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明細書 :光起電力素子およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5676363号 (P5676363)
公開番号 特開2012-248635 (P2012-248635A)
登録日 平成27年1月9日(2015.1.9)
発行日 平成27年2月25日(2015.2.25)
公開日 平成24年12月13日(2012.12.13)
発明の名称または考案の名称 光起電力素子およびその製造方法
国際特許分類 H01L  51/44        (2006.01)
FI H01L 31/04 112B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 21
出願番号 特願2011-118414 (P2011-118414)
出願日 平成23年5月26日(2011.5.26)
審査請求日 平成26年3月7日(2014.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】齋藤 健一
【氏名】宮崎 聡
個別代理人の代理人 【識別番号】100104444、【弁理士】、【氏名又は名称】上羽 秀敏
【識別番号】100112715、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 隆夫
【識別番号】100125704、【弁理士】、【氏名又は名称】坂根 剛
【識別番号】100120662、【弁理士】、【氏名又は名称】川上 桂子
審査官 【審査官】森江 健蔵
参考文献・文献 国際公開第2011/052511(WO,A1)
特開2003-100359(JP,A)
特開2011-014874(JP,A)
特開2009-158730(JP,A)
特開2011-023580(JP,A)
特開2004-087546(JP,A)
調査した分野 H01L 51/44
特許請求の範囲 【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板に接して配置された透明導電膜と、
前記透明導電膜に接して配置され、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる正孔輸送層と、
前記正孔輸送層に接して配置され、導電性高分子とn型シリコンナノ粒子とを混合した構造からなる混合層と、
前記混合層に接して配置された電極とを備える光起電力素子。
【請求項2】
透明基板と、
前記透明基板に接して配置された透明導電膜と、
前記透明導電膜に接して配置され、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる正孔輸送層と、
前記正孔輸送層に接して配置され、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)からなるp型半導体層と、
前記p型半導体層に接して配置され、n型シリコンナノ粒子からなるn型半導体層と、
前記n型半導体層に接して配置された電極とを備える光起電力素子。
【請求項3】
透明基板と、
前記透明基板に接して配置された透明導電膜と、
前記透明導電膜に接して配置され、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる正孔輸送層と、
前記正孔輸送層に接して配置され、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)からなるp型半導体層と、
前記p型半導体層に接して配置され、n型シリコンナノ粒子からなるn型半導体層と、
前記n型半導体層に接して配置され、酸化チタンナノ粒子からなる電子輸送層と、
前記電子輸送層に接して配置された電極とを備える光起電力素子。
【請求項4】
n型シリコンナノ粒子の溶液をミリングによって製造する第1の工程と、
ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる水溶液を透明基板に形成された透明導電膜上にスピンコートする第2の工程と、
前記第2の工程の後、前記ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンを乾燥して正孔輸送層を形成する第3の工程と、
導電性高分子と前記n型シリコンナノ粒子とをクロロホルムに溶かして混合液を作成し、その作成した混合液を前記正孔輸送層上にスピンコートする第4の工程と、
前記第3の工程の後、前記導電性高分子および前記n型シリコンナノ粒子を乾燥して前記導電性高分子と前記n型シリコンナノ粒子とからなる混合層を形成する第5の工程と、
前記第4の工程の後、前記透明基板、前記透明導電膜、前記正孔輸送層、および前記混合層をアニールする第6の工程と、
前記混合層上に電極を形成する第7の工程とを備える光起電力素子の製造方法。
【請求項5】
n型シリコンナノ粒子の溶液をミリングによって製造する第1の工程と、
ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる水溶液を透明基板に形成された透明導電膜上にスピンコートする第2の工程と、
前記第2の工程の後、前記ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンを乾燥して正孔輸送層を形成する第3の工程と、
ポリ(3-ヘキシルチオフェン)をクロロベンゼンに溶かして溶液を作成し、その作成した溶液を前記正孔輸送層上にスピンコートする第4の工程と、
前記第3の工程の後、前記ポリ(3-ヘキシルチオフェン)を乾燥して前記ポリ(3-ヘキシルチオフェン)からなるp型半導体層を形成する第5の工程と、
前記n型シリコンナノ粒子の溶液を前記p型半導体層上にスピンコートする第6の工程と、
前記第6の工程の後、前記n型シリコンナノ粒子を乾燥してn型半導体層を形成する第7の工程と、
前記第7の工程の後、前記透明基板、前記透明導電膜、前記正孔輸送層、前記p型半導体層および前記n型半導体層をアニールする第8の工程と、
前記n型半導体層上に電極を形成する第9の工程とを備える光起電力素子の製造方法。
【請求項6】
n型シリコンナノ粒子の溶液をミリングによって製造する第1の工程と、
酸化チタンナノ粒子の溶液をミリングによって製造する第2の工程と、
ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる水溶液を透明基板に形成された透明導電膜上にスピンコートする第3の工程と、
前記第3の工程の後、前記ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンを乾燥して正孔輸送層を形成する第4の工程と、
ポリ(3-ヘキシルチオフェン)をクロロベンゼンに溶かして溶液を作成し、その作成した溶液を前記正孔輸送層上にスピンコートする第5の工程と、
前記第5の工程の後、前記ポリ(3-ヘキシルチオフェン)を乾燥して前記ポリ(3-ヘキシルチオフェン)からなるp型半導体層を形成する第6の工程と、
前記n型シリコンナノ粒子の溶液を前記p型半導体層上にスピンコートする第7の工程と、
前記第7の工程の後、前記n型シリコンナノ粒子を乾燥してn型半導体層を形成する第8の工程と、
前記酸化チタンナノ粒子の溶液を前記n型半導体層上にスピンコートする第9の工程と、
前記第9の工程の後、前記酸化チタンナノ粒子を乾燥して電子輸送層を形成する第10の工程と、
前記第10の工程の後、前記透明基板、前記透明導電膜、前記正孔輸送層、前記p型半導体層、前記n型半導体層および前記電子輸送層をアニールする第11の工程と、
前記電子輸送層上に電極を形成する第12の工程とを備える光起電力素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、光起電力素子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド光起電力セルが知られている(非特許文献1)。このハイブリッド光起電力セルは、ガラス基板と、ITO(Indium Tin Oxide)と、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT:PSS)と、PbSeとポリ(3-ヘキシルチオフェン)との混合層と、電極とを備える。
【0003】
ITOは、ガラス基板上に形成され、PEDOT:PSSは、ITO上に形成され、混合層は、PEDOT:PSS上に形成され、電極は、混合層上に形成される。そして、PbSeは、直径がナノメートルオーダーであるナノ粒子からなる。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Dehu Cui, Jian Xu, Ting Zhu, Gary Paradee, and S. Ashok, “Harvest of near infrared light in PbSe nanocrystal-polymer hybrid photovoltaic cells,”Applied Physics letters 88, 183111(2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のハイブリッド光起電力セルは、材料としてPbを含むため、環境に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、環境に悪影響を及ぼさない光起電力素子を提供することである。
【0007】
また、この発明の別の目的は、環境に悪影響を及ぼさない光起電力素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の実施の形態によれば、光起電力素子は、透明基板と、透明導電膜と、正孔輸送層と、混合層と、電極とを備える。透明導電膜は、透明基板に接して配置される。正孔輸送層は、透明導電膜に接して配置され、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる。混合層は、正孔輸送層に接して配置され、導電性高分子とn型シリコンナノ粒子とを混合した構造からなる。電極は、混合層に接して配置される。
【0009】
また、この発明の実施の形態によれば、光起電力素子は、透明基板と、透明導電膜と、正孔輸送層と、p型半導体層と、n型半導体層と、電極とを備える。透明導電膜は、透明基板に接して配置される。正孔輸送層は、透明導電膜に接して配置され、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる。p型半導体層は、正孔輸送層に接して配置され、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)からなる。n型半導体層は、p型半導体層に接して配置され、n型シリコンナノ粒子からなる。電極は、n型半導体層に接して配置される。
【0010】
更に、この発明の実施の形態によれば、光起電力素子は、透明基板と、透明導電膜と、正孔輸送層と、p型半導体層と、電子輸送層と、電極とを備える。透明導電膜は、透明基板に接して配置される。正孔輸送層は、透明導電膜に接して配置され、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる。p型半導体層は、正孔輸送層に接して配置され、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)からなる。電子輸送層は、p型半導体層に接して配置され、酸化チタンナノ粒子からなる。電極は、電子輸送層に接して配置される。
【0011】
更に、この発明の実施の形態によれば、光起電力素子は、透明基板と、透明導電膜と、正孔輸送層と、p型半導体層と、n型半導体層と、電子輸送層と、電極とを備える。透明導電膜は、透明基板に接して配置される。正孔輸送層は、透明導電膜に接して配置され、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる。p型半導体層は、正孔輸送層に接して配置され、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)からなる。n型半導体層は、p型半導体層に接して配置され、n型シリコンナノ粒子からなる。電子輸送層は、n型半導体層に接して配置され、酸化チタンナノ粒子からなる。電極は、電子輸送層に接して配置される。
【0012】
更に、この発明の実施の形態によれば、光起電力素子の製造方法は、n型シリコンナノ粒子の溶液をミリングによって製造する第1の工程と、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる水溶液を透明基板に形成された透明導電膜上にスピンコートする第2の工程と、第2の工程の後、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンを乾燥して正孔輸送層を形成する第3の工程と、導電性高分子とn型シリコンナノ粒子とをクロロホルムに溶かして混合液を作成し、その作成した混合液を正孔輸送層上にスピンコートする第4の工程と、第4の工程の後、導電性高分子およびn型シリコンナノ粒子を乾燥して導電性高分子とn型シリコンナノ粒子とからなる混合層を形成する第5の工程と、第5の工程の後、透明基板、透明導電膜、正孔輸送層、および混合層をアニールする第6の工程と、混合層上に電極を形成する第7の工程とを備える。
【0013】
更に、この発明の実施の形態によれば、光起電力素子の製造方法は、n型シリコンナノ粒子の溶液をミリングによって製造する第1の工程と、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる水溶液を透明基板に形成された透明導電膜上にスピンコートする第2の工程と、第2の工程の後、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンを乾燥して正孔輸送層を形成する第3の工程と、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)をクロロベンゼンに溶かして溶液を作成し、その作成した溶液を正孔輸送層上にスピンコートする第4の工程と、第4の工程の後、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)を乾燥してポリ(3-ヘキシルチオフェン)からなるp型半導体層を形成する第5の工程と、n型シリコンナノ粒子の溶液をp型半導体層上にスピンコートする第6の工程と、第6の工程の後、n型シリコンナノ粒子を乾燥してn型半導体層を形成する第7の工程と、第7の工程の後、透明基板、透明導電膜、正孔輸送層、p型半導体層およびn型半導体層をアニールする第8の工程と、n型半導体層上に電極を形成する第9の工程とを備える。
【0014】
更に、この発明の実施の形態によれば、光起電力素子の製造方法は、n型シリコンナノ粒子の溶液をミリングによって製造する第1の工程と、酸化チタンナノ粒子の溶液をミリングによって製造する第2の工程と、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる水溶液を透明基板に形成された透明導電膜上にスピンコートする第3の工程と、第3の工程の後、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンを乾燥して正孔輸送層を形成する第4の工程と、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)をクロロベンゼンに溶かして溶液を作成し、その作成した溶液を正孔輸送層上にスピンコートする第5の工程と、第5の工程の後、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)を乾燥してポリ(3-ヘキシルチオフェン)からなるp型半導体層を形成する第6の工程と、酸化チタンナノ粒子の溶液をp型半導体層上にスピンコートする第7の工程と、第7の工程の後、酸化チタンナノ粒子を乾燥して電子輸送層を形成する第8の工程と、第8の工程の後、透明基板、透明導電膜、正孔輸送層、p型半導体層および電子輸送層をアニールする第9の工程と、電子輸送層上に電極を形成する第10の工程とを備える。
【0015】
更に、この発明の実施の形態によれば、光起電力素子の製造方法は、n型シリコンナノ粒子の溶液をミリングによって製造する第1の工程と、酸化チタンナノ粒子の溶液をミリングによって製造する第2の工程と、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンからなる水溶液を透明基板に形成された透明導電膜上にスピンコートする第3の工程と、第3の工程の後、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンを乾燥して正孔輸送層を形成する第4の工程と、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)をクロロベンゼンに溶かして溶液を作成し、その作成した溶液を正孔輸送層上にスピンコートする第5の工程と、第5の工程の後、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)を乾燥してポリ(3-ヘキシルチオフェン)からなるp型半導体層を形成する第6の工程と、n型シリコンナノ粒子の溶液をp型半導体層上にスピンコートする第7の工程と、第7の工程の後、n型シリコンナノ粒子を乾燥してn型半導体層を形成する第8の工程と、酸化チタンナノ粒子の溶液をn型半導体層上にスピンコートする第9の工程と、第9の工程の後、酸化チタンナノ粒子を乾燥して電子輸送層を形成する第10の工程と、第10の工程の後、透明基板、透明導電膜、正孔輸送層、p型半導体層、前n型半導体層および電子輸送層をアニールする第11の工程と、電子輸送層上に電極を形成する第12の工程とを備える。
【発明の効果】
【0016】
この発明の実施の形態による光起電力素子は、透明基板、透明導電膜、PEDOT:PSS、MEH-PPV、n型シリコンナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、およびP3HTを材料として作製される。その結果、光起電力素子は、Pb等の環境に悪影響を与える元素を含まない。
【0017】
従って、環境に悪影響を及ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1による光起電力素子の断面図である。
【図2】シリコンナノ粒子を製造する遊星型ボールミルの斜視図である。
【図3】図2に示す回転盤および粉砕容器の平面図である。
【図4】図1に示す光起電力素子の製造方法を示す工程図である。
【図5】図4に示すステップS1の詳細な動作を説明するための工程図である。
【図6】図4に示すステップS1の他の詳細な動作を説明するための工程図である。
【図7】動的光散乱法測定装置の構成図である。
【図8】電流電圧特性測定装置の構成図である。
【図9】図1に示す光起電力素子の電流電圧特性の測定結果を示す図である。
【図10】実施の形態2による光起電力素子の断面図である。
【図11】図10に示す光起電力素子の製造方法を示す工程図である。
【図12】図10に示す光起電力素子の電流電圧特性の測定結果を示す図である。
【図13】実施の形態3による光起電力素子の断面図である。
【図14】図13に示す光起電力素子の製造方法を示す工程図である。
【図15】図14に示すステップS1Aの詳細な動作を説明するための工程図である。
【図16】図13に示す光起電力素子の電流電圧特性の測定結果を示す図である。
【図17】実施の形態4による光起電力素子の断面図である。
【図18】図17に示す光起電力素子の電流電圧特性の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。

【0020】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による光起電力素子の断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1による光起電力素子10は、透明基板1と、透明導電膜2と、正孔輸送層3と、混合層4と、電極5とを備える。

【0021】
透明基板1は、例えば、ガラスからなる。透明導電膜2は、例えば、ITOからなる。そして、透明導電膜2は、透明基板1に接して透明基板1上に形成される。ITOは、三容真空工業社製であり、20mm×20mmのサイズ、1.3×10-4Ω・cmの比抵抗、および15Ω/cm未満の表面抵抗率を有するとともに、550nmにおいて85%以上の透過率を有する。

【0022】
正孔輸送層3は、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT:PSS)からなる。そして、正孔輸送層3は、透明導電膜2に接して透明導電膜2上に形成される。

【0023】
混合層4は、導電性高分子とn型シリコンナノ粒子とを混合した構造からなる。導電性高分子は、例えば、MEH-PPVからなる。そして、混合層4は、正孔輸送層3に接して正孔輸送層3上に形成される。

【0024】
電極5は、例えば、アルミニウムからなる。そして、電極5は、混合層4に接して混合層4上に形成される。

【0025】
正孔輸送層3の膜厚は、約70~80nmであり、混合層4の膜厚は、約120~130nmであり、Alの膜厚は、80nmである。

【0026】
なお、光起電力素子10においては、太陽光は、透明基板1側から光起電力素子10に入射する。

【0027】
図2は、シリコンナノ粒子を製造する遊星型ボールミルの斜視図である。図2を参照して、遊星型ボールミル100は、本体部11と、制御部12と、回転盤13と、粉砕容器14とを備える。なお、遊星型ボールミル100は、フリッチュ社製のpremium line P-7である。

【0028】
制御部12は、本体部11の一方端側において本体部11上に配置される。そして、制御部12は、タッチパネル方式の操作パネル121を有する。

【0029】
回転盤13は、本体部11の空間111内に配置される。そして、回転盤13は、例えば、時計回りに所望の回転速度で回転する。

【0030】
粉砕容器14は、例えば、45ccの容積を有し、タングステンカーバイド(WC)からなる。粉砕容器14は、回転盤13上に設置され、回転盤13に着脱可能になっている。そして、粉砕容器14は、例えば、半時計回りに所望の回転速度で回転する。

【0031】
粉砕容器14は、ナノ粒子を製造するための原料と、原料を粉砕するための粉砕ボールと、溶媒とを入れるための容器である。粉砕ボールは、タングステンカーバイドからなり、φ15mm、φ3mmおよびφ0.6mmのいずれかの直径を有する。

【0032】
図2においては、図示されていないが、回転盤13および粉砕容器14を回転させるためのモータが回転盤13の下側の本体部11内に内蔵されている。

【0033】
操作パネル121は、遊星型ボールミル100の操作者から回転盤13の回転速度(=公転の回転速度Vrev)と粉砕容器14の回転速度(=自転の回転速度Vrot)とを受け付ける。そして、操作パネル121は、その受け付けた回転速度Vrev,Vrotをモータへ出力する。

【0034】
そうすると、モータは、回転盤13および粉砕容器14をそれぞれ回転速度Vrev,Vrotで回転させる。

【0035】
そして、所望の時間が経過すると、操作パネル121は、回転盤13および粉砕容器14の回転を停止させるための停止指示を操作者から受け付け、モータを停止させる。

【0036】
このように、回転盤13および粉砕容器14がそれぞれ回転速度Vrev,Vrotで回転すると、粉砕容器14は、回転速度Vrevで公転し、回転速度Vrotで自転する。そして、公転の方向は、自転の方向と逆方向である。

【0037】
図3は、図2に示す回転盤13および粉砕容器14の平面図である。図3を参照して、回転盤13は、時計回りに回転速度Vrevで回転し、粉砕容器14は、半時計回りに回転速度Vrotで回転する。

【0038】
そうすると、遠心力Fct1が回転盤13の回転(=公転)によって発生し、遠心力Fct2が粉砕容器14の回転(=自転)によって発生する。そして、遠心力Fct1と遠心力Fct2とが複合した重力Fが粉砕容器14内で発生する。

【0039】
その結果、粉砕容器14内に入れられた原料(図示せず)は、重力Fによって粉砕ボール15および粉砕容器14の壁にぶつかり、連続的に強い衝撃を受け、粉砕される。

【0040】
この場合、重力Fの最大値は、97G(G:重力加速度)である。

【0041】
図4は、図1に示す光起電力素子10の製造方法を示す工程図である。図4を参照して、光起電力素子10の製造が開始されると、図2に示す遊星型ボールミル100を用いてn型シリコンナノ粒子の溶液を製造する(ステップS1)。

【0042】
そして、透明基板1/透明導電膜2を洗浄する(ステップS2)。より具体的には、濃度2%のITO基板用洗剤(パーカーコーポレーション、PK-LCG201)水溶液に透明基板1/透明導電膜2(=ガラス/ITO)を浸漬し、超音波洗浄器(ヤマト科学、BRANSON 3510J-DTH)を用いて40℃で2分間、透明基板1/透明導電膜2(=ガラス/ITO)を超音波洗浄する。その後、透明基板1/透明導電膜2(=ガラス/ITO)を蒸留水で約20秒、リンスし、エアースプレー(グラン化学株式会社、CLEANSQUALL)で水滴を飛ばす。

【0043】
ステップS2の後、PEDOT:PSSを透明導電膜2上にスピンコートする(ステップS3)。より具体的には、透明基板1/透明導電膜2(=ガラス/ITO)の端20mm×4mmをアルミテープ(SLIONTEC,SLION TAPE)でマスクし、1.3重量%のPEDOT:PSS水溶液(アルドリッチ、483095-250G)をスピンコーター(三井精機工業、SP-30)を用いてITO上にスピンコートする。この場合、PEDOT:PSS水溶液をピペット2~3滴に相当する量だけITO上に滴下する。段差計(デックタック)を用いて滴下時におけるPEDOT:PSS水溶液の厚みを測定した結果、68.4~77.6nmであった。

【0044】
PEDOT:PSS水溶液を滴下した後、500rpmの回転数で5秒間、透明基板1/透明導電膜2(=ガラス/ITO)/PEDOT:PSS水溶液を回転し、その後、3000rpmの回転数で30秒間、透明基板1/透明導電膜2(=ガラス/ITO)/PEDOT:PSS水溶液を回転した。

【0045】
ステップS3の後、PEDOT:PSSを真空乾燥器(ヤマト科学、DP23)を用いて3.3×10Paの真空度において80℃の温度で、60分間、乾燥して溶媒を蒸発し、正孔輸送層3を形成する(ステップS4)。

【0046】
そして、MEH-PPVとn型シリコンナノ粒子との混合溶液を正孔輸送層3上にスピンコートする(ステップS5)。より具体的には、ステップS1において製造されたn型シリコンナノ粒子の溶液(約1ml)を80℃の温度で20~30分間、真空乾燥して粉末状のn型シリコンナノ粒子を得る。そして、p型半導体であるMEH-PPV(アルドリッチ、Mn~70000、541435-1G)と、粉末状のn型シリコンナノ粒子とをクロロホルム(ナカライテスク、特級、Code:08402-55)中で、常温にて10分間、超音波洗浄器にかけることでMEH-PPVとn型シリコンナノ粒子とをクロロホルムに溶かし、MEH-PPVとn型シリコンナノ粒子との混合溶液を調整する。この場合、MEH-PPVとn型シリコンナノ粒子との質量比は、MEH-PPV:n型シリコンナノ粒子=1:0.72であり、MEH-PPVとn型シリコンナノ粒子とを合わせた全体の溶液濃度は、0.40%である。その後、調整した混合溶液を正孔輸送層3上にスピンコートする。この場合、混合溶液をピペット2~3滴に相当する量だけ正孔輸送層3上に滴下し、その後、透明基板1/透明導電膜2/正孔輸送層3を2500rpmの回転数で30秒間、回転する。

【0047】
ステップS5の後、MEH-PPVおよびn型シリコンナノ粒子を真空乾燥器(ヤマト科学、DP23)を用いて3.3×10Paの真空度において80℃の温度で、30分間、乾燥して溶媒を蒸発し、混合層4を形成する(ステップS6)。

【0048】
そして、透明基板1/透明導電膜2/正孔輸送層3/混合層4を150℃の温度で30分間、アニールする(ステップS7)。

【0049】
引き続いて、アルミ箔(プラテック株式会社)でマスクして混合層4上にAlを真空蒸着する(ステップS8)。より具体的には、透明基板1/透明導電膜2/正孔輸送層3/混合層4をスライドガラス上に載せ、直径5mmの穴の開いたアルミ箔(プラテック株式会社)で透明基板1/透明導電膜2/正孔輸送層3/混合層4をマスクし、真空蒸着装置(サンユー電子、SVC-700TM)を用いてAlを混合層4上に蒸着する。この場合、水晶振動子を用いた膜厚モニター(サンユー電子、SQM-160)によって膜厚を測定しながら、2×10-2Paの真空度で60Aの印加電流を流して蒸着を行い、膜厚が80nmになった時点で真空蒸着を停止した。

【0050】
ステップS8の後、蒸着したAl上に、銀ペースト(藤倉化成、ドータイトD-500)で金線(ニラコ、φ0.10mm、AU-171165)を取り付け、常温で60分間、乾燥した。これによって、光起電力素子10が完成する。

【0051】
図5は、図4に示すステップS1の詳細な動作を説明するための工程図である。なお、図5に示すステップS11~S25は、大気環境下で実行される。また、この明細書において示す回転数は、公転の回転速度Vrevであり、自転の回転速度Vrotは、特に示していないが、公転の回転速度Vrevの2倍である。

【0052】
図5を参照して、n型シリコンナノ粒子の溶液を製造する動作が開始されると、n型シリコンウェハーを約1cm角の破片に切断する(ステップS11)。この場合、n型シリコンウェハーは、ミラー指数(100)の劈開面および0.02~0.8Ω・cmの比抵抗を有する。

【0053】
ステップS11の後、φ15mmの粉砕ボール(タングステンカーバイド)15を7個と、n型シリコンウェハーの破片を8gとを遊星型ボールミル100の粉砕容器14に入れる(ステップS12)。

【0054】
そして、400rpmの回転数で3分間、n型シリコンウェハーの破片を粉砕する(ステップS13)。その後、φ3mmの粉砕ボール(タングステンカーバイド)15を100gと、粉末状のn型シリコンウェハーを1gと、メタノールを4gとを遊星型ボールミル100の粉砕容器14に入れる(ステップS14)。

【0055】
引き続いて、蓋をして粉砕容器14を密閉し、600rpmの回転数で15分間、粉末状のn型シリコンウェハーを粉砕する(ステップS15)。

【0056】
そして、30分間、休憩し、ガス抜きをし、メタノールを1g補充する(ステップS16)。

【0057】
その後、蓋をして粉砕容器14を密閉し、600rpmの回転数で15分間、粉末状のn型シリコンウェハーを粉砕する(ステップS17)。そして、30分間、休憩する(ステップS18)。

【0058】
引き続いて、蓋をして粉砕容器14を密閉し、600rpmの回転数で30分間、粉末状のn型シリコンウェハーを粉砕する(ステップS19)。そして、30分間、休憩し、ガス抜きをし、メタノールを1g補充する(ステップS20)。

【0059】
その後、蓋をして粉砕容器14を密閉し、600rpmの回転数で60分間、粉末状のn型シリコンウェハーを粉砕する(ステップS21)。

【0060】
そして、30分間、休憩し、ガス抜きをし、メタノールを1g補充し(ステップS22)、蓋をして粉砕容器14を密閉し、600rpmの回転数で60分間、粉末状のn型シリコンウェハーを粉砕する(ステップS23)。

【0061】
その後、30分間、休憩し、ガス抜きをし(ステップS24)、メッシュ径が1.5mmのふるいを用いて粉砕ボール15とn型シリコンナノ粒子の溶液とを分離する(ステップS25)。これによって、n型シリコンナノ粒子の溶液が製造される。

【0062】
図6は、図4に示すステップS1の他の詳細な動作を説明するための工程図である。図6に示す工程図は、図5に示すステップS14~S23をステップS14A~S17Aに代えたものであり、その他は、図5に示す工程図と同じである。

【0063】
なお、図6に示すステップS11~S13,S14A~S17A,S24,S25は、大気環境下で実行される。

【0064】
図6を参照して、n型シリコンナノ粒子の溶液を製造する動作が開始されると、上述したステップS11~S13が順次実行される。

【0065】
その後、φ3mmの粉砕ボール(タングステンカーバイド)15を100gと、粉末状のn型シリコンを2gと、2-プロパノールを7gとを粉砕容器14に入れる(ステップS14A)。

【0066】
そして、蓋をして粉砕容器を密閉し、600rpmの回転数で15分間の粉砕を2サイクルと、600rpmの回転数で30分間の粉砕を1サイクルと、600rpmの回転数で60分間の粉砕を5サイクルとを粉砕と粉砕との間で30分間休憩しながら実行する(ステップS15A)。

【0067】
引き続いて、30分間、休憩し、ガス抜きをし、2-プロパノールを4g補充する(ステップS16A)。そして、蓋をして粉砕容器を密閉し、600rpmの回転数で60分間の粉砕を粉砕と粉砕との間で30分間休憩しながら8サイクル実行する(ステップS17A)。

【0068】
その後、上述したステップS24,S25が順次実行され、n型シリコンナノ粒子の溶液が製造される。

【0069】
図7は、動的光散乱法測定装置の構成図である。図7を参照して、動的光散乱法測定装置200は、レーザ201と、ミラー202,203,205と、レンズ204と、ダークチューブ206と、光ファイバー207と、光電子増倍管208と、相関器209と、パワーサプライ210と、パーソナルコンピュータ211とを備える。

【0070】
レーザ201は、532nmの波長を有し、かつ、強度が100mWであるレーザ光をミラー202へ出射する。

【0071】
ミラー202は、レーザ201からのレーザ光をミラー203の方向へ反射する。ミラー203は、ミラー202からのレーザ光をレンズ204の方向へ反射する。レンズ204は、凸レンズからなり、ミラー203からのレーザ光を集光し、その集光したレーザ光をミラー205へ導く。ミラー205は、レンズ204からのレーザ光を試料220へ照射する。

【0072】
ダークチューブ206は、試料220からの散乱光を光ファイバー207に導く。光ファイバー207は、シングルモードの光ファイバーであり、ダークチューブ206からの散乱光を光電子増倍管208へ導く。

【0073】
光電子増倍管208は、パワーサプライ210からの電力によって駆動される。そして、光電子増倍管208は、光ファイバー207からの散乱光の強度を検出し、その検出した散乱光の強度を相関器209へ出力する。

【0074】
相関器209は、ALV社製のALV-5000/EPPからなり、光電子増倍管208から散乱光の強度を受ける。そして、相関器209は、その受けた散乱光の強度の時間的な揺らぎを測定し、その測定した散乱光の強度の時間的な揺らぎをパーソナルコンピュータ211へ出力する。

【0075】
パワーサプライ210は、HAMAMATSU社製のC8137からなり、電力を光電子増倍管208に供給する。

【0076】
パーソナルコンピュータ211は、散乱光の強度の時間的な揺らぎを相関器209から受け、その受けた散乱光の強度の時間的な揺らぎに基づいて、n型シリコンナノ粒子の粒径を求める。より具体的には、パーソナルコンピュータ211は、ALV-Correlator Software V.3.0を用いて、散乱光の強度の時間的な揺らぎに基づいて、n型シリコンナノ粒子の拡散係数を求め、アインシュタイン・ストークスの式を用いてn型シリコンナノ粒子の粒径を求める。この場合、パーソナルコンピュータ211は、キュムラント法を用いて平均粒子径を求め、CONTIN法による非負最小二乗法を用いて、存在度が最も大きい粒子径(ピーク粒子径)を求める。

【0077】
n型シリコンナノ粒子の粒径が小さい場合、散乱光の強度の時間的な揺らぎは、速くなり、n型シリコンナノ粒子の粒径が大きい場合、散乱光の強度の時間的な揺らぎは、遅くなる。従って、パーソナルコンピュータ211は、散乱光の強度の時間的な揺らぎを解析することによって、n型シリコンナノ粒子の粒径を求めることできる。

【0078】
試料220は、四面の石英セルに入れられ、プリズムマウント(Amistar、APM-3S)上に固定される。

【0079】
動的光散乱法測定装置200を用いた粒径の測定時間は、300秒であり、積算回数は、1回である。

【0080】
図5に示す工程図に従って製造したn型シリコンナノ粒子の粒径を動的光散乱法測定装置200を用いて測定した結果、平均粒子径は、631nmであり、ピーク粒子径は、125nmであった。

【0081】
また、図6に示す工程図に従って製造したn型シリコンナノ粒子の粒径を動的光散乱法測定装置200を用いて測定した結果、平均粒子径は、253nmであり、ピーク粒子径は、53nmであった。

【0082】
図8は、電流電圧特性測定装置の構成図である。図8を参照して、電流電圧特性測定装置300は、ソーラーシミュレータ301と、石英ファイバー302と、ロッドレンズ303と、ソースメーター304と、インタフェース305と、パーソナルコンピュータ306とを備える。

【0083】
ソーラーシミュレータ301は、朝日分光のソーラーシミュレータHAL-C100からなり、100mW/cmの強度を有する擬似太陽光を石英ファイバー302へ出射する。石英ファイバー302は、擬似太陽光をロッドレンズ303へ導く。ロッドレンズ303は、擬似太陽光を光起電力素子10に照射する。

【0084】
ソースメータ304は、Keithley2400からなり、-0.2~0.8Vの範囲の電圧、または-0.2~0.6Vの範囲の電圧を光起電力素子10に印加するとともに、光起電力素子10に流れる電流を測定する。そして、ソースメーター304は、その測定した電流電圧特性をインターフェース305を介してパーソナルコンピュータ306へ出力する。

【0085】
インターフェース305は、ADLINK USB/GPIBインタフェース USB-3488Aからなる。

【0086】
パーソナルコンピュータ306は、Lab Tracer2.0の解析ソフトを用いて、ソースメーター304から受けた電流電圧特性に基づいて、短絡電流Isc、開放電圧VocおよびフィルファクターFFを検出し、その検出した短絡電流Isc、開放電圧VocおよびフィルファクターFFを相互に乗算し、その乗算結果を照射光の強度Pで除算した除算結果を百分率で表して変換効率ηを求める。

【0087】
なお、光起電力素子10は、ワニロクリップ型のリード線を用いてソースメーター304に接続された。この場合、ITOが正極であり、Al電極が負極である。また、ITOおよびAl電極の各々は、2本のリード線によってソースメーター304に接続された。

【0088】
図9は、図1に示す光起電力素子10の電流電圧特性の測定結果を示す図である。図9において、縦軸は、電流密度を表し、横軸は、電圧を表す。また、曲線k1は、暗状態における光起電力素子10の電流電圧特性を示し、曲線k2は、100mW/cmの強度を有する擬似太陽光を照射したときの光起電力素子10の電流電圧特性を示す。

【0089】
なお、図9に示す電流電圧特性は、図5に示す工程図に従って製造されたn型シリコンナノ粒子を混合層4の材料として用いた光起電力素子10の電流電圧特性である。

【0090】
図9を参照して、光起電力素子10は、暗状態では、殆ど整流特性が得られていない(曲線k1参照)。

【0091】
一方、光起電力素子10は、太陽光の照射下においては、電流密度が負の方向へシフトし、正の電圧で電流密度が零になる(曲線k2参照)。そして、照射光強度P=100mW/cmにおける短絡電流Iscは、単位面積(1cm)当たり2.35×10-3mAであり、開放電圧Vocは、0.41Vであり、フィルファクターFFは、0.20である。その結果、光起電力素子10の変換効率ηは、(Isc×Voc×FF/100)×100より、1.94×10-4%である。

【0092】
このように、光起電力素子10は、ITO、PEDOT:PSS、MEH-PPV、n型シリコンナノ粒子およびAlを材料として製造されるので、環境に悪影響を及ぼすことがない。

【0093】
また、n型シリコンナノ粒子は、上述したように、遊星型ボールミル100を用いて製造されるので、一度に大量に製造される。更に、光起電力素子10は、大気圧下で製造される。

【0094】
従って、光起電力素子10の製造コストを低減できる。

【0095】
[実施の形態2]
図10は、実施の形態2による光起電力素子10Aの断面図である。図10を参照して、実施の形態2による光起電力素子10Aは、図1に示す光起電力素子10の混合層4をp型半導体層6およびn型半導体層7に代えたものであり、その他は、光起電力素子10と同じである。

【0096】
p型半導体層6は、例えば、p型半導体であるポリ(3-ヘキシルチオフェン)(=P3HT)からなり、約30~40nmの膜厚を有する。そして、p型半導体層6は、正孔輸送層3に接して正孔輸送層3上に形成される。

【0097】
n型半導体層7は、例えば、n型シリコンナノ粒子からなり、80~90nmの膜厚を有する。そして、n型半導体層7は、p型半導体層6に接してp型半導体層6上に形成される。

【0098】
なお、光起電力素子10Aにおいては、電極5は、n型半導体層7に接してn型半導体層7上に形成される。

【0099】
図11は、図10に示す光起電力素子10Aの製造方法を示す工程図である。図11に示す工程図は、図4に示す工程図のステップS5~S8をステップS5A~S10Aに代えたものであり、その他は、図4に示す工程図と同じである。

【0100】
図11を参照して、光起電力素子10Aの製造が開始されると、上述したステップS1~S4が順次実行される。

【0101】
そして、P3HTの溶液を正孔輸送層3上にスピンコートする(ステップS5A)。より具体的には、P3HT(Rieke Metals,Inc.,4002-E)をクロロベンゼン(ナラライテスク、特級、Code:082122-25)に溶かし、10mg/mlのP3HTの溶液を調整する。この場合、溶液は、サンプル管内で調整し、常温にて超音波洗浄器で、5分間、超音波洗浄することによってP3HTをクロロベンゼンに溶かした。そして、P3HTの溶液をピペット2~3滴に相当する量だけ正孔輸送層3上に滴下し、その後、透明基板1/透明導電膜2/正孔輸送層3を400rpmの回転数で5秒間、回転し、更に、その後、4000rpmの回転数で50秒間、回転する。

【0102】
ステップS5Aの後、P3HTを真空乾燥器(ヤマト科学、DP23)を用いて3.3×10Paの真空度において80℃の温度で、30分間、乾燥して溶媒を蒸発し、p型半導体層6を形成する(ステップS6A)。

【0103】
そして、n型シリコンナノ粒子の溶液を希釈して10mg/mlとし、この溶液をp型半導体層6上にスピンコートする(ステップS7A)。より具体的には、n型シリコンナノ粒子の溶液をピペット2~3滴に相当する量だけp型半導体層6上に滴下し、その後、透明基板1/透明導電膜2/正孔輸送層3/p型半導体層6を400rpmの回転数で5秒間、回転し、更に、その後、3000rpmの回転数で50秒間、回転する。

【0104】
ステップS7Aの後、n型シリコンナノ粒子を真空乾燥器(ヤマト科学、DP23)を用いて3.3×10Paの真空度において80℃の温度で、30分間、乾燥して溶媒を蒸発し、n型半導体層7を形成する(ステップS8A)。

【0105】
そして、透明基板1/透明導電膜2/正孔輸送層3/p型半導体層6/n型半導体層7を150℃の温度で30分間、アニールする(ステップS9A)。

【0106】
引き続いて、図4に示すステップS8と同じ方法によって、Alをn型半導体層7上に形成する(ステップS10A)。これによって、光起電力素子10Aが完成する。

【0107】
図12は、図10に示す光起電力素子10Aの電流電圧特性の測定結果を示す図である。図12において、縦軸は、電流密度を表し、横軸は、電圧を表す。また、曲線k3は、暗状態における光起電力素子10Aの電流電圧特性を示し、曲線k4は、100mW/cmの強度を有する擬似太陽光を照射したときの光起電力素子10Aの電流電圧特性を示す。

【0108】
なお、図12に示す電流電圧特性は、図5に示す工程図に従って製造されたn型シリコンナノ粒子をn型半導体層7として用いた光起電力素子10Aの電流電圧特性である。

【0109】
図12を参照して、光起電力素子10Aは、暗状態では、殆ど整流特性が得られていない(曲線k3)。

【0110】
一方、光起電力素子10Aは、擬似太陽光の照射下においては、電流密度が負の方向へシフトし、正の電圧で電流密度が零になる。そして、照射光強度P=100mW/cmにおける短絡電流Iscは、単位面積(1cm)当たり1.24×10-3mAであり、開放電圧Vocは、0.31Vであり、フィルファクターFFは、0.21である。その結果、光起電力素子10Aの変換効率ηは、(Isc×Voc×FF/100)×100より、8.06×10-5%である。

【0111】
このように、光起電力素子10Aは、ITO、PEDOT:PSS、P3HT、n型シリコンナノ粒子およびAlを材料として製造されるので、環境に悪影響を及ぼすことがない。

【0112】
また、n型シリコンナノ粒子は、上述したように、遊星型ボールミル100を用いて製造されるので、一度に大量に製造される。更に、光起電力素子10Aは、大気圧下で製造される。

【0113】
従って、光起電力素子10Aの製造コストを低減できる。

【0114】
[実施の形態3]
図13は、実施の形態3による光起電力素子の断面図である。図13を参照して、実施の形態3による光起電力素子10Bは、図10に示す光起電力素子10Aに電子輸送層8を追加したものであり、その他は、光起電力素子10Aと同じである。

【0115】
電子輸送層8は、例えば、酸化チタン(TiO)ナノ粒子からなる。そして、電子輸送層8は、n型半導体層7に接してn型半導体層7上に形成される。

【0116】
なお、光起電力素子10Bにおいては、電極5は、電子輸送層8に接して電子輸送層8上に形成される。

【0117】
図14は、図13に示す光起電力素子10Bの製造方法を示す工程図である。図14に示す工程図は、図11に示す工程図のステップS1とステップS2との間にステップS1Aを挿入し、ステップS8AとステップS9Aとの間にステップS7B,S8Bを挿入したものであり、その他は、図11に示す工程図と同じである。

【0118】
図14を参照して、光起電力素子10Bの製造が開始されると、上述したステップS1が実行され、その後、酸化チタンナノ粒子の溶液がミリングによって製造される(ステップS1A)。

【0119】
そして、上述したステップS2~S4,S5A~S8Aが順次実行される。その後、酸化チタンナノ粒子の溶液をn型半導体層7上にスピンコートする(ステップS7B)。より具体的には、酸化チタンナノ粒子の溶液を希釈して10mg/mlとし、この溶液をピペット2~3滴に相当する量だけn型半導体層7上に滴下し、その後、透明基板1/透明導電膜2/正孔輸送層3/p型半導体層6/n型半導体層7を400rpmの回転数で5秒間、回転し、更に、その後、3000rpmの回転数で50秒間、回転する。

【0120】
ステップS7Bの後、酸化チタンナノ粒子を真空乾燥器(ヤマト科学、DP23)を用いて3.3×10Paの真空度において80℃の温度で、30分間、乾燥して溶媒を蒸発し、電子輸送層8を形成する(ステップS8B)。

【0121】
そして、上述したステップS9A,S10Aが順次実行され、光起電力素子10Bが完成する。

【0122】
図15は、図14に示すステップS1Aの詳細な動作を説明するための工程図である。

【0123】
図15を参照して、酸化チタンナノ粒子の溶液の製造が開始されると、φ0.6mmの粉砕ボール(タングステンカーバイド)15を100gと、酸化チタンの粉末を1gと、2-プロパノール(ナカライテスク、一級、Code:29112-05)を7gとを粉砕容器14に入れる(ステップS31)。

【0124】
そして、蓋をして粉砕容器を密閉し、600rpmの回転数で15分間の粉砕を2サイクルと、600rpmの回転数で30分間の粉砕を3サイクルとを粉砕と粉砕との間で30分間休憩しながら実行する(ステップS32)。

【0125】
引き続いて、30分間、休憩し、ガス抜きをし、2-プロパノールを1g補充する(ステップS33)。そして、蓋をして粉砕容器を密閉し、600rpmの回転数で60分間の粉砕を粉砕と粉砕との間で30分間休憩しながら10サイクル実行する(ステップS34)。

【0126】
その後、30分間、休憩し、ガス抜きをし、2-プロパノールを2g補充する(ステップS35)。そして、蓋をして粉砕容器を密閉し、600rpmの回転数で60分間の粉砕を粉砕と粉砕との間で30分間休憩しながら10サイクル実行する(ステップS36)。

【0127】
その後、30分間、休憩し、ガス抜きをし(ステップS37)、メッシュ径が300μmのふるいを用いて粉砕ボールと酸化チタンナノ粒子の溶液とを分離する(ステップS38)。これによって、酸化チタンナノ粒子の溶液が製造される。

【0128】
製造された酸化チタンナノ粒子の粒径を動的光散乱法測定装置200によって測定した結果、平均粒子径が799nmであり、ピーク粒子径が142nmであった。

【0129】
図16は、図13に示す光起電力素子10Bの電流電圧特性の測定結果を示す図である。図16において、縦軸は、電流密度を表し、横軸は、電圧を表す。また、曲線k5は、暗状態における光起電力素子10Bの電流電圧特性を示し、曲線k6は、100mW/cmの強度を有する擬似太陽光を照射したときの光起電力素子10Bの電流電圧特性を示す。

【0130】
なお、図16に示す電流電圧特性は、図6に示す工程図に従って製造されたn型シリコンナノ粒子をn型半導体層7として用いた光起電力素子10Bの電流電圧特性である。

【0131】
図16を参照して、光起電力素子10Bは、暗状態では、殆ど整流特性が得られていない(曲線k5参照)。

【0132】
一方、光起電力素子10Bは、擬似太陽光の照射下においては、電流密度が負の方向へシフトし、正の電圧で電流密度が零になる(曲線k6参照)。そして、照射光強度P=100mW/cmにおける短絡電流Iscは、単位面積(1cm)当たり1.15×10-2mAであり、開放電圧Vocは、0.08Vであり、フィルファクターFFは、0.26である。その結果、光起電力素子10Bの変換効率ηは、(Isc×Voc×FF/100)×100より、2.41×10-4%である。

【0133】
このように、光起電力素子10Bは、ITO、PEDOT:PSS、P3HT、n型シリコンナノ粒子、酸化チタンナノ粒子およびAlを材料として製造されるので、環境に悪影響を及ぼすことがない。

【0134】
また、n型シリコンナノ粒子および酸化チタンナノ粒子は、上述したように、遊星型ボールミル100を用いて製造されるので、一度に大量に製造される。更に、光起電力素子10Bは、大気圧下で製造される。

【0135】
従って、光起電力素子10Bの製造コストを低減できる。

【0136】
[実施の形態4]
図17は、実施の形態4による光起電力素子の断面図である。図17を参照して、実施の形態4による光起電力素子10Cは、図13に示す光起電力素子10Bのn型半導体層7を削除したものであり、その他は、光起電力素子10Bと同じである。

【0137】
従って、光起電力素子10Cにおいては、電子輸送層8は、p型半導体層6に接してp型半導体層6上に形成される。

【0138】
なお、光起電力素子10Cは、図14に示す工程図のステップS7A,S8Aを削除した工程図に従って製造される。

【0139】
図18は、図17に示す光起電力素子10Cの電流電圧特性の測定結果を示す図である。図18において、縦軸は、電流密度を表し、横軸は、電圧を表す。また、曲線k7は、暗状態における光起電力素子10Cの電流電圧特性を示し、曲線k8は、100mW/cmの強度を有する擬似太陽光を照射したときの光起電力素子10Cの電流電圧特性を示す。

【0140】
図18を参照して、光起電力素子10Cは、暗状態では、殆ど整流特性が得られていない(曲線k7参照)。

【0141】
一方、光起電力素子10Cは、擬似太陽光の照射下においては、電流密度が負の方向へシフトし、正の電圧で電流密度が零になる(曲線k8参照)。そして、照射光強度P=100mW/cmにおける短絡電流Iscは、単位面積(1cm)当たり2.32×10-2mAであり、開放電圧Vocは、0.21Vであり、フィルファクターFFは、0.29である。その結果、光起電力素子10Cの変換効率ηは、(Isc×Voc×FF/100)×100より、1.39×10-3%である。

【0142】
このように、光起電力素子10Cは、ITO、PEDOT:PSS、P3HT、酸化チタンナノ粒子およびAlを材料として製造され、Pb等の環境に悪影響を及ぼす材料を用いて製造されないので、環境に悪影響を及ぼすことがない。

【0143】
また、酸化チタンナノ粒子は、上述したように、遊星型ボールミル100を用いて製造されるので、一度に大量に製造される。更に、光起電力素子10Cは、大気圧下で製造される。

【0144】
従って、光起電力素子10Cの製造コストを低減できる。

【0145】
上記においては、透明基板1は、ガラスからなると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、透明基板1は、石英およびプラスチップからなっていてもよく、一般的には、太陽光を透過する材料であれば、どのような材料からなっていてもよい。

【0146】
また、上記においては、透明導電膜2は、ITOからなると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、透明導電膜2は、ZnOおよびSnO等からなっていてもよく、一般的には、太陽光を透過する材料であれば、どのような材料からなっていてもよい。そして、ITO、ZnOおよびSnO等は、透明基板1と反対側の表面が凹凸化されていてもよい。

【0147】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0148】
この発明は、光起電力素子およびその製造方法に適用される。
【符号の説明】
【0149】
1 透明基板、2 透明導電膜、3 正孔輸送層、4 混合層、5 電極、6 p型半導体層、7 n型半導体層、8 電子輸送層、10,10A,10B,10C 光起電力素子、11 本体部、12 制御部、13 回転盤、14 粉砕容器、15 粉砕ボール、100 遊星型ボールミル、121 操作パネル、200 動的光散乱法測定装置、201 レーザ、202,203,205 ミラー、204 レンズ、206 ダークチューブ、207 光ファイバー、208 光電子増倍管、209 相関器、210 パワーサプライ、211,306 パーソナルコンピュータ、300 電流電圧特性測定装置、201 ソーラーシミュレータ、203 石英ファイバー、303 ロッドレンズ、304 ソースメーター、305 インターフェース。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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