TOP > 国内特許検索 > 胸部X線画像からのリブケイジ境界検出方法 > 明細書

明細書 :胸部X線画像からのリブケイジ境界検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4639338号 (P4639338)
公開番号 特開2008-259522 (P2008-259522A)
登録日 平成22年12月10日(2010.12.10)
発行日 平成23年2月23日(2011.2.23)
公開日 平成20年10月30日(2008.10.30)
発明の名称または考案の名称 胸部X線画像からのリブケイジ境界検出方法
国際特許分類 A61B   6/00        (2006.01)
FI A61B 6/00 350D
請求項の数または発明の数 1
全頁数 13
出願番号 特願2007-081989 (P2007-081989)
出願日 平成19年3月27日(2007.3.27)
優先権出願番号 2007073264
優先日 平成19年3月20日(2007.3.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年3月24日(2008.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】川口 剛
【氏名】永田 亮一
【氏名】三宅 秀敏
審査官 【審査官】小田倉 直人
参考文献・文献 特開平08-335271(JP,A)
特開2003-006661(JP,A)
特開2002-366961(JP,A)
特開2002-177249(JP,A)
特開昭63-240832(JP,A)
調査した分野 A61B 6/00
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)胸部X線像に1次微分オペレータを適用して各画素の勾配方向を求めた後、画像の左半分(右胸部)においては、右肺の肋骨側面部下縁の画素と同じ勾配方向をもつ画素(右エッジ要素と呼ぶ)の値を1とし、その他の画素の値を0として、また画像の右半分(左胸部)においては、左肺の肋骨側面部下縁の画素と同じ勾配方向をもつ画素(左エッジ要素と呼ぶ)の値を1とし、その他の画素の値を0として、2値画像Bを作成し、
この後、画像Bの左半分において、右エッジ要素の連結成分を求め、面積最大の連結成分の左境界点列(各行において連結成分の最も左側にある画素をつないで得られる道)を右側リブケイジ境界候補点列とし、画像Bの右半分において、左エッジ要素の連結成分を求め、面積最大の連結成分の右境界点列(各行において連結成分の最も右側にある画素をつないで得られる道)を左側リブケイジ境界候補点列とし、
次に、右側リブケイジ境界候補点列をLとして、まず、y方向に関してLに包含される右エッジ要素の連結成分を削除した後、左境界点列がLとの間でマージの条件を満たす連結成分があれば、Lとその左境界点列をマージして得られる点列をあらためて右側リブケイジ境界候補点列Lとし、この処理をLに新たな点列がマージされなくなるまで繰り返すことによって最終的な右側リブケイジ境界候補点列を求め、
また、同様な方法で左側リブケイジ境界候補点列を求める。
(2)前記(1)の方法で求まる右側リブケイジ境界候補点列の最上点の行番号と左側リブケイジ境界候補点列の最上点の行番号の平均によって、肺野上端線の位置を与える。
(3)前記(1)の方法で求まる右側リブケイジ境界候補点列と左側リブケイジ境界候補点列のそれぞれに対して、点列上の点の列番号をx、行番号をyとするとき、xがyの4次多項式で与えられると仮定して、点列にカーブフィッティングを適用して得られる曲線を右側リブケイジ境界、左側リブケイジ境界とし、これらと前記(2)の方法で求まる肺野上端線、および、肺野下端線によってリブケイジ境界を与える。
ことを特徴とするリブケイジ境界検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、胸部X線像からリブケイジ(ribcage)境界を精度よく自動検出するための画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
胸部X線像からリブケイジ境界を自動検出する方法は、X.W.Xu and K.Doi, Image feature analysis for computer-aided diagnosis : Accurate determination of ribcage boundary in chest radiographs, Medical Physics, Vol.22, No.5, pp.617-626, 1995や特開平7-37074号公報に記載されているように、コンピュータ支援診断の分野で広く利用されている。
従来のリブケイジ境界検出法(X.W.Xu and K.Doi, Image feature analysis for computer-aided diagnosis : Accurate determination of ribcage boundary in chest radiographs, Medical Physics, Vol.22, No.5, pp.617-626, 1995)は、画像の垂直プロファイル、水平プロファイルを用いて、リブケイジ境界候補点を検出する。右側、左側リブケイジ境界は、行方向に急激に変化するのに対して、上肺リブケイジ境界は、列方向に急激に変化する。そこで従来法は、リブケイジ境界を上肺、右側、左側リブケイジ境界の三つの部分に分け、右側および左側リブケイジ境界候補点は水平プロファイルを用いて検出し、上肺リブケイジ境界候補点は垂直プロファイルを用いて検出する。
また、従来法は、上肺、右側、左側リブケイジ境界ごとに境界候補点を求めるとき、まず開始点を求め、前に検出された境界候補点の近傍で次の境界候補点を求めるという処理を繰り返して、境界候補点をたどって行く。そして、境界候補点を検出した後、上肺、右側、左側リブケイジ境界ごとに、カーブフィッティングを適用して、これの境界を曲線で与える。
従来法の問題点の一つは、この方法がリブケイジ境界を上肺、右側、左側リブケイジ境界の三つの部分に分けて検出するため、三つの境界を求めた後、これらを一つの連続する曲線に結合する必要があることである。
従来法の2番目の問題点は、従来法は上肺リブケイジ境界の検出に失敗することが多いことである。従来法は、上肺リブケイジ境界を求めるために、まず、肺野上端線を求め、肺野上端線上の一つの点を境界候補点列の開始点とする。しかし、従来法は肺野上端線を求めるために、画像上部の垂直プロファイルの極大点という局所的情報のみを用いるので、肺野上端線を正しく求めることができないことが多い。肺野上端線が正しく求まらないと、境界候補点列の開始点が求まらないので、上肺リブケイジ境界は求まらない。また、従来法は、前に検出された境界候補点の近傍で、垂直プロファイルの2次微分の極小点を求め、値が小さいほうから二つの極小点のうちの一方を次の境界候補点とするが、上肺部は複雑な合成像となっているため、開始点が正しく求まった場合でも、従来法が用いるような方法では上肺リブケイジ境界候補点を正しくたどれないことも多い。
従来法の3番目の問題点は、従来法ではリブケイジ境界の検出精度が、境界候補点列の開始点の検出精度に大きく依存するにもかかわらず、従来法の開始点の検出精度は低いことである。従来法は、上肺リブケイジ境界と比較すると、右側、左側リブケイジ境界を画像によらず比較的安定して検出できる。しかし、従来法は、肺の中央(行方向に関する中央)で境界候補点列の開始点を求めた後、上下の方向に境界候補点をたどることによって右側、左側リブケイジ境界を求めるが、開始点を求めるために、水平プロファイルの2次微分の最小点という局所的情報のみを用いるため、開始点の検出に失敗することが多い。上肺リブケイジ境界検出の場合と同様、開始点の検出に失敗すると、従来法は右側、左側リブケイジ境界を正しく検出できない。
特開2002-177249号公報には、Xuらの方法を改良したリブケイジ境界検出法が示されているが、この方法の基本的アルゴリズムはXuらの方法と同じであり、この方法もXuらの方法と同様な問題点をもつ。

【非特許文献1】X.W.Xu and K.Doi, Image feature analysis for computer-aided diagnosis : Accurate determination of ribcage boundary in chest radiographs, Medical Physics, Vol.22, No.5, pp.617-626, 1995
【特許文献1】特開平7-37074号公報
【特許文献2】特開2002-177249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述したように、従来のリブケイジ境界検出法は、上肺部のリブケイジ境界の検出に失敗することが多い。それ故、肺野上端線から肺野下端線までのすべての行に対して、リブケイジ境界の位置を正しく求めることができるリブケイジ境界検出法が望まれる。
また、上肺部以外のリブケイジ境界についても、従来法のリブケイジ境界の検出精度は、境界候補点列の開始点の検出精度に大きく依存するため、あまり高くない。
従来法が上肺部のリブケイジ境界の検出に失敗したり、境界候補点列の開始点の検出に失敗する主な理由は、従来法がノイズに弱いことによる。従来法は、画像の垂直プロファイルの極大点、垂直プロファイルの2次微分の極小点、水平プロファイルの最小点、水平プロファイルの2次微分の極小点という局所的情報を用いて境界候補点を検出するため、ノイズに対して弱い。それ故、画像の品質に依らず安定してリブケイジ境界を検出できる方法が望まれる。
そこで、本発明では、画像の品質に依らず安定して肺野上端線から肺野下端線までのすべての行に対して、リブケイジ境界の位置を正しく検出できるリブケイジ検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その特徴とするところは次の通りである。
(1)胸部X線像に1次微分オペレータを適用して各画素の勾配方向を求めた後、画像の左半分(右胸部)においては、右肺の肋骨側面部下縁の画素と同じ勾配方向をもつ画素(右エッジ要素と呼ぶ)の値を1とし、その他の画素の値を0として、また画像の右半分(左胸部)においては、左肺の肋骨側面部下縁の画素と同じ勾配方向をもつ画素(左エッジ要素と呼ぶ)の値を1とし、その他の画素の値を0として、2値画像Bを作成し、
この後、画像Bの左半分において、右エッジ要素の連結成分を求め、面積最大の連結成分の左境界点列(各行において連結成分の最も左側にある画素をつないで得られる道)を右側リブケイジ境界候補点列とし、画像Bの右半分において、左エッジ要素の連結成分を求め、面積最大の連結成分の右境界点列(各行において連結成分の最も右側にある画素をつないで得られる道)を左側リブケイジ境界候補点列とし、
次に、右側リブケイジ境界候補点列をLとして、まず、y方向に関してLに包含される右エッジ要素の連結成分を削除した後、左境界点列がLとの間でマージの条件を満たす連結成分があれば、Lとその左境界点列をマージして得られる点列をあらためて右側リブケイジ境界候補点列Lとし、この処理をLに新たな点列がマージされなくなるまで繰り返すことによって最終的な右側リブケイジ境界候補点列を求め、
また、同様な方法で左側リブケイジ境界候補点列を求める。
(2)前記(1)の方法で求まる右側リブケイジ境界候補点列の最上点の行番号と左側リブケイジ境界候補点列の最上点の行番号の平均によって、肺野上端線の位置を与える。
(3)前記(1)の方法で求まる右側リブケイジ境界候補点列と左側リブケイジ境界候補点列のそれぞれに対して、点列上の点の列番号をx、行番号をyとするとき、xがyの4次多項式で与えられると仮定して、点列にカーブフィッティングを適用して得られる曲線を右側リブケイジ境界、左側リブケイジ境界とし、これらと前記(2)の方法で求まる肺野上端線、および、肺野下端線によってリブケイジ境界を与える。
ことを特徴とするリブケイジ境界検出方法。
【発明の効果】
【0005】
医師による胸部単純X線写真からの肺癌診断を支援するための画像処理手法として、経時的差分(temporal subtraction)と呼ばれる方法がある。この方法は、同一被検者に対して撮影された過去画像と現在画像の2枚の画像の差をとることにより、2枚の画像間に存在する経時変化を強調する。過去画像に結節がなく、現在画像に結節があるとき、経時的差分によって現在画像中の結節が強調される。
過去画像と現在画像の間には、撮影体位やX線入射方向の差異に起因する位置ずれが存在するので、差分処理に先立ち、両者の間で位置合わせを行う必要があるが、胸部X線像における胸郭外の領域は再現性がない領域であることから、過去画像と現在画像間の位置合わせは、胸郭内部の解剖学的構造に関する情報を用いて行う必要がある。それ故、位置合わせに先立ち、過去画像と現在画像のそれぞれから、リブケイジ境界を検出し、胸郭内部領域を抽出する必要がある。本発明のリブケイジ境界検出方法は、画像に依らず安定して正確なリブケイジ境界を検出できることから、この方法を経時的差分における過去画像と現在画像の位置合わせに利用したとき、結節は強調され、かつ、偽陽性の数(差分画像の中で黒く強調された結節候補領域の中で、結節でないものの数)が少ない差分画像を得ることができ、この結果として、医師による肺癌の検出率を向上させることができる。
経時的差分が、過去画像と現在画像の2枚の画像の差分をとることによって結節を強調するのに対して、1枚の胸部X線像を胸郭中心軸で折り返して左右反転像をつくり、原画像と左右反転像の間で差分をとり結節を強調する方法があり、この方法は対側差分法(contralateral subtraction)と呼ばれている。対側差分法における原画像と左右反転像の位置合わせのためにも、胸郭内部領域を抽出することが重要であり、この目的のためにも、本発明のリブケイジ境界検出方法は利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の胸部X線像からのリブケイジ境界検出方法は、基本的に次の3ステップにより、リブケイジ境界を得るものである。
ステップ1:胸部X線像の左半分(右胸部)から右肺の肋骨側面部下縁の画素と同じ勾配方向をもつ画素を抽出し、これらの連結成分の左境界点列から右側リブケイジ境界候補点列をつくる。また、胸部X線像の右半分(左胸部)から左肺の側肋骨側面部下縁の画素と同じ勾配方向をもつ画素を抽出し、これらの連結成分の右境界点列から左側リブケイジ境界候補点列をつくる。
ステップ2:ステップ1で求まる右側リブケイジ境界候補点列の最上点の行番号と左側リブケイジ境界候補点列の最上点の行番号の平均によって、肺野上端線を与える。
ステップ3:ステップ1で得られた右側リブケイジ境界候補点列、左側リブケイジ境界候補点列にカーブフィッティングを適用して得られる曲線と、肺野上端線、肺野下端線によってリブケイジ境界を与える。
そこで、発明を実施するための具体的な最良の形態については、後述の実施例1により詳細に紹介する。
【実施例1】
【0007】
本発明の胸部X線像からのリブケイジ境界検出方法の実施例を具体的な処理ステップ順で説明する。
以下の記述では、画像の左上隅を原点とし、画像の列、行をそれぞれx軸、y軸とする座標系を用いる(図1参照)。また、画像の列数、行数をM、Nで表す。さらに、入力として与えられる胸部X線像では、X線の透過量が多い領域ほど黒く、画素値は小さいものとする。従って、縦隔は白く(画素値が大きく)、肺野は黒い(画素値が小さい)。また、胸郭の中心軸は、ほぼ画像の中心軸近くにあり、画像の中心軸より左側に右肺、右側に左肺があると仮定する。
<本発明のリブケイジ境界検出方法>
1.肋骨側面部下縁エッジの検出
まず、肋骨側面部のコントラストを強調するため、原画像にヒストグラム平坦化を適用する。図1の胸部X線像にヒストグラム平坦化を適用して得られる画像を図2に示す。ヒストグラム平坦化によって胸部X線像全体のコントラストが改善されるわけではない。しかし、実験の結果、肺野中央部のようなX線の透過量が多い領域では、ヒストグラム平坦化によってコントラストは低下するが、縦隔やリブケイジ境界付近のようなX線の透過量が少ない領域では、ヒストグラム平坦化によりコントラストが改善されることが分った。
原画像にヒストグラム平坦化を適用した後、ヒストグラム平坦化適用後の画像に、1次微分オペレータを適用して、各画素(x, y)のx方向、y方向の一次微分Dx、Dyを求める。なお、1次微分オペレータとしては図3のマスクを用いる。そして、Dx、Dyから各画素の勾配(gradient)の大きさeと勾配方向φを次式で計算する。
【0008】
【数1】
JP0004639338B2_000002t.gif

【0009】
【数2】
JP0004639338B2_000003t.gif
次に、画像の左半分(右胸部)に対しては、e > 0を満たす画素の中で、φが135°~270°(図4参照)の範囲にある画素の値を1とし、その他の画素の値を0とする。また、画像の右半分(左胸部)に対しては、e > 0を満たす画素の中で、φが270°~405°(図4参照)の範囲にある画素の値を1とし、その他の画素の値を0にする。そしてこのようにして得られる2値画像をBで表す。図2の画像に上記の方法を適用して得られる画像Bを図5に示す。
右胸部においては、肋骨側面部は図6(a)に示すような形をしており、また、左胸部においては、肋骨側面部は図6(b)に示すような形をしている。しかも、肋骨は肋間部よりも白い(画素値が大きい)。それ故、右胸部においては、肋骨側面部下縁の画素のほとんどが135°~270°の範囲の勾配方向をもち、左胸部においては、肋骨側面部下縁の画素のほとんどが270°~405°の範囲の勾配方向をもつ。従って、画像Bで値1をもつ画素は、画像の左半分(右胸部)においては、右肺の肋骨側面部下縁の画素と同じ勾配方向をもつ画素であり、画像の右半分(左胸部)においては、左肺の肋骨側面部下縁の画素と同じ勾配方向をもつ画素である。
以後、記述を容易にするため、画像Bの左半分(右胸部)で値1をもつ画素を右エッジ要素と呼び、画像Bの右半分(左胸部)で値1をもつ画素を左エッジ要素と呼ぶ。

2.右側リブケイジ境界候補点列と左側リブケイジ境界候補点列の検出
図5の画像から得られる面積最大の右エッジ要素の連結成分と、面積最大の左エッジ要素の連結成分を、元の胸部X線像の上に重ねて示した図を、図7に示す(図7では、連結成分を見やすくするため、原画像のコントラストを低下させて示している)。図7の例では、面積最大の右エッジ要素の連結成分の左境界点列(各行において連結成分の最も左側にある画素をつないで得られる道)がほぼ右側リブケイジ境界に一致し、面積最大の左エッジ要素の連結成分の右境界点列(各行において連結成分の最も右側にある画素をつないで得られる道)がほぼ左側リブケイジ境界に一致していることが分かる。実験結果から、上に述べたようなことが、ほとんどの胸部X線像において成り立つことが分った。
そこで、本発明のリブケイジ境界検出法は、右側リブケイジ境界を求めるために、右エッジ要素からなる面積最大の連結成分の左境界点列を利用し、左側リブケイジ境界を求めるために、左エッジ要素からなる面積最大の連結成分の右境界点列を利用する。
ただ、ほとんどの画像では、図7の例のように、右リブケイジ境界のほぼ全体が、右エッジ要素からなる面積最大の連結成分の左境界点列によって与えられ、左側リブケイジ境界のほぼ全体が、左エッジ要素からなる面積最大の連結成分の右境界点列によって与えられるが、画像によっては、図8の例のように、面積最大の連結成分の境界点列に他の連結成分の境界点列をマージしなければ、右側リブケイジ境界(または左側リブケイジ境界)の全体が求まらない場合がある。(図8には、3個の連結成分A、B、Cが示されている。ここでAが面積最大の連結成分である。この例では、Aの右境界点列とBの右境界点列をマージして得られる点列が左側リブケイジ境界全体を与える。)
そこで、右側および左側リブケイジ境界候補点列を求めるために図9の処理を用いる。(まず、右エッジ要素に対して図9の処理を適用して右側リブケイジ境界候補点列を求め、次に、左エッジ要素に対して図9の処理を適用して左側リブケイジ境界候補点列を求める。)図9は、この発明の実施形態に係る胸部X線像からのリブケイジ境界検出方法を示したものであって、右側リブケイジ境界候補点列および左側リブケイジ境界候補点列の決定に関するフローチャートである。
以下に図9の処理を説明する。図9では、右エッジ要素の連結成分に対しては、その左境界点列を外側境界点列と呼び、左エッジ要素の連結成分に対しては、その右境界点列を外側境界点列と呼ぶ。さらに、右側リブケイジ境界候補点列(または左側リブケイジ境界候補点列)を、単にリブケイジ境界候補点列と呼ぶ。図9では、リブケイジ境界候補点列をLで表している。図9の処理が終了した時点でのLが、最終的な右側および左側リブケイジ境界候補点列を与える。
最初に、右側リブケイジ境界候補点列検出の場合は右エッジ要素の連結成分を求め、左側リブケイジ境界候補点列検出の場合は左エッジ要素の連結成分を求める(ステップS1)。次に、面積が閾値以下の連結成分を削除する(ステップS2)。実施例では、閾値としてM/10を用いた。そして、面積が最大の連結成分をR1とする(ステップS3)。次に、R1の外側境界点列を求め、これをLとし、またRをR1のみからなる集合とする(ステップS4)。ここまでの処理は初期設定のための処理であり、以後の処理はLが更新されるたびに繰り返される。
まず、y方向に関して点列Lに包含される連結成分を削除する(ステップS5)。ただし、Lの最上点、最下点のy座標をY1、Y2とするとき、連結成分Rk中のすべての点が行Y1~Y2の範囲に属すとき、Rkはy方向に関して点列Lに包含されるという。
次に、Lと重なった部分の長さの、Lの長さに対する比率が閾値以上の連結成分を削除する(ステップS6)。このステップの詳細は次の通りである。まず、点列Lの最上点、最下点のy座標をY1、Y2とし、両者の差をCで表す。そして、連結成分Rkの中で、次式で定義されるGの値のCに対する比率が閾値以上であるRkを削除する。実施例では閾値として0.7を用いた。ただし、次式におけるZ1、Z2は、Rkの最上点、最下点のy座標を表す。
【0010】
【数3】
JP0004639338B2_000004t.gif
次に、残ったすべての連結成分Rkの中で、Rに属す連結成分との距離が閾値以下の連結成分を求め、これらの集合をSで表す(ステップS7)。実施例では、閾値として3M/100を用いた。なお、連結成分Ri中のすべての点とRk中のすべての点の間の距離の最小値を、RiとRkの距離と呼ぶ。また、Rに属す連結成分の中で、Rkとの距離が最小である連結成分RiとRkの距離を、Rに属す連結成分とRk間の距離という。距離変換(distance transform)を用いれば、Rに属す連結成分との距離が閾値以下のすべての連結成分を、画像中の画素数に比例する時間で求めることができる。
そして、Sが空ならば、現在のLを最終的なリブケイジ境界候補点列として処理を終了する(ステップS8)。Sが空でないなら、Sから1個の連結成分Rkを取り出し、Rkの外側境界点列をLkとする(ステップS9)。そして、後述する方法を用いて、LkとLがマージの条件を満たすか否かを判定する(ステップS10)。そして、LkがLとの間でマージの条件を満たすときは、後述する方法を用いてLとLkをマージした後、マージ後の点列をあらためてLとして、さらにRにRkを挿入して、ステップS5へ戻る(ステップS11)。Lkがマージの条件を満たさないときは、RkをSから削除した後、ステップS9を繰り返す。
以下に、点列LkとLをマージする方法、および、LkとLがマージの条件を満たすか否かを判定する方法を示す。
まず、点列LkとLをマージする方法を示す。Lは行Y1~Y2に存在し、Lkは行Z1~Z2の範囲に存在するものとする。y方向に関してLに包含される点列はステップS5で削除されているので、Lkはy方向に関してLに包含されない点列である。それ故、Y1,Y2,Z1,Z2の間の大小関係としては、次の(A)~(D)のいずれかが成り立つ。
(A)Z1 <Z2 < Y1 < Y2
(B)Z1 < Y1 ≦ Z2 < Y2
(C)Y1 < Z1 ≦ Y2 < Z2
(D)Y1 < Y2 < Z1 < Z2
以下に、LとLkをマージする方法を上記の(A)~(D)の場合ごとに示す。なお、マージ後の点列は(A)、(B)の場合は、行Z1~Y2の範囲に存在し、(C)、(D)の場合は行Y1~Z2の範囲に存在する。
(A)の場合、マージ後の点列の行y(y = Z1~Y2)における点は、行Z1~Z2に対してはLkの点で与え、行Y1~Y2に対してはLの点で与える。そして、行Z2+1~Y1-1に対しては、行Z2におけるLkの点と行Y1におけるLの点を結ぶ線分上の点によって与える。
(B)の場合、マージ後の点列の行y(y = Z1~Y2)における点は、行Z1~Y1-1に対してはLkの点で与え、行Z2+1~Y2に対してはLの点で与える。そして、行Y1~Z2に対しては、右側リブケイジ境界候補点列検出の場合は、Lの点とLkの点のうち左側にある点によって与え、左側リブケイジ境界候補点列検出の場合は、Lの点とLkの点のうち右側にある点によって与える。
(C)の場合、マージ後の点列の行y(y = Y1~Z2)における点は、行Y1~Z1-1に対してはLの点で与え、行Y2+1~Z2に対してはLkの点で与える。そして行Z1~Y2に対しては、右側リブケイジ境界候補点列検出の場合は、Lの点とLkの点のうち左側にある点によって与え、左側リブケイジ境界候補点列検出の場合は、Lの点とLkの点のうち右側にある点によって与える。
(D)の場合、マージ後の点列の行y(y = Y1~Z2)における点は、行Y1~Y2に対してはLの点で与え、行Z1~Z2に対してはLkの点で与える。そして行Y2+1~Z1-1に対しては、行Y2におけるLの点と行Z1におけるLkの点を結ぶ線分上の点によって与える。
次に、点列LとLkをマージすべきか否かを判定するために用いた方法を示す。右側リブケイジ境界を下から上へたどったとき、左方向に大きく変化することはない。また左側リブケイジ境界を下から上へたどったとき、右方向に大きく変化することはない。そこで、このことを用いて、LとLkをマージすべきか否かを判定する。LとLk間のマージの条件は、前述した(A)、(B)の場合と、(C)、(D)の場合で異なる。
(A)、(B)の場合は、Zを次式で与える。
【0011】
【数4】
JP0004639338B2_000005t.gif
ここでX1は、Lに属し、かつ、LとLkをマージした後の点列にも属す点の中での最上点のx座標を表す。またX2は、右側リブケイジ境界候補点列検出の場合は、Lkの点の中で最も左側にある点のx座標を表し、左側リブケイジ境界候補点列検出の場合は、Lkの点の中で最も右側にある点のx座標を表す。
(C)、(D)の場合は、Zを次式で与える。
【0012】
【数5】
JP0004639338B2_000006t.gif
ここでX3は、Lに属し、かつ、LとLkをマージした後の点列にも属す点の中での最下点のx座標を表す。またX4は、右側リブケイジ境界候補点列検出の場合は、Lkの点の中で最も右側にある点のx座標を表し、左側リブケイジ境界候補点列検出の場合は、Lkの点の中で最も左側にある点のx座標を表す。
(A)~(D)のいずれの場合においても、Zが閾値以下のとき、LとLkはマージの条件を満たすと判定する。なお実施例では、閾値としてM/10を用いた。

3.肺野上端線の求め方
右肺と左肺の肺尖位置(肺尖のy方向の位置)は、一般には異なるので、通常は、右肺と左肺の肺尖位置の平均として肺野上端線が定義される。しかし、右肺と左肺の肺尖位置を画像によらず安定して検出できる方法は、現在までのところ知られていない。
本発明の方法は、2.で述べた方法によって求まる右側リブケイジ境界候補点列の最上点のy座標YR、および、左側リブケイジ境界候補点列の最上点のy座標YLによって、右肺の肺尖位置と左肺の肺尖位置を与え、肺野上端線の位置ytを次式で与える。
【0013】
【数6】
JP0004639338B2_000007t.gif
図7の画像に対して数6によって肺野上端線を求めた結果を図10に示す。

4.右側リブケイジ境界と左側リブケイジ境界の求め方
本発明の方法は、2.で述べた方法で求まる右側または左側リブケイジ境界候補点列上の点を(x, y)とするとき、xとyの間に数7の関係が成り立つと仮定して、
【0014】
【数7】
JP0004639338B2_000008t.gif
a~eの値を最小2乗法によって求める(最小2乗法によってa~eの値を求めるときは、右側または左側リブケイジ境界候補点列上のすべての点を用いる)。
そして、このようにして求まる曲線の行yt~ybの部分を、右側リブケイジ境界(または左側リブケイジ境界)とする。ただし、ytは3.で述べた方法で求まる肺野上端線の位置を表し、ybは5.で述べる方法によって求まる肺野下端線の位置を表す。
図7の画像において、2.で述べた方法で求まるリブケイジ境界候補点列上の点(x, y)に、数7の形の曲線を適合させて得られる曲線を図10に示す。図10には、また、3.で述べた方法によって求まる肺野上端線の位置ytと、5.で述べる方法によって求まる肺野下端線の位置ybを示している。
本発明の方法が、上述したように、リブケイジ境界候補点列上の点を(x, y)とするとき、xをyの4次多項式で与えるのに対して、従来法は、yをxの4次多項式または3次多項式で与える。つまり、リブケイジ境界を次の数8や数9で与える。
【0015】
【数8】
JP0004639338B2_000009t.gif

【0016】
【数9】
JP0004639338B2_000010t.gif
リブケイジ境界を数7で与える方が、数8や数9で与えるよりも、リブケイジ境界の形を正確に表現することができる。ただ、リブケイジ境界候補点列に数7を適合させて得られる曲線が、ほぼ正しいリブケイジ境界を与えるためには、リブケイジ境界候補点列と正しいリブケイジ境界の位置の差が小さいことが必要である。
2.で述べた方法によって求まるリブケイジ境界候補点列は、行yt~ybの範囲でほぼ正しいリブケイジ境界の位置を与えるので、この点列に数7を適合させて得られる曲線は、行yt~ybの範囲でほぼ正しいリブケイジ境界を与える。一方、従来法で求まるリブケイジ境界候補点列は、特に上肺部において、誤差が大きな点を含むことが多い。それ故、従来法から求まるリブケイジ境界候補点列に数7の形の曲線を適合させても、正しいリブケイジ境界が求まらないことが多い。

5.肺野下端線の検出
前述したように、2.で述べた方法から求まる右側リブケイジ境界候補点列、左側リブケイジ境界候補点列の最上点は、ほぼ肺野上端線の位置を与える。しかし、これらの点列の最下点は、必ずしも、肺野下端線の位置を与えない。(肋骨は肺野下端線より下にも存在するので、これらの点列の最下点の位置が、肺野下端線より下になることもある。)それ故、肺野下端線を求めるためには別の方法を用いる必要がある。
本発明では従来法と同様に、右肺と横隔膜の境界のy方向の位置を検出し、これを肺野下端線とする。
まず、4.の方法で得られた右側リブケイジ境界と左側リブケイジ境界のy=N/2との交点をP,Qとし、線分PQの中点をCとする。さらに、線分PCの中点のx座標をX0で表す。このとき、x=X0は右肺のほぼ中央を通る直線となる。
次に、画像の下半分の行yに対して、次式によってV(y)を計算する。
【0017】
【数10】
JP0004639338B2_000011t.gif
上式におけるWの値として、実施例ではM/24を用いた。V(y)は、右肺のほぼ中心線にそった画像の下半分のプロファイルを与える。それ故、V(y)は右肺と横隔膜の境界付近で急激に増加する。そこで、V(y)の1次微分が最大となる行yを求め、これを肺野下端線の位置ybとする。図7の画像に対して、上記の方法で肺野下端線を求めた結果を図10に示す。
【産業上の利用可能性】
【0018】
医師による胸部単純X線写真からの肺癌診断を支援するための画像処理手法として、経時的差分(temporal subtraction)と呼ばれる方法がある。この方法は、同一被検者に対して撮影された過去画像と現在画像の2枚の画像の差をとることにより、2枚の画像間に存在する経時変化を強調する。過去画像に結節がなく、現在画像に結節があるとき、経時的差分によって現在画像中の結節が強調される。
過去画像と現在画像の間には、撮影体位やX線入射方向の差異に起因する位置ずれが存在するので、差分処理に先立ち、両者の間で位置合わせを行う必要があるが、胸部X線像における胸郭外の領域は再現性がない領域であることから、過去画像と現在画像間の位置合わせは、胸郭内部の解剖学的構造に関する情報を用いて行う必要がある。それ故、位置合わせに先立ち、過去画像と現在画像のそれぞれから、リブケイジ境界を検出し、胸郭内部領域を抽出する必要がある。本発明のリブケイジ境界検出方法は、画像に依らず安定して正確なリブケイジ境界を検出できることから、この方法を経時的差分における過去画像と現在画像の位置合わせに利用したとき、結節は強調され、かつ、偽陽性の数(差分画像の中で黒く強調された結節候補領域の中で、結節でないものの数)が少ない差分画像を得ることができ、この結果として、医師による肺癌の検出率を向上させることができる。
経時的差分が、過去画像と現在画像の2枚の画像の差分をとることによって結節を強調するのに対して、1枚の胸部X線像を胸郭中心軸で折り返して左右反転像をつくり、元画像と左右反転像の間で差分をとり結節を強調する方法があり、この方法は対側差分法(contralateral subtraction)と呼ばれている。対側差分法における元画像と左右反転像の位置合わせのためにも、胸郭内部領域を抽出することが重要であり、この目的のためにも、本発明のリブケイジ境界検出方法は利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1で用いた胸部X線像例と、画像の座標系を示す。
【図2】実施例1において、図1の画像にヒストグラム平坦化を適用して得られた画像を示す。
【図3】実施例1で用いた1次微分オペレータを表す。
【図4】実施例1で用いた勾配方向を表す角度φと勾配方向の関係を表す。
【図5】実施例1において、画像の左半分から右肺の肋骨側面部下縁の画素と同じ勾配方向をもつ画素(右エッジ要素)を抽出し、画像の右半分から左肺の肋骨側面部下縁の画素と同じ勾配方向をもつ画素(左エッジ要素)を抽出し、これらの画素の値を1とし、その他の画素の値を0とするという処理を、図2の画像に適用して得られる2値画像Bを示す。
【図6】右胸部と左胸部における肋骨側面部の形状を説明した図である。
【図7】実施例1において、図5の画像Bから得られた面積最大の右エッジ要素の連結成分と面積最大の左エッジ要素の連結成分を示す。
【図8】実施例1において、面積最大の左エッジ要素の連結成分に、他の左エッジ要素の連結成分の右境界点列をマージしたとき、左側リブケイジ境界候補点列が得られた画像例を示す。
【図9】この発明の実施の形態に係る胸部X線像からのリブケイジ境界検出方法を示したものであって、右側リブケイジ境界候補点列および左側リブケイジ境界候補点列の決定に関するフローチャートである。
【図10】実施例1において、図1の胸部X線像に対して、本発明のリブケイジ境界検出方法を適用して得られる肺野上端線、肺野下端線、リブケイジ右境界、リブケイジ左境界を示す。
【符号の説明】
【0020】
A、B、C:連結成分
N:画像の列数
M:画像の行数
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9