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明細書 :ゴム組成物及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4867015号 (P4867015)
登録日 平成23年11月25日(2011.11.25)
発行日 平成24年2月1日(2012.2.1)
発明の名称または考案の名称 ゴム組成物及びその製造方法
国際特許分類 C08L  21/00        (2006.01)
C08K   3/36        (2006.01)
C08K   5/17        (2006.01)
C08K   5/54        (2006.01)
FI C08L 21/00
C08K 3/36
C08K 5/17
C08K 5/54
請求項の数または発明の数 26
全頁数 21
出願番号 特願2007-509363 (P2007-509363)
出願日 平成18年3月27日(2006.3.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 国立大学法人京都工芸繊維大学 工芸学部 物質工学科 平成17年度 卒業研究発表要旨集 「高含量in situシリカ充てん天然ゴムの作製」
国際出願番号 PCT/JP2006/306124
国際公開番号 WO2006/101228
国際公開日 平成18年9月28日(2006.9.28)
優先権出願番号 2005088412
優先日 平成17年3月25日(2005.3.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年12月4日(2008.12.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】池田 裕子
【氏名】プムプラダ シリラック
個別代理人の代理人 【識別番号】100109508、【弁理士】、【氏名又は名称】菊間 忠之
審査官 【審査官】岩田 行剛
参考文献・文献 特開平11-080377(JP,A)
特開平11-335403(JP,A)
特開平11-335493(JP,A)
特開平09-048880(JP,A)
特開平07-033910(JP,A)
特開平09-302152(JP,A)
特開2000-053806(JP,A)
調査した分野 C08L 1/00-101/14
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素数以上以下の炭化水素基を備えるアミノ化合物からなる触媒および水の存在下で、ゴム中に含有するアルコキシシラン化合物を加水分解及び重縮合させて(混練しながら加水分解及び重縮合させることを除く。)るゴム組成物であって
前記加水分解及び重縮合によって生成したシリカのゴム組成物中における含有量が、ゴム100重量部に対して24重量部以上であるゴム組成物。
【請求項2】
25℃、常圧における、水に対する溶解度が0.001~34g/Lのアミノ化合物からなる触媒および水の存在下で、ゴム中に含有するアルコキシシラン化合物を加水分解及び重縮合させて(混練しながら加水分解及び重縮合させることを除く。)るゴム組成物であって
前記加水分解及び重縮合によって生成したシリカのゴム組成物中における含有量が、ゴム100重量部に対して24重量部以上であるゴム組成物。
【請求項3】
アミノ化合物は、25℃、常圧における、水に対する溶解度が0.001~34g/Lである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記加水分解及び重縮合によって生成したシリカのゴム組成物中における含有量が、ゴム100重量部に対して53重量部以上である請求項1~のいずれ一に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記アミノ化合物からなる触媒をゴムに含浸させて又は前記アミノ化合物からなる触媒をゴムの溶液若しくはエマルジョンに混合して、ゴム中に含有するアルコキシシラン化合物を加水分解及び重縮合させて成る請求項1~のいずれか一に記載のゴム組成物。
【請求項6】
ゴム中に含有するアルコキシシラン化合物を30~50℃にて加水分解及び重縮合させて成る請求項1~のいずれか一に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記加水分解及び重縮合によって生成したシリカの粒径が100nm以下である請求項1~のいずれか一に記載のゴム組成物。
【請求項8】
アミノ化合物が一級のモノアミンである請求項1~のいずれか一に記載のゴム組成物。
【請求項9】
アミノ化合物が、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン及びn-オクチルアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項1~7のいずれか一に記載のゴム組成物。
【請求項10】
アルコキシシラン化合物がテトラアルコキシシランである請求項1~のいずれか一に記載のゴム組成物。
【請求項11】
ゴムが、未架橋ゴム、架橋ゴム、又はこれらの混合物である請求項1~10のいずれか一に記載のゴム組成物。
【請求項12】
ゴムが合成ゴムである請求項1~10のいずれか一に記載のゴム組成物。
【請求項13】
さらにシランカップリング剤を含有する請求項1~12のいずれか一に記載のゴム組成物。
【請求項14】
さらに無機系微粒子又は有機系微粒子を含有する請求項1~13のいずれか一に記載のゴム組成物。
【請求項15】
無機系微粒子又は有機系微粒子が、カーボンブラック、又は前記加水分解で得られた微粒子以外のケイ素系微粒子である請求項14に記載のゴム組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項17】
ゴムにアルコキシシラン化合物を含浸あるいは混合し、ゴム中にアルコキシシラン化合物を含有させ;
炭素数以上以下の炭化水素基を備えるアミノ化合物からなる触媒および水を含む溶液をゴムに含浸させて又は該触媒をゴムの溶液若しくはエマルジョンに混合して、該ゴムの中で前記アルコキシシラン化合物を加水分解及び重縮合させる(混練しながら加水分解及び重縮合させることを除く。)工程を含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項18】
ゴムにアルコキシシラン化合物を含浸あるいは混合し、ゴム中にアルコキシシラン化合物を含有させ;
25℃、常圧における、水に対する溶解度が0.001~34g/Lのアミノ化合物からなる触媒および水を含む溶液をゴムに含浸させて又は該触媒をゴムの溶液若しくはエマルジョンに混合して、該ゴムの中で前記アルコキシシラン化合物を加水分解及び重縮合させる(混練しながら加水分解及び重縮合させることを除く。)工程を含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項19】
ゴムにアルコキシシラン化合物を含浸あるいは混合し、ゴム中にアルコキシシラン化合物を含有させ;
炭素数以上以下の炭化水素基を備えるアミノ化合物からなる触媒および水の存在下で、該ゴムの中で前記アルコキシシラン化合物を30~50℃にて加水分解及び重縮合させる(混練しながら加水分解及び重縮合させることを除く。)工程を含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項20】
ゴムにアルコキシシラン化合物を含浸あるいは混合し、ゴム中にアルコキシシラン化合物を含有させ;
25℃、常圧における、水に対する溶解度が0.001~34g/Lのアミノ化合物からなる触媒および水の存在下で、該ゴムの中で前記アルコキシシラン化合物を30~50℃にて加水分解及び重縮合させる(混練しながら加水分解及び重縮合させることを除く。)工程を含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項21】
ゴムがシランカップリング剤を含有するものである請求項17~20のいずれか一に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項22】
ゴムが、無機系微粒子若しくは有機系微粒子、及びシランカップリング剤を含有するものである請求項17~21のいずれか一に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項23】
アルコキシシラン化合物がテトラアルコキシシランである請求項17~22のいずれか一に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項24】
ゴムが、未架橋ゴム、架橋ゴム、又はこれらの混合物である請求項17~23のいずれか一に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項25】
アミノ化合物が一級のモノアミンである請求項17~24のいずれか一に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項26】
アミノ化合物が、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン及びn-オクチルアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項17~25のいずれか一に記載のゴム組成物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、シリカ等の微粒子を高率で充てんしてもヒステリシスロスが小さく、且つ低ひずみ領域から高応力を示す、耐磨耗性や耐疲労性に優れたゴム材料を得ることができる、ゴム組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム材料の力学的物性を向上させる方法として、カーボンブラックやシリカ等の充てん剤をゴム中に混合させることが一般に行われている。この混合方法としては、架橋前のゴムと充てん剤とをバンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を用いて混練することにより機械的に練り込む方法(混練法)が一般的である。
ゴムに混合させる代表的な白色充てん剤としてシリカが知られている。シリカ粒子の多くはその表面にシラノール基等が多数存在するために、シリカ粒子同士の凝集力が強く、ゴムとの親和力が弱い。そのために、単なる混練による方法では、シリカ粒子をゴム中に均一に分散し難く、カーボンブラック等を充てんした場合に比べ、力学的物性を向上させる効果が小さい。
【0003】
シリカ粒子のゴム中での分散性を改良する方法として、インサイチュ(in situ、その場)ゾルーゲル法が提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、未架橋ゴムをアルコキシシラン化合物を含む液中に浸漬して膨潤させ、ついでこの膨潤未架橋ゴムを触媒水溶液中に浸漬して膨潤未架橋ゴム中でアルコキシシラン化合物の加水分解物の重縮合体を生成させ、その後架橋剤を添加して架橋させる方法が開示されている。そして、この方法によって、シリカ粒子が均一にゴム中に分散され、全体的に安定した補強効果を備えたものが得られやすいと述べている。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されている方法では、シリカ粒子がゴム100重量部に対して35重量部程度までしか充てんできないため、それほど高い補強効果が得られていないのが現状である。
【0004】

【特許文献1】特開平9-48880号公報
【特許文献2】特開平11-335403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ヒステリシスロスが小さく、且つ低ひずみ領域から高応力を示す、耐磨耗性や耐疲労性に優れたゴム材料を得ることができる、シリカ等の微粒子がより高い充てん割合で且つより均一な分散状態で充てんされたゴム組成物およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、アルコキシシラン化合物の加水分解反応の触媒として特定のアミノ化合物を用いることによって、シリカ等の微粒子を高率で充てんでき、しかも分散性に優れたゴム組成物が得られることを見出し、さらにそのゴム組成物を架橋させると、ヒステリシスロスが小さく、且つ低ひずみ領域から高応力の力学的物性を示すようになり、耐磨耗性や耐疲労性に優れたゴム材料となることを見出した。本発明はこれら知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、炭素数5以上15以下の炭化水素基を備えるアミノ化合物又は25℃、常圧における、水に対する溶解度が0.001~34g/Lのアミノ化合物からなる触媒の存在下で、ゴム中に含有するアルコキシシラン化合物を加水分解及び重縮合させて成るゴム組成物である。
【0008】
また、本発明は、ゴムにアルコキシシラン化合物を含浸あるいは混合し、ゴム中にアルコキシシラン化合物を含有させ; 前記アルコキシシラン化合物を、炭素数5以上15以下の炭化水素基を備えるアミノ化合物又は25℃、常圧における、水に対する溶解度が0.001~34g/Lのアミノ化合物からなる触媒の存在下で、ゴムの中で加水分解及び重縮合させることを含む、ゴム組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従って、炭素数5以上15以下の炭化水素基を備えるアミノ化合物又は25℃、常圧における、水に対する溶解度が0.001~34g/Lのアミノ化合物からなる触媒を用いてインサイチュ(in situ)で微粒子を生成させることによって、微粒子が高い充てん割合で且つ均一な分散状態でゴム中に充てんされたゴム組成物が得られる。このゴム組成物は、ゴムと微粒子との相互作用が強く、力学的物性が大幅に向上している。そして、本発明のゴム組成物を架橋したものは、シリカ等の微粒子を高率で充てんしたわりにはヒステリシスロスが小さく、且つ低ひずみ領域から高い応力を示すので、耐磨耗性や耐疲労性に優れたゴム材料を得るための材料として好適である。以下、このインサイチュで生成した微粒子をインサイチュシリカと言うことがある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】熱プレスして作製したゴムシートの応力-ひずみ曲線を示す図。
【図2】架橋ゴムシートの応力-ひずみ曲線を示す図。
【図3】実施例20で得られたゴムシートのヒステリシス曲線を示す図。
【図4】実施例22で得られたゴムシートのヒステリシス曲線を示す図。
【図5】比較例6で得られたゴムシートのヒステリシス曲線を示す図。
【図6】実施例1、2、4、5及び7並びに比較例1~3で得られたゴムシートの透過型電子顕微鏡像を示す図。
【図7】実施例23及び比較例7で得られたシートの応力-ひずみ曲線を示す図。
【図8】実施例24~26及び比較例8~10で得られたシートの応力-ひずみ曲線を示す図。
【図9】実施例27及び比較例11で得られた架橋体の応力-ひずみ曲線を示す図。
【図10】実施例27及び比較例11で得られた架橋体のヒステリシス曲線を示す図。
【図11】実施例27及び比較例11で得られた架橋体の動的粘弾性の温度分散を示す図。
【図12】実施例27及び比較例11で得られた架橋体のtanδの温度分散を示す図。
【図13】実施例20及び21と比較例12及び13で得られたシートの応力-ひずみ曲線を示す図。
【符号の説明】
【0011】
E8:実施例8を熱プレスした試料; E15:実施例15を熱プレスした試料; E16:実施例16を熱プレスした試料; E20:実施例20; E21:実施例21; E22:実施例22; E23:実施例23; E24:実施例24; E25:実施例25; E26:実施例26; E27:実施例27;
C6:比較例6; C7:比較例7; C8:比較例8; C9:比較例9; C10:比較例10; C11:比較例11; C12:比較例12; C13:比較例13; RE:無充てんゴム; RS:残留ひずみ;
E5:実施例5の透過型電子顕微鏡写真の像; E4:実施例4の透過型電子顕微鏡写真の像; E2:実施例2の透過型電子顕微鏡写真の像; E1:実施例1の透過型電子顕微鏡写真の像; E7:実施例7の透過型電子顕微鏡写真の像; C1:比較例1の透過型電子顕微鏡写真の像; C2:比較例2の透過型電子顕微鏡写真の像; C3:比較例3の透過型電子顕微鏡写真の像;
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のゴム組成物は、炭素数5以上15以下の炭化水素基を備えるアミノ化合物又は25℃、常圧における、水に対する溶解度が0.001~34g/Lのアミノ化合物からなる触媒の存在下で、ゴム中に含有するアルコキシシラン化合物を加水分解及び重縮合させて成るものである。
【0013】
(ゴム)
本発明に用いられるゴムは、ゴム弾性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、天然ゴム(NR);イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、水素化ニトリルゴム(水素化NBR)などのジエン系合成ゴム;ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合ゴム(EPDM)などのオレフィン系ゴム;1,2-ポリブタジエン;トランスポリイソプレン;クロルスルホン化ポリエチレンゴム;フッ素ゴム(FKM);シリコーンゴム(VMQ,FVMQ);エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO);多硫化ゴム(T);ウレタンゴム(U);アクリルゴム(ACM);エステル系ゴム、エーテル系ゴム;等が挙げられる。また、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、及びそれらの主鎖水素化物(SEBS,SEPS)などの熱可塑性エラストマーも用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。特に工業的な大量生産に適した合成ゴム、特にIRなどのジエン系合成ゴムに本発明を適用することが好ましく、それによって、耐摩耗性及び耐疲労性に優れた合成ゴム材料を大量に生産することが可能となる。
【0014】
ゴムは固形状態のものに限らず、ゴム粒子が水中に乳化分散したラテックスや、ゴムが溶剤に溶解されたゴム溶液や、液状ゴムなどが含まれる。
また、ゴムは、未架橋のものであってもよいし、架橋されたものであってもよい。さらにそれらの混合物であってもよい。
【0015】
(アルコキシシラン化合物)
本発明に用いられるアルコキシシラン化合物は、加水分解反応によってシリカ等の微粒子を生成析出するものであれば、特に制限されない。アルコキシシランを構成するアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。本発明に用いられるアルコキシシラン化合物は、前記アルコキシ基がシランに1つ以上付加したものであるが、本発明においては、シランに4つのアルコキシ基が付加されたもの、すなわちテトラアルコキシシランが好ましい。モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを用いた場合は、3官能性以上のアルコキシシリル基を有するものとの併用が好ましい。
【0016】
アルコキシシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシランなどが挙げられる。また、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等各種アルキルアルコキシシランやフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等各種芳香族系アルコキシシランが挙げられる。これらアルコキシシラン化合物は一種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、テトラエトキシシランは、作用効果にも優れ、しかもコストも比較的安く、加水分解反応性が適度で製造時の取り扱いが容易である等の観点から好ましい。
【0017】
本発明において、アルコキシシラン化合物は、ゴムに含漬あるいは混合することによってゴムに含有される。この混合には、ゴムを有機溶媒に溶解させた溶液又はゴムを水中に分散させたラテックスにアルコキシシラン化合物を混合することを含む。ゴムに含有させるために、アルコキシシラン化合物を有機溶媒に溶解させて用いてもよいが、そのまま用いるのが好ましい。
アルコキシシラン化合物を溶解させる有機溶媒は、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、酢酸イソブチル、メチルイソプロピルケトン、酢酸ブチル、四塩化炭素、エチルベンゼン、p-キシレン、メチルエチルケトン、トルエン、ジオキサン、アセトン、クロロフォルム、n-ヘキサン、石油エーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0018】
(その他の配合剤)
本発明においては、前記アルコキシシラン化合物とともに架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、加硫剤、加硫促進剤、過酸化物、充てん剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、シランカップリング剤等の配合剤をゴムに含有させることができる。これらのうちシランカップリング剤は、加水分解によって生成する微粒子の粒径や分散性やゴムとの相互作用を制御する機能を有し、また力学的物性を低ひずみ領域から高応力にすることができるので、好適に用いられる。また充てん剤は、ゴムの力学的物性を向上させるために効果を奏するので好適に用いられる。
【0019】
〈シランカップリング剤〉
シランカップリング剤としては、メルカプトシラン類、ビニルシラン類、メタクリロキシシラン類、アミノシラン類、グリシドキシシラン類、テトラスルフィド型シラン類等のシラン系化合物が挙げられる。
より具体的には、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドなどのスルフィド型シラン類;3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン類; 3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノシラン類; 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのグリジドキシシラン類;3-トリエトキシシリルプロピルチオアセテート、3-トリメトキシシリルプロピルチオアセテート、3-トリプロポキシシリルプロピルチオアセテート;2-アセチルチオエチルトリメトキシシラン;3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリプロポキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シランなどのビニルシラン類が挙げられる。
これらの中から、ゴムの種類や架橋系等を考慮して、使用するシランカップリング剤が適宜選択される。たとえば過酸化物架橋系のゴムには、メルカプトシラン類、ビニルシラン類、またはメタクリロキシシラン類が好適であり、硫黄加硫系のゴムには、スルフィド型シラン類、またはメルカプトシラン類が好適である。
【0020】
シランカップリング剤の量は、ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは0.5~20重量部、特に好ましくは1~10重量部である。含有量が少なすぎると、カップリング効果が充分ではなく、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、多すぎても、充分な添加効果が得られないだけでなく、加工性が低下する傾向がある。
【0021】
〈充てん剤〉
充てん剤としては、無機系微粒子からなる充てん剤と有機系微粒子からなる充てん剤とがあり、これらのうち無機系微粒子からなる充てん剤が好適に用いられる。
無機系微粒子としては、カーボンブラック;クレー;酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム;加水分解で得られた微粒子以外のケイ素系粒子が挙げられる。有機系微粒子としては、ポリスチレン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子などが挙げられる。これらのうち、カーボンブラック、又は加水分解で得られた微粒子以外のケイ素系粒子が好ましく用いられる。
【0022】
カーボンブラックは、そのゴム材料の用途に応じて適宜選択する。カーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRFなどが挙げられる。
例えば、空気タイヤ及び特に空気タイヤのスレッドストリップ用途では、HAF、ISAF及びSAFタイプのカーボンブラックが好ましく用いられる。カーボンブラックの量は、ゴム100重量部に対して、好ましくは1~200重量部、より好ましくは1~150重量部、特に好ましくは1~100重量部である。
【0023】
加水分解で得られた微粒子以外のケイ素系粒子としては、例えば、市販汎用シリカVN-3(東ソー)やRS-150(東ソー)、Perkasil KS 430(AKZO)、BV 3380及びUltrasil 7000(Degussa)、Zeosil 1165 MP及び1115 MP(Rhodia)、Hi-Sil 2000(PPG)、Zeopol 8715、8741又は8745(Huber)及び処理された沈殿シリカ、例えばEP-A-0 735 088に記載されているアルミニウムで「ドープされた」シリカなどが挙げられる。
【0024】
加水分解で得られた微粒子以外のケイ素系粒子は、例えばAl、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Tiなどの酸化物との複合若しくは混合酸化物の形態であってもよい。例えば、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート、カルシウムシリケート;カオリン、タルクなどの天然由来のシリカ;ガラス繊維及びガラス繊維製品(マット、ストランド)又はガラスマイクロビーズなどが挙げられる。加水分解で得られた微粒子以外のシリカ粒子の量はゴム100重量部に対して、通常1~200重量部、好ましくは10~150重量部、より好ましくは10~100重量部である。
【0025】
(触媒)
本発明に用いる触媒はアミノ化合物からなるものである。この触媒を構成するアミノ化合物は、炭素数5以上15以下、好ましくは炭素数6以上8以下の炭化水素基を備えるもの、又は25℃、常圧における水に対する溶解度が0.001~34g/L、好ましくは0.1~20g/L、より好ましくは0.1~15g/Lのものである。炭素数又は水への溶解度が上記の範囲にあるアミノ化合物を用いると、インサイチュシリカをゴムに短時間に高率で充てんでき且つ均一に分散できる。炭素数5未満の炭化水素基を備えるアミノ化合物では、アルキル基の疎水性が不十分(水への溶解性が高すぎ)でゴム母材内に十分入り込みにくく、インサイチュシリカを短時間で高率で充てんすることが困難である。逆に炭素数15を超える炭化水素基を備えるアミノ化合物では、水への溶解性が低すぎて、やはりゴム母材内に入り込みにくくなり、加水分解反応の触媒効果が低くなる。
窒素に結合する炭化水素基の数は、特に限定されないが、モノアミンは、作用効果が高く、加水分解反応性、取り扱い性に優れるので好ましい。炭素数が多い炭化水素基を備えるアミノ化合物は水溶解性が低くなりやすいので、その場合は溶解性が比較的高いジアミンやアンモニウム塩型化合物を用いてもよい。
【0026】
本発明に用いられるアミノ化合物としては、一級アミンRNH、二級アミンRR’NH、三級アミンRR’R’’N、三級アンモニウム塩RR’R’’N、四級アンモ二ウム塩RR’R’’R’’’Nなどがあるが、本発明においては一級アミンが好ましい。
アミノ化合物の具体例としては、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、などの長鎖炭化水素基を有する脂肪族アミノ化合物;シクロヘキシルアミンなどの脂環式アミノ化合物;アニリンなどの芳香環を有する芳香族アミノ化合物等が挙げられる。これらのうち一級モノアミンが好ましく、n-ヘキシルアミン(12g/L)、n-ヘプチルアミン(6.79g/L)、又はn-オクチルアミン(0.2g/L)がより好ましく、n-ヘキシルアミンが特に好ましい。括弧内の数値は25℃、常圧における水に対する溶解度である。
【0027】
アミノ化合物からなる触媒は、そのまま用いてもよいし、水に溶解させて用いても良いし、また水と有機溶媒との混合溶媒に溶解させて用いてもよい。
【0028】
(ゴム組成物の製造方法)
本発明のゴム組成物の製造方法は、ゴムにアルコキシシラン化合物を含浸あるいは混合し、ゴム中にアルコキシシラン化合物を含有させ;前記アルコキシシラン化合物を、炭素数5以上15以下の炭化水素基を備えるアミノ化合物又は25℃、常圧における、水に対する溶解度が0.001~34g/Lのアミノ化合物からなる触媒の存在下で、ゴムの中で加水分解させることを含む方法である。
【0029】
本発明のゴム組成物の製造方法はより具体的な態様として下記の方法が挙げられる。
(1)ゴムを液状のアルコキシシラン化合物又はアルコキシシラン化合物溶液に所定時間浸漬して、ゴムを膨潤させ、ゴム中にアルコキシシラン化合物を含有させる。そして、膨潤したゴムを触媒溶液に浸漬し、ゴム中に触媒を含有させ、アルコキシシラン化合物を加水分解させるとともに重縮合させてゴム中でシリカ等の微粒子を生成させる。そして必要に応じて風乾、真空加熱乾燥等の処理を行い、未反応のアルコキシシラン化合物等を除去することによってインサイチュシリカが内部に分散、充てんされたゴム材料を得ることができる。さらに必要に応じて架橋させることができる。
【0030】
ゴムをアルコキシシラン化合物又はアルコキシシラン化合物溶液に浸漬させる温度が高い程膨潤度が高くなり、浸漬時間を短縮できるが、ゴム未架橋体については浸漬温度を高くし過ぎると、非常に柔らかく、強度が弱く、変形しやすく、切れやすいゴム材料となってしまう恐れがある。そこで、浸漬開始直後から0.5時間~2時間経過する間の浸漬温度を、例えば、40℃前後の高い温度にし、その後温度を常温程度に下げるようにすることが好ましい。
【0031】
(2)ゴムの溶液またはエマルジョン(ラテックス)中に、アルコキシシラン化合物と触媒とその他配合剤とを混合し、アルコキシシラン化合物をゴム中で加水分解させるとともに重縮合させてシリカ等の微粒子を生成し、次いで反応物を乾燥することによってインサイチュシリカが内部に分散、充てんされたゴム材料を得ることができる。そして必要に応じてゴムを架橋させることができる。
【0032】
(3)ゴムをミキサー等によって混練し、その混練ゴムにアルコキシシラン化合物と触媒とその他配合剤とを混合し、アルコキシシラン化合物をゴム中で加水分解させてシリカ等の微粒子を生成させる。そして必要に応じて風乾、真空加熱乾燥等の処理を行い、未反応のアルコキシシラン化合物等を除去することによってインサイチュシリカが内部に分散、充てんされたゴム材料を得ることができる。さらに必要に応じて架橋させることができる。
【0033】
触媒を作用させ、加水分解及び重縮合を行うための温度条件は、特に限定されないが、30℃~50℃が好ましく、40℃前後が最も好ましい。すなわち、温度が低すぎると、反応が遅く、シリカの生成量も低下する傾向になる。温度が高すぎると、ゴム材料表面にもシリカの析出が多く見られるようになり、表面状態に問題がでてくる恐れがある。
【0034】
本発明によってゴム材料を製造する方法の一態様として、先ず、固形未架橋ゴムを2本ロールで薄通し、0.5~2mm(好ましくは1mm前後)程度の厚みのシート状に成形し、未架橋ゴムシートを得る。この未架橋ゴムシートを、40℃程度のアルコキシシラン化合物(例えばテトラエトキシシラン〔TEOSと略記することがある。〕)中に0.5時間~2時間浸漬し、次いでTEOSを常温まで冷却しさらに10数時間浸漬を続け、未架橋ゴムシートをTEOSによって膨潤させ、TEOSを該ゴムシートに含有させる。
【0035】
そして、膨潤した未架橋ゴムシートを、炭素数5~15の炭化水素基を備えたアミノ化合物(例えばn-ヘキシルアミン)からなる触媒の溶液に40℃程度で数十時間浸漬する。この操作で、アルコキシシラン化合物が触媒によって加水分解及び重縮合されて、ゴム中(すなわち、in situ)でシリカ等の微粒子を生成する。
その後、触媒水溶液から取り出した膨潤状態のゴムシートを減圧加熱乾燥などによって十分に乾燥させる。
【0036】
(架橋物)
上記のようにして得られたゴム組成物は、公知の方法でそのまま所望形状に成形してもよいし、架橋剤又は加硫剤を混合して架橋させ、ゴム架橋物を得ることができる。
【0037】
架橋剤又は加硫剤としては、硫黄、塩化硫黄、有機含硫黄化合物などのスルフィド結合を形成する加硫剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、あるいは1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジ-tert-ブチルパーオキシ-ジイソプロピルベンゼン、tert-ブチルパーオキシベンゼン、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ-tert-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシロキサン、n-ブチル-4,4-ジ-tert-ブチルパーオキシバレレートなどの過酸化物を挙げることができる。
【0038】
さらに、架橋又は加硫反応速度を速めるための加硫促進剤や加硫促進助剤を用いることができる。
加硫促進剤としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅などのジチオカルバミン酸塩類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム類;N-シクロヘキシル-2-ベンゾジチジルスルフェンアミド、N,N’-ジシクロヘキシル2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド類;ジベンゾチアジルジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾールなどのチアゾール類;ジ-o-トリグアニジン、ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ジエチルチオウレアなどのチオウレア類、などを挙げることができる。
加硫促進助剤としては金属酸化物、脂肪酸、アミン類などを用いることができる。
なお、本発明のゴム組成物の架橋又は加硫は公知の方法に従って行うことができる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と対比させながら詳しく説明する。
【0040】
(実施例1)
未架橋NR(RSSNo.1)を2本ロールで薄通しを行って、約1mm厚の未架橋NRシートを得た。
この未架橋NRシートを40℃のTEOS(和光純薬工業社製:試薬特級)に1時間浸漬したのち、TEOSを25℃まで冷却し、25℃で16時間さらに浸漬を続け、未架橋NRシートをTEOSによって膨潤させ、該NRシート中にTEOSを含有させた。
膨潤した未架橋NRシートをTEOS中から取り出し、表面を軽くろ紙で拭き取った。膨潤した未架橋NRシートの膨潤度は345~370%程度であった。
【0041】
つぎに、40℃に保持された濃度0.096mol/Lのn-ヘキシルアミン(和光純薬工業社製:試薬一級)からなる触媒水溶液に、前記膨潤した未架橋NRシートを72時間浸漬し反応させた。触媒水溶液から、ゴムシートを取り出し、恒量になるまで40℃で減圧乾燥して、ゴム中にインサイチュシリカが分散、充てんされたゴムシートを得た。このゴムシート中のインサイチュシリカ充てん量及び粒径を表1に示した。なお、本実施例及び比較例では、インサイチュシリカ充てん量を、熱重量分析(TGA)によって求めた。
【0042】
(実施例2~5及び比較例1~3)
触媒水溶液濃度及び触媒を構成するアミノ化合物の種類を表1に示す処方に変えた他は実施例1と同様にしてゴムシートを得た。その結果を表1に示した。なお、使用したアミノ化合物はいずれも純度95%以上の試薬である。
【0043】
(実施例6及び7並びに比較例4)
触媒水溶液濃度及び触媒を構成するアミノ化合物の種類を表1に示す処方に変え、実施例6と比較例4で、減圧乾燥を40℃さらに80℃に変えた他は実施例1と同様にしてゴムシートを得た。その結果を表1に示した。なお、実施例6及び7で用いたアミノ化合物はいずれも純度95%以上の試薬である。比較例4で用いたセチルアミンは95%より高い純度のものである。
【0044】
【表1】
JP0004867015B2_000002t.gif

【0045】
上記表1に示す結果から、n-ヘキシルアミンの触媒濃度を高くするに伴って、インサイチュシリカの充てん量が増加していくことが判るとともに、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミンを用いれば、炭素数が4以下の炭化水素基を備える又は25℃常圧における水に対する溶解度34g/Lを越えるアミンであるn-ブチルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミンを用いるよりも、同じ濃度では勿論のこと、低濃度の触媒量でもゴム中で発生するインサイチュシリカの量が格段に増加することがわかる。一方炭素数15を超える炭化水素基を備える又は25℃常圧における水に対する溶解度0.001g/L未満のアミンであるセチルアミンの場合は、セチルアミンが室温で粉末であり、極めて水への溶解性も低く、水に不均一に浮遊している状態で反応は進行し、トータルの含量は比較的大きいが、表面により多くのシリカが生成した。また、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミンと比較して生成量は少なかった。
【0046】
また、透過型電子顕微鏡(JOEL社製 TEM-100U)を用いて上記実施例1~5、実施例7および比較例1~3で得られたゴムシートを観察した(図6参照:図中右下黒い棒線は100 nmを示す。)。実施例1~5、実施例7および比較例1のゴムシートは、粒径の揃った均一性の高い球状のインサイチュシリカが均一に分散していた。これに対して、比較例2及び3で得られたゴムシートは、非球形で、不揃い粒径のシリカ粒子が凝集した状態で充てんされていた。また、実施例1~5、実施例7および比較例1~3のゴムシートにつき、インサイチュシリカの平均粒子径を透過型電子顕微鏡写真から求めた。透過型電子顕微鏡観察に供した高含量のインサイチュシリカの平均粒子径はほぼ同じで、45~46nmであった。
【0047】
(実施例8~10及び比較例5)
表2に示す処方で反応時間を24時間にした他は実施例6と同様にしてゴムシートを得た。その結果を表2に示した。
n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミンでは、24時間でほぼ反応時間72時間と同じ含量と大きさと分散性のインサイチュシリカが分散、充てんされたゴムシートが得られた。24時間までの反応を追跡した結果、nーヘキシルアミン、n-ヘプチルアミンでは、約10時間でインサイチュシリカ生成量がほぼ平衡に達することも分かった。セチルアミンでは、反応はゴム中で均一に進行しなかった。
【0048】
【表2】
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【0049】
(実施例11~14)
未架橋NR(RSSNo.1)100重量部に表3に示す量のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド[ダイソー製カブラス 4、以下「TESPT」と表記]を配合し、その配合物を2本ロールで薄通しを行って、約1mm厚のNRシートを得た。このNRシートを40℃のTEOSに1時間浸漬したのち、TEOSを25℃まで冷却し、25℃で16時間さらに浸漬を続け、NRシートをTEOSによって膨潤させ、該NRシート中にTEOSを含有させた。膨潤したNRシートをTEOS中から取り出し、表面を軽くろ紙で拭き取った。
つぎに、40℃に保持された濃度0.064mol/Lのn-ヘキシルアミンの触媒水溶液に、前記膨潤したNRシートを24時間浸漬した。触媒水溶液から、ゴムシートを取り出し、恒量になるまで40℃さらに80℃で減圧乾燥して、ゴムにインサイチュシリカが分散、充てんされたゴムシートを得た。このゴムシート中のシリカ充てん量及び粒径を求め、表3にその結果を示した。TESPT含量が増えるにつれてインサイチュシリカ含量は増える傾向にあった。
【0050】
【表3】
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【0051】
(実施例15及び16)
表4に示した量のTESPT又はビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン〔表中VTMESと表記〕を混合した厚さ約1mmのNRシートを40℃に保持された濃度0.064mol/Lのn-ヘキシルアミンからなる触媒水溶液に72時間浸漬した他は実施例13と同じ方法でゴムシートを得た。結果を表4に示した。TESPTを用いた系の方が、インサイチュシリカ含量も粒径も僅かに大きくなることが分かった。
【0052】
【表4】
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【0053】
(実施例17~19)
表5に示す処方で行った他は実施例15と同じ方法でゴムシートを得た。結果を表5に示した。同量のTESPTを含む系でのインサイチュシリカ含量には、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミンによる大きな違いは認められなかった。
【0054】
【表5】
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【0055】
実施例8、15及び16で得られたゴムシートを155℃で熱プレスした後、室温下、引張速度100mm/分で引張試験を行った。その結果を図1に示す。それぞれの熱プレスシートはE8,E15,E16である。図1から、シランカップリング剤を配合したゴム材料は低ひずみ領域から高応力を示すことがわかる。
【0056】
(実施例20~22)
実施例8、15及び16で得られたゴムシート100重量部に架橋剤としてジクミルパーオキシド1重量部を2本ロールで混練り配合し、その配合物を155℃で熱プレスし架橋させた。その架橋物を室温下、引張速度100mm/分で引張試験した。それぞれの架橋シートはE20,E21,E22である。その結果を図2に示す。図2から、架橋ゴム材料はひずみ2のあたりから高い応力を示すことがわかる。ひずみは、伸長した試料の全長の試料の伸長前の長さに対する比である。すなわち、ひずみ2は100%伸長を意味する。
【0057】
(比較例6)
未架橋ゴム100重量部に、粒径20nmのシリカ粒子80重量部及び、架橋剤としてジクミルパーオキシド1重量部を混練して配合物を得た。この配合物を155℃で熱プレスし架橋させた。このシートを室温下、引張速度100mm/分で引張試験した。その結果を図2のC6に示す。図2から、混練によって得た架橋ゴム材料は、伸長直後からひずみ約2までの応力は実施例より大きく、ひずみが大きいことがわかる。
【0058】
実施例20及び22並びに比較例6で得られた架橋ゴムを、室温で引張速度100mm/分で、ひずみ2までのヒステリシスを測定した。その結果を図3~5並びに表6に示す。
図3~5並びに表6より、インサイチュシリカを充てんした実施例20及び22で得られた架橋ゴムはヒステリシスロスが小さいことがわかる。これに対してシリカ粒子を混練充てんした架橋ゴム(比較例6)はヒステリシスロスが大きいことがわかる。
【0059】
【表6】
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【0060】
(実施例23及び比較例7)
未架橋NR100重量部に、架橋剤としてジクミルパーオキシド1重量部を混練し、得られた配合物を155℃で熱プレスをすることによって架橋シートを得た。この架橋シートを40℃のTEOSに17時間浸漬することによって、TEOSを膨潤させ、該架橋シート中にTEOSを含有させた。膨潤した架橋シートをTEOS中から取り出し、表面を軽くろ紙で拭き取った。
つぎに、40℃に保持された濃度0.096mol/Lのn-ヘキシルアミンあるいはnーブチルアミン試薬からなる触媒水溶液に、前記膨潤した架橋シートを24時間浸漬した。触媒水溶液から、架橋シートを取り出し、恒量になるまで40℃で、さらに80℃で減圧乾燥して、ゴムにインサイチュシリカが分散、充てんされた架橋ゴムシートを得た。この架橋ゴムシート中のシリカ充てん量及び粒径を求め、表7にその結果を示した。また、図7に実施例23と比較例7で得られたシートの引張試験結果を示した。
【0061】
【表7】
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【0062】
(実施例24~26及び比較例8~10)
ゴムをIRに変え、表8に示す処方にした他は実施例23と同じ方法でインサイチュシリカ充てんゴムシートを得た。結果を表8に示す。また、図8に実施例24~26と比較例8~10で得られたシートの引張試験(室温下、引張速度100mm/分)の結果を示した。
【0063】
【表8】
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【0064】
(実施例27)
実施例2で得られたインサイチュシリカ充てんNRにステアリン酸2重量部、活性亜鉛華1重量部、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド1重量部、及び硫黄1.5重量部を二本ロールで混練して得られた配合物を140℃で熱プレスして架橋体を作製した。トルエン中膨潤圧縮法で求めた網目鎖密度は7.2×10-5mol/cmであった。
【0065】
(比較例11)
NRゴム100重量部に市販シリカ(VN-3)を71重量部混練した他は実施例27と同じ配合組成、加工条件で比較架橋体を得た。網目鎖密度は7.6×10-5mol/cmであった。
【0066】
実施例27で得られた架橋体の応力-ひずみ曲線(室温、引張速度20mm/分)を図9(1)に示す。比較例11で得られた比較架橋体の応力—ひずみ曲線を図9(2)に示した。インサイチュシリカ充てんNR架橋体は、延伸直後の応力は比較試料より小さく、かつ、伸長に伴い応力はより大きくなった。
【0067】
実施例27で得られた架橋体(図10(1))と比較例11で得られた架橋体(図10(2)とを、それぞれ室温下、引張速度20mm/分でヒステリシス挙動を測定した。インサイチュシリカ充てんNR加硫物は、非常にヒステリシスロスおよび残留ひずみが小さいことがわかる。
【0068】
実施例27で得られた架橋体と比較例11で得られた架橋体とのそれぞれについて動的粘弾性試験を行った。その結果を図11及び図12に示した。10Hz、2℃/分、ひずみ振幅0.1%で測定した。比較試料として無充てんNR加硫物(図中、「RE」と表記)の結果も示した。フィラーを充てんしていないこと以外、加工条件は同じである。インサイチュシリカ充てんNR加硫物は、約-50℃以上の温度領域で動的弾性率はVN-3充てんNR加硫物より小さく、やわらかい試料であり、また、tanδが大きくてエネルギー散逸性が良かった。
【0069】
高含量にインサイシュシリカ充てんされたゴムは、希釈法によるマスターバッチにて、広い範囲でシリカ含量の異なる試料を作製することが可能となる。それによって、これまでに達成困難であった引張物性や動的粘弾性特性やヒステリシス特性においてもユニークな物性を示すことが可能である。
【0070】
(比較例12)
n-ヘキシルアミンをn-ブチルアミンに変えた他は実施例20とほぼ同様にして架橋シートを得た。インサイシュシリカ含量は43重量部である。図13に実施例20及び比較例12の応力-ひずみ曲線(室温、引張速度100mm/分)を示した。実施例20で得た架橋シートは、比較例12に比べ、低ひずみ領域から高応力を示すことがわかる。
【0071】
(比較例13)
n-ヘキシルアミンをn-ブチルアミンに変えた他は実施例21とほぼ同様にして架橋シートを得た。インサイシュシリカ含量は45重量部である。図13に実施例21及び比較例13の応力-ひずみ曲線を示した。実施例21で得た架橋シートは、比較例13に比べ、低ひずみ領域から高応力を示すことがわかる。
【0072】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されない。たとえば、触媒量、処理温度、反応時間等は適宜変更することができる。因みに、触媒量を増加させたり、処理温度を高くしたり、反応時間を長くすることによって充てん量や粒径を調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、下記のとおりの効果を奏するものである。
(1)シリカ等の微粒子をゴム中に多量に充てんさせることができる。
(2)このようなゴム組成物を短時間で製造できる。
(3)100nm以下の微粒子をゴム中に均一に分散させることができる。
(4)希釈によるマスターバッチ法で広い範囲でシリカ系微粒子の含量を変量できる。
(5)シリカ粒子を混練法で充てんしたものとは、異なった物性を示す。
(6)シランカップリング剤を併用することによって、高い応力を示す。
(7)硫黄系加硫剤、パーオキシド系架橋剤等によって架橋することができる
(8)合成ゴム及び架橋体中においても触媒が効果的に働く。
(9)シリカ微粒子が高含量でもシリカ混練品と比較してヒステリシスロス、動的弾性率、硬度、伸長直後の応力は低く、その後の低ひずみ領域(ひずみ約2)からの応力は高い
(10)非常に柔らかいゴム材料であり、かつ、tanδが大きく、エネルギー散逸性が良い。高反発弾性も期待できる。
(11)カーボンブラック系と同傾向の物性向上効果が得られ、インサイチュシリカはホワイトカーボンと呼ぶことができる。
【0074】
本発明により得られたゴム材料は、上記のような効果を奏するので、たとえば、防振ゴム、ゴムまり、コンベアベルト、オイルフェンス、各種タイヤ、キャスター、ローラ、シート、ベルト、ホース、ゴムタイル等の、いわゆる明色ゴム用途一般に好適に用いられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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