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明細書 :炭素ナノ構造体、金属内包樹状炭素ナノ構造物の作製方法、及び炭素ナノ構造体の作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5481748号 (P5481748)
登録日 平成26年2月28日(2014.2.28)
発行日 平成26年4月23日(2014.4.23)
発明の名称または考案の名称 炭素ナノ構造体、金属内包樹状炭素ナノ構造物の作製方法、及び炭素ナノ構造体の作製方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
H01M   4/96        (2006.01)
H01M   4/88        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
B82B 1/00
B82B 3/00
H01M 4/96 M
H01M 4/88 C
請求項の数または発明の数 19
全頁数 18
出願番号 特願2009-545410 (P2009-545410)
出願日 平成20年12月9日(2008.12.9)
国際出願番号 PCT/JP2008/072330
国際公開番号 WO2009/075264
国際公開日 平成21年6月18日(2009.6.18)
優先権出願番号 2007321170
2008120233
優先日 平成19年12月12日(2007.12.12)
平成20年5月2日(2008.5.2)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成23年12月2日(2011.12.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
発明者または考案者 【氏名】西 信之
【氏名】沼尾 茂悟
【氏名】十代 健
【氏名】西條 純一
【氏名】水内 和彦
個別代理人の代理人 【識別番号】110001092、【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
【識別番号】100110180、【弁理士】、【氏名又は名称】阿相 順一
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開2006-294493(JP,A)
特開2006-290691(JP,A)
特開2007-182352(JP,A)
特開2007-284336(JP,A)
特開2002-293521(JP,A)
特開2007-035811(JP,A)
特開2007-126338(JP,A)
Zhenyu YAO et al.,Synthesis of novel Y-junction hollow carbon nanotrees,Carbon,2007年 6月,Vol.45,pp. 1566-1570
調査した分野 C01B 31/00-31/36
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなり、BET比表面積が870m/g以上であることを特徴とする、樹状の炭素ナノ構造体。
【請求項2】
前記炭素を含む棒状体または環状体は3次元的構造を呈することを特徴とする、請求項1に記載の炭素ナノ構造体。
【請求項3】
前記炭素ナノ構造体の樹状部分の長さが150nm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の炭素ナノ構造体。
【請求項4】
前記炭素ナノ構造体の樹状部分の直径が150nm以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一に記載の炭素ナノ構造体。
【請求項5】
前記炭素ナノ構造体は、BET比表面積が1300m/g以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一に記載の炭素ナノ構造体。
【請求項6】
金属又は金属塩を含む溶液を準備する工程と、
前記溶液に対して超音波を印加した状態でアセチレンガスを吹き込み、前記金属及び炭素を含む樹状結晶体を作製する工程と、
前記樹状結晶体を加熱して前記樹状結晶体中の前記金属を偏析させ、前記炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状の炭素ナノ構造体中に、前記金属が内包されてなる金属内包樹状炭素ナノ構造物を作製する工程と、
を具えることを特徴とする、金属内包樹状炭素ナノ構造物の作製方法。
【請求項7】
前記溶液に対して超音波を印加するとともに、前記溶液を攪拌することを特徴とする、請求項6に記載の金属内包樹状炭素ナノ構造物の作製方法。
【請求項8】
前記加熱は、60℃~80℃の温度範囲で実施することを特徴とする、請求項6又は7に記載の金属内包樹状炭素ナノ構造物の作製方法。
【請求項9】
前記金属は銀であることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一に記載の金属内包樹状炭素ナノ構造体の作製方法。
【請求項10】
金属又は金属塩を含む溶液を準備する工程と、
前記溶液に対して超音波を印加した状態でアセチレンガスを吹き込み、前記金属及び炭素を含む樹状結晶体を作製する工程と、
前記樹状結晶体に第1の加熱処理を施して前記樹状結晶体中の前記金属を偏析させ、前記炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状の炭素ナノ構造体中に、前記金属が内包されてなる金属内包樹状炭素ナノ構造物を作製する工程と、
前記金属内包樹状炭素ナノ構造物に対して第2の加熱処理を施して、前記金属内包樹状炭素ナノ構造物に内包される前記金属を噴出させる工程と、
を具えることを特徴とする、炭素ナノ構造体の作製方法。
【請求項11】
前記溶液に対して超音波を印加するとともに、前記溶液を攪拌することを特徴とする、請求項10に記載の炭素ナノ構造体の作製方法。
【請求項12】
前記金属内包樹状炭素ナノ構造物に内包される前記金属を噴出させて得た炭素ナノ構造中間体に溶解洗浄を施し、残存した前記金属を除去する工程を具えることを特徴とする、請求項10又は11に記載の炭素ナノ構造体の作製方法。
【請求項13】
前記第1の加熱処理は、60℃~80℃の温度範囲で実施することを特徴とする、請求項10~12のいずれか一に記載の炭素ナノ構造体の作製方法。
【請求項14】
前記第2の加熱処理は、160℃~200℃の温度範囲で実施することを特徴とする、請求項10~13のいずれか一に記載の炭素ナノ構造体の作製方法。
【請求項15】
前記炭素ナノ構造中間体に対して、真空中又は不活性ガス雰囲気中で第3の加熱処理を施すことを特徴とする、請求項10~14のいずれか一に記載の炭素ナノ構造体の作製方法。
【請求項16】
前記第3の加熱処理は、180℃~200℃の温度範囲で実施することを特徴とする、請求項15に記載の炭素ナノ構造体の作製方法。
【請求項17】
請求項1~5のいずれか一に記載の炭素ナノ構造体を加圧成形して得たことを特徴とする、ペレット。
【請求項18】
請求項1~5のいずれか一に記載の炭素ナノ構造体を含むことを特徴とする、触媒担持用担体。
【請求項19】
請求項1~5のいずれか一に記載の炭素ナノ構造体を含むことを特徴とする気体分子吸蔵体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ技術による燃料電池電極や水素吸蔵体、各種触媒担持体などの基本となる、炭素ナノ構造体、金属内包樹状炭素ナノ構造物の作製方法、炭素ナノ構造体の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素材料は、低温型燃料電池やスーパーキャパシタの電極や液相触媒反応における触媒担持体として用いられ、その重要性と作製コストの廉価性の必要が益々高まっている。電極や触媒担体としての使用に対しては、空孔率が高く気体や液体の流動性の高さが重要となってくる。これに加えて、電極材料としては高い電気伝導特性と電流密度の高さが要求される。これらの条件を少しは満たす製品として、炭素ナノチューブやナノホーンに白金粒子を分散させこれを高温で焼結したものや、炭素繊維と炭素を混ぜて焼結するなどの方法により作製されたものが市販されている。
【0003】
しかしながら、上述のように得た炭素材料は、元来分離していたチューブやホーン、あるいは繊維を高温で焼固めてシート状としたものであり、炭素シートの媒体透過方向での気孔性の高さと電気伝導性の高さとは相矛盾する要因を抱えている。
【0004】
一方、多孔性の炭素材料は、それ自身あるいは金属原子・クラスター担持炭素ナノ細孔体として水素吸蔵体としての役割が高まっている。このような作用を果たす炭素材料としては、カーボンナノチューブなどが着目されているが、低圧での吸蔵特性が実用に耐えず、金属では重量の問題と実用不可能な高温でないと水素を放出出来ないなどの多くの欠点を有しており、本格的実用化への障壁となっている。
【0005】
このような観点から、特許文献1では、カーバイド(炭化物)とハロゲンとを用いて多孔性の炭素構造体を作製することが開示されている。しかしながら、この技術では、使用するカーバイドとハロゲンとの組み合わせを制御することによって、孔の大きさを制御できることを開示しているのみであり、孔の数の増減については何ら触れていない。したがって、前記炭素構造体は、気孔性の高さと電気伝導性の高さとを十分に満足するものではない。
【0006】
一方、近年、ガソリンの価格が急騰し、エネルギー問題が重要な課題となっている。例えば、自動車のエンジンで、ガソリンの燃焼によって生み出した運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、有効に活用する目的でハイブリッドシステム等が開発されている。このようなハイブリッドシステムでは、大電流・高速充放電可能な蓄電デバイスが必要で、ニッケル水素・リチウム二次電池やスーパーキャパシタを単独又は組み合わせて行われている。
【0007】
スーパーキャパシタは、電気二重層キャパシタとも呼ばれ、正極表面にマイナスイオンを、負極表面にプラスイオンを吸着させて蓄電する。その容量を十分に向上させるには、電極の表面積を出来るだけ大きくとり、出来る限り多くのイオンを吸着させることが重要である。
【0008】
このような観点から、前記スーパーキャパシタの電極材料としては、従来、多孔質材料、特にある程度の導電性を有し、電解質材料との間で化学反応を生ぜしめることがないなどの理由により、多孔質炭素材料が用いられてきた。例えば、所定の炭素材料を高温の水蒸気と接触させて細孔を形成する方法や、所定の炭素材料をアルカリ金属水酸化物の溶融塩で処理するいわゆるアルカリ賦活する試みもなされている。
【0009】
しかしながら、水蒸気を用いた多孔質化の場合は、嵩密度が低下するため、実質的な表面積が増大しても、炭素材料の体積当りの静電容量が低下してしまう、さらには多孔質炭素材料の歩留まりが低下してしまうという問題があった。また、アルカリ賦活の場合は、得られた電極の、初回充電時の体積膨張が大きく、極端な場合セルの破損に至るおそれが生じるという問題があった。さらに、副生するアルカリ金属が高反応性のため、安全を確保するために装置コストが多大となるという問題もあった。
【0010】
したがって、上記いずれの技術においても、実用に足るスーパーキャパシタ及びスーパーキャパシタとして使用可能な多孔質炭素材料を提供することができない。
【0011】
かかる観点より、上述のような水蒸気を用いたり、アルカリ溶融塩を用いたりした後処理を用いることなく、当初より十分な比表面積を有する多孔質炭素材料を得ようとする試みもなされている。例えば、特許文献2には、ポリビニルアルコール、スチレン等の有機質樹脂を酸化マグネシウム等の無機微粒子と共に加熱し、微粒子表面に炭化物を析出させ、次いで酸洗浄することで微粒子を除去して、多孔質材料を製造する方法が開示されている。
【0012】
しかしながら、上記方法により得られる多孔質炭素材料は製造歩留まりが低く、得られる多孔質炭素材料は高価なものになってしまうという問題があった。また、十分な比表面積を得ることができず、スーパーキャパシタとして使用できるに足る十分な静電容量を備えることができないという問題もあった。

【特許文献1】米国特許公開第2006/0165584公報
【特許文献1】特開2006-062954公報
【発明の開示】
【0013】
(発明が解決しようとする課題)
本発明は、上記問題に鑑み、気孔性の高さと電気伝導性の高さとを同時に満足できるような新規な構造の炭素材料を提供することを目的とする。
【0014】
上記目的を達成すべく、本発明は、炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状の炭素ナノ構造体と、前記炭素ナノ構造体中に内包された金属体と、を具えることを特徴とする、金属内包樹状炭素ナノ構造物に関する。
【0015】
また、本発明は、炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状の炭素ナノ構造体に関する。
【0016】
本発明の炭素ナノ構造体は、炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状を呈しているので、それ自体高い気孔性を有する。
【0017】
また、本発明の炭素ナノ構造体は、上述のような樹状を呈しているので、それ自体高い比表面積を有する。したがって、水素などの任意のガスを十分に吸蔵することができ、気体分子吸蔵体として十分に機能することができる。また、触媒担持用担体としても十分に機能することができるようになる。
【0018】
なお、本発明における“ナノ構造体”及び“ナノ構造物”とは、以下に詳述するようにnmオーダから数百nmオーダのスケールの構造体及び構造物を意図するものである。
【0019】
また、上記特許文献1の炭素構造体は、たとえばTiSiCからハロゲンを用いて金属を溶かして多孔性の炭素構造体を作製するものであって、以下に説明するように、本発明の上記金属内包樹状ナノ構造物等の製造方法とは全く異なる。したがって、上記のような樹状構造の金属内包樹状ナノ構造物や炭素ナノ構造体を得ることはできない。実際、樹状構造の炭素構造体等については何ら言及していない。
【0020】
上述した金属内包樹状炭素ナノ構造物及び炭素ナノ構造体は、以下のような作製方法によって得ることができる。
【0021】
すなわち、前記金属内包樹状炭素ナノ構造物の作製方法は、金属又は金属塩を含む溶液を準備する工程と、前記溶液に対して超音波を印加した状態でアセチレンガスを吹き込み、前記金属及び炭素を含む樹状結晶体を作製する工程と、前記樹状結晶体を加熱して前記樹状結晶体中の前記金属を偏析させ、前記炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状の炭素ナノ構造体中に、前記金属が内包されてなる金属内包樹状炭素ナノ構造物を作製する工程と、を具えることを特徴とする。
【0022】
また、前記炭素ナノ構造体の作製方法は、金属又は金属塩を含む溶液を準備する工程と、前記溶液に対して超音波を印加した状態でアセチレンガスを吹き込み、前記金属及び炭素を含む樹状結晶体を作製する工程と、前記樹状結晶体に第1の加熱処理を施して前記樹状結晶体中の前記金属を偏析させ、前記炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状の炭素ナノ構造体中に、前記金属が内包されてなる金属内包樹状炭素ナノ構造物を作製する工程と、前記金属内包樹状炭素ナノ構造物に対して第2の加熱処理を施して、前記金属内包樹状炭素ナノ構造物に内包される前記金属を噴出させる工程と、を具えることを特徴とする。
【0024】
(発明の効果)
以上説明したように、本発明によれば、気孔性の高さと電気伝導性の高さとを同時に満足できるような新規な構造の炭素材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の金属内包樹状ナノ構造物のSEM像である。
【図2】同じく、本発明の金属内包樹状ナノ構造物のSEM像である。
【図3】本発明の炭素ナノ構造体の環状体の内部構造を概略的に示す図である。
【図4】本発明の金属内包樹状ナノ構造物から得た炭素ナノ構造中間体のSEM像である。
【図5】本発明の炭素ナノ構造体のSEM像である。
【図6】本発明のキャパシタの一例における概略構成を示す図である。
【図7】本発明の金属内包樹状ナノ構造物(炭素ナノ構造体)の作製過程で得る沈殿物のSEM像である。
【図8】前記炭素ナノ構造中間体のTGA(熱重量測定)のグラフである。
【図9】上記炭素ナノ構造体の吸着曲線である。
【図10】前記炭素ナノ構造体の電子エネルギー損失スペクトル(EELS)である。
【図11】前記炭素ナノ構造体から得たペレットのSEM写真である。
【図12】市販活性炭のペレットのSEM写真である。
【図13】キャパシタ10の、電流密度と静電容量との関係を示すグラフである。
【図14】実施例4におけるキャパシタのCV図である。
【図15】比較例2におけるキャパシタのCV図である。
【図16】実施例5、比較例3の電流密度と静電容量との関係を示すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について説明する。
【0027】
(金属内包樹状炭素ナノ構造物)
本発明の金属内包樹状炭素ナノ構造物は、上述したように、炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状の炭素ナノ構造体と、前記炭素ナノ構造体中に内包された金属体とを具える。
【0028】
前記炭素ナノ構造体は、以下に示すような作製方法に起因して、例えば樹状部分の長さが150nm以下となる。また、前記樹状部分の直径が150nm以下となる。すなわち、前記炭素ナノ構造体は、極めて微細な大きさの樹状構造物である。なお、樹状部分の長さの下限値及び直径の下限値は、例えば50nm及び20nmである。
【0029】
前記金属内包樹状炭素ナノ構造物は、それ自体は金属体を内包しているので高い電気伝導性を呈する。したがって、高い気孔性と高い電気伝導性とを十分に満足した炭素構造体(炭素材料)を得ることができる。したがって、電極や触媒担持電極等として好適に用いることができる。
【0030】
本発明において、前記金属内包樹状炭素ナノ構造物は、以下に説明する製造方法等に起因して、一般には、上記炭素を含む棒状体または環状体が3次元的な構造を呈するようになる。すなわち、前記棒状体または前記環状体が3次元的に延在するとともに相互に結合してネットワークを構成し、いわゆるデンドライト状となる。
【0031】
また、前記金属体は、特に銀とすることができる。これは以下に示すように、前記金属体を銀とすることにより、前記金属内包樹状炭素ナノ構造物を作製する際の原料の準備及び調整を容易に行うことができるとともに、銀自体が優れた電気伝導性を呈するので、前記金属内包樹状炭素ナノ構造物の電極材料等としての適正が増大するようになる。
【0032】
次に、上記金属内包樹状炭素ナノ構造物の作製方法について説明する。なお、以下においては、前記金属内包樹状炭素ナノ構造物に内包される金属として特に銀を用いた場合について説明する。
【0033】
最初に、硝酸銀のアンモニア水溶液に超音波を液中照射しながらアセチレンガスを吹き込む。この際、好ましくは、前記超音波照射と同時に前記溶液の攪拌を行う。これによって、前記溶液中に銀アセチリドの沈殿物が生成する。なお、超音波照射は、前記溶液を入れた容器中に超音波振動子を配置することによって実現することもできるし、前記容器を例えば超音波洗浄器に設置して行うこともできる。
【0034】
次いで、前記沈殿物を、溶媒を含んだ状態で反応管に小分けし、真空電気炉又は真空高温槽中に入れ、60℃~80℃の温度で例えば12時間以上加熱処理を行う。すると、銀アセチリドは偏析を起し、金属銀粒子を内包した金属内包樹状ナノ構造物が形成される(図1及び図2参照)。図2において、黒色の部分が銀であり、灰色の部分が前記銀粒子を覆うようにして形成された炭素層である。
【0035】
なお、前記沈殿物を完全に乾燥させてしまうと不安定となり、摩擦刺激などによって爆発反応を示す場合がある。また、前記沈殿物中に含ませる溶媒は、前記水溶液とは別の溶媒を準備し、この溶媒で洗浄するなどの方法によって含浸させるようにすることもできるが、前記水溶液をそのまま含浸させるようにすることもできる。
【0036】
また、図1及び2から明らかなように、上述のようにして作製した金属内包樹状炭素ナノ構造物は、銀及び炭素層を含む棒状体または環状体が3次元的に延在するとともに相互に結合してネットワークを構成し、デンドライト状の3次元構造を呈することが分かる。
【0037】
上記においては、金属内包樹状ナノ構造物に内包される金属として銀の場合について説明したが、その他の金属を内包する場合においても、上記硝酸銀に代えて適当な原料(塩等)を用いることにより、前記その他の金属を内包した金属内包樹状ナノ構造物を作製することができる。
【0038】
(炭素ナノ構造体)
本発明の炭素ナノ構造体は、上述したように、炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状の炭素ナノ構造体である。
【0039】
前記炭素ナノ構造体は、以下に示すような作製方法に起因して、例えば樹状部分の長さが150nm以下となる。また、前記樹状部分の直径が150nm以下となる。すなわち、前記炭素ナノ構造体は、極めて微細な大きさの樹状構造物である。なお、樹状部分の長さの下限値及び直径の下限値は、例えば50nm及び20nmである。
【0040】
上記炭素ナノ構造体は、上述のような樹状を呈しているので、それ自体高い比表面積を有する。したがって、水素などの任意のガスを十分に吸蔵することができ、気体分子吸蔵体として十分に機能することができる。また、触媒担持用担体としても十分に機能することができるようになる。
【0041】
なお、上記炭素ナノ構造体は、以下に説明するように上記金属内包樹状ナノ構造物を中間体としてさらに処理を行って得るものであって、前記ナノ構造物の構造が継承されるようになる。したがって、この場合においても、前記炭素ナノ構造体は、前記棒状体または前記環状体が3次元的に延在するとともに相互に結合してネットワークを構成し、いわゆるデンドライト状の3次元的な構造を呈するようになる。
【0042】
さらに、前記環状体は、以下に説明する製造方法等に起因して、一般には、炭素からなる表皮と、その内部に含まれる複数の炭素粒とから構成されるようになる。具体的には、図3に概略的に示すように、炭素粒、例えばグラフェン小包11が、同じくグラフェンからなる表皮12で囲まれたような構造を採る。ここで、“グラフェン”とは、炭素原子が六角形の網状に配列したものであって、単層の黒鉛に相当するものである。
【0043】
次に、上記炭素ナノ構造体の作製方法について説明する。最初に、例えば、硝酸銀のアンモニア水溶液に超音波を液中照射しながらアセチレンガスを吹き込む。この際、好ましくは、前記超音波照射と同時に前記溶液の攪拌を行う。これによって、前記溶液中に銀アセチリドの沈殿物が生成する。なお、前記超音波照射は、上記金属内包樹状炭素ナノ構造物の作製の場合と同様に、超音波振動子や超音波洗浄器を用いて行うことができる。
【0044】
次いで、前記沈殿物を、溶媒を含んだ状態で試験管に小分けし、真空電気炉又は真空高温槽中に入れ、60℃~80℃の温度で例えば12時間以上加熱処理(第1の加熱処理)を行う。すると、銀アセチリドは偏析を起し、金属銀粒子を内包した金属内包樹状ナノ構造物が形成される(図1及び図2参照)。なお、図1及び図2は、前記金属内包樹状ナノ構造物のSEM像である。
【0045】
なお、前記沈殿物を完全に乾燥させてしまうと不安定となり、摩擦刺激などによって爆発反応を示す場合があるのは、上記金属内包樹状ナノ構造物を作製する場合と同様である。
【0046】
次いで、上記金属内包樹状ナノ構造物に対して160℃~200℃の加熱処理を行う(第2の加熱処理)。この第2の加熱処理は、同じ真空電気炉又は真空高温槽中で前記第1の加熱処理と連続して行うことができる。したがって、前記第1の加熱処理の上記温度から前記第2の加熱処理の上記温度までの急激な温度上昇に伴って、残存した銀アセチリドをナノスケールで爆発させ、上記金属内包樹状ナノ構造物に内包した銀をその外部に噴出させる(図4参照)。なお、図4における白色の部分は、得られた炭素ナノ構造体の表面に残存した銀(粒子)であり、灰色の部分は炭素である。
【0047】
また、図5は、前記金属内包樹状ナノ構造物から内包された銀が噴出した後の状態を示すSEM像である。図5を詳細に観察すると、図3に模式的に示したように、灰色で示される炭素含有の環状体または棒状体は、炭素からなる表皮中に、複数の噴出孔が含まれてなる様子を確認することができる。
【0048】
また、上記第2の加熱処理時間は、例えば10分~30分の間である。
【0049】
次いで、上記炭素ナノ構造体に対して溶解洗浄処理を施し、前記表面に残存した銀やその他不安定な炭素化合物を除去し、安定な炭素ナノ構造体を得る。この場合、特に硝酸水溶液を用いた溶解洗浄処理を施すことにより、残存した銀を硝酸銀として効率的に再利用することができる。
【0050】
なお、上述した溶解洗浄処理は必ずしも必要とされないが、このような溶解洗浄処理を行わないと、得られる炭素ナノ構造体の表面に銀等が残存し、純粋な炭素構造体として得ることが出来ない場合がある。
【0051】
また、上述のようにして得た炭素ナノ構造体は、十分高い比表面積を有するが、さらなる加熱処理(第3の加熱処理)を施すことによって前記比表面積をさらに増大させることができる。この場合、上記のようにして溶解洗浄処理して得た炭素ナノ構造中間体を真空中あるいは不活性ガス雰囲気中、又は空気雰囲気中に配置し、例えば180℃~200℃の温度で加熱する。熱処理時間は、例えば24時間から48時間とすることができる。
【0052】
上記第3の加熱処理は、上述した第1の加熱処理及び/又は第2の加熱処理後に行う酸による洗浄後に行うこともできる。
【0053】
第3の加熱処理を行わない場合、前記炭素ナノ構造体のBET比表面積は例えば870m/g以上とすることができるが、第3の加熱処理を行う場合、前記炭素ナノ構造体のBET比表面積は例えば1300m/g以上とすることができる(図5参照)。図5は、前記炭素ナノ構造体のSEM像である。
【0054】
なお、上記においては、前記樹状ナノ構造物に内包される金属として適当な原料(金属塩等と還元剤)を用いることにより、種々の金属を内包した金属内包樹状ナノ構造物を作製することができる。
【0055】
(キャパシタ)
次に、本発明のキャパシタに関して説明する。前記キャパシタは、上述した炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状を呈した炭素ナノ構造体からなる電極活物質を含んでいる。前記炭素ナノ構造体は、それ自体、高い気孔性を有するとともに、高い比表面積を有する。したがって、前記キャパシタの前記電極の表面積が増大し、多くのイオン種を吸着できるようになるので、高い静電容量を有するようになる。したがって、実用的なスーパーキャパシタとして使用することが可能となる。
【0056】
上述した本発明のキャパシタを構成する炭素ナノ構造体は、金属アセチリド樹状結晶体を熱処理して得ることができる。具体的には、前記金属アセチリド結晶体は、金属又は金属塩を含む溶液に対して超音波を印加した状態でアセチレンガスと気液界面で接触させ、前記金属及び炭素を含む金属内包樹状炭素ナノ構造物を生成させる。この際、前記溶液に対してアセチレンガスと気液界面で接触する際に、前記溶液を攪拌することができる。
【0057】
また、前記金属アセチリド樹状結晶体の熱処理条件が、第1の加熱処理として、樹状結晶体表面に炭素を偏析させ炭素被覆金属アセチリド樹状ナノ構造物とし、次いで第2の加熱処理として、前記炭素被覆金属アセチリド樹状ナノ構造物に内包される前記金属を相分離させる工程を含むことができる。
【0058】
さらに、前記炭素被覆金属アセチリド樹状ナノ構造物に内包される前記金属を相分離させて得た炭素ナノ構造中間体に溶解洗浄を施し、残存した前記金属を除去する工程を具えることができる。
【0059】
なお、必要に応じて、前記樹状の炭素ナノ構造物に対して、温水による第3の加熱処理を施すことができる。
【0060】
また、前記金属又は前記金属塩とは、炭素源となるアセチレン等のガスと錯体を形成する作用のあるものから選択される。このような作用は、銅、銀等で知られている。銀は好ましいもののひとつである。
【0061】
電解液・電解質・セパレータについては、特に制約は無く、公知のものが使用できる。
【0062】
以下、本発明のキャパシタに関して具体的に説明する。
【0063】
<炭素ナノ構造体>
最初に、本発明のキャパシタの電極を構成する炭素ナノ構造体について説明する。本発明のキャパシタにおける電極で使用する炭素ナノ構造体は、上述したように、炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状の炭素ナノ構造体である。したがって、基本的には、上述のような特徴を有する。
【0064】
上記炭素ナノ構造体は、上述のような樹状を呈し、更に図3に示すような構造を有することにより、樹状体内部に炭素粒に起因した多数の空洞小胞を有しているので、それ自体高い気孔性を有し、高い比表面積を有する。前記炭素ナノ構造体を前記キャパシタの電極活物質として用いた場合に、十分な量のイオン種を吸着することができるようになり、高い静電容量を呈することができる。又、ナノ構造単位同士は相互に連結しているためナノ構造単位間の電気伝導性も良い。
【0065】
したがって、前記炭素ナノ構造体を前記キャパシタの電極として用いることにより、前記キャパシタをスーパーキャパシタとして構成することができるようになる。
【0066】
なお、前記炭素ナノ構造体の製造方法については、既に説明済みであるので、省略する。
【0067】
(電解質)
次に、本発明のキャパシタで使用する電解質について説明する。前記電解質は固体及び液体のいずれでも良いが、高速充放電性を考慮すると、イオン伝導をより高速に行うことが可能な液体の電解質(電解質液)が好ましくは用いられる。
【0068】
電解質液は、それに使用する溶媒として水または有機溶媒のいずれかを用いるかによって水系と非水系とに区分される。
【0069】
水系電解質液を用いる場合、電解質液中に含まれる電解質は、例えば硫酸や水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、塩化ナトリウム、塩酸、フッ化ナトリウム等とすることができる。
【0070】
非水系電解質液を用いる場合、電解質液に含まれる電解質は、例えば(CNBF、CH(CNBF、スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウムのBF塩等及びこれらの誘導体が使用できる。イミダゾリウム誘導体の塩(EMI)や、ジエチル-メチル-(2-メトキシエチルアンモニウム(DEME)等のイオン性液体を用いてもよい。
【0071】
また、非水系電解質液を用いる場合、その有機溶媒は、例えばプロピレンカーボネート(PC)、アセトニトリル、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ—ブチロラクトン、γ—バレロラクトン、N-メチルピロリジノン、ニトロメタン、スルフォラン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を単独又は混合して用いることができる。
【0072】
(キャパシタ)
次に、本発明のキャパシタについて説明する。図6は、本発明のキャパシタの一例における概略構成を示す図である。
【0073】
図6に示すキャパシタ10は、正極11及び負極12を具えている。正極11は、正集電極111と、この集電極111上に形成された、上述した炭素ナノ構造体からなる電極層(電極活物質)112とを有している。負極12は、負集電極121と、この集電極121上に形成された、上述した炭素ナノ構造体からなる電極層(電極活物質)122とを有している。
【0074】
正集電極111及び負集電極121の上下には、一対の絶縁性ガスケット13が設けられ、これら集電極を絶縁するとともに、正集電極111、負集電極121、及び絶縁性ガスケット13とで密閉空間が形成され、全体が1モル硫酸容器に浸漬されたかかる密閉空間内に電解質液16が充填されたような構成を呈している。
【0075】
また、電解質液16内にはセパレータ15が配置されている。
【0076】
正集電極111及び負集電極121は、水系電解液を用いる場合、白金やパラジウム、金、ステンレスなどの耐食性の電気的良導体から構成する。非水溶液系では例えばアルミニウムを用いれば良い。これによって、これらの電極が電解質液16と接触したような場合においても、これら電極の電解質との接触による腐食等を防止することができる。なお、上記白金等は、必要に応じて適宜、箔やシート状とすることができる。
【0077】
なお、正集電極111及び負集電極121は、前記炭素ナノ構造体からなる電極層112及び122の支持基板としても機能するとともに、キャパシタ10全体の電気抵抗を低減する作用をも有している。但し、前記炭素ナノ構造体からなる電極層112及び122で正極11及び負極12を構成できるような場合は、適宜省略することができる。
【0078】
電極は、その用途に応じ、枚葉状(コインセル、角型/ラミネートセル)、帯状(捲回円筒型セル)等とすることが出来る。
【0079】
また、電極層112及び122は、上記炭素ナノ構造体に加えて、導電性助剤や結合材を含むことができる。
【0080】
導電性助剤としては、例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然/人造黒鉛等を挙げることができる。また、結合材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、PVA等を挙げることができる。
【0081】
さらに、セパレータ15は、例えばポリエチレン多孔膜、ポリプロピレン製不織布、ガラス繊維性不織布、セルロース性特殊紙等の公知の材料から構成することができる。
【0082】
図6に示すキャパシタ10は、正極11及び負極12が、上述した炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれしてなる樹状を呈した炭素ナノ構造体からなる電極層112及び122を含んでいる。したがって、電極層112及び122、すなわち正極11及び負極12が、高い気孔性を有するとともに、高い比表面積を有するようになる。したがって、キャパシタ10の電極表面積が増大し、多くのイオン種を吸着できるようになるので、キャパシタ10は高い静電容量を有するようになり、実用的なスーパーキャパシタとして使用することが可能となる。
【実施例】
【0083】
[炭素ナノ構造体]
実施例1
最初に、硝酸銀を1.1モル %の濃度で含むアンモニア水溶液(1.9%)をフラスコに用意し、アルゴンや乾燥窒素などの不活性ガスで残留酸素を除去した後に、溶液を攪拌すると共に超音波振動子を液体に浸して振動を与えながら、アセチレンガスを150mL の溶液に対し25mL/min の流速で約4 分間吹き付けた。これによって、溶液中に銀アセチリドの固形物が生じ沈殿を始めた。次いで、前記沈殿物をメンブレンフィルターで濾過し、ろ過の際に、前記沈殿物をメタノールで洗浄して若干のエタノールを加え、前記沈殿物中に前記メタノールを含浸させた。なお、前記沈殿物の概観を図7に示す。反応時間を長くすると、数百ミクロンの大きさにまですることができる。
【0084】
次いで、前記メタノールを含浸させた状態の前記沈殿物を径6mm程度の試験管にそれぞれ50mgずつ入れ、これを真空加熱容器に入れて60℃~80℃の温度で12 時間加熱した。この時、多くの部分は中央部に銀粒子を含んだ金属内包樹状炭素ナノ構造物となっているが、電極材料としてこれを用いる場合は、先ずゆっくりと150℃に昇温しその後に180℃~200℃で数時間以上加熱すると、中央の銀粒子が合体成長し、外側の炭素層も安定な形状となる。
【0085】
次いで、前記金属内包樹状炭素ナノ構造物を真空中で連続して160℃~200℃の温度まで急速に加熱し、20分加熱を実施した。この場合、前記試験管の中ではナノスケールの爆発反応が起こり、内包された銀が噴出し、表面及び内部に多数の噴出孔を形成する(図4参照)。
【0086】
なお、上記のようにして得た炭素ナノ構造体にTGA(熱重量測定)を実施した結果、図8に示すようなグラフが得られ、水が5%程度、空気中250℃~500℃で燃えてしまう炭素部分が20%程度、残りが600℃程度で燃え尽きてしまうグラファイト的な高分子状態となっていることが示唆された。
【0087】
次いで、上記炭素ナノ構造体を濃硝酸で1時間洗浄し、その表面などに残存した銀を硝酸銀として溶解除去するとともに、不安定な炭素化合物を溶解除去した。
【0088】
次いで、前記炭素ナノ構造体をさらに真空中、200℃で20分間加熱した(図5参照)。なお、炭素含有樹状部の径は約40nmであり、長さは100nmであった。
【0089】
図9は、上記のようにして得た炭素ナノ構造体の吸着曲線である。なお、図9で使用した吸着ガスは窒素である。図9から明らかなように、前記炭素ナノ構造体では、圧力の増大とともにガス吸着量が増大し、高いガスの吸蔵特性を呈することが判明した。また、この場合のBET比表面積は1325m/gであることが判明した。なお、200℃、20分間の加熱処理を実施しない場合のBET比表面積は870m/gであった。
【0090】
図10は、上記炭素ナノ構造体の電子エネルギー損失スペクトル(EELS)である。グラファイトのスペクトルと比較すると、σ*への遷移によるスペクトルの形はアモルファス炭素と類似しているが、π*への遷移はグラファイトと類似、もしくはより顕著な線幅が狭く強い強度を示し、π系が伸びている事が示唆される。
【0091】
また、上記炭素ナノ構造体を1.0ton/cmの圧力をかけてペレットにしたもののSEM写真を図11に示すとともに、市販活性炭のペレットのSEM写真を図12に示す。図11及び図12から明らかなように、本実施例の炭素ナノ構造体から得たペレットは、市販活性炭に比べて、連続性が高い、電気伝導率も遙かに高くなる。なお、全体が連続的に繋がるのは粒子界面の樹状構造が互いに絡み合って、マジックテープ(登録商標)効果を果たすためであると考えられる。
【0092】
実施例2
実施例1において、硝酸銀を1.1 モル%の濃度で含むアンモニア水溶液を150mLから1000mLにし、この水溶液に吹付けるアセチレンガスの噴き付けを4分から30分、流速を20mL/minから75mL/minにし、超音波振動子に代えて超音波洗浄器を用い、前記水溶液を入れた容器を超音波洗浄器に入れて超音波照射を実施した以外は、実施例1と同様にして実験を行った。
【0093】
その結果、実施例1と同様の構造の炭素ナノ構造物を得ることができ、真空中での加熱を実施しない場合のBET比表面積は1600m/gであった。なお、炭素含有樹状部の径は約60nmであり、長さは100nmであった。
【0094】
実施例3
1000mLの水溶液のうち、500mLは予めフラスコに装入し、残りの500mLは30分掛けてフラスコ内に滴下した以外は、実施例2と同様にして実験を行った。その結果、実施例1と同様の構造の炭素ナノ構造物を得ることができ、真空中での加熱を実施しない場合のBET比表面積は1800m/gであった。なお、炭素含有樹状部の径は約100nmであり、長さは100nmであった。
【0095】
比較例1
アセチレンガスに代えて、アルゴンガスをバブリングさせて、飽和蒸気圧のフェニルアセチレンを含有するガスを導入した以外は、実施例1と同様にして実験を実施した。但し、この場合は、目的とする樹状の炭素ナノ構造体を得ることはできなかった。
【0096】
[キャパシタ]
実施例4
最初に、硝酸銀を1.1 %の濃度で含むアンモニア水溶液(1.9%)をフラスコに用意し、アルゴンや乾燥窒素などの不活性ガスで残留酸素を除去した後に、溶液を攪拌すると共に超音波振動子を液体に浸して振動を与えながら、アセチレンガスを150mLの溶液に対し50mL/minの流速で約30分間反応させた。これによって、溶液中に銀アセチリドの固形物が沈殿した。次いで、前記沈殿物をメンブレンフィルターで濾過し、ろ過の際に、前記沈殿物をメタノールで洗浄して若干のメタノールを加え、前記沈殿物中に前記メタノールを含浸させた。
【0097】
次いで、前記メタノールを含浸させた状態の前記沈殿物を径10mm程度の穴を34個有するポリテトラフルオロエチレンカセットのそれぞれの穴に300mgずつ入れ、これを真空加熱容器に入れて60℃~80℃の温度で12時間加熱し、脱溶媒と樹状体表皮の炭化を行った。
【0098】
次いで、前記樹状炭素ナノ構造物を連続して160℃~200℃の温度まで急速に加熱し、20分加熱を実施した。この場合、前記試験管の中ではナノスケールの爆発的な相分離反応が起こり、内包された銀原子が噴出し、表面及び内部に多数の空洞小胞及び噴出孔を形成する。
【0099】
次いで、上記炭素ナノ構造中間体を濃硝酸で1時間洗浄し、その表面などに残存した銀を硝酸銀として溶解除去するとともに、不安定な炭素化合物を溶解除去した。次いで、前記炭素ナノ構造中間体を温水で洗浄し、目的とする炭素ナノ構造体を得た。
【0100】
なお、上記炭素ナノ構造体のBET比表面積は1506m/gであることが判明した。炭素ナノ構造体のBET比表面積測定には、日本ベル製ベルソープミニIIを用いた。
【0101】
次いで、テフロン(登録商標)樹脂(アルドリッチ製、1μm以下の微粉)をエタノール中に超音波分散させた後、このテフロン(登録商標)樹脂と、アセチレンブラック(デンカ製)とを、上述のようにして得た炭素ナノ構造体に対して、炭素ナノ構造体:アセチレンブラック:テフロン(登録商標)樹脂=8:1:1の割合で混合し、乳鉢で粉砕混合して、電極層材料を形成した。
【0102】
次いで、前記電極層材料を10mg秤量し、錠剤成形器に充填して、200kg/cmで加圧プレスして、10mmφ×500μm厚のペレットを作製した。
【0103】
次いで、上記ペレットを図6の電極層112及び122として白金板の正集電極111及び負集電極121上に支持し、絶縁性ガスケットとしてのテフロン(登録商標)板13で固定した。また、ポリエチレン多孔膜をセパレータ15として配置するとともに、正集電極111、負集電極121、及びテフロン(登録商標)板13で形成される空間中に、1Mの硫酸水溶液を充填し、次いで脱気処理を行い、評価セルとしてのキャパシタ10を形成した。
【0104】
次いで、上述のようにして得た評価セル10の充放電特性を調べた。結果を図13及び15に示す。なお、充放電特性は、北斗電工製のHSV-100を用いた。
【0105】
図13で縦軸は3極セル基準の静電容量、横軸は通電量を電極表面積で除したもので表示した。3極基準の重量基準の静電容量F(ファラド/g)の計算は、両極の電極重量の和w、電流I,充放電電圧の最大値Vh(=0.8V)、最低値Vo(=0V)としたとき、放電過程で電圧がVhの20%から80%を示す区間の平均の電圧低下速度R(=ΔV/秒)を求め、次式で求めた。
F=4×I/(w×R)
【0106】
図14は3極セルでのCV(サイクリックボルタンメトリ)図である。-0.1Vから0.8Vの範囲を掃引速度5~200mV/SECで掃引した。図14では、掃引速度5~50mV/SECで掃引した。
【0107】
実施例5
実施例4で得られた炭素ナノ構造体、アセチレンブラック、テフロン(登録商標)樹脂(三井デュポンフルオロケミカル製6-J)を、乳鉢に重量比8:1:1で取った後、混合し、二本ロールで延伸して、厚さ約300μmのシートを得た。次いで、打ち抜き器で直径14mmの円盤状に打ち抜き、シート電極を得た。このシート電極は、電極層112及び122として白金板の正集電極111及び負集電極121上に支持し、絶縁性ガスケットとしてのテフロン(登録商標)板13で固定した。
【0108】
次いで、正集電極111、負集電極121、及びテフロン(登録商標)板13で形成される空間中に、富山薬品製テトラエチルアンモニウムブロマイドの1M/kgプロピレンカーボネート溶解液からなる電解質を充填した。また、セパレータ15は、ガラス繊維ろ紙で形成した。さらに、評価用2極セルは法泉製HSフラットセルを用いた。シート電極は、電解質液を脱気含浸させてからセルを組んだ。充放電測定は、Vh=2.5Vとし、実施例4と同様にして評価した。結果を図16に示す。
【0109】
比較例2
実施例4で、炭素ナノ構造体の代わりに市販の粉末活性炭(関東化学製試薬)を用いた以外、同様な処理を行い、電極を調製した。得られた電極でキャパシタを形成し、充放電特性を調べた。結果を図13、15に示す。BET比表面積は1320m/gであった。
【0110】
比較例3
実施例5で、炭素ナノ構造体の代わりに比較例2で用いた市販の粉末活性炭を用いた以外、同様な処理を行い、電極を調製した。得られた電極でキャパシタを形成し、充放電特性を調べた。結果を図16に示す。
【0111】
図13は、キャパシタ10の、電流密度と静電容量との関係を示すグラフである。図13から明らかなように、本実施例4で得たキャパシタ10は、電流密度が250mA/cmまで増大しても、静電容量は僅かに劣化するのみで、全体的に高い静電容量を呈することが判明した。一方、市販の活性炭を用いたキャパシタでは、電流密度の増大ととともに、静電容量は顕著に減少する。
【0112】
すなわち、本実施例で得たキャパシタ10は、レート特性に優れ、大電流密度においても十分な静電容量を有し、スーパーキャパシタとして使用可能である一方、従来の活性炭を用いたキャパシタは、電流密度の増大とともに静電容量が減少し、スーパーキャパシタとして使用不可能であることが判明した。
【0113】
また、図14に示すように、本実施例で得たキャパシタ10では、ほぼ矩形状のグラフを呈し、高速掃引速度までイオンの脱着が良好に行われ、良好な充放電特性を呈することが判明した。
【0114】
一方、図15に示すように、市販の活性炭を用いたキャパシタでは、低掃引速度域から非矩形状のグラフを呈し、良好な充放電特性を呈しないことが分かる。
【0115】
また、電解液を非水系としたキャパシタにおいても、図16に示すように、電流密度が10mA/cmを超えても静電容量低下は少なく、レート特性に優れることが判る。
【0116】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
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【図16】
15