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明細書 :水素吸蔵材及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5493127号 (P5493127)
公開番号 特開2011-255314 (P2011-255314A)
登録日 平成26年3月14日(2014.3.14)
発行日 平成26年5月14日(2014.5.14)
公開日 平成23年12月22日(2011.12.22)
発明の名称または考案の名称 水素吸蔵材及びその製造方法
国際特許分類 B01J  20/02        (2006.01)
C01B   3/00        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
C22C  14/00        (2006.01)
C22C  16/00        (2006.01)
C22C  28/00        (2006.01)
FI B01J 20/02 C
C01B 3/00 B
C01B 31/02 101F
B01J 20/30
C22C 14/00 A
C22C 16/00
C22C 28/00 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2010-132052 (P2010-132052)
出願日 平成22年6月9日(2010.6.9)
審査請求日 平成25年3月26日(2013.3.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】井上 修平
【氏名】松村 幸彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100138955、【弁理士】、【氏名又は名称】末次 渉
【識別番号】100151873、【弁理士】、【氏名又は名称】鶴 寛
【識別番号】100109449、【弁理士】、【氏名又は名称】毛受 隆典
審査官 【審査官】池田 周士郎
参考文献・文献 特開2000-281303(JP,A)
特開2005-288262(JP,A)
特開2005-219950(JP,A)
特開2004-026623(JP,A)
特開2007-229588(JP,A)
特開2001-288626(JP,A)
特開2006-342011(JP,A)
調査した分野 B01J 20/00-20/34
C01B 3/00
C01B 31/02
特許請求の範囲 【請求項1】
水素吸蔵合金とカーボンナノチューブとから構成され、
前記カーボンナノチューブの長さ方向の一端が前記水素吸蔵合金の表面に結合し、他端が開放しており、
前記水素吸蔵合金が水素を吸蔵する際、生じる熱が前記水素吸蔵合金から前記カーボンナノチューブを介して外部に放出され、
前記水素吸蔵合金が水素を放出する際、吸熱する熱が前記カーボンナノチューブを介して前記水素吸蔵合金に伝わることを特徴とする水素吸蔵材。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項に記載の水素吸蔵材。
【請求項3】
前記水素吸蔵合金がチタン-マンガン合金、ランタン-ニッケル合金、ランタン-ニッケル-コバルト合金、及び、ジルコニア-鉄合金から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素吸蔵材。
【請求項4】
加熱雰囲気下に水素吸蔵合金を配置するとともに炭素源ガスを供給し、
化学的気相合成法により前記水素吸蔵合金の表面からカーボンナノチューブを成長させ、前記カーボンナノチューブの長さ方向の一端が前記水素吸蔵合金の表面に結合し、他端が開放しており、前記水素吸蔵合金が水素を吸蔵する際、生じる熱が前記水素吸蔵合金から前記カーボンナノチューブを介して外部に放出され、前記水素吸蔵合金が水素を放出する際、吸熱する熱が前記カーボンナノチューブを介して前記水素吸蔵合金に伝わる水素吸蔵材を得る、
ことを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。
【請求項5】
表面にカーボンナノチューブ合成触媒を付着させた前記水素吸蔵合金を用いることを特徴とする請求項に記載の水素吸蔵材の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、エネルギーの大半は化石燃料で賄われている。化石燃料は有限であるため、いずれ枯渇してしまうという問題、また、化石燃料の消費の増加に伴い、地球温暖化の主要原因と考えられる二酸化炭素の排出量の増加という問題に直面している。
【0003】
こうした中、次世代エネルギーの一つとして、水素エネルギーが注目されている。水素は燃焼する際に二酸化炭素を放出せず、更に、水素はあらゆるエネルギー源から作り出すことが可能であることから、クリーンで持続性の高いエネルギーである。
【0004】
次世代エネルギーとして水素エネルギーを活用するためには、水素の貯蔵技術が重要である。水素の貯蔵技術に関し、高圧水素、液体水素のほか、媒体による貯蔵(水素吸蔵材)等の研究が進められている。
【0005】
水素を吸蔵可能な物質として、水素吸蔵合金が知られている。水素吸蔵合金は水素を吸蔵させる際には、発熱反応を伴い水素吸蔵合金の温度を下げる必要がある。一方、水素を放出させる際には、吸熱反応を伴うので水素吸蔵合金の温度を上げる必要がある。
【0006】
水素吸蔵合金を用いた水素エネルギーの実用化のためには、短時間で水素を吸蔵させること、短時間で水素を放出させることが要求されることから、伝熱性に優れる水素吸蔵材が求められている。
【0007】
水素吸蔵材として、水素吸蔵合金と、水素吸蔵合金よりも熱伝導率の高いカーボンナノチューブとの混合物が開示されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2007-302487号公報
【特許文献2】特開2007-229588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2に開示の水素吸蔵材は、別途調製されたカーボンナノチューブが粒状の水素吸蔵合金に混合、分散された形態である。水素吸蔵合金とカーボンナノチューブとは結合しておらず、また、粒状の水素吸蔵合金の表面は凹凸な構造であり、水素吸蔵合金とカーボンナノチューブとの接触面が完全に密着していない。このため、接触熱抵抗が大きく伝熱性が劣る。また、カーボンナノチューブは径方向に水素吸蔵合金と接触しているものと考えられ、カーボンナノチューブの径方向への伝熱性は長手方向における伝熱性ほど高くない。このようなことから、伝熱性の向上はさほど期待できない。
【0010】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、伝熱性に優れる水素吸蔵材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の観点に係る水素吸蔵材は、
水素吸蔵合金とカーボンナノチューブとから構成され、
前記カーボンナノチューブの長さ方向の一端が前記水素吸蔵合金の表面に結合し、他端が開放しており、
前記水素吸蔵合金が水素を吸蔵する際、生じる熱が前記水素吸蔵合金から前記カーボンナノチューブを介して外部に放出され、
前記水素吸蔵合金が水素を放出する際、吸熱する熱が前記カーボンナノチューブを介して前記水素吸蔵合金に伝わることを特徴とする。
【0013】
また、前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブであってもよい。
【0014】
また、前記水素吸蔵合金がチタン-マンガン合金、ランタン-ニッケル合金、ランタン-ニッケル-コバルト合金、及び、ジルコニア-鉄合金から選択される一種以上であってもよい。
【0015】
本発明の第二の観点に係る水素吸蔵材の製造方法は、
加熱雰囲気下に水素吸蔵合金を配置するとともに炭素源ガスを供給し、
化学的気相合成法により前記水素吸蔵合金の表面からカーボンナノチューブを成長させ、前記カーボンナノチューブの長さ方向の一端が前記水素吸蔵合金の表面に結合し、他端が開放しており、前記水素吸蔵合金が水素を吸蔵する際、生じる熱が前記水素吸蔵合金から前記カーボンナノチューブを介して外部に放出され、前記水素吸蔵合金が水素を放出する際、吸熱する熱が前記カーボンナノチューブを介して前記水素吸蔵合金に伝わる水素吸蔵材を得る、
ことを特徴とする。
【0016】
また、表面にカーボンナノチューブ合成触媒を付着させた前記水素吸蔵合金を用いてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る水素吸蔵材は、カーボンナノチューブが水素吸蔵合金に直接結合している。水素吸蔵合金とカーボンナノチューブとの接触熱抵抗が小さいこと、及び、カーボンナノチューブの長手方向の一端が水素吸蔵合金に結合しており、カーボンナノチューブは長さ方向に対する伝熱性が優れる特性を有することから、水素吸蔵材は優れた伝熱性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る水素吸蔵材を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る水素吸蔵材の製造方法を示す模式図である。
【図3】実施例において水素吸蔵合金の表面から成長させたCNTのラマンスペクトルを示す図である。
【図4】容器に水素吸蔵合金粒子及びCNTを充填した場合のCNTの充填率と容器内の空隙率との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】容器に水素吸蔵材を充填した場合において、CNTの体積分率と容器の有効熱伝導率との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(水素吸蔵材)
図1の模式図に示すように、水素吸蔵材1は、水素吸蔵合金10とカーボンナノチューブ(以下、CNTとも記す。)20とから構成され、CNT20は水素吸蔵合金10の表面に直接結合した形態である。なお、CNT20は、後述の合成方法によっては複数本が束になって合成されて水素吸蔵合金10の表面に結合している。

【0020】
水素吸蔵合金とは、水素を吸蔵及び放出可能な合金である。水素を吸蔵及び放出可能な合金であれば、いずれを用いてもよく、例えば、チタン-マンガン合金、ランタン-ニッケル合金、ランタン-ニッケル-コバルト合金、及び、ジルコニア-鉄合金などが挙げられる。これらは1種含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。水素吸蔵合金は、微粒子状であることが好ましい。体積当たりの表面積が大きくなるので、水素の吸蔵及び放出が効率的に行われる。

【0021】
カーボンナノチューブは内部中空の管状構造をしており、伝熱性に優れる物質である。カーボンナノチューブとして、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブが挙げられる。

【0022】
本実施の形態に係る水素吸蔵材では、CNTが水素吸蔵合金の表面に直接結合しており、このため、CNTと水素吸蔵合金との接触熱抵抗が小さい。更には、CNTは長さ方向の一端が水素吸蔵合金の表面に結合している。CNTは長さ方向に対する伝熱性が優れる特性を有している。このため、水素吸蔵材では水素吸蔵合金の熱の放出効率や水素吸蔵合金への熱の供給効率が高く、優れた伝熱性を備える。

【0023】
水素吸蔵合金へ水素を吸蔵させる際は発熱反応を伴い、短時間で効率的に水素吸蔵合金に水素を吸蔵させるには、生じた熱を速やかに外部に放出可能なことが要求される。一方で、水素吸蔵合金から水素を放出させる際は吸熱反応を伴うので、短時間で効率的に水素吸蔵合金から水素を放出させるには、速やかに水素吸蔵合金の温度を高められることが要求される。

【0024】
本実施の形態に係る水素吸蔵材では、上述したように、伝熱性に優れるCNTが水素吸蔵合金の表面に直接結合していること、及び、CNTの長さ方向の一端が結合している構成であるから、伝熱性に優れるという特性を備えている。即ち、水素吸蔵合金へ水素を吸蔵させる工程では、反応で生じる熱がCNTを介して速やかに外部に放出される。これにより、水素の吸蔵が速やかに行われる。また、水素吸蔵合金から水素を放出させる工程では、供給する熱がCNTを介して速やかに水素吸蔵合金へと伝わる。これにより、水素吸蔵合金からの水素の放出が速やかに行われる。

【0025】
更に、水素吸蔵合金の粒子の表面は平坦ではなく凹凸があり、CNTは主としてこの凹部に結合していると考えられる。このため、CNTが水素吸蔵合金に結合し、CNTの体積が増加しても、水素吸蔵材を容器に充填した際の実効体積が減少しないという利点を有する。

【0026】
たとえば、伝熱性を向上させるためのフィンが設置された容器に水素吸蔵合金を充填した場合、フィンの体積により容器内に充填できる水素吸蔵合金の量が減少してしまい、燃料タンクとなる容器が大型化してしまう。しかし、本実施の形態に係る水素吸蔵材では、容器内に充填される水素吸蔵合金の充填量を減少させることなく、小型の容器を用いることができる。

【0027】
また、水素吸蔵合金に結合しているCNT内にも水素が取り込まれると考えられる。この際、水素の分子がCNTの管内に弱い化学吸着によって結合するものと考えられる。これにより、水素吸蔵材では、水素吸蔵合金による水素の吸蔵に加え、CNTによる水素の吸蔵がなされるので、より多くの水素を吸蔵することが可能である。

【0028】
(水素吸蔵材の製造方法)
続いて、上述した水素吸蔵材の製造方法について説明する。

【0029】
水素吸蔵合金の表面にてCNTを合成、成長させることができれば特に制限はないが、例えば、化学的気相合成法(CVD:Chemical Vapar Deposition)を応用して製造することができる。CVD法は、炭素源ガスを500~1,000℃で熱分解してCNTを合成、成長させる手法であり、以下のようにして水素吸蔵合金の表面にCNTが結合した水素吸蔵材を得ることができる。

【0030】
図2の模式図に示すように、水素吸蔵合金10を管30内に配置し、加熱装置40にて加熱しながら炭素源ガスを送り込む。これにより、炭素源ガスが熱分解して水素吸蔵合金の表面を足場にし、カーボンナノチューブが成長することになる。なお、通常、CNTは複数本が束状に合成される。

【0031】
水素吸蔵合金として、上述したチタン-マンガン合金、ランタン-ニッケル合金、ランタン-ニッケル-コバルト合金、及び、ジルコニア-鉄合金等を用いることができる。

【0032】
炭素源ガスとして、熱分解されてCNTの合成が可能な物質であれば特に制限はなく、例えば、エタノールやメタン等の炭化水素を用いることができる。

【0033】
合成温度及び合成圧力はCNTの合成が可能であれば特に制限はなく、例えば、合成温度:700℃~900℃、合成圧力:400~1000Paの条件の下、行うことができる。

【0034】
上記の如くCVT法によりCNTを合成すると、水素吸蔵合金の表面を足場にしてCNTが合成され、CNTはその管の長さ方向に伸長するよう成長する。したがって、CNTの一端が水素吸蔵合金の表面に結合した水素吸蔵材が得られる。

【0035】
また、水素吸蔵合金の表面にカーボンナノチューブ合成触媒(以下、CNT合成触媒と記す)を付着させた後に行ってもよい。例えば、メタノール中にCNT合成触媒の金属の酢酸塩を分散させ、水素吸蔵合金にこの溶液を塗布、或いは、水素吸蔵合金を溶液に浸積する。その後、水素吸蔵合金を乾燥させることで、CNT合成触媒が表面に付着した水素吸蔵合金を得ることができる。

【0036】
CNT合成触媒として、金属の微粒子が挙げられる。このCNT合成触媒の金属として鉄・モリブデン合金、鉄・コバルト合金などが挙げられる。なお、CNT合成触媒はCNT合成時に用いる炭素源ガスにより適宜選択して用いればよく、例えば、炭素源ガスとしてメタンを用いる場合には鉄・モリブデン合金を、炭素源ガスとしてエタノールを用いる場合には鉄・コバルト合金を用いるとよい。
【実施例】
【0037】
以下に示すように、CVD法にて水素吸蔵合金の表面から直接CNTを成長させ、水素吸蔵材を製造した(直接合成)。
【実施例】
【0038】
水素吸蔵合金として、チタン-マンガン合金、ランタン-ニッケル合金、ランタン-ニッケル-コバルト合金、ジルコニア-鉄合金を用いた。いずれの合金もAldrich社製を用いた。
【実施例】
【0039】
上記の水素吸蔵合金を真空オーブンの中に保持し、合成温度まで昇温させる間にアルゴン/水素混合ガス(水素5%)を400sccmの流量で流しながら還元した。
【実施例】
【0040】
その後、真空オーブンに炭素源ガスを供給して水素吸蔵合金の表面にてCNTを合成・成長させて水素吸蔵材を製造した。
【実施例】
【0041】
なお、合成温度は700~900℃、合成圧力は400~1000Paの範囲で適宜調節して行った。また、原料ガスとして、メタン及びエタノールを用いた。
【実施例】
【0042】
以下に示すように、水素吸蔵合金の表面に触媒を付着させ、CVD法にて水素吸蔵合金の表面にてCNTを成長させ、水素吸蔵材を製造した(準直接合成)。
【実施例】
【0043】
用いた水素吸蔵合金は上記の直接合成と同様である。
【実施例】
【0044】
メタノール中にCNT合成触媒金属の酢酸塩を分散し(0.01重量%)、水素吸蔵合金とほぼ同体積から数倍の体積の分量の溶液を水素吸蔵合金にスポイトで垂らし、乾燥させてCNT合成触媒金属を表面に付着させた水素吸蔵合金を得た。
【実施例】
【0045】
そして、表面にCNT合成触媒金属を付着させた水素吸蔵合金を用いて、上記直接合成と同様にして水素吸蔵材を製造した。
【実施例】
【0046】
なお、炭素源ガスとしてメタンを供給させる場合には、CNT合成触媒として鉄・モリブデン合金を用い、炭素源ガスとしてエタノールを供給させる場合には、CNT合成触媒として鉄・コバルト合金を用いた。
【実施例】
【0047】
上記直接合成、及び、準直接合成で得られた水素吸蔵材について、それぞれ水素吸蔵合金上に合成したCNTのラマンスペクトルを測定した。それぞれのスペクトルを図3に示す。なお、図3中、without Cat.が、水素吸蔵合金としてランタン-ニッケル-コバルトを用いた直接合成で合成されたCNTのスペクトルであり、with Cat.が、水素吸蔵合金としてランタン-ニッケル-コバルト、CNT合成触媒として鉄・モリブデン触媒を用いた準直接合成で合成されたCNTのスペクトルである。直接合成及び準直接合成のいずれにおいても、CNTのスペクトルを示しており、水素吸蔵合金の表面にCNTが直接結合した水素吸蔵材が得られたことがわかる。
【実施例】
【0048】
また、水素吸蔵合金の空隙にCNTを充填した場合のCNTの充填率と空隙率との関係のシミュレーションを行った。
【実施例】
【0049】
まず、水素吸蔵合金が最密充填構造をとっているとすると、最密充填構造の空隙率は26%である。水素吸蔵合金が完全な球体でないことを考慮し、実際上の空隙率が10%程度大きくなると仮定すると空隙率は凡そ35%となる。
【実施例】
【0050】
そして、この水素吸蔵合金にCNTが充填された場合について考える。水素吸蔵合金の粒径が約10μmと仮定した。また、CNTについては、管状体のシミュレーションが困難なこと、及び、CNTの合成においては複数本が束状になって合成されることを考慮して、粒径100nmの球体と仮定した。そして、CNTの充填率を変化させた場合の空隙率の変化をシミュレーションした。
【実施例】
【0051】
その結果を図4に示す。なお、図4中、MH=0.35が水素吸蔵合金の当初の空隙率35%の場合、MH=0.26が水素吸蔵合金の当初の空隙率26%の場合を示している。横軸は当初の空隙率に対し充填したCNTの充填率を示しており、縦軸は水素吸蔵合金の空隙にCNTを充填した場合の空隙率の変化を示している。
【実施例】
【0052】
当初の空隙率が35%の場合では、CNTの充填率が約0.25(25%)で空隙率が最小となっており、CNTの充填率が約0.25までであれば、所定容器内に水素吸蔵合金にCNTを結合させた水素吸蔵材を充填した場合、水素吸蔵合金のみを同容量の容器に充填した場合と同量の水素吸蔵合金を充填することができ、実効体積を減少させることなく伝熱性を向上させ得ることがわかる。
【実施例】
【0053】
続いて、容器内に水素吸蔵材を充填した場合の有効熱伝導率について、以下のようにしてシミュレーションを行った。
【実施例】
【0054】
有効熱伝導率の算出は下記に示すKunii-Smithの式に基づいて行った。
【数1】
JP0005493127B2_000002t.gif


【実施例】
【0055】
ここで、λは有効熱伝導率(W/mk)、λcは連続相(ここでは空気)の熱伝導率、λdは不連続相(ここでは水素吸蔵合金)、Vdは不連続相の体積分率、そしてφは流体(ここでは水素)の有効液膜厚さを表す。
【実施例】
【0056】
通常、水素吸蔵合金を充填した容器の有効熱伝導率は1W/mKと言われており、これに100℃での空気の熱伝導率30mW/mK、水素吸蔵合金の熱伝導率を30W/mK、容器内の水素吸蔵合金の充填率を0.6と仮定し、流体の有効液膜厚さをフィッティングパラメータとして求めた。
【実施例】
【0057】
そして、水素吸蔵合金にCNTを結合させた水素吸蔵材の有効熱伝導率について、上記のKunii-Smithの式を用いて計算した。なお、上記の式は2成分系であり、3成分系ではないため、CNTが無い場合の系全体の平均としてλcが1W/mK、CNTの熱伝導率を400W/mKと仮定して、CNTの体積分率により有効熱伝導率を算出した。
【実施例】
【0058】
その結果を、図5に示す。ここで、図5の横軸は容器の容積を1とした場合のCNTの体積分率である。図5を見ると、CNTの体積分率が高いほど有効熱伝導率が高くなることがわかる。
【実施例】
【0059】
なお、水素吸蔵合金の充填率を0.6と仮定していることから、容器内の隙間の最大値が0.4と考えられ、また、実際にはその隙間の60%程度までしかCNTを充填できないものと考えられることから、充填可能なCNTの体積分率の最大値は0.4×0.6=0.24程度と考えられる。しかし、CNTの体積分率が0.24の場合でも、図5からわかるように有効熱伝導率は10W/mKを超えており、容器に水素吸蔵合金のみを充填した場合の有効熱伝導率の10倍になっている。
【実施例】
【0060】
このように水素吸蔵合金にCNTが結合した水素吸蔵材を容器に充填した場合では、CNTが結合していない水素吸蔵合金を容器に充填した場合に比べ、容器の有効熱伝導率が高い。したがって、水素吸蔵材は水素の吸蔵及び放出が速やかに行われることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
水素吸蔵材は優れた伝熱性を備えるため、速やかな水素の吸蔵及び放出が可能である。したがって、水素エネルギーを利用可能な水素エンジン自動車等、種々の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 水素吸蔵材
10 水素吸蔵合金
20 カーボンナノチューブ
30 管
40 加熱装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4