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明細書 :半導体基板の製造方法および半導体基板

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5424445号 (P5424445)
公開番号 特開2009-021573 (P2009-021573A)
登録日 平成25年12月6日(2013.12.6)
発行日 平成26年2月26日(2014.2.26)
公開日 平成21年1月29日(2009.1.29)
発明の名称または考案の名称 半導体基板の製造方法および半導体基板
国際特許分類 H01L  21/02        (2006.01)
H01L  29/12        (2006.01)
H01L  29/78        (2006.01)
H01L  21/336       (2006.01)
FI H01L 21/02 B
H01L 29/78 652T
H01L 29/78 658K
請求項の数または発明の数 11
全頁数 17
出願番号 特願2008-152569 (P2008-152569)
出願日 平成20年6月11日(2008.6.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成20年3月27日 社団法人応用物理学会発行の「第55回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集」に発表
優先権出願番号 2007155387
優先日 平成19年6月12日(2007.6.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年5月31日(2011.5.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】吉本 昌広
【氏名】篠原 広
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100112911、【弁理士】、【氏名又は名称】中野 晴夫
審査官 【審査官】大嶋 洋一
参考文献・文献 特開2006-179662(JP,A)
調査した分野 H01L 21/02
H01L 21/336
H01L 29/12
H01L 29/78
特許請求の範囲 【請求項1】
炭化シリコン基板上にシリコン層を直接形成した半導体基板の製造方法であって、
炭化シリコン基板とシリコン基板とを準備する工程と、
該炭化シリコン基板と該シリコン基板とを、それぞれの接合面の間に有機溶媒を挟んで貼り合わせる貼り合わせ工程と、
貼り合わせた該炭化シリコン基板と該シリコン基板とを、該接合面に向かって加圧しながら加熱し、それぞれの接合面どうしを接合して該シリコン基板からなるシリコン層を該炭化シリコン基板上に形成する接合工程とを含むことを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項2】
上記接合工程が、貼り合わせた上記炭化シリコン基板と上記シリコン基板とを、対向する金属平板の間に挟んで加圧しながら加熱する工程であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
炭化シリコン基板上にシリコン層を直接形成した半導体基板の製造方法であって、
炭化シリコン基板とシリコン基板とを準備する工程と、
該炭化シリコン基板と該シリコン基板とを、それぞれの接合面の間に有機溶媒を挟んで貼り合わせる貼り合わせ工程と、
貼り合わせた該炭化シリコン基板と該シリコン基板とを加熱し、それぞれの接合面どうしを接合して該シリコン基板からなるシリコン層を該炭化シリコン基板上に形成する接合工程とを含むことを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項4】
上記貼り合わせ工程は、上記炭化シリコン基板と上記シリコン基板との少なくとも一方の表面にイソプロピールアルコールを塗布し、それぞれの接合面の間に該イソプロピールアルコールを挟んで貼り合わせる工程であることを特徴とする請求項3に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項5】
上記貼り合わせ工程は、塗布した上記イソプロピールアルコールを乾燥させた後に、
それぞれの接合面の間に乾燥させた該イソプロピールアルコールを挟んで貼り合わせる工程であることを特徴とする請求項4に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項6】
上記炭化シリコン基板と上記シリコン基板とが、共に単結晶基板からなることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項7】
上記貼り合わせ工程の前に、上記それぞれの接合面上の自然酸化膜を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項8】
上記接合工程の後に、上記シリコン層の表面を研磨して該シリコン層の膜厚を減じる工程を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項9】
炭化シリコン基板と、
該炭化シリコン基板上に積層されたシリコン層とを含む半導体基板であって、
該炭化シリコン基板とシリコン基板を、有機溶媒介して貼り合わせた状態で加圧しながら加熱することにより、該炭化シリコン基板に該シリコン基板からなる該シリコン層を、アモルファス層および/または遷移層を介して接合させたことを特徴とする半導体基板。
【請求項10】
上記アモルファス層および/または遷移層の膜厚は、5nm以下であることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
上記炭化シリコン基板が単結晶基板であり、上記シリコン層が単結晶層であることを特徴とする請求項9または10に記載の半導体基板。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の製造方法および半導体基板に関し、特に、炭化シリコン基板上に直接シリコン層を形成した半導体基板の製造方法および半導体基板に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタの高速動作を可能とするために、シリコン基板上に絶縁層を介してシリコン層を設けたSOI(Silicon On Insulator)基板や、炭化シリコン基板上に絶縁層を介して窒化ガリウム層を設けた基板が用いられている。このような基板を用いることにより、トランジスタの寄生容量が低減でき、トランジスタの高速動作が可能となる。
しかしながら、SOI基板は放熱性が悪いため、エネルギー密度の高い電力用トランジスタ等には適用できないという問題があった。また、化合物半導体である窒化ガリウム層を用いた場合、結晶欠陥が多かったり、シリコントランジスタの製造プロセスをそのまま適用できない等の問題があった。
【0003】
これに対して、Smart Cut(登録商標)技術を用いて、表面に酸化シリコン層を備えたシリコン層(ドナー基板)と、炭化シリコン基板(ハンドル基板)とを貼り合わせて作製したSOI基板が提案されている。かかるSOI基板では、炭化シリコン基板を用いるために放熱特性が良好であり、トランジスタの作製にシリコンプロセスが適用できる等の利点もあった(例えば、特許文献1~4参照)。
【特許文献1】特開2004-200682号公報
【特許文献2】特開2005-354078号公報
【特許文献3】特開2006-041488号公報
【特許文献4】特開2006-140445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パワーFETやIGBT等のパワー半導体デバイスを作製する場合、SOI基板では縦型トランジスタの作製が不可能であり、パワー半導体デバイスのエネルギー密度に限界があるという問題があった。
また、ハンドル基板に多結晶の炭化シリコンを用いた場合、炭化シリコン基板には欠陥や不純物が多く、これがデバイスを作製するシリコン層に悪影響を与えるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、エネルギー密度の高いパワー半導体デバイスに適用可能な半導体基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、炭化シリコン基板上にシリコン層を直接形成した半導体基板の製造方法であって、炭化シリコン基板とシリコン基板とを準備する工程と、炭化シリコン基板とシリコン基板とを、それぞれの接合面の間に有機溶媒を挟んで貼り合わせる貼り合わせ工程と、貼り合わせた炭化シリコン基板とシリコン基板とを、接合面に向かって加圧しながら加熱し、それぞれの接合面どうしを接合してシリコン基板からなるシリコン層を炭化シリコン基板上に形成する接合工程とを含むことを特徴とする半導体基板の製造方法である。
【0007】
また、本発明は、炭化シリコン基板と、炭化シリコン基板上に積層されたシリコン層とを含む半導体基板であって、炭化シリコン基板の上にシリコン層が直接接合されていることを特徴とする半導体基板でもある。
ここで、直接接合されているとは、例えば接着剤のような他の接合材料を用いない接合状態をいい、より具体的には、シリコン基板と炭化シリコン基板とが、実質的に直接接触して接合された状態、あるいはシリコンおよび/または炭素を主成分とする薄層を介して接合された状態をいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる製造方法によれば、炭化シリコン基板上にシリコン層を直接形成した半導体基板を容易に提供できる。
【0009】
また、本発明にかかる半導体基板では、良好な放熱特性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「左」、「右」、「表」、「裏」およびこれらの用語を含む名称を適宜使用するが、これらの方向は図面を参照した発明の理解を容易にするために用いるものであり、実施形態を上下反転、あるいは任意の方向に回転した形態も、当然に本願発明の技術的範囲に含まれる。
【0011】
本発明は、炭化シリコン基板と、その上に直接形成されたシリコン層を備えた半導体基板に関するものである。図1は、かかる半導体基板の製造工程を表す断面図であり、本発明の製造工程は、以下の工程1~4を含む。
【0012】
工程1:図1(a)に示すように、炭化シリコン(SiC)基板10とシリコン(Si)基板20とを準備する。炭化シリコン基板10は、例えばノンドープの単結晶基板からなり、表面は(0001)面であり、厚みは約300μmである。ここで、炭化シリコン基板10の<0001>方向は熱伝導性に優れている。
一方、シリコン基板20は、例えばノンドープの単結晶基板からなり、表面は(100)面であり、厚みは約300μmである。基板の直径は、それぞれ2インチとする。
ここでは、炭化シリコン基板10、シリコン基板20として単結晶基板を用いる場合について述べるが、多結晶基板を用いることも可能である。
また、ここでは、炭化シリコン基板10、シリコン基板20にジャスト基板を用いる場合について述べるが、オフ基板を用いることも可能である。例えば、炭化シリコン基板10では、結晶欠陥を低減するためにオフ角が8°程度のオフ基板を用いることができる。
【0013】
工程2:炭化シリコン基板10の表面、およびシリコン基板20の裏面に形成された、主に酸化シリコンからなる自然酸化膜を除去する。除去工程には、例えばフッ化水素酸による表面エッチングが用いられる。なお、自然酸化膜を除去する工程は省略する場合もある。
【0014】
工程3:図1(b)に示すように、炭化シリコン基板10の表面に有機溶媒を塗布した後、その上にシリコン基板20の裏面を重ねる。これにより、炭化シリコン基板10の表面と、シリコン基板20の裏面とが、有機溶媒を介して貼り合わされる。有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピールアルコール等のアルコールや他の有機溶媒が用いられる。
【0015】
図2Aは、炭化シリコン基板10の上に有機溶媒を介してシリコン基板20を貼り合わせた状態の上面写真である。炭化シリコン基板10とシリコン基板20とが有機溶媒を挟んで貼り合わされているが、有機溶媒中に部分的に気泡が見られる。
なお、有機溶剤を塗布した後に、例えば室内に放置し乾燥させた後に貼り合わせても構わない。
【0016】
工程4:例えば1組のモリブデン等の金属平板を準備し、その間に、貼り合わされた状態の炭化シリコン基板10とシリコン基板20とを挟み、加圧した状態で固定する。固定は、例えば固定具で金属平板を挟んで行い、この状態で例えばアニール炉で熱処理する。熱処理は、例えば550℃で30分間保持した後、1000℃まで昇温してこの温度で30分間保持して行う。熱処理の雰囲気には、例えばアルゴン雰囲気が用いられる。
かかる熱処理により、炭化シリコン基板10の表面上にシリコン基板20が接合され、炭化シリコン基板10上にシリコン基板20からなるシリコン層が直接形成された半導体基板100となる。
ここでは、炭化シリコン基板10とシリコン基板20とを貼り合わせた状態で加圧して固定するが、接合面が接した状態で固定できれば必ずしも加圧しなくても良い。
【0017】
図2Bは、熱処理後の半導体基板100の上面写真である。熱処理により有機溶媒は蒸発し、炭化シリコン基板10上に直接シリコン層20が接合されている。
【0018】
工程5:図1(c)に示すように、例えばCMP法を用いてシリコン層20を表面から研磨して所定の膜厚とする。シリコン層20の膜厚は、例えば20μm程度であるが、適当な膜厚にすることができる。
以上の工程で、炭化シリコン基板上に、所望の膜厚のシリコン層が直接接合された半導体基板100が完成する。即ち、接着剤のような他の接合材料を用いず、シリコン基板と炭化シリコン基板が、シリコンおよび/または炭素を主成分とする薄層を介して直接接合された半導体基板100を得ることができる。
【0019】
図2Cは、研磨工程が完了し、完成した半導体基板100の上面写真である。
【0020】
次に、本実施の形態にかかる半導体基板100の放熱特性について述べる。
図3A、図3Bは、本実施の形態にかかる半導体基板100とシリコン基板との、放熱特性のシミュレーション結果である。図3A、3B中の温度は、図3A中に示した凡例に対応している(単位は℃)。図3Aは、本実施の形態にかかる半導体基板100を用いた場合、図3Bは、シリコン基板を用いた場合である。半導体基板100とシリコン基板の膜厚は等しく、基板裏面の温度は30℃一定する。上面中央にトランジスタのチャネルが形成されていると仮定し、この部分から14.3Wの熱を供給した。
【0021】
この結果、図3Aに示す本実施の形態にかかる半導体装置100では、チャネルの温度は145℃となった。一方、図3Bのシリコン基板では、チャネル温度は225℃となった。
【0022】
このように、本実施の形態にかかる半導体基板100を用いることにより、シリコン基板を用いるよりも放熱特性が向上し、エネルギー密度の高い半導体デバイスの形成が可能となる。
【0023】
ここで、熱伝導率を比較すると、Siは1.3(W/cm・K)であるが、6H-SiCは4.9(W/cm・K)であり、Cuの4.0(W/cm・K)と同程度の高い熱伝導率を有する。このため、本実施の形態にかかる半導体基板100のように炭化シリコン基板を用いることにより、シリコン基板に比較して放熱特性を大幅に向上させることが可能となる。
【0024】
次に、本実施の形態にかかる半導体基板100を用いて作製したnチャネルMOSFETの特性について述べる。図4は、半導体基板100を用いて作製したMOSFETを含む半導体チップの上面写真である。半導体チップの1辺は1mmであり、ゲート長Lは20μmである。
【0025】
図5Aは、MOSFETのI-V特性であり、横軸がドレイン電圧V、縦軸がドレイン電流Iを示す。ゲート電圧Vは、0Vから10Vまで1V間隔で変化させた。図5Aより、良好なI-V(電流電圧)特性が得られていることがわかる。
【0026】
また、図5Bは、ゲート電圧Vを変化させた場合のドレイン電流Iであり、横軸がゲート電圧V、縦軸がドレイン電流Iを示す。図5Bより、良好なトランジスタのスイッチング動作が得られていることがわかる。
【0027】
なお、半導体基板100に含まれるシリコン層20中での電子移動度は、550cm/V・s程度と、良好な値となっている。
【0028】
このようにMOSFETが良好なトランジスタ特性を示すことから、本実施の形態にかかる半導体基板100は、一般的な製造プロセス(熱拡散等の熱処理工程やエッチング工程等)に対しても十分に耐えうることがわかる。特に炭化シリコンとシリコンとは熱膨張係数が近いため、高温プロセスにも耐えることができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態にかかる製造方法では、炭化シリコン基板上にシリコン層を直接形成した半導体基板を容易に提供できる。特に、従来のSOS基板やSIMOX等の埋め込みSOI基板に比較して、シリコン層の結晶性が良好となる。
【0030】
また、炭化シリコン基板に欠陥が含まれていても、シリコン基板を貼り付けてシリコン層を作製するため、炭化シリコン基板の結晶性はシリコン層に影響を与えず、結晶性の良好なシリコン層が得られる。
【0031】
また、本発明にかかる半導体基板では、良好な放熱特性を有する基板の提供が可能となる。また、容易に素子分離層を形成できる。
【0032】
また、化合物半導体を用いる場合に比べて、ウエハ口径の大きな半導体基板を得ることができる。
【0033】
また、炭化シリコン基板とシリコン層との間に絶縁層を含まないため、縦型の半導体デバイスの作製にも適用でき、エネルギー密度の高い半導体デバイスの提供が可能となる。
【0034】
特に、単結晶の炭化シリコン基板は高純度化が可能であるため、かかる半導体基板を用いてMOSFETの製造プロセスを行った場合、高温プロセス等によっても不純物拡散が発生せず、MOSFETの特性劣化が発生しない。
【0035】
更に、炭化シリコン基板は透明であり、MOSFETの製造プロセスにおいて、基板裏面からの位置合わせが容易に行える。
【0036】
Si/SiC界面の評価
次に、炭化シリコン基板とシリコン基板の接合界面について評価を示す。評価は、1)ESCA分析、2)RAMAN分光分析、3)TEM観察で行った。
【0037】
1)ESCA分析
図6は、炭化シリコン基板10の表面上にシリコン基板20が接合された半導体基板100のESCA分析結果であり、横軸がシリコン基板の表面からの深さ、横軸が組成を示す。表面から2000nmの深さまではSiが略100%(シリコン基板)であり、その後、Cの濃度が増え、略2200nmからはSiとCが略50%ずつ(炭化シリコン基板)となっている。
【0038】
2)RAMAN分光分析
図7Aは、シリコン基板の表面に垂直方向における、半導体基板100のRAMAN分光分析結果であり、基準となるシリコンウエハの分析結果と、半導体基板(Si on SiC)100の分析結果を示す。
シリコンウエハのピーク位置は520.00±0.04cm-1で、FWHMは2.72±0.01cm-1である。一方、半導体基板100に含まれるシリコン層のピーク位置は520.30±0.08cm-1で、FWHMは3.07±0.11cm-1である。
このように、ピーク位置が高波数側にシフトしていることから、半導体基板100において、炭化シリコン基板上のシリコンには圧縮応力が働いていることがわかる。
【0039】
図7Bは、シリコン基板の表面に平行な方向における、半導体基板(Si on SiC)100のRAMAN分光分析結果であり、横軸にSi/SiC界面からSi基板側への距離、縦軸にラマンシフトを示す。
Si/SiC界面からSi基板側に30~60μmの領域でラマンシフトが約520.3となり、Si基板に圧縮応力が存在することがわかる。
【0040】
3)TEM観察
図8A、8Bは、半導体基板100の断面方向のTEM像(HR-TEM像)であり、図8Aは晶帯軸が[11-20]の方向、図8Bは晶帯軸が[1-100]の方向を示す。図8A、8Bにおいて、上方がSi層、下側が6H-SiC層であり、その界面にこれらの層とは結晶状態の異なる層が見られる。
【0041】
図9(a)は、図8Bの界面近傍の拡大写真であり、図9(b)は、界面における結晶モデルである。図9(b)において、上側はSi層(単結晶シリコン基板)であり、下側は遷移層となっている。図9(a)からわかるように、実際の界面では、遷移層の下側がアモルファス層となり、その下側がSiC基板となっている。このように、Si基板と6H-SiC基板の界面は、アモルファス層や遷移層を介したボイドフリーな界面となっていると考えられる。
【0042】
図9(c)は、半導体基板100の断面構造を模式的に示したもので、6H-SiC基板の上に、略1.5nmのアモルファス層、略0.5nmの遷移層を介してSi基板が直接接合されている。アモルファス層および遷移層は、シリコンおよび/または炭素を主成分とした薄と考えられる。アモルファス層と遷移層からなる層の膜厚は、数nm以下、好適には5nm以下と考えられる。
【0043】
イソプロピルアルコール塗布によるSiC表面層の形成
次に、本発明の実施の形態にかかる製造方法の工程3(図1(b))において、炭化シリコン基板10の表面に有機溶媒を塗布した状態における、炭化シリコン基板10の表面の評価を行った。評価には、以下の実験1、2を用いた。
【0044】
実験1:次の3条件でSiC基板の表面をX線光電子分光法(略称:XPSまたはESCA)にて測定した。測定はすべて同一試料で順次行なった。
(a)イソプロピルアルコールで処理していないSiC基板の表面のXPS測定。
(b)イソプロピルアルコールを塗布し室温で数分間放置し自然乾燥。その後、速やかにXPS装置に装填し、XPS測定。
(c)(b)の測定の後XPS装置内(真空度1e-6Pa程度)に約12時間放置した後、再びXPS測定。
【0045】
図10Aは、イソプロピルアルコール処理前後のSiC基板のXPS信号であり、図10A中、(a)は処理前、(b)は処理直後、(c)は処理後、真空中にて12時間経過後の信号を表す。図10Aより、イソプロピルアルコール処理前はSiCに起因するSiピーク1とSiCに起因するCピーク5が観測される。ピーク2とピーク6はSiC表面の自然酸化膜に起因するピークである。
【0046】
イソプロピルアルコールを塗布後、自然乾燥した試料では、SiCに起因するピークに加えて、新たなSiピーク3およびCピーク7が観測される。SiCに起因するピークより高エネルギー側に見られることから、Si原子とC原子が酸素などの電気陰性度の大きい元素と化学結合を形成している。
【0047】
イソプロピルアルコールを大気中で塗布し、それ以外の化学物質を用いていないことから、「イソプロピルアルコール」、または「イソプロピルアルコールの分解生成物」、または「イソプロピルアルコールと酸素の反応生成物」がSiCと反応し表面層を形成していると考えられる。
【0048】
SiCに起因するピークと、表面層に起因するピークの両方が観測されることから、表面層の厚みは光電子の脱出深さ程度(2nm程度)といえる。
【0049】
真空中で12時間放置した後も、ピーク4および8のように、ピーク3および7と変わらない表面層起因のピークが見られる。このことから、図10Aの結果は、イソプロピルアルコールが揮発する途中の様子を観測したのではなく、SiCに強固に吸着した表面層を観測していると結論できる。
【0050】
実験2:SiC基板をイソプロピルアルコールにて処理した後、XPS測定を行った。その後、試料を一旦、大気中に取り出し超純水で洗浄し、再びXPS装置に装填しXPS測定を行った。超純水洗浄前後でXPSスペクトルを比較した。
【0051】
図10Bは、イソプロピルアルコール処理したSiC基板の超純水洗浄前後のXPS信号であり、(a)は超純水洗浄前、(b)は超純水洗浄後の信号を示す。
【0052】
イソプロピルアルコール処理による表面層の形成がピーク1と3で確認できる。これらのピークは超純水で洗浄した後も、ピーク2と4に示すように変化しない。イソプロピルアルコールは水に溶けることから、表面層は単なるイソプロピルアルコールではない。
【0053】
この結果、SiC基板にイソプロピルアルコールを塗布し自然乾燥させることで、イソプロピルアルコールに起因する表面層(厚さ2nm程度)が形成されることがわかる。表面層は、真空中に放置しても容易に揮発せず、水に対しても不溶である。
【0054】
[比較例]
比較例として、上述の半導体装置の製造方法の工程3において、炭化シリコン基板10の表面に有機溶媒を塗布せずに、直接シリコン基板20の裏面を重ねて半導体基板を作製した。他の製造工程は、上述の本実施の形態にかかる製造方法と同様である。
【0055】
このように、有機溶剤の塗布工程を含まない製造方法では、加圧熱処理工程(工程4)を行っても炭化シリコン基板10とシリコン基板20とが接合せず、炭化シリコン基板上にシリコン層を設けた半導体基板は得られなかった。
【0056】
以上の比較例から明らかなように、本発明にかかる半導体基板の製造方法では、工程3において炭化シリコン基板10とシリコン基板20との間に有機溶剤を塗布することより、炭化シリコン基板10上にシリコン基板20を直接接合できることがわかる。
【0057】
なお、本実施の形態では、炭化シリコン基板10とシリコン基板20とが、シリコンおよび/または炭素を主成分とした薄層(アモルファス層および遷移層)を介して接合される場合について述べたが、工程4の熱処理条件(加熱温度、加熱時間等)を変えることにより、このような薄層が更に薄くなり、炭化シリコン基板10とシリコン基板20とが実質的に直接接触した状態で接合される場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態にかかる半導体基板の製造工程の断面図である。
【図2A】本発明の実施の形態にかかる半導体基板の製造工程(貼り合わせ工程後)における上面写真である。
【図2B】本発明の実施の形態にかかる半導体基板の製造工程(熱処理工程後)における上面写真である。
【図2C】本発明の実施の形態にかかる半導体基板の製造工程(研磨工程後)における上面写真である。
【図3A】本発明の実施の形態にかかる半導体基板の放熱特性のシミュレーション結果である。
【図3B】シリコン基板の放熱特性のシミュレーション結果である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる半導体基板上に作製した半導体チップの上面写真である。
【図5A】本発明の実施の形態にかかる半導体基板上に作製したMOSFETのI-V特性である。
【図5B】本発明の実施の形態にかかる半導体基板上に作製したMOSFETのトランジスタ特性である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる半導体基板のESCA分析結果である。
【図7A】本発明の実施の形態にかかる半導体基板のRAMAN分光分析結果である。
【図7B】本発明の実施の形態にかかる半導体基板のRAMAN分光分析結果である。
【図8A】本発明の実施の形態にかかる半導体基板のHR-TEM像である。
【図8B】本発明の実施の形態にかかる半導体基板のHR-TEM像である。
【図9】本発明の実施の形態にかかる半導体基板のHR-TEM像および結晶構造モデルである。
【図10A】イソプロピールアルコール処理前後のXPS分析結果である。
【図10B】超純水洗浄前後のXPS分析結果である。
【符号の説明】
【0059】
10 炭化シリコン基板、20 シリコン基板(シリコン層)、100 半導体基板。
図面
【図1】
0
【図5A】
1
【図5B】
2
【図10A】
3
【図10B】
4
【図2A】
5
【図2B】
6
【図2C】
7
【図3A】
8
【図3B】
9
【図4】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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