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明細書 :底屈制動部材およびこれを用いた短下肢装具

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5561688号 (P5561688)
公開番号 特開2011-115296 (P2011-115296A)
登録日 平成26年6月20日(2014.6.20)
発行日 平成26年7月30日(2014.7.30)
公開日 平成23年6月16日(2011.6.16)
発明の名称または考案の名称 底屈制動部材およびこれを用いた短下肢装具
国際特許分類 A61H   3/00        (2006.01)
A61F   2/66        (2006.01)
A61F   5/02        (2006.01)
A61F   5/01        (2006.01)
FI A61H 3/00 B
A61F 2/66
A61F 5/02 N
A61F 5/01 N
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2009-273912 (P2009-273912)
出願日 平成21年12月1日(2009.12.1)
審査請求日 平成24年10月1日(2012.10.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】濱 聖司
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100138955、【弁理士】、【氏名又は名称】末次 渉
【識別番号】100109449、【弁理士】、【氏名又は名称】毛受 隆典
審査官 【審査官】山口 賢一
参考文献・文献 米国特許第05897514(US,A)
特開平09-103443(JP,A)
米国特許第06171272(US,B1)
特開平11-313862(JP,A)
特開2002-291823(JP,A)
米国特許出願公開第2003/0153852(US,A1)
米国特許出願公開第2005/0148914(US,A1)
米国特許出願公開第2007/0244420(US,A1)
調査した分野 A61H 3/00
A61F 2/66
A61F 5/01
A61F 5/02
特許請求の範囲 【請求項1】
足底を載せるための足載置体と下腿を支持する下腿支持体とがそれぞれの踝部で接続される短下肢装具の前記足載置体のアキレス腱部或いは前記下腿支持体のアキレス腱部に取り付けられる底屈制動部材であって、
前記底屈制動部材は圧縮変形可能な柔軟性弾性材料から構成されるとともに半円柱状に形成され、前記下腿支持体のアキレス腱部と前記足載置体のアキレス腱部とで押圧されて所定量圧縮し、足首関節を所定角度底屈させ、
前記底屈制動部材は、前記足載置体のアキレス腱部或いは前記下腿支持体のアキレス腱部に接触して取り付けられる一方の底面を除いて露出して取り付けられ、足首の3次元的な傾きに応じて3次元的に圧縮変形する、
ことを特徴とする底屈制動部材。
【請求項2】
前記底屈制動部材は足首関節を2~12°底屈させることを特徴とする請求項1に記載の底屈制動部材。
【請求項3】
前記柔軟性弾性材料がスポンジ材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の底屈制動部材。
【請求項4】
硬さの異なる複数の前記柔軟性弾性材料が組み合わされて構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の底屈制動部材。
【請求項5】
足底を載せるための足載置体と、
下腿を支持する下腿支持体と、
前記足載置体の踝部と前記下腿支持体の踝部とを接続する継ぎ手と、
前記足載置体のアキレス腱部或いは前記下腿支持体のアキレス腱部に設置される請求項1乃至4のいずれかに記載の底屈制動部材と、を備えることを特徴とする短下肢装具。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は底屈制動部材およびこれを用いた短下肢装具に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中等で足首関節を自己の意思で自由に動かすことができないという障害を生じることがある。このような障害を負った患者は、つま先が下に垂れ下がる(下垂足、尖足)ため、歩行の際に円滑な体重移動を行えず、また、爪先が床に引っ掛かる等して上手く歩けないことから、一般的に補助器具として短下肢装具が用いられている。
【0003】
従来の短下肢装具は、足首をほぼ90°に曲げた状態に固定するタイプの固定型装具が主流であった。しかし、このような固定型の短下肢装具では、底屈動作(足先が垂れ下がる方向に曲げる動作)及び背屈動作(足先が持ち上がる方向に曲げる動作)が不可能であるため、スムーズな歩行を妨げていた。このため、最近では歩行時における足首の底屈動作や背屈動作を可能とする短下肢装具が提案されている。
【0004】
特許文献1では、足載置体と脛添体とを接続する継ぎ手にスプリングを組み込んで、底屈動作及び背屈動作を可能とした短下肢装具が開示されている。
【0005】
特許文献2では、足載置体と脹ら脛支持体とを接続する継ぎ手に所謂油圧式ダンパーを組み込んで、底屈動作及び背屈動作を可能とした短下肢装具が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平9-103443号公報
【特許文献2】特開2004-166811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の短下肢装具は、スプリングがアキレス腱の後方に張り出して設置されているので、階段を降りる際にスプリングが引っかかり、転倒のおそれがある。
【0008】
特許文献2の短下肢装具は、油圧式ダンパーが用いられているため、コストが高いという課題を有する。また、人が歩く際、踵着地時には凡そ0.02秒間に体重の60%もの大きな荷重が加わるが、この荷重を支えて適度な底屈を制動するためには、大きな油圧式ダンパーが要求される。大きな油圧式ダンパーを組み込んだ場合、短下肢装具の重量が重くなり歩行の妨げになってしまう。
【0009】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、底屈が可能で自然な状態で歩行できる簡易な構造の底屈制動部材及びこれを用いた短下肢装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る底屈制動部材は、
足底を載せるための足載置体と下腿を支持する下腿支持体とがそれぞれの踝部で接続される短下肢装具の前記足載置体のアキレス腱部或いは前記下腿支持体のアキレス腱部に取り付けられる底屈制動部材であって、
前記底屈制動部材は圧縮変形可能な柔軟性弾性材料から構成されるとともに半円柱状に形成され、前記下腿支持体のアキレス腱部と前記足載置体のアキレス腱部とで押圧されて所定量圧縮し、足首関節を所定角度底屈させ、
前記底屈制動部材は、前記足載置体のアキレス腱部或いは前記下腿支持体のアキレス腱部に接触して取り付けられる一方の底面を除いて露出して取り付けられ、足首の3次元的な傾きに応じて3次元的に圧縮変形する、
ことを特徴とする。
【0011】
また、前記底屈制動部材は足首関節を2~12°底屈させることが好ましい。
【0012】
また、前記柔軟性弾性材料がスポンジ材であることが好ましい。
【0013】
また、硬さの異なる複数の前記柔軟性弾性材料が組み合わされて構成されていてもよい。
【0014】
本発明に係る短下肢装具は、
足底を載せるための足載置体と、
下腿を支持する下腿支持体と、
前記足載置体の踝部と前記下腿支持体の踝部とを接続する継ぎ手と、
前記足載置体のアキレス腱部或いは前記下腿支持体のアキレス腱部に設置される上記いずれかに記載の底屈制動部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る底屈制動部材は、圧縮変形可能な柔軟性弾性材料から構成されており、短下肢装具の足載置体或いは下腿支持体いずれかのアキレス腱部に設置される。この短下肢装具を装着して歩行をすれば、着地時に底屈制動部材が足載置体及び下腿支持体の両アキレス腱部で押圧され、所定量圧縮変形する。この変形により、足首関節が所定角度底屈するので、着地時の衝撃が吸収されてスムーズな歩行が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】短下肢装具の斜視図である
【図2】短下肢装具の背面図である。
【図3】短下肢装具の側面図である。
【図4】底屈制動部材の斜視図である。
【図5】短下肢装具を装着して歩行する様子を示す図である。
【図6】短下肢装具を装着して歩行する様子を示す図である。
【図7】短下肢装具を装着して歩行する様子を示す図である。
【図8】短下肢装具を装着して歩行する様子を示す図である。
【図9】他の底屈制動部材の斜視図である。
【図10】図9のA-A’断面図である。
【図11】他の底屈制動部材の断面図である。
【図12】他の底屈制動部材の断面図である。
【図13】他の底屈制動部材の断面図である。
【図14】他の底屈制動部材の平面図である。
【図15】他の底屈制動部材の断面図である。
【図16】他の底屈制動部材の断面図である。
【図17】他の底屈制動部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しつつ、本実施の形態に係る底屈制動部材、及び、これを用いた短下肢装具について説明する。

【0018】
短下肢装具1は、図1の斜視図、図2の背面図、及び、図3の側面図に示すように、主として下腿支持体11、足載置体21、継ぎ手31、底屈制動部材41から構成される。なお、ここでは左足用の短下肢装具1について説明する。

【0019】
足載置体21は、患者の足底が載せられるパーツである。また、下腿支持体11は、患者の脹ら脛にあてがわれて、下腿を支持するパーツである。足載置体21及び下腿支持体11は個々の患者の足に合わせて、プラスチック等の合成樹脂から形成されている。

【0020】
下腿支持体11の両側の踝部13と足載置体21の両側の踝部23とは、継ぎ手31を介してそれぞれ接続されている。継ぎ手31は、復元力に富む変形可能な弾性素材から構成されている。下腿支持体11と足載置体21とは、患者が装着した際に、足首関節が凡そ90°の角度に保たれるよう構成されている。

【0021】
そして、継ぎ手31は屈曲可能な弾性素材であるので、背屈が自由に行えるとともに、背屈した後、継ぎ手31の復元力によって元の状態に戻る。このように継ぎ手31は主として背屈制動を司るパーツである。

【0022】
短下肢装具1に設けられている各ベルト14、15、24はそれぞれ、装着された患者の足の各部を固定する機能を果たす。

【0023】
下腿支持体11のアキレス腱部12、及び、足載置体21のアキレス腱部22は、いずれも後方(踵側)に張り出しており、下腿支持体11のアキレス腱部12の下方に底屈制動部材41が設置されている。

【0024】
底屈制動部材41は、図4に示すように、半円柱状に形成されている。底屈制動部材41には、貫通孔42が穿たれている。底屈制動部材41は、この貫通孔42を介し、ネジ43等の留め具によって、下腿支持体11のアキレス腱部12に固定されている。なお、ネジ43と足載置体21のアキレス腱部22とが干渉しないよう、アキレス腱部22にはネジ43の頭部よりも大きい孔25が穿たれている。

【0025】
底屈制動部材41は、圧縮されて所定量変形可能であり、且つ、復元力を有する柔軟性弾性材料から構成されている。柔軟性弾性材料として、海綿状のゴムまたは樹脂である種々のスポンジ材であることが好ましい。例えば、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ゴムスポンジ等が挙げられる。

【0026】
底屈制動部材41は、人の歩行中、踵が着地した際に、足載置体21のアキレス腱部22と下腿支持体11のアキレス腱部12とで狭持され、双方のアキレス腱部12、22により押圧される。そして、底屈制動部材41が圧縮変形することにより、患者の踝を支点にして所定角度ほど足首関節を底屈させる機能を有する。

【0027】
一般的に、人が歩行する際、踵着地から反対側の足が地面から離れるまでの間(荷重応答期)の際に10°程度の底屈が生じることによって、足首関節による衝撃吸収が行われスムーズな歩行が可能となる。なお、荷重応答期における足首関節の底屈角度には個人差があり、5°前後の場合や2~3°の場合等、およそ2~12°の範囲で人によって異なる。このため、底屈制動部材41は、圧縮変形することにより、2~12°足首関節を底屈させ得るものが好ましい。

【0028】
続いて、図5~8を参照しつつ、左足51に短下肢装具1を装着した際の歩行動作について説明する。まず、歩行周期は、立脚期と遊脚期に分けられる。立脚期は、歩行周期中の足が地面についている時期をいい、初期接地(イニシャルコンタクト)で始まる。そして、遊脚期は、歩行周期中の足が地面から離れていて、スイングにより脚が前に運ばれている時期をいい、イニシャルスイング、即ち足が地面から離れたとき(つま先離地)に始まる。ここでは、主として左足の立脚期における歩行動作について説明する。

【0029】
まず、図5では左足51が地面に着地、即ち初期接地の状態を示しているが、左足51の足首関節は短下肢装具1によって凡そ90°に支持されているので、つま先から着地することなく、踵から地面52に着地する。

【0030】
立脚期の初期には一般的に0.02秒間に体重の60%が一気に加わるので、その衝撃吸収が必要となる。本来であれば足首関節の底屈、膝関節の屈曲、及び、股関節の屈曲で衝撃を吸収することになるが、足首関節の底屈が制限されている場合、衝撃吸収が十分に行われず、下腿支持体11によって膝関節が前に押し出される形となり、歩きにくくなる。

【0031】
しかしながら、短下肢装具1を装着している場合、図6に示すように、踵が着地した後、下腿支持体11のアキレス腱部12と足載置体21のアキレス腱部22とで底屈制動部材41が押圧され、圧縮変形することにより、足首関節の底屈動作が行われる。底屈制動部材41は、柔軟性弾性材料から構成されているので、負荷に応じて除々に反力が増す特性を備えている。このため、踵が着地したときに、一気に足首関節が所定の角度まで底屈するのではなく、歩行時の体重移動に伴う左足51の前方への動きに追従するように、除々に所定の角度まで底屈することになる。これにより、立脚期の初期における衝撃吸収が行われ、スムーズな歩行が実現される。

【0032】
その後、歩行動作が進行すると、図7に示すように、底屈制動部材41が復元することとなり、足底全面が地面52に接地する。足首関節は短下肢装具1によっておよそ90°に支持されるので、左足51のみによる安定な単脚支持が実現される。

【0033】
そして、継ぎ手31が屈曲可能であるため、図8に示すように、左足51の前方への移動に追従して足首関節が背屈し、つま先による蹴り出しもスムーズに行える。

【0034】
その後、継ぎ手31の復元力によって、足首関節が凡そ90°に戻り、遊脚期に移行する。そして、遊脚期を経て、再度初期接地へと進み、以後、この一連の動きが繰り返される。短下肢装具1の背屈及び底屈制動によって、上記の一連の歩行動作がスムーズに行われる。

【0035】
底屈制動部材41は、上記のように簡易な構成であるので、コストが安いとともに、形状等を変更することにより種々の短下肢装具にも設置できる利点がある。

【0036】
底屈制動部材41の厚みは、底屈制動部材41が設置される短下肢装具のアキレス腱部の隙間に応じて適宜設定される。また、底屈制動部材41の材料は、使用する患者の体重等の体格に応じて、患者の足首関節が上記の範囲で底屈するよう適宜設定される。

【0037】
上記では、下腿支持体11のアキレス腱部12に底屈制動部材41が設置されている形態について説明したが、足載置体21のアキレス腱部22に設置されていてもよい。

【0038】
また、底屈制動部材41と下腿支持体11のアキレス腱部12、或いは、底屈制動部材41と足載置体21のアキレス腱部22との固定は、ネジ43による固定のほか、接着剤等による固定等、種々の固定方法が用いられる。

【0039】
また、上記では下腿支持体11のアキレス腱部12、及び、足載置体21のアキレス腱部22の形状に対応した半円柱状の底屈制動部材41について説明したが、設置する短下肢装具の形状に応じて適宜形状を変更してもよい。

【0040】
また、歩行の際には足首は3次元的に内側や外側に傾くことになる。しかし、底屈制動部材41は足の左右方向に十分な幅を有するので、このような3次元的な動きにも柔軟に対応でき、スムーズな歩行が可能である。

【0041】
また、硬さが異なり、且つ、その硬さの度合いを数段階とした複数個の底屈制動部材41を用意しておき、実際に短下肢装具1を用いる人の適正に応じた硬さの底屈制動部材41を選択できるようにしておくとよい。

【0042】
また、底屈制動部材41は、硬さの異なる複数の柔軟性弾性材料から構成されていてもよい。例えば、図9の斜視図、図10の断面図に示すように、硬さの異なる複数の柔軟性弾性材料41a、41b、41cが上下方向に積層されたものであってもよい。また、図11の断面図に示すように、硬さの異なる複数の柔軟性弾性材料41a、41b、41cが左右方向に積層されたものであってもよい。

【0043】
また、患者が回内足(外反)或いは回外足(内反)である場合、以下のように構成することで、スムーズな歩行及び関節等の保護の一助となり得る。回内足とは正常とされる範囲を超えて、踵骨もしくは前足部が外がえしの状態の足を指す。ある程度の回内は、踵が接地したときの衝撃をやわらげ、歩行の中期でのバランスを取るために必要であるが、回内が過度になると、強い圧力が足の骨格だけでなく、その周辺の筋肉や靭帯、腱などの組織にかかることになり、足の障害の大きな原因となる。

【0044】
このような回内足の患者の場合では、図12の断面図に示すように、外側(outside)の柔軟性弾性材料41aよりも硬い柔軟性弾性材料41bを内側(inside)に配置して構成するとよい。外側の柔軟性弾性材料41aの方が柔らかく、圧縮変形するので、足首関節の過度の回内を抑止することができ、スムーズな歩行を実現できる。

【0045】
また、図13の断面図に示すように、内側上部に柔軟性弾性材料41bを、外側下部に柔軟性弾性材料41aを対角線上に配置した構成でもよい。底屈制動部材41の外側が相対的に柔らかく、変形しやすいので、上記同様に足首関節の過度の回内を抑止できる。また、内側下部に柔軟性弾性材料41bを、外側上部に柔軟性弾性材料41aを対角線上に配置した構成でも、上記同様の効果が得られる。また、図14の平面図に示すように、外側に孔44が形成された底屈制動部材41であってもよい。孔44によって底屈制動部材41の外側が内側よりも圧縮変形しやすいので、上記と同様の効果が得られる。なお、孔44の大きさ、配置箇所、数は、患者に合わせて任意に設定すればよく、孔44は貫通していてもしていなくてもよい。

【0046】
一方、回外足とは回内足の反対で、正常とされる範囲を超えて、踵骨もしくは前足部が内がえしの状態の足を指す。正常な回外状態では足がより安定し、つま先が接地面を蹴る力を増加させるが、しかし、回外が過度になると、下肢の外側の筋肉を引っ張るために足首が外側にずれてしまい、足首の障害の原因となる。また、脳卒中後には、全身の関節が次第に固くなって(痙性が高まって)、麻痺のある足関節は内反・尖足という異常肢位を呈することが多い。このような場合、初期接地で踵を接地させることが出来ず、いきなり足底全体で接地してしまい、膝は過度に伸展(過伸展)し、腰は後方に引けて効率の悪い歩行になり、関節を痛める原因になる。

【0047】
このような回外足の患者の場合では図15の断面図に示すように、外側(outside)の柔軟性弾性材料41bよりも柔らかい柔軟性弾性材料41aを内側(inside)に配置して構成するとよい。内側の柔軟性弾性材料41aの方が柔らかく、圧縮変形しやすいので、足首関節の過度の回外を抑止することができ、スムーズな歩行を実現できる。

【0048】
また、図16の断面図に示すように、内側下部に柔軟性弾性材料41aを、外側上部に柔軟性弾性材料41bを対角線上に配置した構成でもよい。底屈制動部材41の内側が相対的に柔らかく、変形しやすいので、上記同様に足首関節の過度の回外を抑止できる。また、内側上部に柔軟性弾性材料41aを、外側下部に柔軟性弾性材料41bを対角線上に配置した構成でも、上記同様の効果が得られる。また、図17の平面図に示すように、内側に孔44が形成された底屈制動部材41であってもよい。孔44によって底屈制動部材41の内側が外側よりも圧縮変形しやすいので、上記と同様の効果が得られる。なお、孔44の大きさ、配置箇所、数は、患者に合わせて任意に設定すればよく、孔44は貫通していてもしていなくてもよい。

【0049】
(検証例)
被験者として健常者5人、及び、脳卒中患者1人に本実施の形態に係る短下肢装具1を装着して歩行してもらい、歩きやすさの官能試験を行った。また、参考として、特許文献2の油圧ダンパーが設置された短下肢装具を装着して歩行してもらった。

【0050】
その結果、被験者の全員が本実施の形態に係る短下肢装具1を装着して歩行した方が、油圧ダンパーが設置された短下肢装具を装着して歩行するよりも、自然な歩行ができるとの感想を得た。

【0051】
短下肢装具1を装着して歩行を行った場合では、踵が着地した後、足が前方に移動する動きに追従して、徐々に足首関節が底屈するので、自然な歩行動作ができるとの感想であった。

【0052】
一方、油圧ダンパーが設置された短下肢装具では、油圧ダンパーによる底屈制動が弱く、踵が着地した際に、適度な負荷を感じることなく、すぐさま最大底屈角度まで底屈してしまい、安定した歩行が難しいという感想であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
底屈制動部材は圧縮変形可能な柔軟性弾性材料から構成されており、短下肢装具の足載置体或いは下腿支持体いずれかのアキレス腱部に設置される。この短下肢装具を装着して歩行をすれば、着地時に底屈制動部材が足載置体及び下腿支持体の両アキレス腱部で押圧され、所定量圧縮変形する。この変形により、足首関節が所定角度底屈するので、着地時の衝撃が吸収されてスムーズな歩行が実現される。したがって、脳卒中等で足首関節を自己の意思で自由に動かすことができない障害をもった患者等の補助器具或いはリハビリ器具として利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 短下肢装具
11 下腿支持体
12 アキレス腱部
13 踝部
14 ベルト
15 ベルト
21 足載置体
22 アキレス腱部
23 踝部
24 ベルト
25 孔
31 継ぎ手
41 底屈制動部材
41a 柔軟性弾性材料
41b 柔軟性弾性材料
41c 柔軟性弾性材料
42 貫通孔
43 ネジ
44 孔
51 左足
52 地面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16