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明細書 :リン系化合物半導体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5641348号 (P5641348)
公開番号 特開2012-201545 (P2012-201545A)
登録日 平成26年11月7日(2014.11.7)
発行日 平成26年12月17日(2014.12.17)
公開日 平成24年10月22日(2012.10.22)
発明の名称または考案の名称 リン系化合物半導体の製造方法
国際特許分類 C23C  14/06        (2006.01)
C23C  14/24        (2006.01)
C23C   8/08        (2006.01)
FI C23C 14/06 G
C23C 14/24 E
C23C 8/08
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2011-067091 (P2011-067091)
出願日 平成23年3月25日(2011.3.25)
審査請求日 平成26年3月13日(2014.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】野瀬 嘉太郎
【氏名】藤川 皓太
【氏名】宇田 哲也
個別代理人の代理人 【識別番号】110000280、【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開昭63-43410(JP,A)
調査した分野 C23C14/00-14/58
C23C 8/08
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
スズと三リン化四スズとの混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し、発生したリンの蒸気をリンとの反応によって半導体を形成する金属の表面に接触させることを特徴とするリン系化合物半導体の製造方法。
【請求項2】
リンとの反応によって半導体を形成する金属が、亜鉛、インジウム、ガリウムおよびアルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、または当該金属とケイ素、ゲルマニウムおよびスズからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属との合金である請求項1に記載のリン系化合物半導体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リン系化合物半導体の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、太陽電池素子、光通信デバイス用基板などに有用なリン系化合物半導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リン系化合物半導体を有機金属気相成長法(MOVPE法)などの真空蒸着法によって製造する際には、リンの供給源としてホスフィン(PH3)が用いられている。また、太陽電池用シリコンのpn接合形成のためのリンドープには、オキシ塩化リン(POCl3)が用いられている。しかし、ホスフィンおよびオキシ塩化リンは、いずれも人体に対する毒性が強く、室温で気体または液体であることから、取り扱いに注意を払う必要があるため、これらの化合物を使用しないでリン系化合物半導体を製造することが望まれている。
【0003】
リン系化合物半導体の原料として、ホスフィンおよびオキシ塩化リンと対比して毒性が低く、室温中での取り扱いが容易である化合物として固体の赤リンが知られている。しかし、赤リンは、多形(無定形)であるため、リン系化合物半導体を製造する際の蒸気圧の制御が非常に困難である。例えば、400℃における赤リン上のリン気体(P4)の平衡蒸気圧は、およそ50.7kPaであるが、実際にはこの高い平衡蒸気圧が得られない。そこで、赤リンを高温に加熱することが考えられるが、赤リンを高温に加熱した場合、平衡蒸気圧が得られるものの1013kPaを超えるため、高圧容器が必要となる。したがって、一般にリン化インジウム(InP)の結晶を製造する際には、高圧容器内での一方向凝固が行なわれている。また、分子ビームエピタキシー(MBE)などの装置を用いてリン系化合物半導体を製造する際には、原料として赤リンが用いられているが、バルブドセルと呼ばれる特殊なセルを用いてリン蒸気圧を制御する必要がある。
【0004】
そこで、比較的安全性が高いリンビームを発生させる方法として、分子ビーム蒸着によってIII族元素からなる分子ビームとV族元素からなる分子ビームを照射させてIII-V族半導体層を形成させた後、スズおよびリン系化合物を熱分解させてV族元素の分子ビームを形成させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、確かに安全性が比較的高い方法であるが、原料として三リン化スズ(SnP3)または四リン化三スズ(Sn34)が用いられているため、安定にリン蒸気を供給することが困難であるとともに、リンと反応させる金属が気体であるため、リンビームの組成の制御が困難である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開昭61-43410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、リン系化合物半導体の原料としてホスフィンおよびオキシ塩化リンを使用しないで、高圧に加圧することなく効率よくリン系化合物半導体を製造することができるリン系化合物半導体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) リン系化合物半導体の原料としてスズと三リン化四スズとの混合物を用い、当該混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し、発生したリンの蒸気をリンとの反応によって半導体を形成する金属(以下、半導体形成性金属という)の表面に接触させることを特徴とするリン系化合物半導体の製造方法、および
(2) 半導体形成性金属が、亜鉛、インジウム、ガリウムおよびアルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、または当該金属とケイ素、ゲルマニウムおよびスズからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属との合金である請求項1に記載のリン系化合物半導体の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リン系化合物半導体の原料としてホスフィンおよびオキシ塩化リンを使用しないで、高圧に加圧することなく効率よくリン系化合物半導体を製造することができるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実験例1において、スズと三リン化四スズとの混合物および赤リンの平衡分圧と実験圧力との関係を示す図である。
【図2】(a)は実施例1で得られたリン系化合物半導体の斜入射X線回折図、(b)は比較例1で得られたリン系化合物半導体の斜入射X線回折図である。
【図3】(a)は実施例2で得られたリン系化合物半導体の斜入射X線回折図、(b)は実施例2においてリン蒸気と反応させる前のモリブデン板上の亜鉛薄膜の斜入射X線回折図である。
【図4】実施例2で得られたリン系化合物半導体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】(a)は実施例3で得られたリン系化合物半導体の斜入射X線回折図、(b)は実施例3においてリン蒸気と反応させる前のアルミニウム板上の亜鉛薄膜の斜入射X線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のリン系化合物半導体の製造方法は、リン系化合物半導体の原料としてスズと三リン化四スズとの混合物を用い、当該混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し、発生したリンの蒸気を半導体形成性金属の表面に接触させることを特徴とする。

【0011】
本発明者らは、リン系化合物半導体の原料としてホスフィンおよびオキシ塩化リンを使用しないことを前提とし、さらに高圧に加圧しなくても効率よくリン系化合物半導体を製造することができるリン系化合物半導体の製造方法を開発するべく鋭意研究を重ねたところ、リン系化合物半導体の原料として、スズと三リン化四スズとの混合物を用いた場合には、常圧であっても効率よくリン系化合物半導体が得られることが見出された。さらに、本発明者らは、鋭意研究を重ねたところ、スズと三リン化四スズとの混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し、発生したリン蒸気の分圧を制御した場合には、得られるリン系化合物半導体の組成を制御することができるとともに、リンと半導体形成性金属との反応速度を制御することができることが見出された。

【0012】
このように、本発明のリン系化合物半導体の製造方法は、人体に対して悪影響を与えるおそれがあるホスフィンおよびオキシ塩化リンを使用せずに、高圧に加圧しなくてもリン系化合物半導体を効率よく製造することができ、さらにリンの供給源であるスズと三リン化四スズとの混合物の温度を制御するだけでリン蒸気の分圧を制御することができるので、工業的生産性に優れたリン系化合物半導体の製造方法であるといえる。

【0013】
スズと三リン化四スズとの混合物は、スズと三リン化四スズとを混合することによって容易に調製することができる。スズおよび三リン化四スズは、特に微細に粉砕しなくてもよいので煩雑な微細に粉砕する操作が不要であることから、本発明のリン系化合物半導体の製造方法は、この面でも生産性に優れている。スズおよび三リン化四スズの粒子径は、特に限定されず、通常、0.5~5mm程度、好ましくは1~3mm程度である。

【0014】
スズと三リン化四スズとの混合割合については、当該混合物に含まれるスズとリンとのモル比(スズ/リン)が、リン蒸気の蒸気圧の変動を抑制する観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、さらに好ましくは30/70以上であり、リン系化合物半導体中におけるリンの含有量を高める観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、さらに好ましくは70/30以下である。なお、スズと三リン化四スズとの混合物を調製した後には、リン系化合物半導体の生産性を高める観点から、あらかじめ前記混合物を加熱し、当該混合物に含まれているスズを溶融させた後、両者を反応させておくことが好ましい。

【0015】
スズと三リン化四スズとの混合物は、不活性ガス中で加熱される。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、窒素ガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、不活性ガス中に酸素ガスなどの不純物ガスが含まれている場合には、リンまたはスズと不純物ガスとの副反応が生じるおそれがあることから、必要により、不活性ガスを清浄化させておくことが好ましい。

【0016】
スズと三リン化四スズとの混合物の加熱温度は、半導体形成性金属の表面を十分にリンと反応させる観点から、好ましくは250℃以上、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは300℃以上であり、反応系内の蒸気圧の変動を抑制する観点から、好ましくは半導体形成性金属の融点よりも低い温度、より好ましくは半導体形成性金属の融点よりも3℃以上低い温度、さらに好ましくは半導体形成性金属の融点よりも5℃以上低い温度である。スズと三リン化四スズとの混合物の加熱温度を適宜調節することにより、リン系化合物半導体のリンの含有率が所望の値となるように調整することができる。

【0017】
不活性ガス中でスズと三リン化四スズとの混合物を加熱する際には、不活性ガスを通気しながらスズと三リン化四スズとの混合物を加熱してもよく、密閉室または密閉容器内に不活性ガスを充填し、そのなかでスズと三リン化四スズとの混合物を加熱してもよい。なお、不活性ガス中でスズと三リン化四スズとの混合物を加熱する手段としては、例えば、電気炉などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0018】
次に、スズと三リン化四スズとの混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱することによって生成したリンの蒸気を半導体形成性金属の表面に接触させる。

【0019】
半導体形成性金属としては、例えば、亜鉛、インジウム、ガリウム、アルミニウムなどの半導体形成性金属が挙げられ、これらの金属は、いずれも本発明において好適に使用することができるものである。これらの金属は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、半導体形成性金属は、それ単独で用いてもよく、あるいは当該金属と他の金属との合金であってもよい。前記他の金属としては、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズなどの金属が挙げられ、これらの金属は、いずれも本発明において好適に使用することができるものである。

【0020】
半導体形成性金属の形状としては、例えば、フィルム状、プレート状、ロッド状、網目状などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、半導体形成性金属は、例えば、モリブデンなどの金属基板の表面上に薄膜として形成されたものであってもよい。

【0021】
スズと三リン化四スズとの混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱することによって生成したリンの蒸気を半導体形成性金属の表面に接触させる方法としては、例えば、前記混合物を所定温度に加熱し、当該加熱された混合物に不活性ガスを吹き付け、これによって得られたリンの蒸気を含有する不活性ガスを半導体形成性金属の表面に吹き付ける方法などが挙げられる。その際、例えば、スズと三リン化四スズとの混合物とは反応性を有しない石英管などの反応管内にスズと三リン化四スズとの混合物を入れておき、当該反応管の一端から不活性ガスを導入し、当該反応管の他端から生成したリンの蒸気を排出させ、当該リンの蒸気を含有する不活性ガスを半導体形成性金属の表面と接触させることにより、リン系化合物半導体を形成させることができる。

【0022】
リンの蒸気を半導体形成性金属の表面に接触させる際には、必要により、半導体形成性金属を加熱しておいてもよい。このように半導体形成性金属を加熱した場合には、リン系化合物半導体を効率よく製造することができるという利点がある。半導体形成性金属を加熱する際の加熱温度は、当該半導体形成性金属の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該半導体形成性金属の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。

【0023】
リンの蒸気を半導体形成性金属の表面に接触させる時間は、スズと三リン化四スズとの混合物の加熱温度、半導体形成性金属の種類などによって異なるので一概には決定することができないため、通常、リン系化合物半導体を形成させるのに要する時間となるように適宜設定することが好ましい。

【0024】
以上説明したように、本発明のリン系化合物半導体の製造方法によれば、リン系化合物半導体の原料として人体に対して悪影響を与えるおそれがあるホスフィンおよびオキシ塩化リンを使用しないで、製造時の系内を高圧に加圧することなく効率よくリン系化合物半導体を製造することができることから、本発明のリン系化合物半導体の製造方法は、工業的規模でリン系化合物半導体を効率よく製造することができるという利点を有する。
【実施例】
【0025】
次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
実験例1
リン蒸気がP4であると考え、これを理想気体とみなし、スズと三リン化四スズとの混合物(スズと三リン化四スズとのモル比:7/93)および赤リンの平衡分圧と実験圧力との関係を調べた。その結果を図1に示す。なお、図1中の単位は「atm」で表記されているが、SI単位に換算した場合には、1atmは約101.3kPaとなる。また、図1中、○印はスズと三リン化四スズとの混合物の測定結果を示し、△印は赤リンの測定結果を示す。
【実施例】
【0027】
図1に示された結果から、赤リンを用いた場合には、実験圧力は平衡分圧よりも2桁程度低い圧力となったのに対し、スズと三リン化四スズとの混合物を用いた場合には、実験圧力は平衡分圧とほぼ一致したことから、熱平衡状態に達しており、温度の制御によって分圧を制御することができることがわかる。
【実施例】
【0028】
実施例1
基板として亜鉛板(縦:20mm、横:20mm、厚さ:0.5mm)を用い、これを内径が46mmの石英ガラス管内に入れ、内部雰囲気を精製されたアルゴンガスで十分に置換した後、内径が15mmの石英ガラス細管内にスズと三リン化四スズとの混合物(スズと三リン化四スズとのモル比:7/93)1.5gを入れ、この石英ガラス細管を前記石英ガラス管内に挿入し、石英ガラス細管内にアルゴンガスを軽く吹き込みながら電気炉で石英ガラス管を30分間加熱し、石英ガラス細管から放出されたリン蒸気を亜鉛の板表面と接触させることにより、リンと亜鉛とを反応させた。そのとき、熱電対で亜鉛板の温度およびスズと三リン化四スズとの混合物の温度を測定したところ、亜鉛板の温度は387℃であり、スズと三リン化四スズとの混合物の温度は447℃であった。
【実施例】
【0029】
次に、リン蒸気を接触させた亜鉛板を室温まで放冷し、石英ガラス管から取り出し、得られた亜鉛板の表面上で形成されたリン系化合物半導体の斜入射X線回折(GI-XRD)(入射角:0.5°)を調べた。その結果を図2(a)に示す。
【実施例】
【0030】
図2(a)において、×印は亜鉛に基づく回折ピーク、黒▽印は二リン化三亜鉛(Zn32)に基づく回折ピークを示す。また、加熱前後のスズと三リン化四スズとの混合物を秤量することによってリン蒸気の蒸発量を求めたところ、リン蒸気の蒸発量は13.6mgであった。
【実施例】
【0031】
比較例1
従来、リン系化合物半導体を製造するときに用いられている赤リンを用いて実施例1と同様にしてリン系化合物半導体を製造した。より具体的には、実施例1において、スズと三リン化四スズとの混合物1.5gの代わりに赤リン1.5gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリンと亜鉛とを反応させた。そのとき、熱電対で亜鉛板の温度および赤リンの温度を測定したところ、亜鉛板の温度は381℃であり、赤リンの温度は456℃であった。
【実施例】
【0032】
次に、リン蒸気を接触させた亜鉛板を室温まで放冷し、石英ガラス管から取り出し、得られた亜鉛板の表面上で形成されたリン系化合物半導体の斜入射X線回折(GI-XRD)(入射角:0.5°)を調べた。その結果を図2(b)に示す。
【実施例】
【0033】
図2(b)において、×印は亜鉛に基づく回折ピーク、黒▽印は二リン化三亜鉛(Zn32)に基づく回折ピーク、黒◇印は酸化亜鉛(ZnO)に帰属する回折ピークを示す。また、加熱前後の赤リンを秤量することによりリン蒸気の蒸発量を求めたところ、79.9mgであった。
【実施例】
【0034】
実施例1および比較例1の結果から、実施例1によれば、比較例1におけるリン蒸気の蒸発量(79.9mg)と対比して、リン蒸気の蒸発量(13.6mg)が格段に少ないにもかかわらず、二リン化三亜鉛(Zn32)が顕著に生成していることがわかる。このことから、実施例1によれば、比較例1と対比して、リン蒸気の蒸発量、すなわちリンの供給量が少なくてもリン系化合物半導体を格段に効率よく製造することができることがわかる。
【実施例】
【0035】
実施例2
基板としてモリブデン基板(縦:20mm、横:20mm、厚さ:0.5mm)を用い、当該モリブデン基板上に亜鉛めっきにより、亜鉛薄膜を形成させた。次に、亜鉛薄膜が形成されたモリブデン基板を内径が46mmの石英ガラス管内に入れ、内部雰囲気を精製されたアルゴンガスで十分に置換した後、内径が15mmの石英ガラス細管内にスズと三リン化四スズとの混合物(スズと三リン化四スズとのモル比:7/93)1.5gを入れ、この石英ガラス細管を前記石英ガラス管内に挿入し、石英ガラス細管内にアルゴンガスを軽く吹き込みながら電気炉で石英ガラス管を30分間加熱し、石英ガラス細管から放出されたリン蒸気を亜鉛薄膜が形成されたモリブデン基板と接触させることにより、リンと亜鉛とを反応させた。そのとき、熱電対で亜鉛薄膜が形成されたモリブデン基板の温度およびスズと三リン化四スズとの混合物の温度を測定したところ、亜鉛薄膜が形成されたモリブデン基板の温度は352℃であり、スズと三リン化四スズとの混合物の温度は451℃であった。
【実施例】
【0036】
次に、リン蒸気を接触させた亜鉛薄膜が形成されたモリブデン基板を室温まで放冷し、石英ガラス管から亜鉛薄膜上で形成されたリン系化合物半導体を取り出した。このリン系化合物半導体の斜入射X線回折(GI-XRD)(入射角:0.5°)を調べた。その結果を図3(a)に示す。
【実施例】
【0037】
図3(a)において、×印は亜鉛に基づく回折ピーク、▽印は二リン化三亜鉛(Zn32)に基づく回折ピークを示す。また、図3(b)に、リン蒸気と反応させる前のモリブデン板上の亜鉛薄膜の斜入射X線回折(GI-XRD)(入射角:0.5°)の測定結果を示す。図3(b)において、×印は亜鉛に基づく回折ピーク、▽印は二リン化三亜鉛(Zn32)に基づく回折ピークを示す。
【実施例】
【0038】
以上の結果から、実施例2によれば、実施例1と同様に二リン化三亜鉛(Zn32)が顕著に生成していることがわかる。このことから、実施例2によれば、半導体形成性金属が薄膜状の形態を有する場合であってもリン系化合物半導体を効率よく製造することができることがわかる。
【実施例】
【0039】
実験例2
実施例2で得られたリン系化合物半導体の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示す。なお、図面の尺度は、図の右下に記載のとおりである。
【実施例】
【0040】
図4に示された結果から、実施例2で得られたリン系化合物半導体は、その表面状態が均一かつ緻密であることがわかる。このことから、実施例2で得られたリン系化合物半導体は、表面平滑性が要求される太陽電池素子、光通信デバイス用基板などに有用であることがわかる。
【実施例】
【0041】
実施例3
基板としてアルミニウム板(縦:20mm、横:20mm、厚さ:0.5mm)を用い、これを内径が46mmの石英ガラス管内に入れ、内部雰囲気を精製されたアルゴンガスで十分に置換した後、内径が15mmの石英ガラス細管内にスズと三リン化四スズとの混合物(スズと三リン化四スズとのモル比:7/93)1.5gを入れ、この石英ガラス細管を前記石英ガラス管内に挿入し、石英ガラス細管内にアルゴンガスを軽く吹き込みながら電気炉で石英ガラス管を60分間加熱し、石英ガラス細管から放出されたリン蒸気を亜鉛板表面と接触させることにより、リンと亜鉛とを反応させた。そのとき、熱電対でアルミニウム板の温度およびスズと三リン化四スズとの混合物の温度を測定したところ、アルミニウム板の温度は610℃であり、スズと三リン化四スズとの混合物の温度は449℃であった。
【実施例】
【0042】
次に、リン蒸気を接触させたアルミニウム板を室温まで放冷し、石英ガラス管からアルミニウム板上で形成されたリン系化合物半導体を取り出した。このリン系化合物半導体の斜入射X線回折(GI-XRD)(入射角:0.5°)を調べた。その結果を図5(a)に示す。
【実施例】
【0043】
図5(a)において、×印はアルミニウムに基づく回折ピーク、黒▽印はリン化アルミニウム(AlP)に基づく回折ピーク、黒□印は三酸化二アルミニウム(Al23)に基づく回折ピークを示す。
【実施例】
【0044】
また、リン蒸気と反応させる前のアルミニウム板上の亜鉛薄膜の斜入射X線回折(GI-XRD)(入射角:0.5°)を調べた。その結果を図5(b)に示す。図5(b)において、×印はアルミニウムに基づく回折ピーク、黒▽印はリン化アルミニウム(AlP)に基づく回折ピーク、黒□印は三酸化二アルミニウム(Al23)に基づく回折ピークを示す。
【実施例】
【0045】
以上の結果から、実施例3によれば、リン化アルミニウム(AlP)が顕著に生成していることがわかる。このことから、実施例3によれば、半導体形成性金属としてアルミニウムを用いた場合であってもリン系化合物半導体を効率よく製造することができることがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図4】
4