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明細書 :材料の単結晶薄膜製造方法及び単結晶薄膜製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4982845号 (P4982845)
公開番号 特開2008-007377 (P2008-007377A)
登録日 平成24年5月11日(2012.5.11)
発行日 平成24年7月25日(2012.7.25)
公開日 平成20年1月17日(2008.1.17)
発明の名称または考案の名称 材料の単結晶薄膜製造方法及び単結晶薄膜製造装置
国際特許分類 C30B  29/54        (2006.01)
C07D 333/18        (2006.01)
C07D 333/10        (2006.01)
C07D 333/16        (2006.01)
C07D 333/24        (2006.01)
FI C30B 29/54
C07D 333/18
C07D 333/10
C07D 333/16
C07D 333/24
請求項の数または発明の数 10
全頁数 25
出願番号 特願2006-179593 (P2006-179593)
出願日 平成18年6月29日(2006.6.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年2月23日国立大学法人京都工芸繊維大学において開催された卒業論文発表会で発表
審査請求日 平成21年6月29日(2009.6.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】山雄 健史
【氏名】堀田 収
【氏名】大田 郷史
【氏名】三木 智晴
個別代理人の代理人 【識別番号】100100158、【弁理士】、【氏名又は名称】鮫島 睦
【識別番号】100068526、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 恭生
【識別番号】100138885、【弁理士】、【氏名又は名称】福政 充睦
審査官 【審査官】鮎沢 輝万
参考文献・文献 特開平06-087685(JP,A)
特開2000-053411(JP,A)
特開2001-010897(JP,A)
特開2005-216966(JP,A)
特開2006-131433(JP,A)
調査した分野 C30B 1/00-35/00
C07D 333/10
C07D 333/16
C07D 333/18
C07D 333/24
特許請求の範囲 【請求項1】
溶媒に溶けないで残る有機半導体材料の固体が存在する、有機半導体材料と溶媒の混合物から、上記有機半導体材料の単結晶薄膜を形成する製造方法であって、
第1温度は上記有機半導体材料の固体が上記溶媒に溶けないで残り、上記有機半導体材料が混合物中に溶解した状態で存在するとともに、過剰の固体として存在し、上記混合物から有機半導体材料の結晶を成長させることで、混合物中の有機半導体材料の濃度が低下したときに、溶媒に溶け残った有機半導体材料が溶媒に溶けて、有機半導体材料で飽和した状態を維持する温度であり
第2温度は上記第1温度よりも上記有機半導体材料の固体の上記溶媒への溶解度が低い温度であり、
(1)上記第1温度で溶媒に溶けないで残る、有機半導体材料の固体を有する上記混合物を準備する工程、
(2)板状又は柱状の熱伝導部材の一部を、上記混合物に浸す工程、
(3)上記混合物の一部を第1温度制御手段により上記第1温度に保持する工程、及び
(4)熱伝導部材の上記混合物に浸されていない部分を第2温度制御手段により第2温度に保持する工程
を含んで成る上記有機半導体材料の単結晶薄膜の製造方法であって、
上記混合物に浸された熱伝導部材によって、溶媒に溶けないで残った有機半導体材料の固体を有する上記混合物に温度勾配を付与して、上記混合物中から、上記混合物に浸された上記熱伝導部材の一部に、上記有機半導体材料の単結晶薄膜を形成させる単結晶薄膜の製造方法。
【請求項2】
有機半導体材料の単結晶薄膜形成中に、有機半導体材料の固体が混合物中に存在し続ける請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記混合物に浸した熱伝導部材の一部に基材を設けて、基材に有機半導体材料の単結晶薄膜を形成させる請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
材料遮蔽部材を熱伝導部材の周囲に配置する工程を更に含む請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
第1温度は第2温度より高く、第2温度は3~35℃の室温である請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
溶媒に溶けないで残る有機半導体材料の固体が存在する、有機半導体材料と溶媒の混合物から、上記有機半導体材料の単結晶薄膜を形成する製造装置であって、
第1温度は上記有機半導体材料の固体が上記溶媒に溶けないで残り、上記有機半導体材料が混合物中に溶解した状態で存在するとともに、過剰の固体として存在し、上記混合物から結晶を成長させることで、混合物中の有機半導体材料の濃度が低下したときに、溶媒に溶け残った有機半導体材料が溶媒に溶けて、有機半導体材料で飽和した状態が維持される温度であり
第2温度は上記第1温度よりも上記有機半導体材料の固体の上記溶媒への溶解度が低い温度であり、
(I)上記第1温度で溶媒に溶けないで残る有機半導体材料の固体を有する上記混合物を含む容器、
(II)一部が、上記混合物に浸される板状又は柱状の熱伝導部材、
(III)上記混合物を第1温度に保持する第1温度制御手段、及び
(IV)熱伝導部材の上記混合物に浸されていない部分を第2温度に保持する第2温度制御手段
を含んで成る上記有機半導体材料の単結晶薄膜の製造装置であって、
上記混合物に浸された熱伝導部材によって、溶媒に溶けないで残った有機半導体材料の固体を有する上記混合物に温度勾配を付与して、上記混合物中から、上記混合物に浸された上記熱伝導部材の一部に、上記有機半導体材料の単結晶薄膜を形成させる単結晶薄膜の製造装置。
【請求項7】
上記混合物中に存在する有機半導体材料の過剰の固体は、粉末状、塊状、粒状又は膜状の形態を有する請求項に記載の製造装置。
【請求項8】
熱伝導部材の混合物に浸される一部は基材を有する請求項又はに記載の製造装置。
【請求項9】
熱伝導部材の周囲に材料遮蔽部材を有する請求項のいずれかに記載の製造装置。
【請求項10】
(III)第1温度に保持する第1温度制御手段はヒーターであり、(IV)第2温度に保持する第2温度制御手段として、3~35℃の室温の空気を用いる請求項のいずれかに記載の製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の単結晶薄膜製造方法及び単結晶薄膜の製造装置に関する。特に、有機半導体材料の単結晶薄膜製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料を光及び電子デバイスに応用するために、有機半導体材料の高配向膜、結晶膜の製造方法が多数研究されている。従来、有機材料の結晶を形成するために、以下のような方法が試みられていた:
(a)気相成長法:材料を加熱して気化又は昇華させ、冷却箇所で材料を結晶化させる;
(b)溶融成形法:材料を融点以上に加熱して融解後、冷却して再凝固させて結晶を得る;及び
(c)溶液法:材料を有機溶媒に溶かして飽和溶液を製造後、飽和溶液から溶媒を気化させる又は飽和溶液を冷却することで、温度変化にともなう材料の溶解度の変化を利用して、飽和溶液から結晶を析出させる。
【0003】
これらの方法には、下記のような課題がある。
(a)気相成長法及び(b)溶融成形法では、有機半導体材料をその融点又は昇華温度以上に加熱する必要があるので、これらの方法を適用できる材料は、長時間高温の状態にさらされても分解や変質を生じない熱的安定性の高い材料に限られるという課題がある。
【0004】
(b)溶融成形法は、材料が明確な融点を持つ場合、材料の高配向膜を提供できる方法であるという長所を有するが、基材上に有機半導体材料の結晶を直接成長させる場合、材料や基材を材料の融点以上の高温に加熱する必要があるため、常温に戻した際に、有機半導体結晶と基板の熱膨張率の差のために、温度ひずみが入り易いという課題を有し得る。
【0005】
(a)気相成長法では、成長管内の圧力や雰囲気ガスを調整することで大きく成長した結晶を得ることができる。しかし、得られた結晶を利用するために、別途基板に貼付する等の結晶の取り扱いを必要とするので、その取り扱いの際に、成長した結晶を破壊する恐れがあるという課題がある。
更に、気化又は昇華した材料を必ずしも高い割合で、好ましくは100%の割合で再結晶化することができるとは限らないので、所望の大きさ(重さ)の結晶を得るためには、多くの原材料を用いる必要があるという課題がある。
【0006】
一方、(c)溶液法は、材料の飽和溶液を用い、溶媒の気化又は温度変化にともなう材料の溶解度の変化を利用するため、(a)気相成長法及び(b)溶融成形法と比較して、より低温で結晶を成長させることができるという長所がある。
更に、温度変化にともなう材料の溶解度の変化を利用する場合、基材を用いて、該基材を溶液よりも低温に保持することで、基材上に直接有機半導体材料の結晶を成長させることができるという長所がある。
即ち、(c)溶液法は、有機半導体材料の結晶を基材上に直接成長させることができ、(a)気相成長法及び(b)溶融成形法と比較してより低温で操作できるので、得られた有機半導体材料の結晶に温度ひずみが入りにくいという長所を有する有機半導体材料の結晶成長方法といえる。そのような(c)溶液法は、例えば、特許文献1~8に例示されている。
【0007】
一般的な(c)溶液法では、まず有機溶媒に完全に溶解した有機半導体材料の飽和溶液を調製する。この飽和溶液から、下記のようにして結晶を析出させ、成長させる:
(i)飽和溶液を冷却し、飽和溶液の温度変化(一般的には温度低下)に伴う溶解度(材料の飽和度)の減少を利用して、飽和溶液に溶けなくなった材料の結晶を析出させ、更に飽和溶液を冷却し続けて結晶を成長させる;又は
(ii)飽和溶液の溶媒を蒸発させ、飽和溶液の溶媒量の減少による材料の溶解量の減少を利用して、飽和溶液に溶けなくなった材料の結晶を析出させ、更に、溶媒を気化させ続けて結晶を成長させる。
【0008】
(i)と(ii)の両方の方法に共通することは、結晶成長の開始から終了まで、常に、溶液を材料で飽和した状態に維持し続けることが必要であるということである。
【0009】
そのため、(i)の方法では、常に飽和溶液が材料で過飽和の状態になるように、飽和溶液の温度を正確に制御することが必要である。また、この方法では、飽和溶液の温度がある程度まで低下した段階(溶媒が固化するなど)で結晶成長が停止する。
【0010】
(ii)の方法では、溶液が材料で飽和した状態を維持するために、常に溶媒を蒸発させ続けることが必要である。そのため、蒸気圧の高い溶媒を用いることか、溶液の温度を高くすることが必要である。蒸気圧の高い溶媒を用いる場合、この方法は、その溶媒に比較的可溶な材料にしか適用できない、また溶液の温度を高くする場合、温度変化のために結晶にひずみを生じ得るという課題がある。
また、(ii)の方法では、溶媒が全て蒸発することで結晶成長が停止する。
【0011】
(i)と(ii)の両方の方法とも、原理的に、結晶成長中に溶液に新たな有機半導体材料を供給することができないため、得られる結晶の大きさは、最初に準備した飽和溶液内に溶ける材料の量に制限される。
即ち、常に飽和溶液から出発するので、大きな結晶試料を得るためには有機半導体材料が溶媒中に最初から大量に溶けることが必要であるので、大きな結晶は、溶媒に溶けやすい(溶媒に大量に溶ける)有機半導体材料でしか、得ることが困難である。
【0012】
更に(ii)の方法では結晶を成長させる際に、常に溶媒を蒸発させ続ける必要があるため、気化した溶媒を環境中に拡散させないために、別途溶媒回収機構を備えることが必要である。
【0013】

【特許文献1】特開2006-36565
【特許文献2】特開2006-27967
【特許文献3】特開2005-100897
【特許文献4】特開2002-68899
【特許文献5】特開2001-187301
【特許文献6】特開平7-82095
【特許文献7】特開平6-194700
【特許文献8】特開平6-191984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、(a)気相成長法及び(b)溶融成形法では、長時間高温の状態にさらされても分解や変質を生じない熱的安定性の高い材料に制限される、(c)溶液法では、飽和溶液の温度低下を厳密に制御することが必要である、得られる結晶の大きさは、最初に飽和溶液に溶ける材料の量に制限される、また、溶媒を気化させる場合溶媒を環境中に排出することが必要であり、蒸気圧が高い溶媒を使う必要があるという課題を解決することを目的とする。
更に、所望の基材上へ直接、温度歪みが少ない材料の単結晶薄膜を成長させることが困難であるという課題を解決することを目的とする。
また、有機溶媒に溶け難い材料にも、適用可能な液相による直接基材上へより大型の有機半導体結晶を成長させることが困難であるという課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、溶媒に溶けないで残る材料の固体が存在する混合物と、適する熱伝導手段をその混合物に用いることで、上述の課題を解決することができることに着目して、本発明を完成することに至ったものである。
【0016】
即ち、本発明は、一の要旨において、材料の単結晶薄膜の新規な製造方法を提供し、それは、
(1)第1温度で溶媒に溶けないで残る材料の固体を有する混合物を準備する工程、
(2)熱伝導部材の少なくとも一部を、上記混合物に浸す工程、
(3)上記混合物を第1温度に保持する工程、及び
(4)熱伝導部材の上記混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を第2温度に保持する工程
を含んで成る上記材料の単結晶薄膜の製造方法であって、
上記混合物から、それに浸した熱伝導部材の少なくとも一部に、上記材料の単結晶薄膜を形成させる単結晶薄膜の製造方法であり、
この製造方法は、有機半導体材料の単結晶薄膜の製造に好ましく使用することができる。
【0017】
本発明の一の態様において、材料の単結晶薄膜形成中に、材料の固体が混合物中に存在し続ける製造方法を提供する。
本発明の他の態様において、上記混合物に浸した熱伝導部材の少なくとも一部に基材を設けて、基材に単結晶薄膜を形成させる製造方法を提供する。
本発明の好ましい態様において、材料遮蔽部材を熱伝導部材の周囲に配置する工程を更に含む単結晶薄膜の製造方法を提供する。
本発明の更に好ましい態様において、第1温度は第2温度より高く、第2温度は室温である製造方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、他の要旨において、材料の単結晶薄膜の新たな製造装置を提供し、それは、
(I)第1温度で溶媒に溶けないで残る材料の固体を有する混合物を含む容器、
(II)少なくとも一部が、上記混合物に浸される熱伝導部材、
(III)必要に応じて、上記混合物を第1温度に保持する温度制御手段、及び
(IV)必要に応じて、熱伝導部材の上記混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を第2温度に保持する温度制御手段
を含んで成る上記材料の単結晶薄膜の製造装置であって、
上記混合物から、それに浸した熱伝導部材の少なくとも一部に、上記材料の単結晶薄膜を形成させる単結晶薄膜の製造装置である。
この製造装置は、有機半導体材料の単結晶薄膜の製造に好ましく使用することができる。
【0019】
本発明の一の態様において、該材料の過剰の固体は、粉末状、塊状、粒状又は膜状の形態を有する製造装置を提供する。
本発明の他の態様において、熱伝導部材の混合物に浸される少なくとも一部は基材を有する製造装置を提供する。
本発明の好ましい態様において、熱伝導部材の周囲に材料遮蔽部材を有する製造装置を提供する。
本発明の更に好ましい態様において、(III)第1温度に保持する温度制御手段はヒーターであり、(IV)第2温度に保持する温度制御手段を有さない製造装置を提供する。
【0020】
本発明は、好ましい要旨において、上記製造方法又は製造装置を用いて製造された材料、好ましくは有機半導体材料の単結晶薄膜を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の材料の単結晶薄膜製造方法は、上述の(1)~(4)の工程を含んで成り、溶媒に溶けないで残る材料の固体を有する混合物から、熱伝導部材の混合物に浸した少なくとも一部に、材料の単結晶薄膜を形成させる単結晶薄膜製造方法なので、(a)気相成長法及び(b)溶融成形法では、長時間高温の状態にさらされても分解や変質を生じない熱的安定性の高い材料に制限される、(c)溶液法では、飽和溶液の温度低下を厳密に制御することが必要である、得られる結晶の大きさは、最初に飽和溶液に溶ける材料の量に制限される、また、溶媒を気化させる場合溶媒を環境中に排出することを要し、蒸気圧が高い溶媒を使うことを要するという課題を解決することができる。
【0022】
材料の単結晶薄膜形成中に、材料の固体が混合物中に存在し続けるので、得られる結晶の大きさは、最初に飽和溶液に溶ける材料の量に制限されるという課題を解決することができる。
更に、混合物に浸した熱伝導部材の少なくとも一部に基材を設けて、基材に単結晶薄膜を形成させる場合、所望の基材上へ直接、温度歪みが少ない材料の単結晶薄膜を成長させることが困難であるという課題を解決することができる。更に、溶媒、特に有機溶媒に溶け難い有機半導体材料にも、液相によって、直接、基材上へ大型の有機半導体結晶を成長させることが困難であるという課題を解決することもできる。
【0023】
また、材料遮蔽部材を熱伝導部材の周囲に配置する工程を更に含む場合、混合物中の過剰の材料の固体が熱伝導部材、好ましくはそれに設けられた基材に直接付着して、析出した単結晶薄膜の品質が低下し得るおそれを減少させることができる。
【0024】
本発明の材料の単結晶薄膜製造装置は、(I)容器、(II)熱伝導部材、(III)必要に応じて、第1温度に保持する温度制御手段、及び(IV)必要に応じて、第2温度に保持する温度制御手段を含んで成り、混合物から、それに浸した熱伝導部材の少なくとも一部に、上記材料の単結晶薄膜を形成させる単結晶薄膜製造装置なので、(a)気相成長法及び(b)溶融成形法では、長時間高温の状態にさらされても分解や変質を生じない熱的安定性の高い材料に制限される、(c)溶液法では、飽和溶液の温度低下を厳密に制御することが必要である、得られる結晶の大きさは、最初に飽和溶液内に溶ける材料の量に制限される、また、溶媒を気化させる場合溶媒を環境中に排出することを要し、蒸気圧が高い溶媒を使うことも要するという課題を解決することができる。
【0025】
材料の過剰の固体は、粉末状、塊状、粒状又は膜状の形態を有する場合、単結晶薄膜を得ることができ、特に塊状又は膜状の形態を有する場合、単結晶薄膜の平坦性、単結晶薄膜の重なり等がより改良される。
熱伝導部材の混合物に浸される少なくとも一部は基材を有する場合、所望の基材上へ直接、温度歪みが少ない材料の単結晶薄膜を成長させることが困難であるという課題を解決することができ、更に、特に有機溶媒に溶け難い有機半導体材料にも、液相により、直接、基材上へ大型の有機半導体結晶を成長させることが困難であるという課題を解決することもできる。
【0026】
熱伝導部材の周囲に材料遮蔽部材を有する場合、混合物中の過剰の固体が熱伝導部材、好ましくはそれに設けられた基材に直接付着して、析出した単結晶薄膜の品質が低下し得るおそれを減少させることができる。
【0027】
本発明の製造方法又は製造装置を用いて製造された材料、好ましくは有機半導体材料の単結晶薄膜は、大型の単結晶薄膜である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る製造方法は、
(1)第1温度で溶媒に溶けないで残る材料の固体を有する混合物を準備する工程、
(2)熱伝導部材の少なくとも一部を、上記混合物に浸す工程、
(3)上記混合物を第1温度に保持する工程、及び
(4)熱伝導部材の上記混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を第2温度に保持する工程
を含んで成る上記材料の単結晶薄膜の製造方法であって、
上記混合物から、それに浸した熱伝導部材の少なくとも一部に、上記材料の単結晶薄膜を形成させる単結晶薄膜の製造方法である。
有機半導体材料に好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
本発明の製造方法は、溶媒に溶けないで残った材料の固体を有する混合物に温度勾配を付与することで、混合物中から混合物に浸された熱伝達材料の少なくとも一部上に材料を再結晶させて単結晶薄膜を形成させる製造方法である。本発明の製造方法でも、溶媒は材料で飽和しているが、結晶化することで溶媒に溶けている材料が減少するので、その減少量を、溶媒に溶け残っている過剰の材料を溶媒に溶かすことで、溶媒の材料による飽和状態を維持して、より大きな単結晶薄膜を形成させる方法である。
【0030】
本発明において「材料」とは、本発明の製造方法又は装置に使用することができる材料であれば特に制限されるものではない。材料として、配向性や結晶性が高く、単結晶を形成する能力を有するものが好ましい。そのような材料として、例えば有機材料、無機材料等を例示することができ、有機材料として、例えば、有機半導体材料、有機非線形光学材料、生体材料等を例示でき、無機材料として、例えば、無機塩、無機半導体材料、無機酸化物材料等を例示できる。
【0031】
更に、有機半導体材料として、例えば、式(I)に示す化合物:
式(I):(X)-(Y)
[ここで、
Xは、各々独立して、窒素、硫黄、酸素、セレン及びテルル等のヘテロ原子を有してよく、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等)、ハロゲン、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、アルケニル基(例えば、エテニル基等)、シアノ基、フッ素化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)等の置換基を有してよい6員環であり、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、p-ピリジルビニレン、ピラン、チオピラン環等であり、ベンゼン環がより好ましい。
mは、0~20が好ましく、1~8がより好ましい。
Yは、各々独立して、窒素、硫黄、酸素、セレン及びテルル等のヘテロ原子を有してよく、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等)、ハロゲン、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、アルケニル基(例えば、エテニル基等)、シアノ基、フッ素化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)等の置換基を有してよい5員環であり、好ましくは、チオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環であり、チオフェン環がより好ましい。
nは、0~20が好ましく、1~8がより好ましい。
XとYは、ブロックで結合しても、ランダムに結合しても、交互に結合してもよい。 XとYは、単結合で結合しても、二重結合で結合しても、三重結合で結合してもよい。
X同士は、縮環してもよい。
XとYは、単結合で結合し、XとYが交互に結合することが好ましい。]
を例示することができる。
【0032】
式(I)に記載した化合物において、式(II)に示す化合物:
式(II):(X)
[式(II)は、式(I)のn=0の化合物であり、X及びmは、式(I)に記載した通りであり、X同士は、縮環した、又は単結合で結合した化合物]が好ましい。
Xは、ベンゼン環であることがより好ましい。
そのような化合物として、より具体的には、テトラセン(参照:化1)、ペンタセン(参照:化2)、クアテル-フェニル(参照:化3)、キンクエ-フェニル(参照:化4)、セキシ-フェニル(参照:化5)を例示できる。
【化1】
JP0004982845B2_000002t.gif
【化2】
JP0004982845B2_000003t.gif
【化3】
JP0004982845B2_000004t.gif
【化4】
JP0004982845B2_000005t.gif
【化5】
JP0004982845B2_000006t.gif
【0033】
式(I)に記載した化合物において、式(III)に示す化合物:
式(III):(Y)
[式(III)は、式(I)のm=0の化合物であり、Y及びnは、式(I)に記載した通りであり、Y同士は単結合で結合した化合物]が好ましい。
Yは、チオフェン環であり、チオフェン環同士は、2位と5位で結合した化合物がより好ましい。
そのような化合物として、より具体的には、クアテル-チオフェン(参照:化6)、セクシ-チオフェン(参照:化7)及びオクチ-チオフェン(参照:化8)を例示できる。
【化6】
JP0004982845B2_000007t.gif
【化7】
JP0004982845B2_000008t.gif
【化8】
JP0004982845B2_000009t.gif
【0034】
式(I)に記載した化合物において、式(IV)に示す化合物:
式(IV):(X)m1-(Y)-(X)m2
[式(IV)は、式(I)において(Y)nが分子中央部にブロックとして存在し、その両側に(X)m1のブロックと(X)m2のブロックが存在し得る化合物であり、式(IV)のm1+m2は、式(I)のmであり、X、Y及びnは、式(I)に記載した通りであり、XとYは単結合で結合した化合物]が好ましい。
Yは、チオフェン環であり、チオフェン環はXと、2位及び5位で結合し、Xは置換基を有してよいベンゼン環であり、m1及びm2は、0~2であり、n=1~5である化合物がより好ましい。
n=1~3の場合、m1又はm2=2であることが更により好ましく、m1=m2=2であることもより好ましい。n=4以上の場合、m1又はm2=1であることが更により好ましく、m1=m2=1であることもより好ましい。n=1~5であることが特に好ましい。
【0035】
そのような化合物として、より具体的には、n=1の場合、BP1T(参照:化9)、BP1T-Bu(参照:化10)、BPT1-OME(参照:化11)、BP1T-CN(参照:化12)を例示することができる。
【化9】
JP0004982845B2_000010t.gif
【化10】
JP0004982845B2_000011t.gif
【化11】
JP0004982845B2_000012t.gif
【化12】
JP0004982845B2_000013t.gif
【0036】
そのような化合物として、より具体的には、n=2の場合、BC4(参照:化13)、BP2T(参照:化14)、BP2T-He(参照:化15)、BT2T-OME(参照:化16)、BP2T-CN(参照:化17)を例示することができる。
【化13】
JP0004982845B2_000014t.gif
【化14】
JP0004982845B2_000015t.gif
【化15】
JP0004982845B2_000016t.gif
【化16】
JP0004982845B2_000017t.gif
【化17】
JP0004982845B2_000018t.gif
【0037】
そのような化合物として、より具体的には、n=3の場合、BP3T(参照:化18)を例示することができる。
【化18】
JP0004982845B2_000019t.gif
【0038】
そのような化合物として、より具体的には、n=4の場合、BP4T(参照:化19)及びP4T-CF(参照:化20)を例示することができる。
【化19】
JP0004982845B2_000020t.gif
【化20】
JP0004982845B2_000021t.gif
【0039】
そのような化合物として、より具体的には、n=5の場合、P5T(参照:化21)を例示することができる。
【化21】
JP0004982845B2_000022t.gif
【0040】
式(I)に記載した化合物において、式(V)に示す化合物:
式(V):(X)m1-(Y)n1-(X)m2-(Y)n2-(X)m3
[式(V)は、式(I)のn=2(即ち、n1=n2=1)、及び式(I)のm=m1+m2+m3であって、m2=1の化合物であり、X及びYは、式(I)に記載した通りであり、XとYは単結合で結合した化合物]が好ましい。
Yは、チオフェン環であり、チオフェン環はXと、2位及び5位で結合し、Xは各々独立して、置換基を有してよいベンゼン環であり、m1及びm3は、1又は2である化合物がより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0041】
そのような化合物として、より具体的には、AC5(参照:化22)及びAC5-CF(参照:化23)を例示することができる。
【化22】
JP0004982845B2_000023t.gif
【化23】
JP0004982845B2_000024t.gif
【0042】
有機非線形光学材料として、例えば、特許文献1、6及び7に記載されたような、メチル-3-p-ニトロフェニルカルバゼート、4-ニトロフェニル-n-プロピルカルボヒドラジド、4-ニトロフェニル-4’-メトキシフェニルカルボヒドラジド、4-ニトロフェニル-エチルカルボヒドラジド、2-メチル-4-ニトロアニリン、m-ニトロアニリン、3-メチル-2,4-ジニトロフェニルアミノプロパネート、3-メチル-4-ニトロピリジン、2-アセチルアミノ-4-ニトロ-N,N-ジメチルアニリン、4-アミノベンゾフェノン、4’-ジメチルアミノ-N-メチル-4-スチルバゾリウム-メトスルフェート、2-(α-メチルベンジルアミノ)-5-ニトロピリジン、m-ニトロアニリン(mNA)、3-メチル-4-ニトロピリジン-1-オキサイド(POM)、4-ジメチルアミノ-3-アセトアミドニトロベンゼン(DAN)、4-ブロモ-4’-メトキシカルコン、4-ジメチルアミノ-N-メチル-4-スチルバゾリウムトシレート等を例示することができる。
【0043】
生体材料として、例えば、特開2000-351700号公報に記載されたような、酵素及び膜タンパク質等のタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ポリサッカライド、核酸、並びにこれらの複合体及びこれらの誘導体を例示することができる。
【0044】
本発明においては、「混合物」は、通常、材料と溶媒を混合することで得られ、第1温度で材料は溶媒に溶けないで残るので、溶媒が材料で飽和した飽和溶液に、材料の固体が含まれている。従って、「材料」は、混合物中に溶解した状態で存在するとともに、過剰の固体として存在する。この材料の固体は、例えば、粉末状、粒状、塊状及び膜状等の形態を有してよく、粒状、塊状、膜状であることがより好ましい。
【0045】
本発明において、「溶媒」とは、上述の材料をわずかでも溶かすことができるものであって、上述の材料の単結晶薄膜を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。単一の溶媒でも、二種以上の溶媒を組み合わせたものでも使用でき、材料に応じて、種々の溶媒を使用することができる。溶媒として、例えば、有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール及び2-プロパノール等のアルコール、アセトン等のケトン、トルエン等の芳香族、テトラヒドロフラン等の含酸素溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル、アセトニトリル等のニトリル、ジメチルホルムアミド等のアミド、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン及び1,2,4-トリクロロベンゼン等の含塩素溶媒、並びに水等を例示することができる。
【0046】
材料が有機半導体材料の場合、有機溶媒を用い、例えば、アセトン等のケトン、トルエン等の芳香族、テトラヒドロフラン等の含酸素溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル、アセトニトリル等のニトリル、ジメチルホルムアミド等のアミド、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン及び1,2,4-トリクロロベンゼン等の含塩素溶媒等を例示することができるが、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン及び1,2,4-トリクロロベンゼンを用いることが好ましい。
材料は、溶媒との組み合わせで相互に種々の選択ができる。溶媒は、材料の溶媒に対する溶解度がある程度あり、溶解度曲線の温度に対する勾配が大きい方ものが、材料との組み合わせの観点から好ましい。
【0047】
本発明において「第1温度」とは、材料の単結晶薄膜を形成させる際に、混合物を保持する温度をいう。この第1温度は、混合物を必要に応じて温度制御手段を用いて制御することで保持される。「第1温度に保持する温度制御手段(以下「第1温度制御手段」ともいう)」として、例えば、加熱するためのヒーター、冷却するためのクーラーを例示でき、より具体的には、ホットプレート、ウォーターバス、オイルバス、ハロゲンヒーター、氷、ドライアイス及びペルチェ素子、及びそれらによって温度調節された空気、水、熱媒体等を例示することができる。
【0048】
本発明において「第2温度」とは、材料の単結晶薄膜を形成させる際に、熱伝導部材の混合物に浸されていない部分の少なくとも一部で保持される温度をいう。第2温度は、混合物から熱を奪い、又は混合物に熱を与えるための温度と考えられる。
第2温度に、熱伝導部材の上記混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を保持するために、温度制御手段を用いてよい。「第2温度に保持する温度制御手段(以下、「第2温度制御手段」ともいう)」は、熱伝導部材の上記混合物に浸されていない部分の少なくとも一部の温度を制御することができる手段であれば、特に制限されるものではない。例えば、加熱するためのヒーター、冷却するためのクーラーを例示でき、より具体的には、ホットプレート、ウォーターバス、オイルバス、ハロゲンヒーター、氷、ドライアイス及びペルチェ素子、及びそれらによって温度調節された空気、水、熱媒体等を例示することができる。
【0049】
「第1温度」と「第2温度」は、使用する材料と溶媒の組み合わせ及び熱伝導部材の熱伝導係数等によって適宜定められるものであるが、一般的には、溶媒の温度が高いほど材料の溶解度は高いので、第1温度の方が第2温度より高い。溶媒の温度が低いほど材料の溶解度が高い場合、第2温度の方が第1温度より高い。また、一般的に第1温度は、材料の融点より低いが、溶媒の沸点、材料の溶媒への溶解度、溶媒の蒸気圧等を考慮して検討することが好ましい。第2温度は、溶媒が材料で飽和する量等を考慮して検討することが好ましい。第1温度と第2温度の温度差は、一般的には10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、20~50℃であることが特に好ましい。
一般に、第1温度は第2温度より高く、第2温度は室温であることが、製造が容易で簡略化されるので好ましい。
従って、この場合、第1温度制御手段は、ヒーターであり、第2温度制御手段は、不要となり、好ましい。
【0050】
本発明において「熱伝導部材」とは、過剰の材料の固体が存在する混合物にその一部が浸されて、混合物から熱をうばうことで、又は混合物に熱を与えることで、混合物に温度勾配を付与して熱伝導部材の少なくとも一部に材料の単結晶薄膜を析出させる部材をいう。
「熱伝導部材」は、例えば、板状、柱状等の形態を有するが、単結晶薄膜をその一部に形成させること、後述する基材をその一部に設けること等から、一般的に矩形の板状の形態が好ましい。その大きさ及び使用する数は、実際に使用する混合物の量、析出させる結晶の量等を考慮して、適宜選択することができる。
【0051】
「熱伝導部材」は、溶媒によって侵されない物質から作られることが好ましい。そのために表面に被覆を有してもよいが、混合物と接することで熱を伝導する少なくとも一部は、被覆を有さないことが好ましい。
「熱伝導部材」は、熱を伝導することから、適する熱伝導率を有することが好ましいが、熱伝導率は、第1温度、第2温度、溶媒が材料で飽和する量(材料の溶媒への飽和溶解度)等を考慮して決めることが好ましい。
「熱伝導部材」として、例えば、下記のものを例示できる。
ステンレス、アルミニウム、銅及び真鍮等の金属、
サファイア、セラミックス及び合成樹脂等の非金属、
シリコン、ガラス、石英、酸化膜付シリコン、ITO、ポリイミド、テフロン(登録商標)、マイカ、KBr及びグラファイト等の下記の基材としても使用できる部材。
尚、熱伝導部材は、混合物から熱を除去し、混合物の外部に熱を放出する場合、即ち、第1温度が第2温度より高い場合、放熱器ともいい、混合物に熱を加え、混合物に熱を吸収させる場合、即ち、第1温度が第2温度より低い場合、吸熱器ともいう。
【0052】
本発明では、混合物に浸される熱伝導部材の少なくとも一部に基材を設けて、基材上に単結晶薄膜を形成させることができる。基材上に単結晶薄膜を形成させると、単結晶薄膜の製造後に、基材に移動することが不要となり好ましい。
本発明において「基材」とは、単結晶薄膜を利用するために一般的に用いられている基材であって、本発明で使用できる基材であれば、特に制限されるものではない。
基材として、例えば、シリコン、ガラス、石英、酸化膜付シリコン、ITO、ポリイミド、テフロン(登録商標)、マイカ、KBr及びグラファイト等を例示することができる。材料が有機半導体材料の場合、基材は、シリコン基板、酸化膜付きシリコン基板、ITO基板、ポリイミド基板であることが好ましい。
【0053】
本発明では、必要であれば、材料遮蔽部材を熱伝導部材の周囲に配置する工程を更に含むことができる。これにより、過剰の材料の固体が熱伝導部材の少なくとも一部に付着することを防止することができる。ここで、「材料遮蔽部材」とは、飽和溶液中に存在する材料の固体の通行を妨げることで、材料の過剰の固体が熱伝導部材の少なくとも一部に付着することを防止することができる物であれば特に制限されるものではない。そのような材料遮蔽部材として、例えば、網、板、膜及びスレーブ等を例示することができる。材料遮蔽部材が網の場合、そのメッシュの大きさ等は飽和溶液に含まれる材料の固体の大きさを考慮して、適切に選択することができる。また、熱伝導部材の周囲への材料遮蔽部材の配置は、材料の過剰の固体が熱伝導部材の少なくとも一部に付着することを防止することができれば、特に制限されるものではない。
【0054】
また本発明に係る製造装置は、
(I)第1温度で溶媒に溶けないで残る材料の固体を有する混合物を含む容器、
(II)少なくとも一部が、上記混合物に浸される熱伝導部材、
(III)必要に応じて、上記混合物を第1温度に保持する温度制御手段、及び
(IV)必要に応じて、熱伝導部材の上記混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を第2温度に保持する温度制御手段
を含んで成る上記材料の単結晶薄膜の製造装置であって、
上記混合物から、それに浸した熱伝導部材の少なくとも一部に、上記材料の単結晶薄膜を形成させる単結晶薄膜の製造装置である。
本発明に係る製造装置は、有機半導体材料に好ましく使用することができる。
【0055】
本発明の製造装置は、上述の製造方法を実施するために適する。容器は、過剰の固体が存在する混合物を含み、熱伝導部材の少なくとも一部が混合物に浸されている。混合物を第1温度に保持する温度制御手段と、熱伝導部材の混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を第2温度に保持する温度制御手段が必要に応じて設けられる。本発明の製造装置を用いて材料の単結晶薄膜を、熱伝達媒体の混合物に浸された少なくとも一部上に形成させることができる。
【0056】
材料、溶媒、混合物、第1温度、第2温度、熱伝導部材、第1温度制御手段及び第2温度制御手段については、上述した通りである。
【0057】
本発明において「容器」とは、過剰の材料の固体が存在する混合物を入れる容器であって、目的とする材料の単結晶薄膜を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。そのような容器の材質は、溶媒や結晶を形成する材料によって適宜選択することができるが、例えば、金属(アルミニウム、ステンレス、銅及び真鍮等)、ガラス、石英、プラスチック、テフロン(登録商標)等を使用できる。容器の形状及び大きさは、用いる混合物の量に応じて、適宜選択することができる。容器は、溶媒が揮散することを防止するために、フタ、上部覆い等で密閉することが好ましい。
【0058】
容器の「フタ」とは、容器を封じることができるものであれば特に制限されるものではない。従って、フタは、例えば金属、樹脂等の硬質の材料で形成しても、フィルム等の可撓性の材料で形成してもよい。フタには、熱伝導部材を通すための開口部が設けられており、開口部の形状は、熱伝導部材の断面の形状に対応し、例えば、熱伝導部材が板状の場合、フタの開口部は溝(又はスロット)状であることが好ましい。
【0059】
本発明において、熱伝導部材の混合物に浸される少なくとも一部は基材を有する製造装置は、基材上に単結晶薄膜を直接形成させることができるので好ましい。
更に、熱伝導部材の周囲に材料遮蔽部材を有する製造装置は、過剰の材料の固体が熱伝導部材の少なくとも一部に付着することを防止することができるので好ましい。「基材」、「材料遮蔽部材」については、上述した通りである。
【0060】
以上のように本発明は優れた効果を示すが、それは以下のような理由によるものと考えられる。
本発明の製造方法及び製造装置は、溶媒に溶けないで残る材料の固体を有する混合物から結晶を形成する方法及び装置なので、(a)気相成長法及び(b)溶融成形法に関する課題を、(c)溶液法と同様に解決することができる。
更に、本発明では、溶媒に溶けないで残る材料の固体を有する混合物を用いる、即ち、結晶を形成させている間、常に、溶媒に溶け残った材料が混合物に存在している状態を維持する。これにより、結晶を形成させることによって、混合物中の材料の濃度が低下したとしても、溶媒に溶け残った材料が溶媒に溶けることで、常に材料で飽和した状態が維持される。
【0061】
従って、常に材料で飽和した状態が維持されるので、(c)溶液法と異なり、本発明では、飽和溶液の温度を厳密に、例えば、基準温度又は設定温度から、±1℃の範囲で、好ましくは±0.1℃の範囲で制御することが不要となり、混合物の温度はある程度一定に、例えば、基準温度又は設定温度から、好ましくは±20℃程度の範囲に、より好ましくは±5℃程度の範囲に保つことができればよい。即ち、本発明では、基準温度又は設定温度に対する温度制御の厳密さが緩和され、溶液法で必要な厳密な温度制御が不要となる。
【0062】
また、溶媒を環境中に放出しないためには、フタ、キャップ及び栓等を用いて飽和溶液を入れる容器を閉じて、本発明の方法及び装置を用いればよい。即ち、本発明の方法及び装置を密閉系で用いればよい。密閉系とすることで、溶媒の減少を防止することが本発明では好ましい。本発明では、溶媒は混合物中の溶けている材料を、形成されている結晶に運ぶための一種のキャリヤーとして使われると考えられるので、混合物中に溶けている材料の量は、あまり重要ではない。ただし、材料が混合物中に溶けている量は、結晶の形成速度に影響すると考えられる。従って、所望の材料が溶媒に全く不溶の場合は本発明を適用することは不可能だが、材料が僅かにでも溶ける場合には本発明を適用可能である。
【0063】
更に本発明では、材料の混合物に浸した熱伝導部材の少なくとも一部に基材を設けることで、基材上に直接的に結晶を形成させることができ、これによって、単結晶を基材上に移動させる際の単結晶の破損等を予め防止することができる。
【0064】
本発明の製造方法及び製造装置を用いることで、材料の、特に有機半導体材料の良質で大型の単結晶薄膜を再現性良く得ることができる。
【0065】
本発明の製造方法及び製造装置を用いると、例えば少なくとも、0.1mm角以上、好ましくは0.3mm角以上、より好ましくは1mm角以上、特に好ましくは10mm角以上の材料の、特に有機半導体材料の単結晶薄膜を得ることができる。本発明の方法及び装置を用いて製造された材料の、特に有機半導体材料の単結晶薄膜の結晶軸は、容易に判別することができる。これは、デバイスへの適応時に重要となる。また、得られた薄膜の膜厚の均一性に優れ、また、ひび及び欠陥を生じにくい、好ましくは無い等の特徴を有する。
本発明では、材料、例えば有機半導体材料が混合物中に溶けないで残っていることで、材料の単結晶薄膜が形成する際、溶けないで残っている材料は濃度が薄くなった混合物に溶けるので、自動的に混合物の飽和状態が維持されるから、単結晶薄膜を大きく形成させ続けることができる。
【0066】
また、飽和溶液の温度と熱伝導部材の少なくとも一部、好ましくは基材の温度及び両者の温度差を制御することで、単結晶薄膜の形成速度を制御することができ、そのことによって、単結晶薄膜の成長が容易な結晶軸の方向に特徴的に形成させた単結晶薄膜を得ることができる。
【0067】
また本発明では、密封系で材料の単結晶薄膜を製造することができるので、使用する溶媒を環境中へ拡散させず、環境負荷を低減できる。
【0068】
さらに本発明では、材料の減少は飽和溶液から単結晶薄膜として形成した量のみであり、溶媒は常に装置内に残っている。従って、材料を混合物に、混合物の使用中及び/又は使用後に加えることにより、溶媒及び材料、即ち混合物を繰り返し使うことが出来るので、本発明は経済的である。
【0069】
以上のように、本発明では、溶媒に材料を溶解して飽和溶液から材料の単結晶薄膜を形成させるので、一見すると(c)溶液法と類似するかのように見えるが、その本質とする部分は、根本的に異なるので、「溶液法による材料の結晶成長法、例えば有機半導体結晶成長法」全般に与える影響は大きいと考えられる。
【0070】
以下、添付した図面を参照し、本発明の形態及び具体例を例示しながら、本発明をさらに具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0071】
発明の実施の形態1
図1は、本発明に係る材料の単結晶薄膜の製造装置の実施の形態1を示す模式図である。図1(A)は、正面図を示し、図1(B)は、側面図を示す。形態1の製造装置は、溶媒に溶けないで残っている材料の固体70を有する混合物60を含む容器30、混合物60に少なくとも一部が浸されている熱伝達媒体10、容器30の混合物60の温度を第1温度に保持するための第1温度制御手段80を有する。第1温度制御手段80としてヒーターを用いることが好ましい。尚、熱伝達媒体10の混合物60に浸されていない部分の少なくとも一部は、容器のフタ20から容器の外部に延在する。この形態1の製造装置は、熱伝導部材10の混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を第2温度に保持する第2温度制御手段を有さないが、第2温度を室温(一般的には、例えば3~35℃)とする場合、第2温度制御手段として、室温の空気を使用することができるので、第2温度制御手段を設ける必要はない。第1温度制御手段としてヒーターを用い、第2温度を室温とすると、製造装置を簡略化することができ好ましい。尚、容器30は、フタ20を有するので、溶媒の蒸発を防ぐことができ好ましい。
この実施の形態1の製造装置を用いると、第1温度で溶媒に溶けないで残る材料の固体を有する混合物60を容器30に準備し、熱伝導部材10の少なくとも一部を、混合物60に浸し、混合物60を第1温度に、例えば、ヒーターを用いて保持し、熱伝導部材10の上記混合物60に浸されていない部分の少なくとも一部を第2温度、例えば室温に保持して、上記混合物60から、それに浸した熱伝導部材10の少なくとも一部に、上記材料の単結晶薄膜を形成させる単結晶薄膜の製造方法を行うことができる。
【0072】
ところで、溶媒に溶けないで残る材料の固体を有する混合物60の製造は、目的とする混合物を得ることができれば特に制限されるものではない。例えば、材料が第1温度で溶媒に完全に溶解することなく、溶け残るように、溶媒に飽和する量よりも多い量の材料を溶媒に加えて、混合物を製造する。必要に応じて、材料と溶媒を混合手段を用いて混合するが、混合手段は、目的とする混合物を得られる限り特に制限されるものではなく、例えば、攪拌、超音波照射、加熱、混練及び振とう等の手段を用いることができる。特に混合手段を用いなくとも、混合物を得られる場合、混合手段を用いて混合する必要はない。
【0073】
発明の実施の形態2
図2は、本発明に係る材料の単結晶薄膜製造装置の実施の形態2を示す模式図である。図2(A)は正面図、図2(B)は側面図である。形態1の製造装置と比較すると、形態2の製造装置は、熱伝導部材10は、混合物60に浸された少なくとも一部に基材40を有する点で異なる。基材40は、熱伝導部材10にネジ止めされているが、目的とする単結晶薄膜を得られる限り、いずれの方法を用いて基材40を熱伝導部材に設けてもよく、例えば、クリップ止め、接着、ネジ止め等を例示することができる。基材40は、図2では完全に混合物60に浸されているが、少なくとも一部が浸されていればよい。形態2の製造装置では、材料の単結晶薄膜は、基材40上に形成する。
【0074】
図2に示す本発明の実施の形態2の製造装置を用いて、更に本発明の製造方法をより具体的に説明する。
容器30の底部を温度制御手段80、例えば、ヒーターを用いて加熱して、混合物60を第1温度に保持する。一方、熱伝導部材10の混合物60に浸されていない部分の少なくとも一部は、例えば、室温の空気等で冷やされて、第2温度に保持されるので、混合物60の第1温度より低い温度になる。このため、混合物60には温度制御手段80で暖められた部分と、熱伝導部材10で冷やされた部分を生じるので、図3(A)及び(B)に示すように、溶液の対流90が発生し得る。
【0075】
温度制御手段80で温められた混合物60は、熱伝導部材10で冷やされた基板40上で冷やされて、図4(A)及び(B)に示すように材料の単結晶50を形成する。
【0076】
単結晶50が析出した混合物60は、冷えており下降する。温度制御手段80で混合物60が温められると、結晶50が混合物60から析出したので、混合物60は、飽和状態ではなくなる。その結果、過剰に存在する材料の固体70は、混合物60に溶けて、混合物は飽和状態になる。その混合物60は、上昇し基材40に循環し、更に結晶の析出を生ずることにより、図5に示すように析出した材料の単結晶50は大きく成長する。
【0077】
以上の形態1及び2に記載した製造方法は、材料、特に有機半導体の単結晶膜製造方法として、下記特徴を有する:
(i)熱伝導部材10で熱を伝導させて、熱伝導部材10で温度差を生じさせることで、好ましくは、混合物60を冷却することで、熱伝導手段に設けた基材40に材料の結晶を形成し、温度制御手段80、特にヒーターを用いて混合物60を加熱することで、混合物60が有する過剰の材料70を混合物に溶かして、材料の結晶の形成と同時に使用した材料を混合物60に自動的に溶かして供給することができる;
(ii)容器30にフタ20がされている、即ち密封系なので、大気中に溶媒を排出しない環境に優しい方法である;
(iii)材料70は、溶媒に溶ないで残る量を用いるので、結晶を形成する材料の粉末70の溶液60への供給は、単結晶薄膜50の形成中続く;
(iv)結晶成長中及び/又は後の混合物60に、材料70を外部から追加することで、混合物60を繰り返し、好ましくは継続的に、より好ましくは連続的に使用できる。
【0078】
形態2に記載した製造装置及び製造方法を用いる例1として、材料として化1に示すAC5、溶媒としてモノクロロベンゼン、基材40として酸化膜付シリコン基板、熱伝導部材10としてステンレス板を使用した。容器30にAC5と溶媒を入れて、これに超音波を照射してAC5を細かく粉砕して、過剰のAC5を有するモノクロロベンゼン混合物を得た。酸化膜付シリコン基板をステンレス板の少なくとも一部に設け、その基板を混合溶液に浸し、容器にフタをして、ステンレス板の混合物に浸していない部分を容器の外部に延在させた。容器の底部を90℃に設定したヒーターで加熱し、熱伝導部材の外部に延在する部分を氷水で冷却しながら、13時間保った。
得られた結晶の写真を図6に示す。図6(A)は酸化膜付シリコン基板上に析出したAC5結晶の通常の顕微鏡写真、図6(B)は同じ倍率でクロスニコル条件下において撮影した偏光顕微鏡写真である。(A-1)と(A-2)との違い及び(B-1)と(B-2)との違いは、顕微鏡の設定は何ら変えないで、試料のみをお互いに45度回転させた点のみである。写真では、0.1~0.2mm程度の大きさの結晶が数個見られ、それに加えより細かい粒上の結晶が多数重なりあっている。
【0079】
発明の実施の形態3
図7は、本発明に係る材料の単結晶薄膜製造装置の実施の形態3を示す模式図である。実施の形態3は、実施の形態2と比較して、板状の材料遮蔽部材100で熱伝導部材10を包囲している点で異なる。図9(A)は正面図、図9(B)は側面図である。
【0080】
形態3の製造装置及び製造方法の特徴は以下の通りである。形態1及び2の装置及び方法では、混合物60から結晶50が基材40上に析出するのに加え、混合物60の対流90中に存在する溶け残った粉末の材料70も基材40上に付着する可能性がある。材料遮蔽部材100を設けることにより、粉末の材料70の基板40への付着を防止して、基板40上への溶液60からの結晶の析出のみをより確実に起こさせる。
【0081】
形態3に記載した製造装置及び製造方法を用いる例2として、材料70として化1に示したAC5、溶媒としてモノクロロベンゼン、基材40として酸化膜付シリコン基板、熱伝導部材10としてステンレス板、材料遮蔽部材100としてアルミ箔を使用した。
容器30にAC5とモノクロロベンゼンを入れ、超音波を照射してAC5を細かく粉砕して、AC5とモノクロロベンゼン混合物を得た。これに、ステンレス板の少なくとも一部に設置した酸化膜付シリコン基板40を浸し、材料遮蔽部材100としてアルミ箔円筒を基板40の周囲に設置した。容器30にフタ20をして、ステンレス板の混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を容器30の外に出した。60℃に設定したヒーター80で容器30の底部を加熱し、熱伝導部材10の混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を空気で冷却しながら、この状態に86時間維持した。尚、酸化膜付シリコン基板40の上端は、溶液の液面よりも下方に位置させた。
【0082】
図8は、形態3の方法により得られたAC5の結晶の偏光顕微鏡写真と、AC5とモノクロロベンゼンの混合物からモノクロベンゼンを蒸発させて得られるAC5結晶の偏光顕微鏡写真を示す。
図8(A)が、形態3の方法により酸化膜付シリコン基板上に析出したAC5結晶のクロスニコル条件下での偏光顕微鏡写真であり、(B)が、超音波照射によって粉砕後のAC5とモノクロロベンゼンの混合物を酸化膜付シリコン基板上に滴下し、溶媒を気化させた基板のクロスニコル条件下での偏光顕微鏡写真である。図8(A)及び(B)のいずれも、(A-2)、(B-2)の写真は、(A-1)、(B-1)の結晶をクロスニコル下45°回転させて撮影した写真である。
図8(A)の写真から、0.3mm程度の大きさの結晶が見られる。しかし、図8(B)の写真では、超音波照射によって粉砕後のAC5とモノクロロベンゼンの混合溶液中には0.05mm未満のAC5粉末しか存在していないことがわかる。従って、図8(A)の写真から、具体例2の方法で0.3mm程度の大きさまでAC5結晶が基板上に直接成長したことが確認できる。
【0083】
本発明の実施の形態4
形態4では、図9に示すように、熱伝導部材10に設置した基材40の周囲を、混合物60中に溶け残った材料70の大きさより、目の細かい網状の材料遮蔽部材102で覆うことを除いて、形態2と同様である。
【0084】
この形態4の装置及び方法の特徴は以下の通りである。形態2の方法は、混合物の対流90中の溶け残った粉末状の材料70のみならず、ヒーターで温められて材料が溶かされた混合物60も遮蔽するおそれがある。粉末状材料は遮蔽し混合物の溶液は通し得る網状の材料遮蔽部材102を設けることで、粉末状材料70のみ遮蔽することで、効率的に材料の結晶50の析出を生じ得る。
【0085】
本発明の実施の形態5
実施の形態5では、図10に示すように、容器30の底に、基板上に溶融された膜状の材料74を配置し(形態5-1)、又は図11に示すように、容器30の底に直接、溶融された膜状の材料76を配置した(形態5-2)後、容器30中に溶媒(溶媒に溶ける程度の材料を含んでよい)を入れて加熱して膜状形態の材料を有する混合物60を準備することを除いて形態2と同様に単結晶薄膜を作製した。
【0086】
実施の形態5の製造装置及び方法の特徴は以下の通りである。形態2~4の方法では、飽和量以上で溶け残った材料が粉末状態70で溶液60中を漂い、移動する。そのため基板40上には成長している単結晶50以外に、微小な残量粉末70が付着する可能性がある。形態3、4では、基材40及び結晶50の周りに材料遮蔽部材100又は網状の材料遮蔽部材102を設けることにより微小な材料粉末70の付着を防止する。容器30の底部に基板上で溶融されることで形成された膜状材料74や溶融することで形成された膜状材料76を配置することにより、容器30の底で暖められた材料は直接溶媒に溶ける。従って、混合物60を製造する際に、微小な材料粉末70の発生及びその使用を減じ得るので、より確実に材料の結晶50の成長を促進することが出来る。
【0087】
形態5-1に記載した装置及び方法を用いる例3として、材料として化1に示すAC5、溶媒としてモノクロロベンゼン、基材40として酸化膜付シリコン基板、熱伝導部材10としてステンレス板、基板上の溶融膜状材料74として別途準備した酸化膜付シリコン基板40上のAC5溶融膜を使用した。
予め作製した基板上のAC5溶融膜状材料74を容器30中のモノクロロベンゼンに沈めた後、ステンレス板上に設置した酸化膜付シリコン基板を浸して、容器30にフタ20をした。その際、熱伝導部材10の混合物に浸されていない部分の少なくとも一部は容器30の外部に出した。90℃に設定したヒーター80で容器30の底部を加熱しつつ、熱伝導部材10の混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を、室温の空気で冷却しながら、44時間保持した。
得られた結晶の顕微鏡写真を図12に示した。図12(A)は酸化膜付シリコン基板上に析出したAC5結晶の通常の顕微鏡写真、(B)は同じ倍率でクロスニコル条件下において撮影した偏光顕微鏡写真である。図12(A-2)及び(B-2)は、試料のみを(A-1)及び(B-2)に対して45度回転させた以外は、顕微鏡の他の設定は変えないで撮影した写真である。写真より、1mm程度の大きさの結晶が得られていることが分かる。
【0088】
また、形態5-2に記載した装置及び方法を用いる他の例4として、材料として化1に示すAC5、溶媒としてモノクロロベンゼン、基材40として酸化膜付シリコン基板40、熱伝導部材10としてステンレス板、溶融膜状材料76として容器30に直接作製したAC5溶融膜状材料76を使用した。
予めAC5溶融膜状材料76を作製した容器30にモノクロロベンゼンを入れた後、ステンレス板10上に設置した酸化膜付シリコン基板40を浸して、容器30にフタ20をした。その際、熱伝導部材10の混合物に浸されていない部分の少なくとも一部は容器30の外部に出した。90℃に設定したヒーター80で容器30底部を加熱しつつ、熱伝導部材10の混合物に浸されていない部分の少なくとも一部を室温の空気で冷却しながら、44時間保持した。
得られた結晶の偏光顕微鏡写真を図13に示す。図13(A)は酸化膜付シリコン基板40上に析出したAC5結晶の通常の顕微鏡写真、(B)は同じ倍率でクロスニコル条件下において撮影した偏光顕微鏡写真である。図13(A-2)及び(B-2)は、試料のみを(A-1)又は(B-2)に対して45度回転させた以外は、顕微鏡の他の設定を固定したままのときの写真である。図13(A)及び(B)から、0.1mm程度の大きさの結晶が得られていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明に係る材料の単結晶薄膜の製造装置の実施の形態1を示す模式図である。図1(A)は、正面図を示し、図1(B)は、側面図を示す。
【図2】図2は、本発明に係る材料の単結晶薄膜製造装置の実施の形態2を示す模式図である。図2(A)は正面図、図2(B)は側面図である。
【図3】図3は、本発明に係る材料の単結晶薄膜製造装置の形態2を示す模式図であって、温度制御手段80によって、混合物60が加熱され、熱伝導部材10によって混合物10が冷やされることで、混合物60に対流90が生じている様子を示す模式図である。図5(A)は正面図、図5(B)は側面図である。
【図4】図4は、本発明に係る材料の単結晶薄膜製造装置の形態2を示す模式図であって、基材40に単結晶50の形成が開始した様子を示す模式図である。図4(A)は正面図、図4(B)は側面図である。
【図5】図5は、本発明に係る材料の単結晶薄膜製造装置の形態2を示す模式図であって、基板40の単結晶薄膜50が成長して大きくなった様子を示す模式図である。図5(A)は正面図、図5(B)は側面図である。
【図6】図6は、実施の形態2の装置を用いて得られた、有機半導体単結晶薄膜50の顕微鏡写真を示す。図6(A)は、通常の顕微鏡写真であり、図6(B)は偏光顕微鏡写真である。
【図7】図7は、本発明に係る材料の単結晶薄膜製造装置の実施の形態3を示す模式図である。図7(A)は正面図、図7(B)は側面図である。
【図8】図8は、形態3の方法により得られたAC5の結晶の偏光顕微鏡写真と、AC5とモノクロロベンゼンの混合物からモノクロベンゼンを蒸発させて得られたAC5結晶の偏光顕微鏡写真を示す。
【図9】図9は、本発明に係る材料の単結晶薄膜製造装置の実施の形態4を示す模式図である。図9(A)は正面図、図11(B)は側面図である。
【図10】図10は、本発明に係る材料の単結晶薄膜製造装置の実施の形態5-1を示す模式図である。図10(A)は正面図、図10(B)は側面図である。
【図11】図11は、本発明に係る材料の単結晶薄膜製造装置の実施の形態5-2を示す模式図である。図11(A)は正面図、図11(B)は側面図である。
【図12】図12は、形態5-1の方法を用いて得られた有機半導体材料の結晶膜の顕微鏡写真である。図12(A)は通常の顕微鏡による写真であり、図12(B)は偏光顕微鏡による写真である。
【図13】図13は、形態5-2の方法を用いて得られた有機半導体材料の結晶膜の顕微鏡写真である。図13(A)は通常の顕微鏡による写真であり、図13(B)は偏光顕微鏡による写真である。
【0090】
10 熱伝導部材
20 容器のフタ
30 容器
40 基板
50 単結晶薄膜
60 混合物
70 粉状の材料
74 基板上で溶融することで形成された膜状の材料
76 溶融することで形成された膜状の材料
80 温度制御手段
90 混合物の対流
100 板状の材料遮蔽部材
102 網状の材料遮蔽部材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12