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明細書 :汚染土壌処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5752387号 (P5752387)
公開番号 特開2012-081442 (P2012-081442A)
登録日 平成27年5月29日(2015.5.29)
発行日 平成27年7月22日(2015.7.22)
公開日 平成24年4月26日(2012.4.26)
発明の名称または考案の名称 汚染土壌処理方法
国際特許分類 B09C   1/02        (2006.01)
B09C   1/08        (2006.01)
A62D   3/33        (2007.01)
A62D   3/37        (2007.01)
A62D 101/43        (2007.01)
FI B09B 3/00 304K
A62D 3/33 ZAB
A62D 3/37
A62D 101:43
請求項の数または発明の数 5
全頁数 16
出願番号 特願2010-231354 (P2010-231354)
出願日 平成22年10月14日(2010.10.14)
審査請求日 平成25年9月4日(2013.9.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】507234438
【氏名又は名称】公立大学法人県立広島大学
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】三苫 好治
【氏名】崎田 省吾
【氏名】奥田 哲士
個別代理人の代理人 【識別番号】100128277、【弁理士】、【氏名又は名称】専徳院 博
審査官 【審査官】原 賢一
参考文献・文献 特開2010-082539(JP,A)
特開2004-141774(JP,A)
特開2004-255375(JP,A)
調査した分野 B09C 1/00-1/10
B09B 1/00-5/00
A62D 3/30-3/38,101/40-101/49
特許請求の範囲 【請求項1】
重金属、ヒ素、フッ素のいずれか1種以上で汚染された土壌と、重金属、ヒ素、フッ素のいずれか1種以上の不溶化剤として作用する少なくとも一部がナノサイズの金属粒子とを接触させ、前記重金属、ヒ素、フッ素のいずれか1種以上を不溶化させる汚染土壌処理方法であって、
前記金属粒子が金属カルシウムであり、
前記金属粒子は、固形状の金属と、
水分調整機能を有し水を吸脱着する水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材との混合物を、
固形状の金属の少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得られる金属粒子を水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材中に分散させた金属分散体として与えられることを特徴とする汚染土壌処理方法。
【請求項2】
前記金属分散体は、ナノサイズの金属粒子の表面を前記水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材がコーティングし、
水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材が、ナノサイズの金属粒子の大部分が酸素、二酸化炭素又は水と直接接触することを阻止することを特徴とする請求項に記載の汚染土壌処理方法。
【請求項3】
前記水吸脱着剤が酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚染土壌処理方法。
【請求項4】
前記重金属、ヒ素、フッ素のいずれか1種以上で汚染された土壌に含まれる水分量が所定の値を越えるときは、該土壌と前記金属粒子とを接触させるに先立ち、該土壌に水分調整剤を加え、該土壌に含まれる水分量を所定の値以下とする水分調整を行うことを特徴とする請求項1からのいずれか1に記載の汚染土壌処理方法。
【請求項5】
前記重金属が、鉛、カドミウム、クロムのうちいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1からのいずれか1に記載の汚染土壌処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウム、鉛などの重金属、ヒ素、フッ素に汚染された土壌から重金属、ヒ素、フッ素が溶出しないように重金属、ヒ素、フッ素を不溶化処理する汚染土壌処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カドミウム、鉛などの重金属で汚染された重金属汚染土壌の処理方法として、従来から多くの方法が提案されている。代表的な処理方法としては、重金属汚染土壌に不溶化剤を添加し、重金属を水に不溶の塩とし重金属の溶出を防ぐ不溶化法、重金属汚染土壌をセメント原料として利用するセメント原料化法、重金属汚染土壌にEDTAなどのキレート性の洗浄剤を添加し土壌表面に付着した重金属を洗浄除去する洗浄法、重金属汚染土壌を1000~1100℃に加熱し、重金属を揮発させ除去する加熱処理法、さらには重金属汚染土壌に電気を流しジュール熱を発生させることで土壌を高温溶融し、その後冷却し重金属を固化体中に閉じ込める方法がある。
【0003】
これまでにそれぞれの処理方法に関連する多くの発明がなされている。例えば不溶化剤として、特定の酸化マグネシウムと粉末キレート剤とを含有してなる不溶化剤、さらにはコロイダルシリカと特定のキレート剤とを含有してなる重金属不溶化剤が開発されている(例えば特許文献1、2参照)。また、重金属汚染土壌の安価な洗浄剤として、有機性廃棄物に由来する金属結合性のアミノ酸及び/又はペプチドを含む重金属溶出剤が開発されている(例えば特許文献3参照)。また、掘削除去後の重金属汚染土壌は、セメント原料として利用されるケースが多いが、重金属汚染土壌をセメント原料として使用する場合、亜鉛、カドミウムなどの重金属分がセメント中に増加するとセメントの品質を悪化させるとし、その解決方法が提案されている(例えば特許文献4参照)。さらには複数の重金属を含有する複合重金属汚染土壌を無害化する方法として、複合重金属汚染土壌に塩化マグネシウムを混合し、700℃以上に加熱することで複合重金属汚染土壌を無害化する方法が提案されている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2009-114291号公報
【特許文献2】特開2009-249466号公報
【特許文献3】特開2010-172880号公報
【特許文献4】特開2000-288527号公報
【特許文献5】特開2007-29813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでに提案されている重金属汚染土壌の浄化方法、処理方法は、それぞれに長所、短所がありさらなる改善が期待される。例えば、不溶化剤を使用して重金属を不溶化させる不溶化法は、比較的簡便に実施できるが、不溶化剤にキレート剤を用いる場合には、処理後の土壌にキレート剤が含まれるので、処理後の土壌を有効利用し難い。また、土壌に重金属のみならずダイオキシン類、PCBなど残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)、さらに揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)が含まれている複合汚染土壌の場合、汚染物を一度に浄化できることが好ましいが、これまでこのような浄化技術は開発されていない。
【0006】
本発明の目的は、土壌に含まれる鉛などの重金属、ヒ素、フッ素を不溶化させることで土壌を浄化し、処理後の土壌をそのまま土壌として有効利用することができる汚染土壌処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、金属粒子をナノサイズまで微細化したナノ金属粒子を、触媒、還元剤などとして利用することに関し鋭意研究中であり、これまでナノ金属粒子を使用しPOPs、VOCを無害化させることに成功し、すでに特許出願を行っている(特願2010-006074)。本発明は、特定の金属粒子をナノサイズまで微細化したナノ金属粒子が、重金属、ヒ素、フッ素の不溶化剤として機能することを見出し、発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、重金属、ヒ素、フッ素のいずれか1種以上で汚染された土壌と、重金属、ヒ素、フッ素のいずれか1種以上の不溶化剤として作用する少なくとも一部がナノサイズの金属粒子とを接触させ、前記重金属、ヒ素、フッ素のいずれか1種以上を不溶化させる汚染土壌処理方法であって、前記金属粒子が金属カルシウムであり、前記金属粒子は、固形状の金属と、水分調整機能を有し水を吸脱着する水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材との混合物を、固形状の金属の少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得られる金属粒子を水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材中に分散させた金属分散体として与えられることを特徴とする汚染土壌処理方法である。
【0009】
また本発明は、前記汚染土壌処理方法において、前記金属分散体は、ナノサイズの金属粒子の表面を前記水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材がコーティングし、水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材が、ナノサイズの金属粒子の大部分が酸素、二酸化炭素又は水と直接接触することを阻止することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記汚染土壌処理方法において、前記水吸脱着剤が酸化カルシウムであることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記汚染土壌処理方法において、前記重金属、ヒ素、フッ素のいずれか1種以上で汚染された土壌に含まれる水分量が所定の値を越えるときは、該土壌と前記金属粒子とを接触させるに先立ち、該土壌に水分調整剤を加え、該土壌に含まれる水分量を所定の値以下とする水分調整を行うことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記汚染土壌処理方法において、前記重金属が、鉛、カドミウム、クロムのうちいずれか1種以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る汚染土壌処理方法を用いることで、土壌に含まれる鉛などの重金属、ヒ素、フッ素のいずれか1種以上を不溶化させることが可能で、処理後の土壌もそのまま土壌として有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1~3及び比較例1、2の溶出量の測定結果である。
【図2】本発明の実施例4~6及び比較例3、4の溶出量の測定結果である。
【図3】本発明の実施例7~9及び比較例5、6の溶出量の測定結果である。
【図4】本発明の参考例1~5の溶出量の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の汚染土壌処理方法は、重金属、ヒ素、フッ素で汚染された土壌と重金属、ヒ素、フッ素の不溶化剤として作用する少なくとも一部がナノサイズの金属粒子とを接触させ、前記重金属、ヒ素、フッ素を不溶化させることを特徴とする。

【0016】
本発明において土壌を汚染する汚染物質は、重金属である鉛、カドミウム、クロム、さらにヒ素、フッ素であり、重金属、ヒ素、フッ素で汚染された土壌は、前記重金属、ヒ素、フッ素を1種以上含有する土壌である。よって1種類の重金属、ヒ素、フッ素のみを含有する土壌のみならず、複数種類の重金属、ヒ素、フッ素を同時に含有する土壌を含む。また重金属、ヒ素、フッ素で汚染された土壌に、同時にダイオキシン類、PCBなどPOPs及び/又はVOCが含まれていても、本発明に係る汚染土壌処理方法を用いることで、重金属、ヒ素、フッ素の1種以上を不溶化させると共にPOPs及び/又はVOCを無害化する同時処理が行える。なお、土壌には、焼却灰、焼却飛灰、汚泥又はこれら混合物なども含まれる。

【0017】
金属粒子は、重金属、ヒ素、フッ素の不溶化剤として作用する物質であり、具体的には、アルカリ金属、金属カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの第3族元素、鉄及びこれら元素を含む合金が例示される。これらは単独で使用してもよく、混合して使用してもよく、金属カルシウムを好適に使用することができる。

【0018】
この金属粒子は、少なくとも一部がナノサイズの粒子を使用する。もちろん全ての金属粒子がナノサイズであってもよいことは言うまでもない。このような金属粒子は、固体分散剤に分散させた金属分散体の形態で使用することが好ましい。

【0019】
固体分散剤は、金属粒子を安定的に保護する役目を担う。固体分散剤としては、酸化カルシウム、セライト(Celiteは、セライトコーポレーションの登録商標)、活性炭、シリカゲル、ゼオライトなど水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材が好ましい。セライトは、炭酸ナトリウムとともに焼成した珪藻土であり、水分を大量に保持することができる。なお、水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材は、吸着した水を脱着させ、反応形態により、脱着した水は水素源として作用する。

【0020】
少なくとも一部がナノサイズの金属粒子が固体分散剤に分散した金属分散体は、固形状の金属と水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材との混合物を、粉砕機で固形状の金属の少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕することで得ることができる。粉砕を行う際の金属と水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材との混合割合は、特定の混合割合に限定されるものではなく、例えば重量比で1:1~1:50とすることができる。金属カルシウムと酸化カルシウムとを遊星ボールミルで粉砕した場合、金属カルシウムと酸化カルシウムとを重量比で1:5とすればそれ以上金属カルシウムの割合を増やしても、粉砕した酸化カルシウムに含まれるナノサイズの金属カルシウムの量は殆ど変わりなかった。

【0021】
このようにして得られる金属分散体は、ナノサイズの金属粒子を含む金属粒子が、水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材中に分散した金属分散体であり、ナノサイズの金属粒子の表面は水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材でコーティングされている。一般的に金属をナノサイズまで微細化すると、環境中では酸化し失活するが、金属分散体においては、ナノサイズの金属粒子の表面を覆う水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材が、該金属粒子の大部分が酸素、二酸化炭素又は水と直接接触することを阻止するので、ナノサイズの金属粒子は、大気中においても高い活性を維持することができる。実験の結果、セライト(登録商標)と共に粉砕した金属カルシウムは、電子源として90%以上の活性を有し、2ヶ月以上大気中で安定的に存在させることができた。

【0022】
また金属分散体の水吸脱着剤及び/又は多孔質無機材は、重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌に含まれる水分を吸着する水分調整剤として機能する。

【0023】
次に、金属分散体として、金属粒子に金属カルシウム、固体分散剤に酸化カルシウムを用いた金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOを例にとり、この金属分散体を用い、重金属、ヒ素、フッ素で汚染された土壌に含まれる重金属、ヒ素、フッ素を不溶化処理する方法を説明する。

【0024】
重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌に金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOを添加し、これらを必要に応じて攪拌混合し、重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌とナノサイズの金属カルシウムとを接触させる。これにより少なくとも一部がナノサイズの金属カルシウムが重金属、ヒ素、フッ素の不溶化剤として作用し、重金属、ヒ素、フッ素は不溶化される。これら操作は室温下で行うことが可能であり、外部から加熱する必要もない。金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOの汚染土壌に対する添加割合は、重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌中の重金属、ヒ素、フッ素濃度により異なるけれども、重量比で1/8~1/100程度の量とすることができる。金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOの添加量が少ないので、処理前の重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌の量と比較しほとんど増加しない。

【0025】
重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌に含まれる重金属、ヒ素、フッ素の不溶化には、重金属、ヒ素、フッ素と少なくとも一部がナノサイズの金属カルシウムとを接触させる必要があるが、後述の実施例で示すように一度、重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌と金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOとを混合すれば、その後は攪拌を行う必要もない。よって攪拌、混合操作に伴うランニングコストも非常に少なく、特に大量の重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌を処理する場合には好適である。もちろん攪拌を断続的あるいは継続的に行ってもよいことは言うまでもない。

【0026】
このように処理された重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌は、溶出量基準値を十分に満足する。重金属、ヒ素、フッ素が不溶化されるメカニズムの詳細は不明であるが、(1)金属カルシウムの還元作用(2)金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOの凝集作用(3)金属カルシウムと重金属、ヒ素、フッ素との化学的結合作用の3つの作用が複合的に寄与し重金属、ヒ素、フッ素を不溶化させているものと推察される。

【0027】
一般的にナノサイズに微細化した金属は、高い活性、反応性が得られる一方で、その高い活性、反応性により大気中の酸素、二酸化炭素又は水と反応し失活する。このためナノサイズに微細化した金属をそのまま使用しても重金属、ヒ素、フッ素の不溶化剤として機能し難い。しかしここでは、前記金属分散体を使用することで、ナノサイズに微細化した金属の活性を高い状態に維持し、重金属、ヒ素、フッ素を不溶化させることができる。

【0028】
次に、重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌と重金属、ヒ素、フッ素の不溶化剤として作用する少なくとも一部がナノサイズの金属粒子とを接触させ、前記重金属、ヒ素、フッ素を不溶化させる他の態様を説明する。前記方法では、少なくとも一部がナノサイズの金属粒子は、予め調整した金属分散体として与えられたが、ここでは、重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌を処理する過程で、少なくとも一部がナノサイズの金属粒子を与える。

【0029】
具体的には、重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌と固形状の金属とを固形状の金属の少なくとも一部がナノサイズとなるように粉砕機を用いて粉砕する。この方法は、重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌に含まれる重金属、ヒ素、フッ素を不溶化処理する過程で、同時に重金属、ヒ素、フッ素の不溶化剤として作用する金属粒子の少なくとも一部をナノサイズにし、少なくとも一部がナノサイズの金属粒子と重金属、ヒ素、フッ素とを接触させ、重金属、ヒ素、フッ素を不溶化させる。このとき同時にセライト(登録商標)などの多孔質無機材及び/又は酸化カルシウムなどの水吸脱着剤を添加してこれらを同時に粉砕することが好ましい。多孔質無機材及び/又は水吸脱着剤が汚染土壌中に含まれる場合は、別途、多孔質無機材及び/又は水吸脱着剤を添加しなくてもよい。これにより前記方法と同様に、ナノサイズの金属粒子の活性を失わせることなく維持することができる。ここでも粉砕機は、固形状の金属の少なくとも一部がナノサイズとなるように粉砕できればよく、遊星ボールミルを使用する必要はない。

【0030】
重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌は水分を含有していることが多く、焼却灰、焼却飛灰なども放置されることで空気中の水分を吸水し、又は飛散防止のために散水を行った結果、水分を含有する場合も多い。水分を含む重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌に含まれる重金属、ヒ素、フッ素を上記方法で処理するとき、水分濃度が10重量%程度以下であれば、そのまま上記方法で処理すればよい。しかしながら重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌に多くの水分を含む場合は、次の要領で処理することが好ましい。

【0031】
重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌等に多くの水分を含む場合、上記方法で処理することは問題ないが、水分量が多い場合、金属粒子の添加量が増加する。このため上記処理方法において、同時に酸化カルシウムを添加し処理することが好ましい。さらに水分量が多く、水分濃度が40重量%を越えるような重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌を処理するときは、2ステップ方式で行なうことが好ましい。2ステップ方式とは、第1ステップとして、必要に応じてフィルタープレス等で脱水された後の水分を含む重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌に酸化カルシウムを添加して水分調整を行なった後、第2ステップとして不溶化剤として作用する金属を加え、前記方法で処理させる方式である。酸化カルシウムを添加し水分調整を行う工程と、金属を加え重金属、ヒ素、フッ素を不溶化させる工程とを分離することで、不溶化剤として作用する金属の添加量をより低減させることができる。

【0032】
重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌に同時にダイオキシン類、PCBなどPOPsが含まれている場合であっても基本的に上記方法で処理し、重金属、ヒ素、フッ素を不溶化させ同時にPOPsを無害化することができ、さらに重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌にPOPsの他、VOCが含まれていても基本的に上記方法でこれらを同時に処理することができる。この場合、POPsと少なくとも一部がナノサイズの金属粒子とをより接触させるために、重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌と金属分散体とを撹拌することが好ましい。またVOCが含まれている場合には、VOC蒸気をトラップする手段が必要となる。土壌中のダイオキシン類、PCBなどのPOPs、VOCの無害化処理に関しては、本件出願人らが特許出願を行っている特願2010-006074の「発明を実施するための形態」の欄に詳細に記載されている。

【0033】
重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌に含まれる重金属、ヒ素、フッ素を不溶化する本発明に係る汚染土壌処理方法において、不溶化剤として作用する少なくとも一部がナノサイズの金属粒子に金属カルシウムを使用する場合、カルシウムは固化作用を有するので処理した土壌を埋立用の土壌としてそのまま使用することができる。またカルシウムはアルカリ剤であるから土壌改良剤としても利用可能であり、さらにコンクリートを添加すれば、路盤材としても利用することができる。
【実施例】
【0034】
金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOの調製
金属カルシウム(Ca)と、825℃で2時間焼成し水分を除去した酸化カルシウム(CaO)とを重量比で1:5とし、これを遊星ボールミルでアルゴンガス雰囲気下、600rpmで60分間、常温粉砕処理を行った。ミル粉砕物をアルゴンガス雰囲気下、分級し、2mm篩下の粉砕物を得た。これを金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOとした。得られた金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOを電子顕微鏡写真(SEM)で確認したところ、電子顕微鏡写真において比較的大きく見える粒子も、実際は、数十から百nm程度の大きさのナノ粒子が凝集したものであり、金属カルシウムは十分にナノサイズまで粉砕されていた。得られた金属カルシウムナノ分散体Ca/CaO中の金属カルシウム含有量を、水上置換法により水との接触時に発生する水素量から算出した結果、金属カルシウムナノ分散体1gに対して2.8mmolであった。
【実施例】
【0035】
供試土壌の調製
供試土壌の調製は次の要領で行った。なお、供試土壌中の重金属、ヒ素、フッ素含有量は、添加した重金属、ヒ素、フッ素が全て溶出したと仮定したとき、単位質量当たり各重金属、ヒ素、フッ素の土壌汚染対策法における溶出量基準値の約100倍量が検出される含有量とした。
(1)土壌:マサ土を使用した。マサ土は、大きな礫分を取り除いた他は特に粒度調整することなくそのまま使用した。
(2)重金属、ヒ素、フッ素濃度:鉛(Pd)、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、フッ素(F)の各1000ml/L溶液(関東化学株式会社製)を用い、固液比1:10での最大溶出濃度が鉛(Pd)=1mg/L、ヒ素(As)=1mg/L、カドミウム(Cd)=1mg/L、総クロム(Cr)=5mg/L、フッ素(F)=8mg/Lとなるように調整した。
(3)調整方法:所定濃度に調整した標準液をホーローバット上で土壌と混合し、純水を十分に添加後、乾燥機で所定の含水率まで乾燥させた。
(4)土壌含水率:含水率1%、5%、10%及び重金属、ヒ素、フッ素を添加していない4種類とした。
【実施例】
【0036】
実施例1
アルゴンガスで置換したグローブボックス内でマグネット乳鉢を用い、金属カルシウムナノ分散体Ca/CaO1.0gを、室温下、回転数100rpmですり潰すように数分間攪拌した。その後、すり潰した金属カルシウムナノ分散体Ca/CaO1.0gと含水率1%の供試土壌9.0gとを密閉容器に入れ、これを手で数分間振って攪拌し、環境省告示第18号に基づき溶出試験を行った。溶出液中の鉛、ヒ素、カドミウム、クロムの濃度測定は、ICP発光分析により、フッ素は、イオンクロマトグラフにより行った。
【実施例】
【0037】
実施例2
土壌と金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOとの混合にマグネット乳鉢を用い、室温下、回転数100rpmですり潰すように約4時間連続攪拌した以外は、実施例1と同様である。
【実施例】
【0038】
実施例3
実施例2と同様に、土壌と金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOとの混合にマグネット乳鉢を用い、室温下、回転数100rpmですり潰すように約4時間連続攪拌した。溶出試験を行うときpHを7に調整して行い、実施例1の方法で分析した。なお、pH調整を行わない場合の溶出液のpHは、約12であった(実施例1、2)。
【実施例】
【0039】
比較例1
含水率1%の供試土壌を何ら処理することなくそのまま溶出試験を行い、実施例1と同様の方法で溶出液中の濃度の測定を行った。
【実施例】
【0040】
比較例2
金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOを全く添加することなく、含水率1%の供試土壌9.0gのみをマグネット乳鉢を用い、室温下、回転数100rpmですり潰すように約4時間連続攪拌し、溶出試験、分析を行った。
【実施例】
【0041】
結果を表1及び図1に示した。各重金属、ヒ素、フッ素の溶出量基準値は、鉛(Pd)=0.01mg/L、ヒ素(As)=0.01mg/L、カドミウム(Cd)=0.01mg/L、六価クロム(Cr)=0.05mg/L、フッ素(F)=0.8mg/Lである。クロムの溶出量基準値は、六価クロムで規定されているが、実施例、比較例、参考例に示すクロムは、総クロムを測定している。
【実施例】
【0042】
【表1】
JP0005752387B2_000002t.gif
【実施例】
【0043】
同様の実験を、含水率が5%の供試土壌(実施例4~6、比較例3、4)及び10%の供試土壌(実施例7~9、比較例5、6)について行った。さらに重金属、ヒ素、フッ素を添加していないマサ土を供試土壌とした実験(参考例1~5)も合わせて行った。
【実施例】
【0044】
結果を表2~4、図2~4に示した。
【実施例】
【0045】
【表2】
JP0005752387B2_000003t.gif
【実施例】
【0046】
【表3】
JP0005752387B2_000004t.gif
【実施例】
【0047】
【表4】
JP0005752387B2_000005t.gif
【実施例】
【0048】
以上の実験から、以下の結果が得られた。
(1)金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOを添加した場合、一部のケースにおいてわずかに溶出量基準値を超えたが、全体的には鉛、ヒ素、カドミウム、六価クロム、フッ素の5種類全ての物質において溶出量基準値を下回った。一方、金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOを添加しなかった場合、殆ど全てのケースで溶出量基準値を大幅に上回った。
(2)金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOを添加した場合、溶出量は、供試土壌の含水率、金属カルシウムナノ分散体Ca/CaOと重金属、ヒ素、フッ素汚染土壌との攪拌時間、及び溶出試験時のpHに影響されなかった。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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