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明細書 :リチウム過剰三元系化合物およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5648807号 (P5648807)
公開番号 特開2012-204311 (P2012-204311A)
登録日 平成26年11月21日(2014.11.21)
発行日 平成27年1月7日(2015.1.7)
公開日 平成24年10月22日(2012.10.22)
発明の名称または考案の名称 リチウム過剰三元系化合物およびその製造方法
国際特許分類 H01M   4/505       (2010.01)
H01M   4/525       (2010.01)
C01G  53/00        (2006.01)
FI H01M 4/505
H01M 4/525
C01G 53/00 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 7
出願番号 特願2011-070817 (P2011-070817)
出願日 平成23年3月28日(2011.3.28)
審査請求日 平成26年2月6日(2014.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
発明者または考案者 【氏名】菅野 了次
【氏名】平山 雅章
【氏名】小林 玄器
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100093665、【弁理士】、【氏名又は名称】蛯谷 厚志
【識別番号】100102990、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良博
【識別番号】100080919、【弁理士】、【氏名又は名称】田崎 豪治
審査官 【審査官】▲高▼橋 真由
参考文献・文献 特開2005-255433(JP,A)
特開2007-073487(JP,A)
調査した分野 H01M 4/505
C01G 53/00
H01M 4/525
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式 Li1+XMnCoNi(ここで、0.4≦x≦1.0; 0<j<1; 0<k<1; および0<L<1である。)で示されるリチウム過剰三元系化合物リチウム過剰三元系化合物。
【請求項2】
xが0.5≦x≦0.7である請求項1に記載のリチウム過剰三元系化合物。
【請求項3】
比c/aが、4.97~4.92である請求項1または2に記載のリチウム過剰三元系化合物。
【請求項4】
リチウム過剰三元系化合物の単位格子体積Vが101~106Åである請求項1~のいずれか1項に記載のリチウム過剰三元系化合物。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに1項に記載のリチウム過剰三元系化合物の出発原料を混合し、ついで得られる原料混合物を700℃~1600℃の温度で、大気圧~4GPaの圧力下に加熱することを特徴とするリチウム過剰三元系化合物の製造方法。
【請求項6】
温度が800℃~1100℃であり、圧力が1~4GPaである請求項に記載のリチウム過剰三元系化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のリチウム過剰三元系化合物を含有する正極活物質。
【請求項8】
請求項に記載の正極活物質を有する正極を用いてなるリチウムイオン二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム過剰三元系化合物およびその製造方法、ならびにその化合物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長時間、経済的に使用できる電池として、再充電可能な二次電池の研究が継続して行なわれており、特にリチウムイオン電池は、高出力、高エネルギー密度などの利点を有しており、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な活物質を有する正極と負極と、非水電解質とから構成されるのが通常である。
【0003】
このリチウムイオン電池の正極活物質としては、種々の材料が提案されており、リチウム複合酸化物等も知られている。このなかで、リチウム三元系酸化物も種々検討され,Li過剰にした場合(x=1.2)において、高い容量が発現されることが見出されている(たとえば、特許文献1)。しかしながら、もっとLiが過剰(x≧1.4)となる物質群については、合成が困難なことから報告されていない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2010-232038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新規なリチウム過剰三元系化合物を用いることにより、リチウムイオン二次電池の充放電容量および安全性を飛躍的に向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の発明を提供する。
【0007】
(1)一般式 Li1+XMnCoNi(ここで、0.4≦x≦1.0; 0<j<1; 0<k<1; および0<L<1である。)で示されるリチウム過剰三元系化合物リチウム過剰三元系化合物。
(2)xが0.5≦x≦0.7である上記(1)に記載のリチウム過剰三元系化合物
)比c/aが、4.97~4.92である上記(1)または(2)に記載のリチウム過剰三元系化合物。
)リチウム過剰三元系化合物の単位格子体積Vが101~106Åである上記(1)~()のいずれかに記載のリチウム過剰三元系化合物。
)上記(1)~()のいずれかに記載のリチウム過剰三元系化合物の出発原料を合し、ついで得られる原料混合物を700℃~1600℃の温度で、大気圧~4GPaの圧力下に加熱することを特徴とするリチウム過剰三元系化合物の製造方法。
)温度が800℃~1100℃であり、圧力が1~4GPaである請求項に記載のリチウム過剰三元系化合物の製造方法。
)上記(1)~()のいずれかに記載のリチウム過剰三元系化合物を含有する正活物質。
)上記()に記載の正極活物質を有する正極を用いてなるリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規なリチウム過剰三元系化合物を用いることにより、リチウムイオン二次電池の容量,安全性を飛躍的に向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のリチウム過剰三元系化合物のX線回折スペクトル。
【図2】本発明のリチウム過剰三元系化合物のX線回折スペクトルから求めた格子パラメータ(格子定数a;格子定数c;単位格子体積V;および格子定数aに対する格子定数cの比c/a)。
【図3】本発明のリチウム過剰三元系化合物の充放電曲線。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のリチウム過剰三元系化合物は、一般式 Li1+XMnCoNi(ここで、0.4≦x≦1.0; 0<j<1; 0<k<1; および0<L<1である。)で示される。xは、充放電容量の点からは、好適には、0.5≦x≦0.7である。j、kおよびLは、好適には、Mn、Co、Niのそれぞれの価数が4価、3価、2価を取るように選択される。【0011】
本発明のリチウム過剰三元系化合物のa軸方向の格子定数aに対するc軸方向の格子定数cの比c/aは、図2に示すように4.97以下であり、xの増加とともに低下傾向を示す。たとえば、比c/aは、xが0.4~0.8と増加するとともに、4.97から4.92に低下する。また、単位格子体積Vは101Åから106Åに上昇する。このように、従来のリチウム過剰三元系化合物と比較して、過剰リチウムによりa軸に対するc軸方向の格子定数が小さくなり、かつ全体の格子体積は大きな構造を有する。

【0012】
リチウム過剰三元系化合物のBET比表面積は、正極活物質として使用した場合にリチウムの拡散を速やかにし、大電流下でも十分な容量を得るために0.5m2/g以上であるのが好適であり、この観点から粒径が比較的小さくなるように調節される。

【0013】
本発明のリチウム過剰三元系化合物は、好適にはリチウム過剰三元系化合物の出発原料を混合し、ついで得られる原料混合物を700℃~1600℃の温度で、大気圧~4GPaの圧力下に加熱することにより製造される。加熱後に、常圧Ar中において,精製のためにメタノール等で洗浄するのが好適である。

【0014】
温度が700℃よりも低いと、目的物を得ることができず、一方1600℃よりも高いと、過度の粒成長や異なる結晶構造への転移が生じるおそれがある。温度は好ましくは800℃~1100℃であり、圧力は好ましくは1~4GPaである。

【0015】
出発原料は特に制限されないが、硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酸化物等用いられる。たとえば、具体的には、Li源としては炭酸リチウム(Li2CO3)、Mn源としては炭酸マンガン(MnCO3)、Co源としてはシュウ酸コバルト(CoC24・2H2O)、Ni源としては酸化ニッケル(NiO)等、を所定比で均一に混合して出発原料とするが好適である。これらの出発原料は、金、白金等のカプセル内に封入して用いるのが好適である。

【0016】
本発明のリチウム過剰三元系化合物は、上記の高圧下での製造方法に限定されず、蒸着、スパッタ、または常圧下の加熱、等によることもできるが、上記の方法が、リチウムの蒸発による損失を抑制して、リチウム過剰三元系化合物のLi比を制御するのに最も好適である。

【0017】
本発明のリチウム過剰三元系化合物は正極活物質として好適であり、特にリチウムイオン二次電池にこの正極活物質を有する正極を用いるのが好ましい。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な活物質を有する正極と負極と、非水電解質とから構成される。たとえば、このようなリチウムイオン二次電池は、負極、負極を収容する負極缶、正極、正極を収容する正極缶、正極と負極との間に配置されたセパレータおよび絶縁ガスケットとを備え、負極缶および正極缶内には非水電解液が充填されてなる。負極は、負極集電体上に、負極活物質を含有する負極活物質層が形成されてなり、負極集電体としては、たとえばニッケル箔、銅箔等が用いられる。負極活物質としては、リチウムをドープ/脱ドープ可能なものを用い、具体的には、金属リチウム、リチウム合金、リチウムがドープされた導電性高分子もしくは層状化合物等が用いられる。負極活物質層に含有される結合剤としては、この分野で公知の樹脂材料等を用いることができる。正極は、アルミニウム箔等の正極集電体上に、本発明のリチウム過剰三元系化合物を正極活物質として含有する正極活物質層が形成されてなる。正極活物質層に含有される結合剤としては、樹脂材料等を用いることができる。

【0018】
セパレータは、正極と負極とを離間させるものであり、たとえばポリプロピレンなどの高分子フィルムが用いられ、セパレータの厚みはたとえば50μm以下が好ましい。

【0019】
絶縁ガスケットは、負極缶に組み込まれ一体化されている。この絶縁ガスケットは、負極缶及び正極缶内に充填された非水電解液の漏出を防止するためのものである。

【0020】
非水電解液としては、非プロトン性非水溶媒に電解質を溶解させた溶液を用いる。非水溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチルラクトン、スルホラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチル1,3-ジオキソラン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等を使用することができるが、特に、電圧安定性の点からは、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類を使用することが好ましい。また、このような非水溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。

【0021】
また、非水溶媒に溶解させる電解質としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22等のリチウム塩を使用することができる。これらのリチウム塩の中でも、LiPF6、LiBF4を使用することが好ましい。

【0022】
これらのリチウムイオン電池の組み立て自体は常法によることができ、その形状も円筒型、角型、コイン型、ボタン型等、特に限定されない。
【実施例】
【0023】
実施例1
本発明で行った高圧合成法によるLi過剰三元系化合物Li1+xMnCoNiOの合成は次のプロセスのとおり行った。
【実施例】
【0024】
原料混合物をアルゴンで満たされたグローブボックス内で目的とする組成で混合し,金カプセルに封入した。原料混合物は、酸化リチウム(Li2O)、酸化マンガン(Mn2O)、酸化コバルト(CoO)および酸化ニッケル(NiO)を、x:j:k:Lが所定比となるように均一に混合して得た。
【実施例】
【0025】
キュービックアンビル型高圧装置を用いて,原料が封入された金カプセルを1GPaの圧力下に950℃で加熱した。その後、アルゴンで満たされたグローブボックス内で、メタノールで洗浄して、Li過剰三元系化合物を得た。X線回折測定から得られる回折スペクトルを比較した結果,Li過剰量に従って,Li1+xMnCNiOの格子が膨張したことから,Liが構造内に過剰に存在していることを確認した。x=0.2の試料で観測されるX線回折スペクトルでは構造内の不規則配列に由来した回折反射が観測されず,過剰Liの存在により異なる構造を有していた。
【実施例】
【0026】
図1は、 Li過剰三元系化合物のX線回折スペクトルを示す。Li量増大とともに各反射ピークが低角度側に現れることから、格子が増大していく様子が現れており,Liが過剰に格子内に導入されていることが確認できた。
【実施例】
【0027】
図2は、本発明のリチウム過剰三元系化合物のX線回折スペクトルから求めた格子パラメータ(格子定数a;格子定数c;単位格子体積V;および格子定数aに対する格子定数cの比c/a)を示す。格子定数aが直線的でないことが特徴であった。格子定数aおよび格子定数cとxとの関係が示されている。単位格子体積V(Å)も格子定数a(=b)および格子定数cから算出され(=ac)、表示された。さらに、c/a値がxの増加とともに4.97(x=0.4)から減少することがわかるが、一般にc/a値が4.90程度で立方晶と言われることから,菱面体晶(六方晶)から立方晶に近い相へ転移している可能性がある。一般に電気化学反応性として、菱面体晶(六方晶)層状岩塩型構造はリチウムの拡散に適しており、立方晶構造では電気化学反応場における安定性に優れている。本発明のリチウム過剰三元系化合物では、c/a値で表わされる菱面体晶と立方晶の割合を制御することができる。
【実施例】
【0028】
対極Li金属,有機電解液を用いたコインセルを作製し25°Cで充放電特性を評価した結果,200 mAh g-1を超える高い放電容量を示し,さらに充放電反応の可逆性が高いことが明らかになった。
すなわち、図3のLi1+xMn0.3Co0.2Ni0.3O2の充放電曲線に示されるように、200 mAh/gを超える放電容量が得られた。この組成比(Mn0.3Co0.2Ni0.3)においては、立方晶が多いx=0.8は容量が小さかった。x=0.5, 0.6とx=0.7では,初回の充電曲線の形状が異なり,x=0.7では異なる結晶構造に変化していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明のLi過剰三元系化合物のリチウムイオン電池用電極としての性能を対極Li,有機電解液をとしたセルで評価した結果,200 mAh g-1を超える高い放電容量を示し,さらに充放電反応の可逆性が高いことが明らかになった。この材料を用いることで,高容量,高安全性を有する次世代リチウムイオン電池開発の実現可能性が高まると考えられる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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