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明細書 :ポリ乳酸合成のための有機酸系触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5264483号 (P5264483)
登録日 平成25年5月10日(2013.5.10)
発行日 平成25年8月14日(2013.8.14)
発明の名称または考案の名称 ポリ乳酸合成のための有機酸系触媒
国際特許分類 C08G  63/82        (2006.01)
C08G  63/06        (2006.01)
C08K   5/42        (2006.01)
C08L 101/16        (2006.01)
FI C08G 63/82 ZBP
C08G 63/06
C08K 5/42
C08L 101/16
請求項の数または発明の数 11
全頁数 15
出願番号 特願2008-521204 (P2008-521204)
出願日 平成19年6月12日(2007.6.12)
国際出願番号 PCT/JP2007/061784
国際公開番号 WO2007/145195
国際公開日 平成19年12月21日(2007.12.21)
優先権出願番号 2006165991
優先日 平成18年6月15日(2006.6.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年5月14日(2010.5.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】安孫子 淳
【氏名】岩橋 寿子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 忠
参考文献・文献 特開2003-105073(JP,A)
特開2002-249953(JP,A)
特開2002-053649(JP,A)
特開平05-105745(JP,A)
調査した分野 C08G 63/00-63/91
C08K 5/00-5/59
C08L 101/16
特許請求の範囲 【請求項1】
スルホン酸のアミン塩あるいはスルホン酸のホスフィン塩からなるポリ-L-乳酸を合成するための有機酸系触媒であって、
前記スルホン酸が、フッ素置換アルカンスルホン酸であり、
前記アミンが、芳香族アミンまたは含窒素複素環式化合物であり、
前記ホスフィンが、アリール基を含むホスフィンである、有機酸系触媒。
【請求項2】
フッ素置換アルカンスルホン酸が、トリフルオロメタンスルホン酸である、請求項に記載の有機酸系触媒。
【請求項3】
芳香族アミンが、2,3,4,5,6-ペンタフルオロアニリンである、請求項に記載の有機酸系触媒。
【請求項4】
含窒素複素環式化合物が、ピリジンまたはN-メチルイミダゾールである、請求項に記載の有機酸系触媒。
【請求項5】
ホスフィンが、トリアリールホスフィン、アリールジアルキルホスフィン、又はジアリールアルキルホスフィンであるモノホスフィン、該モノホスフィンの組み合わせによるジホスフィン、もしくはトリホスフィンである請求項に記載の有機酸系触媒。
【請求項6】
ホスフィンが、トリアリールホスフィンである、請求項1、2又は5に記載の有機酸系触媒。
【請求項7】
トリアリールホスフィンが、トリフェニルホスフィンである、請求項に記載の有機酸系触媒。
【請求項8】
L-乳酸を脱水重縮合してポリ-L-乳酸を製造するに際して、請求項1~いずれかに記載の有機酸系触媒を使用することを特徴とする、ポリ-L-乳酸の製造方法。
【請求項9】
ヒドロキシカルボン酸を脱水重縮合してヒドロキシカルボン酸を製造するに際して、請求項1~いずれかに記載の有機酸系触媒を使用することを特徴とする、ポリヒドロキシカルボン酸の製造方法。
【請求項10】
2種類以上のヒドロキシカルボン酸を脱水重縮合してヒドロキシカルボン酸共重合体を製造するに際して、請求項1~いずれかに記載の有機酸系触媒を使用することを特徴とする、ポリヒドロキシカルボン酸共重合体の製造方法。
【請求項11】
ヒドロキシカルボン酸とラクトンを開環-脱水重縮合してヒドロキシカルボン酸共重合体を製造するに際して、請求項1~いずれかに記載の有機酸系触媒を使用することを特徴とする、ポリヒドロキシカルボン酸共重合体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はヒドロキシカルボン酸、特にL-乳酸の直接脱水重縮合可能な有機酸系触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ-L-乳酸に代表されるポリヒドロキシカルボン酸は、機械的特性、物理的性質、化学的性質に優れている上に自然環境下で分解され、最終的には微生物によって水と炭酸ガスになるという生分解性の機能も有しており、近年医療用材料や、汎用樹脂代替等、様々な分野で注目されており、今後もその需要が大きく伸びることが期待されている。
【0003】
ポリ-L-乳酸は、下記したように乳酸の環状ジエステルモノマーであるL-ラクチドの開環重合(ラクチド法)もしくはL-乳酸のオリゴマーを経由するなどの間接重合法(「ラクチド法」も間接重合法に含む)によって合成される。
【化1】
JP0005264483B2_000002t.gif

【0004】
ラクチド法の場合、ラクチドの単離により原料が精製され高分子量のポリ-L-乳酸が得られるが、工業的にラクチド製造、精製工程における運転面、設備面でのコストが大きくなるので、安価な製品を製造するためには問題となっていた。
【0005】
間接重合法では、用いられている触媒の種類は豊富とはいえず、パラトルエンスルホン酸や、塩化スズ、また塩化スズとパラトルエンスルホン酸の複合触媒を用いた反応が報告されている(非特許文献1-4)。
【0006】
パラトルエンスルホン酸や、塩化スズを用いた報告例(非特許文献1)では、触媒/L-乳酸比を2.5wt%として乳酸をオリゴマー化してからモレキュラーシーブを用いて共沸脱水重縮合を行い、分子量10万程度のポリマーを合成している。
【0007】
塩化スズとパラトルエンスルホン酸の複合触媒を用いた報告例(非特許文献2)では、乳酸を一旦無触媒で減圧下において加熱することによりオリゴマーを調製し、触媒(触媒/オリゴ(L-乳酸)比、0.4wt%)を添加して溶融重合し分子量2万程度のポリマーを得た後、熱処理して結晶化させ固相系で後重合し分子量数10万のポリマーを合成している。
【0008】
乳酸を直接重縮合する触媒も報告されているが(特許文献1-5)、触媒の水に対する安定性が低い、触媒活性が低い、金属系触媒を用いるため触媒の完全な除去が必要、などの触媒活性や、プロセスの簡易化についての問題があり、上記の間接重合法が用いられているのが実情である。

【特許文献1】特開2003-335850
【特許文献2】特開平10-231358
【特許文献3】特開2001-213949
【特許文献4】特開2002-138142
【特許文献5】特開2004-43727
【非特許文献1】Ajioka M, Enomoto E, Suzuki K and Yamaguchi A, Bull Chem Soc Jpn 1995 68 2125.
【非特許文献2】S.I.Moon, I.Taniguchi, M.Miyamato, Y.Kimura and C.W.Lee., High Perform. Polymer, 2001, 13, S189-S196.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、L-乳酸の直接脱水重縮合によりポリ-L-乳酸を合成可能な新規な有機酸系触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、ポリ-L-乳酸を合成可能な新規な有機酸系触媒としてスルホン酸のアミン塩あるいはホスフィン塩を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機酸系触媒を使用すると、乳酸から直接ポリ乳酸が合成でき、触媒活性が従来の直接重合触媒に比べ高い。それ故、製造工程を簡素化でき、生産効率を向上させることができる。
【0012】
また本発明の有機酸系触媒は再利用が可能である。それ故、コストの削減、廃棄物の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】触媒濃度と分子量との相関関係を表した図。
【図2】ポリ-L-乳酸のH-NMRスペクトル。
【図3】GPCクロマトグラム。
【図4】ポリ-L-乳酸のH-NMRスペクトル。
【図5】L-乳酸オリゴマーのH-NMRスペクトル。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の有機酸系触媒は、スルホン酸のアミン塩またはスルホン酸のホスフィンの塩である。
【0015】
本発明においてスルホン酸は、アルカンスルホン酸およびアレーンスルホン酸を含む概念で使用している。好ましくはアルカンスルホン酸が使用される。それらのスルホン酸は、フッ素置換されていることが好ましく、その置換数は多いほどより望ましい。特にフッ素置換アルカンスルホン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸の使用が最も好ましい。
【0016】
本発明においてアミンは、脂肪族および/または芳香族の1級、2級、3級アミン、それらのアミンを含むジアミンあるいはトリアミン等のポリアミン、および含窒素複素環式化合物(単環、縮合環)を含む概念で使用している。スルホン酸と塩を構成するアミンとしては、アルキルアミン、芳香族アミン、含窒素複素環式化合物、好ましくは芳香族アミン、含窒素複素環式化合物である。アルキルアミンとしてはトリエチルアミンあるいはジエチルシクロヘキシルアミン等、芳香族アミンとしてはアニリンあるいはジフェニルアミン等、含窒素複素環式化合物としては、ピリジンあるいはN-メチルイミダゾール等が例示される。それらの中でもフッ素置換されているアミン、特に芳香族アミンが好ましく、その置換数は多いほどより好ましい。フッ素置換芳香族アミンとして、例えば2,3,4,5,6-ペンタフルオロアニリンが例示できる。
【0017】
スルホン酸と塩を構成するホスフィンとしては、トリアリールホスフィン、アリールジアルキルホスフィン、ジアリールアルキルホスフィン、トリアルキルホスフィン等のモノホスフィン、上記の組み合わせによるジホスフィン、トリホスフィン等が使用される。アリール基を含むホスフィンが好ましく、そのようなホスフィンとしてトリフェニルホスフィンが例示できる。
【0018】
スルホン酸のアミン塩またはスルホン酸のホスフィンの塩は、公知の方法で合成できるが、一般に、塩化メチレン等不活性な溶媒中に溶解したアミンまたはホスフィンに、当量のスルホン酸を氷冷下滴下し、エーテル等の塩が不溶な溶媒で希釈することにより塩を沈殿させ、濾取することにより製造できる。
【0019】
本発明の有機酸系触媒は、酸解離定数(K)ができるだけ大きくなるように、スルホン酸とアミンまたはホスフィンの組み合わせを考慮するとよい。乳酸からのポリ乳酸の生成は、基本的にはエステル化反応であり、酸触媒存在下、共沸脱水を行なう。本発明の有機酸系触媒はその際の酸触媒としてプロトンイオン(H)を供給するので、その解離定数が小さすぎると触媒としての能力が低い。
【0020】
L-乳酸は、通常水を含んだ形で入手できる。ポリ-L-乳酸はそのような乳酸と本発明の触媒を適当な溶媒中で、脱水縮合することにより合成される。本発明の触媒は、水に対して安定であり、二量体やオリゴマーを形成する段階を踏まなくても、L-乳酸から直接ポリ-L-乳酸を合成できる。
【0021】
乳酸に対する触媒の濃度(触媒/乳酸)は、0.01~1mo1%の間で使用される。本発明の有機酸系触媒は、特に0.1mol%程度の低濃度でも十分機能する。
【0022】
溶媒は、脱水縮合反応による生じる水を共沸除去するために使用されるものである。そのような溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン等が使用できる。使用量は操作性の観点から、乳酸に対して1~3倍(容量)程度である。
【0023】
反応温度は高い程好ましいが、共沸脱水する必要があるので、溶媒の共沸温度となる。従って、反応温度の観点からは、共沸温度が高くなる、ベンゼン、トルエン、キシレンの順で好ましい。
【0024】
生成ポリマーの分子量は、反応温度によって上限が認められるので、その温度で得られる上限の分子量が得られる時間重合すればよい。従って、重合時間は、目的とする分子量、重合温度、触媒の種類、触媒の濃度等に依存して適宜選定されるべき条件である。
【0025】
本発明の触媒は、重合によりL-乳酸のラセミ化を生じることなく、ポリ-L-乳酸を生成することができ、分子量(Mw)約10000~100000のポリ-L-乳酸を製造することができる。
【0026】
本発明の有機酸系触媒は、上記ではポリ-L-乳酸を例示して説明したが、ポリ-L-乳酸以外のポリヒドロキシカルボン酸の合成、例えば、D-乳酸、DL-乳酸、グリコール酸、マンデル酸、2-ヒドロキシイソ吉草酸、2-ヒドロキシブタン酸、りんご酸、酒石酸、およびアミノ酸、例えばL-フェニルアラニン、グリシンおよびL-α-アラニン等のポリマー、またはこれらの共重合体の製造にも適用することができる。また、ポリヒドロキシカルボン酸の一部を、1,4-ブタンジオール等の多価アルコール、特に二価アルコールおよび/またはコハク酸等の多価カルボン酸、特に二価カルボン酸、またはラクトンに置き換えた場合にも本発明の有機酸系触媒は使用可能である。
【0027】
特に、本発明の有機酸系触媒を使用し、L-乳酸等のヒドロキシカルボン酸と上記アミノ酸との共重合体を合成する場合、重合温度、オリゴ乳酸の利用、バルク重合等重合方法,条件を変えることで数千~数万の分子量を持つ共重合体の合成が可能である。
【0028】
本発明の有機酸系触媒は再利用が可能である。即ち、重合後、反応混合物をメタノールで希釈し、ポリマーを沈殿させ、ろ過分離後、濾液から溶媒を除去すれば触媒を回収できる。回収触媒は、濾液から溶媒除去後、そのまま次の反応に使用することができるが、必要により再結晶することにより精製すればよい。
【実施例】
【0029】
測定装置
H-NMR(500MHz)スペクトル測定:
BRUKERDRX500 spectrometer(ブルカー社製)を使用した。
溶媒には標準化合物としてテトラメチルシラン(TMS)を0.03vol%g含むCDC1を用いた。
【0030】
ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
測定にはShimadzu LC- 6 AD pump、RID- 10A RI detector、Shimadzu CLASS-LC10 Chromatopac data processor、Shimadzu DGU-20A3 degasserを使用した。また、カラムはTSK-GEL G1000H,G2000HおよびG2500Hを用い、オーブン温度を40℃としてテトタヒドロフラン(THF)を流速1.0ml/minで流した。ポリマー40.0mgに対してTHF1.mlで試料を作製し、5μlを注入して測定した。重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)はポリスチレンを標準としてキャリブレーションした。
【0031】
使用試薬
L-乳酸の90wt%水溶液、SnCl、p-トルエンスルホン酸-水和物、以上、和光純薬工業社製。
トリフルオロメタンスルホン酸:東京化成社製
ピリジン:東京化成社製
N-メチルイミダゾール:東京化成社製
トリフェニルホスフィン:和光純薬社製
【0032】
2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニルアンモニウムトリフレート(PFPAT)の合成
2,3,4,5,6-ペンタフルオロアニリン5.0gをジクロロメタン25ml中に溶解させ、氷冷しながらCFSOH 2.4mlをゆっくり滴下し混合、攪拌した。析出した結晶を吸引ろ過し、ろ過物をジエチルエーテルで洗い、減圧乾燥した。やや紫がかった乳白色の結晶が得られた。収率は79.6%であった。融点は211.5℃であった。
【0033】
ピリジニウムトリフレートの合成
200mlナスフラスコ中で塩化メチレン25mlにピリジン0.82mlを溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸0.9mlを少しずつ滴下した。析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥した。収率94.6%
参考文献:R. Cordone, W. D. Harman, H. Taube, J.Am.Chem.Soc. 1989, 111, 2896-2900.
【0034】
N-メチルイミダゾリウムトリフレートの合成
200mlナスフラスコ中で塩化メチレン25mlにN-メチルイミダゾール0.81mlを溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸0.9mlを少しずつ滴下した。析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥した。収率92.3%
参考文献:Chaoyu Xie, M. A. Staszak, J. T. Quatroche, C. D. Sturgill, V. V. Khau, M.J. Martinelli, Organic Process Research & Development.2005, 9(6),730-737.
【0035】
トリフェニルホスホニウムトリフレートTPPTの合成
200mlナスフラスコ中で塩化メチレン25mlにトリフェニルホスフィン2.3gを溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸0.9mlを少しずつ滴下した。塩化メチレン/ジエチルエーテル/ヘキサン=2/2/1の溶媒から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥した。収率78.9%
参考文献:van der Akker, M. Jellinek, Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 1967, 86, 275-288.
【0036】
(実施例1)
90%L-乳酸水溶液4.0ml、溶媒(トルエン)8.0ml、下記表1に示した触媒25ml(触媒/L-乳酸比:1.00mol%)をフラスコ内で混合した。Dean Stark trapを取り付け常圧下で系外に水を留去しながら22.5時間共沸脱水操作をおこなった。
【0037】
得られたポリマー溶液からトルエンを留去(エバポレート)した。残渣をジクロロメタン(CHCl)20mlに溶解後、得られた溶液を氷冷したメタノール(CHOH)150ml中に投入し、ポリマーを沈殿させた。沈殿物を吸引ろ過して減圧乾燥した。ろ紙を透過するような粒子径のポリマーについては遠心分離機を用いてメタノールとポリマーを分離した後、ジクロロメタン10mlに溶解し、得られた溶液から溶媒を留去(エバポレート)し、減圧乾燥してポリマーを得た。なお、以下のポリ-L-乳酸の合成においても、溶媒、反応時間、触媒、触媒/L-乳酸比を変える以外は上記と同様にポリ-L-乳酸の合成を行った。
【0038】
【表1】
JP0005264483B2_000003t.gif

【0039】
無触媒ではオリゴマーが生成した。オリゴマーのH NMR スペクトルを図5に示した。従来汎用されているSnCl触媒やp-トルエンスルホン酸を用いた場合、この条件で合成したポリ-L-乳酸の分子量は重量平均分7900、23000であった。
【0040】
同じスズ系でもジ-n-ブチルチンジアセテート、ジ-n-ブチルチンオキサイド、Sn(II)2-エチルヘキサノエートを用いた場合や、Sm(III)トリフルオロメタンスルホレート、ピリジニウムp-トルエンスルホネートを用いた場合ではポリマーは生成しなかった(分子量約500程度まで)。
【0041】
これに対して、トリフルオロメタンスルホン酸とペンタフルオロアニリンとの塩であるPFPATを用いた場合、18600の分子量をもつポリ-L-乳酸が得られた。
【0042】
ピリジニウムp-トルエンスルホネートを用いた条件でオリゴマーしか生成しなかったのは、トリフルオロメタンスルホン酸に対してp-トルエンスルホン酸の酸性度が低く、弱塩基との塩になった際にその酸性度が低くなってしまうからだと考えられる。
【0043】
(実施例2)
次に、良好な触媒活性を示したPFPAT、ピリジニウムトリフレート、N-メチルイミダゾリウムトリフレート、トリフェニルホスホニウムトリフレート、p-トルエンスルホン酸およびSnClについて触媒活性を比較した。トルエン中において表2に示した所定時間共沸脱水操作を行い、反応時間と分子量の相関を検証した。結果を表2に示した。
【0044】
【表2】
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【0045】
SnClでは触媒/L-乳酸比が1.00×10-1mo1%、反応時間22.5時間という条件下においてはオリゴマーを生成した。反応時間を72時間とすることで、分子量9700のポリマーを生成した。
【0046】
p-トルエンスルホン酸では、反応時間を延ばすとある程度分子量を増加させることができるが、触媒量を1.00×10-1mo1%に減らした場合、反応時間を延ばしても触媒量が1.00mo1%の場合の分子量にまでも分子量は増加しなかった。これはp-トルエンスルホン酸がエステル化されることにより触媒が失活したためであると考えている。
【0047】
PFPATを用いた場合、上記の触媒と比べて触媒量を下げることが可能あった。1.0mol%の触媒濃度では、18000程度の分子量ポリ乳酸にとどまったのに対し、触媒量を1.00×10-1mo1%に落とした場合、その分子量は反応時間22.5時間の場合に48000、72時間の場合に52000に達し、同一条件では、低触媒濃度の方が高分子量のポリマーを生成した。
【0048】
(実施例3)
PFPATについて、表3に示したように触媒濃度及び溶媒(反応温度は各溶媒の沸点)を変化させて反応条件の最適化を検討した。反応時間は22.5時間とした。結果を表3に示した。表3の結果をグラフで表したのが図1である。
【0049】
【表3】
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【0050】
触媒濃度が1.00mol%の時、ベンゼン中における反応では17000、トルエン中における反応では19000、キシレン中における反応では34000の分子量をもつポリマーが生成した。
【0051】
触媒濃度が1.00×10-1mo1%の時、トルエン及びキシレン中における反応で分子量が50000前後のポリ-L-乳酸が生成した。しかし、触媒濃度を1.00×10-2mo1%まで下げると、生成するポリマーの分子量は触媒濃度が1.00×10-1mol%の時よりも低下した。
【0052】
触媒濃度の適正範囲は、1.00×10-2~1.0mo1%にあると考えられる。
【0053】
どの触媒濃度においても反応温度が上がると生成ポリマーの分子量は増大した。
【0054】
(実施例4)
PFPAT、ピリジニウムトリフレート、トリフェニルホスホニウムトリフレートについて触媒濃度、反応時間、溶媒を変化させて反応を行った。結果を下記表4に示す。
【0055】
【表4】
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【0056】
PFPATの場合、キシレン中では、反応時間を72時間までのばすと分子量が約110000まで増大した。ポリ-L-乳酸(反応時間:22.5時間、触媒濃度(PFPAT/L-乳酸比):1.0mol%、溶媒:キシレン)のGPCクロマトグラフを図3に示した。ポリ-L-乳酸(反応時間:72時間、触媒濃度(PFPAT/L-乳酸比):0.1mol%、溶媒:キシレン)のH NMR スペクトルを図4に示した。
【0057】
トリフェニルホスホニウムトリフレートの場合、触媒量を1.00×10-1mo1%としてキシレン中で72時間反応させると83000の分子量を持つポリ乳酸が得られた。これらの結果より、生成ポリマーの分子量は、反応温度によって上限があり、それ以上は時間には依存しないことが示唆された。
【0058】
(実施例5)
次に生成したポリ-L-乳酸の立体化学について検討した。PFPATを用いてキシレン中で合成したポリ-L-乳酸サンプル(反応時間:22.5時間、触媒/L-乳酸比:0.1mo1%)について、2級メチル基をデカップルしてH-NMRを測定した。
【0059】
結果を図2に示す。ほぼシングルなメチンプロトンのスペクトルが観測されたことから、ラセミ化が起こっていない事がわかる。
【0060】
(実施例6)
触媒の再利用
L-乳酸4ml、トルエン8ml、トリフェニルホスホニウムトリフレート10.7mgを混合、Dean stark trapを取り付け常圧下で系外に水を留去しながら22.5時間重合を行った。トルエンをエバポレートした後、残渣を塩化メチレン20mlに溶解し、メタノール150ml中に投入し、ポリマーを沈殿させた。沈殿物を吸引ろ過し減圧乾燥した後、母液を回収しエバポレートした。この母液の濃縮物をL-乳酸4ml、トルエン8mlと混合、同様の重合操作を行ったところ、重量平均分子量7400のポリマーを収率64.6%で得た。
【0061】
乳酸-アミノ酸共重合体の合成
L-乳酸とアミノ酸(L-フェニルアラニン、グリシンまたはL-α-アラニン)(L-乳酸に対して10mol%)、および下記表5に示した触媒を触媒濃度0.1mol%とし、実施例1と同様にしてトルエン中において22.5時間共沸脱水操作を行った。共重合体の単離は、重合後、生成したポリマーをCHClに溶解させ、過剰のメタノールを加え再沈殿により行った。得られた沈殿を吸引ろ過後、減圧乾燥した。結果を表5中に示す。
【0062】
【表5】
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【0063】
共重合体の分子量を挙げる目的で以下の重合方法を検討した。
(1)バルク重合
L-乳酸とL-フェニルアラニン(10mol%)、および触媒(PFPAT)(触媒/モノマー比:1.00×10-1mol%)の混合物を、トルエン中において1時間共沸脱水操作でオリゴマー化を行った。溶液から溶媒を留去し、残渣を減圧下(20mmHg)170℃で3時間加熱した。その後、さらに減圧(0.1mmHg)170℃で2時間加熱した。共重合体の単離は乳酸-アミノ酸共重合体の合成で行ったと同様の方法で行った。
Mw:5000、Mw/Mm:1.31、収率:27.8%、モノマー組成(LA/Phe)96/4の共重合体を得た。
【0064】
(2)反応温度(キシレン溶媒)
L-乳酸とL-フェニルアラニン(10mol%)、および触媒(PFPAT)(触媒/モノマー比1.00×10-1mol%)の混合物を、キシレン中において24時間共沸脱水操作を行った。共重合体の単離は乳酸-アミノ酸共重合体の合成で行ったと同様の方法で行った。
Mw:9000、Mw/Mm:3.34、収率:27.8%の共重合体を得た。
【0065】
(3)オリゴ乳酸の利用
L-乳酸と触媒(PFPAT)(触媒/モノマー比:1.00×10-1mol%)の混合物を、キシレン中において24時間共沸脱水操作でオリゴマー化を行った。その後、L-フェニルアラニンをL-乳酸に対して10mol%添加しさらに22.5時間加熱した。共重合体の単離は乳酸-アミノ酸共重合体の合成で行ったと同様の方法で行った。
Mw:37200、Mw/Mn:1.75、収率:77.5%、モノマー組成(LA/Phe):93/7の共重合体を得た。
【0066】
1,4-ブタンジオール(BD)(100mol%)、コハク酸(SA)(100mol%)とL-フェニルアラニン(10mol%)の混合物をトリフェニルフォスフォニウムトリフレート(触媒/モノマー比:1.00×10-1mol%)を用いてトルエン中において22.5時間共沸脱水操作を行った。共重合体の単離は乳酸-アミノ酸共重合体の合成で行ったと同様の方法で行った。
Mw:2600、Mw/Mn:1.89、収率:28.7%、組成比(PBS/L-Phe=90/10)の共重合体を得た。
【0067】
乳酸-ヒドロキシカルボン酸共重合体の合成
L-乳酸(LA)、グリコール酸(GA)またはR-マンデル酸(MA)を下記表6のモル比で混合し、トルエン溶媒中、トリフェニルホスホニウムトリフレート)(TPPT)(0.1mol%)存在下、22時間共沸脱水反応した。放冷後、トルエンを溜去し、残渣を塩化メチレンに溶解、過剰のメタノールにて沈殿させ、共重合体を濾取した。
【0068】
【表6】
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【0069】
(グリコール酸-ヒドロキシ酸共重合体の合成)
グリコール酸(57mol%)-DL-ロイシン酸(43mol%)の混合物を触媒(TPPT 0.1mol%)存在下トルエン中120℃、24時間反応させ共重合体を得た。収率は12%であった。得られた共重合体の共重合比は、グリコール酸:ロイシン酸=81:19(モル比)であった。
【0070】
(グリコール酸-ラクトン共重合共重合の合成)
グリコール酸(57mol%)-ラクトン(43mol%)の混合物を触媒(TPPT 0.1mol%)存在下キシレン中160℃、24時間反応させて共重合体を得た。ラクトンは、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトンを使用した。
【0071】
ε-カプロラクトンを使用した場合、収率は74%であり、得られた共重合体の共重合比は、グリコール酸:カプロラクトン=50:50(モル比)であった。
【0072】
δ-バレロラクトンを使用した場合、収率は45%であり、得られた共重合体の共重合比は、グリコール酸:バレロラクトン=56:44(モル比)であった。
【0073】
γ-ブチロラクトンを使用した場合、収率は61%であり、得られた共重合体の共重合比は、グリコール酸:バレロラクトン=87.5:12.5(モル比)であった。
【0074】
(コハク酸—ジオール-グリコール酸共重合体)
コハク酸—ジオール—グリコール酸=1.5:1.5:7のモル比の混合物を触媒(TPPT 0.1mol%)存在下キシレン中160℃24反応させて共重合体を得た。
【0075】
ジオールとして、1,4-ブタンジオールを使用した場合、収率は47%で、得られた共重合体の共重合比は、コハク酸—ブタンジオール-グリコール酸=1:1:5(モル比)であった。
【0076】
ジオールとして、エチレングリコールを使用した場合、収率は64%で、得られた共重合体の共重合比は、コハク酸—エチレングリコール-グリコール酸=1:1:2(モル比)であった。
【0077】
(乳酸—リンゴ酸(モノヒドロキシジカルボン酸)共重合体の合成)
乳酸—リンゴ酸90:10(モル%)の混合物を触媒(TPPT 0.1mol%)存在下トルエン中130℃、24時間反応させ、共重合体を得た。収率は31%であり、得られた共重合体の共重合比は、乳酸:リンゴ酸=90:10(モル比)であった。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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