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明細書 :スメクタイト被覆シリカ粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6029052号 (P6029052)
公開番号 特開2014-024711 (P2014-024711A)
登録日 平成28年10月28日(2016.10.28)
発行日 平成28年11月24日(2016.11.24)
公開日 平成26年2月6日(2014.2.6)
発明の名称または考案の名称 スメクタイト被覆シリカ粒子の製造方法
国際特許分類 C01B  33/18        (2006.01)
FI C01B 33/18 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2012-166319 (P2012-166319)
出願日 平成24年7月26日(2012.7.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、日本材料科学会主催 平成24年度学術講演大会講演予稿集平成24年6月1日発行第87ページに発表
特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、日本化学会第92春季年会予稿集III平成24年3月9日発行3PB-128ページに発表
審査請求日 平成27年5月15日(2015.5.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】岡田 友彦
【氏名】吉戸 志帆
審査官 【審査官】森坂 英昭
参考文献・文献 特開2011-102226(JP,A)
特開平03-153519(JP,A)
特開2001-342016(JP,A)
特開平08-012987(JP,A)
調査した分野 C01B 33/00 - 33/193
特許請求の範囲 【請求項1】
シリカ粒子の水懸濁液と、スメクタイトを構成する元素を供給する化合物と、アルカリとの混合物を撹拌する工程と、
撹拌後の混合物を密閉容器に収容し、加熱してシリカ粒子の表面にスメクタイトを生成させる生成工程と、
生成工程を経た混合物から固体生成物を分離回収し、分離回収した固体生成物を乾燥させて、シリカ粒子の表面にスメクタイトが析出したコアシェル粒子を得る回収工程とを備えることを特徴とするスメクタイト被覆シリカ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記シリカ粒子として、直径0.1μm~2μmの球状シリカ粒子を使用することを特徴とする請求項1記載のスメクタイト被覆シリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
スメクタイトを構成する元素を供給する化合物の仕込み量を、均質なスメクタイトを合成する際の合成条件における、Siに対する他の構成元素の組成比に対し、他の構成元素の組成比を小さく設定することを特徴とする請求項1または2記載のスメクタイト被覆シリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
スメクタイトを構成する元素を供給する化合物の仕込み量におけるSiに対する他の構成元素の組成比を、
均質なスメクタイトを合成する際の合成条件における、Siに対する他の構成元素の組成比の10~20%に抑えた比率に設定することを特徴とする請求項3記載のスメクタイト被覆シリカ粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スメクタイトにより表面を被覆したスメクタイト被覆シリカ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スメクタイトはイオン交換性、膨潤性、熱的化学的安定性などの特徴を有することから、千の用途を持つ素材といわれるほど広く用いられているナノシート状ケイ酸塩である。主な利用分野は、土木、食品、化粧品、自動車業界である。スメクタイトは豊富な鉱物資源であるが、合成することも可能であり、付加価値の高い材料への応用について検討されている。その一つとして、金属陽イオンの吸着剤としての利用があげられる。これはスメクタイトに含まれるLiあるいはNaイオンが、他の金属陽イオンと交換可能な性質を利用したものである。金属イオンの吸着選択性の序列は、イオンの価数が大きくかつイオン半径が大きいものほど高いことが知られているので、スメクタイトは重金属イオン等の有害元素の濃縮に有用である。また、スメクタイトに含まれる交換性の陽イオンを、有機陽イオンと置き換えることも可能であり、これにより得られる化合物を非イオン性有機分子の吸着剤や薬剤徐放剤などとして応用することもできる。このように多様な応用可能性をもつスメクタイトであるが、合成で得られる粒子サイズは極めて小さく、ハンドリング性に乏しい。さらにスメクタイト自身の機能性を高めるため、粒子形状を均一に制御する技術が望まれている。
【0003】
スメクタイトを合成する方法については、従来から、種々提案されている(非特許文献1)。非特許文献2には工業的に量産する方法の一つとして、100℃、常圧で合成する方法が記載されている。また、特許文献1には、シリコンアルコキシドの水溶液からコロイダルシリカを生成し、コロイダルシリカにマグネシウム塩とpH調整の尿素を混合して、スメクタイトを合成する方法が記載されており、特許文献2には、マグネシウム分とケイ素分とを塩基性条件下で沈殿処理し、水熱条件、加圧下で処理することによりスメクタイト構造を形成して結晶化させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平3-153519号公報
【特許文献2】特表平7-505112号公報
【0005】

【非特許文献1】Kloprogge, J. T., Komarneni, S., Amonette, J. E. Clays Clay Miner.1999, 47, 529
【非特許文献2】Ogawa, M., Matsutomo T., Okada, T., J. Ceram .Soc. Jpn., 116, 1309(2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スメクタイトは種々の用途への利用が可能であり、たとえば金属イオンの吸着剤として利用することができる。このような使用方法では、吸着処理後に金属イオンを吸着したスメクタイトを分離回収する必要があるが、従来法によって得られるスメクタイトは微結晶であるため、水などの溶媒中で分散しやすく、ろ過によって分離しようとしてもスメクタイトが溶媒とともに漏出してしまい、分離回収することができない。このため、吸着処理後のスメクタイトを回収するには、化学的な方法を利用するといった処理操作が必要になるという問題があった。
【0007】
本発明は、これらの課題を解消すべくなされたものであり、金属の吸着作用等のスメクタイト自体の作用を十分に備えるとともに、分離回収操作といった取扱い性を向上させたスメクタイト被覆シリカ粒子の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスメクタイト被覆シリカ粒子は、シリカ粒子をスメクタイトを生成する原料の一部に使用し、不均一核生成によってシリカ粒子の表面にスメクタイトの微結晶を直接成長させて得られる。
スメクタイトの生成に必要な成分は,シリカゾル(水に溶解したシリカ)、Al3+、Mg2+、Li+などの典型元素のイオン、水およびアルカリである。本発明では、シリカゾルに替えて可視光、紫外光、近赤外線の波長と同程度のシリカ粒子を原料に用いスメクタイトを生成する。
本発明に係るスメクタイト被覆シリカの製造方法は、シリカ粒子の水懸濁液と、スメクタイトを構成する元素を供給する化合物と、シリカの一部を一旦溶解させ、スメクタイトとして再沈殿させるに必要なアルカリとの混合物を撹拌する工程と、撹拌後の混合物を密閉容器に収容し、加熱してシリカ粒子の表面にスメクタイトを生成させる生成工程と、生成工程を経た混合物から固体生成物を分離回収し、分離回収した固体生成物を乾燥させて、シリカ粒子の表面にスメクタイトが生成されたコアシェル粒子を得る回収工程とを備えることを特徴とする。なお、シリカ粒子の表面にスメクタイトを生成させる工程での加熱温度は、合成するスメクタイトの種類に応じて適宜温度(たとえばヘクトライトを合成する際には60℃以上)に加熱する。
【0009】
スメクタイトとは、スメクタイト族粘土鉱物の意であり、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライトを総称したものである。後述する実施例では、シリカ粒子の表面にヘクトライトを生成した例について説明する。本発明は、スメクタイト型粘土鉱物であれば、ヘクトライトに限らず、まったく同様に適用でき、生成しようとするスメクタイトの生成に必要な成分(構成元素)を供給することによって、表面にスメクタイトが被覆したシリカ粒子(コアシェル粒子)を得ることができる。
【0010】
上記生成工程においては、撹拌工程により得られた混合物を密閉容器に収容し、100℃程度に加温した状態で一定時間(48時間等)保持することにより、スメクタイトを生成させる作用を促進させ、シリカ粒子の表面にスメクタイトを生成させることができる。
後述する実施例ではシリカ粒子として球体状のシリカ粒子を使用した例を説明する。本発明は球体状のシリカ粒子に限らず、水に分散できるものであれば、繊維状等や薄膜状のシリカでも同様に使用することができる。シリカ粒子とは、これらの球体とは異形のシリカ材料を包含する概念である。
球状のシリカ粒子としては、ろ過などによる分離回収が確実にできることと、十分な表面積を確保して効果的な吸着作用が得られるために、直径0.1μm~2μmの球状シリカ粒子を使用することが有効である。
【0011】
また、シリカ粒子とスメクタイトを構成する元素の化合物を仕込む際には、均質なスメクタイトを合成する際の合成条件と比較してシリカ粒子に対する構成元素の量を低く抑えることにより、シリカ粒子の表面に効果的にスメクタイトを生成させることができる。
均質なスメクタイトを合成する条件とは、スメクタイトの理想的な組成に合致するように、出発原料の組成を設定するという意味である。ヘクトライトを合成する例では、Li:Mg:Si=1.4:5.3:8.0が理想的な組成に合致する組成の例である。この合成条件と比較してLiとMgの仕込量(割合)を少なくすると(例として、LiとMgの組成を理想組成の10~20%程度)、シリカ粒子の表面層のみがスメクタイトの合成源となり、シリカ粒子の原形を損なわずに、シリカ粒子の表面にスメクタイトを生成させることができる。
【0012】
前記スメクタイト被覆シリカ粒子は、シリカ粒子の表面を被覆するように、シリカ粒子と一体に、層状にスメクタイトが形成されている。シリカ粒子の形態は、上述したように、球体状に限るものではない。
シリカ粒子の表面を被覆するスメクタイトの厚さは10~50nm程度であり、スメクタイトはシリカ粒子の全面を被覆する場合もあるし、シリカ粒子の表面を部分的に被覆する場合もある。
シリカ粒子の表面にスメクタイトが被覆して形成されたコアシェル粒子は、スメクタイトのイオン交換性に基づく、金属イオンの吸着作用、陽イオン性界面活性剤等の有機陽イオンの吸着作用、非イオン性有機分子の吸着作用といった優れた作用を維持する。これによって、金属イオン、水に溶解した有機陽イオンや有機分子の分離回収等に好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0013】
発明に係るスメクタイト被覆シリカ粒子の製造方法によれば、表面にスメクタイトが被覆されたシリカ粒子(コアシェル粒子)を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明方法によって得られた試料(スメクタイト被覆シリカ粒子)について測定したXRDパターンである。
【図2】試料のN2吸着等温線(77 K)を示すグラフである。
【図3】試料のTEM画像である。
【図4】高倍率とした、試料のTEM画像である。
【図5】処理前のシリカ粒子についての粒度分布を示すグラフとSEM画像である。
【図6】試料の粒度分布を示すグラフとSEM画像である。
【図7】処理前のシリカ粒子についてのゼータ電位分布を示すグラフである。
【図8】試料のゼータ電位分布を示すグラフである。
【図9】試料と陽イオン性界面活性剤(ジメチルジヘキサデシルアンモニウムイオン、以下2C182C1N+Br-と略記)との反応生成物のTG-DTA曲線である。
【図10】試料および2C182C1N+Br-との反応生成物のXRDパターンである。
【図11】シリカ表面をヘクトライトが被覆する機構の模式図である。
【図12】試料を陽イオン性有機色素と反応させた際の様子の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明においては、シリカ粒子の水懸濁液と、スメクタイトの構成元素を供給する化合物を出発原料としてスメクタイト被覆シリカ粒子を製造する。以下では、スメクタイトの一例としてヘクトライトにより表面を被覆したシリカ粒子を製造した実験例について説明する。

【0016】
(実験例)
LiF水溶液にMgCl2及び尿素を加えた後、球状のシリカ粒子(東亞合成製,0.5
±0.1μm)の水懸濁液を、Li:Mg:Si:尿素=0.28:1.1:8.0:11(モル比)の仕込み比となるように加えて室温で撹拌した(撹拌工程)。
ヘクトライトの理想組成は、Lix(Mg6-xLixSi8O20(OH)4・nH2O)である。均質なヘクトライトを合成する条件としては、Li:Mg:Si=1.4:5.3:8.0(モル比)とすることが報告されている(非特許文献2)。本実験例では、ヘクトライトを合成する条件として、Siに対するLi及びMgの比を、従来の、Siに対するLi及びMgの比の20%とし、Siに対するLiとMgの量を従来法に比べて減らした仕込み比とした。混合液の撹拌は、ホモジナイザー(4.6krpmn)を用いて30分間行った。

【0017】
次いで、撹拌後の混合液(懸濁液)を密閉容器に入れ、100℃で48時間保持してヘクトライトを生成させた(生成工程)。
この生成工程は、シリカ粒子の表面にヘクトライトを生成させる工程である。混合液を100℃で保持することにより、尿素は加水分解され、水酸化物イオンを生成する。生成した水酸化物イオンの作用によって、シリカ粒子の表面から徐々にシリカが溶出するとともにMg成分が沈殿して、これらがシリカ表面近傍で混和しヘクトライトの結晶核が生成する。したがって、尿素は球状シリカの一部を溶解してシリケートアニオンを生成する作用と、ヘクトライト形成に必要なMg成分を沈殿せしめる作用を促すための水酸化物イオンを供する役割を果たす。尿素の加水分解には、尿素を含む水溶液を70℃以上に保持する必要がある。特許文献2請求項8によると、ヘクトライト形成には少なくとも60℃で原料液を保持する必要があるので、100℃未満でヘクトライトを球状シリカに被覆しようとするのであれば、尿素を原料液に添加するだけで上述の機構でヘクトライト生成反応が進行する。
また、球状シリカの形状を維持できるのであれば、必ずしも尿素を添加する必要はない。特許文献2請求項4および5の操作pHの範囲内であればヘクトライトは生成するので、撹拌行程において所定量のアルカリ試薬を添加するかわりに尿素を添加しなくても良い。

【0018】
混合液を48時間保持した後、氷浴を用いて混合液を急冷する。ここで、溶液に存在するヘクトライト成分の過飽和度解消を駆動力としてシリカ粒子の表面にヘクトライトが生成される。Siに対するLiとMgの量を、従来法での合成条件と比べて抑えたことにより、ヘクトライトはシリカ粒子の表面近傍のみで生成される。急冷に続いて遠心分離機(1400g、20分)を用いて固体成分を回収し、分離回収した固定成分を50℃で乾燥して試料とした(回収工程)。

【0019】
図1は、得られた試料のXRDパターンである。XRDパターンには、シリカに起因する(110)回折ピークと、ヘクトライトに起因する(001)、(130)、(060)ピークがみられる。この試験結果は、試料中にヘクトライトが生成されていることを示す。

【0020】
図2は、試料のN2吸着等温線(77K)である。
この試験結果は、球状のシリカ粒子と比較して試料(ヘクトライト被覆シリカ粒子)のガス吸着量が大きく勝ることを示す。球状のシリカ粒子の比表面積が6(m2/g)であるのに対し、試料の比表面積は25(m2/g)である。

【0021】
図3は、試料のTEM画像である。図3(a)から、生成された試料はシリカ粒子の球状の形態をそのまま維持していることがわかる。また、図3(b)、(c)から、シリカ粒子の表面に層状構造が存在すること、層状物質がシリカ粒子の表面対し平行に成長したようにみられ、層状物質は部分的にシリカ粒子の表面から放射状に成長している。この放射状に成長した部分は層状物質の存在密度が高い部分と考えられる。これらの層状物質はシリカ粒子の表面に生成されたヘクトライトである。

【0022】
図4は、試料をさらに拡大したTEM画像である。
層状物質の1枚の厚さは1nm程度であることから、ヘクトライトのシリケート層集合構造があらわれている。この領域ではスタッキングの厚さが20nm程度と観察できることから、シリカ粒子の表面には10~15層のシリケート層が存在している。
シリカ粒子の表面は50nm程度の間隔で波打ったように削られていることがみられる。層状物質はシリカ粒子から成長し、シリカ粒子と一体的に形成されている。すなわち、ヘクトライトはシリカ粒子と一体にシリカ粒子の表面に形成されている。

【0023】
図5はシリカ粒子についての粒度分布とSEM画像を示す。図6は、試料の粒度分布とSEM画像を示す。
図5と図6のSEM画像を比較すると、シリカ粒子の外面は滑らかな曲面に形成されているのに対し、試料の粒子は球体形状を維持しているものの、外面に凹凸が見られる。これは、試料作製時にシリカ粒子の表面が部分的に溶出してヘクトライトを生成する場となったことを示す。
粒子の平均粒子径をSEM観察から求めた結果、処理前のシリカ粒子の平均粒子径が0.59±0.04μmであるのに対し、試料の平均粒子径は0.61±0.10μmであり、若干粒度分布幅が広くなっている。

【0024】
図7は、処理前のシリカ粒子のゼータ電位分布を示し、図8は、試料のゼータ電位分布を示す(イオン強度=0.02 M, pH=6.1, 電解質NaCl)。
試料のゼータ電位平均値は-35±7 mVであり、シリカ粒子のゼータ電位平均値-63±9 m)と比較して高い値を示す。また、試料のゼータ電位は、同様の条件で測定されたヘクトライトのゼータ電位と近い値(-30mV)である。さらに、試料、シリカ粒子いずれもゼータ電位の平均値と中央値が一致(すなわちガウス分布)しており、かつ互いに分布が重ならないことから、すべてのシリカ粒子がヘクトライトにより被覆されていると解釈することができる。

【0025】
図9は、得られた試料と2C182C1N+Br-との反応生成物のTG-DTA曲線を測定した結果を示す。この測定に基づいて、2C182C1N+吸着量を求めた結果、吸着量は、0.15 mmol/gであった。均質なヘクトライトを合成する場合の合成条件、Li:Mg:Si=1.4:5.3:8.0にしたがって合成したヘクトライトのイオン交換容量が0.62 mmol/gであること、本実験例では、Siに対するLiとMgの量を従来の合成条件の20%に抑えたことを考慮して、生成されたヘクトライトの質量を全体の2割とすると、被覆したヘクトライトは2C182C1N+Br-と定量的にイオン交換したと考えて矛盾しない。

【0026】
図10は、試料および2C182C1N+Br-との反応生成物のXRDパターンを示す。試料の基本面間隔(001回折線)は1.3nmであり、これはヘクトライト層間に水分子が単分子層を形成していることを意味する。2C182C1N+Br-との反応により基本面間隔は1.8nmに拡大した。これは2C182C1N+がヘクトライト層間に取り込まれ、二分子層集合体を形成していることを意味する。以上より試料は陽イオン交換性を有し、交換された陽イオンはシリカ表面近傍のヘクトライト部位にのみ存在すると考えてよい。

【0027】
以上の実験結果から、単分散球状シリカ水懸濁液にLiF,MgCl2および尿素を加え100℃で保持すると,膨潤性のヘクトライト(殻)-シリカ(核)コアシェル粒子が得られる。図11は、シリカ表面をヘクトライトが被覆する機構の模式図である。この図で示すように、原料液に添加した尿素の加水分解により生成する水酸化物イオンが、球状シリカを一部溶出させるとともにMg成分を沈殿させ、ヘクトライトが不均一核生成によって一部溶解したシリカの表面に生成されたと考えられる。

【0028】
図12は、試料を陽イオン性有機色素と反応させた際の様子の写真である。陽イオン性色素としてメチレンブルーを用いた例である。図12(a)は、シリカ粒子および試料とメチレンブルー水溶液を混合し、1日経過後ろ過して得た上澄みの写真である。青色が濃いほど吸着しなかったメチレンブルーが上澄みに残存していることを意味するので、試料へは球状シリカと比較すると多くの量のメチレンブルーが吸着したことがわかる。図12(b)は、シリカ粒子および試料とメチレンブルー水溶液を混合し、数分後に撮影した写真である。試料は沈降しやすく固液分離が容易であることがわかる。

【0029】
図12(c)は、非特許文献2により調製したヘクトライトおよび試料とメチレンブルーを反応させたのち、ろ過して回収した上澄みの写真である。写真右側から左方向に向けてレーザー光を照射した結果、非特許文献2の方法で調製したヘクトライト粒子を用いると上澄みが青色でありかつチンダル現象が見られたのに対し、試料の場合では、上澄みに着色はなく透明でチンダル現象は観察されなかった。すなわち、試料とメチレンブルー水溶液とを混合してもヘクトライトの微粒子が試料から剥落しないことを意味しており、吸着後の水溶液と吸着剤を容易かつ確実に分離回収できることを実証するものである。ここで用いたメチレンブルーは陽イオン性の色素であるため、球状シリカを被覆したヘクトライトの層間陽イオンとのイオン交換により吸着する。金属イオン等を含むこの他の陽イオンについても同様の機構で試料に吸着されると考えられる。したがって、本発明の方法で調製されるスメクタイト被覆シリカ粒子は、種々の陽イオンの吸着剤として作用するだけでなく、吸着処理後における吸着剤と処理済み液体を容易かつ確実に分離できる材料として利用できる。

【0030】
上述したように、本発明に係るスメクタイト被覆シリカ粒子の製造方法によれば、シリカ粒子の原形を維持したまま、表面にスメクタイトの微結晶を析出させ、シリカ粒子に強固にスメクタイトを固定することができる。これは、出発物質としてのシリカの形状(繊維状,板状等)、大きさは任意であることを意味する。本発明方法は、形状制御の困難なスメクタイト合成の新たな手法として有意義であるだけでなく、出発物質を選ぶことにより、用途に応じて形状を選択できるという利点があり、実用的にも意義はきわめて大きい。

【0031】
また、スメクタイトを生成する方法として、出発物質の組成(特に典型元素イオンの種類、モル比)によって多様な組成のスメクタイトが得られることが知られている。たとえば、スメクタイトを合成する際に人体に安全あるいは有用な元素を構造に組み込むといったことが可能であり、陽イオン交換容量の制御も可能であることから、用途に合わせてスメクタイト被覆シリカ粒子の構造を設計することが可能であるという特徴もある。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図7】
2
【図8】
3
【図9】
4
【図10】
5
【図3】
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【図4】
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【図5】
8
【図6】
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【図11】
10
【図12】
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