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明細書 :有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法及び有機ハロゲン化合物無害化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5278834号 (P5278834)
公開番号 特開2011-161218 (P2011-161218A)
登録日 平成25年5月31日(2013.5.31)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
公開日 平成23年8月25日(2011.8.25)
発明の名称または考案の名称 有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法及び有機ハロゲン化合物無害化剤
国際特許分類 A62D   3/37        (2007.01)
B09B   3/00        (2006.01)
B09C   1/02        (2006.01)
B09C   1/08        (2006.01)
C02F  11/00        (2006.01)
A62D 101/08        (2007.01)
A62D 101/22        (2007.01)
FI A62D 3/37 ZAB
B09B 3/00 304G
B09B 3/00 304K
B09B 3/00 304Z
C02F 11/00 C
B09B 3/00 304L
A62D 101:08
A62D 101:22
請求項の数または発明の数 9
全頁数 21
出願番号 特願2010-279188 (P2010-279188)
出願日 平成22年12月15日(2010.12.15)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第19回環境化学討論会,日本環境化学会,2010年6月23日
優先権出願番号 2010006074
優先日 平成22年1月14日(2010.1.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年11月29日(2012.11.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】507234438
【氏名又は名称】公立大学法人県立広島大学
発明者または考案者 【氏名】三苫 好治
【氏名】宮田 秀明
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100128277、【弁理士】、【氏名又は名称】専徳院 博
審査官 【審査官】馳平 裕美
参考文献・文献 特開2008-207044(JP,A)
特開2004-141774(JP,A)
特開2010-000301(JP,A)
特開2007-105059(JP,A)
特開2008-188478(JP,A)
特開2007-209361(JP,A)
GEIGER Cherie L. et al.,A Review of Environmental Applications of Nanoscale and Microscale Reactive Metal Particles,American Chemical Society,2009年,No.1027 ,Page.1-20
松井敏樹, 今井知之,ナノ鉄複合粒子「RNIP」の技術と用途,JETI,2009年12月14日,Vol.57 No.13 ,Page.73-75
山本拓司, 遠藤明, 中岩勝, 大森隆夫,廃水中のPOPsの高効率回収および無害化処理に関する研究,環境保全研究成果集,2005年,Vol.2005 ,Page.35-1~35-8
調査した分野 A62D 3/00~3/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
有機ハロゲン化合物を含有する固体と薬剤とを接触させ、前記薬剤により前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化する、メカノケミカル処理によらない有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法であって、
前記薬剤が、少なくとも一部はナノサイズの金属カルシウムを水分調整機能を有し水素源として作用する水を吸着する酸化カルシウム中に分散させた金属分散体であり、前記金属カルシウムが電子供与体として作用することを特徴とする有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
【請求項2】
前記金属分散体は、固形状の金属カルシウム酸化カルシウムとの混合物を、固形状の金属カルシウムの少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得られることを特徴とする請求項1に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
【請求項3】
前記金属分散体は、ナノサイズの金属カルシウムの表面を前記酸化カルシウムがコーティングし、酸化カルシウムが、ナノサイズの金属カルシウムの大部分が酸素、二酸化炭素又は水と直接接触することを阻止することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
【請求項4】
さらに水素源であるアルコール及び/又は有機酸等を共存させ、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする請求項1からのいずれか1に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
【請求項5】
前記有機ハロゲン化合物を含有する固体は、土壌、焼却灰、焼却飛灰、汚泥又はこれらの混合物であり、
前記アルコール及び/又は有機酸等は、土壌、焼却灰、焼却飛灰、汚泥又はこれらの混合物に含まれているアルコール及び/又は有機酸等であることを特徴とする請求項に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
【請求項6】
前記有機ハロゲン化合物を含有する固体に含まれる水分量が所定の値を越えるときは、前記有機ハロゲン化合物の無害化の処理に先立ち、該固体に水分調整剤を加え、該固体に含まれる水分量を所定の値以下とする水分調整を行うことを特徴とする請求項1からのいずれか1に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
【請求項7】
前記有機ハロゲン化合物が、残留性有機汚染物質及び/又は揮発性有機化合物であることを特徴とする請求項1からのいずれか1に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
【請求項8】
さらに前記有機ハロゲン化合物を無害化するときに発生する揮発性有機化合物の蒸気を吸着材に吸着させ、
該吸着材と電子供与体である金属粒子とをメカノケミカル処理し、又は該吸着材とプロトン性溶媒に少なくとも一部は溶解し電子移動による還元力を有する金属とプロトン性溶媒とを混合し、揮発性有機化合物を無害化する工程を含むことを特徴とする請求項に記載の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法。
【請求項9】
有機ハロゲン化合物を含有する固体と接触させ前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化させる、少なくとも一部はナノサイズの金属カルシウムを水分調整機能を有し水素源として作用する水を吸着する酸化カルシウム中に分散させた金属分散体からなる有機ハロゲン化合物無害化剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオキシン類に代表される有機ハロゲン化合物を含有する土壌、焼却灰、焼却飛灰、汚泥などの固体を無害化する有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオキシン類、PCBなど残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)及び/又は揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)に汚染された土壌を無害化する処理方法として、化学的あるいは生物学的手法による処理方法が多く研究開発されている。化学的手法によるPOPsの分解については、これまでラボレベルで多くの脱塩素化法が開発されているが、残念ながらそれを直接フィールドに利用できない場合が多い。理由の1つは、土壌などのヘテロな固相中に吸着されたPOPsと分解剤の効率的接触が困難であり、かつ共存する物質、例えば水分等の影響を受けて分解剤が失活するからである。
【0003】
実用化された技術に目を向けると、間接加熱酸化分解法、ジオスチーム工法、溶剤抽出法、バイオレメディエーション法などがよく知られている。しかし間接加熱酸化分解法やジオスチーム工法は、加熱を伴うために単位処理量当たりに投入するエネルギー量が莫大で高コストとなる。他方、処理温度を抑えた溶剤抽出法は、抽出効率を上げるため高沸点の炭化水素系溶剤を加えるために対象物からの溶剤の完全分離が困難となる。バイオレメディエーション法では、分解に時間が掛かること、最適分解条件の制御に手間が掛かること、さらには分解可能な対象物に制限があるために他法と組み合わせる必要がある。VOCによって汚染された土壌に水と接触し発熱する生石灰などからなるホットソイル(登録商標)を添加、混合し、発生する水和熱によってVOCを揮発、分離させて汚染土壌を浄化させるホットソイル法は、POPsの分解を行うことはできない。
【0004】
この他、メカノケミカル法では、遊星ボールミルの衝撃波により固相中のPOPsをほぼ常温で無害化可能であるが、分解補助剤の酸化カルシウムの添加量が被処理物の数~数十倍に達し、低濃度になるほどミル処理効率が低下する(例えば非特許文献1参照)。また実質、酸化カルシウムを還元剤としたメカノケミカル法は、最終的な廃棄物の量が多くなり実用的とは言い難い。
【0005】
これらに対して本発明者は、金属カルシウムを利用する新規なPOPs分解技術を見出し99%以上の高い処理効率を達成した(例えば非特許文献2参照)。この方法は、アルコール共存下で金属カルシウムを電子源として活用する湿式反応である(例えば特許文献1参照)。この処理方法は有用な方法であるが、可燃性の低級アルコールを使用するため、より安全で低コストな処理方法が求められた。このためアルコールを使用することなく遊星ボールミルを用い、外部から脱塩素反応に必要なエネルギーをミルを通じて供給する方法を開発した。この方法を用い、常温下でダイオキシン含有焼却灰を処理し、3000~5000pgTEQ/gの初期濃度を検出下限界値(0.1pgTEQ/g)まで無害化することに成功した(例えば非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第3785556号公報
【0007】

【非特許文献1】“Elucidation of Degradation Mechanism of Dioxins during Mechanochemical Treatment”Y.Nomura,S.Nakai,M.Hosomi,Environ.Sci.Technol.,39,3799-3804(2005)
【非特許文献2】”Highly effective degradation of polychlorinated biphenyls in soilmediated by a Ca/Rh bicatalyticsystem,”Y.Mitoma,N.Egashira,C.Simion,Chemosphere,74,968-973(2009)
【非特許文献3】“Current Condition of Dioxins Emitted by Incineration and Degradation of Dioxins Using Metallic Calcium,”M.Takase,M.Kakeda,Y.Yoshino,Y.mitoma,Bull.Hiroshima Pref.Univ.19,69-81(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者が開発した遊星ボールミルを使用する方法は、ダイオキシン類で汚染された土壌を効率的に無害化することができるが、実機を想定すると装置コストが非常に高くなる。また上記のように、これまでに開発、提案されている他の汚染土壌の無害化方法も、エネルギー消費量、処理効率、処理速度、装置コスト、ランニングコスト等に課題を抱えており、さらなる改良、改善が求められている。
【0009】
本発明の目的は、温和な操作条件で少ないエネルギー消費量ながら処理効率に優れる有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法及び有機ハロゲン化合物無害化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明は、有機ハロゲン化合物を含有する固体と薬剤とを接触させ、前記薬剤により前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化する、メカノケミカル処理によらない有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法であって、前記薬剤が、少なくとも一部はナノサイズの金属カルシウムを水分調整機能を有し水素源として作用する水を吸着する酸化カルシウム中に分散させた金属分散体であり、前記金属カルシウムが電子供与体として作用することを特徴とする有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法である。
【0011】
明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記金属分散体は、固形状の金属カルシウム酸化カルシウムとの混合物を、固形状の金属カルシウムの少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得られることを特徴とする。
【0012】
た本明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記金属分散体は、ナノサイズの金属カルシウムの表面を前記酸化カルシウムがコーティングし、酸化カルシウムが、ナノサイズの金属カルシウムの大部分が酸素、二酸化炭素又は水と直接接触することを阻止することを特徴とする。
【0016】
また本発明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、さらに水素源であるアルコール及び/又は有機酸等を共存させ、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする。
【0017】
た本明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記有機ハロゲン化合物を含有する固体は、土壌、焼却灰、焼却飛灰、汚泥又はこれらの混合物であり、前記アルコール及び/又は有機酸等は、土壌、焼却灰、焼却飛灰、汚泥又はこれらの混合物に含まれているアルコール及び/又は有機酸等であることを特徴とする。
【0018】
た本明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記有機ハロゲン化合物を含有する固体に含まれる水分量が所定の値を越えるときは、前記有機ハロゲン化合物の無害化の処理に先立ち、該固体に水分調整剤を加え、該固体に含まれる水分量を所定の値以下とする水分調整を行うことを特徴とする。
【0020】
た本明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、前記有機ハロゲン化合物が、残留性有機汚染物質及び/又は揮発性有機化合物であることを特徴とする。
【0021】
た本明の有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、さらに前記有機ハロゲン化合物を無害化するときに発生する揮発性有機化合物の蒸気を吸着材に吸着させ、該吸着材と電子供与体である金属粒子とをメカノケミカル処理し、又は該吸着材とプロトン性溶媒に少なくとも一部は溶解し電子移動による還元力を有する金属とプロトン性溶媒とを混合し、揮発性有機化合物を無害化する工程を含むことを特徴とする。
また本発明は、有機ハロゲン化合物を含有する固体と接触させ前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化させる、少なくとも一部はナノサイズの金属カルシウムを水分調整機能を有し水素源として作用する水を吸着する酸化カルシウム中に分散させた金属分散体からなる有機ハロゲン化合物無害化剤である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法は、有機ハロゲン化合物を含有する固体とナノサイズの金カルシウムを酸化カルシウムに分散させた金属分散体とを接触させ有機ハロゲン化合物を還元し無害化する方法であり、温和な操作条件ながら高い無害化率を実現することができる。外部から積極的に加熱する必要もなくエネルギー消費量も少ない。また本発明に係る有機ハロゲン化合物無害化剤を使用することで温和な操作条件でかつ少ないエネルギー消費量で有機ハロゲン化合物を含有する固体を無害化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1で製造した金属カルシウムナノ分散体(1)の電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図2】実施例2の実験前後のGC-MSクロマトグラムであり、(a)は実験前、(b)は実験後である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法は、有機ハロゲン化合物を含有する固体と電子供与体である金属粒子とを接触させ前記有機ハロゲン化合物を無害化する方法であって、前記金属粒子の少なくとも一部はナノサイズの粒子であり、前記有機ハロゲン化合物を還元し無害化することを特徴とする。

【0025】
本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法の被処理物としては、ダイオキシン類、PCBなどPOPs及び/又はVOCに汚染された土壌、焼却灰、焼却飛灰、汚泥又はこれら混合物などが挙げられる。

【0026】
電子供与体である金属粒子は、有機ハロゲン化合物に電子、イオンを供与する物質である。具体的には、アルカリ金属、金属カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの第3族元素、鉄、亜鉛、及びこれら元素を含む合金が例示される。これらは単独で使用してもよく、混合して使用してもよく、金属カルシウムを好適に使用することができる。

【0027】
電子供与体である金属粒子は、少なくとも一部がナノサイズの粒子を使用する。このような金属粒子は、固形状の金属と水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材との混合物を、粉砕機で固形状の金属の少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得ることが好ましい。金属と水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材との混合割合は、重量比で1:2が好ましいがこの割合に限定されるものではなく、重量比で1:20~50、さらに金属の混合割合を少なくしてもよい。ここで使用可能な水吸脱着剤としては、酸化カルシウムが、多孔質無機材としては、セライト(Celiteは、セライトコーポレーションの登録商標)、シリカゲル、活性炭が例示される。セライトは、炭酸ナトリウムとともに焼成した珪藻土であり、水分を大量に保持することができる。

【0028】
このようにして得られる粉砕物は、ナノサイズの金属粒子を含む金属粒子が、水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材中に分散した金属分散体である。金属分散体において、ナノサイズの金属粒子の表面は水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材でコーティングされている。一般的に金属をナノサイズまで微細化すると、環境中では酸化し失活するが、金属分散体においては、ナノサイズの金属粒子の表面を覆う水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材が、該金属粒子の大部分が酸素、二酸化炭素又は水と直接接触することを阻止するので、ナノサイズの金属粒子は、大気中においても高い活性を維持することができる。実験の結果、セライト(登録商標)と共に粉砕した金属カルシウムは、電子源として90%以上の活性を有し、2ヶ月以上大気中で安定的に存在させることができた。同様に、酸化カルシウムと共に粉砕した金属カルシウムは、大気中常温下、1カ月以上も初期活性の80%以上を維持した。

【0029】
また水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材は、汚染土壌など被処理物に含まれる水分を吸着する水分調整剤として機能する。また水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材は、吸着した水を脱着させる。この水は水素源として作用する。

【0030】
次に、ダイオキシン類を含む土壌(以下汚染土壌と記す)を例にとり、これを、ナノサイズの金属粒子を含む金属粒子が水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材中に分散した前記金属分散体を用いて無害化する方法を説明する。

【0031】
汚染土壌に金属分散体を添加し、これらを必要に応じて攪拌混合し、汚染土壌とナノサイズの金属粒子とを接触させる。これにより有機ハロゲン化合物は、脱ハロゲン化、環還元反応等により還元され無害化される。これら操作は室温下で行うことが可能であり、外部から積極的に加熱しなくてもよい。金属分散体の汚染土壌に対する添加割合は、汚染土壌に含まれるダイオキシン類の量により異なるけれども、重量比で1/100程度の量とすることができる。この値は、従来の酸化カルシウムを用いたメカノケミカル法で使用する酸化カルシウムの量の1/5~1/200程度であり、非常に少ない。この結果、汚染土壌を処理した後の量が、処理前の汚染土壌の量と比較しほとんど増加しない。この点は、本発明の特徴の一つである。

【0032】
汚染土壌に含まれるダイオキシン類の無害化速度、無害化率(分解率)を高めるには、汚染土壌中のダイオキシン類とナノサイズの電子供与体である金属粒子との接触機会を高めることが重要である。このため汚染土壌と金属分散体とを攪拌混合することが好ましく、汚染土壌及び/又は金属分散体の表面を更新しながら汚染土壌と金属分散体とを攪拌混合することがより好ましい。このため粉砕機能を備えるミルは攪拌混合機として好ましい。攪拌混合は、汚染土壌中のダイオキシン類とナノサイズの電子供与体である金属粒子との接触機会を高めるために行う操作であるから、攪拌強度は小さくてもよい。このため上記攪拌混合には、遊星ボールミルに比較してミル内のエネルギー密度が小さいミルを使用して行うことができる。このようなミルとしてローラーミル、タワーミルが挙げられる。遊星ボールミルは、高いエネルギーを加えることが可能な一方で、所要動力が大きく、大型化も困難である。これに対してローラーミルは、石炭焚火力発電所の石炭の粉砕にも使用されていることからも分かるように、大型化の実績もあり、所要動力が小さい点に特徴があり(例えば化学工学便覧、改訂六版、846頁)、汚染土壌の処理を大規模に進めて行くには好ましいミルと言える。

【0033】
メカノケミカル処理においては、ダイオキシン類の無害化に必要なエネルギーをミルを通じて与える必要があるが、本方法において、攪拌混合操作は、汚染土壌と金属分散体との接触機会を高めることができればよく、ダイオキシン類の無害化に必要なエネルギーを攪拌混合操作を通じて与える必要はない。本方法では、ナノサイズに微細化した電子供与体である金属を使用することで低エネルギー投入条件下でも、ダイオキシン類を無害化させることができる。一般的にナノサイズに微細化した電子供与体である金属は、高い活性、反応性が得られる一方で、その高い活性、反応性により大気中の酸素、二酸化炭素又は水と反応し失活する。このためナノサイズに微細化した電子供与体である金属をそのまま使用してもダイオキシン類を無害化できない。しかしここでは、前記金属分散体を使用することで、ナノサイズに微細化した電子供与体である金属の活性を高い状態に維持し、低エネルギー投入条件下でも、ダイオキシン類を無害化させることができる。

【0034】
また攪拌混合操作も以下のように行うことができる。汚染土壌に含まれるダイオキシン類は土壌表面に存在することが多いことから、汚染土壌中のダイオキシン類の含有量が少ないときは、ダイオキシン類の殆どは汚染土壌表面に存在しているものと推察される。このような場合は、一度、汚染土壌と金属分散体とを均一に混合した後は、攪拌を停止してもよい。このとき初期のみ200℃以下の温度で加熱することで、汚染土壌中のダイオキシン類の無害化を一気に進め、その後は、加熱、攪拌を停止して残りのダイオキシン類を徐々に無害化させてもよい。同様に、初期に反応促進剤を添加し、汚染土壌中のダイオキシン類の無害化を一気に進め、その後は、反応促進剤を添加することなく、攪拌を停止して残りのダイオキシン類を徐々に無害化させてもよい。初期にダイオキシン類の無害化を一気に進めておくことで、以降、ダイオキシン類に対する金属分散体の濃度が相対的に高くなるので効率的に汚染土壌中のダイオキシン類を無害化することができる。加熱も初期しか行わないので、エネルギー消費量も非常に少なく、コスト的にも有利である。一方、汚染土壌中のダイオキシン類の含有量が多いときは、汚染土壌内部にもダイオキシン類が存在すると推察されることから、汚染土壌及び/又は金属分散体の表面を更新するような攪拌混合を行うことが好ましい。

【0035】
ダイオキシン類を含む汚染土壌とナノサイズの電子供与体である金属粒子とを接触させ無害化させる他の態様を説明する。前記方法では、ナノサイズの電子供与体である金属粒子は、予め調整した金属分散体として与えたが、ここでは、汚染土壌を無害化させる過程でナノサイズの電子供与体である金属粒子を与える。

【0036】
汚染土壌と固形状の電子供与体である金属とを、少なくとも固形状の金属の一部がナノサイズとなるように粉砕機を用いて粉砕する。この方法は、汚染土壌の無害化処理を行う過程で、同時に電子供与体である金属をナノサイズにし、ダイオキシン類を還元し無害化させるものである。このとき同時にセライト(登録商標)などの多孔質無機材及び/又は酸化カルシウムなどの水吸脱着剤を添加してこれらを同時に粉砕することが好ましい。多孔質無機材及び/又は水吸脱着剤が汚染土壌中に含まれる場合は、別途、多孔質無機材及び/又は水吸脱着剤を添加しなくてもよい。これにより前記方法と同様に、ナノサイズの電子供与体である金属粒子の活性を失わせることなく維持することができる。ここでも粉砕機は、固形状の金属の少なくとも一部がナノサイズとなるように粉砕できればよく、遊星ボールミルを使用する必要はない。この方法においても外部から積極的に加熱しなくてもよい。

【0037】
汚染土壌、汚泥は水分を含有していることが多く、焼却灰、焼却飛灰なども放置されることで空気中の水分を吸水し、又は飛散防止のために散水を行った結果、水分を含有する場合も多い。水分を含む汚染土壌等に含まれるダイオキシン類等を上記方法で無害化するとき、水分濃度が5重量%程度以下であれば、そのまま上記方法で無害化させればよい。汚染土壌等に含まれる水、有機酸、アミン類、金属ヒドリド、及び/又はアルコール性ヒドロキシル基などは、上記無害化方法の処理過程で水素源として機能するので、これを除去しなくてもよい。

【0038】
しかしながら汚染土壌等に多くの水分を含む場合は、次の要領で無害化することが好ましい。汚染土壌等に多くの水分を含む場合、上記方法で無害化することは問題ないが、水分量が多い場合、電子供与体である金属粒子の添加量が増加する。このため上記無害化方法において、同時に酸化カルシウムを添加し処理することが好ましい。酸化カルシウムは、水分を吸収する水分調整剤として機能すると共に分解助剤として機能し、さらに酸化カルシウムが水と反応して水酸化カルシウムとなる際に発する熱は、無害化率を高めるように作用する。ここで添加する酸化カルシウムは、上記水吸脱着剤として添加する酸化カルシウムを利用することができるので、多くの水分を含む汚染土壌等を無害化させるとき、汚染土壌と酸化カルシウムと固形状の電子供与体である金属とを、少なくとも固形状の金属の一部がナノサイズとなるように粉砕機で粉砕しながら無害化させることもできる。

【0039】
さらに水分量が多く、水分濃度が40重量%を越えるような汚染土壌などを無害化させるときは、2ステップ方式で行なうことが好ましい。2ステップ方式とは、第1ステップとして、必要に応じてろ過操作等で脱水された後の水分を含む汚染土壌などに酸化カルシウムを添加して水分調整を行なった後、第2ステップとしてナノサイズの電子供与源である金属を加え、前記方法で無害化させる方式である。第1ステップでの水分調整も、ローラーミルを用いかつ外部から強制的に加熱することなく行うことが可能で、第2ステップでの無害化処理も、第1ステップの水分調整処理に引続き、ローラーミル内にナノサイズの電子供与体である金属を含む金属分散体を加え行えばよい。酸化カルシウムを添加し水分調整を行う工程と、ナノサイズの電子供与体である金属を加え、無害化する工程を分離することで、電子供与体である金属の添加量をより低減させることができる。

【0040】
次にダイオキシン類などの他にVOCが同時に含まれている汚染土壌などの無害化要領について説明する。汚染土壌の無害化は、水分量に応じて上記の無害化方法を適宜選択して行う。土壌にダイオキシン類の他にVOCが含まれていても、基本的にダイオキシン類を含む汚染土壌を無害化させるときの要領と変わるところはない。しかしながら無害化処理の工程で、VOCが一部蒸気となってミルから排出される可能性があるので、ミルから排出される排ガスを排ガス処理装置に導き、VOCをここでトラップする。活性炭など吸着材からなる排ガス処理装置を使用することで、VOCを簡単にトラップすることができる。VOCを吸着した吸着材は、別途、電子供与体である金属を添加しメカノケミカル処理するか、又は該吸着材とプロトン性溶媒に少なくとも一部は溶解し電子移動による還元力を有する金属とプロトン性溶媒とを混合し、VOCを無害化すればよい。このような処理方法は、特開2008-207044号公報、特許第3785556号公報に詳細に記載されている。なお、VOCを含まないダイオキシン類などを含有する汚染土壌などを無害化するときも、必要に応じて排出される排ガスを排ガス処理装置に導き、同じように排ガスを浄化してもよいことは当然である。

【0041】
上記実施形態で示すように本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法は、外部から強制的に加熱する必要がなく、また攪拌混合に使用する装置も、ローラーミルなど消費動力の少ないミルを使用することができるので、ダイオキシン類で汚染された土壌等を少ないエネルギーで無害化することができる。消費動力が少なく、温和な操作条件ながら、電子供与体である金属にナノサイズの金属を使用することで高い無害化率、早い無害化速度を達成することができる。また、汎用装置を使用して本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法を実施することができるので、大型化、大容量化も容易であり、実機での処理コストも安価となる。また本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法は、無害化処理に先立ち汚染土壌等を洗浄する必要がない。これも本無害化方法の特徴の一つと言える。

【0042】
さらにナノサイズの電子供与体である金属を水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材に分散させることで、取扱いが容易となる。本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法では、ローラーミル等による摩擦力、せん断力による発熱、還元力を有する金属の水和熱さらには、酸化カルシウムの水和熱により温度は上昇するけれども、外部から強制的に加熱して熱を加える方法と異なり、ミル内の温度を200℃以下にすることが可能であり、350~500℃で夾雑物と塩素分などが反応してダイオキシン類が生成する可能性を排除することができる。

【0043】
また本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する固体の無害化方法において、電子供与体である金属に金属カルシウムを使用する場合、カルシウムは、汚染土壌のセメント材料化などの障害とならない。仮に高塩素含有物の処理を行った場合、処理土壌の洗浄により塩化カルシウムを除去した後、キルンによるセメント材料化とすればよい。一般的に汚染土壌の処理後、処理土壌の処分場確保を難しくなっている現状においては、本方法は好ましい方法と言える。さらにVOC処理後の土壌は、一般的にオイルで汚染されているが、上記キルン処理においては、助燃剤入りの土壌と位置付けることができる。このとき、塩素はカルシウム添加によりダイオキシンとして発生し難い燃焼環境にある。
【実施例】
【0044】
実施例1
金属カルシウムナノ分散体(1)の製造
金属カルシウム1gとセライト5gとを遊星ボールミルを用いて、窒素ガス雰囲気下、400rpmで60分間、常温粉砕処理を行った。ミル粉砕物を窒素ガス雰囲気下、分級し、2mm篩下の粉砕物を得た。これを金属カルシウムナノ分散体(1)とした。電子顕微鏡写真(SEM)を図1に示した。電子顕微鏡写真から少なくとも金属カルシウムの一部は、50~100nmであることを確認した。得られた金属カルシウムナノ分散体(1)中の金属カルシウム含有量は、水上置換法により水との接触時に発生する水素量から算出した。実験の結果、金属カルシウムナノ分散体(1)0.5gに対して、水素ガス発生量は5~15mlであり、この結果から、金属カルシウムナノ分散体(1)1g当りの金属カルシウム含有量は、0.018~0.054gであった。
【実施例】
【0045】
無害化実験
初期濃度2850mg/kgのPCBを含有する汚染土壌1gに、上記金属カルシウムナノ分散体(1)1g(金属カルシウム含有量0.054g)を加え、ローラーミル形式の粉砕機を用いて、24時間常温で攪拌した。その後、塩酸を加えて反応を完全にクエンチし、有機物全量をジエチルテーテルで回収後に濃縮し、全量を公定法に従ってGC-ECD法で分析した。分析値は、34mg/kgであった。
【実施例】
【0046】
実施例2
実施例1と全く同一の条件で、無害化実験を行った。初期濃度2850mg/kgのPCBが120mg/kgとなった。このときのGC-MSクロマトグラムを図2に示した。図2(a)は、実験前の初期濃度2850mg/kgのPCBを含有する汚染土壌のGC-MSクロマトグラムであり、図2(b)は、実験後の120mg/kgのPCBを含有する汚染土壌のGC-MSクロマトグラムである。無害化実験後は、各成分の濃度が大幅に低下したことが分かる。さらに図中破線で示したように、無害化実験前後で、各成分の割合が大きく変化した。
【実施例】
【0047】
実施例3~実施例6
金属カルシウムナノ分散体(2)の製造
セライトに代え酸化カルシウムを用いて、金属カルシウムナノ分散体(1)と同一の方法で金属カルシウムナノ分散体(2)を製造した。得られた金属カルシウムナノ分散体(2)中の金属カルシウム含有量は、水上置換法により水との接触時に発生する水素量から算出した。実験の結果、金属カルシウムナノ分散体(2)1.0gに対して、水素ガス発生量は100mlであり、この結果から、金属カルシウムナノ分散体(2)1g当りの金属カルシウム含有量は、0.357gであった。
【実施例】
【0048】
無害化実験
表1に示すように2-chlorobiphenyl 1mmolを500μm篩下のまさ土10gに添加し、これを供試体した。各供試体は、水分含有量が異なり、実施例3の供試体は水分を全く含んでいない。実験は、実施例1と同様の要領で行った。実験結果を表1に示した。実験の結果、供試体中の水分が多いほど無害化は進んだ。但し、供試体中に全く水分を含まない場合であっても、2-chlorobiphenylは還元された。供試体中の水分が少ない場合、脱塩素化反応が進行し、供試体中の水分が多い場合、環還元反応が進行した。
【実施例】
【0049】
実施例7
実施例3~6と同様に2-chlorobiphenyl 1mmolを500μm篩下のまさ土10gに添加し、これを供試体した。このときのまさ土の水分量は、1.28重量%であった。金属カルシウムナノ分散体(2)1.0gと水分を10重量%含む活性炭1.0gを供試体に添加し、実施例1と同様の要領で実験を行った。実験の結果、2-chlorobiphenylは無害化され、2量体などが生成した。
【実施例】
【0050】
実施例8
実施例7の活性炭に代え、水分を3重量%含むシリカゲル1.0gを供試体に添加した実験を行った。実験の結果、環還元反応が進行し2-chlorobiphenylは無害化された。
【実施例】
【0051】
比較例1
金属カルシウムナノ分散体(2)に代え、ナノサイズの粒子を全く含まない金属カルシウムを用いて、実施例4と同一条件で無害化実験を行った。但し、金属カルシウムの添加量(仕込量)は、0.05gとした。実施例4に比較して無害化が進まなかった。結果を表1に示した。
【実施例】
【0052】
比較例2
金属カルシウムナノ分散体(2)に代え、金属カルシウムを全く含まずナノサイズの粒子を含む酸化カルシウムを用いて、実施例4と同一条件で無害化実験を行った。但し、酸化カルシウムの添加量(仕込量)は、0.95gとした。実施例4に比較して無害化が進まなかった。結果を表1に示した。
【実施例】
【0053】
【表1】
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【実施例】
【0054】
実施例9~17
以下のように、金属カルシウムナノ分散体を用いて、POPs汚染土壌の無害化処理を行った。市販の金属Ca(φ2.0-2.5mm,0.43-0.48m/g)とCaO(850℃、2時間乾燥)をCa/CaO=2/5の混合比とし、Ar雰囲気下、遊星ボールミル(Fritsch製:型式P-7)を用いて600rpmで1時間粉砕処理を行った。得られた粉砕混合物を走査型電子顕微鏡(JEOL製、6510ASEM-EDS)にて観察した。粉砕混合物中の金属Ca量は、水上置換法により水素ガス量から求めた。土壌の水分測定はJIS-Z7302-3に準じ、組成分析はJIS-M8853及びM8855によって行った。代表的な分解試験は次の通りである。ナノサイズに調製した金属Ca/CaO粉砕混合物とPOPs汚染土壌とを所定の混合比(汚染土壌に対する金属Caの混合比率=0.5~1.12wt%)で乳鉢式分解装置に加え、開放系常温下、所定時間攪拌混合を行った。処理後、溶剤を用いて全量を回収し、残存POPsの全量分析を行った。POPs分析は目的に応じてGC-ECD、GC/QMS、あるいはHRGC/HRMSにより行った。いずれも前処理は公定法に準拠した。また処理前後におけるPOPs全量の比較から分解効率(分解率)を求めた。
【実施例】
【0055】
粉砕混合物中の金属Ca量は、およそ2.8mmol/g-mixture(11.2wt%Ca/g-mixture)であった。電子顕微鏡観察から粒子径が50nm以下の凝集物であることが明らかとなり、大気中常温下、1カ月以上も初期活性の80%以上を維持した。次に粉砕混合物の脱塩素活性を検討した。例えば、1mmolの2-クロロビフェニル及び2.8mmol相当の金属Caを含む粉砕混合物を乳鉢式分解装置で24時間混合すると、ビフェニルが得られることを確認した。そこで、本法をPOPs汚染土壌の処理に応用した。
【実施例】
【0056】
上記ナノサイズに調製した金属Ca/CaO粉砕混合物(11.2wt%Ca/g-mixture)を用いて、大気中常温下、POPs汚染土壌を処理した。ナノサイズに調製した金属Ca/CaO粉砕混合物(11.2wt%Ca/g-mixture)とPOPs汚染土壌との割合は、1g:9gとした。処理条件及び結果を表2に示した。表2中、水分量は、金属Ca/CaO粉砕混合物を加えたPOPs汚染土壌に対する値である。表2に示したようにポリ塩化ジベンゾ-P-ジオキシン類(PCDDs)の分解は常温下であっても91.5%の高効率で進行した(実施例9)。さらに4.36wt%~9.61wt%の含水土壌中のポリ塩化ジベンゾフラン類(PCDFs)についても脱塩素反応が進行し、61.4%の分解率を維持した(実施例10~12)。PCDDs及びPCDFsのいずれにおいても多塩素体側で脱塩素反応による分解が促進される傾向が見られた。
【実施例】
【0057】
次に、10gの土壌中に1060μg~2850μgのPCBsを含む汚染土壌を同様に処理し、96.2~99.9%の分解率を達した(実施例13~15)。またコプラナーPCBsの各成分においても高い分解率を達成した(実施例16)。単に、円筒式回転装置で24時間攪拌するのみで61.3%の脱塩素化効率を達成した(実施例17)。参考までに常温下、酸化カルシウムのみを分解剤とした場合や未粉砕の金属Caを用いた脱塩素化反応は殆ど進行しないことも確認した。
【実施例】
【0058】
さらに、10wt%含水率土壌の全水分量は、使用した金属Ca量のおよそ10倍モル、また、CaOの3倍モル程度存在するにもかかわらず、ナノ粒子化した金属Caは高い脱塩素活性を維持した。
【実施例】
【0059】
【表2】
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【実施例】
【0060】
実施例18~24、比較例3
市販の金属Ca(φ2.0-2.5mm,0.43-0.48m/g)とCaO(825℃、2時間乾燥)をCa/CaO=1/5の混合比とし、Ar雰囲気下、遊星ボールミル(Fritsch製:型式P-7)を用いて600rpmで1時間粉砕処理を行った。得られた粉砕混合物を走査型電子顕微鏡(JEOL製、6510ASEM-EDS)にて観察した。粉砕混合物中の金属Ca量は、水上置換法により水素ガス量から求めた。土壌の水分測定はJIS-Z7302-3に準じ、組成分析はJIS-M8853及びM8855によって行った。粉砕混合物中の金属Ca量は、およそ2.8mmol/g-mixture(11.2wt%Ca/g-mixture)であった。電子顕微鏡観察から粒子径が50nm以下の凝集物であることが明らかとなり、大気中常温下、1カ月以上も初期活性の80%以上を維持した。
【実施例】
【0061】
上記ナノサイズに調製した金属Ca/CaO粉砕混合物(11.2wt%Ca/g-mixture)を用いて、大気中常温下、PCBs汚染土壌を処理した。ナノサイズに調製した金属Ca/CaO粉砕混合物(11.2wt%Ca/g-mixture)とPCBs汚染土壌との割合は、1g:9gとした。処理条件及び結果を表3に示した。表3中、水分量は、金属Ca/CaO粉砕混合物を加えたPCBs汚染土壌に対する値である。比較例3として、大気中常温下、酸化カルシウムのみを分解剤とした実験も行った。分析要領は、実施例9と同様である。ナノサイズに調製した金属Ca/CaO粉砕混合物を使用することで、常温下でも90%以上の高い分解率を達成した。攪拌混合操作も乳鉢式攪拌装置で1時間攪拌しただけで、後は10日放置しても97%の分解率を達成した(実施例23)。一方、分解剤に酸化カルシウムを使用した場合には、PCBsは全く分解されなかった。
【実施例】
【0062】
【表3】
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【実施例】
【0063】
実施例25~40
実施例18と同じ要領で製造したナノサイズに調製した金属Ca/CaO粉砕混合物(11.9wt%Ca/g-mixture、2.8mmol)を用いて、大気中常温下、PCBs、PCDDs、PCDFs汚染土壌を処理した。ナノサイズに調製した金属Ca/CaO粉砕混合物と汚染土壌との割合は、1g:9gとした。処理条件及び結果を表4~7に示した。表4~7中、水分量は、金属Ca/CaO粉砕混合物を加えたPCBs汚染土壌に対する値である。攪拌装置には、乳鉢式攪拌装置を使用し、常温下、24時間攪拌混合した。分析要領は、実施例9と同様である。ナノサイズに調製した金属Ca/CaO粉砕混合物を使用することで、常温下でも高い分解率を達成した。
【実施例】
【0064】
【表4】
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【実施例】
【0065】
【表5】
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【実施例】
【0066】
【表6】
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【実施例】
【0067】
【表7】
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図面
【図1】
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【図2】
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