntcpタンパク質及びmct1タンパク質の両方のタンパク質の消化効率は、トリプシン単独と比較して、Lys-C消化後にトリプシンで消化した場合に、大幅に上昇することが明らかとなった。次に、マウス肝臓から、超遠心処理及びスクロース密度勾配遠心によって細胞膜画分を調製し、該細胞膜分画を、トリプシン単独で16時間消化した場合と、Lys-Cによる3時間の消化後にトリプシンで消化した場合の、4F2hc、mrp6、abcg5、abcg8、oatp1、mct1、bsep、ntcp、glut1、bgt1、及びNa/K ATPaseのLC/MS/MSによる定量値の違いを検討した。図5に結果を示すように、ntcpは、トリプシン単独で消化した場合の定量値が3.72であるのに対し、Lys-C消化後にトリプシンで消化した場合の定量値は26.2であり、7倍もの差が認められた。以上のことから、トリプシンでの消化を行う前に、Lys-Cで消化を行うことにより、より正確な定量値を得ることが可能となることが明らかとなった。
【実施例3】
【0038】
(2)液体クロマトグラフ部における分離
HPLC又はnanoLCにおいて、溶出時間が早すぎる場合には十分なペプチドの分離が行われず感度が低下することや、脱塩カラムやトラップカラムに保持されず定量できないことが考えられる。また、溶出時間が遅すぎる場合は、分離カラムへのペプチドの保持力が強いため、回収率の低下による感度の低下が考えられる。そこで、従来の定量方法により計測した既知のペプチド溶出位置から、各アミノ酸に対するパラメータを設定し測定に適した溶出時間を検討した。前記パラメータを用いて、71のペプチドについて溶出時間を予測し、実際の溶出時間と比較した。結果を図6に示す。検討したペプチドのうち、85%のペプチド(60のペプチド)がパラメータから予測された溶出時間と5分以内の誤差に収まった。一方、パラメータからの予測時間と10分以上の誤差が認められたペプチドはわずか2.8%(2つのペプチド)であった。この予測溶出時間に基づき定量に適した溶出時間を検討した結果、図7に示すように液体クロマトグラフィにより最も適切な分離が行われるペプチドが、溶出時間40~60分の間のものであることが明らかとなった。
【実施例3】
【0039】
以下に上記の溶出時間予測に用いた71のペプチドのアミノ酸配列を示す。
FVSPLSWDLVGR(配列番号309)
LGGNPLFR(配列番号310)
VPLLAVDR(配列番号311)
VLPTLLDSR(配列番号312)
NAVVPIK(配列番号313)
TNTFPDLFSDLDK(配列番号314)
QFQSPLR(配列番号315)
LFPQAAR(配列番号316)
DGHGDSPLFFLK(配列番号317)
LLAIPIPDNR(配列番号318)
FHPQNLPADGFK(配列番号319)
NTTGALTTR(配列番号320)
IATEAIENIR(配列番号321)
SADLIVTLK(配列番号322)
STALQLIQR(配列番号323)
TPSGNLVNR(配列番号324)
QLLNNILR(配列番号325)
AEGEISDPFR(配列番号326)
APVLFFDR(配列番号327)
SLSEASVAVDR(配列番号328)
APETEPFLR(配列番号329)
VFTALALVR(配列番号330)
FNLDPFDR(配列番号331)
FSIAILPFSIK(配列番号332)
EDLFELK(配列番号333)
GAVLINGLPR(配列番号334)
SSLLDVLAAR(配列番号335)
GVVTNLIPYLK(配列番号336)
DSPGVFSK(配列番号337)
ASLLDVITGR(配列番号338)
GGPEATLEVR(配列番号339)
YLQNQGWLK(配列番号340)
YTADLLEVLK(配列番号341)
VDNSSLTGESEPQTR(配列番号342)
VQDAFAAAK(配列番号343)
GIYDGDLK(配列番号344)
IAGLPWYR(配列番号345)
TLPVFPK(配列番号346)
SITVFFK(配列番号347)
AVTVFFK(配列番号348)
VNTAAVNLVPGDPR(配列番号349)
EGLETNADIIK(配列番号350)
LNTVGIAK(配列番号351)
IYNSVFFGR(配列番号352)
VLLQTLR(配列番号353)
SGELQGDEAQR(配列番号354)
YEVELDAGVR(配列番号355)
LYDSNVFR(配列番号356)
NPVHLDQNDPR(配列番号357)
IFGTIPGPSIFK(配列番号358)
HLPGTAEIQAGK(配列番号359)
LSPSFADLFR(配列番号360)
SLPASLQR(配列番号361)
FLQGVFGK(配列番号362)
TSLAVLGK(配列番号363)
NVALLAPLPR(配列番号364)
YTASDLFR(配列番号365)
NLPLPDTIK(配列番号366)
VVFAVLGK(配列番号367)
GGAILGPLVR(配列番号368)
TGPSGNALDLFR(配列番号369)
DQPLSESLNHSSQIR(配列番号370)
VGGIIAPFIPSLK(配列番号371)
TLGPTVGGLLYR(配列番号372)
AGSSFVFGEALVK(配列番号373)
DHFFAFK(配列番号374)
WLPSLVLAR(配列番号375)
SLTSYFLWPDEDSR(配列番号376)
DVLSVFLPDVPETES(配列番号377)
VDNSSLTGESEPQTR(配列番号378)
LFQPSIQLAR(配列番号379)
【実施例3】
【0040】
実際に、従来の定量方法における測定対象ペプチドを選択するためのクライテリアに、前記のペプチドの溶出時間に関するクライテリアを追加して定量対象ペプチドの選定を行った。その結果、測定感度が改善されたペプチドを図8に示す。ABCA9、NET、xCT、BOIT(BOCT)、MDR1、CYP2C8、及びCYP2B6は、従来の測定方法と比較して感度が大幅に上がり、検討した全ての定量対象ペプチド断片が10fmolの濃度で検出された。また、ここで測定のために使用された定量対象ペプチドのアミノ酸配列は以下の通りである。
ABCA9:LFPQAAQQER(配列番号380)
NET:FTPAAEFYER(配列番号381)
xCT:GGYLQGNVNGR(配列番号382)
BOIT(BOCT):QPPPTR(配列番号383)
MDR1:FYDPLAGK(配列番号384)
CYP2C8:EHQASLDVNNPR(配列番号385)
CYP2B6:GYIIPK(配列番号386)
【実施例4】
【0041】
2.本発明の定量方法を用いた分子標的薬の標的タンパク質の定量
実施例1~3に記載のように、従来の定量方法を改良することにより、より高感度の本発明の定量方法が確立できることが明らかとなった。図9に示すように、現在のがん治療には様々な分子標的薬が使用されており、個々の患者における標的分子の発現を解析することは、治療薬を選択する上で非常に重要な指標となり得る。そこで、がんの個別化治療法の開発を行うために、現在一般的に用いられている分子標的薬の標的タンパク質が、前記本発明の定量方法により定量できるかどうかを検討した。図10に結果を示すように、分子標的薬の標的として知られる各種タンパク質(PDGFRα、PDGFRβ、EGFR-pep3、PDGFRα、CD33、Na+/K+ATPase、HER2、CD37、EGFR-pep2、EGFR-pep1、IGFR、及びc-kit)はいずれも、5fmol/injectionで定量できることが明らかとなった。次に、本発明の定量方法により、実際のヒト脳腫瘍検体細胞膜分画中の分子標的薬の標的タンパク質を定量した。図11に結果を示すように、実際のヒト脳腫瘍検体細胞膜分画において、PDGFRβ、FLT3、EGFR-pep2、HER2、VEGFR1、CD33、CD37、及びc-kitが、本発明の定量方法の検出限界(fmol/μgタンパク質)以上の濃度で存在しており、これらのタンパク質については定量できることが明らかとなった。また、実験に用いたヒト脳腫瘍検体細胞膜分画における、VEGFR2、MET(HGFR)、IGFR、及びFLT3の濃度は、本発明の定量方法の検出限界(fmol/μgタンパク質)以下であることが明らかとなった。
【実施例5】
【0042】
3.腫瘍組織におけるタンパク質の定量と個別化治療の確立
実施例4に記載のように、本発明の定量方法を用いて、分子標的薬の標的タンパク質を高感度で定量できることが明らかとなった。そこで、本発明の定量方法を用いて、脳腫瘍組織における様々な分子標的薬の標的タンパク質の定量を行い、得られた結果に基づいて脳腫瘍患者の個別化治療を行った。
(1)患者
右蝶形骨縁退形成性髄膜腫の女性患者(62歳)。2度の腫瘍摘出術及び放射線治療(全脳照射+播種性病変へのLINACsurgery)を実施したが、1ヵ月後に原発巣の再発と播種性病変の増悪が認められた。
【実施例5】
【0043】
(2)細胞膜分画の調製
前記患者より摘出された検体を凍結保存し、以下の実験に用いた。凍結保存された検体を細切し、組織湿重量の1/100量のPMSF及びプロテアーゼインヒビターを含む氷冷した低張緩衝液(10mM NaCl、1.5mM MgCl、10mM Tris-HCl、pH7.4)を加えた。テフロン(登録商標)製ホモジナイザー(10ストローク)により組織を破砕し、30分間氷中で静置した後、再び、テフロン(登録商標)製ホモジナイザー(20ストローク)により組織を破砕した。このようにして得られた破砕組織懸濁液を全組織ライセートとした。また、前記のテフロン(登録商標)製ホモジナイザーによる組織を破砕処理後に顕微鏡で組織の破砕状況を確認し、細胞が十分に破砕されていなかった場合には、破砕組織懸濁液を窒素ガス細胞破砕器に移し、nitrogen cavitation法(450psi、15分、4℃)によって、細胞を破砕した。
【実施例5】
【0044】
得られた全組織ライセートを遠心(10,000g、10分、4℃)して上清を回収し、debris分画を取り除いた。得られた上清を、さらに超遠心(100,000g、40分、4℃)し、ペレットを回収した。このペレットを、氷冷したサスペンジョン緩衝液[250mM sucrose (8.56% sucrose)、10mM Tris-HCl、pH7.4]で懸濁した。作製した懸濁液を、38%スクロース溶液(10mM Tris-HCl、pH7.4)に重層して、超遠心(100,000g、40分、4℃)し、中間層を回収した。この中間層を、再度、超遠心(100,000g、40分、4℃)し、得られたペレットを細胞膜分画とした。回収した細胞膜分画を、氷冷したサスペンジョン緩衝液[250mM sucrose (8.56% sucrose)、10mM Tris-HCl、pH7.4]で懸濁した。
【実施例5】
【0045】
(3)細胞膜分画の還元アルキル化及び酵素消化処理
調製した細胞膜分画のタンパク質量は、DCプロテインアッセイキットを用いて定量した。細胞膜分画懸濁液に、細胞膜分画懸濁液と等容量以上のアルキル化バッファー(7M グアニジン塩酸塩、10mM EDTA-2Na、0.5M Tris-HCl、pH8.5)を加えて、計220μLとした。ここにタンパク質量と等量のジチオトレイトールを加えて1時間撹拌した。その後、さらに、タンパク質量の2.5倍量のヨードアセトアミドを加え、遮光下で1時間撹拌した。撹拌後に、氷冷した600μLのメタノール、氷冷した150μLのクロロホルム、及び氷冷した450μLのミリQ水を順次加え、スイングローターを用いて遠心(12,000rpm、3分、4℃)した。遠心後に上清を取り除き、氷冷した450μLのメタノールをさらに加えて、再度遠心(15,000rpm、5分、4℃)した。遠心後に完全に上清を取り除き、タンパク質試料を回収した。前記のメタノール-クロロホルム沈殿処理によって得られたタンパク質試料を、6M尿素(0.1M Tris-HCl、pH8.5)に溶解し、尿素の最終濃度が1.2Mとなるように、0.1M Tris-HCl(pH8.5)を加えた。さらに、最終濃度が0.05%となるように1%のProteaseMAXTM Surfactant(プロメガ社製)を加えた。次に、ここに含まれるタンパク質量の1/100量のリシルエンドペプチダーゼを加えて、室温で3時間酵素処理した。リシルエンドペプチダーゼ処理後に、さらに、タンパク質量の1/100量のトリプシンを加えて、37℃で16時間酵素処理を行った。
【実施例5】
【0046】
(4)LC/MS/MSによる定量
LC/MS/MSを用いて調製した試料に含まれる、薬物トランスポーターや受容体チロシンキナーゼを含む腫瘍細胞膜タンパク発現量を解析した。定量の条件を以下に示す。
(液体クロマトグラフ部)
HPLC:Agilent 1200 HPLCシステム(アジレント・テクノロジー社製);
カラム:XBridge BEH130 C18、3.5μm、100x1.0mm(ウォーターズ社製);
移動相:0.1%ギ酸/ミリQ水からなる移動相A、0.1%ギ酸/アセトニトリルからなる移動相B;
流速:0~60分では50μL/min、60~90分では100μL/min;
濃度勾配:0分~5分では99/1(移動相A/移動相B)、5分~55分では99/1(移動相A/移動相B)から50/50(移動相A/移動相B)、56~58分では100%移動相B、60~90分にでは99/1(移動相A/移動相B);
MS/MS:ESI-Triple Quadrupole Mass Spectrometer(QTRAP5500;AB SCIEX社製);
【実施例5】
【0047】
(5)腫瘍組織におけるタンパク質の定量結果
図12の右上図に、本発明のLC/MS/MSを用いたタンパク質定量方法による定量結果を示す。図12の右上図に示されるように、前記女性患者の脳腫瘍組織においては、他の分子標的薬の標的タンパク質と比較して、PDGFRβの発現が高いことが明らかとなった。そこで、学内倫理審査委員会の承認を得て、前記女性患者に、PDGFRβを阻害する分子標的薬スニチニブ(sunitinib)を、1クールを12.5mgx2回/日、28日間の条件で投与したところ、開始2週間後に原発巣及び播種巣を含む造影病変の内部壊死と見られるMRI所見が得られた。結果を図12の下パネルに示す。以上のように、本発明の定量方法を用いて、検体における分子標的薬の標的タンパク質の発現量を解析し、得られたデータに基づいて、MIB1インデックスが60%以上を示す、制御の難しい腫瘍であっても腫瘍増殖を制御することができた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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