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明細書 :時間的に連続する2枚の胸部X線像からの経時変化検出のためのサブトラクション方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4613317号 (P4613317)
公開番号 特開2008-173223 (P2008-173223A)
登録日 平成22年10月29日(2010.10.29)
発行日 平成23年1月19日(2011.1.19)
公開日 平成20年7月31日(2008.7.31)
発明の名称または考案の名称 時間的に連続する2枚の胸部X線像からの経時変化検出のためのサブトラクション方法
国際特許分類 A61B   6/00        (2006.01)
G06T   1/00        (2006.01)
FI A61B 6/00 350S
A61B 6/00 350D
G06T 1/00 290A
請求項の数または発明の数 1
全頁数 11
出願番号 特願2007-008024 (P2007-008024)
出願日 平成19年1月17日(2007.1.17)
審査請求日 平成20年3月6日(2008.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】川口 剛
【氏名】原田 義富
【氏名】三宅 秀敏
【氏名】永田 亮一
審査官 【審査官】伊藤 昭治
参考文献・文献 特開2005-130928(JP,A)
特表2003-512112(JP,A)
調査した分野 A61B 6/00 - 6/14
G06T 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
画像処理装置が
(1)、2枚の胸部X線像を読み取り、前記2枚の胸部X線像のそれぞれに対して、胸部X線像から肋骨下縁の頂上部のエッジが強調された画像E1を作成し、画像E1の右肺領域、左肺領域の各行yに対して、行y上の画素の値の平均値HR(y)、HL(y)を求めた後、HL(y)をテンプレートとして、これを垂直方向に移動させながらHR(y)との間で相互相関値を計算することによって、左右肋骨下縁の垂直方向の位置ずれΔyを検出し、次に、画像E1の右半分をΔyだけ垂直方向に移動させた画像E2を作成し、さらに、画像E2の左肺領域の画像中心軸に関する鏡像をテンプレートとして、これを水平方向に移動させながら画像E2の左半分(右胸部)との間で相互相関値を計算することによって、左右肋骨下縁の水平方向の距離Δxを検出し、この後、ΔyとΔxの比を傾きとする直線と水平軸がなす角度をθとし、次に、原画像を、画像中心を中心としてθだけ回転させた傾き補正画像を作成する。
(2)、前記(1)で得られた2枚の傾き補正画像のそれぞれから、肋骨下縁の頂点より外側のエッジが強調された画像E3を作成し、画像E3の左肺領域の画像中心軸に関する鏡像をテンプレートとし、これを水平方向に移動させながら画像E3の左半分(右胸部)との間で相互相関値を計算することによって、胸郭中心軸の水平方向の位置xGを検出し、次に、列xG が画像中心軸と一致するように画像を水平方向に平行移動する。
(3)、前記(2)で得た2枚の傾きおよび水平位置補正画像の一方における胸郭内部の部分画像をテンプレートとして、これを他方の画像の上で、両者の胸郭中心軸を一致させて垂直方向に移動させながら相互相関値を計算し、相互相関値が最大となる位置で、2枚の傾きおよび水平位置補正画像を重ね合わせて、両者の差分をとり、経時変化が強調された画像を作成する。
ことを特徴とする時間的に連続する2枚の胸部X線像からの経時変化検出のためのサブトラクション方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、時間的に連続する2枚の胸部X線像からの経時変化検出のためのサブトラクション方法に関するものである。詳しくは、同一被検者の時間的に連続する2枚の胸部X線像をディジタル化した後、両者の間でサブトラクションを行い、2枚の画像間の経時変化を強調した画像を作成するための方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
医師による胸部単純X線写真からの肺癌診断を支援するための画像処理手法として、経時的差分(temporal subtraction)と呼ばれる方法がある。この方法は、同一被検者に対して撮影された過去画像と現在画像の2枚の画像の差をとることにより、2枚の画像間に存在する経時変化を強調する。過去画像に結節がなく、現在画像に結節があるとき、経時的差分によって現在画像中の結節が強調される。
過去画像と現在画像の間には、撮影体位やX線入射方向の差異に起因する位置ずれが存在するので、差分処理に先立ち、正常構造の位置を正確に合わせるための処理が必要である。
【0003】
従来の経時的差分法(Ishida et al., Application of temporal subtraction for detection of interval changes on chest radiographs: improvement of subtraction images using automated initial image matching, Journal of Digital Imaging, Vol.12, pp.77-86, 1999)は、2枚の画像に対して脊椎線を検出し、脊椎線を用いて2枚の画像間の回転角を補正する。この後、一方の画像の胸郭内部の部分画像をテンプレートとして、これを他方の画像の上で、水平方向、垂直方向に移動させながら相互相関値を計算し、相互相関値を最大にする位置を求めることによって、2枚の画像間の水平、垂直位置を補正する。
回転角、水平位置、垂直位置の補正の中で、回転角の補正は最初に行われるので、回転角の補正が正しく行われていないと、後に続く水平、垂直位置補正のためにどのような方法を用いたとしても、2枚の画像間の最終的な位置合わせは不十分なものとなる。従来法は、画像の各行の水平プロファイルが画像の中心軸付近で極大となる点を求め、これらの点を直線近似することによって脊椎線を求め、脊椎線の傾きを用いて、2枚の画像間の回転角を補正する。しかし、従来法で用いる脊椎線検出法は、上記のように、水平プロファイルの極大点という局所的情報のみを用いて脊椎線を検出するので、従来法から得られる脊椎線の傾きはノイズの影響を受けやすい。この結果として、2枚の画像間の回転角の補正を正しく行えないことが多い。
従来法では、2枚の画像間で、回転角、水平位置、垂直位置の補正を行った後、特開平7-37074で公開されている方法を用いて、一方の画像をワーピングさせ、局所的位置合わせを行う。しかし、このような局所的位置合わせが有効に働くためには、2枚の画像間で、回転角、水平位置、垂直位置の補正を行った段階で、2枚の画像間の位置合わせが、ある程度正確に行われておく必要がある。局所的位置合わせは、2枚の画像間で、対応する画素どおしの座標値の差が小さい場合しか有効に働かない。それ故、経時的差分においては、2枚の画像間で、回転角を補正するための方法が重要である。

【非特許文献1】Ishida et al., Application of temporal subtraction for detection of interval changes on chest radiographs: improvement of subtraction images using automated initial image matching, Journal of Digital Imaging, Vol.12, pp.77-86, 1999
【特許文献1】特開平7-37074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、同一被検者の時間的に連続した2枚の胸部X線画像の間でサブトラクションを行い、2枚の画像間に存在する病理的な経時変化を強調した画像を作成する方法を提供することである。前述したように、同一被検者の時間的に連続した2枚の胸部X線画像の間でサブトラクションを行うという方法は従来からあり、経時的差分とよばれている。
しかし、従来法は、画像の各行の水平プロファイルが画像の中心軸付近で極大となる点を求め、これらの点を直線近似することによって脊椎線を求め、脊椎線の傾きを用いて、2枚の画像間の回転角を補正する。このように、従来法は、水平プロファイルの極大点という局所的情報のみを用いて脊椎線を検出するので、従来法から得られる脊椎線の傾きはノイズの影響を受けやすい。この結果として、2枚の画像間の回転角の補正を正しく行えないことが多い。
そこで、本発明では、2枚の画像間で回転角の補正が正しくできるような胸郭中心軸の検出法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記問題を解決するためになされたものでありその特徴とするところは、次の通りである。
【0006】
(1)、2枚の胸部X線像のそれぞれに対して、胸部X線像から肋骨下縁の頂上部のエッジが強調された画像E1を作成し、画像E1の右肺領域、左肺領域の各行yに対して、行y上の画素の値の平均値HR(y)、HL(y)を求めた後、HL(y)をテンプレートとして、これを垂直方向に移動させながらHR(y)との間で相互相関値を計算することによって、左右肋骨下縁の垂直方向の位置ずれΔyを検出し、次に、画像E1の右半分をΔyだけ垂直方向に移動させた画像E2を作成し、さらに、画像E2の左肺領域の画像中心軸に関する鏡像をテンプレートとして、これを水平方向に移動させながら画像E2の左半分(右胸部)との間で相互相関値を計算することによって、左右肋骨下縁の水平方向の距離Δxを検出し、この後、ΔyとΔxの比を傾きとする直線と水平軸がなす角度をθとし、
次に、原画像を、画像中心を中心としてθだけ回転させた傾き補正画像を作成する。
(2)、前記(1)で得られた2枚の傾き補正画像のそれぞれから、肋骨下縁の頂点より外側のエッジが強調された画像E3を作成し、画像E3の左肺領域の画像中心軸に関する鏡像をテンプレートとし、これを水平方向に移動させながら画像E3の左半分(右胸部)との間で相互相関値を計算することによって、胸郭中心軸の水平方向の位置xGを検出し、次に、列x が画像中心軸と一致するように画像を水平方向に平行移動する。
(3)、前記(2)で得た2枚の傾きおよび水平位置補正画像の一方における胸郭内部の部分画像をテンプレートとして、これを他方の画像の上で、両者の胸郭中心軸を一致させて垂直方向に移動させながら相互相関値を計算し、相互相関値が最大となる位置で、2枚の傾きおよび水平位置補正画像を重ね合わせて、両者の差分をとり、経時変化が強調された画像を作成する。
ことを特徴とする時間的に連続する2枚の胸部X線像からの経時変化検出のためのサブトラクション方法。
【発明の効果】
【0007】
胸部X線像における肺野結節状陰影は、肺がんの特徴的陰影である。しかし、この結節状陰影の周囲には、肋骨や肺血管などがあり、これらの解剖学的正常構造が結節状陰影を偽装してしまうため、コントラストが低い結節状陰影は、専門医師によっても見逃しやすい。そこで、胸部X線像から肺野結節状陰影を強調した画像を作成することにより、医師による肺がんの診断を支援する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の時間的に連続した2枚の胸部X線像からの経時変化検出のためのサブトラクション方法は、基本的に次の4ステップにより、2枚の画像間に存在する経時変化を強調した画像をうるものである。
ステップ1:2枚の胸部X線像をディジタル化。
ステップ2:2枚の画像に対して、胸郭中心軸を検出し、胸郭中心軸が垂直線と平行になるように画像を回転し、さらに、胸郭中心軸が画像中心軸に一致するように画像を水平方向に平行移動する。
ステップ3:一方の画像の胸郭内部の部分画像をテンプレートとして、これを他方の画像の上で、両者の胸郭中心軸を一致させながら垂直方向に移動させて相互相関値を計算し、相互相関値を最大にする位置を求めることによって、2枚の画像間の垂直方向の平行移動量を補正する。
ステップ4:2枚の画像の間でサブトラクションを行う。このステップ4のサブトラクションによって得られる画像は、2枚の画像間の経時変化が強調された画像となる。
そこで発明を実施するための具体的な最良の形態については、後述の実施例1により詳細に紹介する。
【実施例1】
【0009】
本発明の時間的に連続した2枚の胸部X線像からの経時変化検出のためのサブトラクション方法の実施例を具体的な処理ステップ順で説明する。
以下の記述では、画像の左上隅を原点とし、画像の列、行をそれぞれx軸、y軸とする座標系を用いる(図1参照)。また、画像の列数、行数をM、Nで表す。胸部X線像には後部肋骨(背中側の肋骨)と前部肋骨の両方が写っているが、本発明の胸郭中心軸検出法は、後部肋骨のみを利用する。そこで、以後は、後部肋骨を単に肋骨と呼ぶ。さらに、左肺の肋骨を左肋骨と呼び、右肺の肋骨を右肋骨と呼ぶ。なお、胸郭の中心軸は、ほぼ画像の中心軸近くにあり、画像の中心軸より左側に右肺、右側に左肺があると仮定する。
また入力として与えられる胸部X線像では、X線の透過量が多い領域ほど黒く、画素値は小さいものとする。従って、縦隔は白く(画素値が大きく)、肺野は黒い(画素値が小さい)。
<本発明方法の中心である胸郭中心軸検出法>
【0010】
1.肺野上端線の検出
まず、従来法と同様な手法を用いて、肺野上端線を求める。
画像の第0行から0.3N行の範囲にある各行yに対して、行y上の画素の値の平均値H(y)を求める(ただし、平均値は中央部2分の1の範囲の画素のみを用いて計算する)。この後、H(y)をガウス関数で平滑化する。そしてH(y)を最大にする行y1を求め、これを肺野上端線とする(図1参照)。
【0011】
2.左右胸部の相関を計算するときに用いる肺領域の上端の決定
本発明の胸郭の中心軸検出法は、後部肋骨下縁の頂上部のエッジと同じエッジ方向をもつエッジが強調された画像において、右胸部と左胸部の間で相関を計算することによって、左右肋骨のy方向の移動量Δyとx方向の移動量Δxを求める。左胸部と右胸部の間で相関を計算するとき、肺野上部の行を除いて相関を計算するほうが、左右肋骨のy方向、x方向の移動量を正しく求めることができる。そこで、左右胸部の相関を計算するときに用いる肺領域の上端の行y2を以下の方法で決定する。
原画像にSobelオペレータを適用して、各画素の値のx方向、y方向の一次微分Dx、Dyを求める。そして、数1、数2によって、各画素のエッジ強度e、エッジ方向φを求める。
【0012】
【数1】
JP0004613317B2_000002t.gif

【0013】
【数2】
JP0004613317B2_000003t.gif
次に、φが240°~300°(図2参照)の範囲にある画素の値をエッジ強度eで与え、その他の画素の値を0で与えることによって、エッジ強度画像を作成する。
この後、エッジ強度画像を平滑化し、肺野上端線の下0.1N行から0.2N行の範囲に属す各行yに対して、行y上の画素の値の平均値H(y)を求める(ただし、平均値は中央部2分の1の範囲の画素のみを用いて計算する)。そしてH(y)を最大にする行yを求め、これをy2とする。
【0014】
3.肺野下端線の検出
次に肺野下端線を求める。右肺と右横隔膜の境界にはエッジが強く現われるが、ガスやマンモの影響によって左肺と左横隔膜の境界にはエッジが現われにくい。そこで、本発明の手法は、従来法と同様に、右肺と右横隔膜の境界のy方向の位置を検出し、これを肺野下端線とする。
肺野下端線を求めるために従来法と同様な方法を用いてもよいが、本発明では、従来法と異なる以下の方法を用いる。(実験の結果、以下に述べる方法の方が安定して肺野下端線を求めることができることが確かめられた。)まず、垂直方向のエッジが強調された画像をつくり、これと行y2を求めたときに用いたエッジ強度画像との差をとる。ただし、引き算の結果が負になる画素に対しては値を0にする。次に、このようにして得られた画像において、0.65N行から画像の下端の範囲にある各行yに対して、行y上の画素の値の平均値H(y)を求める(ただし平均値は、画像の中心軸より左側に、画像幅の4分の1だけとった領域中の画素のみを用いて計算する)。そしてH(y)を最大にする行ybを肺野下端線とする(図1参照)。
【0015】
4.肺野内のコントラスト強調
本発明の胸郭中心軸検出法は、右胸部、左胸部の肋骨下縁エッジの相関を用いて、中心軸を検出する。そこで、肋骨エッジを強調するため、以下に述べる方法を用いて、肺野内の肋骨部と肋間部の画素値の差を拡大する。
まず、原画像において、中央部2分の1の領域に属し、かつ、y2~ybの範囲の行からなる長方形領域をSとする(図1参照)。そして、領域S中の画素値の最小値をA、最大値をBとし、Cを次の数3によって与える。
【0016】
【数3】
JP0004613317B2_000004t.gif
このとき、領域S中の肺野内の画素値は、ほぼ、A~Cの範囲に属す。そこで、肺野内のコントラストを強調するため、値がC以下の画素に対して、画素値を次の数4によって変換する。
【0017】
【数4】
JP0004613317B2_000005t.gif
上記数4において、Z0、Z1は、それぞれ、変換前、変換後の画素値を表わす。数4による変換の結果、肺野内の肋骨部と肋間部の画素値の差が拡大され、肋骨エッジが強調される。
上記の処理では、領域S中の画素値のみが変換される。本発明の中心軸検出法は、後述するように、中心軸検出のために領域Sの外の肋骨エッジも利用する。そこで、領域Sの外の画素に対しても、数4を用いて画素値を変換する。このとき、数4におけるA、Cの値は、領域S中の画素値から得られた値をそのまま用いる。
【0018】
5.胸郭中心軸の傾きの検出
まず、肺野内のコントラストが強調された画像にSobelオペレータを適用して、各画素の値のx方向、y方向の一次微分Dx、Dyを求める。そして、数1、数2によって、各画素のエッジ強度e、エッジ方向φを求める。
次に、φが240°~300°の範囲にある画素の値をエッジ強度eで与え、その他の画素の値を0にする。(この結果、肋骨下縁の頂上部付近のエッジと同じエッジ方向をもつ画素のみが非零の値をもつエッジ強度画像が得られる。)この後、画像を平滑化し、平滑化後の画像をE1で表す。
次に、画像E1を用いて、左右肋骨のy方向の移動量Δyを求める。Δyを求めるための具体的処理は次の通りである。
まず、画像E1の右胸部、左胸部のそれぞれに対して、y方向のプロファイルHR(y),HL(y)を求める(図3参照)。各行yに対して、HR(y)は、画像の中心軸から左に画像幅の4分の1だけとった領域に属す画素の値の平均値で与え、HL(y)は、画像の中心軸から右に画像幅の4分の1だけとった領域に属す画素の値の平均値で与える。そして、数5でtを与え、kを-tとtの間で変化させながら、数6によって相関係数C1(k)を計算する。
【0019】
【数5】
JP0004613317B2_000006t.gif

【0020】
【数6】
JP0004613317B2_000007t.gif
ただし、上記数6において、aはyをy2~ybの間で変化させたときのHL(y)の平均値を表し、bはHR(y+k)の平均値を表す。そしてC1(k)を最大にするkを求め、このkの値をΔyとする。なお数5のtはほぼ肋骨の幅を与える。
前述したように、画像E1は肋骨下縁の頂上部のエッジが強調された画像となる。それ故、HR(y)、HL(y)は肋骨下縁の頂上部付近でピークをもつ。従って、数6のC1(k)を最大にするkの値は、左右肋骨の頂上部のy方向の位置のずれを与える。
本発明の中心軸検出法は、Δyを求めた後、画像E1の右半分をy方向にΔyだけ平行移動する(図4参照)。この後、平行移動後の画像の行y2~ybにおける胸郭外のすべての画素値を0とする。そして、このようにして得られる画像をE2で表す(図5参照)。なお、画像のy2~yb行において、画素を胸郭内の画素と胸郭外の画素に分類するためには、胸郭の左右境界線を求める必要があるが、胸郭の左右境界線検出のために、本発明の手法は、Xuらの手法(X. Xu et al., Image feature analysis for computer-aided diagnosis : Accurate determination of ribcage boundary in chest radiographs, Medical Physics, Vol.22, pp.617-626, 1995)と同様な手法を用いる。
次に、画像E2のy2~yb行および3M/4~M-1列からなる部分画像の画像中心軸に関する鏡像をテンプレートT(u, y) (u=0~M/4,y=y2~yb)とする(図5参照)。そしてkを-M/4~M/4の範囲で変化させながら、テンプレートTと画像E2の左半分(右胸部)の間で、次の数7によって相関係数C2(k)を計算する。
【0021】
【数7】
JP0004613317B2_000008t.gif
ただし、上記数7においてaは、テンプレートT中の画素値の平均を表し、bはテンプレートに対応させられた部分画像中の画素値の平均を表す。そしてC2(k)を最大にするkを求め、Δxを次の数8で与える。
【0022】
【数8】
JP0004613317B2_000009t.gif
数7でk=0の場合は、テンプレートTの左端(u=0の位置)が、画像E2の左端に一致するように、TをE2の上に重ねた場合に対応する。
本発明の中心軸検出法は、Δy、Δxを求めた後、胸郭の中心軸が垂直線となす角度θを数9で与える。
【0023】
【数9】
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【0024】
6.中心軸の平行移動量の計算
垂直軸とθの角度をなす直線の中から、胸郭の中心軸に対応する直線を求めるために以下の処理を行う。
まず、肺野内のコントラストを強調した画像を、画像中心を中心としてθだけ回転する。この結果、胸郭の中心軸はy軸に平行な直線となる(図6参照)。回転後の画像にSobelオペレータを適用して、各画素の値のx方向、y方向の一次微分Dx、Dyを求め、数1、数2を用いて、エッジ強度e、エッジ方向φを求める。そして、右胸部に対しては、φが180°~270°の範囲にある画素の値をeで与え、その他の画素の値を0とする。また、左胸部に対しては、φが270° ~360°の範囲にある画素の値をeで与え、その他の画素の値を0とする。この結果、右胸部では右肋骨下縁エッジのうち、頂点より外側(縦隔と反対側)のエッジのみが残され、左胸部では左肋骨下縁エッジのうち、頂点より外側のエッジのみが残される。
この後、Δxを求めた場合と同様に、行y2~ybの範囲で、胸郭の左右境界線を求め、行y2~ybにおける胸郭外のすべての画素値を0とする。そして、このようにして得られる画像をE3で表す(図7参照)。
次に、画像E3のy2~yb行および3M/4~M-1列からなる部分画像の画像中心軸に関する鏡像をテンプレートT(u, y)(u=0~M/4,y=y2~yb)とする(図7参照)。そして、kを-M/4~M/4の範囲で変化させながら、テンプレートTと画像E3の左半分(右胸部)の間で、次の数10によって相関係数C3(k)を計算する。
【0025】
【数10】
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ただし、上記数10においてaはテンプレートT中の画素値の平均を表し、bはテンプレートに対応させられた部分画像中の画素値の平均を表す。数10でk=0の場合は、テンプレートTの左端が、画像E3の左端に一致するようにTをE3の上に置いた場合に対応する。数10の C3(k)を最大にするkを求め、xGを次の数11で与え、x=xGを胸郭中心軸とする。
【0026】
【数11】
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【0027】
7.サブトラクション画像の作成
サブトラクション画像は次の方法で作成する。まず過去画像と現在画像の両方に対して、胸郭中心軸が垂直線と平行になるように画像を回転し、この後、胸郭中心軸が画像中心軸と一致するように画像をx方向に平行移動する。この後、過去画像の胸郭内部の部分画像をテンプレートとして、これを現在画像の上で、両者の胸郭中心軸を一致させてy方向に移動させながら、相互相関値を計算する。そして、相互相関値を最大にする位置を求め、この位置で過去画像と現在画像を重ね合わせて、両者の差分をとる(このとき、過去画像から現在画像を引き算する)。
ただし、このようにして得られる画像では画素値が負になることがあるので、サブトラクション画像を表示するときは、元の画素値に画像の最大階調値を加えて得られる値を2で割った値を、表示のための画素値とする。それ故、サブトラクション画像において白い領域または黒い領域が、過去画像と現在画像間で差が大きい領域を表す。結節は周囲よりも画素値が大きい領域であるので、過去画像に結節がなく、現在画像に結節がある場合、上記の方法でサブトラクション画像を作ると、結節は黒い領域として現れる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
胸部X線像において肺がんの特徴的陰影である肺野結節状陰影は、その周囲にある肋骨や肺血管などの解剖学的正常構造が結節状陰影を偽装してしまうため、コントラストが低い結節状陰影は専門医でも見逃しやすいが、本発明は、胸部X線像から肺野結節状陰影の候補領域が強調された画像を作成して、胸部X線像を目視診断する医師による肺がんの適確迅速な診断を支援するなどの優れた効果を呈するもので、医学分野におけるX線像診断の画期的な活用が大いに期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1において用いた画像の座標系および肺野上端線y1,肺野下端線ybおよび肺野内のコントラスト強調に用いた領域Sを示す。
【図2】実施例1において用いたエッジ方向を表す角度φとエッジの向きの関係を示す。
【図3】実施例1において、左右肋骨のy方向の移動量Δyを求めるために用いた画像E1、および、画像E1の右胸部のプロファイルHR(y)と左胸部のプロファイルHL(y)を示す。
【図4】実施例1において用いた画像E1と画像E1の右半分をy方向にΔyだけ平行移動させて得られる画像を示す。
【図5】実施例1において、左右肋骨のx方向の移動量Δxを求めるために用いた画像E2、および、E2から作成されるテンプレートTを示す。
【図6】実施例1において、胸郭の中心軸がy軸に平行になるように画像をθだけ回転する前後の画像を示す。
【図7】実施例1において、胸郭中心軸のx方向の平行移動量xを求めるために用いた画像E3、および、E3から作成されるテンプレートTを示す。
【符号の説明】
【0030】
S 原画像において、中央部2分の1の領域に属し、かつ、行y2~ybからなる長方 形領域
E1 エッジ方向が240°~300°の範囲にある画素の値をエッジ強度で与え、その他の画 素の値を0とした後、平滑化して得られる画像
E2 画像E1の右半分をy方向にΔyだけ平行移動した後、行y2~ybにおける胸郭 外の画素の値を0として得られる画像
θ 胸郭中心軸が垂直線となす角度
E3 画像の左半分ではエッジ方向が180°~270°の範囲にある画素の値をエッジ強度で 与え、その他の画素の値を0とし、画像の右半分ではエッジ方向が270°~360°の 範囲にある画素の値をエッジ強度で与え、その他の画素の値を0とした後、行y2 ~ybの胸郭外の画素の値を0として得られる画像
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6