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明細書 :黒鉛からの炭素同位体の分離方法および黒鉛からの炭素同位体の分離装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-031833 (P2013-031833A)
公開日 平成25年2月14日(2013.2.14)
発明の名称または考案の名称 黒鉛からの炭素同位体の分離方法および黒鉛からの炭素同位体の分離装置
国際特許分類 B01D  59/26        (2006.01)
G21F   9/02        (2006.01)
FI B01D 59/26
G21F 9/02 511A
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2012-134662 (P2012-134662)
出願日 平成24年6月14日(2012.6.14)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年2月4日 独立行政法人科学技術振興機構発行の「原子力システム研究開発事業及び原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ 平成22年度 成果報告会 資料集」に発表
優先権出願番号 2011141883
優先日 平成23年6月27日(2011.6.27)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】金子 克美
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100077621、【弁理士】、【氏名又は名称】綿貫 隆夫
【識別番号】100146075、【弁理士】、【氏名又は名称】岡村 隆志
【識別番号】100092819、【弁理士】、【氏名又は名称】堀米 和春
【識別番号】100141634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 善博
【識別番号】100141461、【弁理士】、【氏名又は名称】傳田 正彦
審査請求 未請求
要約 【課題】黒鉛から、炭素同位体を効率よく分離できる黒鉛からの炭素同位体の分離方法を提供する。
【解決手段】12Cと13Cもしくは14Cとを含む黒鉛から炭素同位体を分離する炭素同位体の分離方法において、黒鉛を燃焼させて二酸化炭素同位体混合ガスを生成させる工程と、生成した二酸化炭素同位体混合ガスに水素を反応させてメタン同位体混合ガスを生成させる工程と、生成したメタン同位体混合ガスを、吸着剤が充填されたチャンバーに通流し、量子分子篩効果により、12CH4よりも分子量の大きな13CH4もしくは14CH412CH4よりも多く吸着剤に吸着させ、吸着させたメタン同位体混合ガスの吸着剤からの脱離と吸着剤への吸着を繰り返して13CH4もしくは14CH4を濃縮する工程と、濃縮した13CH4もしくは14CH413Cもしくは14Cと水素とに分離する工程とを含む。
【選択図】図9
特許請求の範囲 【請求項1】
12Cと13Cもしくは14Cとを含む黒鉛から炭素同位体を分離する炭素同位体の分離方法に
おいて、
黒鉛を燃焼させて二酸化炭素同位体混合ガスを生成させる工程と、
生成した二酸化炭素同位体混合ガスに水素を反応させてメタン同位体混合ガスを生成さ
せる工程と、
生成したメタン同位体混合ガスを、吸着剤が充填されたチャンバーに通流し、量子分子
篩効果により、12CH4よりも分子量の大きな13CH4もしくは14CH412CH4よりも多く吸着剤
に吸着させ、吸着させたメタン同位体混合ガスの吸着剤からの脱離と吸着剤への吸着を繰
り返して13CH4もしくは14CH4を濃縮する工程と、
濃縮した13CH4もしくは14CH413Cもしくは14Cと水素とに分離する工程とを含むことを
特徴とする黒鉛からの炭素同位体の分離方法。
【請求項2】
前記濃縮工程において、前記チャンバー内の温度を前記量子分子篩効果が生じる低温状
態に設定することにより吸着剤にメタン同位体混合ガスを吸着させ、前記チャンバー内を
前記量子分子篩効果が生じる温度よりも高い温度にすることにより、吸着剤に吸着したメ
タン同位体混合ガスを吸着剤から脱離させることを特徴とする請求項1記載の黒鉛からの
炭素同位体の分離方法。
【請求項3】
前記濃縮工程における吸着剤へのメタン同位体混合ガスの吸着を、液体窒素の沸点であ
る-196℃で行うことを特徴とする請求項1または2記載の黒鉛からの炭素同位体の分離
方法。
【請求項4】
前記濃縮工程において、メタン同位体混合ガスを複数のチャンバーに通流させ、吸着剤
に吸着したメタン同位体混合ガスの脱離と吸着を繰り返して濃縮して回収すると共に、吸
着されなかったメタン同位体混合ガスをガス溜めに捕集し、この捕集したメタン同位体混
合ガスを前記チャンバーに通流させてメタン同位体混合ガスの再分離を行うことを特徴と
する請求項1~3いずれか1項記載の黒鉛からの炭素同位体の分離方法。
【請求項5】
前記ガス溜めに、最終的に12CH4のみを捕集することを特徴とする請求項4記載の黒鉛
からの炭素同位体の分離方法。
【請求項6】
前記濃縮工程において、2つのチャンバーに交互に、他のチャンバーで吸着、脱離され
たメタン同位体混合ガスを導入して、吸着と脱離を繰り返して濃縮を行うことを特徴とす
る請求項1~5いずれか1項記載の黒鉛からの炭素同位体の分離方法。
【請求項7】
前記吸着剤に1nmよりも小さな細孔を有する吸着剤を用いることを特徴とする請求項1
~6いずれか1項記載の黒鉛からの炭素同位体の分離方法。
【請求項8】
前記メタン同位体混合ガスを生成させる工程で、未反応であった二酸化炭素同位体混合
ガスをドライアイスとして捕集し、ガス化して再度メタン同位体混合ガスを生成させる反
応を行わせることを特徴とする請求項1~7いずれか1項記載の黒鉛からの炭素同位体の
分離方法。
【請求項9】
12Cと13Cもしくは14Cとを含む黒鉛から炭素同位体を分離する炭素同位体の分離装置に
おいて、
黒鉛を燃焼させて二酸化炭素同位体混合ガスを生成させる黒鉛燃焼炉と、
該黒鉛燃焼炉で生成した二酸化炭素同位体混合ガスと水素が導入され、二酸化炭素同位
体混合ガスをメタン化してメタン同位体混合ガスを生成させるメタン化反応炉と、
吸着剤が充填されたチャンバーを有し、前記生成したメタン同位体混合ガスが通流され
、量子分子篩効果により、12CH4よりも分子量の大きな13CH4もしくは14CH412CH4よりも
多く吸着剤に吸着させ、該吸着剤に吸着したメタン同位体混合ガスの吸着剤からの脱離と
吸着剤への吸着を繰り返して13CH4もしくは14CH4を濃縮する吸着・濃縮部と、
該濃縮した13CH4もしくは14CH413Cもしくは14Cと水素とに分離する分離部とを具備す
ることを特徴とする黒鉛からの炭素同位体の分離装置。
【請求項10】
前記吸着・濃縮部は、メタン同位体混合ガスが順次通流される複数のチャンバーを有し
、該複数のチャンバーにて吸着剤に吸着したメタン同位体混合ガスの脱離と吸着を繰り返
して濃縮して回収することを特徴とする請求項9記載の黒鉛からの炭素同位体の分離装置

【請求項11】
前記複数のチャンバーにて吸着されなかったメタン同位体混合ガスを捕集し、この捕集
したメタン同位体混合ガスを前記チャンバーに通流させてメタン同位体混合ガスの再分離
を行うためのガス溜めを有することを特徴とする請求項10記載の黒鉛からの炭素同位体
の分離装置。
【請求項12】
前記メタン化反応炉で未反応であった二酸化炭素同位体混合ガスをドライアイスとして
捕集し、ガス化して再度メタン化反応炉に送るための二酸化炭素捕集トラップを有するこ
とを特徴とする請求項9~11いずれか1項記載の黒鉛からの炭素同位体の分離装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、黒鉛からの炭素同位体の分離方法および黒鉛からの炭素同位体の分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素同位体の1つである13Cは、医療分野や原子力産業の分野において用途が拡大している。特に医療分野においては、マーカー試薬として核磁気共鳴法等による診断に用いられている。
また14Cは、黒鉛減速型原子炉で反射材として用いられる黒鉛中に生成し、放射性を有することから、その処理方法が検討されている。黒鉛減速型の原子炉では、その廃止措置に伴って、数千トンの黒鉛が廃棄物として発生する。この黒鉛に含まれる放射性炭素の量は1~2%程度である。ここで、1000トンの黒鉛中2%の炭素が放射化されたとすると、20トンは放射性廃棄物として処理する必要があるが、残りの980トンの黒鉛は一般廃棄物として処理できる。よって、炭素同位体を分離せずに処理した場合は1000トンの放射性廃棄物が発生するが、完全に分離に成功すると20トンですむ。日本国内でも2基の原子炉からの放射性炭素の廃棄が大きな課題であるが、イギリスなどでは放射性炭素が多量にでる老朽化した原子炉が多く、それらの処理が大きな懸案課題である。
14Cの分離に対する重要性は各国共通の認識と理解されるが、この分野の研究論文は少ない。14C の分離や濃縮には、安定同位体であり、医療分野での用途がある13C の分離方法を応用することが有効である。
なお、特許文献1~4には、使用済み黒鉛の処理・処分方法が示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平3-179299号公報
【特許文献2】特開平6-94896号公報
【特許文献3】特開平6-182158号公報
【特許文献4】特開2003-307594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される方法は、放射化された黒鉛を、水素添加または燃焼によりガス化し、そのガスを同位体分離により14Cを分離するというものである。なお、この同位体分離方法は、ガス拡散法、遠心分離法、蒸留法、化学交換法などで行うとあるが、その具体的な方法は示されていない。
特許文献2には、放射性グラファイト廃棄物を焼却炉で焼却して、生成したCOを吸収塔によりガス状態で回収するとあるが、同位体ガスを分離することに関しては記載されていない。
特許文献3に示される方法は、レーザー照射により炭素同位体を分離するものであり、14Cの分離への応用も可能であるが、多量の使用済み黒鉛材料からの14Cの分離への応用については検討を要する。
特許文献4に示される方法は、黒鉛を燃焼させて、生成したCOガスを水酸化ナトリウム水溶液中に導入して回収するというものであるが、同位体ガスを分離することに関しては記載されていない。
本発明は、黒鉛から、炭素同位体を効率よく分離できる黒鉛からの炭素同位体の分離方法および黒鉛からの炭素同位体の分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る黒鉛からの炭素同位体の分離方法は、12Cと13Cもしくは14Cとを含む黒鉛から炭素同位体を分離する炭素同位体の分離方法において、黒鉛を燃焼させて二酸化炭素同位体混合ガスを生成させる工程と、生成した二酸化炭素同位体混合ガスに水素を反応させてメタン同位体混合ガスを生成させる工程と、生成したメタン同位体混合ガスを、吸着剤が充填されたチャンバーに通流し、量子分子篩効果により、12CH4よりも分子量の大きな13CH4もしくは14CH412CH4よりも多く吸着剤に吸着させ、吸着させたメタン同位体混合ガスの吸着剤からの脱離と吸着剤への吸着を繰り返して13CH4もしくは14CH4を濃縮する工程と、濃縮した13CH4もしくは14CH413Cもしくは14Cと水素とに分離する工程とを含むことを特徴とする。
【0006】
前記濃縮工程において、前記チャンバー内の温度を前記量子分子篩効果が生じる低温状態に設定することにより吸着剤にメタン同位体混合ガスを吸着させ、前記チャンバー内を前記量子分子篩効果が生じる温度よりも高い温度にすることにより、吸着剤に吸着したメタン同位体混合ガスを吸着剤から脱離させることを特徴とする。
このように、温度の調節のみでメタン同位体混合ガスの吸着、脱離(濃縮)を効率よく行える。
【0007】
前記濃縮工程における吸着剤へのメタン同位体混合ガスの吸着を、液体窒素の沸点である-196℃で行うことができる。
また、前記濃縮工程において、メタン同位体混合ガスを複数のチャンバーに通流させ、吸着剤に吸着したメタン同位体混合ガスの脱離と吸着を繰り返して濃縮して回収すると共に、吸着されなかったメタン同位体混合ガスをガス溜めに捕集し、この捕集したメタン同位体混合ガスを前記チャンバーに通流させてメタン同位体混合ガスの再分離を行うことを特徴とする。
この場合に前記ガス溜めに、最終的に12CH4のみを捕集することで、炭素同位体を完全に分離することができる。
【0008】
また、前記濃縮工程において、2つのチャンバーに交互に、他のチャンバーで吸着、脱離されたメタン同位体混合ガスを導入して、吸着と脱離を繰り返して濃縮を行うことができる。
前記吸着剤に1nmよりも小さな細孔、好適には0.7nm程度の細孔を有する吸着剤を用いることができる。
また、前記メタン同位体混合ガスを生成させる工程で、未反応であった二酸化炭素同位体混合ガスをドライアイスとして捕集し、ガス化して再度メタン同位体混合ガスを生成させる反応を行わせるようにして、全ての黒鉛の分離を行うようにするとよい。
【0009】
また、本発明に係る黒鉛からの同位体炭素の分離装置は、12Cと13Cもしくは14Cとを含む黒鉛から炭素同位体を分離する炭素同位体の分離装置において、黒鉛を燃焼させて二酸化炭素同位体混合ガスを生成させる黒鉛燃焼炉と、該黒鉛燃焼炉で生成した二酸化炭素同位体混合ガスと水素が導入され、二酸化炭素同位体混合ガスをメタン化してメタン同位体混合ガスを生成させるメタン化反応炉と、吸着剤が充填されたチャンバーを有し、前記生成したメタン同位体混合ガスが通流され、量子分子篩効果により、12CH4よりも分子量の大きな13CH4もしくは14CH412CH4よりも多く吸着剤に吸着させ、該吸着剤に吸着したメタン同位体混合ガスの吸着剤からの脱離と吸着剤への吸着を繰り返して13CH4もしくは14CH4を濃縮する吸着・濃縮部と、該濃縮した13CH4もしくは14CH413Cもしくは14Cと水素とに分離する分離部とを具備することを特徴とする。
【0010】
前記吸着・濃縮部は、メタン同位体混合ガスが順次通流される複数のチャンバーを有し、該複数のチャンバーにて吸着剤に吸着したメタン同位体混合ガスの脱離と吸着を繰り返して濃縮して回収することを特徴とする。
また、前記複数のチャンバーにて吸着されなかったメタン同位体混合ガスを捕集し、この捕集したメタン同位体混合ガスを前記チャンバーに通流させてメタン同位体混合ガスの再分離を行うためのガス溜めを有することを特徴とする。
また、前記メタン化反応炉で未反応であった二酸化炭素同位体混合ガスをドライアイスとして捕集し、ガス化して再度メタン化反応炉に送るための二酸化炭素捕集トラップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、黒鉛から、炭素同位体を効率よく分離できる黒鉛からの炭素同位体の分離方法および黒鉛からの炭素同位体の分離装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】吸着剤ACF-2(活性炭素繊維)の外表面積に対する加熱処理温度依存性を示すグラフである。
【図2】ACF-2の全表面積に対する加熱処理温度依存性を示すグラフである。
【図3】ACF-2のミクロ孔容量の加熱温度依存性を示すグラフである。
【図4】ACF-2の平均細孔径の加熱温度依存性を示すグラフである。
【図5】細孔径が0.7 nmであるACF-1(活性炭素繊維)のメタンの沸点(112 K)における12CH4および12CD4の吸着等温線である。
【図6】吸着装置の概要を示す説明図である。
【図7】ナノ細孔体(吸着剤)を用いた12CH414CH4の混合ガスの吸着原理を示す説明図である。
【図8】吸着されたガスの開放を示す説明図である。
【図9】本実施の形態における黒鉛から同位体炭素を分離する工程の概略的な説明図である。
【図10】12Cと13Cもしくは14Cの炭素同位体を含む黒鉛から、13Cもしくは14Cを分離する処理装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
14Cをなるべく未来の人類と地球に被害を及ぼさずに処理するためには、14Cを分離濃縮して小体積化して隔離することが必要である。この廃棄物量の削減のための有効な手段のひとつは、14Cを含む黒鉛部分の燃焼・CO2変換後に14CO212CO2の分離を行い、14CO2のみを固形化処理することである。しかし、14CO212CO2の分離は非常に困難である。

【0014】
本実施の形態における分離法は全く新しい原理を応用しようと言うものである。最近、軽分子の量子性に基づく不確定性がナノ(nm)細孔中では重要で、軽い同位体分子の吸着量が10%以上も異なることが明らかになった。本実施の形態ではこの分子の量子性に基づいた不確定性を利用し、炭素同位体を分離する。この同位体分離効果は量子分子篩効果と言われ、水素と重水素では液体窒素の沸点(77 K)では、ナノ細孔のサイズを選ぶと、10% 以上の貯蔵性の違いが現れることが明らかになっている。

【0015】
本実施の形態ではこの量子分子篩効果を12CH4(分子量=16)と、13CH4(分子量=17)および14CH4(分子量=18)とに適用し、12Cと、13Cもしくは 14Cとを効率良く分離するものである。
量子作用による分子の有効サイズはドブロイ波長で推定されるが、より低温にすればするほど量子効果による12CH4と、13CH4もしくは14CH4とのサイズ差は大きくなり、分離性も向上する。すなわち、分子量の大きな13CH4もしくは14CH4は分子量の小さな12CH4よりも量子効果が小さいために分子サイズが小さく、かつ相互作用も強いために12CH4よりも多く細孔中に吸着される(量子分子篩効果)。
触媒反応を利用すればCO2からCH4には容易に変換できるので、軽くかつ安全な分子であるCH4として分離する。また、同位体分離後のメタンは触媒反応で容易に水素とカーボンに分離できるので、クリーンエネルギーのH2を分離しながら13Cもしくは14Cのみを固体化分離できる。

【0016】
12CH4-12CD4分離用ナノ細孔体の探索と構造解析≫
炭素同位体のメタン混合ガスの分離に先だって、実験的検討として、分子量の差が4である水素同位体のメタン混合ガス(12CH4-12CD4)の分離に用いることのできる最適ナノ細孔体の候補絞込みを行った。
(1) 目的
ドブロイ波長の違いおよび分子サイズの評価から、12CH4-12CD4分離に適すると見られる活性炭素繊維(ACF)の細孔構造ならびに細孔壁構造解析、あるいは細孔入り口制御などの表面修飾することを目的とする。

【0017】
(2) 試験方法
表面修飾を行った活性炭素繊維は、ピッチ系活性炭素繊維で細孔径の異なる2種類の試料を用いた(以後ACF-1およびACF-2と表記する)。ACF-1およびACF-2は、Arガスの流通下(200 ml/min)において、1123、1223、1473、1573、1673 Kで、1時間および2時間または4時間の加熱処理を行った。また、細孔構造の昇温温度に対する影響についても検討した。
上記の試料について、1 mPa、423 Kにおいて真空加熱前処理を行い、細孔に吸着している不純物ガスを除去した後、自動N2吸着測定装置(Autosorb-1、カンタクローム)を用いて、77 KにおけるN2の吸着等温線を求め、それらを元に細孔構造解析を行った。具体的には、外表面積、全表面積、ミクロ孔容量、平均細孔径を評価し、加熱処理による細孔構造の変化について検討した。

【0018】
(3) 試験結果及び考察
図1は、ACF-2の外表面積に対する加熱処理温度依存性を示す。図2は、ACF-2の全表面積に対する加熱処理温度依存性を示す。処理時間は1時間及び2時間あるいは4時間である。昇温速度は10 K/minである。ACF-2は全表面積に対する外表面積の割合が小さく、ほとんどが細孔による表面積による寄与であることがわかる。加熱温度が1573 Kまでは、全表面積に大きな変化はみられなかった。しかしながら、1673 K において急激に全表面積が減少した。図3および図4は、ACF-2のミクロ孔容量及び平均細孔径の加熱温度依存性を示す。全表面積と同様に、1673 Kにおいて急激にミクロ孔容量が減少した。全表面積及びミクロ孔容量の減少は、高い収率で同位体分離を行うにあたり、極力抑える必要がある。従って、加熱処理によるACF-2の細孔構造制御は1123-1573 Kが適切であるといえる。また、図4より、加熱処理により0.01 nmオーダーで平均細孔径を制御できることがわかる。量子分子篩効果によるメタン同位体の分離には、わずかな細孔入り口のサイズの違いが影響する。そのため、ここで実施した表面修飾法は、メタン同位体分離のための最適なナノ細孔体の探索に有用であることがわかった。

【0019】
≪平衡吸着法による12CH4-12CD4系の量子分子篩分離効果検討≫
(1) 目的
次に、12CH4-12CD4分離用の平衡吸着実験を立ち上げ、メタンの沸点程度から室温側での12CH412CD4の単成分の吸着実験を行い、メタン系での量子分子篩効果に見込みあるナノ構造の方向性を把握した。

【0020】
(2) 試験方法
ナノ細孔体は活性炭素繊維(ACF-1)を用いた。これらを1 mPa、423 Kにおいて真空加熱前処理を行った後、自作の高分解能N2吸着測定装置を用いて、112 Kにおける12CH412CD4の単成分の吸着等温線を平衡吸着法により求めた。

【0021】
(3) 試験結果及び考察
図5は、細孔径が0.7 nmであるACF-1のメタンの沸点(112 K)における12CH4および12CD4の吸着等温線を示す。12CD412CH4よりもわずかに吸着量が大きく、量子篩効果を示唆する結果が得られた。H2-D2系では量子篩効果が顕著であるため、約10%程度の吸着量の差として現れることが知られている。 12CH4-12CD4系では、H2-D2系に比べると質量比が小さいため量子篩効果は顕著でないが、1%程度の吸着量差は認められた。本試験はメタン沸点程度の温度での測定であるが、さらに低温下での測定により、より顕著な吸着量差が得られると期待される。
上記のように、活性炭素繊維はArガス雰囲気下において加熱処理することにより0.01 nmのオーダーで平均細孔径を制御することが可能である。細孔径が0.7 nm以下のナノ細孔体を調製し、平衡吸着実験を行うことが12CH412CD4の分離能の向上のためには有効である。

【0022】
次に、炭素同位体のメタン混合ガス(12CH413CH4との混合ガス)の量子分子篩分離効果の検討を行った。
図6は吸着装置の概要を示す説明図である。
10は初期ガス溜めであり、圧力計11を備えている。12は分離用セルであり、ナノ細孔体(吸着剤:ACF‐3)が収容され、また予め液体窒素により-196℃(77K)に冷却されている。分離用セル12は配管13によりバルブ14を介して初期ガス溜め10に通じている。16は分析ガス溜めである。分析ガス溜め16は分析計(四重極型質量分析器)17を備えている。分析ガス溜め16は配管13を通じて分離用セル12に通じている。

【0023】
初期ガス溜め10に任意の圧力P0の同位体メタン混合ガスを入れる。分離用セル12および分析ガス溜め16は予め真空引きしておく。
この状態でバルブ14を開け、差圧を利用して同位体メタン混合ガスを分離用セル12および分析ガス溜め16に送り込んだ。分析ガス溜め16に溜まった移動相成分を分析計17を用いてガス成分のモル分率を算出し、導入したガスの初期のモル分率と比較した。

【0024】
表1にその結果を示す。
表1
JP2013031833A_000003t.gif なお、ガス2は、それぞれ12CD4および13CH4であり、またACF‐3は、細孔径がほぼ0.7nmの活性炭素繊維である。

【0025】
表1に示されるように、初期の混合ガスの比率に対して、移動相成分の混合ガスの比率が、12CH4に対して、12CD4の場合4.1%減少し、13CH4の場合1.9%減少している。すなわち、吸着剤で、12CH4に対して、12CD4の場合4.1%の割合で多く吸着され、13CH4の場合1.9%の割合で多く吸着されていることを示している。なお、吸着剤で吸着されたガス成分を脱離させてその割合を計測した結果も、上記と相補的な分離結果が得られている。

【0026】
表2は、図6の装置を用いて計測した、種々の混合ガスに対する、種々の吸着剤の選択吸収性を示す表である。
表2
JP2013031833A_000004t.gif

【0027】
なお、ガス2は、それぞれ12CD4および13CH4であり、またACF‐2は、細孔径がほぼ1.1nmの活性炭素繊維である。
MSCは、細孔径がほぼ0.3nmの多孔性カーボンである。
また、Zeolite‐4Aは、細孔径がほぼ0.4nmのものである。
表2に示されるように、混合ガス種、吸着剤の種類によって吸着率に差がある。
ACF‐3は、細孔径が0.7nm程度であり、メタンの分子の大きさが0.4nm程度なので、良好な量子分子篩効果によって、分子量の大きな12CD413CH4の吸着割合が多くなっている。
細孔径がほぼ1.1nmと大きい吸着剤ACF‐2は、メタンの分子に対して細孔径が大きすぎ、逆に分子量の小さな12CH4の吸着割合が多くなっている。
細孔径がほぼ0.3nmと、メタンの分子の大きさよりも小さな吸着剤MSCも、あまり良好な量子分子篩効果が得られていない。
細孔径がほぼ0.4nmと、メタンの分子の大きさと同じくらいの吸着剤Zelite‐4A も、吸着性にバラつきがある。なお、Zeliteもすべてのものが使用できないというわけではなく、種類によっては10%程度の良好な量子分子篩効果を示すものも存在する。
前記したように、熱処理によって、細孔径の大きさを調整し、分離ガス種に合わせた吸着剤を選択するようにするとよい。

【0028】
次に、図7は、ナノ細孔体(吸着剤)を用いた12CH414CH4の混合ガスの吸着原理を示す説明図である。14CH4分子は温度111Kにおいて12CH4分子よりも分子サイズが約0.002nm程度小さく、12CH4分子よりも多く細孔中に吸着される。
図8に示すように、混合ガスの選択的吸着後、ナノ細孔体の温度を上昇させれば、吸着されたガスが解放され、14CH4が濃縮された混合ガスが得られる。このナノ細孔体でのガスの吸着、解放を繰り返すことによって、12CH414CH4とを完全に分離することが可能となる。

【0029】
図9は、本実施の形態における黒鉛から同位体炭素を分離する工程の概略的な説明図である。
すなわち、まず、黒鉛(使用済み黒鉛反射材)を燃焼炉に収容し、酸素を供給して燃焼させ(温度約850℃)、12CO214CO2(および12CO、14CO)を生成させる(工程A)。
この12CO214CO2(および12CO、14CO)をメタン化反応炉中に導入し、水素を供給し、ニッケルを触媒としてメタン化させ(温度約350℃)、12CH414CH4を生成させる(工程B)。
次に、この12CH414CH4の混合ガスを、ナノ細孔体(吸着剤)が充填され、温度を77Kに調整された吸着剤充填チャンバーに導入し、吸着剤に混合ガスを吸着させる(工程C)。前記のように、量子分子篩効果により、吸着された混合ガス中の14CH4の割合が、原混合ガス中の14CH4の割合よりも多く(数%程度多く)吸着される。

【0030】
吸着剤充填チャンバーの温度を上昇させることによって吸着された混合ガスが解放される。この吸着剤での混合ガスの吸着と解放とを複数回繰り返す濃縮操作を行い、14CH4のみを気体として回収する(工程D)。12CH4のみも気体として回収される。12CH4は燃料等として利用できる。工程Dについては後に詳しく説明する。
回収した14CH4を炭素化生成炉に導入し、パラジウムを触媒として分解反応を行い、固体の14Cと気体のH2とに分離する(工程E)。固体の14Cはコンクリートで固めるなどすることによって安全に処理できる。気体のH2は工程Bで再利用する。あるいは大気中に放出してもよい。
なお、12Cと13Cの分離も同様の工程で行える。

【0031】
次に、図10に、12Cと13Cもしくは14Cの炭素同位体を含む黒鉛から、13Cもしくは14Cを分離する処理装置20の模式図を示す。
図10において、F1は黒鉛燃焼炉であり、黒鉛燃焼用チャンバーC1を有する。
F2はメタン化反応炉であり、ニッケル触媒充填チャンバーC2を有する。F3は炭素化生成炉であり、パラジウム触媒充填チャンバーC3を有する。また、符合22で示される部位はメタン同位体ガス吸着・濃縮部である。
また、G1は酸素充填ボンベ、G2は水素充填ボンベ、G3はメタン同位体ガス貯蔵用ボンベである。V1~V24はバルブである。CTは二酸化炭素捕集トラップ、GC1およびGC2はガス溜め、AC1およびAC2は吸着剤充填チャンバーである。また、P1、P2、P3、P4は吸引ポンプ、MSは質量分析計である。
上記各部は、以下に示す順序で、ガスが流通するように配管で接続されている。

【0032】
処理装置20を用いて、12Cと13Cもしくは14Cの炭素同位体を含む黒鉛から、13Cもしくは14Cを分離する工程について説明する(以下では13Cを分離するものとして説明する)。
1.黒鉛燃焼用チャンバーC1内に予め所要量の処理すべき黒鉛を収納しておく。また、吸着剤充填チャンバーAC1、AC2内にも予め所要量の吸着剤(ナノ細孔体:上記のACF‐3等)を充填しておく。
2.バルブV1~V8およびV13、V14を開け、吸引ポンプP1により吸引して、系内を真空排気する。
3.真空排気が終了したらバルブV13を閉じる。
黒鉛燃焼炉F1内を850℃、メタン化反応炉F2内を350℃に保持する。また、二酸化炭素捕集トラップCT内を-79℃以下、吸着剤充填チャンバーAC1およびAC2を液体窒素にて-196℃に冷却する。

【0033】
4.バルブV1を通じて、酸素充填ボンベG1から黒鉛燃焼用チャンバーC1内に酸素を供給し、黒鉛を燃焼して二酸化炭素同位体混合ガスを生成させる。
反応式:C(黒鉛)+O2→CO2
生成した二酸化炭素同位体混合ガスはメタン化反応炉F2に送り込まれ、水素充填ボンベG2からバルブV2を介して送り込まれる水素と、ニッケル触媒のもと反応して、メタン同位体混合ガスが生成する。反応式:CO2+4H2→CH4+2H2O
未反応の二酸化炭素同位体混合ガスはドライアイスとして二酸化炭素捕集トラップCTに捕集される。メタン同位体混合ガスは気体のまま二酸化炭素捕集トラップCTを通過する。

【0034】
5.メタン同位体混合ガスは、吸引ポンプP1によって吸引されていることから、バルブV3、V4を通じて吸着剤充填チャンバーAC1内に送り込まれる。吸着剤充填チャンバーAC1内は、-196℃の低温に冷却されていて、前記したように、メタン同位体混合ガス中の13CH4が、量子効果により分子量の小さな12CH4よりも小さなサイズの分子として振る舞い、吸着剤に選択的に12CH4よりも数wt%多く吸着される(量子分子篩効果)。未吸着のメタン同位体混合ガスは、バルブV5、V6、V8、ポンプP1、V14を通じてガス溜めGC1に捕集される。メタン同位体混合ガスの成分は質量分析計MSで常時モニターされる。

【0035】
6.次いで、バルブV3~V5およびV8を閉じ、バルブV9~V12を開ける。この段階で、吸着剤充填チャンバーAC1の温度を-150℃程度にまで上昇させる。この温度上昇は液体窒素による冷却を止めるだけで行える。もちろんヒータによって加温してもよい。一方吸着剤充填チャンバーAC1の温度は-196℃の低温に維持する。次いでバルブV5を開ける。吸着剤充填チャンバーAC1内の温度が-150℃程度にまで上昇することによって、吸着剤に吸着されているメタン同位体混合ガスは脱離(解放)される。ポンプP1が作動していることにより、解放されたメタン同位体混合ガスはバルブV5、V6、V10を通じて吸着剤充填チャンバーAC2内に導入され、吸着剤充填チャンバーAC2内の吸着剤に吸着される。この場合も、量子分子篩効果により、13CH412CH4よりも数wt%多くの割合で吸着される。吸着剤充填チャンバーAC1で吸着されたメタン同位体混合ガス(13CH4が多くの割合で吸着されている)が脱離され、吸着剤充填チャンバーAC2内で再度13CH4が多くの割合で吸着されることにより、13CH4が吸着剤中に濃縮される。未吸着のメタン同位体混合ガスは、バルブV11、V9、ポンプP1、バルブV14を通じてガス溜めGC1に捕集される。

【0036】
7.次いで、バルブV9~V11を閉じ、V4、V5、V8を開ける。この段階で、吸着剤充填チャンバーAC2の温度を-150℃程度にまで上昇させる。この温度上昇は液体窒素による冷却を止めるだけで行える。一方吸着剤充填チャンバーAC1は、-196℃の温度になるように冷却する。次いでバルブV11を開ける。吸着剤充填チャンバーAC2内の温度が-150℃程度まで上昇することによって、吸着剤に吸着されているメタン同位体混合ガスは脱離(解放)される。ポンプP1が作動していることにより、解放されたメタン同位体混合ガスはバルブV11、V12、V4を通じて吸着剤充填チャンバーAC1内に導入され、吸着剤充填チャンバーAC1内の吸着剤に吸着される。この場合も、量子分子篩効果により、13CH412CH4よりも数wt%多くの割合で吸着される。吸着剤充填チャンバーAC2で吸着されたメタン同位体混合ガス(13CH4がさらに多くの割合で吸着されている)が脱離され、吸着剤充填チャンバーAC1内で再度13CH4がさらに多くの割合で吸着されることにより、13CH4が吸着剤中にさらに濃縮される。未吸着のメタン同位体混合ガスは、バルブV5、V6、V8、ポンプP1、バルブV14を通じてガス溜めGC1に捕集される。

【0037】
8.上記工程6および7を、質量数の小さいメタン同位体ガス成分(12CH4)が質量分析計MSによって検出されなくなるまで繰り返す。これによって吸着剤に吸着されたガスは13CH4のみとなる。なお、濃縮の程度にもよるが、質量数の小さいメタン同位体ガス成分(12CH4)が若干存在する段階で濃縮を停止してもよいことはもちろんである。上記のように、温度の調節のみでメタン同位体混合ガスの吸着・分離(濃縮)が効率よく行える。
工程6においては、混合ガスの流れは、AC1(脱離)→AC2(吸着)→P1→GC1となり、工程7においては、AC2(脱離)→AC1(吸着)→P1→GC1となる。すなわち、AC1とAC2は直列に接続され、交互に脱離と吸着を繰り返す。このように2つのチャンバーを交互に用いることによって、小型化ができる。なお、3つ以上のチャンバーを直列に接続して用いてもよいが、装置が大型化する。
なお、メタン同位体混合ガスの濃縮は圧力スイング法でも行えるが、上記のような温度変化による濃縮の方が脱着効率(速度)が高い。

【0038】
9.次いで、バルブV8およびV9を閉じ、バルブ18あるいはバルブV19とバルブV23を開け、バルブV24、V22、V20を閉じ、また、最後に吸着操作を行った吸着剤充填チャンバーAC1あるいはAC2の温度を上昇させると共に、ポンプP3を作動させることによって、吸着剤から脱離された13CH4をバルブV23を介して同位体メタン貯蔵用ボンベG3に捕集する。

【0039】
10.次に、バルブV18およびV19を閉じ、また、炭素化生成炉F3の温度を550℃に保持する。バルブV20、V22、V24を開け、吸引ポンプp2を作動させることによって、同位体メタン貯蔵用ボンベG3に捕集した13CH4をパラジウム触媒充填チャンバーC3内に導入する。これにより、13CH4は、13Cと、H2とに分解される。反応式:13CH413C(固体)+2H2

【0040】
11.未反応の13CH4は、ガス溜めGC2に捕集し、再度パラジウム触媒充填チャンバーC3内に導入して分解する。
12.10および11の工程を残留メタンガスがすべて炭素(固体)に変換するまで繰り返す。最終的に、ガス溜めGC2にはH2のみが捕集される。このH2はバルブV21を開けて大気に開放することができる。もちろん、H2は他に有効に利用してもよい。例えば、メタン化反応炉F2のメタン化用の水素ガスとして再利用することもできる。
13.また、工程4において二酸化炭素捕集トラップCTにてドライアイスとして捕集した未反応の二酸化炭素同位体混合ガスは、バルブV16およびV17を開け、吸引ポンプp4を作動させて再度ニッケル触媒充填チャンバーC2に流通することで完全にメタン化させるようにする。

【0041】
14.また、ガス溜めGC1にて捕集したメタン同位体混合ガスは、バルブV18、V19を閉じ、吸着剤充填チャンバーAC1、AC2を-196℃の温度になるように冷却し、バルブV14を閉じ、V15を開けることで吸着剤充填チャンバーAC1内に導入し、上記と同様にしてメタン同位体混合ガスを吸着剤充填チャンバーAC1内の吸着剤に吸着させる。次いで上記と同様にして工程6と7を繰り返し、13CH4を吸着剤中に濃縮する。このようにして、質量数の大きいメタン13CH4をすべて回収し、13C(固体)として回収する。
なお、分離されて最終的に残った12CH4は、ガス溜めGC1あるいはチャンバーAC1、AC2中に残留することになるが、バルブV13を開けて回収すればよい。この12CH4は適宜燃料等として有効利用することができる。

【0042】
15.パラジウム触媒充填チャンバーC3中に生じた13Cは、回収して医療用マーカー等として有効利用できる。
なお、黒鉛が使用済み黒鉛反射材の場合には、放射性を有する14C(固体)が減容して分離、回収される。この14C(固体)は、適宜、コンクリートで被覆して地中に埋設するなどして処理できる。

【0043】
なお、放射性炭素14Cはβ線(電子線)を放出する(半減期5730年)。
β線の遮蔽を求めるためには、R=0.5Eの式が簡易的に用いられる。RおよびEはそれぞれ、β線の飛程(g cm-2)およびエネルギー(MeV)である。
14C の放出するβ線のエネルギーは0.156 MeVであるため、飛程は0.078 g cm-2となる。ここで、β線の遮蔽材としてアルミニウムを採用した場合、室温付近におけるアルミニウムの密度は2.70 g cm-3であるため、遮蔽に必要なアルミニウムの厚みは0.078 (g cm-2) ÷2.70 (g cm-3) = 0.028 cmとなる。したがって、装置全体を少なくとも厚さ0.3 mmのアルミニウム板で覆うことで安全面への対策とすることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 初期ガス溜め
11 圧力計
12 分離用セル
13 配管
14 バルブ
16 分析ガス溜め
17 分析計
20 処理装置
G1:酸素充填ボンベ、
G2:水素充填ボンベ、
G3:同位体メタン貯蔵用ボンベ
V1~V24:バルブ
F1:黒鉛燃焼炉
F2:メタン化反応炉
F3:炭素化生成炉
C1:黒鉛燃焼用チャンバー
C2:ニッケル触媒充填チャンバー
C3:パラジウム触媒充填チャンバー
CT:二酸化炭素捕集トラップ
GC1-GC2:ガス溜め
AC1、AC2:吸着剤充填チャンバー
P1~P4:吸引ポンプ
MS:質量分析計
図面
【図10】
0
【図1】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9