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明細書 :音響インピーダンス及び吸音率の測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4876287号 (P4876287)
公開番号 特開2009-236664 (P2009-236664A)
登録日 平成23年12月9日(2011.12.9)
発行日 平成24年2月15日(2012.2.15)
公開日 平成21年10月15日(2009.10.15)
発明の名称または考案の名称 音響インピーダンス及び吸音率の測定方法
国際特許分類 G01H  17/00        (2006.01)
G01H  15/00        (2006.01)
G10K  15/00        (2006.01)
FI G01H 17/00 C
G01H 15/00
G10K 15/00 L
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2008-082656 (P2008-082656)
出願日 平成20年3月27日(2008.3.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成20年3月1日 社団法人日本建築学会九州支部発行の「日本建築学会九州支部研究報告 第47号 環境系」に発表
審査請求日 平成20年12月5日(2008.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】大鶴 徹
【氏名】富来礼次
【氏名】岡本則子
【氏名】沓掛史典
【氏名】村上雅彦
【氏名】松本 玲
審査官 【審査官】高橋 亨
参考文献・文献 特開2003-083805(JP,A)
特開2007-292667(JP,A)
特開昭63-218855(JP,A)
特開2005-134207(JP,A)
特開平09-048111(JP,A)
特開平10-260077(JP,A)
調査した分野 G01H 17/00
G01H 15/00
G10K 15/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
被測定物の近傍に、所定の遠近間隔で二本の遠・近マイクロホンを設置し、この二本の遠・近マイクロホンに、拡散性を確保した音源から、上記被測定物の吸音率が0.2未満のとき近マイクロホン位置の音圧レベルが85dB以上の音波を入射させ、上記被測定物の吸音率が0.2以上0.6未満のとき近マイクロホン位置の音圧レベルが75dB以上の音波を入射させ、上記被測定物の吸音率が0.6以上のとき近マイクロホン位置の音圧レベルが65dB以上の音波を入射させ、遠・近マイクロホン間音圧の伝達関数を測定し、この測定値に基いて被測定物の音響インピーダンスと吸音率を算出することを特徴とする音響インピーダンス及び吸音率の測定方法。
【請求項2】
被測定物の近傍に、音圧-粒子速度センサーを設置し、この音圧-粒子速度センサーに、拡散性を確保した音源から、上記被測定物の吸音率が0.2未満のとき上記センサー位置の音圧レベルが70dB以上の音波を入射させ、上記被測定物の吸音率が0.2以上0.6未満のとき上記センサー位置の音圧レベルが65dB以上の音波を入射させ、上記被測定物の吸音率が0.6以上のとき上記センサー位置の音圧レベルが55dB以上の音波を入射させ、音圧-粒子速度間の伝達関数を測定し、この測定値に基いて被測定物の音響インピーダンスと吸音率を算出することを特徴とする音響インピーダンス及び吸音率の測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料等の各種試料の音響インピーダンス及び吸音率の測定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、材料の吸音率や音響インピーダンスの測定方法として、残響室を用いる方法、音響管を用いる方法、音源スピーカ・マイクロホン・試料間の精密な設置条件を考慮して現場で測定する方法がある。以下に、従来の材料の吸音率や音響インピーダンス測定方法について述べる。
【0003】
残響室を用いる方法としてJIS A 1409、ISO 354に残響室法吸音率の測定方法が規定されている。これは、測定試料の無い残響室の残響時間と測定試料のある残響室の残響時間より、Sabineの残響式を用い、試料の吸音率を求める方法である。
【0004】
また、特許文献1は、電気音響的設備を用いて上記の測定方法に改良を加えている。
【0005】
図3は、音響管を用いて材料の音響インピーダンスを測定する方法の1つである。音響管の片側に試料を、もう片側に音源スピーカを設置する。さらに管の中心に移動可能なマイクロホン(プローブマイクロホン)を設置する。このマイクロホンを移動させ材料表面に近い部分の定在波のパターン、つまり第1Pminの生じる位置を測定することにより材料の音響インピーダンスを求めている。
【0006】
図4は上記と同様に、音響管を用いて材料の音響インピーダンスを測定する方法である。上記の方法とはマイクロホンの種類並びに設置方法が異なり、固定された2つのマイクロホンにより測定された2点間の伝達関数から、試料表面の音響インピーダンスを求めている。
【0007】
図5、図6は現場において、材料の音響インピーダンスを測定する方法であるが、妥当な音源・試料・マイクロホンの位置関係や音源の種類を求め、その条件により材料の音響インピーダンスを求めている。
【0008】
特許文献2は、その場に存在する音、その音のレベルが不足する場合はスピーカ等から発せられる複数の互いにランダムな雑音と、固定された2つのマイクロホンにより測定された2点間の伝達関数から、試料表面の音響インピーダンスを求めている。

【特許文献1】特開平10-260077号公報
【特許文献2】特開2003-083805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記図3、図4に示す方法では試料の吸音率を求めることはできるが、音響インピーダンスを求めることはできない。さらに、残響室や10平米程度の試料などの大規模な設備が必要であり、測定のための残響室の設定条件である完全拡散音場の実現が困難である。
【0010】
上記図3、図4に示す方法の場合は、測定対象が小さな試料に限定され、測定される音響インピーダンスは、大きな寸法で現場に施工された試料の特性とは異なる点に問題がある。
【0011】
上記図5、図6に示す方法は、音源の特性や音源・試料・マイクロホンの位置関係等の設定条件に大きく左右され、それらの設定や制御が煩雑である。また、この方法では一般的な室内で低周波数における材料の特性を求めることは困難である。
【0012】
特に吸音率の低い材料で測定結果が安定せず、妥当な測定が困難である。
【0013】
上記特許文献2に示す方法では、その場に存在する音のレベルが小さい場合にスピーカ等から発する複数の互いにランダムな雑音を用いても、試料に応じた音響インピーダンス及び吸音率が得られない、あるいは、測定毎に測定結果が異なる。
【0014】
本発明は、このような従来の測定方法の問題点を解決しようとするものであり、特殊な装置や大規模な設備を必要とせず、施工状態にある材料の安定した音響インピーダンス及び吸音率を簡易に且つ精度良く測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するための技術手段は次の(1)~(2)の通りである。
(1)、被測定物の近傍に、所定の遠近間隔で二本の遠・近マイクロホンを設置し、この二本の遠・近マイクロホンに、拡散性を確保した音源から、上記材料の吸音率が0.2未満のとき近マイクロホン位置の音圧レベルが85dB以上、0.2以上0.6未満のとき近マイクロホン位置の音圧レベルが75dB以上、0.6以上のとき近マイクロホン位置の音圧レベルが65dB以上の音波を入射させ、遠・近マイクロホン間音圧の例えば伝達関数を測定し、この測定値に基いて被測定物の音響インピーダンスと吸音率を算出することを特徴とする音響インピーダンス及び吸音率の測定方法。
【0016】
(2)、被測定物の近傍に、音圧-粒子速度センサーを設置し、この音圧-粒子速度センサーに、拡散性を確保した音源から、上記材料の吸音率が0.2未満のとき上記センサー位置の音圧レベルが70dB以上、0.2以上0.6未満のとき上記センサー位置の音圧レベルが65dB以上、0.6以上のとき上記センサー位置の音圧レベルが55dB以上の音波を入射させ、音圧-粒子速度間の例えば伝達関数を測定し、この測定値に基いて被測定物の音響インピーダンスと吸音率を算出することを特徴とする音響インピーダンス及び吸音率の測定方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記の特徴(1)と(2)の手段により、建築材料などの音響インピーダンス及び吸音率が、吸音率の低い材料も含め、残響室を用いる場合より簡易に、音響管を用いる場合と異なり現場施工状態で、測定毎の差異が吸音率0.0015以内と安定して精度よく測定することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、以下に記載の実施例により詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
1.前記特徴(1)に係わる建築材料等の各種試料の音響インピーダンス測定方法の実施形態の一例を図1に示す。被測定物1の近傍に、所定の遠近間隔で二本の遠・近マイクロホン2a,2bを設置し、この二本の遠・近マイクロホンに、拡散性を確保した音源から、まず近マイクロホン位置で65 dB以上の音圧レベルとなるような音波を入射させ、伝達関数の演算機能を搭載する周波数分析器3によって遠マイクロホン1a・近マイクロホン1b間の音圧の伝達関数を測定し、次に示す数1により音響インピーダンスを、数2により吸音率を算出する。
【0020】
【数1】
JP0004876287B2_000002t.gif
ただし、ZEA(□):被測定物の表面の音響インピーダンス、HabEA(□):二本の遠・近マイクロホン間の伝達関数、□:空気密度、c:空気中の音速、k:波長定数、j:虚数単位、l:二本の遠・近マイクロホン間の距離、d:被測定物表面近マイクロホン間の距離、とする。
【0021】
【数2】
JP0004876287B2_000003t.gif
ただし、□EA(□):被測定物の吸音率、ZEA(□):被測定物の表面の音響インピーダンス、□:空気密度、c:空気中の音速、である。
【0022】
これにより大まかな吸音率は得られる。
【0023】
続いて、音響インピーダンスもしくは吸音率を算出したい周波数範囲の上記の大まかな吸音率が0.6未満である場合、さらに0.2未満のとき近マイクロホン位置の音圧レベルが85dB以上、0.2以上0.6未満のとき近マイクロホン位置の音圧レベルが75dB以上、となるよう音源から音波を出力し測定を実施する。これらの音圧レベルは以下の手順で行われた実験に基づき得られる。
【0024】
1)、まず、測定ごとの変化量の評価の参考値として、GW50を測定し、得られる吸音率(以下、Ref.)と、以下の6条件の測定で得られる吸音率を比較する。
Ref.C1, Ref.C2:Ref.の音源・測定点のまま連続測定する。
Ref.R1, Ref.R2:1 度受音点を移動させ、再びRef.と同じ点に設置し、測定。
Ref.2.5, Ref.5.0:試料の中心から、受音点をそれぞれ2.5, 5.0 [mm]ずつ長辺方向に移動させて測定する。
【0025】
2)、この測定条件下で得られた吸音率と、Ref.との差を、1 Oct. bandごとに二乗平均平方する。図1の方法による結果を図7に示す。全ての周波数帯域で、Ref.C1, Ref.C2の場合、Refとの差が0.01以下であり、Ref.R1, Ref.R2, Ref.2.5, Ref.5.0 の場合、Refとの差は、0.02以下であった。受音点を移動させた場合も測定結果の差は小さい。なお、連続測定、Ref.C1と Ref.C2それぞれの、二乗平均平方根の差は、0.0015以内であった。
【0026】
3)、続いて、表1に示す吸音率の異なる4種の試料を用い、測定される吸音率と近マイクロホン位置の音圧レベルの関係を明らかにする。
【0027】
【表1】
JP0004876287B2_000004t.gif

【0028】
近マイクロホン位置の音圧レベルは、表2に示す音圧レベルから5 dBステップで、11段階上昇させ、各ステップの音圧レベルを、LRP_N (N = 1, 2, ... , 11)で表す。
【0029】
【表2】
JP0004876287B2_000005t.gif

【0030】
音圧レベルに対する測定される吸音率の変化は、以下に示す数3の式で、1 Oct. bandごとの二乗平均平方根 Drms (fc, N)を算出し、評価する。
【0031】
【数3】
JP0004876287B2_000006t.gif
ただし、nは各bandごとのデータ数、fc_kは中心周波数fcのk番目の周波数、□( fc_k, N) は音圧レベルLRP_Nで測定される、周波数fc_kの吸音率である。
【0032】
図8は得られた Drms (fc,N) を試料ごとに示したものである。図8より、試料及び周波数に関わらず、音圧レベルが高くなると、Drms (fc,N) は変化しなくなる。また、多孔質材(GW50, GW100, RW25)は、周波数が高いほど、低い音圧レベルで Drms (fc,N) は変化しなくなる。CFは、概ね同じ周波数で Drms (fc,N) が変化しなくなる。多孔質材は、周波数が高いほど吸音率が高く、CFは周波数によって吸音率が変化しない。よって、吸音率が高いほど、低い音圧レベルで、Drms (fc,N) が変化しなくなると考えられる。
【0033】
前記2)を参考に、以下の数4の式を満たす音圧レベルの最小値を、「測定に必要な音圧レベル」LEAとする。
【0034】
【数4】
JP0004876287B2_000007t.gif

【0035】
図9に吸音率と LEA の関係を示す。なお、吸音率は各試料とも、1 Oct. band ごとに算術平均した値を用いており、得られた結果から最小二乗法により回帰した直線もあわせて示している。これより測定される吸音率と近マイクロホン位置での音圧レベルとの関係がわかる。
【0036】
2.前記特徴(2)に係わる建築材料等の各種試料の音響インピーダンス測定方法の実施形態の一例を図2に示す。被測定物の近傍に、音圧-粒子速度センサー4を設置し、この音圧-粒子速度センサー4に、拡散性を確保した音源から上記センサー4位置で55dB以上となるような音圧レベルとなるような音波を入射させ、伝達関数の演算機能を搭載する周波数分析器5によって音圧-粒子速度間の伝達関数を測定し、この測定値に基づいて被測定物の音響インピーダンスを以下の数5で、吸音率を数2により算出する。
【0037】
【数5】
JP0004876287B2_000008t.gif
ただし、ZEA(□):被測定物の表面の音響インピーダンス、HupEA(□):音圧-粒子速度間の伝達関数、p(□):音圧、u(□):粒子速度、である。
【0038】
これにより大まかな吸音率は得られる。
【0039】
続いて、音響インピーダンスもしくは吸音率を算出したい周波数範囲の上記の大まかな吸音率が0.6未満である場合、さらに0.2未満のとき上記センサー位置の音圧レベルが70dB以上、0.2以上0.6未満のとき上記センサー位置の音圧レベルが65dB以上、となるよう音源から音波を出力し測定を実施する。これらの音圧レベルは以下の手順で行われた実験に基づき得られる。
この値は、前記1の1)~2)と同様の手順の実験により得られた図13に基づくものである。
【0040】
本発明において、受音点における拡散性を確保する手段としては、室内で複数の音源と移動音源、もしくはそのいずれかの音源を利用する。
【0041】
本発明において、試験信号は、得ようとする周波数が含まれていれば、どのような信号でも良い。但し、効率的に測定を行おうとする場合、試験信号として、ピンクノイズまたはホワイトノイズを使用すれば全周波数が含まれる。
【0042】
本発明では、1回以上の測定を実施もしくはリアルタイム測定装置を用いることを特徴とする。
【産業上の利用可能性】
【0043】
材料開発のスピードアップが可能である
【0044】
コンピュータシミュレーション手法により音場を予測する場合、室の境界条件として、測定された吸音率または音響インピーダンスを与えることで、正確に音響を予測可能となり、室全体の音の制御が可能となる

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明における前記特徴(1)に記載の実施例における装置配置説明図である。
【図2】本発明における前記特徴(2)に記載の実施例における装置配置説明図である。
【図3】従来技術の一つ音響管方法の定在波法を示す図である。
【図4】従来技術の一つ音響管方法のマイクロホン法を示す図である。
【図5】従来技術の一つ反射法1を示す図である。
【図6】従来技術の一つ反射法2を示す図である。
【図7】Ref.C1, Ref.C2、Ref.R1, Ref.R2, Ref.2.5, Ref.5.0間の音圧レベルに対する測定される吸音率の変化の比較を示すグラフ。
【図8】4種の材料に対するDrms (fc, N)と近マイクロホン位置での音圧レベルの関係を示すグラフ。
【図9】測定に必要な音圧レベルと吸音率の関係を示すグラフ。
【図10】測定に必要な音圧レベルと吸音率の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0046】
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
9